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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20220314BHJP
   E06B 1/62 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
E06B1/56 Z
E06B1/62 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018068074
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178535
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】平川 真也
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-002984(JP,U)
【文献】特開2004-316129(JP,A)
【文献】特開2002-213148(JP,A)
【文献】特開2015-063848(JP,A)
【文献】特開2018-025049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00 - 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の屋内側に樹脂製のアングル部材を備えた建具であって、
前記アングル部材及び前記枠体のうちの一方は、前記枠体の延び方向に沿う差し込み部を有し、
前記アングル部材及び前記枠体のうちの他方は、前記差し込み部を嵌合可能な挿入溝部を有し、
前記アングル部材は、前記差し込み部と前記挿入溝部との嵌合により、前記枠体に取り付けられており
前記枠体は、縦枠と横枠とを備え、
前記アングル部材は、前記縦枠に取り付けられる縦側アングル部材と、前記横枠に取り付けられる横側アングル部材とを備え、
前記縦側アングル部材の長手方向の端部と前記横側アングル部材の長手方向の端部とは、両者の間に所定の隙間をあけて配置され、
前記縦側アングル部材及び前記横側アングル部材のそれぞれの前記端部は、長手方向に長い切り欠き部又は長手方向に長い長穴を有し、
前記縦側アングル部材の長手方向の端部と前記横側アングル部材の長手方向の端部とを覆うコーナー部材を備え、
前記コーナー部材は、前記切り欠き部又は前記長穴を通して前記縦側アングル部材及び前記横側アングル部材のそれぞれの前記端部を躯体にネジ留めするためのネジ穴を有する基部と、前記基部に対して覆うように嵌合するカバー部と、を備える、建具。
【請求項2】
前記差し込み部及び前記挿入溝部は、前記枠体の延び方向に沿って連続して設けられている、請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記基部の裏面は、前記切り欠き部又は前記長穴に係合する係合突起を有する、請求項1又は2に記載の建具。
【請求項4】
前記基部は、前記縦側アングル部材及び前記横側アングル部材のうちの一方の前記端部に当接する第1部分と、前記縦側アングル部材及び前記横側アングル部材のうちの他方の前記端部に当接する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを任意の角度で折り曲げ可能に連結する連結部と、を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の建具。
【請求項5】
前記縦側アングル部材の前記端部をネジ留めする前記ネジ穴の周囲の座面と、前記横側アングル部材の前記端部をネジ留めする前記ネジ穴の周囲の座面とは、互いに相反する方向に傾斜している、請求項のいずれか1項に記載の建具。
【請求項6】
前記カバー部は、前記縦側アングル部材の表面の幅方向に亘って当接し、前記縦側アングル部材の表面を流下した結露水を屋外側に排水する傾斜壁部を有する、請求項のいずれか1項に記載の建具。
【請求項7】
前記切り欠き部又は前記長穴は、前記縦側アングル部材及び前記横側アングル部材の幅方向の中央部よりも屋内側に片寄って配置されている、請求項のいずれか1項に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体の屋内側に樹脂製のアングル部材を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枠体の屋内側に樹脂製のアングル部材を備えた建具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の建具は、アングル部材を、躯体(額縁部材)に対して、アングル部材の表面から直接ネジ留めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-211255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の建具は、アングル部材の表面から躯体に対して直接ネジ留めするため、ネジの頭部がアングル部材の表面に露出する問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、アングル部材の見栄えが良好で、より意匠性が向上した建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る建具は、枠体(例えば、後述する枠体2)の屋内側に樹脂製のアングル部材(例えば、後述するアングル部材5)を備えた建具(例えば、後述する建具1)であって、前記アングル部材及び前記枠体のうちの一方は、前記枠体の延び方向に沿う差し込み部(例えば、後述する差し込み部502、201)を有し、前記アングル部材及び前記枠体のうちの他方は、前記差し込み部を嵌合可能な挿入溝部(例えば、後述する挿入溝部26、508)を有し、前記アングル部材は、前記差し込み部と前記挿入溝部との嵌合により、前記枠体に取り付けられている。
【0007】
(2) (1)に記載の建具において、前記差し込み部及び前記挿入溝部は、前記枠体の延び方向に沿って連続して設けられていることが好ましい。
【0008】
(3) (1)又は(2)に記載の建具において、前記枠体は、縦枠(例えば、後述の縦枠23、24)と横枠(例えば、後述の上横枠21、下横枠22)とを備え、前記アングル部材は、前記縦枠に取り付けられる縦側アングル部材(例えば、後述の縦側アングル部材53、54)と、前記横枠に取り付けられる横側アングル部材(例えば、後述の横側アングル部材51、52)とを備え、前記縦側アングル部材の長手方向の端部(例えば、後述の端部5a)と前記横側アングル部材の長手方向の端部(例えば、後述の端部5a)とは、両者の間に所定の隙間(例えば、隙間S)をあけて配置されていることが好ましい。
【0009】
(4) (3)に記載の建具において、前記縦側アングル部材及び前記横側アングル部材のそれぞれの前記端部は、長手方向に長い切り欠き部(例えば、後述の切り欠き部503)又は長手方向に長い長穴(例えば、後述の長穴507)を有し、前記縦側アングル部材の長手方向の端部と前記横側アングル部材の長手方向の端部とを覆うコーナー部材(例えば、後述のコーナー部材6)を備え、前記コーナー部材は、前記切り欠き部又は前記長穴を通して前記縦側アングル部材及び前記横側アングル部材のそれぞれの前記端部を躯体(例えば、後述の額縁部材G)にネジ留めするためのネジ穴(例えば、後述のネジ穴614)を有する基部(例えば、後述の基部61)と、前記基部に対して覆うように嵌合するカバー部(例えば、後述のカバー部62)と、を備えることが好ましい。
【0010】
(5) (4)に記載の建具において、前記基部の裏面(例えば、後述の裏面611b、612b)は、前記切り欠き部又は前記長穴に係合する係合突起(例えば、後述の係合突起616)を有することが好ましい。
【0011】
(6) (4)又は(5)に記載の建具において、前記基部は、前記縦側アングル部材及び前記横側アングル部材のうちの一方の前記端部に当接する第1部分(例えば、後述の第1部分611)と、前記縦側アングル部材及び前記横側アングル部材のうちの他方の前記端部に当接する第2部分(例えば、後述の第2部分612)と、前記第1部分と前記第2部分とを任意の角度で折り曲げ可能に連結する連結部(例えば、後述の連結部613)と、を備えることが好ましい。
【0012】
(7) (4)~(6)のいずれかに記載の建具において、前記縦側アングル部材の前記端部をネジ留めする前記ネジ穴の周囲の座面(例えば、後述の座面615)と、前記横側アングル部材の前記端部をネジ留めする前記ネジ穴の周囲の座面(例えば、後述の座面615)とは、互いに相反する方向に傾斜していることが好ましい。
【0013】
(8) (4)~(7)のいずれかに記載の建具において、前記カバー部は、前記縦側アングル部材の表面(例えば、後述の表面5c)の幅方向に亘って当接し、前記縦側アングル部材の表面を流下した結露水を屋外側に排水する傾斜壁部(例えば、後述の傾斜壁部625)を有することが好ましい。
【0014】
(9) (4)~(8)のいずれかに記載の建具において、前記切り欠き部又は前記長穴は、前記縦側アングル部材及び前記横側アングル部材の幅方向の中央部よりも屋内側に片寄って配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アングル部材の見栄えが良好で、より意匠性が向上した建具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る建具の縦断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る建具の横断面図である。
図3図1に示す建具の上側の拡大断面図である。
図4図1に示す建具の下側の拡大断面図である。
図5図2に示す建具の一方の縦枠側の拡大断面図である。
図6A】本発明の一実施形態に係る建具の屋内側の上横枠と縦枠との交差部位を示す拡大して示す図である。
図6B】本発明の一実施形態に係る建具の屋内側の下横枠と対枠との交差部位を拡大して示す図である。
図7】一実施形態に係るアングル部材の斜視図である。
図8A】アングル部材を取り外した状態の建具の上横枠と縦枠との交差部位を拡大して示す図である。
図8B】アングル部材を取り外した建具の下横枠と縦枠との交差部位を拡大して示す図である。
図9A】アングル部材を挿入溝部に嵌合させた状態の上横枠と縦枠との交差部位を拡大して示す図である。
図9B】アングル部材を挿入溝部に嵌合させた状態の下横枠と縦枠との交差部位を拡大して示す図である。
図10A】コーナー部材の基部を表面側から見た斜視図である。
図10B】コーナー部材の基部を裏面側から見た斜視図である。
図11図10A中のA-A線に沿う断面図である。
図12】カバー部を屋内側且つ表面側から見た斜視図である。
図13図12に示すカバー部をB方向から見た拡大図である。
図14図12に示すカバー部をC方向から見た拡大図である。
図15図14中のD-D線に沿う断面図である。
図16】隣り合う横側アングル部材と縦側アングル部材とをコーナー部材を用いて取り付けする様子を示す図である。
図17】コーナー部材の基部をネジ留めした状態を示す断面図である。
図18】枠体の四隅の基部にカバー部を嵌合させる様子を屋内側から見た図である。
図19A】下横枠側に配置される横側アングル部材と一方の縦側アングル部材との間に配置されるコーナー部材のカバー部を示す図である。
図19B】下横枠側に配置される横側アングル部材と他方の縦側アングル部材との間に配置されるコーナー部材のカバー部を示す図である。
図20】アングル部材の他の実施形態を示す斜視図である。
図21】アングル部材が挿入溝部を有し、枠体が差し込み部を有する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る建具の縦断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る建具の横断面図である。図3は、図1に示す建具の上側の拡大縦断面図である。図4は、図1に示す建具の下側の拡大縦断面図である。図5は、図2に示す建具の一方の縦枠側の拡大横断面図である。図6Aは、本発明の一実施形態に係る建具の屋内側の上横枠と縦枠との交差部位を示す拡大して示す図である。図6Bは、本発明の一実施形態に係る建具の屋内側の下横枠と縦枠との交差部位を拡大して示す図である。
本実施形態の建具1は、建物の壁に形成された開口部(図示せず)に取り付けられる枠体2と、枠体2に開閉可能に納められた障子3と、障子3の屋内側に張設された網戸4と、枠体2の屋内側に突出して配置されるアングル部材5と、を備えている。本実施形態の建具1は、障子3が枠体2に対して屋外側に開閉するように構成される開き窓を例示している。
【0018】
建具1は、アルミ等の金属と塩化ビニル等の樹脂とからなる枠体2を有する複合型の建具であり、断熱性に優れる。即ち、枠体2は、上横枠21、下横枠22及び左右の縦枠23、24によって矩形状に枠組みされて形成されている。上横枠21、下横枠22及び縦枠23、24は、障子3が開閉可能に取り付けられる金属上横枠211、金属下横枠221及び金属縦枠231、241と、網戸4が張設される樹脂上横枠212、樹脂下横枠222及び樹脂縦枠232、242とでそれぞれ構成されている。金属上横枠211及び金属下横枠221は、枠体2の横方向の全長に亘って延びている。樹脂上横枠212及び樹脂下横枠222は、金属上横枠211及び金属下横枠221の内側且つ屋内側にそれぞれ装着されている。
【0019】
一方、金属縦枠231、241は、金属上横枠211と金属下横枠221との間に亘って設けられている。樹脂縦枠232、242は、金属縦枠231、241の内側且つ屋内側にそれぞれ装着され、金属縦枠231、241と同様に、樹脂上横枠212と樹脂下横枠222との間に亘って延びている。
【0020】
障子3は、上框31、下框32及び縦框33、34によって複層ガラス35を支持し、枠体2に対して、上框31及び下框32の一方端部に設けられる回動軸(図示せず)を中心に回動可能に取り付けられている。これにより、障子3は、屋外側に向けて開放され、又は、屋内側に向けて収納される。
【0021】
網戸4は、矩形状の網部41と、その網部41の四周にそれぞれ配置される縁部材42と、を有している。樹脂上横枠212、樹脂下横枠222及び樹脂縦枠232、242のそれぞれの見込み面212a、222a、232a、242aには、網戸4の各縁部材42を嵌合させる嵌合溝25が形成されている。網戸4は、各縁部材42がそれぞれ嵌合溝25内に嵌合して取り付けられることにより、樹脂上横枠212、樹脂下横枠222及び樹脂縦枠232、242に亘って着脱可能に張設されている。
【0022】
アングル部材5は、枠体2の屋内側の四周に、枠体2とは別体の部材として取り付けられている。アングル部材5は、上横枠21及び下横枠22にそれぞれ取り付けられる横側アングル部材51、52と、縦枠23、24にそれぞれ取り付けられる縦側アングル部材53、54との4つの独立したアングル部材からなる。アングル部材5は、建具1の屋内側の四周に亘る躯体を構成する額縁部材Gの屋外側縁部G1をそれぞれ覆っている。横側アングル部材51、52と縦側アングル部材53、54との間のコーナー部には、図6A図6Bに示すように、それぞれコーナー部材6が配置されている。
【0023】
本実施形態の横側アングル部材51、52及び縦側アングル部材53、54は、長さの違いを有する以外、実質的に同じ構造を有するので、1つのアングル部材5の構造について、図7を用いて説明する。図7は、本発明の一実施形態に係るアングル部材5の斜視図である。
アングル部材5は、それぞれ枠体2の延び方向に沿う所定幅の長尺な帯状のアングル部材本体501と差し込み部502とが、塩化ビニル等の樹脂によって一体に成形されることにより、断面略L字型に構成されている。アングル部材本体501は、枠体2から屋内側に向けて略垂直に突出し、額縁部材Gの屋外側縁部G1の内周面を覆う部位である。差し込み部502は、アングル部材本体501の幅方向の屋外側の近傍から、アングル部材本体501に対して略垂直方向(額縁部材Gの厚み方向)に延びている。差し込み部502は、枠体2に形成された後述する挿入溝部26に挿入されることにより、アングル部材5を枠体2に取り付けるための部位である。
【0024】
アングル部材5の長手方向の両端部5a、5aは、それぞれ長手方向に沿って長く延びる切り欠き部503、503を有している。切り欠き部503は、アングル部材本体501の幅方向の中央部よりも屋内側(差し込み部502から遠い側)に偏って配置されている。
【0025】
アングル部材本体501の裏面には、両面テープ504が設けられている。この両面テープ504は、本発明において必須ではないが、好ましく用いられる。両面テープ504は、予め額縁部材G側に設けられていてもよい。
【0026】
枠体2の屋内側には、アングル部材5の差し込み部502を嵌合可能な挿入溝部26が形成されている。本実施形態の挿入溝部26は断面U字型に形成されているが、特にU字型に限定されるものではない。挿入溝部26は、金属上横枠211に設けられる上側挿入溝部261と、金属下横枠221に設けられる下側挿入溝部262と、樹脂縦枠232、242に設けられる縦側挿入溝部263、264とで構成されている。
【0027】
この挿入溝部26の詳細について、更に図8A図8Bを用いて説明する。図8Aは、アングル部材5を取り外した状態の建具1の上横枠21と縦枠24との交差部位を拡大して示す図であり、図8Bは、アングル部材5を取り外した建具1の下横枠22と縦枠23との交差部位を拡大して示す図である。説明を容易にするため、額縁部材Gの図示は省略した。また、建具1の上横枠21と縦枠23との交差部位及び下横枠22と縦枠24との交差部位も同様に現れるため図示を省略する。
図8Aに示すように、上側挿入溝部261は、金属上横枠211の屋内側の端部に、下向きに開口するように金属により一体に形成され、金属上横枠211の延び方向(枠体2の横方向)に沿って、金属上横枠211の全長に亘って連続して延びている。また、図8Bに示すように、下側挿入溝部262は、金属下横枠221の屋内側の端部に、上向きに開口するように金属により一体に形成され、金属下横枠221の延び方向(枠体2の横方向)に沿って、金属下横枠221の全長に亘って連続して延びている。
【0028】
縦側挿入溝部263、264は、樹脂縦枠232、242の屋内側の端部に、それぞれ内向きに開口するように樹脂により一体に形成され、樹脂縦枠232、242の延び方向(枠体2の縦方向)に沿って延びている。
【0029】
各アングル部材5は、差し込み部502が挿入溝部26内に挿入されて嵌合することにより取り付けられている。これにより、額縁部材Gの四周の屋外側縁部G1は、それぞれアングル部材5により覆われる。挿入溝部26は、いずれも枠体2の縦横の延び方向に沿って連続しているため、熱の影響によりアングル部材5に長手方向の伸縮移動が生じても、その伸縮移動が阻害されることがない。従って、熱の影響による伸縮移動が阻害されることによりアングル部材5が挿入溝部26から浮き上がることを防止でき、挿入溝部26に対するアングル部材5の嵌合状態を維持することができる。
【0030】
アングル部材5の差し込み部502の先端部には、図7に示すように、長手方向に亘る係止突条505が形成されている。アングル部材5(縦側アングル部材53、54)は、この係止突条505が、樹脂からなる縦側挿入溝部263、264の内面に形成されている複数の凸条部26aと係合することにより、縦側挿入溝部263、264との嵌合状態が保持されるようになっている(図5参照)。また、差し込み部502の少なくとも一方側面には、軟質の塩化ビニル等の樹脂からなる軟質部506を有している。アングル部材5(横側アングル部材51、52)の差し込み部502は、この軟質部506により、金属からなる上側挿入溝部261及び下側挿入溝部262内に圧入状態で挿入され、上側挿入溝部261及び下側挿入溝部262との嵌合状態が保持されるようになっている(図3図4参照)。
【0031】
ここで、アングル部材5を挿入溝部26に嵌合させた状態を図9A図9Bに示す。図9Aは、アングル部材5を挿入溝部26に嵌合させた状態の樹脂上横枠212と樹脂縦枠242との交差部位を拡大して示す図であり、図9Bは、アングル部材5を挿入溝部26に嵌合させた状態の樹脂下横枠222と樹脂縦枠232との交差部位を拡大して示す図である。建具1の樹脂上横枠212と樹脂縦枠232との交差部位及び樹脂下横枠222と樹脂縦枠242との交差部位も同様に現れるため図示を省略する。
図9A図9Bに示すように、挿入溝部26に嵌合した状態の隣り合う横側アングル部材51、52と縦側アングル部材53、54との端部5a、5a同士は接触しておらず、両者間に所定の隙間Sをあけて配置されている。このため、端部5a、5a同士が干渉し合って取り付け作業を行い難くなるようなことがない。また、熱の影響により横側アングル部材51、52及び縦側アングル部材53、54に長手方向の伸びが生じるようなことがあっても、端部5a、5a同士が接触して干渉し合うことが避けられる。
【0032】
コーナー部材6は、図6A図6Bに示すように、枠体2の屋内側に取り付けられた横側アングル部材51、52と縦側アングル部材53、54との間のコーナー部に亘って取り付けられている。コーナー部材6は、横側アングル部材51、52の端部5aと縦側アングル部材53、54の端部5aとの間を覆うと同時に、横側アングル部材51、52の端部5aと縦側アングル部材53、54の端部5aとを額縁部材Gに固定する機能を有している。
【0033】
コーナー部材6は、横側アングル部材51、52の端部5aと縦側アングル部材53、54の端部5aとを額縁部材Gに取り付けるための基部61と、この基部61に対して覆うように嵌合するカバー部62と、を備えている。
【0034】
このコーナー部材6の基部61の構成の詳細を図10A図10B及び図11に示す。図10Aは、コーナー部材6の基部61を表面側から見た斜視図であり、図10Bは、コーナー部材6の基部61を裏面側から見た斜視図である。図11は、図10A中のA-A線に沿う断面図である。
基部61は、第1部分611と、第2部分612と、第1部分611及び第2部分612とを連結する連結部613と、を備えている。
【0035】
第1部分611及び第2部分612は、アングル部材本体501の幅と同程度の幅を有する矩形状の板状部材であり、連結部613を境にして対称形状を有している。第1部分611は、隣り合う横側アングル部材51、52と縦側アングル部材53、54とのうちの一方の端部5aに対して、その表面5c側から当接する部位である。また、第2部分612は、隣り合う横側アングル部材51、52と縦側アングル部材53、54とのうちの他方の端部5aに対して、その表面5c側から当接する部位である。
【0036】
第1部分611及び第2部分612には、それぞれネジ穴614が形成されている。各ネジ穴614の周囲には、第1部分611及び第2部分612の表面611a、612aから窪んだ環状の座面615がそれぞれ形成されている。これら2つの座面615は、第1部分611の表面611a及び第2部分612の表面612aに対して、互いに相反する方向(連結部613に向かう方向とは反対の方向、図11における左右方向)に傾斜するように設けられている。
【0037】
第1部分611及び第2部分612の裏面611b、612bには、それぞれネジ穴614の近傍から互いに近接する方向(連結部613に向かう方向)に延びる係合突起616が形成されている。係合突起616は、隣り合う横側アングル部材51、52と縦側アングル部材53、54のそれぞれの切り欠き部503と係合可能な形状に形成されている。
【0038】
なお、この基部61において、上記のネジ穴614、座面615及び係合突起616は、アングル部材5の切り欠き部503と同様に、第1部分611及び第2部分612の幅方向の中央部よりも一方側(屋内側)に偏って配置されている。
【0039】
第1部分611及び第2部分612の裏面611b、612bには、それぞれの相反する端部(連結部613側とは反対側の端部)に、第1の係合溝部617が1つずつ形成されていると共に、第1部分611及び第2部分612の両側部に、第2の係合溝部618が2つずつ形成されている。第1の係合溝部617は、後述するカバー部62の突板部627と係合可能な部位であり、第2の係合溝部618は、後述するカバー部62の一対の突起部626と係合可能な部位である。
【0040】
第1部分611、第2部分612及び連結部613は、例えば塩化ビニル等の樹脂によって一体に成形されているが、連結部613は、第1部分611及び第2部分612に比較して薄肉で軟質の帯状に形成されている。このため、連結部613は、第1部分611と第2部分612とを任意の角度で折り曲げ可能であり、本実施形態のように枠体2の縦横が直交する窓形状に限らず、例えば台形窓等のように、枠体の縦横が直角以外の角度で交差する窓形状であっても、その角度に応じて第1部分611と第2部分612を容易に折り曲げることができる。
【0041】
次に、コーナー部材6のカバー部62の構成の詳細を図12図15に示す。図12は、カバー部62を屋内側且つ表面側から見た斜視図である。図13は、図12に示すカバー部をB方向から見た拡大図である。図14は、図12に示すカバー部をC方向から見た拡大図である。図15は、図14中のD-D線に沿う断面図である。
カバー部62は、基部61の第1部分611と第2部分612とのうちの一方を覆う大きさに形成される矩形状の第1カバー部621と、基部61の第1部分611と第2部分612とのうちの他方を覆う大きさに形成される矩形状の第2カバー部622と、を備えている。第1カバー部621と第2カバー部622とは、L字型に直交するように一体に連結されている。このカバー部62は、基部61と同様の樹脂によって、第1部分611及び第2部分612と同程度の硬度に成形されている。
【0042】
カバー部62の両側面には、第1カバー部621と第2カバー部622とに亘ってL字型に形成された屋内側側面板623と屋外側側面板624とが一体に形成されている。このうちの屋内側側面板623は、屋外側側面板624に比べて幅広に形成され、横側アングル部材51、52及び縦側アングル部材53、54の各屋内側側面5bを覆うように構成されている(図6A図6B参照)。一方、屋外側側面板624は、アングル部材5の表面5cに当接するように構成されている(図19A図19B参照)。
【0043】
第1カバー部621と第2カバー部622の裏面側には、屋内側側面板623と屋外側側面板624との端部同士を連結する傾斜壁部625がそれぞれ形成されている。屋内側側面板623は、第1カバー部621から第2カバー部622の全長に亘って形成されているのに対し、屋外側側面板624は、第1カバー部621と第2カバー部622の両端まで届いておらず、屋内側側面板623の全長よりも僅かに短く形成されている。このため、第1カバー部621に配置される傾斜壁部625は、屋内側よりも屋外側が第2カバー部622側に近寄って位置し、第2カバー部622に配置される傾斜壁部625は、屋内側よりも屋外側が第1カバー部621側に近寄って位置している。従って、いずれの傾斜壁部625も、屋内側側面板623とのなす角度が90°未満の鋭角とされ、屋外側側面板624とのなす角度が90°を超える鈍角とされている。
【0044】
屋内側側面板623及び屋外側側面板624の第1カバー部621側に配置される部位には、それぞれ内側に向けて突出する一対の突起部626、626が一体に形成されている。また、第2カバー部622に配置される傾斜壁部625の中央縁部には、内側に向けて突出する1つの突板部627が一体に形成されている。突起部626は、基部61の第1部分611と第2部分612とのうちのいずれか一方の第1の係合溝部617と係合可能な部位であり、突板部627は、基部61の第1部分611と第2部分612とのうちのいずれか他方の第2の係合溝部618と係合可能な部位である。
【0045】
次に、このコーナー部材6を用いて横側アングル部材51、52と縦側アングル部材53、54とを額縁部材Gに取り付ける方法について、図16図18を用いて説明する。図16は、隣り合う横側アングル部材52と縦側アングル部材53とをコーナー部材6を用いて取り付ける様子を示す図である。図17は、コーナー部材6の基部61を額縁部材Gにネジ留めした状態を示す断面図である。図18は、枠体2の四隅の基部61にそれぞれカバー部62を嵌合させる様子を屋内側から見た図である。
先ず、隣り合う横側アングル部材52の端部5aと縦側アングル部材53の端部5aとに亘って、基部61を取り付ける。
【0046】
即ち、縦側アングル部材53の切り欠き部503に、基部61の第1部分611の係合突起616を係合させると共に、横側アングル部材52の切り欠き部503に、基部61の第2部分612の係合突起616を係合させ、第1部分611と第2部分612を縦側アングル部材53と横側アングル部材52の表面5cにそれぞれ当接させる。このとき、係合突起616は、縦側アングル部材53と横側アングル部材52との長手方向の伸び移動を許容し得るように、切り欠き部503に対して長手方向の伸び代を残して緩く装着されることが望ましい。切り欠き部503及び係合突起616は、いずれも屋内側に偏って配置されているため、基部61を取り付ける際の第1部分611及び第2部分612の向きは自ずと決められ、誤装着のおそれはない。
【0047】
連結部613は、第1部分611と第2部分612とを折り曲げ可能に連結しているため、第1部分611と第2部分612を直角に容易に折り曲げることができる。折り曲げられた連結部613は、横側アングル部材52と縦側アングル部材53との間の隙間Sに収容される。
【0048】
次いで、基部61の第1部分611及び第2部分612のそれぞれのネジ穴614にネジ600を挿入し、第1部分611及び第2部分612を額縁部材Gにネジ留めする。これにより、横側アングル部材52と縦側アングル部材53のそれぞれの端部5a、5aが、基部61を介して額縁部材Gに固定される。
【0049】
このとき、各ネジ穴614の周囲の座面615は、互いに相反する方向に傾斜しているため、図17に示すように、ネジ600の挿入方向は、それぞれ内側の連結部613側(コーナー部側)に向けて傾斜した方向となる。このため、電動ドライバー等の工具を使用する際、隣り合う横側アングル部材52又は縦側アングル部材53や額縁部材Gと工具とが干渉し難くなり、基部61の取り付けを行い易くすることができると共に、基部61及びカバー部62を可及的に小型化することができる。また、横側アングル部材52と縦側アングル部材53の切り欠き部503及び基部61のネジ穴614は、いずれも屋内側に偏って配置されているため、額縁部材Gの屋外側縁部G1から屋内側に離れた位置にネジ600が挿入される。このため、ネジ600による屋外側縁部G1の欠けや割れ等の発生を回避できる。
【0050】
他の隣り合う横側アングル部材52と縦側アングル部材54との間、横側アングル部材51と縦側アングル部材53との間及び横側アングル部材51と縦側アングル部材54との間も、上記と同様にしてそれぞれ基部61が取り付けられる。
【0051】
次いで、基部61にカバー部62を嵌合させて取り付ける。カバー部62の取り付けは、図16に示すように、カバー部62の屋内側側面板623が屋内側に配置され、第2カバー部622が横側アングル部材52の表面5cに配置される態勢で、基部61の第1部分611に向けて移動させることにより行う。これにより、カバー部62の第1カバー部621が、基部61の第1部分611に対して覆うように嵌合すると共に、第2カバー部622が、基部61の第2部分612に対して覆うように嵌合する。このとき、第2カバー部622の突板部627が、基部61の第2部分612に配置される第1の係合溝部617内に挿入されて係合すると同時に、第1カバー部621の突起部626が、基部61の第1部分611に配置される第2の係合溝部618に弾性的に嵌まり込んで係合する。
【0052】
他の隣り合う横側アングル部材52と縦側アングル部材54との間、横側アングル部材51と縦側アングル部材53との間及び横側アングル部材51と縦側アングル部材54との間の各基部61にも、上記と同様にしてそれぞれカバー部62が取り付けられる。カバー部62の屋内側側面板623は常に屋内側に配置されるため、図18に示すように、突板部627を有する第2カバー部622側が、縦側アングル部材54、縦側アングル部材53及び横側アングル部材51の各表面5cにそれぞれ配置された態勢で、カバー部62を矢印に示すように基部61に向けて移動させることにより取り付けられる。
【0053】
これにより構成される建具1は、各アングル部材5の四隅の隙間S及び基部61がカバー部62によって覆われ、基部61をネジ留めしているネジ600の頭部が目視されることはない。全てのアングル部材5は、基部61の第1部分611及び第2部分612を介して額縁部材Gに固定されるため、コーナー部材6、6間のアングル部材5の表面5cに固定用ネジの頭部が露出することがなく、アングル部材5の見栄えが良好となり、建具1の意匠性が、より向上する。また、アングル部材5は枠体2と別体であるため、建具1は、建物の躯体に取り付ける前の枠体2からアングル部材5を取り外しておくことができる。これにより、枠体2を収納する際にコンパクトに重ねることが可能となる。
【0054】
ここで、下横枠22側に配置される2つのコーナー部材6におけるカバー部62の傾斜壁部625の作用について、図19A図19Bを用いて説明する。図19Aは、下横枠22側に配置される横側アングル部材52と縦側アングル部材53との間に配置されるコーナー部材6のカバー部62を示す図であり、図19Bは、下横枠22側に配置される横側アングル部材52と縦側アングル部材54との間に配置されるコーナー部材6のカバー部62を示す図である。
これら下横枠22側に配置される2つのコーナー部材6において、縦側アングル部材53、54と当接する第1カバー部621及び第2カバー部622の各傾斜壁部625は、いずれも屋外側に向けて下り傾斜する。これにより、縦側アングル部材53、54の表面に発生した結露水が傾斜壁部625まで流下した際、図中矢印で示すように、結露水は傾斜壁部625の傾斜に沿って屋外側に排水され、屋内側に流れ出すことはない。このため、屋内側の額縁部材Gの表面が結露水によって汚染されるおそれはない。
【0055】
以上の実施形態は、アングル部材5の端部5aに切り欠き部503を形成した例を挙げたが、この切り欠き部503に代えて、図20に示すように、長手方向に沿って長い長穴507を形成してもよい。長穴507の長手方向に沿う長さは、係合突起616の長さよりも長く形成される。これにより、長穴507と係合突起616との間に、アングル部材5の長手方向の伸縮移動を許容する程度の隙間が形成可能であるため、アングル部材5の長手方向の伸縮移動が係合突起616によって阻害されるおそれはない。
【0056】
また、以上の実施形態は、アングル部材5が差し込み部502を有し、この差し込み部502が、枠体2に形成された挿入溝部26内に挿入されることによって、アングル部材5が枠体2に取り付けられる例を挙げたが、これに限定されない。図21に示すように、アングル部材5が挿入溝部508を有し、枠体2が、額縁部材Gの厚み方向に延びる差し込み部201を有してもよい。この場合は、アングル部材5の挿入溝部508内に枠体2の差し込み部201を挿入することによって、アングル部材5が枠体2に取り付けられる。アングル部材5には、風雨の浸入を阻止するためのヒレ部509を屋外側の側縁部に設ける構成とすることもできる。建具1の全てのアングル部材5が、図21に示すアングル部材5により構成されてもよいし、差し込み部502を有するアングル部材5と、挿入溝部508を有するアングル部材5とが、同じ建具1に併用されてもよい。
【0057】
本発明に係る建具1は、以上の実施形態に示した開き窓に限らず、引き違い窓等の他の窓構造にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 建具
2 枠体
21 上横枠
22 下横枠
23、24 縦枠
26、508 挿入溝部
5 アングル部材
5a アングル部材の端部
5c アングル部材の表面
51、52 横側アングル部材
53、54 縦側アングル部材
502、201 差し込み部
503 切り欠き部
507 長穴
6 コーナー部材
61 基部
611 第1部分
612 第2部分
611b、612b 基部の裏面
613 連結部
614 ネジ穴
615 座面
616 係合突起
62 カバー部
625 傾斜壁部
G 額縁部材(躯体)
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21