(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】トイレ用接続管及び便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 11/17 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
E03D11/17
(21)【出願番号】P 2018087827
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2020-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】西尾 祐規
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 佑司
(72)【発明者】
【氏名】深川 雅史
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02021317(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0252384(US,A1)
【文献】米国特許第05197769(US,A)
【文献】実開昭51-018051(JP,U)
【文献】特開平08-311951(JP,A)
【文献】特開2013-117103(JP,A)
【文献】特開2012-136051(JP,A)
【文献】特開2002-195480(JP,A)
【文献】特開平09-203096(JP,A)
【文献】実開昭58-180968(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部と、
前記筒状部の外周面に形成された雄ねじ部と、を備え、
前記雄ねじ部は、2分され隣り合った第1雄ねじ部と第2雄ねじ部とを有し、前記第1雄ねじ部と前記第2雄ねじ部の間にはOリングが配置され、
前記筒状部は、前記Oリングを介して、排水口が形成された排水口形成部材を前記筒状部の内側に保持し、
前記Oリングに対向する前記筒状部の外周面の部分は、前記雄ねじ部が形成されていない外周面部を有するトイレ用接続管。
【請求項2】
前記筒状部の軸方向における前記第1雄ねじ部と前記第2雄ねじ部との間の長さは、前記Oリングの線径よりも長い請求項1に記載のトイレ用接続管。
【請求項3】
前記第1雄ねじ部には第1ナットが螺合されて固定され、
前記筒状部の軸方向において、前記第1ナットの内面に形成された雌ねじ部の高さは前記第1雄ねじ部と前記第2雄ねじ部との間の長さよりも大きい請求項2に記載のトイレ用接続管。
【請求項4】
便器本体と、前記便器本体の上方に配置される洗浄水タンクと、を備える便器装置の前記洗浄水タンクの底部に設けられ
た前記排水口形成部材を支持する請求項1~請求項3のいずれかに記載のトイレ用接続管。
【請求項5】
便器本体と、
前記便器本体の上方に配置される洗浄水タンクと、
前記洗浄水タンクに設けられたトイレ用接続管と、
前記トイレ用接続管の外周面に形成された雄ねじ部と、
前記トイレ用接続管の内周面に設けられたOリングと、
排水口が形成され、前記Oリングを介して前記トイレ用接続管に支持される排水口形成部材と、を備え、
前記雄ねじ部は、2分され隣り合った第1雄ねじ部と第2雄ねじ部とを有し、前記第1雄ねじ部と前記第2雄ねじ部の間には前記Oリングが配置され、
前記Oリングを介して、排水口が形成された排水口形成部材を内側に保持する筒状部を備え、
前記Oリングに対向する前記トイレ用接続管の外周面の部分は、前記雄ねじ部が形成されていない外周面部を有する便器装置。
【請求項6】
前記洗浄水タンクは、ブロー成形により成形された樹脂材料によって構成されている請求項5に記載の便器装置。
【請求項7】
便器本体と、前記便器本体の上方に配置される洗浄水タンクと、を備える便器装置に設けられるトイレ用接続管であって、
筒状部と、
前記筒状部の外周面に形成された雄ねじ部と、を備え、
前記筒状部の径方向において、前記筒状部の内周面に配置されたOリングに対向する前記筒状部の外周面の部分は、前記雄ねじ部が形成されていない外周面部を有し、
前記筒状部は、前記Oリングを介して、排水口が形成された排水口形成部材を前記筒状部の内側に保持し、
前記雄ねじ部は、前記筒状部の軸方向において前記外周面部によって少なくとも2分された第1雄ねじ部と第2雄ねじ部とを有するトイレ用接続管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ用接続管及び便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器洗浄タンクと、便器洗浄タンクの底部に取り付けられ排水口が形成された排水口形成部材と、を備える便器装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。便器洗浄タンクの底部には、筒状の開口部が形成されており、筒状の開口部の内部には、排水口が形成された排水口形成部材がOリングを介して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている便器洗浄タンクは、金型において樹脂が射出成形されて構成されるが、便器洗浄タンクの薄型化の要求により、ブロー成形により便器洗浄タンクが成形されることが考えられる。
【0005】
しかし、ブロー成形により便器洗浄タンクを成形する場合には、便器洗浄タンクの底部に、排水口が形成された排水口形成部材を保持するための、筒状の開口部を形成することはできず、貫通孔が形成される。このため、ブロー成形により便器洗浄タンクを成形する場合には、便器洗浄タンクの底部に形成された貫通孔に、排水口が形成された排水口形成部材を保持するための管状部材(筒状の部材)を取り付ける必要がある。しかし、管状部材を便器洗浄タンクの底部に固定するために管状部材の外周面に雄ねじが形成されると、偏肉により、管状部材の外周面にいわゆる「ヒケ」により変形が生じて、Oリングによる、管状部材の内周面と排水口形成部材との間のシールを確実とすることができなくなる。
【0006】
本発明は、便器洗浄タンクの底部の貫通孔に取り付けられた管状部材であるトイレ用接続管と排水口形成部材との間のシールを確実にするトイレ用接続管及び便器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、筒状部(例えば、後述の筒状部464)と、前記筒状部の外周面に形成された雄ねじ部(例えば、後述の雄ねじ部4641)と、を備え、前記雄ねじ部は、2分され隣り合った第1雄ねじ部(例えば、後述の第1雄ねじ部4642)と第2雄ねじ部(例えば、後述の第2雄ねじ部4643)とを有し、前記第1雄ねじ部と前記第2雄ねじ部の間にはOリング(例えば、後述のOリング26b)が配置されるトイレ用接続管に関する。
【0008】
また、前記筒状部の軸方向における前記第1雄ねじ部と前記第2雄ねじ部との間の長さ(例えば、後述の高さL1)は、前記Oリングの線径(例えば、後述の高さL2)よりも長いことが好ましい。
【0009】
また、前記第1雄ねじ部には第1ナット(例えば、後述の締付けナット46b)が螺合されて固定され、前記第1ナットの内面に形成された雌ねじ部の高さ(例えば、後述の高さL3)は前記第1雄ねじ部と前記第2雄ねじ部との間の長さよりも大きいことが好ましい。
【0010】
また、便器本体(例えば、後述の便器本体21)と、前記便器本体の上方に配置される洗浄水タンク(例えば、後述の便器洗浄タンク4)と、を備える便器装置(例えば、後述の便器装置1)の前記洗浄水タンクの底部に設けられ、前記Oリングを介して、排水口(例えば、後述の排水口26f)が形成された排水口形成部材(例えば、後述の接続ソケット26)を支持することが好ましい。
【0011】
また、本発明は、便器本体(例えば、後述の便器本体21)と、前記便器本体の上方に配置される洗浄水タンク(例えば、後述の便器洗浄タンク4)と、前記洗浄水タンクに設けられたトイレ用接続管(例えば、後述の弁座シート46)と、前記トイレ用接続管の外周面に形成された雄ねじ部(例えば、後述の雄ねじ部4641)と、前記トイレ用接続管の内周面に設けられたOリング(例えば、後述のOリング26b)と、排水口(例えば、後述の排水口26f)が形成され、前記Oリングを介して前記トイレ用接続管に支持される排水口形成部材(例えば、後述の接続ソケット26)と、を備え、前記雄ねじ部は、2分され隣り合った第1雄ねじ部(例えば、後述の第1雄ねじ部4642)と第2雄ねじ部(例えば、後述の第2雄ねじ部4643)とを有し、前記第1雄ねじ部と前記第2雄ねじ部の間にはOリング(例えば、後述のOリング26b)が配置される便器装置に関する。
【0012】
また、前記洗浄水タンクは、ブロー成形により成形された樹脂材料によって構成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、便器本体(例えば、後述の便器本体21)と、前記便器本体の上方に配置される洗浄水タンク(例えば、後述の便器洗浄タンク4)と、を備える便器装置(例えば、後述の便器装置1)に設けられるトイレ用接続管(例えば、後述の弁座シート46)であって、筒状部(例えば、後述の筒状部464)と、前記筒状部の外周面に形成された雄ねじ部(例えば、後述の雄ねじ部4641)と、を備え、前記筒状部の径方向において、前記筒状部の内周面に配置されたOリング(例えば、後述のOリング26b)に対向する前記筒状部の外周面の部分は、前記雄ねじ部が形成されていない外周面部(例えば、後述の外周面部4644)を有し、前記雄ねじ部は、前記筒状部の軸方向において前記外周面部によって少なくとも2分された第1雄ねじ部(例えば、後述の第1雄ねじ部4642)と第2雄ねじ部(例えば、後述の第2雄ねじ部4643)とを有するトイレ用接続管に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、便器洗浄タンクの底部の貫通孔に取り付けられた管状部材であるトイレ用接続管と排水口形成部材との間のシールを確実にするトイレ用接続管及び便器装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明に係る便器装置の便器洗浄装置の一部を分解して示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る便器装置の便器洗浄タンクと便器本体との接続構造を説明する断面図である。
【
図4】本発明に係る便器装置の便器洗浄タンクと便器本体との接続構造を説明する拡大断面図である。
【
図5】本発明に係る便器装置の弁座シートを示す側面図である。
【
図6】本発明に係る便器装置の弁座シートに締付けナットが取り付けられた様子を示す側面図である。
【
図7】本発明に係る便器装置の弁座シートを示す下方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に示す便器装置1は、
図1に示すように、便器2と、便器洗浄装置3と、を備えている。なお、以下の説明において、便器2に着座した使用者から見た場合の前後の向きを前後方向とする。また、便器2に着座した使用者から見た場合の左右の向きを幅方向とする。更に、便器2が設置される床面に対する鉛直方向に沿う上下の向きを上下方向とする。
【0017】
便器2は、便器本体21の上部に回動可能に取り付けられた便座22及び便蓋23と、便座装置の機能部24と、を有している。この便器2は、フラッシュバルブ式の便器であり、
図2及び
図3に示すように、便器本体21の後部の上面21aに、上方に突出するスパッド25を有している。スパッド25は、
図3に示すように、便器本体21に形成された洗浄水流入口21bに、パッキン25a及びナット25bを介して取り付けられている。
【0018】
便器洗浄装置3は、
図1に示すように、便器洗浄タンク4と、便器洗浄タンク4を覆うタンクカバー5と、を有している。タンクカバー5の側面には、洗浄操作用のレバーハンドル5aが設けられている。
便器洗浄タンク4は、
図2に示すように、タンク本体41と、内蓋42と、ベースプレート43と、防露材44と、補強フレーム45と、を備えている。なお、
図2では、便座22、便蓋23、機能部24、レバーハンドル5aの図示を省略している。
【0019】
タンク本体41は、ブロー成形品であり、ブロー成形により成形された樹脂部材により構成されている。このタンク本体41は、射出成形品のような離型のための抜き勾配を上下方向に設ける必要がないため、タンク本体41の外周面は、上下方向に沿って真っ直ぐな面となり、床面に対して垂直に延びた側壁面を構成することができる。このため、抜き勾配に起因するタンク容積の減少が少なく、射出成形品に比べてタンク容積を大きく確保することが可能である。タンク本体41の内部には洗浄水が貯留されると共に、便器洗浄用の公知の内部部品(図示せず)が収容されている。
内蓋42は、タンク本体41の上部を被蓋するようにタンク本体41に対してねじ止めされている。
【0020】
ベースプレート43は、タンク本体41の下部に取り付けられている。ベースプレート43は、タンク本体41よりも硬質な樹脂によって形成され、タンク本体41の底面形状に略等しい平面形状を有している。
【0021】
タンク本体41とベースプレート43との取付け構造を
図3に示す。
図3に示すように、タンク本体41の底面411に、円形の貫通孔である下面開口部412が形成されている。この下面開口部412には、接続管としての略円筒状の弁座シート46が貫通して固定され装着されている。弁座シート46は、タンク本体41の内部部品の一つであるフラッパー弁(図示せず)の弁座を構成する部品であり、下面開口部412よりも大径なフランジ部461を有している。弁座シート46は、フランジ部461とタンク本体41との間に平パッキン46aを挟むようにして、タンク本体41の内側から装着されている。弁座シート46は、フランジ部461よりも下方側に、外周面に雄ねじ部4641(
図5等参照)を有する円筒部462を一体に有し、この円筒部462が下面開口部412から下方に突出している。弁座シート46は、下面開口部412から突出する円筒部462に、タンク本体41の外側から締付けナット46bが螺合することにより、タンク本体41に取り付けられている。
【0022】
一方、ベースプレート43の中央部には、円形の開口部431が設けられ、この開口部431に、タンク本体41の下面から突出する弁座シート46の円筒部462が貫挿されている。
そして、この開口部431から下方に突出する円筒部462に締付けナット46cが螺合することにより、ベースプレート43が締付けナット46cとタンク本体41との間で挟着されている。これにより、タンク本体41の下部にベースプレート43が固定される。
【0023】
ベースプレート43の下面には、弁座シート46の円筒部462を挟むように、一対の突出部432が設けられ、この突出部432から、それぞれ緊締ボルト433が下方に向けて突出して設けられている。突出部432は、タンク本体41の下部から突出する弁座シート46の円筒部462の突出高さと同程度の突出高さを有している。緊締ボルト433は、便器本体21の上面21aに載置されるタンク取付けプレート6を固定している。
【0024】
タンク取付けプレート6は、矩形の平板状のプレート本体61と、プレート本体61の上面から上方に向けて突出する一対のボルト取付け脚部62と、を有している。プレート本体61には、一対のボルト取付け脚部62の間に円形の開口部63が設けられている。一対のボルト取付け脚部62は、ベースプレート43の一対の突出部432の位置に対応して設けられている。ボルト取付け脚部62は、便器本体21の上面21aからのスパッド25の突出高さと同程度の突出高さを有している。
【0025】
ベースプレート43の一対の緊締ボルト433は、このタンク取付けプレート6の一対のボルト取付け脚部62に、ナット433aによってそれぞれ固定される。これにより、ベースプレート43の一対の突出部432の先端とタンク取付けプレート6の一対のボルト取付け脚部62の先端とが当接し、ベースプレート43にタンク取付けプレート6が固定される。タンク取付けプレート6は、開口部63にスパッド25を貫挿させて便器本体21の後部側の上面21aに載置される。このとき、ベースプレート43の下面(便器洗浄タンク4の下面)43aは、スパッド25よりも上方に配置され、ベースプレート43とタンク取付けプレート6のプレート本体61との間には、スパッド25の全体を十分に収容可能な高さが確保される。
【0026】
図3に示すように、タンク本体41の下部から突出する弁座シート46の円筒部462と、便器本体21の上面21aから突出するスパッド25とは、内部にタンク本体41の排水口26fが形成された排水口形成部材としての円筒状の接続ソケット26によって接続されている。接続ソケット26の下端側は、スパッド25の内側に挿入され、袋ナット26aにより固定されている。接続ソケット26の上端側は、弁座シート46の円筒部462の内側に、Oリング26bによって水密状に挿入されている。これにより、タンク本体41内の洗浄水が、弁座シート46の円筒部462、接続ソケット26及びスパッド25を経由して、便器本体21に供給される。
【0027】
タンク取付けプレート6は、
図2に示すように、便器本体21の後部側の上面21aに設けられる一対の便座取付け穴21cに対応する一対の貫通穴64を有している。タンク取付けプレート6は、貫通穴64が便座取付け穴21cに合致するように、便器本体21の上面21aに載置される。そして、便座装置の機能部24の下面に突設される図示しない一対の取付けボルトが、タンク取付けプレート6の貫通穴64を貫通して便器本体21の便座取付け穴21cに挿入され、便器本体21を挟んでナット(図示せず)によって締め付けられることにより、機能部24が便器本体21に固定される。これにより、タンク取付けプレート6は、機能部24と便器本体21との間で挟持され、タンク取付けプレート6上の便器洗浄タンク4が便器本体21に固定される。このとき、ベースプレート43とタンク取付けプレート6のプレート本体61との間には、スパッド25の全体を十分に収容可能な高さが確保されているため、ベースプレート43と便器本体21の上面21a(タンク取付けプレート6のプレート本体61)との間に、スパッド25に対してアクセス可能な空間部が形成される。
【0028】
ここで、「スパッドに対してアクセス可能」とは、スパッド25及びスパッド25の周囲の部品(弁座シート46の円筒部462、締付けナット46c、接続ソケット26、袋ナット26a、ナット25b、緊締ボルト433、ナット433a等)の状況を直接目視可能であることのみならず、スパッド25及びスパッド25の周囲の部品に対して直接的に操作可能であることを含む。スパッド25及びスパッド25の周囲の部品に対する直接的な操作としては、便器洗浄タンク4の取り付け又は取り外しのために、接続ソケット26を固定する袋ナット26aや緊締ボルト433のナット433aを、工具を用いて回動操作することを含む。
【0029】
防露材44は、発泡スチロール樹脂等により、タンク本体41の外周面に沿う形状に成形されている。本実施形態に示す防露材44は、タンク本体41を前後方向から挟むように装着されている。
【0030】
補強フレーム45は、
図2に示すように、便器洗浄タンク4の両側面に配置される金属製の側面フレーム部材451と、便器洗浄タンク4の前面側に幅方向に延びるように配置される金属製の補強ステー452と、を有している。補強ステー452の両端部は、左右の側面フレーム部材451に連結されている。側面フレーム部材451は、ベースプレート43の幅方向の両端面43b(
図3参照)に対してそれぞれねじ止めされている。側面フレーム部材451は平面視コ字型に形成されている。
【0031】
補強フレーム45は、使用者が便器洗浄装置3に凭れ掛かった際に、その荷重を受けてタンク本体41に荷重を直接作用させないように機能する。補強ステー452に作用する荷重は、補強ステー452の両端部から各側面フレーム部材451に伝達される。側面フレーム部材451は、タンク本体41よりも堅牢なベースプレート43に固定されているため、補強ステー452から伝達される荷重を効果的に受け止めることができる。
【0032】
タンクカバー5は、便器洗浄タンク4の前方を覆う前カバー51と、便器洗浄タンク4の側方及び後方を覆う後カバー52と、便器洗浄タンク4の上方を覆う上カバー53と、を有している。後カバー52は、便器洗浄タンク4の両側方にそれぞれ設けられた側面フレーム部材451に対してねじ止めされる。前カバー51と上カバー53は、後カバー52に対して着脱可能に取り付けられる。前カバー51及び後カバー52は、
図1に示すように、便器洗浄タンク4の前方、側方及び後方を完全に覆っている。これにより、便器洗浄タンク4と接続されるスパッド25の周囲は、前カバー51及び後カバー52によって覆われるため、スパッド25が外部に露出せず、意匠性が向上する。前カバー51は、後カバー52に対して上下にスライド移動可能に取り付けられている。
【0033】
次に、弁座シート46の詳細について説明する。弁座シート46は、樹脂製であり、
図5等に示すように、上部流入部463と、筒状部464とを有している。
【0034】
上部流入部463は、主流入筒部4631と、オーバーフロー管接続筒部4632と、を有している。主流入筒部4631は、上端縁が円筒を斜めに切ったような形状の開口部4631aを有する円筒形状に形成されている。主流入筒部4631の下端部は、筒状部464の上端部と一体成形されることにより接続されている。主流入筒部4631の下端部よりも上寄りの部分には、主流入筒部4631の径方向外方へ突出するフランジ部461が設けられている。
【0035】
主流入筒部4631の中間部の側面には、オーバーフロー管接続筒部4632が接続されている。オーバーフロー管接続筒部4632は、主流入筒部4631の径方向外方へ向かって、主流入筒部4631の中間部の側面から延び、その後主流入筒部4631の軸心に平行に、主流入筒部4631の上端部よりも上方の位置に至るまで延びている。
【0036】
筒状部464は、円筒形状に形成されている。筒状部464の外周面には、雄ねじ部4641が形成されており、筒状部464の内周面には雄ねじ等が形成されておらず、円筒形状の筒状部464の内周面の曲面がそのまま残っている内周面部4646(
図7参照)により構成されている。雄ねじ部4641は、それぞれ同一のピッチ、外径、有効性、谷の径、ねじ山の角度、及び、ねじれ角を有する第1雄ねじ部4642と第2雄ねじ部4643とを有している。従って、後述の第1ナットとしての締付けナット46bは、第2雄ねじ部4643に螺合して上方向に移動したのちに、第1雄ねじ部4642に螺合可能である。
【0037】
図5に示すように、第1雄ねじ部4642は、第2雄ねじ部4643よりも上側、即ち、上部流入部463に近い側に位置している。第1雄ねじ部4642と第2雄ねじ部4643との間の部分は、雄ねじ部4641が形成されておらず、円筒形状の筒状部464の外周面の曲面がそのまま残っている外周面部4644により構成されている。
【0038】
第1雄ねじ部4642には、締付けナット46bが螺合されて固定される。具体的には、第1雄ねじ部4642の上端部には、第1雄ねじ部4642の上端部から第1雄ねじ部4642の径方向外方へ突出する第1ナットフランジ部466bが設けられている。
図4に示すように、第1ナットフランジ部466bの上面は、タンク本体41の底面の下面(外面)に当接している。タンク本体41の底面の上面(内面)は、貫通孔の周囲を取り巻くように配置された平パッキン46aの下面に当接している。平パッキン46aの上面は、フランジ部461の下面に当接している。従って、第1雄ねじ部4642に締付けナット46bが螺合されて固定されることによって、第1ナットフランジ部466bとフランジ部461とによって、タンク本体41の底面と平パッキン46aとが挟まれるようにして、タンク本体41の底面に弁座シート46が固定されている。
【0039】
第2雄ねじ部4643には、第2ナットとしての締付けナット46cが螺合されて固定される。具体的には、第2雄ねじ部4643の上端部には、第2雄ねじ部4643の上端部から第2雄ねじ部4643の径方向外方へ突出する第2ナットフランジ部466cが設けられている。
図4に示すように、第2ナットフランジ部466cの上面は、ベースプレート43の底面の下面に当接している。これにより、ベースプレート43は第2ナットフランジ部466cを介して弁座シート46によって支持されている。
【0040】
図4に示すように、弁座シート46の内周面により取囲まれる弁座シート46の内部空間には、接続ソケット26が設けられている。接続ソケット26は、それぞれ筒形状に形成された上部被支持部261と下部筒状部262とを有している。上部被支持部261の内周面は、上部被支持部261における最も上側に位置する部分において内径が最も大きく、その下側において上側の内径よりも内径が少し小さく、更に、その下側においてそのすぐ上側の内径から徐々に内径が小さくなる縮径部261aを有している。
【0041】
上部被支持部261の外周面には、上部被支持部261の外周面を一周するように形成されたOリング係合溝が形成されており、Oリング係合溝には、Oリング26bが嵌合し上部被支持部261に対して固定されている。
【0042】
Oリング係合溝に嵌合しているOリング26bの位置は、
図5に示すように、筒状部464の径方向において、雄ねじ部4641が形成されていない外周面部4644に対向する位置である。即ち、筒状部464の軸方向(
図5における上下方向)において、Oリング26bの上端から下端に至るまで、雄ねじ部4641が形成されていない外周面部4644が対向する位置関係になっている。弁座シート46の内周面と接続ソケット26の上部被支持部261との間がOリング26bによってシールされた状態で、接続ソケット26は弁座シート46に支持されている。
【0043】
図5に示すように、筒状部464の軸方向(
図5における上下方向)における、第1雄ねじ部4642と第2雄ねじ部4643との間の雄ねじ部4641が形成されておらず円筒形状の筒状部464の外周面の曲面がそのまま残っている外周面部4644の長さL1は、Oリング26bの線径L2(筒状部464の軸方向におけるOリング26b厚さ)よりも長い。また、筒状部464の軸方向における締付けナット46bの内面に形成された雌ねじ部の高さ(ナット46bの内面に形成された雌ねじ部の最上部と最下部との間の高さ)L3(
図6参照)は、筒状部464の軸方向における外周面部4644の長さL1(
図5参照)よりも大きい。
【0044】
図4に示すように、下部筒状部262は円筒形状を有しており、下部筒状部262の上端部は、上部被支持部261の下端部に一体成形されることにより接続されている。下部筒状部262の下部は、スパッド25に接続されている。
【0045】
以上説明した本実施形態の便器装置1によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態のトイレ用接続管としての弁座シート46は、筒状部464と、筒状部464の外周面に形成された雄ねじ部4641と、を備える。筒状部464の径方向において、筒状部464の内周面に配置されたOリング26bに対向する筒状部464の外周面の部分は、雄ねじ部4641が形成されていない外周面部4644を有している。雄ねじ部4641は、2分され隣り合った第1雄ねじ部4642と第2雄ねじ部4643とを有し、前記第1雄ねじ部4642と前記第2雄ねじ部4643の間にはOリング26bが配置される。
【0046】
また、本実施形態の便器装置100は、便器本体21と、便器本体21の上方に配置される便器洗浄タンク4と、便器洗浄タンク4に設けられた接続管としての弁座シート46と、弁座シート46の外周面に形成された雄ねじ部4641と、弁座シート46の内周面に設けられたOリング26bと、排水口が形成され、Oリング26bを介して弁座シート46に支持される接続ソケット26と、を備えている。
弁座シート46の径方向においてOリング26bに対向する弁座シート46の外周面の部分は、雄ねじ部4641が形成されていない外周面部4644を有する。雄ねじ部4641は、弁座シート46の軸方向において外周面部4644によって少なくとも2分された第1雄ねじ部4642と第2雄ねじ部4643とを有する。
【0047】
そして、弁座シート46は、便器洗浄タンク4の底部に設けられ、Oリング26bを介して、排水口が形成された接続ソケット26を支持する。
【0048】
そのため、Oリング26bに対向する筒状部464の外周面には雄ねじ部が形成されていないため、樹脂製の弁座シート46においてOリング26bに対向する部分にヒケが生じることを抑えることが可能となる。このため、弁座シート46と接続ソケット26との間において、確実にOリング26bによるシールを行うことができる。
【0049】
また、筒状部464の軸方向における外周面部4644の長さL1は、Oリング26bの線径L2よりも長い。そのため、Oリング26bが当接してシールする弁座シート46の内面において、ヒケによる変形が生ずることを確実に抑えることができる。この結果、Oリング26bによるシールをより確実に行うことができる。
【0050】
また、第1雄ねじ部4642には締付けナット46bが螺合されて固定され、筒状部464の軸方向において、締付けナット46bの内面に形成された雌ねじ部の高さL3は外周面部4644の長さL1よりも大きい。
【0051】
そのため、締付けナット46bを第2雄ねじ部4643に螺合させて回転させて上方向に移動させて、外周面部4644を通過させた後に、更に回転させて、締付けナット46bの下部が第2雄ねじ部4643に螺合した状態で、締付けナット46bの上部を第1雄ねじ部4642に螺合させることができる。即ち、締付けナット46bが第1雄ねじ部4642と第2雄ねじ部4643との間において第1雄ねじ部4642と第2雄ねじ部4643のいずれにも螺合していない状態となることを防止できる。
【0052】
このため、締付けナット46bを第1雄ねじ部4642に螺合させようとするときに、第1雄ねじ部4642と第2雄ねじ部4643との間の外周面部4644の位置で空回りをして、第1雄ねじ部4642に螺合しにくくなることを防止することができる。この結果、締付けナット46bの第1雄ねじ部4642への組付けをスムーズにすることができる。
【0053】
便器洗浄タンク4は、ブロー成形により成形された樹脂材料によって構成されている。そのため、便器洗浄タンク4の底部には、排水口26fが形成された接続ソケット26を支持する筒状の部分を形成することができず貫通孔による開口部412が形成されるのであるが、このような貫通孔に弁座シート46を固定して、接続ソケット26を固定することが可能となる。
【0054】
以上、本発明の便器装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、接続管としての弁座シート46は、便器洗浄タンク4の底部に固定されて、接続ソケット26を支持するために用いられたが、この構成に限定されない。即ち、接続管は、洗浄水タンクの底部以外の部分に用いられてもよく、また、洗浄水タンク以外の部分に用いられてもよい。
また、接続管により支持されるものは、接続ソケット26でなくてもよい。また、雄ねじ部4641は、第1雄ねじ部4642と第2雄ねじ部4643との2つの雄ねじ部を有していたが、この構成に限定されない。また、第1雄ねじ部4642と第2雄ねじ部4643とは、それぞれ第1雄ねじ部4642を螺合可能に構成されていたが、この構成に限定されない。
【0055】
また、本実施形態では、便器装置1は、便器2が床面f1に設置される床置きタイプの便器装置であったが、これに限定されない。例えば、いわゆる壁掛け式の便器装置であってもよい。この場合には、接続ソケットは下部筒状部を有しておらず、壁側から延び途中で上方向に屈曲して上方向に延びる洗浄管の上端部が、接続ソケットの上部被支持部に下側から挿入され、ナットにより上部被支持部に固定される。
【符号の説明】
【0056】
1 便器装置
4 便器洗浄タンク(洗浄水タンク)
21 便器本体
26 接続ソケット(排水口形成部材)
26b Oリング
46 弁座シート(トイレ用接続管)
46b 締付けナット(第1ナット)
412 下面開口部(開口部)
464 筒状部
4641 雄ねじ部
4642 第1雄ねじ部
4643 第2雄ねじ部
4644 外周面部
L1 外周面部の長さ
L2 Oリングの線径
L3 第1ナットの内面に形成された雌ねじ部の高さ