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特許70394052つの異なる炎を交互に放出できるライタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】2つの異なる炎を交互に放出できるライタ
(51)【国際特許分類】
   F23Q 2/16 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
F23Q2/16 C
F23Q2/16 102Z
F23Q2/16 101Z
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018126699
(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公開番号】P2019015496
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】1756438
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】397063202
【氏名又は名称】エス テー デュポン
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マニリエ パスカル
(72)【発明者】
【氏名】シェヴィ アントニー
(72)【発明者】
【氏名】テュルコ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フシェ シルヴィ
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-022754(JP,U)
【文献】特開昭51-084368(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01199655(GB,A)
【文献】特表2005-509838(JP,A)
【文献】実開昭54-044176(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0123017(US,A1)
【文献】特開平06-109247(JP,A)
【文献】実公昭47-003887(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0187446(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料の容器(16)と、
第1のタイプの炎(2)を生成するための第1のガス回路(26)と、
第2のタイプの炎(3)を生成するための第2のガス回路(24)と、
火花を生成するための機構(14、15)と関連付けられたドライバ(6)と、
を備えるライタ(1)において、
前記ドライバ(6)の形状は、円筒形状であり、
前記ドライバ(6)は、火花を生成し且つ、炎を瞬時に得るために、親指の素早い動作によってその回転軸回りに回転させられ、
前記ドライバ(6)は、名目上の第1の位置と第2の位置との間において前記回転軸に沿って並進移動できるように前記ライタ(1)に取り付けられ、
前記第1の位置では、前記第1のタイプの炎(2)を得るために、前記ドライバ(6)は、前記容器(16)からの前記液体燃料が前記第1の回路(26)を通過できるように前記第1の回路(26)を開けておき、
前記第2の位置では、前記第2のタイプの炎(3)を得るために、前記ドライバ(6)は、前記液体燃料が前記第2の回路(24)を通過できるように前記第1の回路(26)を遮断する、ライタ(1)。
【請求項2】
前記第1の回路(26)は、前記第1の回路(26)の少なくとも一部分を含むと共に、前記第1の回路(26)を開く位置と閉じる位置との間で移動可能な遮断部材(42)を備え、
前記ドライバ(6)は、前記遮断部材(42)と接触していることで、既定で前記第1の位置において、前記ドライバ(6)が前記遮断部材(42)を前記開位置に保持し、
前記ドライバ(6)の前記第2の位置に向かう並進移動は、同一の振幅の前記遮断部材(42)の前記閉位置への移動を生じさせる、請求項1に記載のライタ。
【請求項3】
前記遮断部材(42)は、予荷重が加えられたばね(43)と関連付けられ、
前記ばね(43)は、前記遮断部材(42)が既定で前記開位置に保持されることを可能にすると共に、前記ドライバ(6)が既定で前記第1の位置に保持されることを可能にする、請求項2に記載のライタ。
【請求項4】
前記ドライバ(6)の前記第1の位置から前記第2の位置への移動は、前記ばね(43)の圧縮を伴う前記閉位置への前記遮断部材(42)の移動を引き起こす、請求項3に記載のライタ。
【請求項5】
前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記ドライバ(6)の最大移動距離は、0.5mm以上3mm以下である、請求項1から4のうちいずれか一項に記載のライタ。
【請求項6】
前記ドライバ(6)が細長い円筒形の部材であり、
前記ライタ(1)内の前記ドライバ(6)の並進移動は、回転軸(19)に沿って実現される、請求項1から5のうちいずれか一項に記載のライタ。
【請求項7】
前記第1のタイプの炎が黄色炎(2)であり、前記第2のタイプの炎がターボ炎(3)であることを特徴とする、請求項1から6のうちいずれか一項に記載のライタ。
【請求項8】
前記第1の回路(26)は、第1の拡散要素(13)で終端し、
前記黄色炎(2)が前記第1の拡散要素(13)の位置で生成され、
前記第2の回路(24)は、第2の拡散要素(32)で終端し、
前記ターボ炎(3)が前記第2の拡散要素(32)の位置で生成され、
前記2つの拡散要素(13、32)は、前記ライタ(1)の同一の面(7)から出現し、
前記第2の拡散要素(32)は、前記第1の拡散要素(13)よりも高い位置に出現する、請求項7に記載のライタ。
【請求項9】
前記第1の拡散要素(13)は、黄色炎(2)を2つの連続的な部分に生成可能な2つの異なるオリフィスを有し、
前記黄色炎(2)の前記2つの部分のうちの一方は、前記ターボ炎(3)の点火を可能にする向きを有することを特徴とする、請求項8に記載のライタ。
【請求項10】
前記第1の拡散要素(13)と前記第2の拡散要素(32)との高低差が、1mm以上3mm以下である、請求項8または9のいずれか一項に記載のライタ。
【請求項11】
液体燃料の前記容器(16)は、閉鎖要素(17)によって遮断され、
前記ライタ(1)は、中継部材(20、22)によって前記閉鎖要素(17)に連結された旋回キャップ(5)を含み、
前記キャップ(5)を開けることで、前記第1の回路(26)または前記第2の回路(24)へ前記ガスを放出するために、前記閉鎖要素(17)が前記中継部材(20、22)を介して動かされる、請求項1から9のうちいずれか一項に記載のライタ。
【請求項12】
請求項1から10のうちいずれか一項に記載のライタを使用する方法であって、
前記ライタ(1)の前記容器(16)に液体燃料を充填するステップと、
前記ライタ(1)の前記第1および第2の回路(24、26)に前記ガスを放出するために、前記キャップ(5)を開くステップと、
親指の素早い動作によって円筒状の前記ドライバ(6)を前記回転軸回りに回転させることで、火花を生成し、且つ前記第1のタイプの炎(2)を得るステップと、
前記ドライバ(6)を前記第1の位置と前記第2の位置の間において前記回転軸に沿って並進移動させることで、前記第1の回路(26)を遮断しつつ、前記第2の回路(24)を作動させて、前記第2のタイプの炎(3)を得るステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの異なる炎を交互に放出できるライタに関する。
【背景技術】
【0002】
ライタの中には、従来の黄色炎とターボ炎すなわち青色炎とを交互に放出できるように設計されているものがある。このターボ炎すなわち青色炎は、広がりの小さい円錐状の炎であり、ガス排出速度がより高速の状態で得られる。黄色炎は一般に、たばこまたは葉巻を点火するものとして十分であり、ターボ炎はそれよりも、例えば急速に再点火するためなど、葉巻の特定の区画を局所的かつ迅速に加熱するためのものである。
【0003】
現在市販されている、こういった2つのタイプの炎を交互に得ることを可能にするライタは、2つの異なるボタンを必要としており、そういったボタンはそれぞれ、特定の炎を得るよう明確に専用化されている。さてこのタイプのライタの主な不利な点とは、一方の炎からもう一方の炎への移行が複雑だということである。というのは、こういった移行の際は、必要なボタンを利用できるよう手中のライタの位置を変えたり、両手でライタを操作したりする必要があるからである。前者の場合は、ライタが使用者からすり抜け、地面に落ちる可能性がある。後者の場合は、使用者は、ライタの操作で両手がすでにふさがっている一方で、さらにたばこまたは葉巻を操作しなければならないため、困難な操作を行う必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1に、2つの異なるタイプの炎、つまり従来の黄色炎と耐風炎とを提供できるライタが記載されている。黄色炎は、サムホイールとフリントを含んだ点火装置によって生成され、耐風炎は、電子式の点火機構を利用して生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6884063号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によるライタは、従来技術のライタの上述の不利な点を伴わずに、2つの異なる炎を交互に生成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の本質は、液体燃料の容器と、第1のタイプの炎を生成するための第1のガス回路と、第2のタイプの炎を生成するための第2のガス回路とを備えるライタにおいて、火花を生成するための機構と関連付けられたドライバをさらに備え、上記ドライバの回転の作動が火花を発生させる、ライタにある。
【0008】
本発明によるライタの主な特徴は、上記ドライバが、名目上の第1の位置と第2の位置との間で並進移動できるように、上記ライタに取り付けられ、上記第1の位置では、上記容器からの上記液体燃料が上記第1の回路を通過することを可能にするために、したがって上記第1のタイプの炎を得るために、上記ドライバが上記第1の回路を開けておき、上記第2の位置では、上記液体燃料が上記第2の回路を通過することを可能にするために、したがって上記第2のタイプの炎を得るために、上記ドライバが上記第1の回路を遮断する、という点である。文言「ドライバ」は、火花を発生させ、炎を瞬時に得るために、親指を素早く動かすことによって回転される、全体的に円筒形の形状をした部材を示す。上記の種類のライタの原理は、このドライバに、火花を生成する機能に加えて、2つのガス回路間を切り換える機能を追加することによって、そのドライバを多機能化することである。こうして、好ましくは親指によって加えられた単純な一押しでドライバをライタ内で並進移動させることによって、使用者は、第1または第2のタイプの炎を、必要に応じて自在かつ容易に選択できる。使用者は、火花を生成するためにも、2つの回路を切り換えるためにも、これらの2つの機能がドライバに集められていることから、手中のライタの位置を変える必要はない。1つの拡散要素の位置で1つの炎が形成され、その拡散要素へと通じるガスの流路を、1つのガス回路が全体的に画定する。この流路は、ガスの流量に作用するよう意図された複数の部材を含みうる。上記拡散要素はバーナとも呼ばれる。このライタ内でドライバの上記機能を全て実現できるよう動作する全要素が、好ましくは、上記ライタが既存のライタのサイズに対してほぼ一定のサイズを保持できるように、コンパクトに配置される。用語「名目上の位置」とは、「既定(デフォルト)で占める位置」を意味する。つまり、ドライバが使用者によって並進移動されていない場合、常に作動状態になっているのは、第1のタイプの炎を得るための第1のガス回路である。第1の回路の内径は、好ましくは、燃料ガスが優先して第1の回路を選択するように、第2の回路の内径よりも大きくなっている。1つの特定のタイプの炎は、特定のガスの流量と所与のガス拡散の結果としてもたらされる。ここで重要なのは、本発明によるライタは、2つの異なるタイプの炎を交互に提供でき、この2つのタイプの炎が同時に生成されることはない、ということである。
【0009】
上記第1の回路は、有利には、その第1の回路の少なくとも一部分を含んだ、上記第1の回路を開く位置と閉じる位置の間で移動可能な遮断部材を備え、上記ドライバはこの遮断部材と接触しており、その接触が既定(デフォルト)で、上記名目上の第1の位置で、上記ドライバが上記遮断部材を上記開位置に保持するようになっており、さらに、上記ドライバの第2の位置に向かう並進移動が、同じ振幅の上記遮断部材の上記閉位置に向かう移動を引き起こすようになっている。遮断部材の閉位置は、上記部材が第1の回路を遮断し、その回路を非作動状態にする位置に対応し、開位置は、上記部材がその第1の回路を開く位置に対応する。つまり、ドライバは遮断部材に直に一押しを加え、したがって第1の回路の開閉を直に制御する。遮断部材は、第1の回路の、第1のタイプの炎を提供できる部分のみ、または全体を含みうる。
【0010】
上記遮断部材は、好ましくは、予荷重が加えられたばねと関連付けられ、上記ばねは、上記遮断部材が既定で上記開位置に保持されることを可能にし、したがって、上記ドライバが既定でその第1の位置に保持されることを可能にする。遮断部材がドライバと接触していることから、ドライバをその第1の位置に保持するのは、上記ばねである。
【0011】
上記ドライバの第1の位置から第2の位置への移動が、好ましくは、上記ばねの圧縮を伴う上記遮断部材の閉位置への移動を引き起こす。こうして、ドライバを並進移動させるために、ばねの力に打ち勝つための軽い力が必要になり、その力によって、上記ドライバの動きをより適切に制御することが可能になる。使用者がドライバに対する圧迫を取り除けば、ばねが伸張したときに、ドライバは直ちに第1の位置に戻る。
【0012】
上記第1の位置と上記第2の位置の間の上記ドライバの最大移動距離は、有利には、0.5mm以上3mm以下である。容易かつ適切に制御された2つのガス回路間の切り換えを可能にするために、ドライバの移動距離は制限される。
【0013】
上記ドライバは有利には細長い円筒形の部材であり、上記ライタ内の上記ドライバの並進移動は、有利にはその回転軸に沿って実現される。
【0014】
上記第1のタイプの炎は好ましくは黄色炎であり、上記第2のタイプの炎は好ましくはターボ炎である。黄色炎は、ガス排出速度が数m/s程度であること、空気/ガス混合物がオリフィス(バーナ)から出た後に形成されること、ガス出口径が1ミリメートルの数10分の1であること(炎が2つの場合)を特徴とする。ターボ炎は、ガス排出速度が約100m/sを超えること、ガスがオリフィスから出る前に空気/ガス混合物が形成されること、ガス出口径が75μm程度であることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、上記第1の回路が第1の拡散要素のところで終端し、その第1の拡散要素の位置で上記黄色炎が生成され、上記第2の回路が第2の拡散要素のところで終端し、その第2の拡散要素の位置で上記ターボ炎が生成され、上記2つの要素は上記ライタの同じ面から現れ、上記第2の要素は上記第1の要素よりも高い位置に出現する。2つの炎はライタの同一の壁の位置に形成され、ターボ炎は、黄色炎よりも高いところに生成される。この高低差は、ライタにおいて既定で点火される炎である黄色炎が、青色炎の形成に寄与するという点で理にかなっている。
【0016】
上記第1の拡散要素は、好ましくは、黄色炎を連続的な2つの部分として生成できる2つの異なるオリフィスを有し、この黄色炎の2つの部分のうちの一方が、上記ターボ炎の点火を可能にする特定の向きを有する。こうして、黄色炎は、連続的な2つの異なる部分に分割され、これらの部分は、上記2つのタイプの炎の可逆性を可能するように適切に配設される。この第1の拡散要素の2つのオリフィスは、好ましくは互いに対して75°をなして配置される。黄色炎の、ターボ炎を点火するよう意図された部分は、有利にはそのターボ炎に対して45°をなして配設される。
【0017】
上記第1の拡散要素と上記第2の拡散要素との高低差は、有利には1mm以上3mm以下である。この種の高低差によって、黄色炎によるターボ炎の、そしてその逆にターボ炎による黄色炎の、容易で系統立った点火が可能になる。
【0018】
液体燃料の上記容器は、有利には閉鎖要素によって遮断され、上記ライタは、剛性を有する中継部材によって上記閉鎖要素に連結された旋回キャップを含み、上記キャップを開けることによって、上記第1の回路および上記第2の回路へ上記ガスを放出するために、上記閉鎖要素が動かされる。
【0019】
本発明の本質は、第二に、本発明によるライタを使用する方法にある。
【0020】
本発明による方法の主な特徴は、この方法が、
上記ライタの上記容器に液体燃料を充填するステップと、
上記ライタの上記第1および第2の回路に上記ガスを放出するために、上記キャップを開くステップと、
火花を生成し、上記第1のタイプの炎を得るために、上記ドライバを回転させるステップと、
上記第2のタイプの炎を得るため、上記第1の回路を遮断し上記第2の回路を作動させるために、上記ドライバを上記第1の位置と上記第2の位置の間で並進移動させるステップとを含む、という点である。
【0021】
上記第3のステップは、可逆的である。というのは、ドライバを第2の位置から第1の位置に戻すことによって、第1のタイプの炎を生成するために、第1の回路が再び作動されるからである。一方の炎からもう一方の炎への交替は、容器に液体燃料が残っている限り何回でも実現されうる。
【0022】
本発明によるライタは、片手による容易で適切に制御された操作によって、2つの異なる炎を交互に生成する特定の機能を有するという利点を有する。実際には、この2つの炎は、単一の部材すなわちドライバによって生成される。ドライバは、同じ手の親指によって、回転または並進移動されうる。本発明によるライタはさらに、2つの異なる炎を交互に生成するこの二重機能を有さない既存のライタに比べて、全体のサイズを変えずに保持するという利点を有する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によるライタの詳細な説明を、以下の図を参照して下記に示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】開けたときの黄色炎の構成における、本発明によるライタの斜視図である。
図1B】開けたときのターボ炎の構成における、本発明によるライタの斜視図である。
図2】閉じた構成における、図1Aおよび1Bのライタの斜視図である。
図3】閉じた構成における、本発明によるライタの側面概略図である。
図4】黄色炎の開構成における、本発明によるライタの動作機構の側面図である。
図5A】青色炎の開構成における、本発明によるライタの第2の回路の斜視図である。
図5B】青色炎の開構成における、本発明によるライタの第2の回路の側面図である。
図5C】青色炎の開構成における、本発明によるライタの第2の回路の拡大図である。
図6】本発明によるライタの、黄色炎バーナおよび青色炎バーナを含んだ区画の斜視図である。
図7】特にガス容器の開口を示す、本発明によるライタの機構の斜視図である。
図8A】黄色炎を生成できる第1の回路の断面図である。
図8B】青色炎を生成できる第2の回路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで留意すべきこととして、図8Aおよび8Bに示す回路は、一般的にライタで見られる通りの回路であるが、本発明によるライタ1では、この形で完全に再現されているわけではない。本発明によるライタでは、その動作原理のみが保持される。
【0026】
図1A、1Bおよび図2を参照すると、本発明によるライタ1は、従来の黄色炎2と、ターボ炎またはトーチ炎としても知られている青色炎3とを、交互に生成できる。尚、大まかに言うと、黄色炎すなわち拡散炎は、ライタ1内に存在する燃料を、空気からもたらされた酸素である酸化剤で不完全燃焼させることによって生じる。この空気/ガス混合物は、ガスがバーナのオリフィスから出た後に形成される。青色炎は、それよりも高速のガス速度で生成され、燃料を酸化剤で完全燃焼させることによって生じる。この空気/ガス混合物は、ガスが上記バーナのオリフィスから出る前に形成される。
【0027】
ライタ1は、本体4と、旋回キャップ5と、回転ドライバ6を備える。本体4は、ほぼ平行六面体の形状で、ライタ1の動作機構を取り囲んでおり、特に、黄色炎2または青色炎3が放出される面7を有する。キャップ5は、矩形を画定する4つの側壁8と、この4つの側壁8を覆う上壁9とを備える。キャップ5は、例えば図2に示されているような閉位置から、例えば図1Aおよび1Bに示されているような開位置まで旋回することができ、一方の位置からもう一方の位置へ移行する角度方向の回転幅は90°より小さい。トレーナ6は、長手方向の平行な複数のリブ10を有する外部表面によって画定された、中実の細長い円筒形部材の形をしている。このリブ10の目的は、ドライバ6の外部表面の粗さを増大させることである。ドライバ6は、ライタ1の本体4の、2つの連続する面11、12の間にある縁の位置に、その2つの連続する面11、12と面一になるように取り付けられる。つまり、ドライバ6は、ライタ1の本体4に、その大きさを増すことなく完全に含まれる。
【0028】
図2を参照すると、ドライバ6は、キャップ5がライタ1上の閉位置にあるとき、そのキャップ5に対して垂直に延びるように本体4内に配置され、その本体4の軸19を中心にして取り付けられる。この軸19は、ドライバ6の回転軸であり、そのドライバ6の長手方向軸と平行になっている。
【0029】
図7を参照すると、ドライバ6の主な機能は、黄色炎を生成するよう意図されたバーナ13の位置で、火花の発生を可能にすることである。ドライバ6は、フリント15と接触しているサムホイール14に接続されている。こうして、親指をさっと打ち当ててドライバ6を急回転させるとサムホイール14が回転し、フリント15と接触しているこのサムホイール14が、そのフリント15との摩擦によって火花を発生させる。
【0030】
図2を参照すると、キャップ5は、ライタ1上の閉位置にある場合、理想的には本体4を段差無く延長し、ライタ1の外観と、使用者にとっての「感触」を改善する。
【0031】
図3および4を参照すると、ライタ1の本体4は液体燃料の容器16を備えており、容器16は、液体燃料をライタ1の外側から投入する開口18を備える。液体燃料は、例えばブタンガス、イソブタンおよびプロパンからなる混合物で構成されうる。この容器16は細長い閉鎖部材17を備えており、閉鎖部材17は、容器16内に液体燃料を保持する閉位置と、異なる炎を生成できるライタ1の回路へ液体燃料を放出する開位置との間を、摺動できる。この閉鎖部材17の閉位置と開位置との間の摺動は、キャップ5によって実現される。
【0032】
実際、図3、4および7を参照すると、キャップ5は、第1の軸21を中心に旋回できる第1の旋回部材20に連接式に連結され、この第1の旋回部材20は、閉鎖部材17の一方の端の位置に固定された第2の旋回部材22と接触している。こうして、キャップ5が、図2に示されている閉位置から開くときに、完全に制御された特定の運動学に従って2つの旋回部材20、22を旋回させ、それによって、閉鎖部材17が閉位置と開位置との間で摺動することが可能になる。これで液体燃料は、ライタ1の各種の炎生成回路内で循環できる。このキャップ5の動きは可逆的である。というのは、キャップ5をライタ1上の閉位置に戻すことによって、閉鎖部材17が反対方向に摺動され、それによって最終的に燃料液体容器16が完全に遮断されるからである。こうして、ライタ1は、キャップ5が開位置に達したときにのみ機能できる。実際には、設計により、この開位置に達する直前にはライタ1は機能できるようになっている。
【0033】
図4を参照すると、ライタ1は、第1の管23と第2の管25を含む。第1の管23は、液体燃料容器16を、青色炎3を発生できる第2の回路24の上流域に接続し、第2の管25は、この第2の回路24の上流域を、黄色炎を発生できる第1の回路26に接続する。上記2つの回路24、26はライタ1内で切り離されており、かつ平行になっている。第1の回路26の内径は第2の回路24の内径よりも大きく、したがって、第1の管23の出口における液体燃料は、自然に、黄色炎2を生成するよう意図された第1の回路26の方を向く。この2つの回路24、26は一定の直径を有さないことから、平均内径を用いると、その説明がより厳密になるはずである。ライタ1は、第1の管23に達する液体燃料の流量を調整できる調節ねじを有する。
【0034】
図8Aを参照すると、黄色炎2を提供するよう意図された第1の回路26が、その上流部分から下流部分に向かって、膨張弁27と、ガス流路28と、バーナ13を備える。膨張弁27は、従来通りに、蒸発器29と機械式の閉鎖具30を備える。蒸発器29を備える膨張弁27は、膨張により燃料の状態を液体から気体に変化させる機能を有する。蒸発器29の圧力比を変えることによって、気体状態のガスの膨張、したがってガスの流量を調整することが可能になり、この流量は、典型的には0.3~4mg/sである。膨張弁27の頂部に配置された機械式の閉鎖具30は、ガス開口部を制御し、この装置によって膨張過程が可能になる。空気(空気からの酸素が酸化剤になる)中の燃料(ブタン+イソブタン+プロパンからなるガス混合物)の爆発限界は、その組成によって決まり、典型的にはブタンの場合1.8~8.4%である。
【0035】
燃料+酸化性混合物の点火を引き起こすためのエネルギーの入力(数ミリジュールが必要である)が、以下のいずれかを利用して実現される。
ライタフリント15を擦る鋼鉄サムホイール14。ライタフリント15は一般に、合金混合物「鉄+セリウム+希土類」で構成され、多量の火花を発生させる。
圧電結晶。圧電結晶は、衝撃を受けて、電極とバーナ13の間に適切に配置された火花を発生させる。
【0036】
ガスは、閉鎖具から出ると、流路28すなわち管によってバーナ13まで案内される。燃料はこのとき、バーナ13の位置で、酸化剤(空気からの酸素)と混合される。
【0037】
黄色炎すなわち拡散炎の場合、燃料と酸化剤との燃焼は不完全燃焼である。
【0038】
図8Bを参照すると、青色炎3を提供するための第2の回路24が、その上流部分から下流部分に向かって、従来通りに蒸発器29および機械式の閉鎖具30を含んだ膨張弁27と、ガス流路31と、青色炎3を拡散するための拡散要素32を備える。ガス流路31は、噴射器33と、ベンチュリ効果を発生させるような形状のセグメント34を備える。噴射器33は金属板が載置された小室であり、この金属板には、直径が70μm以上80μm以下、典型的には75μmの穴35が形成されている。噴射器33の目的は、直径75μmの穴35の出口のところで燃料の流出速度を加速することである。この燃料の流出速度は、回路24内のガス流量の調整によって決まる。噴射器33を通過する際に事前に加速された燃料は、ベンチュリ効果を発生させるような形状のセグメント34を通過する際に、減圧を引き起こす。この減圧によって、周囲空気を、ベンチュリ効果を発生させるように適合されたセグメント34の外周に配設された穴37を介して吸引することが可能になる。これにより、燃料と酸化剤との予混合が引き起こされる。
【0039】
図6および8Bを参照すると、燃料+酸化性混合物は拡散要素32に案内される。拡散要素32はバーナであり、このバーナ32は、中心穴38と、バーナの外周に配設された周辺穴の環39とを有する。バーナ32の中心穴38により、円錐の形をした青色炎を得ることが可能になり、周辺穴を含んだ環39により、「パイロット」青色炎を得ることが可能になる。このパイロット青色炎があることによって、上記円錐内の燃焼を維持することが可能になる。
【0040】
図8Bを参照すると、例えば、電極41と関連付けられた圧電結晶40などを備える点火装置が、拡散要素32の位置に青色炎を得ることを可能にする火花を供給しうる。
【0041】
青色炎の場合、燃料と酸化剤との燃焼は完全燃焼である。
【0042】
図6を参照すると、黄色炎2を得ることを可能にするバーナ13と、青色炎3を得ることを可能にする拡散要素32は、ライタ1の同じ面7の上にある。バーナ13と拡散要素32の間には高低差があり、拡散要素32はバーナ13よりも高いところに出現する。この高低差は典型的には1~3mmである。より正確には、バーナ13は、黄色炎2を2つに分けて形成するための2つのガス出口を構成するように適合された2つの異なるオリフィスを有し、この黄色炎2の2つの部分のうちの一方は、ターボ炎3の点火を可能にする特定の向きを有する。こうして、黄色炎は、2つの連続した別々の部分に分割される。上記2つの部分は、黄色炎2とターボ炎3の可逆性を可能にするように適切に配設される。この第1の拡散要素13の2つのオリフィスは、好ましくは互いに対して75°をなして配置される。ターボ炎3を点火するよう、またその逆に、ターボ炎3から点火される黄色炎2の部分は、有利にはそのターボ炎3に対して45°をなして配設される。
【0043】
図3、4、5Aおよび5Bを参照すると、本発明によるライタ1では、第1の回路26の膨張弁27およびガス流路28が、遮断部材42の中に製造され、その遮断部材42は、予荷重が加えられたばね43によってライタ1の本体4内で並進移動できるように取り付けられている。ドライバ6の取り付けは、火花を発生させるために、軸19を中心に回転するようになっていると同時に、第1の回路26を開閉するために、その軸19に沿って並進移動するようにもなっている。この遮断部材42とドライバ6の本体4への配置は、遮断部材42とドライバ6とが接触するようになっており、さらに、既定では、予荷重が加えられたばね43のおかげで、遮断部材42は第1の回路26を開く位置になり、その遮断部材42によってドライバ6がその軸19に沿って第1の位置へ押し動かされるようになっている。したがって、この第1の位置からドライバ6を並進移動させることによって、遮断部材42は、第1の回路26を閉じる位置に達するまで、同じ振幅の並進移動を行う。遮断部材42の閉位置は、ドライバ6の軸19に沿った第2の位置に対応する。ドライバ6を第2の位置に向かって並進移動させるには、若干の力、すなわちばね43の圧縮に要する力が必要になる。
【0044】
したがって、本発明によるライタのドライバ6は、自由度2という利点を有する。つまり、1自由度は、炎を得るために、火花を生成する回転自由度であり、もう一方の1自由度は、2つの回路24、26を切り換えるために、第1の回路26の開位置と閉位置の間で遮断部材42を動かす並進自由度である。
【0045】
本発明によるライタ1の使用方法は、液体燃料が容器16にすでに充填されており、キャップ5がライタ1に対して閉位置にあると仮定して、燃料液体を第1の管23に放出するために、キャップ5を旋回させて開くステップを含む。第1の回路26の直径が第2の回路24の直径よりも大きいことと、予荷重が加えられたばね43のおかげで、既定(デフォルト)で遮断部材42が上記第1の回路26を開く位置にあることから、燃料液体は、第2の管25を通過してから第1の回路26に入る。つまり、容器16からもたらされた液体燃料は、第1の回路26全体を通過する。このステップは、図4および7に示されている。
【0046】
本発明によるライタ1の使用方法は、拡散黄色炎2を得るために、ドライバ6をその粗い表面上で親指を素早く動かすことによって軸19を中心に回転させるステップを含む。上記拡散黄色炎2は、第1の回路26の出口に配置されたバーナ13の位置に生成される。このステップは、図1Aおよび4に示されている。
【0047】
本発明によるライタ1の使用方法は、ドライバ6を第1の位置から第2の位置に移行させるために、そのドライバ6を親指で押すだけで、軸19に沿って並進移動させるステップを含む。このステップは、上記ドライバ6が遮断部材42と接触していることから、その遮断部材42の、第1の回路26を閉じる位置に向かう並進移動に反映される。遮断部材42の移動には、予荷重が加えられたばね43の圧縮に要する軽い力が必要になる。第1の回路26が閉じると、第1の管23からもたらされる燃料液体は、第2の回路24を通過しなければならなくなる。こうして、最初に黄色炎2が形成され、その黄色炎2は消火の過程にあるが(第1の回路26が閉じられるため)、その消火の前に、この黄色炎2によって、第2の回路24からもたらされる青色炎3の燃焼の開始が可能になる。したがって、本発明によるライタ1では、青色炎3は黄色炎2から形成され、青色炎3の生成に特化された火花を生成する必要はない。このステップは、図5Aおよび5Bに示されている。
【0048】
本発明によるライタ1の使用方法は、青色炎3を使用する間、ドライバ6をその新たな並進位置に維持するステップを含む。
【0049】
本発明によるライタ1の使用方法は、親指がドライバ6を解放するステップを含む。これを反映して、伸張する固有の傾向を有するばね43が、遮断部材42と関連付けられていることから、上記ドライバ6が第1の位置に自動的に戻される。このステップにより、まだ消火されていない青色炎3のおかげで、黄色炎2に瞬時に戻ることが可能になる。
【0050】
上述のステップは、ライタ1の容器16に液体燃料が残っている限り、使用者の望みに応じて何回でも再現されうる。
【0051】
ライタ1にキャップ5を閉めるだけで、第1または第2の回路への液体燃料の供給が中断され、炎2、3の形成が停止する。
【符号の説明】
【0052】
1 ライタ
2 黄色炎
3 青色炎
4 本体
5 キャップ
6 ドライバ
7 本体4の面
8 キャップ5の側壁
9 キャップ5の上壁
10 リブ
11 本体4の面
12 本体4の面
13 バーナ
14 サムホイール
15 フリント
16 容器
17 閉鎖部材
18 開口
19 ドライバ6の回転軸
20 第1の旋回部材
21 第1の軸
22 第2の旋回部材
23 第1の管
24 第2の回路
25 第2の管
26 第1の回路
27 膨張弁
28 ガス流路
29 蒸発器
30 閉鎖具
31 ガス流路
32 拡散要素
33 噴射器
34 ベンチュリ効果を発生させるような形状のセグメント
35 穴
37 穴
38 バーナ32の中心穴
39 バーナ32の周辺穴の環
40 圧電結晶
41 電極
42 遮断部材
43 ばね
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B