(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】光学素子及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/12 20060101AFI20220314BHJP
G02B 30/25 20200101ALI20220314BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20220314BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
G02B27/12
G02B30/25
G02B5/00 Z
G02F1/13 505
(21)【出願番号】P 2018159873
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-01-04
(31)【優先権主張番号】201710798903.2
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】500093133
【氏名又は名称】中強光電股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 乙白
(72)【発明者】
【氏名】任 台翔
(72)【発明者】
【氏名】謝 博元
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 瑞翊
(72)【発明者】
【氏名】▲莊▼ 福明
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-500974(JP,A)
【文献】特開2009-237112(JP,A)
【文献】特開2004-004647(JP,A)
【文献】特開2003-195274(JP,A)
【文献】特開昭61-250613(JP,A)
【文献】米国特許第05963291(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/12
G02B 30/25
G02B 5/00
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像光束を通過させるための光学素子であって、
第一
複屈折層、第二
複屈折層及びガス層を含み、
前記ガス層は、所定の厚みを有し、且つ前記第一
複屈折層と前記第二
複屈折層との間に配置され、
前記ガス層の延伸方向は、前記光学素子の延伸方向に対して傾斜し、
前記映像光束は、順に、前記第一
複屈折層、前記ガス層及び前記第二
複屈折層を通過し、
前記映像光束は、前記ガス層に進入したときに、偏向角度が異なる第一サブ映像光束及び第二サブ映像光束を生成し、
前記第一サブ映像光束及び前記第二サブ映像光束は、前記第二
複屈折層から射出した後に、両者間にオフセット距離を有
し、
前記第一複屈折層及び前記第二複屈折層は、液晶層であり、
前記映像光束は、偏波光束であり、且つ前記映像光束は、前記第一複屈折層に伝播したときに、前記第一複屈折層の変化によって前記ガス層に進入したときに交替で前記第一サブ映像光束及び前記第二サブ映像光束を生成する、光学素子。
【請求項2】
請求項
1に記載の光学素子であって、さらに、
前記第一
複屈折層に配置される第一透明導電層;
前記第一
複屈折層に配置される第二透明導電層であって、前記第一
複屈折層は、前記第一透明導電層と前記第二透明導電層との間に位置し、前記第一透明導電層及び前記第二透明導電層は、前記第一
複屈折層に位相変調を生じさせるために用いられる、第二透明導電層;
前記第二
複屈折層に配置される第三透明導電層;及び
前記第二
複屈折層に配置される第四透明導電層であって、前記第二
複屈折層は、前記第三透明導電層と前記第四透明導電層との間に位置し、前記第三透明導電層及び前記第四透明導電層は、前記第二
複屈折層に位相変調を生じさせるために用いられる、第四透明導電層を含む、光学素子。
【請求項3】
請求項1に記載の光学素子であって、
前記オフセット距離は、前記ガス層の傾斜角度と前記所定の厚み、及び、前記第一
複屈折層と前記第二
複屈折層の
複屈折性に関連する、光学素子。
【請求項4】
請求項1に記載の光学素子であって、
前記第一
複屈折層及び前記第二
複屈折層は、楔形体である、光学素子。
【請求項5】
請求項1に記載の光学素子であって、
前記ガス層は、空気層である、光学素子。
【請求項6】
請求項1に記載の光学素子であって、
前記ガス層の延伸方向と前記光学素子の延伸方向とが夾角を有し、前記夾角の範囲は、
0度よりも大きく且つ5度以下である、光学素子。
【請求項7】
表示装置であって、
表示パネル、光学素子及びレンズ素子を含み、
前記表示パネルは、映像光束を提供するために用いられ、
前記光学素子は、前記表示パネルの一方側に配置され、前記映像光束を通過させるために用いられ、
前記光学素子は、第一
複屈折層、第二
複屈折層及びガス層を含み、
前記ガス層は、所定の厚みを有し、且つ前記第一
複屈折層と前記第二
複屈折層との間に配置され、
前記光学素子は、前記表示パネルと前記レンズ素子との間に配置され、
前記ガス層の延伸方向は、前記光学素子の延伸方向に対して傾斜し、
前記表示パネルが提供した前記映像光束は、順に、前記第一
複屈折層、前記ガス層、前記第二
複屈折層及び前記レンズ素子を通過し、
前記映像光束は、前記ガス層に進入したときに、偏向角度が異なる第一サブ映像光束及び第二サブ映像光束を生成し、
前記第一サブ映像光束及び前記第二サブ映像光束は、前記第二
複屈折層から射出した後に、両者間にオフセット距離を有
し、
前記第一複屈折層及び前記第二複屈折層は、液晶層であり、
前記映像光束は、偏波光束であり、且つ前記映像光束は、前記第一複屈折層に伝播したときに、前記第一複屈折層の変化によって前記ガス層に進入したときに交替で前記第一サブ映像光束及び前記第二サブ映像光束を生成する、表示装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の表示装置であって、
前記表示パネルは、アレー状に配列される複数の画素を含み、且つ前記オフセット距離は、前記複数の画素の対角方向のピッチよりも小さい、表示装置。
【請求項9】
請求項
7に記載の表示装置であって、
前記光学素子は、さらに、
前記第一
複屈折層に配置される第一透明導電層;
前記第一
複屈折層に配置される第二透明導電層であって、前記第一
複屈折層は、前記第一透明導電層と前記第二透明導電層との間に位置し、前記第一透明導電層及び前記第二透明導電層は、前記第一
複屈折層に位相変調を生じさせるために用いられる、第二透明導電層;
前記第二
複屈折層に配置される第三透明導電層;及び
前記第二
複屈折層に配置される第四透明導電層であって、前記第二
複屈折層は、前記第三透明導電層と前記第四透明導電層との間に位置し、前記第三透明導電層及び前記第四透明導電層は、前記第二
複屈折層に位相変調を生じさせるために用いられる、第四透明導電層を含む、表示装置。
【請求項10】
請求項
7に記載の表示装置であって、
前記オフセット距離は、前記ガス層の傾斜角度と前記所定の厚み、及び、前記第一
複屈折層と前記第二
複屈折層の
複屈折性に関連する、表示装置。
【請求項11】
請求項
7に記載の表示装置であって、
前記第一
複屈折層及び前記第二
複屈折層は、楔形体である、表示装置。
【請求項12】
請求項
7に記載の表示装置であって、
前記ガス層は、空気層である、表示装置。
【請求項13】
請求項
7に記載の表示装置であって、
前記ガス層の延伸方向と前記光学素子の延伸方向とが夾角を有し、前記夾角の範囲は、
0度よりも大きく且つ5度以下である、表示装置。
【請求項14】
請求項
7に記載の表示装置であって、
前記第一サブ映像光束及び前記第二サブ映像光束は、前記表示パネルが表示する画面の情報を
含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子及び表示装置に関し、特に、2次元情報又は3次元情報を表示し得る接眼ディスプレイ、及び接眼ディスプレイに用いられる光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
接眼ディスプレイ(near-eye display;NED)の迅速な発展に伴い、使用者が接眼ディスプレイを装着する時に見た映像に、よりはっきり且つより快適な視覚効果を持たせるために、接眼ライトフィールドディスプレイ(Near-Eye Light Field Display)がこれによって誕生した。接眼ライトフィールドディスプレイと、従来の接眼ディスプレイとの最大の相違点は、ライトフィールド映像のメカニズムにより、ライトフィールド接眼表示は、光路全体の長さが大幅に短縮された利点を有するため、軽くて薄い接眼ディスプレイを実現させることができると共に、ユーザが要する焦点距離調整の特性を提供することもできることにある。
【0003】
しかし、接眼ライトフィールドディスプレイでは、2次元映像データを提供しなければならないだけでなく、表示しようとする映像光線の3次元情報も提供しなければならないため、大部分の接眼ライトフィールドディスプレイは、映像の解像度が急に下がる問題が存在する。よって、如何に既存の接眼ライトフィールドディスプレイ又は一般的な接眼ディスプレイの映像の解像度(resolution)を有効に向上させるかは、当業者が関心を持つ重要なポイントの1つである。
【0004】
なお、この“背景技術”の部分が、本発明の内容への理解を助けるためだけのものであるため、この“背景技術”の部分に開示されている内容は、当業者に知られていない技術を含む可能性がある。よって、この“背景技術”の部分に開示されている内容は、該内容、又は、本発明の1つ又は複数の実施例が解決しようとする課題が本発明出願前に既に当業者に周知されていることを意味しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、元の表示装置の解像能力をさらに向上させることができる光学素子及び表示装置を提供する。本発明の空間多重のアーキテクチャにより、使用者が異なる時間に、元の低解像度(resolution)の映像から向上した高解像度の映像を見ることができるようにさせることができる。
【0006】
本発明の他の目的及び利点は、本発明に開示されている技術的特徴からさらに理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の1つ又は部分又は全部の目的或いは他の目的を達成するために、本発明の一実施例によれば、映像光束を通過させるための光学素子を提供する。光学素子は、第一双屈折(複屈折ともいう)層、第二双屈折層及びガス層を含む。ガス層は、所定の厚みを有し、且つ第一双屈折層と第二双屈折層との間に配置される。ガス層の延伸方向は、光学素子の延伸方向に傾斜し、そのうち、映像光束は、順に、第一双屈折層、ガス層及び第二双屈折層を通過する。映像光束は、ガス層に入った時に、偏向角度が異なる第一サブ映像光束及び第二サブ映像光束を生成する。第一サブ映像光束及び第二サブ映像光束は、第二双屈折層から射出した後に、両者間にオフセット距離がある。
【0008】
また、上述の1つ又は部分又は全部の目的或いは他の目的を達成するために、本発明の一実施例によれば、表示パネル、光学素子及びレンズ素子を含む表示装置が提供される。表示パネルは、映像光束を提供するために用いられる。光学素子は、表示パネルの一方側に配置され、且つ映像光束を通過させるために用いられる。光学素子は、第一双屈折層、第二双屈折層及びガス層を含む。ガス層は、所定の厚みを有し、且つ第一双屈折層と第二双屈折層との間に配置される。ガス層の延伸方向は、光学素子の延伸方向に傾斜し、そのうち、表示パネルが提供した映像光束は、順に、第一双屈折層、ガス層及び第二双屈折層を通過する。映像光束は、ガス層に入った時に、偏向角度が異なる第一サブ映像光束及び第二サブ映像光束を生成する。第一サブ映像光束及び第二サブ映像光束は、第二双屈折層から射出した後に、両者間にオフセット距離がある。
【0009】
上述により、本発明の実施例は、少なくとも次の1つの利点又は機能・効果を有する。即ち、本発明の実施例では、光学素子は、第一双屈折層、第二双屈折層及びガス層を含み、且つ表示パネルとレンズ素子との間に配置され、そのうち、ガス層の延伸方向は、光学素子の延伸方向に傾斜し、且つガス層は、第一双屈折層と第二双屈折層との間に配置される。よって、映像光束は、順に、第一双屈折層、ガス層、第二双屈折層及びレンズ素子を通過し、また、ガス層に入った時に、偏向角度が異なる第一サブ映像光束及び第二サブ映像光束を生成し、そのうち、第一サブ映像光束及び第二サブ映像光束は、第二双屈折層から射出した後に、両者間にオフセット距離がある。よって、使用者は、第一サブ映像光束及び第二サブ映像光束の合成による高解像度の映像を見ることができる。
【0010】
本発明の上述した特徴及び利点をより明らかにするために、以下、実施例を挙げて添付した図面を参照することにより、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】もう1つの実施例による光学素子の
図1におけるA領域の拡大図である。
【
図5】
図1に示す光学素子の厚み、空気層の厚み及び画素の変位量の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の上述した及び他の技術的内容、特徴、機能及び効果は、添付した図面に基づく次のような好ましい実施例の詳細な説明により明確になる。なお、次の実施例に言及されている方向についての用語、例えば、上、下、左、右、前又は後などは、添付した図面の方向に過ぎない。よって、使用されている方向の用語は、本発明を説明するためだけのものであり、本発明を限定するためのものではない。
【0013】
図1は、本発明による表示装置の断面図である。
図2は、
図1中のA領域の拡大図であり、そのうち、
図1は、表示パネルにおける画素(
図3の画素112を参照)の対角方向に沿った断面図である。
図1及び
図2を参照する。本実施例では、表示装置100は、表示パネル110、光学素子120及びレンズ素子130を含む。表示パネル110は、映像光束ILを提供するために用いられる。光学素子120は、表示パネル110の一方側に配置され、且つ表示パネル110とレンズ素子130との間に配置され、映像光束ILを通過させるために用いられる。
【0014】
詳細に言えば、光学素子120は、第一双屈折層122A、第二双屈折層122B及びガス層124を含む。第一双屈折層122A及び第二双屈折層122Bは、例えば、液晶層(liquid crystal layer)である。しかし、他の実施例では、第一双屈折層122A及び第二双屈折層122Bは、双屈折性を有する他の材料を用いて制作されても良く、例えば、異方性材料(anisotropic materials)(方解石、石英、紅宝石(ruby)などのような単軸結晶)であっても良い。なお、本発明は、これに限定されない。本実施例では、第一双屈折層122A及び第二双屈折層122Bが反対称的に配置され、例えば、楔形体であり、これにより、第一双屈折層122Aの厚みが大きい端部と、第二双屈折層122Bの厚みが小さい端部とは、同一領域に位置し、また、第一双屈折層122Aの厚みが小さい端部と、第二双屈折層122Bの厚みが大きい端部とは、同一領域に位置する。このようにして、光学素子120は、平板構造を成すことができ、言い換えれば、最外層の2つの基板126を互いに平行させることができる。しかし、他の実施例では、第一双屈折層122A及び第二双屈折層122Bは、他の種類の多面体であっても良い。なお、本発明は、これに限定されない。
【0015】
ガス層124は、所定の厚みTを有し、且つ第一双屈折層122Aと第二双屈折層122Bとの間に配置される。本実施例では、ガス層124は、例えば、空気層である。他の実施例では、ガス層124中の成分は、他の種類のガスであっても良い。なお、本発明は、これに限定されない。ガス層124の延伸方向D1は、光学素子120の延伸方向D2に傾斜する。言い換えると、光学素子120は、サンドイッチ構造であり、且つ中央に位置する(挟まれた)ガス層124の延伸方向D1と、光学素子120の延伸方向D2とは、夾角αを有する。本実施例では、夾角αの範囲は、例えば、0乃至5度である。なお、本発明は、これに限定されない。
【0016】
また、本実施例では、光学素子120は、さらに、複数の基板126を含んでも良く、それらは、透明(透光)基板であり、例えば、プラスチック又はガラスの材質であり、それぞれ、第一双屈折層122Aとガス層124、及び、ガス層124と第二双屈折層122Bとの間に位置し、第一双屈折層122A、第二双屈折層122B及びガス層124を仕切るために用いられ、これにより、光学素子120の構造の安定性が増加する。また、2つの基板126は、第一双屈折層122Aの両側から挟むように設置され、また、2つの基板126は、第二双屈折層122Bの両側から挟むように設置され、これにより、第一双屈折層122A及び第二双屈折層122Bを固定し、必要のない揺れにより映像品質が悪くなることを避けることができる。光学素子120は、さらに、複数の支持部品Sを含んでも良く、それらは、ガス層124の周りに配置され、且つガス層124の対向する両側の基板126の間に位置し、ガス層124が厚みTを要するように仕切るために用いられる。
【0017】
本実施例では、表示装置100は、例えば、接眼ライトフィールドディスプレイ(Near-Eye Light Field Display)であり、表示パネル110は、例えば、薄膜トランジスタ液晶表示器(thin film transistor-liquid crystal display;TFT-LCD)、有機発光ダイオード(organic light-emitting diode;OLED)表示器又は他の適切な表示器である。なお、本発明は、これに限定されない。表示パネル110は、アレー状に配列される複数の画素(
図3の画素112を参照)を含み、画素の数量は、限定されず、表示パネル110の解像度に応じて決定されても良い。本実施例では、表示パネル110が不透明な表示パネルの時に、表示装置100は、バーチャルリアリティ(Virtual Reality;VR)の表示効果を実現することができる。しかし、他の実施例では、表示パネル110は、透明な表示パネルであっても良い。なお、本発明は、これに限定されない。
【0018】
レンズ素子130は、例えば、マイクロレンズアレー(Microlens Array)である。よって、表示パネル110は、レンズ素子130の設置に合わせ、2次元情報又は3次元情報を有する映像光束ILを提供することで、ライトフィールド映像の表示を実現することができる。しかし、幾つかの実施例では、レンズ素子130は、接眼表示装置100の接眼レンズ(ocular)とされても良く、例えば、単一レンズの形式である。なお、本発明は、これに限定されない。
【0019】
映像光束ILは、順に、第一双屈折層122A、ガス層124、第二双屈折層122B及びレンズ素子130を通過する。詳細に言えば、映像光束ILは、交替で出現する第一偏波光束及び第二偏波光束を含む。例えば、一実施例では、表示パネル110は、時間順に第一偏波光束及び第二偏波光束を生成し、第一偏波光束及び第二偏波光束の偏波方向は、互いに垂直であり、映像光束ILは、光学素子120に進入して偏向が生じ、言い換えれば、映像光束ILは、光学素子120のガス層124に入った時に、偏向角度が異なる第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2を生成し、即ち、第一偏波光束及び第二偏波光束は、光学素子120において偏向が生じ、光学素子120のガス層124に入った時に、それぞれ、偏向角度が異なる第一サブ映像光束IL1及び一第二サブ映像光束IL2を生成する。そのうち、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2の伝播径路は、第二双屈折層122Bから射出した後に、両者間にオフセット距離DPを有する。よって、映像光束の高速移動により、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2という2つの映像光束が重ね合わせる効果を生じさせ、さらに人間の目の視覚存続の現象を利用することで、人間の目に見える映像の解像度を向上させることができる。オフセット距離DPは、厚みT、ガス層124の傾斜角度(即ち、夾角α)、及び、第一双屈折層122Aと第二双屈折層122Bの双屈折性に関連し、より具体的に言えば、第一双屈折層122Aと第二双屈折層122Bの厚みにも関連し、もう1つの実施例では、液晶層の厚みであっても良い。本実施例では、第一双屈折層122A及び第二双屈折層122Bとしての液晶層が双屈折性を有するので、それらの第一偏波光束及び第二偏波光束に対しての屈折率も異なる。これにより、第一偏波光束及び第二偏波光束は、液晶層とガス層124との境界を通過する時に異なる偏波角度が生じ、オフセット距離DPを形成することができる。詳しく言えば、オフセット距離は、第一双屈折層と第二双屈折層の厚み、ガス層の傾斜角度と厚み、及び、第一双屈折層と第二双屈折層の双屈折性に関連する。
【0020】
具体に言えば、本実施例では、表示装置100は、さらに、調整可能な位相遅延素子140を含み、それは、表示装置100が発した映像光束ILを、時間的順序を有する2種類の偏波光束に形成することができる。例を挙げると、表示装置100は、例えば、薄膜トランジスタ液晶表示器であり、調整可能な位相遅延素子140は、例えば、液晶セル(liquid crystal cell)である。よって、表示パネル110が発した非偏波映像光束ILが調整可能な位相遅延素子140に進入した時に、調整可能な位相遅延素子140の位相遅延量を制御することで、偏波方向が互いに垂直な第一偏波光束及び第二偏波光束を生成することができ、これにより、光学素子120において第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2を形成することができる。しかし、他の実施例では、調整可能な位相遅延素子140は、使用する表示装置100の種類に応じて調整されても良く、例えば、それは、ねじれネマチック液晶(Twisted Nematic liquid crystal;TN)パネル、二分の一波長板(half wave plate)、四分の一波長板(quarter wave plate)、偏光子、他の種類の調整可能な位相遅延素子、又は、その組み合わせによるモジュールを含むものにより置換されても良い。即ち、映像光束ILを、時間に沿って交替で出現する2種類の偏波方向の組み合せに変調すれば良い。なお、本発明は、これに限定されない。
【0021】
言い換えると、映像光束ILが光学素子120に入射する前に時間的順序を有する2種類の偏波光束であるので、映像光束ILが光学素子120における第一双屈折層122Aに伝播した時に、映像光束ILの第一偏波光束と第二偏波光束は、第一双屈折層122Aの双屈折特性に従ってそれぞれ屈折され、且つ第一偏波光束と第二偏波光束の屈折角度は、異なる。このようにして、偏向角度が異なる第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2を生成することができる。続いて、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2は、それぞれ、ガス層124において直線的に伝播する。よって、ガス層124における伝播径路が増加するにつれて、第一サブ映像光束IL1と第二サブ映像光束IL2との間のオフセット距離DPも次第に増加する。最後に、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2が第二双屈折層122Bに伝播した時に、第二双屈折層122Bの双屈折特性が第一双屈折層122Aと同じであり、且つ両者が反対称的に配置されるので、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2は、再び屈折され、光学素子120に入射する元の伝播方向に沿って伝播するようになる。言い換えれば、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2の主光軸は、映像光束ILの主光軸と互いに平行であるようになる。
【0022】
また、第一サブ映像光束IL1と第二サブ映像光束IL2との間のオフセット距離DPは、ガス層124の厚みTの増加に伴って増加し、増加の程度は、液晶素子中でオフセット距離DPを増やす既存の方法よりも大きい。また、第一サブ映像光束IL1と第二サブ映像光束IL2の光学素子120における屈折角度は、ガス層124の傾斜角度(即ち、夾角α)、及び、第一双屈折層122Aと第二双屈折層122Bの双屈折性の変化によって変わる。よって、光学素子120の総厚みTAを小さくすることができ、且つ制作プロセスは、比較的簡単である。
【0023】
光学素子120を通過した第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2は、レンズ素子130を通過し、且つレンズ素子130は、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2を集めてピューピル(pupil)Pに進入させる。そのうち、ピューピルPは、使用者の目の瞳孔であっても良く、又は、映像取得装置、例えば、カメラ、電荷結合素子(Charge-coupled Device;CCD)などであっても良い。なお、本発明は、これに限定されない。第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2が目の瞳孔を通過した後に、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2は、使用者の目の網膜上で高品質映像を形成することができる。言い換えると、表示パネル110が受けた、映像源(図示せず)が提供した映像の解像度は、目の網膜上で見えた映像の解像度よりも小さい。しかし、他の実施例では、ピューピルPは、例えば、一般的な光学レンズの開口絞りが所在する位置であっても良い。
【0024】
図3は、
図1の表示パネルの上面図である。
図1乃至
図3を参照する。詳細に言えば、本実施例では、第一サブ映像光束IL1と第二サブ映像光束IL2との間のオフセット距離DPは、表示パネル110における画素(pixel)112の対角方向のピッチ(pitch)PIよりも小さい。ピッチ(pitch)PIは、対角方向上で画素112の中心位置と、もう1つの画素112の中心位置との距離と定義される。第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2は、それぞれ、表示パネル110が表示する画面の情報をキャリー(carry)し、そのうち、オフセット距離DPは、例えば、画素112の対角方向に平行な方向上にある。一実施例では、オフセット距離DPは、例えば、
図3に示すように、画素112のピッチPIの二分の一である。よって、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2が瞳孔を通過した後に、オフセット距離DPが単一画素112の対角方向におけるピッチPIよりも小さく、且つ第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2が交替で伝播する周波数が例えば120Hzよりも大きいため、人間の目は、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2が交替で生じたものであることを見分けることができない。よって、視覚存続の効果により、人間の目は、自然に、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2を高解像度の映像に合成することができる。
【0025】
なお、異なるサイズの画素112の表示パネル110について言えば、本発明の表示装置100では、光学素子120におけるガス層124の厚みTを調整することのみにより、第一サブ映像光束IL1と第二サブ映像光束IL2との間のオフセット距離DPを、表示パネル110の画素112のサイズに対応するように調整することができる。このようにして、光学素子120におけるガス層124の厚みTを調整することで、各種の異なるサイズの画素112の表示パネル110に適用するようにさせることができる。
【0026】
図4は、もう1つの実施例による光学素子の
図1におけるA領域の拡大図である。
図4を参照する。本実施例の光学素子120Aは、
図2に示す光学素子120に類似したが、両者の相違点は、本実施例では、第一双屈折層122A及び第二双屈折層122Bが液晶層であり、且つ映像光束IL’が偏波光束であることにある。映像光束IL’が第一双屈折層122Aに伝播した時に、映像光束IL’は、第一双屈折層122Aの変化によってガス層124に進入した時に交替で第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2を生成する。
【0027】
具体的に言えば、本実施例では、光学素子120Aは、さらに、第一透明導電層128A、第二透明導電層128B、第三透明導電層128C及び第四透明導電層128Dを含む。そのうち、第一透明導電層128Aは、第一双屈折層122Aに配置され、第二透明導電層128Bは、第一双屈折層122Aに配置され、且つ第一双屈折層122Aは、第一透明導電層128Aと第二透明導電層128Bとの間に位置する。第一透明導電層128A及び第二透明導電層128Bは、第一双屈折層122Aに位相変調を生じさせるために用いられる。第三透明導電層128Cは、第二双屈折層122Bに配置され、第四透明導電層128Dは、第二双屈折層122Bに配置され、且つ第二双屈折層122Bは、第三透明導電層128Cと第四透明導電層128Dとの間に位置する。第三透明導電層128C及び第四透明導電層128Dは、第二双屈折層122Bに位相変調を生じさせるために用いられる。
【0028】
言い換えると、第一透明導電層128A及び第二透明導電層128Bに電圧を印加することで、第一双屈折層122Aの位相を時間的に(時間的順序を要するように)変更し、且つ第三透明導電層128C及び第四透明導電層128Dに電圧を印加することで、第二双屈折層122Bの位相を時間的に変更することができる。よって、映像光束IL’が第一双屈折層122Aに伝播した時に、映像光束IL’は、第一双屈折層122Aにより、偏向角度が異なる第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2を時間的に生成することができる。また、第二双屈折層122Bに伝播して通過する時に、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2は、屈折されて、光学素子120Aに入射する元の伝播方向に伝播し、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2の伝播径路は、第二双屈折層122Bから射出した後に、両者間にオフセット距離DPがある。例を挙げると、第一サブ映像光束IL1を生成する時に、第一双屈折層122A及び第二双屈折層122Bの液晶分子の方向は、映像光束IL’(例えば、直線偏波光)に対して第一種類の屈折率を有し、第二サブ映像光束IL2を生成する時に、第一双屈折層122A及び第二双屈折層122Bの液晶分子の方向は、映像光束IL’(例えば、直線偏波光)に対して第二種類の屈折率を有するように回転される。よって、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2は、液晶層とガス層124との境界を通過する時に異なる偏波角度が生じ得るため、オフセット距離DPを生成することができる。なお、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2の偏向方式は、
図1及び
図2に係る実施例において既に説明されているため、ここでは、その詳しい記載を省略する。
【0029】
図5は、
図1に示す光学素子の厚み、空気層の厚み及び画素の変位量の関係図である。
図1、
図2、
図3、
図4及び
図5を参照する。本実施例では、映像光束ILは、光学素子120に伝播して通過することにより、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2を生成し、この2つのサブ映像光束の間の距離ΔX(即ち、オフセット距離DP)は、次のような公式で表することができる。
【0030】
【数1】
そのうち、第二サブ映像光束IL2が光学素子120Aを通過する時に、ΔXeは、第二サブ映像光束IL2の伝播方向と、映像光束ILの伝播延伸方向との間の距離(即ち、第二オフセット距離DP2)である。第一サブ映像光束IL1が光学素子120Aを通過する時に、ΔXoは、第一サブ映像光束IL1の伝播方向と、映像光束ILの伝播延伸方向との間の距離(即ち、第一オフセット距離DP1)である。αは、ガス層124の延伸方向D1と、光学素子120の延伸方向D2との間の夾角である。詳細に言えば、一実施例では、αは、第一双屈折層122A又は第二双屈折層122Bの楔形体の端部の夾角である。Tは、ガス層124の厚みであり、TSは、基板126の厚みである。また、当業者が分かるように、noは、第一双屈折層122Aと第二双屈折層122Bの常光線屈折率(ordinary refractive index)であり、neは、第一双屈折層122Aと第二双屈折層122Bの異常光線屈折率(extraordinary refractive index)でああり、nsは、基板126の屈折率である。
【0031】
図5の左の縦軸の“画素の変位量”は、第一サブ映像光束IL1及び第二サブ映像光束IL2が形成した画素112のオフセットを表し、即ち、オフセット距離DPであり、その単位は、マイクロメートル(μm)である。また、
図5の右の縦軸の“光学素子の総厚み”は、映像光束ILが光学素子120の対向する両側を通過する距離(光学素子120の総厚みTA)を表し、その単位は、ミリメートル(mm)である。また、
図5の横軸の“空気層の厚み”は、空気層124の厚みTを表し、その単位は、マイクロメートル(μm)である。具体的に言えば、
図5の関係図に示すデータ201は、
図5の左の縦軸及び横軸に対応し、
図5の関係図に示すデータ202は、
図5の右の縦軸及び横軸に対応する。本実施例では、データ201、202を得る条件は、例えば、第一双屈折層122A及び第二双屈折層122BがE7液晶を材料として選択し、例えば、受動ハイブリッドTN液晶(ねじれネマチック(twisted Nematic))であり、基板126の厚みTSが0.55ミリメートル(mm)であり、及びガス層124の延伸方向D1と光学素子120の延伸方向D2との間の夾角αが1.06度であるという条件である。よって、このようなデータから分かるように、本発明による光学素子120を使用する表示装置100、例えば、画素112のサイズが7.8マイクロメートルである表示パネル110の表示装置100では、光学素子120の総厚みTAが3.2ミリメートルであることのみにより、解像度を向上させる効果を達成することができ、また、空気層124の厚みは、
図5に示すように、800マイクロメートル(μm)である。
【0032】
以上のことを纏めると、本発明の実施例は、少なくとも次の1つの利点又は機能・効果を有する。即ち、本発明の実施例では、光学素子は、第一双屈折層、第二双屈折層及びガス層を含み、且つ表示パネルとレンズ素子との間に配置され、そのうち、ガス層の延伸方向は、光学素子の延伸方向に傾斜し、且つガス層は、第一双屈折層と第二双屈折層との間に配置される。よって、表示パネルが映像光束を発した時に、映像光束は、順に、第一双屈折層、ガス層、第二双屈折層及びレンズ素子を通過し、また、ガス層に進入した時に、偏向角度が異なる第一サブ映像光束及び第二サブ映像光束を生成し、そのうち、第一サブ映像光束及び第二サブ映像光束の伝播径路は、第二双屈折層から射出した後に、両者間にオフセット距離がある。よって、使用者は、第一サブ映像光束及び第二サブ映像光束の合成による高解像度の映像を見ることができる。
【0033】
本発明は、前述した好適な実施例に基づいて以上のように開示されたが、前述した好適な実施例は、本発明を限定するためのものでなく、当業者は、本発明の精神と範囲を離脱しない限り、本発明に対して些細な変更や潤色を行うことができるので、本発明の保護範囲は、添付した特許請求の範囲に定まったものを基準とする。また、本発明の何れの実施例又は特許請求の範囲は、本発明に開示された全ての目的又は利点又は特徴を達成する必要がない。また、要約の一部と発明の名称は、文献の検索を助けるためのみのものであり、本発明の権利範囲を限定するものでない。また、本明細書又は特許請求の範囲に言及している「第一」、「第二」などの用語は、要素(element)に名前を付け、または、異なる実施例又は範囲を区別するためのもののみであり、要素の数量上の上限又は下限を限定するためのものでない。
【符号の説明】
【0034】
100:表示装置
110:表示パネル
112:画素
120、120A:光学素子
122A:第一双屈折層
122B:第二双屈折層
124:ガス層
126:基板
128A:第一透明導電層
128B:第二透明導電層
128C:第三透明導電層
128D:第四透明導電層
130:レンズ素子
140:調整可能な位相遅延素子
201、202:データ
D1、D2:延伸方向
DP:オフセット距離
DP1:第一オフセット距離
DP2:第二オフセット距離
IL:映像光束
IL1:第一サブ映像光束
IL2:第二サブ映像光束
S:支持部品
T、TS:厚み
TA:総厚み
P:ピューピル
PI:ピッチ