(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】蓋体および蓋体を備える容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20220314BHJP
B65D 51/16 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D51/16 310
(21)【出願番号】P 2018238216
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000158943
【氏名又は名称】株式会社積水化成品関西
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163979
【氏名又は名称】濱名 哲也
(72)【発明者】
【氏名】井下 英一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 悠司
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-52518(JP,A)
【文献】登録実用新案第3203611(JP,U)
【文献】実開平4-29976(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0244444(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 51/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の開口部を覆う蓋体であって、
前記蓋体は、切込みと、前記切込みを縁として有する切込片と、前記切込片を補強するリブと、前記切込片に設けられて前記リブに隣接する面部とを有し、
前記切込みは、切込み長さがL1であり、前記切込みの第1端と第2端とを結ぶ直線の長さがL2であるときに、前記切込みはL1>L2の関係を有し、
前記リブは、前記切込みの前記第1端と前記第2端との間に設けられ、
前記面部は、前記切込みの前記第1端と前記リブとの間の部位および前記切込みの前記第2端と前記リブとの間の部位の少なくとも一方に設けられる
蓋体。
【請求項2】
前記蓋体は、前記蓋体が前記容器本体に嵌合した嵌合状態において前記蓋体から前記容器本体に向く方向である下方に凹む凹部を有し、
前記凹部の底壁には、前記切込み、前記リブおよび前記面部が設けられ、
前記リブは、前記下方とは反対方向の上方に突出し、かつ、前記リブの高さ寸法が前記凹部の深さ寸法よりも小さいように、構成される
請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
前記切込みの前記第1端と前記第2端との間には、1つの前記リブが設けられ、
前記面部は、一定幅で前記切込みに沿うように前記リブの周囲に設けられる
請求項1または2に記載の蓋体。
【請求項4】
前記切込みは、U字状である
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓋体。
【請求項5】
前記蓋体から前記容器本体に向かう方向に前記蓋体を見たとき、前記リブは、前記切込みの前記第1端と前記第2端とを結ぶ直線に交差するように延び、
前記リブは、前記直線よりも前記切込み側の第1部分と、前記第1部分以外の部分である第2部分とを有し、前記第2部分の長さは、前記第1部分の長さよりも長い
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓋体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の蓋体と、前記容器本体とを備える、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体、および蓋体を備える容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品用の容器に関する技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の容器は、容器本体と、蓋とを備える。蓋には、食品が入った状態の容器が加熱されたときに発生する蒸気を逃すための切込片が設けられる。切込片は、舌片状に構成される。同文献の技術では、切込片自体が、補強リブとして構成される。この技術によれば、切込片は、容器本体側に折れ曲がることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓋に設けられる切込片が、容器本体側に折れ曲がる場合と、容器本体側とは反対側に折れ曲がる場合とがある。いずれの場合であっても、食品容器内に異物が侵入する虞がある。特許文献1に記載の技術の場合、切込片が、容器本体側とは反対側に折れ曲がる虞がある。切込片が折れ曲がると異物が入る虞がある。異物侵入対策として、従来、食品容器全体がフィルムで包装されるが、近年、省資源の観点から、フィルムの削減の傾向にある。そこで、切込片の変形が抑制される蓋体および蓋体を備える容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する蓋体は、容器本体の開口部を覆う蓋体であって、前記蓋体は、切込みと、前記切込みを縁として有する切込片と、前記切込片を補強するリブと、前記切込片に設けられて前記リブに隣接する面部とを有し、前記切込みは、切込み長さがL1であり、前記切込みの第1端と第2端とを結ぶ直線の長さがL2であるときに、前記切込みはL1>L2の関係を有し、前記リブは、前記切込みの前記第1端と前記第2端との間に設けられ、前記面部は、前記切込みの前記第1端と前記リブとの間の部位および前記切込みの前記第2端と前記リブとの間の部位の少なくとも一方に設けられる。
【0006】
この構成によれば、リブおよびリブの周辺に設けられる面部によって、切込片が補強されるため、切込片の弾性が増し、切込片の変形が抑制される。切込片の変形とは、切込片の変形後に、変形前の初期位置に戻らない状態を示す。
【0007】
(2)上記蓋体は、前記蓋体が前記容器本体に嵌合した嵌合状態において前記蓋体から前記容器本体に向く方向である下方に凹む凹部を有し、前記凹部の底壁には、前記切込み、前記リブおよび前記面部が設けられ、前記リブは、前記下方とは反対方向の上方に突出し、かつ、前記リブの高さ寸法が前記凹部の深さ寸法よりも小さいように、構成される。
【0008】
この構成によれば、凹部を覆うようにシュリンクフィルムが蓋体に取り付けられる場合において、シュリンクフィルムにリブが接触しない。このため、シュリンクフィルムによって、リブが押し下げられることがなく、切込みに隙間が生じない、または、切込みの隙間が拡大しない。
【0009】
(3)上記蓋体において、前記切込みの前記第1端と前記第2端との間には、1つの前記リブが設けられ、前記面部は、一定幅で前記切込みに沿うように前記リブの周囲に設けられる。この構成によれば、切込片の弾性が更に高まり、切込片の変形がさらに抑制される。
【0010】
(4)上記蓋体において、前記切込みは、U字状である。切込片が角部を有する場合、切込みの製造時に、角部において変形が生じ、角部において隙間が生じる虞がある。これに対し、この構成によれば、切込みがU字状であって切込片に角部がないことから、変形に基づく隙間の形成が抑制される。
【0011】
(5)上記蓋体において、前記蓋体から前記容器本体に向かう方向に前記蓋体を見たとき、前記リブは、前記切込みの前記第1端と前記第2端とを結ぶ直線に交差するように延び、前記リブは、前記直線よりも前記切込み側の第1部分と、前記第1部分以外の部分である第2部分とを有し、前記第2部分の長さは、前記第1部分の長さよりも長い。
【0012】
切込片は、切込みの第1端と第2端とを結ぶ直線において折れやすい。第2部分の長さが短い場合、切込片は、第2部分側のリブ端部で折れる虞がある。この点、上記構成によれば、第2部分の長さが第1部分の長さよりも長いことから、切込みの第1端と第2端とを結ぶ直線の周辺および第2部分側のリブ端部周辺で折れる虞が少なくなる。このようにして、切込片の変形および切込片の周辺の変形が抑制されることによって、切込みに隙間が生じることが抑制される。
【0013】
(6)上記課題を解決する容器は、上記いずれかの蓋体と、前記容器本体とを備える。この構成によれば、容器の蓋体において、切込片の変形が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
上記蓋および蓋を備える容器によれば、切込片の変形が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】(a)切込みの第1変形例の模式図、(b)切込みの第2変形例の模式図。
【
図6】(a)切込みの第4変形例の模式図、(b)切込みの第5変形例の模式図。
【
図7】(a)切込みの第6変形例の模式図、(b)切込みの第7変形例の模式図。
【
図10】(a)
図3のX-X線に沿うリブの断面図、(b)リブの第1変形例の断面図、(c)リブの第2変形例の断面図。
【
図11】(a)リブの第3変形例の断面図、(b)リブの第4変形例の断面図。
【
図13】(a)リブの第6変形例の断面図、(b)リブの第7変形例の断面図。
【
図15】(a)リブの第9変形例の平面図、(b)リブの第10変形例の平面図。
【
図16】(a)リブの第11変形例の平面図、(b)リブの第12変形例の平面図。
【
図17】(a)リブの第13変形例の側面図、(b)リブの第14変形例の側面図。
【
図18】(a)リブの第15変形例の側面図、(b)リブの第16変形例の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、容器について説明する。容器は、食品を収容するために用いられる。容器は、電子レンジによって加熱され得る。例えば、容器は、食品を収容した状態で加熱される。容器1に収容される食品として、例えば、ごはん、麺類、ごはんのおかず、カレー、シチュウ等が挙げられる。
【0017】
図1および
図2に示されるように、容器1は、容器本体2と、容器本体2の開口部2aを覆う蓋体10とを備える。以降の説明において、容器1を水平面に置いた姿勢において上下方向に沿う方向を、容器1の上下方向という。「下方」は、蓋体10が容器本体2に嵌合した嵌合状態において、蓋体10から容器本体2に向かう方向である。「上方」は、下方の反対方向である。
【0018】
蓋体10は、容器本体2に嵌合する。食品が容器1内に収容されて蓋体10が容器本体2に嵌合された状態において、容器1が加熱されると、食品から蒸気が発生し、容器1内の圧力が上昇する。蓋体10は、蒸気によって外れないように、容器本体2に嵌合する。蒸気は、蓋体10に設けられる後述の切込片23から逃される。
【0019】
容器本体2は、各種の合成樹脂、紙、等によって形成される。合成樹脂として、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリエチレンフラノエート系樹脂等のポリエステル系樹脂、等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂としては、耐熱性を向上させるために、ポリスチレン樹脂100質量部に対して、80質量部以下のポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させることが好ましい。紙としては、例えば、厚紙、厚紙に合成樹脂フィルムを積層した耐水紙、等が挙げられる。容器本体2は、軽量性や断熱性を向上させるために、発泡合成樹脂によって形成されることが好ましい。発泡合成樹脂として、例えば、発泡ポリスチレン系樹脂、発泡ポリエチレン系樹脂や発泡ポリプロピレン系樹脂等の発泡オレフィン系樹脂、発泡ポリエチレンテレフタレート系樹脂や発泡ポリエチレンフラノエート系樹脂等の発泡ポリエステル系樹脂、等が挙げられる。発泡合成樹脂の少なくとも片面に、耐衝撃性や意匠性を向上させるために、合成樹脂フィルムを積層させることが好ましい。容器本体2は、底壁3と、底壁3の周囲に設けられる側壁4と、側壁4の周囲に設けられる容器側嵌合部5とを有する。容器側嵌合部5の上側が開口部2aである。容器側嵌合部5には、蓋体10の蓋側嵌合部13が嵌合する。
図1および
図2に例示される嵌合方式は内嵌合方式である。例示はしないが、外嵌合方式であっても内外嵌合方式であってもよい。
【0020】
蓋体10は、各種の合成樹脂によって形成される。合成樹脂として、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリエチレンフラノエート系樹脂等のポリエステル系樹脂、等が挙げられる。蓋体10は、容器本体2に収容された食品の視認性を向上させるために、透明であることが好ましい。
【0021】
蓋体10は、切込み20と、切込み20を縁として有する切込片23と、切込片23を補強するリブ25と、切込片23に設けられてリブ25に隣接する面部30とを有する。
切込み20は、せん断によって形成される。例えば、切込み20は、雄型と雌型とを備えるプレス装置によるプレスによって形成される。切込片23は、上述のように、蒸気を逃す弁である。蓋体10に蒸気圧が加わっていないとき、切込み20は閉じられている。蓋体10に蒸気圧が加わると、切込片23が持ち上がって、切込み20に隙間が形成される。蒸気はこの隙間を通って容器1の外部に出る。
【0022】
図2を参照して、蓋体10の一例を挙げる。蓋体10は、天面部11と、天面部11の周囲に設けられる側面部12と、側面部12の周囲に設けられる蓋側嵌合部13とを備える。蓋側嵌合部13は、容器側嵌合部5に嵌合するように構成される。
【0023】
好ましくは、天面部11には、凹部15が設けられる。凹部15は、底壁16と、底壁16を囲む側壁17とを有する。凹部15は、下方に凹む。凹部15の底壁16には、切込み20、リブ25および面部30が設けられる。
【0024】
好ましくは、天面部11において凹部15の周囲には、1または複数の溝18が設けられる。溝18は、凹部15から蓋体10の側面部12に向かって延びる。溝18は、蒸気の排出通路になる。例えば、凹部15と溝18の凹部15側の部分とがシュリンクフィルム7によって覆われる。溝18において側面部12側の部分は、開口する。凹部15の切込み20から排出される蒸気は、凹部15および溝18を通って外部に排出される。
【0025】
図3に示されるように、切込み20は、第1端21と、第2端22と、第1端21と第2端22とを繋ぐ第1切断面20aと、第1端21と第2端22とを繋ぐ第2切断面20bとを有する。第1切断面20aは、切込片23側の端面を構成する面である。第2切断面20bは、切込み20の形成時に第1切断面20aと共に形成される面である。上述したように、蓋体10に蒸気圧が加わっていないとき、切込み20が閉じられている。以下では、第1切断面20aと蓋体10の上面との交線を「切込み線24」と言う。本実施形態では、蓋体10の上面は、凹部15の底壁16の上面16aを含む。「切込み20が閉じられる」状態とは、第1切断面20aの少なくとも一部分が、第2切断面20bに接触する状態を示し、または、切込片23の面部30の少なくとも一部分が、蓋体10の上面と同じ平面高さを有する状態を示す。切込み20を形成する方法としては、プレス装置のせん断による形成、切断刃の押し切りによる形成、レーザー光線の溶融による形成などの方法が挙げられる。プレス装置のせん断による形成は、第1切断面20aと第2切断面20bとの間の隙間がほとんどなく(隙間の最短距離は、好ましくは0.1mm以下、より好ましくは0.05mm以下)、第1切断面20aの少なくとも一部分が、第2切断面20bに接触する状態で形成することができ、異物の侵入を防止できるので、より好ましい形成方法である。切断刃の押し切りによる形成、レーザー光線の溶融による形成は、第1切断面20aと第2切断面20bとの間に僅かな隙間を生じさせるが、隙間の最短距離が好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.25mm以下とすることで、異物の侵入を防止できるので、好ましい形成方法である。
【0026】
切込み長さL1(
図3参照)は、切込み線24に沿った長さを示す。切込み長さがL1であり、切込み20の第1端21と第2端22とを結ぶ直線の長さ(以下、両端直線長さ)がL2であるとき、切込み20は、L1>L2の関係を有する。「第1端21と第2端22とを結ぶ直線の長さ(両端直線長さ)L2」とは、3次元空間において第1端21と第2端22とを最短経路で結ぶ直線の長さを示す。切込み20の形状は、蒸気圧によって切込片23が持ち上がり得るように構成される。本実施形態では、切込み20は、U字状である。
【0027】
切込み長さL1は、5mm以上100mm以下であることが好ましい。より好ましくは、切込み長さL1は、10mm以上80mm以下であり、更に好ましくは20mm以上60mm以下である。両端直線長さL2は、3mm以上50mm以下であることが好ましい。より好ましくは、両端直線長さL2は、5mm以上40mm以下であり、更に好ましくは7mm以上30mm以下である。
【0028】
リブ25は、切込み20の第1端21と第2端22との間に設けられる。切込み20の第1端21と第2端22との間には、複数のリブ25が設けられてもよい。本実施形態では、1つのリブ25が、切込み20の第1端21と第2端22との間に設けられる。
【0029】
具体的には、蓋体10から容器本体2に向かう方向に蓋体10を見たとき(平面視)、リブ25は、切込み20の第1端21と第2端22とを結ぶ直線LXに交差するように延びる。リブ25は、第1端21と第2端22とを結ぶ直線LXよりも切込み20側の第1部分26と、第1部分26以外の部分である第2部分27とを有する。例えば、リブ25の全長に対する第2部分27の長さ、すなわち「第2部分27の長さ」/「リブ25の全長」は、0.1以上0.9以下であることが好ましい。より好ましくは、「第2部分27の長さ」/「リブ25の全長」は、0.2以上0.8以下であり、更に好ましくは0.3以上0.7以下である。本実施形態(
図3参照)では、第2部分27の長さは、第1部分26の長さよりも長い。他の例(
図6(b)、
図7(a)、
図9参照)では、第2部分27の長さは、第1部分26の長さよりも短い。
【0030】
リブ25は、リブ25の周辺部に対して突出する部分、またはリブ25の周辺に対して凹む部分として構成される。本実施形態では、リブ25は、上方に突出する。好ましくは、リブ25の高さ寸法L4は、凹部15の深さ寸法L3よりも小さい。
【0031】
リブ25の幅L6は、1mm以上49mm以下であることが好ましい。より好ましくは、リブ25の幅L6は、3mm以上37mm以下であり、更に好ましくは5mm以上25mm以下である。リブ25の長さL5は、1mm以上80mm以下であることが好ましい。より好ましくは、リブ25の長さL5は、2mm以上60mm以下であり、更に好ましくは4mm以上40mm以下である。
【0032】
凹部15の深さ寸法L3は、1mm以上10mm以下であることが好ましい。リブ25の高さ寸法L4は、0.5mm以上8mm以下であることが好ましい。また、リブ25の高さ寸法L4は、凹部15の深さ寸法L3よりも小さいことが好ましい。凹部15の深さ寸法L3は、2mm以上8mm以下であることがより好ましい。リブ25の高さ寸法L4は、1mm以上6mm以下であることがより好ましい。また、リブ25の高さ寸法L4は、凹部15の深さ寸法L3よりも低いことがより好ましい。「凹部15の深さ寸法L3」から「リブ25の高さ寸法L4」を引いた差分は、0.5mm以上9.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは、1mm以上7mm以下である。
【0033】
面部30は、切込み20の第1端21とリブ25との間の部位および切込み20の第2端22とリブ25との間の部位の少なくとも一方に設けられる。好ましくは、面部30は、一定幅で切込み20に沿うようにリブ25の周囲に設けられる。ここで、一定幅とは、リブ25から切込み20までの幅寸法について、最小長さに対する最大長さの比が4以下であることを示す。面部30の幅寸法の最小長さは、0.5mm以上20mm以下であることが好ましく、1.0mm以上10mm以下であることがより好ましく、1.5mm以上5mm以下がより好ましい。
【0034】
面部30は、面部30の上面と凹部15の底壁16の上面16aとが面一となるように構成される。面部30は、上下方向に対して傾斜する傾斜面であってもよい。また、面部30は、曲面であってもよい。面部30およびリブ25の側壁がともに板状である場合、リブ25の側壁と面部30との間には、屈曲部31が設けられる。屈曲部31は、リブ25とともに切込片23を補強する。面部30が曲面構造である場合、面部30自体が、切込片23を補強する。
【0035】
切込み20の大きさおよび形状、リブ25の大きさおよび形状、並びに、面部30の大きさおよび形状(以下、これらを「切込み20等の形態」という。)は、次の2つの要件を満たすように構成される。第1に、切込み20等の形態は、蓋体10に蒸気圧が加わっていないとき、切込片23が初期位置に配置されるように構成される。初期位置とは、第1切断面20aが第2切断面20bに接触するときの切込片23の位置を示す。第2に、切込み20等の形態は、蒸気圧によって切込片23が持ち上がるように構成される。具体的には、切込み等の形態の設計には、次の(a)~(f)の情報が反映される。
【0036】
(a)面部30の面積が大きいほど、蒸気圧によって切込片23は持ち上がりやすい。(b)切込み長さL1が長いほど、蒸気圧によって切込片23は持ち上がりやすい。(c)切込み線24上の点のうちで下記の3点距離が最も大きくなる点P(
図3参照)について、当該点Pにおける3点距離(最大3点距離)が長くなるほど、蒸気圧によって切込片23は持ち上がりやすい。3点距離は、切込み線24上の点と第1端21との間の第1距離と、切込み線24上の点と第2端22との間の第2距離とを合計した距離を示す。以下では、切込み線24上の点のうちで3点距離が最も大きくなる点Pにおける3点距離を「最大3点距離」という。(d)リブ25の高さ寸法L4が高いほど、切込片23が初期位置に戻りやすい。(e)リブ25の第2部分27の長さが長いほど、切込片23が初期位置に戻りやすい。(f)リブ25の側面25aと面部30との間の角度が、90度よりも大きい場合または90度よりも小さい場合、当該角度が90度に近づくほど、切込片23が初期位置に戻りやすい。最大3点距離は、4mm以上90mm以下であることが好ましい。より好ましくは、最大3点距離は、9mm以上70mm以下であり、更に好ましくは17mm以上55mm以下である。
【0037】
[実施例]
以下に実施例の切込み20およびリブ25の寸法の一例を示す。
切込み長さL1(
図3参照)は、30mmである。両端直線長さL2(
図3参照)は、14mmである。リブ25から切込み20までの幅寸法の最小長さは、2mmである。最大3点距離は、26mmである。リブ25の長さL5(
図3参照)は、22.5mmである。リブ25の全長(L5)に対する第2部分27の長さの比率は、0.6である。リブ25の幅L6(
図3参照)は、10mmである。リブ25の高さ寸法L4(
図2参照)は、2mmである。凹部15の深さ寸法L3(
図2参照)は、5mmである。
【0038】
以下、実施形態の作用を説明する。
切込み20は、プレス装置のせん断によって形成される。切込み20が形成されるとき、切込片23は、切込み20の周囲に対して雌型側に変位する。形成時において、切込片23は、プレス装置の押し戻しばねによって雄型側に押し戻されるため、殆どの切込片23は、せん断方向(プレス方向と同じ)において切込み20の周囲と同じ位置(初期位置)に戻る。しかし、切込片23が板状である場合、切込み20の第1端21と第2端22とを結ぶ線に沿う部分で曲がった状態となって、せん断方向において切込片23の周囲と同じ位置(初期位置)に戻らないことがある。切込片23が、切込片23の周囲と同じ位置に戻らないように変形すると、切込み20の隙間が閉じられずに切込み20が開いた状態で維持される。切込み20に隙間が存在すると、異物が容器1内に入る虞がある。
【0039】
本実施形態では、リブ25が、切込み20の第1端21と第2端22との間に配置される。リブ25は、切込片23と、切込片23の周囲部分とに亘るように設けられる(以下、「リブ延長構造」)。リブ延長構造によって、切込片23の可動方向DTにおける切込片23の弾性が高まる。可動方向DTとは、せん断方向と等しい。さらに、リブ25と切込み20との間には面部30が設けられる(以下、「面部構造」)。面部30によって、面部30を有しない切込片23に比べて、切込片23の変形から元の形状に戻る復帰力が高まる。例えば、切込片23が、外部の力によって捻じられたり、曲げられたりする場合でも、外部の力が解放されると、切込片23は、元の形状に戻る。このように、リブ延長構造および面部構造によれば、初期位置に戻る自己復帰作用が大きくなる。このため、可動方向DTに切込片23が変位した後、切込片23は、切込片23の周囲部分と同じ位置(初期位置)に戻り易くなる。
【0040】
例えば、切込片23の形成時において、雄型に押されて切込片23は雌型側に変位するが、プレス装置の押し戻しばねの作用と、リブ延長構造および面部構造とに基づく自己復帰作用とによって、切込片23は、せん断方向(プレス方向と同じ)において切込み20の周囲と同じ位置(初期位置)に戻る。このように、可動方向DTに切込片23が変位した状態で切込片23が固定されるような変形が、抑制される。
【0041】
食品が収容された状態で容器1が加熱されるときは、切込片23は、次のように動作する。蓋体10に蒸気圧が加わるとき、蒸気圧によって切込片23が上に変位する。その後、蒸気圧が低下すると、自己復帰の自己復帰作用によって、切込片23が初期位置に戻る。
【0042】
以下、実施形態の効果を説明する。
(1)蓋体10は、切込み20と、切込み20を縁として有する切込片23と、切込片23を補強するリブ25と、切込片23に設けられてリブ25に隣接する面部30とを有する。リブ25は、切込み20の第1端21と第2端22との間に設けられる。面部30は、切込み20の第1端21とリブ25との間の部位および切込み20の第2端22とリブ25との間の部位の少なくとも一方に設けられる。
【0043】
この構成によれば、リブ25およびリブ25の周辺に設けられる面部30によって、切込片23が補強されるため、切込片23の弾性が増し、切込片23の変形が抑制される。切込片23の変形とは、切込片23の変形後に、変形前の初期位置に戻らない状態を示す。
【0044】
(2)蓋体10は、下方に凹む凹部15を有する。凹部15の底壁16には、切込み20、リブ25および面部30が設けられる。リブ25は、上方に突出し、かつ、リブ25の高さ寸法L4が凹部15の深さ寸法L3よりも小さいように、構成される。
【0045】
この構成によれば、凹部15を覆うようにシュリンクフィルム7が蓋体10に取り付けられる場合において、シュリンクフィルム7にリブ25が接触しない。このため、シュリンクフィルム7によって、リブ25が押し下げられることがなく、切込み20に隙間が生じない、または切込み20の隙間が拡大しない。また、食品が収容された状態の容器1が加熱される場合、切込片23の持ち上がりが妨げられない。これによって、食品を収容した容器1を温めたときに食品から発生する蒸気を切込片23を介して外部に円滑に逃すことができる。
【0046】
(3)切込み20の第1端21と第2端22との間には、1つのリブ25が設けられる。面部30は、一定幅で切込み20に沿うようにリブ25の周囲に設けられる。この構成によれば、切込片23の弾性が更に高まり、切込片23の変形がさらに抑制される。
【0047】
(4)切込み20は、例えば、U字状である。切込片23が角部を有する場合、切込み20の製造時に、角部において変形が生じ、角部において隙間が生じる虞がある。これに対し、この構成によれば、切込み20がU字状であって切込片23に角部がないことから、変形に基づく隙間の形成が抑制される。
【0048】
(5)蓋体10から容器本体2に向かう方向に蓋体10を見たとき、リブ25は、切込み20の第1端21と第2端22とを結ぶ直線LXに交差するように延びる。リブ25は、直線LXよりも切込み20側の第1部分26と、第1部分26以外の部分である第2部分27とを有する。第2部分27の長さは、第1部分26の長さよりも長い。
【0049】
切込片23は、切込み20の第1端21と第2端22とを結ぶ直線LXにおいて折れやすい。第2部分27の長さが短い場合、切込片23は、第2部分27側のリブ端部で折れる虞がある。この点、上記構成によれば、第2部分27の長さが第1部分26の長さよりも長いことから、切込み20の第1端21と第2端22とを結ぶ直線LXの周辺および第2部分27側のリブ端部周辺で折れる虞が少なくなる。このようにして、切込片23の変形および切込片23の周辺の変形が抑制されることによって、切込み20に隙間が生じることが抑制される。
【0050】
(6)容器1は、実施形態に示される蓋体10と、容器本体2とを備える。蓋体10は、少なくとも上記(1)の構成を有する。この構成によれば、容器1の蓋体10において、切込片23の変形が抑制される。
【0051】
<その他の実施形態>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
・切込み20は、U字状に限定されない。
図4(a)に示されるように、切込み41は、平面視において、2つの鈍角の角部41a,41aを有する形状であってもよい。
図4(b)に示されるように、切込み42は、平面視において、2つの鋭角の角部42a、42aを有する形状であってもよい。
図5に示されるように、切込み43は、平面視において、V字状であってもよい。V字は、先端が尖っていてもよいし、丸まっていてもよい。
【0053】
図6(a)に示されるように、切込み44は、平面視において、中心角度が180度以上の円弧であってもよい。
図6(b)に示されるように、切込み45は、平面視において、複数の円弧からなる曲線であってもよい。例えば、切込み45は、中心角度が180度以上の第1円弧45aと、第1円弧45aの両端それぞれに繋がる2つの第2円弧45b,45bとを備える。この例では、第2円弧45bの中心は、第1円弧45aの外側に配置される。
【0054】
図7(a)に示されるように、切込み46は、複数の円弧と複数の直線とからなる曲線であってもよい。例えば、切込み46は、第1円弧46aと、第1円弧46aの両端それぞれから延びる2つの直線部46bと、2つの直線部46bのそれぞれに繋がる2つの第2円弧46cとを備える。
図7(a)では、2つの直線部46bは、2つの直線部46bの間の間隔距離が第2円弧46cから第1円弧46aに向かって広がるように、配置される。
図7(b)に示されるように、切込み47は、第1円弧47aと、第1円弧47aの両端それぞれから延びる2つの直線部47bと、2つの直線部47bのそれぞれに繋がる2つの第2円弧47cとを備える。
図7(b)では、2つの直線部47bは、平行である。
【0055】
図8に示されるように、切込み48は、2つの円弧48a,48bからなる曲線であってもよい。一方の円弧48aの開口方向は、他方の円弧48bの開口方向と反対方向である。このような切込み48の場合、各円弧48a,48bに対してリブ25が設けられることが好ましい。
【0056】
図9に示されるように、切込み49は、凸凹部に設けられてもよい。例えば、リブ25の周囲に、複数の凸部50または凹部が配列される。複数の凸部50または凹部は、U字状に配列される。配列された凸部50または凹部に、切込み49が設けられる。
【0057】
・リブ25の断面形状は、限定されない。
図10(a)は、上記の実施形態に示されるリブ25の断面図である。
図10~
図14の各図は、いずれも
図3に示されるX-X線と同等の場所で切断されたリブ51~58の断面図である。
【0058】
図10(b)に示されるように、リブ51の断面は、下方に広がるような形状であってもよい。リブ51の一対の側壁51aの間隔距離は、下方に向かって広がる。
図10(c)に示されるように、リブ52の断面は、上に尖った形状であってもよい。
図11(a)に示されるように、リブ53の断面は、上に丸まった形状であってもよい。
図11(b)に示されるように、リブ54の断面は、上に丸まった半楕円形状であってもよい。
【0059】
図12に示されるように、リブ55の断面は、2つの凸部55a,55aを有する形状であってもよい。
図13(a)に示されるように、リブ56の断面は、1つの凸部56aと1つの凹部56bとを有する形状であってもよい。
図13(b)に示されるように、リブ57の断面は、1つの凸部57aと1つの凹部57bとを有してもよい。凸部57aおよび凹部57bは、曲面に構成される。
図14に示されるように、リブ58の断面は、1つの凸部58aと、1つの凹部58bと、凸部58aと凹部58bとを繋ぐ面部58cとを有する形状であってもよい。
【0060】
・リブ25の平面視の形状は、限定されない。
図15(a)に示されるように、リブ61は、平面視において角が丸まった矩形であってもよい。
図15(b)に示されるように、リブ62は、平面視において角が丸まった正方形であってもよい。
図16(a)に示されるように、リブ63は、平面視において楕円形状であってもよい。
図16(b)に示されるように、リブ64は、平面視において円形であってもよい。
【0061】
・リブ25の側面形状は、限定されない。リブ25の側面形状とは、切込み20の第1端21と第2端22とを結ぶ直線LXに沿う方向からみる側面視における側面形状を示す。
図17(a)に示されるように、リブ65は、側面視において上側の角が丸まった矩形であってもよい。
図17(b)に示されるように、リブ66は、側面視において上側の角が丸まった正方形であってもよい。
図18(a)に示されるように、リブ67は、側面視において半楕円であってもよい。
図18(b)に示されるように、リブ68は、側面視において半円形であってもよい。
【0062】
・本実施形態では、リブ25は、上方に突出するが、リブ25は、下方に突出してもよい。また、リブ25は、上に突出する部分と下に突出する部分とを有してもよい。この場合、
図13(a)および
図13(b)に示されるリブ56,67のように、上に突出する部分と下に突出する部分との並びの方向は、切込み20の第1端21と第2端22とを結ぶ直線LXに沿う方向DAであることが好ましい。
【0063】
・本実施形態では、蓋体10には、1つの切込み20および1つのリブ25が設けられているが、蓋体10には、複数の切込み20および複数のリブ25が設けられてもよい。複数の切込み20は繋がっていてもよい。複数の切込み20は、繋がらずに、蓋体10において離れたところに配置されてもよい。また、蓋体10には、1つの切込み20に複数のリブ25が設けられていてもよいし、1つのリブ25に複数の切込み20が設けられていてもよい。
【0064】
・
図19に示されるように、切込み20の周辺に、リブ25とは別に追加リブ70が設けられてもよい。
図19では、2つの追加リブ70,70は、切込片23を挟むように配置される。追加リブ70は、切込み20の周辺部を、周辺部が変形しないように補強する。これによって、切込み20の周辺部の変形が抑制される結果、切込片23の変形がさらに抑制される。
【0065】
・
図20に示されるように、リブ72が凹部15に設けられる場合、リブ72は、凹部15の側壁17に接続されてもよい。これによって、リブ72の変形が抑制され、この結果、切込片23の変形がさらに抑制される。
【符号の説明】
【0066】
DT…可動方向、L1…切込み長さ、L2…端直線長さ、L3…深さ寸法、L4…高さ寸法、L5…長さ、L6…幅、LX…直線、P…点、1…容器、2…容器本体、2a…開口部、3…底壁、4…側壁、5…容器側嵌合部、7…シュリンクフィルム、10…蓋体、11…天面部、12…側面部、13…蓋側嵌合部、15…凹部、16…底壁、16a…上面、17…側壁、18…溝、20…切込み、20a…第1切断面、20b…第2切断面、21…第1端、22…第2端、23…切込片、24…切込み線、25…リブ、25a…側面、26…第1部分、27…第2部分、30…面部、31…屈曲部、41…切込み、41a…角部、42…切込み、42a…角部、43…切込み、44…切込み、45…切込み、45a…第1円弧、45b…第2円弧、46…切込み、46a…第1円弧、46b…直線部、46c…第2円弧、47…切込み、47a…第1円弧、47b…直線部、47c…第2円弧、48…切込み、48a…円弧、48b…円弧、49…切込み、50…凸部、51…リブ、51a…側壁、52…リブ、53…リブ、54…リブ、55…リブ、55a…凸部、56…リブ、56a…凸部、56b…凹部、57…リブ、57a…凸部、57b…凹部、58…リブ、58a…凸部、58b…凹部、58c…面部、61…リブ、62…リブ、63…リブ、64…リブ、65…リブ、66…リブ、67…リブ、68…リブ、70…追加リブ、72…リブ。