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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
H02K33/16 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018518677
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2018011584
(87)【国際公開番号】W WO2018180945
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2017068655
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕士
(72)【発明者】
【氏名】武田 正
(72)【発明者】
【氏名】土橋 将生
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-250637(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167297(WO,A1)
【文献】特開2013-243883(JP,A)
【文献】特開2016-127789(JP,A)
【文献】特開平03-296112(JP,A)
【文献】国際公開第2010/103831(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体に対して移動可能な可動体と、
第1方向で対向する第1コイルおよび第1磁石を備え、前記可動体を前記第1方向に対して直交する第2方向に駆動する駆動力を発生させる第1磁気駆動回路と、
前記第1方向で対向する第2コイルおよび第2磁石を備え、前記可動体を前記第1方向と直交する第2方向に駆動する駆動力を発生させる第2磁気駆動回路と、
前記第1磁気駆動回路から離間する位置に前記第1方向で対向する第3コイルおよび第3磁石を備え、前記可動体を前記第1方向と直交し、前記第2方向と交差する第3方向に駆動する駆動力を発生させる第3磁気駆動回路と、
前記支持体に保持された基板と、
を有し、
前記基板には、前記第1コイルの一方端に電気的に接続された第1給電電極と、前記第1コイルの他方端に電気的に接続された第2給電電極と、前記第2コイルの一方端に電気的に接続された第3給電電極と、前記第2コイルの他方端に電気的に接続された第4給電電極と、前記第3コイルの一方端に電気的に接続された第5給電電極と、前記第3コイルの他方端に電気的に接続された第6給電電極と、を有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記支持体は、前記可動体、前記第1磁気駆動回路、前記第2磁気駆動回路、および前記第3磁気駆動回路を覆うカバーを備え、
前記カバーには、前記第1給電電極、前記第2給電電極、前記第3給電電極、前記第4給電電極、前記第5給電電極、および前記第6給電電極を露出させる開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記第1給電電極、前記第2給電電極、前記第3給電電極、前記第4給電電極、前記第5給電電極、および前記第6給電電極の各々に独立して配線が接続されていることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記第1給電電極および前記第2給電電極を介して前記第1コイルに印加される第1コイル駆動信号と、前記第5給電電極および前記第6給電電極を介して前記第3コイルに印加される第3コイル駆動信号とは異なる波形を有していることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記第1コイル駆動信号と前記第3コイル駆動信号とは、逆相の波形を有し、
前記第1磁気駆動回路と前記第3磁気駆動回路とは、前記可動体を前記第2方向で逆向きに駆動する駆動力を発生させることを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記第1磁気駆動回路、前記第2磁気駆動回路、および前記第3磁気駆動回路は、前記第1方向の一方側から他方側に順に重ねて配置されていることを特徴とする請求項1から5までの何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第2磁気駆動回路の磁気的中心位置は、前記可動体の重心と前記第1方向、前記第2方向、および前記第3方向で一致する位置、またはほぼ一致する位置にあり、
前記第1磁気駆動回路の磁気的中心位置と前記第3磁気駆動回路の磁気的中心位置とを合成した磁気的中心位置は、前記可動体の重心と前記第1方向、前記第2方向、および前記第3方向で一致する位置、またはほぼ一致する位置にあることを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種振動を発生させるアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気駆動機構によって振動を発生させる機器として、磁石を備えた支持体と、磁石と第1方向で対向するコイルを備えた可動体とを有し、可動体と支持体との間に弾性部材が配置されたアクチュエータが提案されている(特許文献1参照)。また、特許文献1に記載のアクチュエータでは、可動体を第1方向に直交する第2方向に直線的に駆動する第1磁気駆動回路が第1方向で離間する2個所に設けられているとともに、可動体を第1方向に直交し、第2方向に交差する第3方向に直線的に駆動する第2磁気駆動回路が第2方向の2個所に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-127789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のアクチュエータにおいて、可動体に第2方向での振動、および第3方向での振動を行わせる場合、2つの第1磁気駆動回路に用いたコイルに同一波形の駆動信号を印加する一方、2つの第2磁気駆動回路に用いたコイルに同一波形の駆動信号を印加する。このため、2つの第1磁気駆動回路に用いたコイルに対する給電電極を共通化し、2つの第2磁気駆動回路に用いたコイルに対する給電電極を共通化した構成が採用される。一方、特許文献1には、2つの第1磁気駆動回路に用いたコイルに逆相の交流を印加することによって可動体に第2方向に対して直交する軸線周りの往復回転させる動作を行わせることが提案されているが、上記のように給電電極を共通化した場合、2つの第1磁気駆動回路に用いたコイルに逆相の交流を印加することが困難である。したがって、第2方向に対して直交する軸線周りに往復回転させるには、コイルと上記回路との配線接続を切り換える必要があるため、第2方向に直交する軸線周りの回転駆動を行わせるのは容易ではない。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、複数の磁気駆動回路の各々のコイルに対して任意の駆動信号を供給することのできるアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、支持体と、前記支持体に対して移動可能な可動体と、第1方向で対向する第1コイルおよび第1磁石を備え、前記可動体を前記第1方向に対して直交する第2方向に駆動する駆動力を発生させる第1磁気駆動回路と、前記第1方向で対向する第2コイルおよび第2磁石を備え、前記可動体を前記第1方向と直交する第2方向に駆動する駆動力を発生させる第2磁気駆動回路と、前記第1磁気駆動回路から離間する位置に前記第1方向で対向する第3コイルおよび第3磁石を備え、前記可動体を前記第1方向と直交し、前記第2方向と交差する第3方向に駆動する駆動力を発生させる第3磁気駆動回路と、前記支持体に保持された基板と、を有し、前記基板には、前記第1コイルの一方端に電気的に接続された第1給電電極と、前記第1コイルの他方端に電気的に接続された第2給電電極と、前記第2コイルの一方端に電気的に接続された第3給電電極と、前記第2コイルの他方端に電気的に接続された第4給電電極と、前記第3コイルの一方端に電気的に接続された第5給電電極と、前記第3コイルの他方端に電気的に接続された第6給電電極と、が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明において、支持体に保持された基板には、第1コイルの一方端に電気的に接続された第1給電電極と、第1コイルの他方端に電気的に接続された第2給電電極と、第2コイルの一方端に電気的に接続された第3給電電極と、第2コイルの他方端に電気的に接続された第4給電電極と、第3コイルの一方端に電気的に接続された第5給電電極と、第3コイルの他方端に電気的に接続された第6給電電極とが設けられている。このため、第1電極および第2電極を介して第1コイルに駆動信号を供給する際、第1コイルに供給される駆動振動と同一の駆動信号を第3コイルに供給することができる。また、第1電極および第2電極を介して第1コイルに駆動信号を供給する際、第1コイルに供給される駆動振動と波形の異なる任意の駆動信号を第5給電電極および第6給電電極を介して第3コイルに供給することができる。したがって、可動体には、第1コイルに供給される駆動信号に基づく駆動と、第3コイルに供給される駆動信号に基づく駆動とを組み合わせた複雑な駆動を容易に行うことができる。
【0008】
本発明において、前記支持体は、前記可動体、前記第1磁気駆動回路、前記第2磁気駆動回路、および前記第3磁気駆動回路を覆うカバーを備え、前記カバーには、前記第1給電電極、前記第2給電電極、前記第3給電電極、前記第4給電電極、前記第5給電電極、および前記第6給電電極を露出させる開口部が形成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、カバーを設けた場合でも、可動体には、第1コイルに供給される駆動信号に基づく駆動と、第3コイルに供給される駆動信号に基づく駆動とを組み合わせた複雑な駆動を容易に行うことができる。
【0009】
本発明において、前記第1給電電極、前記第2給電電極、前記第3給電電極、前記第4給電電極、前記第5給電電極、および前記第6給電電極の各々に独立して配線が接続されている態様を採用することができる。
【0010】
本発明において、前記第1給電電極および前記第2給電電極を介して前記第1コイルに印加される第1コイル駆動信号と、前記第5給電電極および前記第6給電電極を介して前記第3コイルに印加される第3コイル駆動信号とは異なる波形を有している態様を採用することができる。例えば、前記第1コイル駆動信号と前記第3コイル駆動信号とは、逆相の波形を有し、前記第1磁気駆動回路と前記第3磁気駆動回路とは、前記可動体を前記第2方向で逆向きに駆動する駆動力を発生させる態様を採用することができる。
【0011】
本発明において、前記第1磁気駆動回路、前記第2磁気駆動回路、および前記第3磁気駆動回路は、前記第1方向の一方側から他方側に順に重ねて配置されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、アクチュエータを第1方向からみたときのサイズ(平面積)を小さくすることができる。
【0012】
本発明において、前記第2磁気駆動回路の磁気的中心位置は、前記可動体の重心と前記第1方向、前記第2方向、および前記第3方向で一致する位置、またはほぼ一致する位置にあり、前記第1磁気駆動回路の磁気的中心位置と前記第3磁気駆動回路の磁気的中心位置とを合成した磁気的中心位置は、前記可動体の重心と前記第1方向、前記第2方向、および前記第3方向で一致する位置、またはほぼ一致する位置にある態様を採用することができる。かかる態様によれば、可動体を第2方向に駆動した際や第3方向に駆動した際、可動体が傾く等の事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用したアクチュエータの斜視図である。
図2図1に示すカバーを外した状態のアクチュエータの分解斜視図である。
図3図1に示すアクチュエータを第1方向および第2方向に切断したときの説明図である。
図4図1に示すアクチュエータを第1方向および第3方向に切断したときの説明図である。
図5図2に示す第1端板および第2端板を外した状態のアクチュエータの分解斜視図である。
図6図1に示すアクチュエータに用いた磁気駆動回路を分解したときの分解斜視図である。
図7図6に示す第1磁気駆動回路の分解斜視図である。
図8図6に示す第2磁気駆動回路の分解斜視図である。
図9図6に示す第3磁気駆動回路の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、互いに交差する3つの方向を各々、X方向、Y方向およびZ方向として説明する。Z方向はX方向およびY方向に対して直交する方向である。また、X方向の一方側にX1を付し、X方向の他方側にX2を付し、Y方向の一方側にY1を付し、Y方向の他方側にY2を付し、Z方向の一方側にZ1を付し、Z方向の他方側にZ2を付して説明する。ここで、X方向、Y方向およびZ方向は各々、本発明における方向と以下の関係を有している。
X方向=本発明における「第2方向」
Y方向=本発明における「第3方向」
Z方向=本発明における「第1方向」
【0015】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したアクチュエータ1の斜視図である。図2は、図1に示すカバー11を外した状態のアクチュエータ1の分解斜視図である。図3は、図1に示すアクチュエータ1を第1方向(Z方向)および第2方向(X方向)に切断したときの説明図である。図4は、図1に示すアクチュエータ1を第1方向(Z方向)および第3方向(Y方向)に切断したときの説明図である。図5は、図2に示す第1端板28および第2端板29を外した状態のアクチュエータ1の分解斜視図である。
【0016】
図1および図2に示すように、本形態のアクチュエータ1は、Z方向に開口する角筒状のカバー11と、カバー11の内側に収容された直方体形状の本体部分10とを有しており、本体部分10のY方向(第3方向)の一方側Y1の面には基板15が貼付されている。基板15には、後述するコイルの端部が接続される複数のコイル接続電極151と、複数の給電電極153と、複数のコイル接続電極151と複数の給電電極153とを各々接続する配線152とが形成されている。複数の給電電極153には、上位の駆動装置(図示せず)から延在した配線(図示せず)が接続される。このため、カバー11には、複数の給電電極153を露出させる開口部110が形成されている。
【0017】
図3図4および図5に示すように、アクチュエータ1は、支持体2と、可動体3と、支持体2と可動体3との間に配置された弾性部材4とを有しており、可動体3は、弾性部材4を介してZ方向(第1方向)、X方向(第2方向)およびY方向に移動可能に支持体2に支持されている。また、アクチュエータ1は、可動体3を支持体2に対してX方向およびY方向に駆動して振動させる複数の磁気駆動回路(第1磁気駆動回路6、第2磁気駆動回路7、および第3磁気駆動回路8)を有している。
【0018】
支持体2は、Z方向の一方側Z1の端部および他方側Z2の端部に、第1端板28および第2端板29を有している。第1端板28は、可動体3に対してZ方向の一方側Z1で対向しており、可動体3と第1端板28との間に第1弾性部材41(弾性部材4)が配置されている。第2端板29は、可動体3に対してZ方向の他方側Z2で対向しており、可動体3と第2端板29との間に第2弾性部材42(弾性部材4)が配置されている。
【0019】
弾性部材4は、粘弾性を備えた粘弾性体であり、本形態では、弾性部材4(粘弾性体)として板状のゲル状ダンパー部材が用いられている。第1弾性部材41は、Z方向の両面が各々、可動体3および第1端板28に接着等の方法で接続されている。第2端板29は、第2弾性部材42は、Z方向の両面が各々、可動体3および第2端板29に接着等の方法で接続されている。すなわち、弾性部材4は、可動体3に対する第1方向Zの一方側Z1、および可動体3に対する第1方向Zの他方側Z2の各々に設けられている。また、弾性部材4は、可動体3、および支持体2において可動体3に第1方向Zの一方側Z1で対向する部分(第1端板28)の双方に接する第1弾性部材41と、可動体3、および支持体2において可動体3に第1方向Zの他方側Z2で対向する部分(第2端板29)の双方に接する第2弾性部材42として配置されている。
【0020】
ゲル状ダンパー部材は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、板状のゲル状ダンパー部材は、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分よりも非線形の成分が大きい伸縮特性を備える一方、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分よりも線形の成分が大きい伸縮特性を備える。また、厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合も、非線形の成分よりも線形の成分が大きい変形特性を持つ。本形態において、可動体3がX方向およびY方向に振動した際、弾性部材4(粘弾性体)は、せん断方向に変形するように構成されている。
【0021】
複数の磁気駆動回路(第1磁気駆動回路6、第2磁気駆動回路7、および第3磁気駆動回路8)はいずれも、コイルと、コイルの各々と対向する磁石とを有している。コイルは、支持体2および可動体3の一方側部材に設けられ、磁石は、他方側部材に設けられる。本形態では、以下に説明するように、コイル(第1コイル61、第2コイル71、および第3コイル81)およびコイルホルダ(第1コイルホル65、第2コイルホルダ75、および第3コイルホルダ85)が支持体2に設けられている。また、磁石(第1磁石621、622、第2磁石721、722、および第3磁石821、822)、およびヨーク(第1ヨーク64、第2ヨーク74、および第3ヨーク84)が可動体3に設けられている。また、第1磁気駆動回路6は、第2磁気駆動回路7に対してZ方向の一方側Z1で重ねて配置され、第2磁気駆動回路7に対して第1磁気駆動回路6とは反対側に第3磁気駆動回路8が重ねて配置されている。したがって、第1磁気駆動回路6、第2磁気駆動回路7、および第3磁気駆動回路8は、Z方向の一方側Z1から他方側Z2に順に重ねて配置されている。
【0022】
(駆動回路の構成)
図6は、図1に示すアクチュエータ1に用いた磁気駆動回路を分解したときの分解斜視図である。図3図4図5および図6に示すように、第1磁気駆動回路6は、第1コイル61と、第1コイル61にZ方向の一方側Z1で対向する第1磁石621と、第1コイル61にZ方向の他方側Z2で対向する第1磁石622とを有している。第2磁気駆動回路7は、第2コイル71と、第2コイル71にZ方向の一方側Z1で対向する第2磁石721と、第2コイル71にZ方向の他方側Z2で対向する第2磁石722とを有している。第3磁気駆動回路8は、第3コイル81と、第3コイル81にZ方向の一方側Z1で対向する第3磁石821と、第3コイル81にZ方向の他方側Z2で対向する第3磁石822とを有している。
【0023】
このように構成した第1磁気駆動回路6、第2磁気駆動回路7、および第3磁気駆動回路8をZ方向に重ねて配置するために、支持体2は、第1コイル61を保持する第1コイルホルダ65と、第2コイル71を保持する第2コイルホルダ75と、第3コイル81を保持する第3コイルホルダ85とを有しており、第1コイルホルダ65、第2コイルホルダ75、および第3コイルホルダ85は、Z方向の一方側Z1から他方側Z2に順に重ねて配置されている。また、第1コイルホルダ65、第2コイルホルダ75、および第3コイルホルダ85は、Z方向で隣り合うコイルホルダ同士が連結されている。
【0024】
また、可動体3は、第1コイル61に対してZ方向の一方側Z1、第1コイル61と第2コイル71との間、第2コイル71と第3コイル81との間、および第3コイル81に対してZ方向の他方側Z2に配置された複数のヨーク(第1ヨーク64、第2ヨーク74、および第3ヨーク84)を備えており、第1磁石621、622、第2磁石721、722、および第3磁石821、822は各々、複数のヨークのいずれかに保持されている。また、複数のヨークは、Z方向で隣り合うヨーク同士が連結されている。
【0025】
本形態において、複数のヨークには、第1コイル61に対してZ方向の両側に配置された第1ヨーク64と、第2コイル71に対してZ方向の両側に配置された第2ヨーク74と、第3コイル81に対してZ方向の両側に配置された第3ヨーク84とが含まれている。第1ヨーク64は、第1コイル61に対してZ方向の両側に配置された第1磁石621、622を保持している。第2ヨーク74は、第2コイル71に対してZ方向の両側に配置された第2磁石721、722を保持している。第3ヨーク84は、第3コイル81に対してZ方向の両側に配置された第3磁石821、822を保持している。
【0026】
(第1磁気駆動回路6の詳細構成)
図7は、図6に示す第1磁気駆動回路6の分解斜視図である。図5図6および図7に示すように、第1コイルホルダ65は、第1コイル61を内側に保持する第1枠部66と、第1枠部66の端部(4つの角)からZ方向の両側に向けて突出した複数の第1柱状部69とを備えており、第1柱状部69は、第1端板28と連結されている。第1コイルホルダ65は、樹脂製あるいは金属製である。本形態において、第1コイルホルダ65および第1端板28は、樹脂製である。
【0027】
第1磁気駆動回路6に用いた第1コイル61は、Y方向に延在する第1有効辺部分611、612(長辺部分)を有する長円形状の空芯コイルである。かかる形状に対応して、第1コイルホルダ65の第1枠部66には、Y方向に長径方向を向けた長円形状の第1開口部67が形成されており、第1開口部67の内側に第1コイル61が接着等により固定される。
【0028】
第1コイルホルダ65において、第1枠部66に対してZ方向の一方側Z1には、第1開口部67のY方向の両端部と重なる位置に、第1コイル61の両端部でX方向に延在する第1無効辺部分613、614(短辺部分)をZ方向の一方側Z1で支持する第1座部681、682が形成されている。第1座部681、682は、第1枠部66からZ方向の一方側Z1に突出し、第1開口部67のY方向の両端部でZ方向の一方側Z1の底部を構成している。第1枠部66のZ方向の他方側Z2の面には、第1開口部67からX方向の他方側X2かつY方向の一方側Y1に向けて溝661が延在しており、かかる溝661は、第1コイル61の巻き始めの引き出し部分を通すためのガイド溝である。第1枠部66の厚さ(Z方向の寸法)は、第1コイル61の厚さ(Z方向の寸法)より大である。このため、第1開口部67の内側に第1コイル61が収容された状態で、第1コイル61は、第1枠部66からZ方向の他方側Z2に突出していない。
【0029】
第1磁石621、622は各々、長方形の平面形状を有しており、X方向に長辺が延在し、Y方向に短辺が延在している。第1磁石621、622は各々、X方向に分極着磁されており、N極およびS極が各々、第1コイル61の第1有効辺部分611、612に対向している。したがって、第1コイル61に通電すると、第1磁気駆動回路6は、可動体3をX方向に駆動する駆動力を発生させる。第1磁気駆動回路6において、第1ヨーク64は、第1コイル61に対してZ方向の一方側Z1に配置されたヨーク板641と、第1コイル61に対してZ方向の他方側Z2に配置されたヨーク板642とからなる。ヨーク板641は、第1磁石621をZ方向の他方側Z2の面で保持する平板状の磁石保持部641aと、磁石保持部641aのX方向の両端部からZ方向の他方側Z2に向けて折れ曲がった側板部641b、641cとを有している。ヨーク板642は、第1磁石622をZ方向の一方側Z1の面で保持する平板状の磁石保持部642aと、磁石保持部642のX方向の両端部からX方向の一方側X1および他方側X2に突出した連結板部642b、642cとを有している。本形態では、ヨーク板641の側板部641bの先端部とヨーク板642の連結板部642bの先端部とが溶接やカシメ等によって連結され、ヨーク板641の側板部641cの先端部とヨーク板642の連結板部642cの先端部とが溶接やカシメ等によって連結されている。
【0030】
(第2磁気駆動回路7の詳細構成)
図8は、図6に示す第2磁気駆動回路7の分解斜視図である。図5図6および図8に示すように、第2コイルホルダ75は、第2コイル71を内側に保持する第2枠部76と、第2枠部76の端部(4つの角)からZ方向の両側に突出した複数の第2柱状部79とを備えており、第2柱状部79は、Z方向の一方側Z1で隣り合う第1コイルホルダ65の第1柱状部69と連結されている。第2コイルホルダ75は、樹脂製あるいは金属製である。本形態において、第2コイルホルダ75は、樹脂製である。
【0031】
第2磁気駆動回路7に用いた第2コイル71は、X方向に延在する第2有効辺部分711、712(長辺部分)を有する長円形状の空芯コイルである。かかる形状に対応して、第2コイルホルダ75の第2枠部76には、X方向に長径方向を向けた長円形状の第2開口部77が形成されており、第2開口部77の内側に第2コイル71が接着等により固定される。
【0032】
第2コイルホルダ75において、第2枠部76に対してZ方向の一方側Z1には、第2開口部77のX方向の両端部と重なる位置に、第2コイル71の両端部でY方向に延在する第2無効辺部分713、714(短辺部分)をZ方向の一方側Z1で支持する第2座部781、782が形成されている。第2座部781、782は、第2枠部76からZ方向の一方側Z1に突出し、第1開口部77のX方向の両端部でZ方向の一方側Z1の底部を構成している。第2枠部76のZ方向の他方側Z2の面には、第2開口部77からX方向の一方側X1かつY方向の一方側Y1に向けて溝(図示せず)が延在しており、かかる溝は、第2コイル71の巻き始めの引き出し部分を通すためのガイド溝である。第2枠部76の厚さ(Z方向の寸法)は、第2コイル71の厚さ(Z方向の寸法)より大である。このため、第2開口部77の内側に第2コイル71が収容された状態で、第2コイル71は、第2枠部76からZ方向の他方側Z2に突出していない。
【0033】
第2磁石721、722は各々、長方形の平面形状を有しており、Y方向に長辺が延在し、X方向に短辺が延在している。第2磁石721、722は各々、Y方向に分極着磁されており、N極およびS極が各々、第2コイル71の第2有効辺部分711、712に対向している。したがって、第2コイル71に通電すると、第2磁気駆動回路7は、可動体3をY方向に駆動する駆動力を発生させる。第2磁気駆動回路7において、第2ヨーク74は、第2コイル71に対してZ方向の一方側Z1に配置されたヨーク板741と、第2コイル71に対してZ方向の他方側Z2に配置されたヨーク板742とからなる。ヨーク板742は、第2磁石722をZ方向の一方側Z1の面で保持する平板状の磁石保持部742aと、磁石保持部742aのY方向の両端部からZ方向の一方側Z1に向けて折れ曲がった側板部742b、742cとを有している。ヨーク板741は、第2磁石721をZ方向の他方側Z2の面で保持する平板状の磁石保持部741aと、磁石保持部741aのY方向の両端部からY方向の一方側Y1および他方側Y2に突出した連結板部741b、741cとを有している。本形態では、ヨーク板742の側板部742bの先端部とヨーク板741の連結板部741bの先端部とが溶接やカシメ等によって連結され、ヨーク板742の側板部742cの先端部とヨーク板741の連結板部741cの先端部とが溶接やカシメ等によって連結されている。
【0034】
ヨーク板741およびヨーク板642には穴741e、642eが形成されており、ヨーク板741とヨーク板642とは、穴741e、642eを基準に位置決めした後、穴741e、642eの内部で溶接やカシメ等によって連結されている。
【0035】
(第3磁気駆動回路8の詳細構成)
図9は、図6に示す第3磁気駆動回路8の分解斜視図である。図5図6および図9に示すように、第3コイルホルダ85は、第3コイル81を内側に保持する第3枠部86と、第3枠部86の端部(4つの角)からZ方向の両側に突出した複数の第3柱状部89とを備えており、第3柱状部89は、Z方向の一方側Z1で隣り合う第2コイルホルダ75の第2柱状部79と連結されている。また、第3柱状部89は、第2端板29と連結されている。第3コイルホルダ85は、樹脂製あるいは金属製である。本形態において、第3コイルホルダ85および第2端板29は、樹脂製である。
【0036】
第3磁気駆動回路8は、第1磁気駆動回路6と同様に構成されている。より具体的には、第3磁気駆動回路8に用いた第3コイル81は、Y方向に延在する第3有効辺部分811、812(長辺部分)を有する長円形状の空芯コイルである。かかる形状に対応して、第3コイルホルダ85の第3枠部86には、Y方向に長径方向を向けた長円形状の第3開口部87が形成されており、第3開口部87の内側に第3コイル81が接着等により固定される。
【0037】
第3コイルホルダ85において、第3枠部86に対してZ方向の一方側Z1には、第3開口部87のY方向の両端部と重なる位置に、第3コイル81の両端部でX方向に延在する第3無効辺部分813、814(短辺部分)をZ方向の一方側Z1で支持する第3座部881、882が形成されている。第3座部881、882は、第3枠部86からZ方向の一方側Z1に突出し、第3開口部87のY方向の両端部でZ方向の一方側Z1の底部を構成している。第3枠部86のZ方向の他方側Z2の面には、第3開口部87からX方向の他方側X2かつY方向の一方側Y1に向けて溝861が延在しており、かかる溝861は、第3コイル81の巻き始めの引き出し部分、および巻き終わりの引き出し部分を通すためのガイド溝である。第3枠部86の厚さ(Z方向の寸法)は、第3コイル81の厚さ(Z方向の寸法)より大である。このため、第3開口部87の内側に第3コイル81が収容された状態で、第3コイル81は、第3枠部86からZ方向の他方側Z2に突出していない。
【0038】
第3磁石821、822は各々、長方形の平面形状を有しており、X方向に長辺が延在し、Y方向に短辺が延在している。第3磁石821、822は各々、X方向で着磁されており、N極およびS極が各々、第3コイル81の第3有効辺部分811、812に対向している。したがって、第3コイル81に通電すると、第3磁気駆動回路8は、第1磁気駆動回路6と同様、可動体3をX方向に駆動する駆動力を発生させる。本形態において、第3磁石821は、第1磁気駆動回路6の第1磁石621と同一の向きに着磁され、第3磁石822は、第1磁気駆動回路6の第1磁石622と同一の向きに着磁されている。
【0039】
第3磁気駆動回路8において、第3ヨーク84は、第3コイル81に対してZ方向の一方側Z1に配置されたヨーク板841と、第3コイル81に対してZ方向の他方側Z2に配置されたヨーク板842とからなる。ヨーク板842は、第3磁石821をZ方向の一方側Z1の面で保持する平板状の磁石保持部842aと、磁石保持部842aのX方向の両端部からZ方向の一方側Z1に向けて折れ曲がった側板部842b、842cとを有している。ヨーク板841は、第3磁石822をZ方向の一方側Z1の面で保持する平板状の磁石保持部841aと、磁石保持部841のX方向の両端部からX方向の一方側X1および他方側X2に突出した連結板部841b、841cとを有している。本形態では、ヨーク板842の側板部842bの先端部とヨーク板841の連結板部841bの先端部とが溶接やカシメ等によって連結され、ヨーク板842の側板部842cの先端部とヨーク板841の連結板部841cの先端部とが溶接やカシメ等によって連結されている。なお、ヨーク板841およびヨーク板742には穴841e、742eが形成されており、ヨーク板841とヨーク板742とは、穴841e、742eを基準に位置決めした後、穴841e、742eの内部で溶接やカシメ等によって連結されている。
【0040】
(磁気駆動回路の磁気的中心と可動体3の重心との位置関係)
このように構成したアクチュエータ1において、第1コイル61、第2コイル71、第3コイル81、第1コイルホルダ65、第2コイルホルダ75、第3コイルホルダ85、は、可動体3のX方向の中心を通ってY方向に延在する仮想線の中心とする線対称、かつ、Y方向の中心を通ってX方向に延在する仮想線の中心とする線対称に構成されている。また、第1磁石621、622、第2磁石721、722、第3磁石821、822、第1ヨーク64、第2ヨーク74、および第3ヨーク84は、可動体3のX方向の中心を通ってY方向に延在する仮想線の中心とする線対称、かつ、Y方向の中心を通ってX方向に延在する仮想線の中心とする線対称に構成されている。また、第2コイル71は、可動体3のZ方向の中心に配置され、第2磁石721、722は、第2コイル71を中心にZ方向で面対称に配置されている。また、第1磁石621、622、および第1ヨーク64は、第3磁石821、822および第3ヨーク84に対して、第2コイル71を中心にZ方向で面対称に配置されている。
【0041】
したがって、第2磁気駆動回路7の磁気的中心位置(駆動中心)は、Z方向、X方向、およびY方向において可動体3の重心と一致する位置、またはほぼ一致する位置にある。また、第1磁気駆動回路6の磁気的中心位置と第3磁気駆動回路8の磁気的中心位置とを合成した磁気的中心位置は、Z方向、X方向、およびY方向において可動体3の重心と一致する位置、またはほぼ一致する位置にある。
【0042】
(基板15の構成)
図2に示すように、基板15には、複数のコイル接続電極151として、第1コイル61の巻き始めおよび巻き終わりの引き出し部分の端部(図示せず)が各々、接続される第1コイル接続電極151a、151bと、第2コイル71の巻き始めおよび巻き終わりの引き出し部分の端部(図示せず)が各々、接続される第2コイル接続電極151c、151dと、第3コイル81の巻き始めおよび巻き終わりの引き出し部分の端部(図示せず)が各々、接続される第3コイル接続電極151e、151fとが形成されている。また、基板15には、複数の給電電極153として、第1給電電極153a、第2給電電極153b、第3給電電極153c、第4給電電極153d、第5給電電極153e、および第6給電電極153fが形成されている。
【0043】
第1給電電極153aは、複数の配線152のうち、配線152aを介して第1コイル接続電極151aに電気的に接続し、第2給電電極153bは、複数の配線152のうち、配線152bを介して第1コイル接続電極151bに電気的に接続している。したがって、第1給電電極153aは、第2コイル71の一方の端部(巻き始めの引き出し部分の端部)に電気的に接続し、第2給電電極153bは、第2コイル71の他方の端部(巻き終わりの引き出し部分の端部)に電気的に接続している。
【0044】
第3給電電極153cは、複数の配線152のうち、配線152cを介して第2コイル接続電極151cに電気的に接続し、第4給電電極153dは、複数の配線152のうち、配線152dを介して第2コイル接続電極151dに電気的に接続している。したがって、第3給電電極153cは、第2コイル71の一方の端部(巻き始めの引き出し部分の端部)に電気的に接続し、第4給電電極153dは、第2コイル71の他方の端部(巻き終わりの引き出し部分の端部)に電気的に接続している。
【0045】
第5給電電極153eは、複数の配線152のうち、配線152eを介して第3コイル接続電極151eに電気的に接続し、第6給電電極153fは、複数の配線152のうち、配線152fを介して第3コイル接続電極151fに電気的に接続している。したがって、第5給電電極153eは、第3コイル81の一方の端部(巻き始めの引き出し部分の端部)に電気的に接続し、第6給電電極153fは、第3コイル81の他方の端部(巻き終わりの引き出し部分の端部)に電気的に接続している。
【0046】
また、図1に示すように、基板15には、フレキシブル配線基板等の配線基板16が接続されており、配線基板16には、第1給電電極153a、第2給電電極153b、第3給電電極153c、第4給電電極153d、第5給電電極153e、および第6給電電極153fの各々に独立して接続する複数の配線(図示せず)が形成されている。したがって、上位の駆動装置から配線基板16を介してアクチュエータ1に駆動信号が供給される。
【0047】
(基本動作)
本形態のアクチュエータ1において、第1給電電極153a、第2給電電極153b、第5給電電極153e、および第6給電電極153fを介して第1コイル61および第3コイル81に同一波形の交流を印加する一方、第2コイル71への通電を停止すると、可動体3は、X方向に振動するため、アクチュエータ1における重心がX方向に変動する。このため、利用者は、X方向の振動を体感することができる。その際、第1コイル61に印加する第1コイル駆動信号の交流波形、および第3コイル81に印加する第3コイル駆動信号の交流波形を調整して、可動体3がX方向の一方側X1に移動する加速度と、可動体3がX方向の他方側X2に移動する加速度とを相違させれば、利用者は、X方向において方向性を有する振動を体感することができる。
【0048】
また、第3給電電極153c、および第4給電電極153dを介して第2コイル71に交流を印加する一方、第1コイル61および第3コイル81への通電を停止する。その結果、可動体3は、Y方向に振動するため、アクチュエータ1における重心がY方向に変動する。このため、利用者は、Y方向の振動を体感することができる。その際、第2コイル71に印加する第2コイル駆動信号の交流波形を調整して、可動体3がY方向の一方側Y1に移動する加速度と、可動体3が第3方向の他方側Y2に移動する加速度とを相違させれば、利用者は、Y方向において方向性を有する振動を体感することができる。
【0049】
また、第1コイル61および第3コイル81への通電と第2コイル71への通電とを組み合わせれば、利用者は、X方向での振動とY方向での振動とを組み合わせた体感を得ることができる。
【0050】
ここで、第1コイル61の端部、および第3コイル81の端部には各々、異なる給電電極153(第1給電電極153a、第2給電電極153b、第5給電電極153e、および第6給電電極153f)が電気的に接続されている。このため、第1コイル61および第3コイル81に異なる波形の交流を印加することができる。それゆえ、可動体3を第1コイル61および第3コイル81に印加された波形に対応する振動を組み合わせた振動を行わせることができる。例えば、第1コイル61および第3コイル81に逆位相の波形を有する交流を印加すれば、可動体3には、Z方向に延在する中心軸線周りの偶力が加わるので、利用者は、さらに可動体3のZ方向に延在する中心軸線周りの振動を体感することができる。
【0051】
(ストッパ機構)
本形態のアクチュエータ1では、可動体3が支持体2に対して過度に移動した際、強度の弱い個所が当接しないように、図3および図4に示すストッパ機構が設けられている。より具体的には、図4に示すように、第1磁石621に対してY方向の一方側Y1で所定の間隔を介して対向する位置には、第1コイルホルダ65の第1座部681が位置し、第1磁石621に対してY方向の他方側Y2で所定の間隔を介して対向する位置には、第1コイルホルダ65の第1座部682が位置している。また、第3磁石821に対してY方向の一方側Y1で所定の間隔を介して対向する位置には、第3コイルホルダ85の第3座部881が位置し、第3磁石821に対してY方向の他方側Y2で所定の間隔を介して対向する位置には、第3コイルホルダ85の第3座部882が位置している。本形態において、第1座部681、682のY方向で第1磁石621と対向する側端部が第1ストッパ部683、684として機能する。また、第3座部881、882のY方向で第3磁石821と対向する側端部が第3ストッパ部883、884として機能する。したがって、第2磁気駆動回路7によって可動体3をY方向に駆動した際の可動体3のY方向への可動範囲は、第1磁気駆動回路6の第1磁石621と第1コイルホルダ65の第1座部681、682(第1ストッパ部683、684)とによって構成されたストッパ機構、および第3磁気駆動回路8の第3磁石821と第3コイルホルダ85の第3座部881、882(第3ストッパ部883、884)とによって構成されたストッパ機構によって規制されている。
【0052】
本形態において、第1ストッパ部683、684は、第1コイル61の第1無効辺部分613、614の内縁より第1磁石621の側に位置している。このため、第1コイル61の巻き始め側の引き出し部分が、例えば、第1無効辺部分613の内縁から第1コイル61と第1座部681との間を通っている場合でも、第1コイル61の巻き始め側の引き出し部分に第1磁石621が接触するという事態が発生しにくい。それゆえ、第1コイル61の巻き始め側の引き出し部分が断線するという事態が発生しにくい。また、第3ストッパ部883、884は、第3コイル81の第3無効辺部分813、814の内縁より第3磁石821の側に位置している。このため、第3コイル81の巻き始め側の引き出し部分が、例えば、第3無効辺部分813の内縁から第3コイル81と第3座部881との間を通っている場合でも、第3コイル81の巻き始め側の引き出し部分に第3磁石821が接触するという事態が発生しにくい。それゆえ、第3コイル81の巻き始め側の引き出し部分が断線するという事態が発生しにくい。
【0053】
また、図3に示すように、第2磁気駆動回路7の第2磁石721に対してX方向の一方側X1で所定の間隔を介して対向する位置には、第2コイルホルダ75の第2座部781が位置し、第2磁石721に対してX方向の他方側X2で所定の間隔を介して対向する位置には、第2コイルホルダ75の第2座部782が位置している。本形態において、第2座部781および第2座部782のX方向で第2磁石721と対向する側端部が第2ストッパ部783、784として機能する。したがって、第1磁気駆動回路6および第3磁気駆動回路8によって可動体3をX方向に駆動した際の可動範囲は、第2磁気駆動回路7の第2磁石721と第2コイルホルダ75の第2座部781、782(第2ストッパ部783、784)とによって構成されたストッパ機構によって規制されている。
【0054】
本形態において、第2ストッパ部783、784は、第2コイル71の第2無効辺部分713、714の内縁より第2磁石721の側に位置している。このため、第2コイル71の巻き始め側の引き出し部分が、例えば、第2無効辺部分713の内縁から第2コイル71と第2座部781との間を通っている場合でも、第2コイル71の巻き始め側の引き出し部分に第2磁石721が接触するという事態が発生しにくい。それゆえ、第2コイル71の巻き始め側の引き出し部分が断線するという事態が発生しにくい。
【0055】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータ1において、可動体3をX方向(第2方向)に振動させる第1磁気駆動回路6、可動体3をY方向(第3方向)に振動させる第2磁気駆動回路7、および可動体3をX方向に振動させる第3磁気駆動回路8が設けられているため、可動体3をX方向およびY方向に振動させることができる。したがって、使用者にX方向の振動、Y方向の振動、X方向の振動とY方向の振動とを組み合わせた振動を体感させることができる。また、第1磁気駆動回路6、第2磁気駆動回路7、および第3磁気駆動回路8がZ方向に重ねて配置されているため、アクチュエータ1をZ方向からみたときのサイズ(平面積)が小さい。それゆえ、本形態のアクチュエータ1は、手に持つコントローラ等の機器に搭載するのに適している。さらに、可動体3をY方向に振動させる第2磁気駆動回路7に対してZ方向の両側に、可動体3をX方向に振動させる第1磁気駆動回路6および第3磁気駆動回路8が設けられているため、可動体3をX方向に振動させた際、可動体3が傾く等の事態が発生しにくい。
【0056】
また、第2磁気駆動回路7の磁気的中心位置(駆動点)は、Z方向、X方向、およびY方向において可動体3の重心と一致する位置、またはほぼ一致する位置にある。また、第1磁気駆動回路6の磁気的中心位置(駆動点)と第3磁気駆動回路8の磁気的中心位置(駆動点)とを合成した磁気的中心位置は、Z方向、X方向、およびY方向において可動体3の重心と一致する位置、またはほぼ一致する位置にある。このため、可動体3をX方向およびY方向に振動させた際、可動体3が傾く等の事態が発生しにくい。
【0057】
また、支持体2に保持された基板15には、第1コイル61の一方端に電気的に接続された第1給電電極153aと、第1コイル61の他方端に電気的に接続された第2給電電極153bと、第2コイル71の一方端に電気的に接続された第3給電電極153cと、第2コイル71の他方端に電気的に接続された第4給電電極153dと、第3コイル81の一方端に電気的に接続された第5給電電極153eと、第3コイル81の他方端に電気的に接続された第6給電電極153fとが設けられている。このため、第1給電電極153aおよび第2給電電極153bを介して第1コイル61に駆動信号を供給する際、第1コイル61に供給される駆動振動と同一波形の駆動信号を第3コイル81に供給することができる。また、第1給電電極153aおよび第2給電電極153bを介して第1コイル61に駆動信号を供給する際、第1コイル61に供給される駆動振動と波形の異なる任意の駆動信号を第5給電電極153eおよび第6給電電極153fを介して第3コイル81に供給することができる。したがって、可動体3には、第1コイル61に供給される駆動信号に基づく駆動と、第3コイル81に供給される駆動信号に基づく駆動とを組み合わせた複雑な駆動を容易に行うことができる。
【0058】
また、本形態では、カバー11には、第1給電電極153a、第2給電電極153b、第3給電電極153c、第4給電電極153d、第5給電電極153e、および第6給電電極153fを露出させる開口部110が形成されている。このため、カバー11を設けた場合でも、第1給電電極153a、第2給電電極153b、第3給電電極153c、第4給電電極153d、第5給電電極153e、および第6給電電極153fの各々に独立した配線を接続することができる。それゆえ、可動体3には、第1コイル61に供給される駆動信号に基づく駆動と、第3コイル81に供給される駆動信号に基づく駆動とを組み合わせた複雑な駆動を容易に行うことができる。
【0059】
また、弾性部材4は、粘弾性を備えた粘弾性部材であって、可動体3に対するZ方向の一方側Z1、および可動体3に対するZ方向の他方側Z2の各々に設けられている。このため、可動体3が支持体2に対してX方向およびY方向に振動するとき、弾性部材4は、伸縮方向と直交するせん断方向に変形する。したがって、弾性部材4は、線形性が高い範囲で変形するので、リニアリティが良好な振動特性を得ることができる。
【0060】
すなわち、弾性部材4(第1弾性部材41および第2弾性部材42)は、粘弾性部材(板状のゲル状ダンパー部材)であって、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分が大きい伸縮特性を備える一方、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。また、厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。本形態において、可動体3がX方向およびY方向に振動した際、弾性部材4(粘弾性部材)は、せん断方向に変形するように構成されている。したがって、弾性部材4では、可動体3がX方向およびY方向に振動した際、運動方向によるバネ力が一定となる。それ故、弾性部材4のせん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもって振動を実現することができる。
【0061】
また、弾性部材4は、可動体3と支持体2との間で第1方向Zに伸縮するように取り付けられ、弾性部材4が可動体3と支持体2との間で厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。従って、可動体3の駆動方向と直交するZ方向では、弾性部材4が大きく変形することを抑制できるので、可動体3と支持体2とのギャップが大きく変化することを抑制できる。
【0062】
また、第1弾性部材41は、Z方向の両面が各々、可動体3および第1端板28に接着等の方法で接続され、第2弾性部材42は、Z方向の両面が各々、可動体3および第2端板29に接着等の方法で接続されている。したがって、弾性部材4は、可動体3の移動に確実に追従するので、可動体3の共振を効果的に防止することができる。
【0063】
[他の実施の形態]
上記実施形態2では、第1磁気駆動回路6において第1コイル61のZ方向の両側に第1磁石621、622を配置し、第3磁気駆動回路8において第3コイル81のZ方向の両側に第3磁石821、822を配置したが、第1コイル61のZ方向の片側のみに第1磁石を配置し、第3磁気駆動回路8において第3コイル81のZ方向の片側のみに第3磁石を配置してもよい。
【0064】
上記実施の形態では、弾性部材4(粘弾性部材)を可動体3のZ方向の両側に配置したが、可動体3のX方向の両側、および可動体3のY方向の両側に弾性部材4(粘弾性部材)を配置してもよい。また、上記実施の形態では、弾性部材4としてゲル状ダンパー部材を用いたが、ゴムやバネ等を弾性部材4として用いてもよい。ゲル状部材(ゲル状ダンパー部材)としては、シリコーン系ゲルを例示することができる。より具体的には、弾性部材4として、針入度が10度から110度であるシリコーン系ゲルを用いることができる。針入度とは、JIS-K-2207やJIS-K-2220で規定されており、この値が小さい程、硬いことを意味する。
【0065】
また、粘弾性とは、粘性と弾性の両方を合わせた性質のことであり、ゲル状部材、プラスチック、ゴム等の高分子物質に顕著に見られる性質である。したがって、粘弾性を備えた弾性部材4として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態において、第1弾性部材41のZ方向の両面を各々、可動体3および第1端板28に接着により接続し、第2弾性部材42のZ方向の両面を各々、可動体3および第2端板29に接着により接続する際、弾性部材4(第1弾性部材41および第2弾性部材42)は、支持体2と可動体3との間でZ方向に圧縮された状態にある。したがって、弾性部材4は、可動体3の移動に確実に追従するので、可動体3の共振を効果的に防止することができる。
【0067】
上記実施の形態では、コイルおよびコイルホルダが支持体2に設けられ、磁石およびヨークが可動体3に設けられていたが、コイルおよびコイルホルダが可動体3に設けられ、磁石およびヨークが支持体2に設けられている場合に本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明において、支持体に保持された基板には、第1コイルの一方端に電気的に接続された第1給電電極と、第1コイルの他方端に電気的に接続された第2給電電極と、第2コイルの一方端に電気的に接続された第3給電電極と、第2コイルの他方端に電気的に接続された第4給電電極と、第3コイルの一方端に電気的に接続された第5給電電極と、第3コイルの他方端に電気的に接続された第6給電電極とが設けられている。このため、第1電極および第2電極を介して第1コイルに駆動信号を供給する際、第1コイルに供給される駆動振動と同一の駆動信号を第3コイルに供給することができる。また、第1電極および第2電極を介して第1コイルに駆動信号を供給する際、第1コイルに供給される駆動振動と波形の異なる任意の駆動信号を第5給電電極および第6給電電極を介して第3コイルに供給することができる。したがって、可動体には、第1コイルに供給される駆動信号に基づく駆動と、第3コイルに供給される駆動信号に基づく駆動とを組み合わせた複雑な駆動を容易に行うことができる。
図1
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