(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】小型安定化ポインティングシステム
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/18 20060101AFI20220314BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20220314BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20220314BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20220314BHJP
H01Q 1/28 20060101ALN20220314BHJP
【FI】
H01Q1/18
B64G1/66 C
H01Q1/12 E
G02B7/00 B
H01Q1/28
(21)【出願番号】P 2018552923
(86)(22)【出願日】2016-12-16
(86)【国際出願番号】 IB2016057714
(87)【国際公開番号】W WO2017115204
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-11-12
(31)【優先権主張番号】102015000088006
(32)【優先日】2015-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518227566
【氏名又は名称】ステラー・プロジェクト・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】STELLAR PROJECT S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ・サンソーネ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・フランチェスコーニ
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-516059(JP,A)
【文献】特開2007-055406(JP,A)
【文献】特許第5200242(JP,B2)
【文献】特開2012-140020(JP,A)
【文献】特開平11-163611(JP,A)
【文献】特開平11-097919(JP,A)
【文献】特表2012-531144(JP,A)
【文献】特開2002-043820(JP,A)
【文献】国際公開第2007/086055(WO,A1)
【文献】特開2000-341013(JP,A)
【文献】特開平10-159898(JP,A)
【文献】特表2012-516717(JP,A)
【文献】特開平11-153761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0208326(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
B64G 1/00-99/00
G02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの連結エレメントで不安定ナノ衛星プラットフォームに結合された可動支持エレメント(210)を備えた安定化ポインティングシステムであって、一方の連結エレメントが、2つまたは3つの自由度だけを伴う回転を許容するジョイント(211)であり、他方の少なくとも2つの連結エレメントは、伸縮性脚であり、その長さは、アクチュエータエレメントによって制御可能であり、前記伸縮性脚の各々は、その端部の一方で前記可動支持エレメント(210)に結合され、他端部において前記不安定ナノ衛星プラットフォームに結合されており、前記伸縮性脚は、
a.前記伸縮性脚の少なくとも1つは、前記伸縮性脚の伸長または圧縮のダンピングおよび減衰のための少なくとも1つの受動エレメントを備え、前記受動エレメントは、散逸係数「c」によって特徴付けられるエレメントと直列に配置された、剛性「k」を持つエレメントとしてモデル化可能であり、
b.前記少なくとも1つの伸縮性脚において、前記アクチュエータエレメントは、脚の長尺化及び/又は短縮化を可能にし、ダンピングおよび減衰のための前記少なくとも1つのエレメントと直列に配置され、
c.前記可動支持エレメント(210)および前記不安定ナノ衛星プラットフォームとの前記少なくとも2つの伸縮性脚の結合部は、それぞれ少なくとも2つの自由度だけを伴う回転を許容するジョイントである、
ことを特徴とする安定化ポインティングシステム。
【請求項2】
前記伸縮性脚は、ちょうど2つである請求項1記載の安定化ポインティングシステム。
【請求項3】
少なくとも1つの伸縮性脚が、3つの自由度を伴う回転を許容するジョイントを用いて、その2つの端部の少なくとも1つにおいて結合される請求項1記載の安定化ポインティングシステム。
【請求項4】
少なくとも1つの伸縮性脚が、ちょうど2つの自由度を伴う回転を許容するジョイントを用いて、その2つの端部の両方において結合され、
前記伸縮性脚の一部が、その他の部分に対して伸長軸の周りに自由に回転できる請求項1記載の安定化ポインティングシステム。
【請求項5】
前記伸縮性脚の伸長または圧縮のダンピングおよび減衰のための前記1つ以上のエレメントは、制御不能な剛性係数「k」および制御不能な散逸係数「c」によって特徴付けられる受動エレメントである請求項1記載の安定化ポインティングシステム。
【請求項6】
前記可動支持エレメント(210)が結合される前記不安定
ナノ衛星プラットフォームは、衛星プラットフォーム(100)である請求項1~5のいずれかに記載の安定化ポインティングシステム。
【請求項7】
前記可動支持エレメント(210)が結合される前記不安定
ナノ衛星プラットフォームは、続いて、少なくとも2つの自由度を伴う回転運動を許容する結合部システムを用いて、衛星プラットフォーム(100)に結合される請求項1~5のいずれかに記載の安定化ポインティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の好ましい応用分野は、小型衛星、例えば、いわゆるナノ衛星でのポインティングプラットフォームの姿勢(orientation)の安定化に関する。
【0002】
下記説明から明らかになるように、低コストの宇宙応用のためのナノ衛星の使用は、これらのナノ衛星が新しい可能性ある応用をサポートするのに充分な性能、例えば、現在利用できるものより高い電気通信能力を有することが要求されることがあり、この観点で、これらのナノ衛星に、光学バンドキャリアで動作可能な電気通信端末の収納を可能にする安定化プラットフォームを設けることは特に有用であり、こうした端末は、機能するために正確なポインティングを必要とする。
【0003】
安定化プラットフォームのニーズは極めて現実的であるが、上記宇宙応用において、極めて厳しい要求によって特徴付けられ、下記において提示された技術はまた、同じニーズ、即ち、不安定な支持システムに搭載された場合でも所定の精度で安定した姿勢を維持できるコンパクトかつ軽量なプラットフォームを有するという一般的要求が存在する他の状況においても応用を見つけられることは明らかである。
【0004】
従来の衛星をベースとしたプロジェクトは、発射のための高いコストおよび各ミッションを実施するのに要すると思われる極めて長い時間によって特徴付けられる。これらの特典は、従来の衛星の普及および、高いビジネスリスクを備えた革新的な応用のためのこれらの使用に対する制限を構成し、従って、前記特典は、技術的な面でも更なる開発に対するブレーキを意味する。
【0005】
この技術的経済的な状況は、従来の衛星プラットフォームをベースとした商業的宇宙応用の完全な開発を不利にし、他方では、小型または超小型寸法の衛星、例えば、いわゆるナノ衛星の使用を促進すると思われる。実際、後者は、多くの応用で使用可能であり、上記制限によって影響されない技術的手法のように見える。
【0006】
数十キログラム以下の重量がある衛星の使用がどのようにして迅速に確立されるかがより明らかである。従来、名称「ナノ衛星」は、十キログラムより少ない重量、たった数キログラムまでの重量があり、数十cmのオーダーの寸法を想定する衛星を参照する。
【0007】
そのため小さい寸法および重量が、軌道への発射のコストを劇的に低減できる。このことは、高潔な経済ループを起動するため、極めて重要であり、実際、より大きな予想される数の発射は、ナノ衛星プラットフォームのモジュール設計および、続く更なるコスト低減を可能にする建造規格の統合を正当化する。また、適切な規格に従って構築された多数の物体は、増加した性能および信頼性を達成できるようになり、その使用を可能にする全ての応用においてナノ衛星技術の確立をより促進する。
【0008】
従って、下記の説明は、一般に、ナノ衛星に搭載される安定化プラットフォームの場合を参照するが、これは、より大型の衛星の場合、または安定化ポインティングを維持できるプラットフォームのニーズがある他の環境での設置を除外していない。ナノ衛星への参照は、本発明の説明にとって有効な応用の場合であることに加えて、技術的視点から極めて挑戦的な応用を意味する応用の典型的な場合を意味する。
【0009】
ナノ衛星プラットフォームの予想される成功に関するこの概要は、ここでは技術的問題の重要性を強調するために主に言及しており、このことはナノ衛星技術をベースとした応用の加速の見地で主要な影響を有するであろう。
【0010】
実際、小さいサイズおよび重量が、一方では、上述した経済的最適化を起動するという利点を有し、他方では、新しい技術的課題を引き起こす。それは、搭載機器全体(またはペイロード)は、特に小型でコンパクトかつ軽量であるように設計する必要があり、制限された利用可能な資源で高い性能を同時に確保するためである。
【0011】
特に、電気通信システムの性能に対処することが重要である。実際、それが設計された応用に関わらず、いずれの衛星も通信する必要がある。例えば、地球の画像を撮る観測用衛星が、それらを制御センタに向けて、そして気象または環境データを収集するように設計された他の衛星に向けて送信できることが必要である。
【0012】
通信の問題は、ナノ衛星の場合、これらの衛星がかなり低い軌道に配置され、これらが地球に対して(一般には両者間で)かなり高速で移動し、従って、2つの端末が通信できる時間である時間的視界ウインドウは、充分に接近して相互の観点のため、極めて短くなることによっても特徴付けられる。
【0013】
通信タイミングのこの制約は、各応用が要求する送信データ量の要求と組み合わせて、相当な速度伝送をサポートできる通信システムを求めることを推進する。これは、ナノ衛星がサポートできるデータレートが高くなるほど、それが実施できる機能の数が大きくなり、こうしたナノ衛星のそれぞれ所定の応用のために準備する必要がある電気通信ネットワークはあまり重大で複雑にならなくなるためである。
【0014】
次に無線伝送速度は、送信機パワーに関連しており、パワーは、システムの重量およびサイズに関連する。要するに、もし軽さおよびサイズの要求が、ナノ衛星のための本質的な構成的要求を表す場合、これらが活性化できる無線通信は、重量制約および送信機の寸法によって速度で制限されることと結論できる(利用可能なパワーでの制限)。
【0015】
無線通信でのこの制限は、光学通信のための成長する関心をもたらす。実際、ナノ衛星上で利用可能なパワーが、無線周波数での送信機で得られる伝送速度より数桁高い伝送速度に到達できると仮定すると、後者は、リンクバジェット(link-budget)を得ることを可能にする。これは、光学キャリアのより高い指向性および光学信号でのノイズのより良い管理可能性に起因している。要するに、光学通信は、相当な伝送速度をサポートでき、減少した重量および寸法を維持できる端末を構築するのに特に適していると結論できる。
【0016】
これに関して通信技術は、本発明の目的ではないことに留意すべきである。理由は、これらが、大型衛星での応用のための通信に好適な既知の光学伝送システム、またはナノ衛星での動作のために設計されたこうしたシステムのプロトタイプであるためである。むしろ、本発明は、電気通信要素の機械的サポートに注目し、光学キャリアでの伝送を用いて到達できる極端な指向性の利益のために、安定化ポインティングを維持するプラットフォームを示す。
【0017】
本発明の説明の目的のため、前述の考察は、少なくとも1つのナノ衛星を含む通信において光学端末を使用できることがなぜ重要であるかを示すのに役立つに過ぎず、その理由は、光学キャリア(レーザキャリア)での伝送が、高速かつ低パワー通信をサポートするのに特に適しているためである。
【0018】
これに対して、宇宙応用の典型的な距離において、光学通信のためのレーザキャリアの極端な指向性は、マイクロラジアンのオーダーの極端に高いポインティング精度を必要とする。場合に応じて、大きな距離間の光学通信は、高い容量によって特徴付けられ、数マイクロラジアンまたは数十マイクロラジアンのオーダーのポインティング精度に対する要求を強いることがある。
【0019】
従って、前述の議論の順序は、極めて挑戦的な技術的課題の識別に到達する。
【0020】
実際、極めて低い質量を有するナノ衛星は、補償するのが困難な運動を決定する、広い周波数スペクトルでの勧誘(solicitation)を受ける。さらに、重量および寸法の理由のため、搭載資源(例えば、推進剤、パワーまたは慣性質量)の量は極端に減少し、ナノ衛星全体の正確な安定化は達成するのが極めて面倒である。
【0021】
従って、ポインティングシステムは、指向性無線接続をアクティブに維持する必要があり、特に光学キャリアでアクティブである場合、それが搭載されるナノ衛星の姿勢の固有の不安定性を補償する必要がある。
【0022】
ナノ衛星を含む通信性能は、今まで既知のシステムによって到達可能であるが、未だ不充分である。
【0023】
目的は、ポインティングおよび安定化機構を含む重量がキログラム(またはそれ以下)のオーダーである極めてコンパクトな端末を提供することであり、同時に、ナノ衛星など、特に不安定なプラットフォームに設置された場合でも極めて高いポインティング精度を確保することであり、これは、従来の大型衛星にとって典型的なものよりかなり低い性能を有する姿勢制御システムが装備されているため、環境的外乱に対して極めて敏感である。
【0024】
上述した技術的課題の重大な性質は、完全に満足する解決法が未だに提案されていない点に反映される。
【0025】
例えば、MIT(マサチューセッツ工科大学)によって連携された幾つかのプロジェクトにおいて、これらの問題が最先端の方法で取り組まれ、ポインティングの安定化の問題に対する技術的手法が、FSM(ファーストステアリングミラー)と称される技術の使用により調査され、これは、ナノ衛星プラットフォームに対して固定されたレーザ源が、反射ビームの姿勢を安定に維持できる制御可能な姿勢ミラーに関する技術である。
【0026】
FSM技術に頼ることは、重量および全体寸法を充分に収納でき、レーザエミッタ(固定)が小型で軽い支持体を用いて搭載できるため、ミラーはまた、軽量な要素であり、ミラーに関連した自由度、一般に2つの自由度を制御するモータは、著しい小型化に推進できる。FSM技術の限界は、ポインティングの小さな範囲内、典型的には10分の数度未満である。特に高い周波数では、極めて高速なアクチュエータが短いストロークを有し、この範囲限界は、少なくとも2つの極めて顕著な不具合(contraindication)を含む。第1のものは、FSM技術はポインティング機能を実施できず、安定化だけであり、よってシステム全体は、FSM技術での安定化システムに連結したポインティング機構(不充分な精度でも)で構成する必要があることにある。第2の欠点は、制限された範囲が、光学キャリアの広い発散で補償する必要があることであり、これはゲインを不利にし、その結果、伝送能力を減少させる。実際、現在利用可能な実装は、上述した限界に悩まされ、これは、関心ある多くの応用に関してかなり重大であり、これらは、システムのコンパクト性および、高いビットレート通信をサポートするためのその減少した適合性の両方に影響を与える。
【0027】
他のプロジェクト、例えば、「日本の国立研究開発法人情報通信研究機構」によって促進されたプロジェクトSOTA(Small Optical Transponder)は、少なくとも2つの自由度を制御することを許容する制御可能なジョイントを備えた機構に直接搭載された光学送信機の反復によって、その開発を基礎としている。しかしながら、このプロジェクトは、ナノ衛星上での集積を許容しないサイズおよび質量のプラットフォームへの電気通信システムの搭載を提供し、従って、質量およびパワーの制約があまり厳しくなく、ポインティング要求もあまり厳しくなく、理由は、より大型な衛星が本質的により安定であるためである。この全てが、数キログラムのオーダーの光学端末(ポインティング機構を含む)の全重量で、ナノ衛星向けに縮小できない機構を用いて、解決法の開発を導いた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
従って、本発明の主な範囲は、広い周波数スペクトルに渡って著しい運動および振動に曝される支持体(例えば、ナノ衛星)に搭載した場合でも、極めて高い精度を有する、極めて安定なポインティングを確保できる新しい機構を考案することである。
【0029】
本発明の他の範囲は、可能ならば経済的(信頼性および運用の観点で)であり、既知のものより軽量かつよりコンパクトな新しい安定化機構を着想することである。
【0030】
最後に、本発明の更なる範囲は、宇宙環境で動作可能である小型衛星(例えば、ナノ衛星)に連結されるのに適した、潜在的には標準化されるモジュールを表すことがある新しい安定化ポインティング機構を着想することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の意図した目的は、少なくとも3つの連結エレメントで不安定プラットフォームに結合された可動支持エレメントを備えた安定化ポインティングシステムによって達成され、前記連結エレメントは、下記のように特徴付けられる。
1.一方の連結エレメントがジョイントであり、これは、2つまたは3つの自由度だけを伴う回転を許容し、前記可動支持エレメントおよび前記不安定プラットフォームを共に接続する。
2.他方の少なくとも2つの連結エレメントは、伸縮性脚(leg)であり、その長さは可変であり、前記伸縮性脚の各々は、その端部の一方で前記可動支持エレメントに結合され、他端部において前記不安定プラットフォームに結合される。
3.前記可動支持エレメントおよび前記不安定プラットフォームとの前記少なくとも2つの伸縮性脚の結合部は、ジョイントであり、これは、それぞれ少なくとも2つの自由度だけを伴う回転を許容する。
4.伸縮性脚の2つの端部での両方の結合部が2つの自由度だけを許容する場合、こうした伸縮性脚の一部が、他方の部分に対して伸長軸の周りに回転するのが許容される(従って、脚は、捩りを許容する内部ジョイントを組み込む)。
5.各伸縮性脚は、アクチュエータエレメントを含み、これはその長さの制御を可能にする。
6.前記伸縮性脚の少なくとも1つ(好ましい実施形態では、前記脚の各々)がまた、前記伸縮性脚の伸長または圧縮のダンピングおよび減衰のための1つのエレメントを備える。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の主な利点は、本発明の教示に従って実現される可動プラットフォームの安定化ポインティングシステムが、着想された主な目的を満たすことによって与えられる。本発明はまた、下記説明から明らかになる更なる利点を有し、これは添付の請求項から詳細を示し、これは、下記説明および添付図面において、これに限定されないが、説明した実施形態の幾つかの例の説明から同じ説明の不可欠な部分を形成する。
【0033】
【
図1】本発明の教示に係る安定化ポインティングシステムが装備された衛星を示す。
【
図2】本発明の教示に係る安定化ポインティングシステムの特徴的エレメントを詳細に示す。
【
図3】全体的な安定化ポインティングシステムの搭載の特別な場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、ナノ衛星の全体図を示しており、本発明に従って安定化される調整可能支持体の上に搭載された電気通信用光学送信機の存在が強調されている。
【0035】
番号100は、ペイロードを除外したナノ衛星プラットフォームを示す。番号101は、前記ナノ衛星プラットフォーム100と一体化したデカルト基準座標系を示す。
【0036】
基準座標系101は、ナノ衛星プラットフォーム100の運動に追従し、地球に対しておよび他の衛星に対して移動する。上述したように、ナノ衛星プラットフォームに関して、前記基準座標系101のこうした運動は並進的かつ回転的であり、これらは、広い周波数スペクトルでの著しい振幅によって特徴付けられる。基準座標系101の運動のこれらの特性は、ナノ衛星プラットフォームの技術に構造的に帰するものであり、短時間では予想されず、ナノ衛星プラットフォーム全体の安定化のための技術は、ナノ衛星のペイロードのために利用可能な資源を減少または影響させることなく、こうした動きの幾つかの成分を除外できる。
【0037】
実際、例えば、回転についての除外または著しい制限は、重量およびコストの制限に対して著しい影響を持つ安定化システムを必要とし、一方、ナノ衛星プラットフォームに関する研究は、この時点で重量およびコストの削減を優先させ、時には重大にさせる。
【0038】
従って、本発明は、ナノ衛星プラットフォーム(および一般には小型衛星)におけるこの進化傾向と整合しており、これらが高速に進化するとともに、これらの衛星プラットフォームに対して最小の影響を有する安定化ポインティングの課題に対する解決法を提案する。
【0039】
従って、この解決法は、開発要求およびそれが適用されるプラットフォームの進化に対して最小の影響を維持する意味で、意義深いモジュール方式を有する。従って、それは、産業での可能性ある規格であると示されることを目的とする解決法である。
【0040】
図1において、番号111は、可動式で方向付け可能な支持体を装着する拘束ポイントを提供する、基準座標系101と一体化した拘束エレメントを示す。前記可動支持エレメントは、
図1において番号210によって示されるとともに、番号211は、前記拘束エレメント111、即ち、ナノ衛星プラットフォーム100との前記可動支持エレメント210の拘束部を示し、前記拘束部211は、実施形態に応じて、2つまたは3つの回転自由度を許容するフリージョイント(自由継手)によって構成される。
【0041】
この時点で、支持エレメント210の姿勢(orientation)(またはポインティング)を決定するために、2つの回転自由度が理論的に充分であることに留意するが、後述するようなポインティングおよび安定化機構が、前記拘束部211が3つの自由度を持つ回転ジョイントであることを提供する運動を優先的に利用する。実際、第3回転自由度は、より便利な軌道でポインティングシステムの運動を達成するために有用になり、このことは、追加の最適化条件、例えば、電力消費の最小化または増加した駆動スピードなどを満たすことを可能にする。
【0042】
前記拘束エレメント111は、ナノ衛星プラットフォーム100の基準座標系101に対して固定され、利用可能な規格の1つに従って、ナノ衛星プラットフォームに付与される、ある種の金具によって構成できる。あるいは、いずれの場合も、それは、既存のナノ衛星プラットフォームの任意の適切なエレメント、例えば、エッジによって構成でき、これは、可動支持エレメント210を、全ての方向での回転運動のための充分なマージンを許容する位置に装着することを可能にし、充分なポインティング振幅を可能にする。
【0043】
変形の実施形態において、前記拘束エレメント111はまた、部分的または全体的には、ポインティングシステムの要求に対して未だ不安定であるが、衛星プラットフォーム100と一体化した基準座標系101に対して移動可能な中間プラットフォームでもよい。
【0044】
上述したように、中間プラットフォームが存在しない場合(中間プラットフォームを備えた場合は後述する)は、前記可動支持エレメント210は、2つまたは3つの自由度を伴う回転運動を許容するだけである、番号211で
図1に示すジョイント(拘束エレメント111上に配置された)を用いて、ナノ衛星プラットフォーム100に結合される。そして番号201は、前記可動支持エレメント210と一体化したデカルト基準座標系を示す。前記可動支持エレメント210がナノ衛星プラットフォーム100に結合される拘束タイプの効果のため、基準座標系201は、ナノ衛星プラットフォーム100と一体化した基準座標系101に対して回転可能である。特に、前記可動支持エレメント210は、基準座標系201の軸「w」によって、
図1に示す特定のポインティングを維持するように制御可能である。
【0045】
図1において、番号220は、光学キャリアを通じて変調された電気通信信号を送信するために適した、レーザ送信機の光学アンテナの一例を示す。前記レーザ送信機220は、前記可動支持エレメント210の上に搭載され、それはそれと一体化している。
図1に示す場合は、可動支持エレメント210と一体化した基準座標系201は、「w」軸がレーザ送信機220のポインティング方向と一致するように選択されている。明らかなように、可動支持エレメント210でのレーザ送信機220の搭載機構は、種々のタイプのものでもよく、本発明の実装の目的のために重要になることは、レーザ送信機220が、ナノ衛星プラットフォーム100(これは本質的に不安定なプラットフォーム)に対して移動可能である支持エレメント210の上に搭載されることであり、前記可動支持エレメント210の制御によって、前記レーザ送信機220のポインティングの制御および安定化の両方が可能であることである。
【0046】
2つの異なる表現、ポインティングの「安定化」と「制御」の使用は、説明した機構が、ポインティング機能自体をサポートするのにも適していることを明らかにするために、回転振幅について動作可能であることが本質的であり、これは、10度のオーダーに容易に到達できる。
【0047】
プラットフォームの不安定性を補償することが可能な他の既知の方法は、現実のポインティングを制御するのに充分な運動の「範囲」を許容せず、よって、これらは、より細かい制御で安定化する必要があるポインティングを確保できる他のシステムと連結する必要がある。
【0048】
前記支持エレメント210のポインティングの制御は、ジョイント211でのトルクの直接印加によって生じないことに気付くことが重要である(不都合なレバーを用いることによって、可動支持エレメント210を操作することを導く)。この最後のジョイントは、実際、建設的な視点から極端に簡単になるように設計され、純粋な回転拘束によって構成される。従って、関節式ジョイント211は、好ましい実施形態において、動きの伝達のためのギヤまたは機構の無い極めて簡単な機構であり、例えば、回転ベアリングの連結器によって構成してもよく、従って、高い信頼性で特徴付けられる。
【0049】
それが搭載されるナノ衛星プラットフォームに対する可動支持エレメント210の姿勢は、少なくとも2つの伸縮性脚によって構成されるアクチュエータによって決定される。
【0050】
番号310は、前記可動支持エレメント210が前記ナノ衛星プラットフォーム100に結合される脚の一方を示し、番号320は、脚310に類似しているが、必ずしも同一ではない第2の伸縮性脚を示す。前記伸縮性脚310は、回転拘束を用いてその2つの端部に結合され、一端では、前記可動支持エレメント210に接続され、他端では、ナノ衛星プラットフォーム100に接続される。脚310を結合するジョイントでも、ジョイント211(これにより可動支持エレメント210がナノ衛星プラットフォーム100に接続される)の場合のように、トルクの直接印加が提供されないことに留意することが重要である。能動エレメントだけが、脚の伸長機構に設置される。
【0051】
従って、可動支持エレメント210の姿勢は、伸縮性脚によって想定される長さによって決定され、これを用いて前記可動支持エレメント210が前記ナノ衛星プラットフォーム100に接続される。
【0052】
ジョイント211および伸縮性脚による接続は、前記可動支持エレメント210がナノ衛星プラットフォーム100に接続される拘束部だけであり、それを不安定にする応力に悩まされ、正確なポインティングを特に困難にしている。
【0053】
最後に、全ての種々の伸縮性脚が、好ましい実施形態において、同じ特性を有する(事実上、これらは全て等しい)ことを指摘すべきである。
【0054】
しかしながら、理論上、これらは異なる形状およびサイズでもよく、幾つかの異なる機械的特性を有してもよい。いずれの場合も、こうした脚、例えば、脚310は、これらの端部で、回転拘束を用いて、一端において可動支持エレメント210に、他端においてナノ衛星プラットフォーム100に接続されることによって全て特徴付けられる。さらに、全ての伸縮性脚は、これらがリニアアクチュエータを含むため、制御された方法で正確に伸縮可能である。表現「リニアアクチュエータ」は、制御された方法で伸縮性脚の長さを変更することが可能であり、可能ならば回転運動の変換のための機構も含む、任意のタイプのアクチュエータを参照することを意図していることに留意する。そして、これらの伸縮性脚によって想定される長さは、前記ナノ衛星プラットフォーム100に対する前記可動支持エレメント210の姿勢を決定する。
【0055】
図2は、
図1のものに類似した実装の一例を再現しており(本発明の発明原理をうまく説明する)、従って、
図2においても、本発明の教示に係る可動支持エレメント210のポインティングの安定化のためのシステムの幾つかのエレメントが、
図1で使用した同じ番号で示される。従って、番号100は、ナノ衛星プラットフォーム(
図2では部分的に見える)を示し、番号210は、可動支持エレメント210を表し、番号220は、レーザ送信機220の光学アンテナを示す。
図1のように、レーザ送信機220の光学アンテナのポインティング方向は、可動支持エレメント210と一体化したデカルト基準座標系201の軸「w」の方向である。
【0056】
番号200は、全体可動システムを全般的に示し、これは、可動支持エレメント210と一体化した全てのエレメントのセットに存在する。
【0057】
図2はまた、2つの伸縮性脚を示しており、これらの可変長さの関数で可動システム200の姿勢を決定する。前記2つの伸縮性脚は、番号310,320で示される。番号310で示す脚は、前景に設置され、破線矩形内に囲まれており、それを構成する幾つかの特徴的エレメントがより詳細に示される。番号311は、伸縮性脚310が可動支持エレメント210と接続可能になる1つのフリージョイントを表す。番号314は、伸縮性脚310が、他端においてナノ衛星プラットフォーム100に接続可能になる、少なくとも2つの自由度を備えた他のジョイントを表す。
【0058】
図2の実装の例において、ボールジョイント311だけが3つの回転自由度を備えた自由結合部であり、他の拘束部は、2つの自由度を備えたより簡単なジョイントで実現される。しかしながら、実装の選択肢は反転してもよく、ジョイント314が3つの自由度で自由に回転できることを提供する。2つの伸縮性脚を備えたシステムにおいて、全てのジョイントが自由(3つの自由度)である構成が可能であると仮定すると、各伸縮性脚の両端において、ちょうど2つの自由度を備えたジョイントの使用だけを可能にする追加の変形例が理論的にも可能であり、この場合、伸縮性脚に捩り応力が発生するが、伸縮性脚の中間ポイントでの自由捩りを許容するジョイントの存在を提供することによって、この現象は容易に適応できる。
【0059】
しかしながら、上述した実装変形例の中で好ましいものは、一方の回転拘束が、伸縮性脚310の一端においてフリージョイントであり、他方の回転拘束が、伸縮性脚310の他端において2つの自由度を備えた関節式ジョイントである。
【0060】
伸縮性脚310(他の伸縮性脚でも同様に)の調査に戻って、それは、直列に配置された少なくとも2つの伸長エレメントを備え、そのため両方が伸長した場合、脚310の全体伸長は2つのエレメントの伸長の合計で与えられ、代わりに両方が圧縮された場合、脚310の全体圧縮は2つのエレメントの圧縮の合計で与えられる(明らかに、あるエレメントが圧縮され、他方が伸長した場合、2つの効果は、脚の長さ変動を少なくとも部分的に補償する)ことに留意する。
【0061】
番号313は、減衰およびダンピングエレメントを示し、これは圧縮または伸長受動エレメントである。前記受動エレメント313は、典型的な実装において、剛性「k」および散逸(dissipative)係数「c」によって特徴付けられ、実際、それは、ローパスフィルタ(上述したように散逸摩擦の係数によって特徴付けられるため、少なくとも2次のもの)として機能するスプリング(通常は非線形で、散逸特性によって特徴付けられる)として機能する。
【0062】
番号312は、代わりに、脚の長尺化及び/又は短縮化を可能にするリニアアクチュエータを表す。この場合、それは能動および制御可能なエレメントであり、これはある範囲内で脚310の長さを変化させることを可能にする。
【0063】
受動ダンパ313が、低いカットオフ周波数を持つ理想ローパスフィルタとして多いに振る舞うほど、可動支持エレメント210は、少なくともカットオフ周波数より充分に高い周波数によって勧誘された場合、ますます安定化姿勢をもたらすことに留意する必要がある。実際、ナノ衛星プラットフォーム100の運動によって決定され、結合部314を通じて伝送される全ての高い周波数の勧誘は、前記受動ダンピングエレメント313によって吸収され、その他端において、ほぼ静止状態で存在しており、能動リニアアクチュエータ312に低い周波数の運動を伝達する。しかしながら、理想的な挙動はまさに理論的な近似であり、現実のシステムにおいて再現されず、とりわけ脚の長さの制御は、制御運動も充分に高い周波数の成分を伝送する(例えば、高速ポインティング制御を実施するために)ことを要求することは明らかである。従って、前記受動減衰およびダンピングエレメント313は、それが接続されたナノ衛星プラットフォーム100によって各伸縮性脚で生成される応力の一部だけを吸収し、これらの応力の残りを他端へ伝達する。従って、リニアアクチュエータ312は必要であり、それが、受動ダンパ313によってフィルタ処理されない応力(特にダンパが設計されていない、より低い周波数)を補償する必要があるためである。
【0064】
ここで、受動エレメント313の存在が、本発明に係る安定化システムの各脚において、補償すべきだった動きの関連部分をフィルタ処理することによって、可動支持エレメント210の安定化制御をどのように促進できるが明らかである。
【0065】
ここで、受動ダンパ313が、ナノ衛星プラットフォーム100によって誘起される応力をより多くフィルタ処理して吸収できるほど、能動リニアアクチュエータ312の担当である安定化のタスクがより簡素化されることも明らかにすべきである。
【0066】
本発明の典型的な実施形態において、受動減衰およびダンピングエレメント313は、極めて低い剛性(stiffness)によって特徴付けられるスプリングを備える。これに関して、低重力環境(宇宙環境のように)において、極めて「緩い」スプリングを使用することが確かに可能である(これらの「緩」過ぎるスプリングを過度に圧縮または伸長し得る重量を補償する必要がないため)ことに留意する。しかしながら、簡単なスプリングより複雑な受動ダンパを考案するための研究は継続しており、こうした研究の結果は、本特許に記載された教示によって示される応用に関連してますます効率的な性能を備えた他のタイプのダンパ313を生成できる。
【0067】
一般に、現実の場合、伸縮性脚の構築は、スプリングまたはピストンまたは他の現実の物理コンポーネントの使用をベースとしており、その特徴付けは、純粋に弾性エレメント(弾性の係数「1/k」によって特徴付けられる)および散逸エレメント(係数「c」によって特徴付けられる)が直列に配置された簡略化モデルによって公式化できる。あるいは、これらはより複雑なモデルに従って展開でき、いくつかの弾性および散逸の寄与が異なる方法で直列および並列の両方で組み合わされる。
【0068】
従って、本発明の教示は、数個(典型的には2つ)のリニアアクチュエータを用いて、その姿勢が制御可能な可動支持エレメント210を実現することを可能にし、達成可能な安定化システム全体は、極めてコンパクトであり、やや低い重量を維持する。
【0069】
実装可能な安定化制御は、特定の拘束システムおよび、正確には制御エレメントであるリニアアクチュエータを制御する自動制御機能の設計をかなり簡略化する幾つかの受動減衰およびダンピングエレメントの挿入のおかげで、精度および応答速度のとても満足な性能に到達する。換言すると、本発明で示される拘束システムは、リニアアクチュエータのための制御コマンドを発生するように設計された制御機能の実行をサポートするのに適しており、極めて小さい許容誤差を達成でき、そしてナノ衛星プラットフォームを含む光学通信のためのポインティング応用によって課せられる特に厳しい要求と合致している。
【0070】
能動制御を受けない、特定の剛性「k」および特定の散逸係数「c」によって特徴付けられた減衰およびダンピングの受動エレメントの選択は、簡略性の考慮によって決定され、この理由のため、それは好ましい実施形態のための選択と考えられる。しかしながら、本発明の原理は、アクチュエータエレメントに加えて、幾つかの機械的勧誘をフィルタ処理するのに適した減衰およびダンピングのためのエレメントをも含む2つ以上の伸縮性脚の長さを制御することによって、可動プラットフォーム210の姿勢を操作するという概念にある。従って、こうした発明原理はまた、より大きな複雑さを導入するとともに、能動的にもできる減衰およびダンピングのためのエレメント、例えば、係数「k」の制御が許容されるエレメント、または、複数の係数が制御可能である、より大きな複雑さおよび順序(order)の機械的フィルタを提供する変形例に従って実装できる。
【0071】
従って、異なる複雑さおよび順序の減衰およびダンピングのエレメントを利用し、最終的には受動的でない(弾性係数または散逸ダンピング係数の1つ以上の特定の制御が許容される意味で)全ての変形実施形態は、全て同じ発明の変形例と考えられる。
【0072】
上述したように、本発明を実現することが可能な伸縮性脚の数は可変であり、より簡単でよりコンパクトであるため、ちょうど2つの脚を備えた場合が好ましいものと考えられるが、3つの脚を備えた場合も、そしてより大きい数の脚を備えた場合も本発明の現実的な実装と考えられる。
【0073】
機能的な観点から、3つの伸縮性脚の存在は、3つの制御パラメータを有する機会を提供し、3つの自由度を制御することを理論的に可能にする。
【0074】
ポインティング(および安定化)応用は、通常、ちょうど2つの自由度の制御を必要とし、一般に光学信号の偏光(polarization)の機械的制御が要求されないことは明らかであるが、幾つかの場合、3つの脚を備えた機能的実装を選ぶ理由も存在することがあり、例えば、3つの脚は、より大きな柔軟性で堅牢性要求を管理することを可能にする拘束システムを意味する。第3自由度の制御はまた、より大きな数の可能性ある軌道を用いて運動を実現させることを可能にし、そこから、例えば、脚の伸長または伸長速度または電力消費を最小化するものが選択できる。
【0075】
上述したように、本発明で示されるシステムは、10度のオーダーの振幅でポインティングをサポートできる。それは、多くの応用で既に充分な「範囲」であるが、応用の幾つかの場合は、更なる潜在的な応用要求を満たすために、この「範囲」を数度でも増加させることが重要になる。
【0076】
多くの場合、特に他の応用もサポートする必要がある衛星プラットフォームにおいて、可動システム200の可動性によって許容されるものより大きいポインティング振幅が要求されることがあり、衛星姿勢全体の変動を用いることによって、減少したポインティング振幅を補償することが可能でなかった場合、代替の手段に頼ってポインティング「範囲」の幅を増加させることが必要である。
【0077】
明らかに、より長い脚を備え、より多くの突出する拘束エレメント111を備えたより嵩張る安定化システムを用いて、ポインティング「範囲」の振幅は増加できるが、この経路に追従しないことがより良好であり、理由は、それが全体寸法を増加させるためだけでなく(この結果、それは実質的に必然的である)、それはシステムのモジュール方式を複雑にし、それを標準化できないようにし、要求されるポインティング「範囲」に応じて、異なるモジュールを提供する必要があるためである。さらに、一般に、動作「範囲」の増加は応答速度の減少を意味するため、アクチュエータの選択はより困難であろう。
【0078】
他の解決法が存在し、これは本発明の教示に係るシステムの搭載変形例として見ることができ、このシステムは、衛星プラットフォーム100に、あるいは、いずれの場合もそれに剛性接続されたエレメントに直接に結合されないことを提供し、それが、衛星プラットフォーム100と一体化した基準座標系101に対して移動できる中間プラットフォームに結合されることを提供する。
【0079】
図3は、本発明に係る安定化およびポインティングシステムのこうした更なる搭載変形例を示す。
【0080】
図の上側部において、
図2に示す例のように安定化された可動支持エレメント210が表現される。しかしながら、
図3において、拘束エレメント111は、衛星プラットフォーム100と一体化しておらず、それに対して移動可能であり、そして基準座標系101に対して移動可能である。
図3において、拘束エレメント111は、より延長した形態を想定しており、それは伸縮性脚のための連結ポイントを提供しているためであり、
図2の場合、代わりにナノ衛星プラットフォーム100に結合されている。従って、
図3において(
図2とは異なり)、脚310を拘束エレメント111(この場合、中間プラットフォームになる)に結合する回転ジョイントが番号314で示されており、同様に番号324は、他の伸縮性脚を常に同じ拘束エレメント111に結合する回転ジョイントを示す。
【0081】
最後に、番号110は、更なる回転ジョイントを示し、これを用いて前記拘束エレメント111が衛星プラットフォーム100に接続される(従って、後者に剛性で取り付けられていない)。回転ジョイント110は、汎用アクチュエータ手段によって制御可能であり、しかしながら、前記ジョイント110の制御は、ナノ衛星プラットフォーム100の不安定性を正確に補償するとは考えられず、従って、拘束エレメント111は、不安定な中間プラットフォームになり続けることになり、可動支持エレメント210は、
図3に示す構成においても、
図2に表した場合に生ずるように、安定化のためおよびポインティングのための制御を必要とし続けることになる。
【0082】
従って、回転ジョイント110の主要な機能は、ポインティング振幅を増加させるものである。
【0083】
図3の構成において、制御された方法で安定化され調整可能である、可動支持エレメント210であるように設計された同じ機械的モジュールは、より高いポインティング振幅が必要とされるシステムにおいてどのように使用できるかを直ちに理解し、更なる制御ジョイントを追加することによってのみ全てのものが適応できる。
【0084】
前記ジョイント110の制御を実装するアクチュエータ手段が、特定の性能を有するために必要とされないことを指摘することが重要である。理論上は、拘束エレメント111は、回転拘束110を用いて、または回転拘束110を用いてのみ結合されるという要求でもない。実際、角度ポインティングの「範囲」を増加させる機能は、拘束エレメント111が、衛星プラットフォーム100と一体化した基準座標系101に対して2つの自由度を備えた特定の回転運動を実施できるようにする任意のタイプの結合部を用いて達成できる。
【0085】
ここで説明した本発明はまた、前述したものと比べて追加の利点を提供できる多数の変形例を導くことができる。本説明および添付した請求項から明らかなように、これらの追加の変形例は、本発明から逸脱することなく、当業者によって開発できる。
【0086】
従って、幾つかの説明したエレメントの位置は変更でき、例えば、能動エレメントおよび受動エレメントが伸縮性脚において位置決めされる順序は、反転できる。
【0087】
システム200の姿勢の制御の精度および効率は、例えば、伸縮性脚の傾斜角(inclination)を変更することによって、幾何学的タイプの最適化を用いて改善できる。これらの幾何学的最適化プロセスはまた、全体システムをよりコンパクトかつより硬くするのに機能的であり、到達される解決法は全て、本発明で教示される同じ発明原理の変形例として考える必要がある。
【0088】
さらに、各エレメントは、異なる材料、サイズまたは形状に開発でき、そして発明自体が部分的な方法で実現でき、多くの説明した詳細が技術的に等価なエレメントで置換できる。
【0089】
最後に、説明した発明は、説明した安定化プラットフォームの性能をさらに改善するために追加のテクニックを組み込んでサポートするように導く。特に、伸縮性脚に連結された受動エレメント313を達成する際に、著しい進歩が予想される。さらに、リニアアクチュエータ312も技術的進歩に対して敏感であり、より軽量で、より正確またはより高速な制御可能なリニアアクチュエータは、間もなく利用可能になり、よってこれらは、安定化制御のための新しくより有効な手段を実装するために使用できる。
【0090】
特に興味深いことは、散逸および剛性/弾性のパラメータがモータ自体の構造において得られる実装であろう。絶対的に変形しない材料および摩擦によって影響されない動きは存在しないため、実際のエンジンは、当然ながら常にこれらのパラメータを含む。しかしながら、これらのパラメータの決定が、可変の設計として必要な自由さで充分に設定できるエンジンの設計を可能にする充分に成熟した技術は存在しない。しかしながら、こうした剛性係数および散逸係数が制御可能であるモータを開発することを可能にする設計および材料の利用可能なテクニックが存在した最終的な場合は、性能の他のパラメータについて生ずるように、本発明は、全てのコンポーネントが単一エレメントに集積された伸縮性脚を通じて明らかに実装できる。
【0091】
多くの改善が、本発明の実装に興味を持つ技術の進化の機能で着想できることは明らかである。こうした手段の改善は、ここでは説明していないが、最終的に本発明に関連付けられる更なる特許出願の主題になるであろう。