(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】ゲル化補助剤の析出が改善された硬質カプセル、及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/38 20060101AFI20220314BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220314BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220314BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20220314BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220314BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20220314BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220314BHJP
A61K 8/11 20060101ALI20220314BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220314BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20220314BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20220314BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20220314BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20220314BHJP
A61J 3/07 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K47/26
A61K9/48
A61K47/36
A61K47/02
A61K8/20
A61K8/34
A61K8/60
A61K8/73
A61K8/11
A23L5/00 C
A23L29/262
A23L29/231
A23L29/256
A23L29/269
A61J3/07 D
A61J3/07 G
(21)【出願番号】P 2018554891
(86)(22)【出願日】2017-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2017041048
(87)【国際公開番号】W WO2018105339
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2016237791
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228110
【氏名又は名称】クオリカプス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大崎 芳朗
(72)【発明者】
【氏名】麻生 慎
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1927186(CN,A)
【文献】特開2010-270039(JP,A)
【文献】特開平08-208458(JP,A)
【文献】特開平03-279325(JP,A)
【文献】特表2009-524573(JP,A)
【文献】特開2000-297102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0072731(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A23L 5/00
A23L 29/00-29/30
A61J 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)セルロース化合物、(2)ゲル化剤、(3)ゲル化補助剤、並びに(4)還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種、を含む皮膜からなる硬質カプセルであって、水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合に、皮膜に含まれるゲル化剤の含有量が0.05~10質量%であり、ゲル化補助剤の含有量が0.6質量%より大きくかつ5質量%以下であ
り、
二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種の含有量が2~10質量%である、硬質カプセル。
【請求項2】
水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合に、皮膜に含まれる還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種の含有量が
3~
8質量%である、請求項1に記載の硬質カプセル。
【請求項3】
セルロース化合物が、アルキル基、及びヒドロキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの基によってセルロースのヒドロキシ基の水素原子が置換された水溶性のセルロースエーテルである、請求項1又は請求項2に記載の硬質カプセル。
【請求項4】
セルロース化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
【請求項5】
ゲル化剤が、カラギーナン、ペクチン、及びジェランガムからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
【請求項6】
ゲル化剤が、カッパ-カラギーナンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
【請求項7】
ゲル化補助剤が、水溶液中で、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はカルシウムイオンを生じることができる化合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
【請求項8】
ゲル化補助剤が、塩化カリウムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
【請求項9】
還元性のない二糖類が、トレハロース、及びスクロースからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
【請求項10】
還元性のない二糖アルコールが、マルチトール、ラクチトール、及びイソマルトからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
【請求項11】
さらに、可塑剤、及び/又は遮光剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
【請求項12】
(1)セルロース化合物、(2)ゲル化剤、(3)ゲル化補助剤、並びに(4)還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種、を含む硬質カプセルの調製液であって、調製液の溶媒以外の成分合計を100質量%とした場合に、溶媒以外の皮膜成分合計中のゲル化剤の含有量が0.05~10質量%であり、ゲル化補助剤の含有量が0.6質量%より大きくかつ5質量%以下であ
り、
二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種の含有量が2~10質量%である、硬質カプセル調製液。
【請求項13】
調製液の溶媒以外の成分合計を100質量%とした場合に、溶媒以外の皮膜成分合計中の還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種の含有量が
3~
8質量%である、請求項12に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項14】
セルロース化合物が、アルキル基、及びヒドロキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの基によってセルロースのヒドロキシ基の水素原子が置換された水溶性のセルロースエーテルである、請求項12又は請求項13に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項15】
セルロース化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項12~14のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項16】
ゲル化剤が、カラギーナン、ペクチン、及びジェランガムからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項12~14のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項17】
ゲル化剤が、カッパ-カラギーナンである、請求項12~16のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項18】
ゲル化補助剤が、水溶液中で、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はカルシウムイオンを生じることができる化合物である、請求項12~17のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項19】
ゲル化補助剤が、塩化カリウムである、請求項12~18のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項20】
還元性のない二糖類が、トレハロース、及びスクロースからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項12~19のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項21】
還元性のない二糖アルコールが、マルチトール、ラクチトール、及びイソマルトからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項12~20のいずれか一項に記載の硬質カプセル調整液。
【請求項22】
さらに、可塑剤、及び/又は遮光剤を含む、請求項12~21のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項23】
下記工程を含む硬質カプセルの調製方法:
請求項12~22のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液を使用して、硬質カプセルを調製する工程。
【請求項24】
前記硬質カプセルの調製方法が、冷ゲル法である請求項23に記載の硬質カプセルの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化補助剤の析出が改善された硬質カプセル、前記硬質カプセルの調製液、及び前記硬質カプセルの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース化合物を基剤の主成分とする硬質カプセルの製造方法には、冷ゲル法と熱ゲル法がある。冷ゲル法は、ゼラチンによる硬質カプセル製造と同様のプロセスで作成できるため、装置コストが低減できる。また、冷ゲル法は、乾燥時の温度が室温~40℃程度で済むので、エネルギーコスト的にも有利であり、環境保護の面からも好ましい。
【0003】
セルロース化合物をカプセル皮膜の主成分とする硬質カプセルを冷ゲル法で成形する場合、ゲル化剤及びゲル化補助剤が使われる。中でもゲル化剤としては、カッパーカラギーナン、ゲル化補助剤としては、KClが、低温でのゲル化性能が高く硬質カプセルの製造性(生産性)に優れており、硬質カプセルの皮膜硬度の維持に有効である。
【0004】
低温でのゲル化性能が高いとは、硬質カプセル調製液に、室温程度のモールドピンを浸けて引き上げ、その後硬質カプセル調製液を冷やした際、硬質カプセル調製液が温度低下に伴い急激かつ急峻な粘度増加を示し、ゲル化する傾向が高いことをいう。モールドピン表面に付着した硬質カプセル調製液の水分蒸発による硬化だけでは、完全に硬化するまでに数分~数十分の時間を要し、その間、ピン上に付着した皮膜物質が液だれを起こすため、均一なカプセル皮膜が得られない。ゲル化性能が高いと短時間で調製液が硬化するので、均一な膜厚の硬質カプセルを得ることができる。また、ゲル化でほぼ硬化が完了した硬質カプセル皮膜は、その後皮膜から水分を蒸発させるために乾燥を加速(乾燥中に吹き付ける空気の温度を高めにする、空気の数量をあげるなど)しても、しわなどの欠陥が発生しにくい。ゲル化性能の高さは、乾燥時間の短縮にもつながり、単位時間当たりの硬質カプセルの製造数量も増大できる。
【0005】
ゲル化剤は、一般的に、添加量が多い方がゲル化剤のゲル化性能が高くなり、多くなりすぎるとカプセル皮膜が割れやすくなるため、ヒプロメロース100質量部に対して0.4質量部程度で添加されることが多い(特許文献1)。また、ゲル化補助剤は、ゲル化剤が多ければ、それに伴い添加量を増加させるが、一般的にヒプロメロース100質量部に対して0.6質量部以下で添加されることが多い(特許文献1)。
【0006】
硬質カプセルの製造性をより向上させるためには、ゲル化性能を挙げて、できるだけ、短時間で硬化させることが望ましい。ゲル化性能を向上させるためには、ゲル化剤そのもののゲル化性能とともに、ゲル化補助剤の添加量を増やしてゲル化を促進することが考えられる。
【0007】
一方で、ゲル化補助剤を多量に添加すると、硬質カプセルを特に高湿度下で保存した場合、ゲル化補助剤が結晶化して析出する問題がある。特に、透明な硬質カプセルでは、目視で白っぽい粉の付着が確認しやすいため、外観・美観上も好ましくない。
【0008】
これまで、適度な置換度を有するヒプロメロースを用いること、具体的には硬質カプセル中のヒプロメロースの全量を100%とした時に、置換度グレード2208のヒプロメロースを20~100%の範囲となるように添加することで、このような析出を抑制できることが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-27003号公報
【文献】特開2000-297102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の方法であっても、ゲル化補助剤の析出抑制効果は認められるものの、さらにゲル化補助剤の添加量を増加させ硬質カプセルの製造性を向上させることは困難であった。
【0011】
本発明は、ゲル化補助剤の添加量を増加させても、ゲル化補助剤の析出が抑制された硬質カプセル、すなわちゲル化補助剤の析出が改善された、硬質カプセルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意研究を重ねたところ、還元性のない二糖類または還元性のない二糖アルコールを硬質カプセル皮膜に添加することにより、セルロース化合物を基剤の主成分とする硬質カプセルの利点である機械強度(硬度、割れにくさ)、溶出性等の特性を損なわずに、顕著な析出抑制効果が得られることを見出した。
本発明は、当該知見に基づいて完成されたものであり、以下の態様を含む。
【0013】
I.硬質カプセル
I-1.(1)セルロース化合物、(2)ゲル化剤、(3)ゲル化補助剤、並びに(4)還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種、を含む皮膜からなる硬質カプセルであって、水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合に、皮膜に含まれるゲル化剤の含有量が0.05~10質量%であり、ゲル化補助剤の含有量が0.6質量%より大きくかつ5質量%以下である、硬質カプセル。
I-2.水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合に、皮膜に含まれる還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種の含有量が1~10質量%である、I-1に記載の硬質カプセル。
I-3.セルロース化合物が、アルキル基、及びヒドロキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの基によってセルロースのヒドロキシ基の水素原子が置換された水溶性のセルロースエーテルである、I-1又はI-2に記載の硬質カプセル。
I-4.セルロース化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、I-1~I-3のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
I-5.ゲル化剤が、カラギーナン、ペクチン、及びジェランガムからなる群から選択される少なくとも一種である、I-1~I-4のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
I-6.ゲル化剤が、カッパ-カラギーナンである、I-1~I-5のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
I-7.ゲル化補助剤が、水溶液中で、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はカルシウムイオンを生じることができる化合物である、I-1~I-6のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
I-8.ゲル化補助剤が、塩化カリウムである、I-1~I-7のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
I-9.還元性のない二糖類が、トレハロース、及びスクロースからなる群から選択される少なくとも一種である、I-1~I-8のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
I-10.還元性のない二糖アルコールが、マルチトール、ラクチトール、及び、イソマルトからなる群から選択される少なくとも一種である、I-1~I-9のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
I-11.さらに、可塑剤、及び/又は遮光剤を含む、I-1~I-10のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
【0014】
II.硬質カプセル調製液
II-1.(1)セルロース化合物、(2)ゲル化剤、(3)ゲル化補助剤、並びに(4)還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種、を含む硬質カプセルの調製液であって、調製液の溶媒以外の成分合計を100質量%とした場合に、溶媒以外の皮膜成分合計中のゲル化剤の含有量が0.05~10質量%であり、ゲル化補助剤の含有量が0.6質量%より大きくかつ5質量%以下である、硬質カプセル調製液。
II-2.調製液の溶媒以外の成分合計を100質量%とした場合に、溶媒以外の皮膜成分合計中の還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種の含有量が1~10質量%である、II-1に記載の硬質カプセル調製液。
II-3.セルロース化合物が、アルキル基、及びヒドロキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つの基によってセルロースのヒドロキシ基の水素原子が置換された水溶性のセルロースエーテルである、II-1又はII-2に記載の硬質カプセル調製液。
II-4.セルロース化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、II-1~II-3のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
II-5.ゲル化剤が、カラギーナン、ペクチン、及びジェランガムからなる群から選択される少なくとも一種である、II-1~II-4のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
II-6.ゲル化剤が、カッパ-カラギーナンである、II-1~II-5のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
II-7.ゲル化補助剤が、水溶液中で、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はカルシウムイオンを生じることができる化合物である、II-1~II-6のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
II-8.ゲル化補助剤が、塩化カリウムである、II-1~II-7のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
II-9.還元性のない二糖類が、トレハロース、及びスクロースからなる群から選択される少なくとも一種である、II-1~II-8のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
II-10.還元性のない二糖アルコールが、マルチトール、ラクチトール、及びイソマルトからなる群から選択される少なくとも一種である、I-1~I-9のいずれか一項に記載の硬質カプセル調整液。
II-11.さらに、可塑剤、及び/又は遮光剤を含む、II-1~II-10のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
【0015】
III.硬質カプセルの調製方法
III-1.下記工程を含む硬質カプセルの調製方法:
II-1~II-11のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液を使用して、硬質カプセルを調製する工程。
III-2.前記硬質カプセルの調製方法が、冷ゲル法であるIII-1に記載の硬質カプセルの調製方法。
III-3.前記硬質カプセルの調製方法が、ゲル化補助剤の析出抑制するためのものである、III-1又はIII-2に記載の硬質カプセルの調製方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ゲル化補助剤の析出が改善された硬質カプセルを提供することができる。当該硬質カプセルは、ゲル化性能が改善され、さらには硬質カプセルの製造性(生産性)を向上することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】オートグラフにセットされたフィルムを示す。(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【
図2】金属圧子がフィルム頂部を圧縮する様子を示す。(a)は圧縮前、(b)は圧縮後である。(c)は、圧縮の深さと圧縮試験力の関係を示す。圧子の直径は、9mmである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.硬質カプセル
本発明の硬質カプセルは、(1)セルロース化合物、(2)ゲル化剤、(3)ゲル化補助剤、並びに(4)還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種を含む皮膜からなる。
【0019】
本明細書において、「硬質カプセル」とは、カプセルの皮膜を先に製造し、製造されたカプセル皮膜に内容物を充填するタイプのカプセルである。通常、キャップ部とボディ部とからなり、ハードカプセル、又はツーピースカプセルとも呼ばれる。本発明の「硬質カプセル」には、2枚のフィルムの間に内容物を充填し、フィルム同士を接着して製造するソフトカプセル、内容物を皮膜溶液と共に凝固液に滴下して製造するシームレスカプセル、及び基材の析出やエマルジョン化によって内部に有効成分を取り込ませて調製するマイクロカプセルは含まれない。
【0020】
本発明で用いられるセルロース化合物としては、アルキル基またはヒドロキシアルキル基の少なくとも1つの基でセルロースのヒドロキシ基の水素原子が置換された水溶性のセルロースエーテルを挙げることができる。ここで上記アルキル基またはヒドロキシアルキル基でいう「アルキル基」としては、炭素数1~6、好ましくは1~4の直鎖または分岐状の低級アルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基およびプロピル基を挙げることができる。水溶性セルロース化合物として具体的には、メチルセルロースなどの低級アルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシ低級アルキルセルロース;ならびにヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(本明細書においてヒプロメロースあるいはHPMCともいうことがある)等のヒドロキシ低級アルキルアルキルセルロースなどを挙げることができる。なかでも、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは皮膜成形性および低水分下での機械的強度が優れている点で、最適なセルロース化合物である。また、セルロース化合物を硬質カプセルに適用した例としては、米国特許第2526683号明細書、米国特許第2718667号号明細書、米国特許第3617588号号明細書、米国特許第4365060号号明細書、米国特許第4993137号号明細書、米国特許第5032074号号明細書、米国特許第5431917号号明細書、米国特許第5756123号号明細書、米国特許第6517865号号明細書、米国特許第6649180号号明細書、米国特許第2010/0168410号明細書、米国特許第9138920号明細書、米国特許第9211659号明細書に記載のものがあげられる。
本発明で使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロースには、日本薬局方で定められる表1に規定されるヒプロメロースが含まれる。
【0021】
【0022】
また、本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースには、日本国で食品添加剤としての使用が認められている下記分子量を有するヒプロメロースが含まれる。
<分子量>
非置換構造単位:162.14
置換構造単位:約180(置換度1.19)、約210(置換度2.37)
重合体:約13,000(n=約70)~約200,000(n=約1000)。
【0023】
商業的に入手可能なヒドロキシプロピルメチルセルロースは、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、通常1.5~4の範囲にある。なお、当該比(Mw/Mn)を算出する場合の質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)はいずれもゲルクロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー)で求めることができる。ゲルクロマトグラフィーの原理および手法は、限定されないが、例えば「USP30 The United States Pharmacopeia / NF25 The National Formulary」の「Chromatography」の章の「Size-Exclusion Chromatography」の項の記載を参照することができる。
【0024】
商業的に入手可能なヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、信越化学社のTC-5シリーズ、SB―4シリーズ(登録商標)、METOLOSE(登録商標)、シリーズ、LOTTE(旧Samsung)精密化学社のAnyCoat―C(登録商標)シリーズ、DOW社のMETCEL(登録商標)シリーズを挙げることができる。
また本発明が対象とするヒプロメロースには、その2質量%水溶液の20℃±0.1℃における粘度が3~50mPa・sの範囲にあるものが含まれる。
【0025】
本発明においてヒプロメロースは1種単独で使用してもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて使用することができるが、いずれも「ヒプロメロース粘度値」が、300~5000、好ましくは、300~1500の範囲、より好ましくは300~960の範囲のものを用いることができる。ここで「ヒプロメロース粘度値」とは、カプセルフィルムの製造に使用するヒプロメロースの2質量%水溶液の20℃±0.1℃における粘度(mPa・s)に、ヒプロメロース総量100質量部に対するその割合(質量部)を乗じたものの総和を意味する。具体的には、カプセルフィルムの製造に2質量%水溶液の粘度が6mPa・sのヒプロメロースを単独で使用する場合は、「ヒプロメロース粘度値」は、「6mPa・s×100質量部」で600となる。また、カプセルフィルムの製造に2質量%水溶液の粘度が4mPa・sのヒプロメロースを30質量部、および6mPa・sのヒプロメロースを70質量部組み合わせて使用する場合は、「ヒプロメロース粘度値」は、「4mPa・s×30質量部+6mPa・s×70質量部」で540となる。
【0026】
一般的には、分子量が低ければ粘度値は低くなる。また、分子量が低い、すなわち、粘度値が低い場合には、硬質カプセルの溶解性はよくなるが、一方で、割れやすくなる傾向がある。
【0027】
従って、通常、溶解性が重視される経口投与の医薬品向けでは、300~960であることが好ましい。他方、吸引製剤医薬品向け、及び食品用途向けには、割れにくさが重視され、500~1500であることが好ましい。
【0028】
ゲル化剤として、カラギーナン、ペクチン、およびジェランガムなどゲル化補助剤と組み合わせて硬質カプセル調製液をゲル化させることができるものを例示することができる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0029】
上記ゲル化剤のなかでもカラギーナンは、ゲル強度が高く、しかも特定イオンとの共存下で少量の使用で優れたゲル化性を示すことから最適なゲル化剤である。なお、カラギーナンには、一般にカッパ-カラギーナン、イオタ-カラギーナンおよびラムダ-カラギーナンの3種が知られている。本発明では、比較的硬度の高いゲル化能を有するカッパおよびイオタ-カラギーナンを好適に使用することができ、より好適にはカッパ-カラギーナンが使用できる。またペクチンはエステル化度の違いでLMペクチンとHMペクチンとに分類でき、ジェランガムもアシル化の有無によってアシル化ジェランガム(ネイティブジェランガム)と脱アシル化ジェランガムに分類することができるが、本発明ではいずれも区別することなく使用することができる。
【0030】
本発明の硬質カプセルの皮膜に含まれるゲル化剤の含有量は、硬質カプセルの皮膜を冷ゲル法により成形できる限り制限されない。ゲル化剤の含有量としては、水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合、0.05~10質量%、好ましくは0.1~9.5質量%、より好ましくは0.2~9質量、さらに好ましくは0.3~8質量%を挙げることができる。
【0031】
ゲル化補助剤は、使用するゲル化剤の種類に応じて選択することができる。ゲル化補助剤には、ゲル化剤のゲル化を促進する効果がある。あるいは、セルロース化合物に直接作用してのゲル化温度もしくは曇点温度を上下させることで、ゲル化の促進に寄与する場合もある。ゲル化剤としてカラギーナンを使用する場合に組み合わせて用いることができるゲル化補助剤としては、カッパ-カラギーナンについては水溶液中でナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンおよびカルシウムイオンの1種又は2種以上を生じることのできる化合物、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化カルシウムを挙げることができる。好ましくは、水溶液中でナトリウムイオン、カリウムイオン又はカルシウムイオンを生ずる化合物である。またイオタ-カラギーナンについては水中でカルシウムイオンを与えることのできる、例えば塩化カルシウムを挙げることができる。またゲル化剤としてジェランガムを使用する場合に組み合わせて用いることができるゲル化補助剤としては、水中でナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの1種又は2種以上を与えることのできる化合物、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムを挙げることができる。加えて有機酸やその水溶性塩としてクエン酸またはクエン酸ナトリウムを使用することもできる。
【0032】
本発明の硬質カプセルの皮膜に含まれるゲル化補助剤の含有量は、ゲル化剤の含有量に応じて設定してもよい。ゲル化補助剤の含有量は、水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合、少なくとも0.6質量%よりも高く、かつ10質量%以下の範囲とすることができる。ゲル化補助剤の含有量の下限値として、好ましくは0.65質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらにより好ましくは、2.6質量%以上を挙げることができる。ゲル化補助剤の含有量の上限値として、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3.5質量%以下を挙げることができる。当該上限値と下限値は、適宜組み合わせることができる。
【0033】
セルロース化合物としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる場合、併用するゲル化剤としてはカラギーナン、特にカッパ-カラギーナン、またこれと併用するゲル化補助剤としては塩化カリウムを好適に挙げることができる。
【0034】
本明細書において、「二糖類」としては、スクロース、トレハロース、マルトース、ラクトース、ツラノース、セロビオース等の2つの単糖類が結合した糖を意味する。本発明において、二糖類として好ましくは還元性のない二糖類である。還元性の有無は、分子内のアルデヒド基の有無に依存する。還元性のない二糖類として、好ましくはスクロース、及びトレハロースからなる群から選択される少なくとも一種である。スクロース及びトレハロースは、化学式はともにC12H22O11であり、二糖類としては例外的に非還元性である。
【0035】
本明細書において、「二糖アルコール」とは、二糖類の構成要素としてアルドースやケトースのカルボニル基が還元されて生成する糖アルコールを含むものである。本発明において二糖アルコールとして好ましくは還元性のない二糖アルコールである。還元性のない二糖アルコールとして、好ましくはマルチトール、ラクチトール、及びイソマルトからなる群から選択される少なくとも一種である。
糖類もしくは糖アルコール類の還元性は、水溶液中において、第16日本薬局方の一般試験法、4.03消化力試験法にも記載されているフェーリング反応によって判定できる。ただし、糖類もしくは糖アルコール類の還元性は、水溶液中においてとりうるその化学構造中に含まれるアルデヒド基の還元性に由来する。
【0036】
本発明者らは、種々の単糖、二糖類及び二糖アルコール等の糖質のセルロース化合物を主成分とするカプセル皮膜への添加効果につき鋭意検討した結果、還元性のない二糖類または二糖アルコールにおいて、顕著なゲル化補助剤析出抑制効果が得られることが分かった。特に、還元性のない二糖類は、添加によるカプセル皮膜硬度の低下をほとんど起こすことなく、ゲル化補助剤抑制効果が得られて、より好ましいこともわかった。
【0037】
特許文献2に記載の置換度2208ヒプロメロースを使用することによってもたらされる効果は、還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種の糖質によって奏されるゲル化補助剤の析出抑制効果には満たないが、両者を合わせ用いることで、より顕著なゲル化補助剤析出抑制効果を得ることも可能である。
【0038】
硬質カプセルの皮膜に含まれる還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種の含有量は、ゲル化補助剤の析出を抑制できる限り制限されない。また、還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される二種以上の糖質を用いる場合は、使用する前記糖質の総量が下記含有量の範囲となるようにする。還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種の含有量は、水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合、1質量%~10質量%の範囲とすることができる。前記含有量の下限値として、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上を挙げることができる。前記含有量の上限値として、好ましくは9質量%以下、より好ましくは8質量%以下を挙げることができる。還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種の含有総量が10質量%を超えると硬質カプセルの硬度が下がるため、当該含有量は10質量%を超えないことが好ましい。
【0039】
本発明の硬質カプセルの皮膜は、必要に応じて硬質カプセルの皮膜成分として、可塑剤、滑沢剤、金属封鎖剤、着色剤、遮光剤、残留水分(単に水分ともいう)等を含んでいてもよい。
【0040】
可塑剤としては、医薬品または食品組成物に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ポリエステル、エポキシ化ダイズ油、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル、カオリン、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ゴマ油、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物、D-ソルビトール、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トウモロコシデンプン由来糖アルコール液、トリアセチン、濃グリセリン、ヒマシ油、フィトステロール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリソルベート80、マクロゴール1500、マクロゴール400、マクロゴール4000、マクロゴール600、マクロゴール6000、ミリスチン酸イソプロピル、綿実油・ダイズ油混合物、モノステアリン酸グリセリン、リノール酸イソプロピルなどを挙げることができる。なお、可塑剤を用いる場合、水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合、通常15質量%以下の範囲を挙げることができる。好ましくは13質量%以下、より好ましくは11質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下の範囲で添加することができる。
【0041】
金属封鎖剤としては、エチレンジアミン四酢酸、酢酸、ホウ酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リン酸、酒石酸、またはこれらの塩、メタホスフェート、ジヒドロキシエチルグリシン、レシチン、β-シクロデキストリン、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0042】
滑沢剤としては、医薬品または食品組成物に使用できるものであれば特に制限されない。例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、カルナバロウ、でんぷん、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、マクロゴール、タルク、水素添加植物油等を挙げることができる。
【0043】
着色剤、遮光剤としては、医薬品または食品組成物に使用できるものであれば特に制限されない。着色剤としては、例えばアセンヤクタンニン末、ウコン抽出液、塩化メチルロザニリン、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、オパスプレーK-1-24904、オレンジエッセンス、褐色酸化鉄、カーボンブラック、カラメル、カルミン、カロチン液、β-カロテン、感光素201号、カンゾウエキス、金箔、クマザサエキス、黒酸化鉄、軽質無水ケイ酸、ケッケツ、酸化亜鉛、酸化チタン、三二酸化鉄、ジスアゾイエロー、食用青色1号およびそのアルミニウムレーキ、食用青色2号およびそのアルミニウムレーキ、食用黄色4号およびそのアルミニウムレーキ、食用黄色5号およびそのアルミニウムレーキ、食用緑色3号およびそのアルミニウムレーキ、食用赤色2号およびそのアルミニウムレーキ、食用赤色3号およびそのアルミニウムレーキ、食用赤色102号およびそのアルミニウムレーキ、食用赤色104号およびそのアルミニウムレーキ、食用赤色105号およびそのアルミニウムレーキ、食用赤色106号およびそのアルミニウムレーキ、水酸化ナトリウム、タルク、銅クロロフィンナトリウム、銅クロロフィル、ハダカムギ緑茶エキス末、ハダカムギ緑茶抽出エキス、フェノールレッド、フルオレセインナトリウム、d-ボルネオール、マラカイトグリーン、ミリスチン酸オクチルドデシル、メチレンブルー、薬用炭、酪酸リボフラビン、リボフラビン、緑茶末、リン酸マンガンアンモニウム、リン酸リボフラビンナトリウム、ローズ油、ウコン色素、クロロフィル、カルミン酸色素、食用赤色40号およびそのアルミニウムレーキ、水溶性アナトー、鉄クロロフィリンナトリウム、デュナリエラカロテン、トウガラシ色素、ニンジンカロテン、ノルビキシンカリウム、ノルビキシンナトリウム、パーム油カロテン、ビートレッド、ブドウ果皮色素、ブラックカーラント色素、ベニコウジ色素、ベニバナ赤色素、ベニバナ黄色素、マリーゴールド色素、リボフラビンリン酸エステルナトリウム、アカネ色素、アルカネット色素、アルミニウム、イモカロテン、エビ色素、オキアミ色素、オレンジ色素、カカオ色素、カカオ炭末色素、カキ色素、カニ色素、カロブ色素、魚鱗箔、銀、クサギ色素、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、クチナシ黄色素、クーロー色素、クロロフィン、コウリャン色素、骨炭色素、ササ色素、シアナット色素、シコン色素、シタン色素、植物炭末色素、スオウ色素、スピルリナ色素、タマネギ色素、タマリンド色素、トウモロコシ色素、トマト色素、ピーナッツ色素、ファフィア色素、ペカンナッツ色素、ベニコウジ黄色素、ベニノキ末色素、ヘマトコッカス藻色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ムラサキヤマイモ色素、油煙色素、ラック色素、ルチン、エンジュ抽出物、ソバ全草抽出物、ログウッド色素、アカキャベツ色素、アカゴメ色素、アカダイコン色素、アズキ色素、アマチャ抽出物、イカスミ色素、ウグイスカグラ色素、エルダーベリー色素、オリーブ茶、カウベリー色素、グースベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、ストロベリー色素、ダークスィートチェリー色素、チェリー色素、チンブルベリー色素、デュベリー色素、パイナップル果汁、ハクルベリー色素、ブドウ果汁色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、プラム色素、ブルーベリー色素、ベリー果汁、ボイセンベリー色素、ホワートルベリー色素、マルベリー色素、モレロチェリー色素、ラズベリー色素、レッドカーラント色素、レモン果汁、ローガンベリー色素、クロレラ末、ココア、サフラン色素、シソ色素、チコリ色素、ノリ色素、ハイビスカス色素、麦芽抽出物、パプリカ粉末、アカビートジュース、ニンジンジュースなどを挙げることができる。
【0044】
遮光剤としては、例えば酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用青色2号アルミニウムレーキ、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用緑色3号アルミニウムレーキ、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色102号アルミニウムレーキ、食用赤色104号アルミニウムレーキ、食用赤色105号アルミニウムレーキ、食用赤色106号アルミニウムレーキ、食用赤色40号アルミニウムレーキを挙げることができる。
医薬用硬質カプセルにおいては、内容物の紫外線等による劣化を防止するため、遮光剤として酸化チタンを添加する場合がある。
【0045】
調製後のカプセル皮膜には、通常、数%の残留水分が含まれるのが好ましい。通常、30℃から100℃の範囲で成型後のカプセルを乾燥処理すると、カプセルの固形分量及びそれらの組成に対応した所定の飽和残留水分値に落ち着く。当然、飽和水分値に落ち着くまでの時間は、高温で乾燥処理した場合の方が短い。残留水分は、カプセル保存時の環境湿度にも依存するが、ほぼ可逆的に変化する。すなわち、30~100℃で、十分乾燥処理したあとの飽和水分値は、さらに、一定温度、相対湿度下で数日間保管した場合、一定の値に収束する。本発明においては、室温で相対湿度43%に数日間保管した後の飽和水分値を用いる。
【0046】
少量の残留水分が含まれることは、割れにくさを維持するためにむしろ好ましい。残留水分の室温、43%相対湿度における飽和水分値として、カプセル皮膜全質量に対して、少なくとも1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、3%以上であることがさらに好ましい。他方、残留水分が多すぎると、長期間保存した場合に、内部に充填した薬物と反応を起こす場合があるので、8%以下であることが好ましく、6%以下とするのがより好ましい。
【0047】
残留飽和水分量は乾燥減量での含水率で表すことができ、その測定は、以下のようにして行うことができる。
<乾燥減量法によるカプセル皮膜中の含水率の測定方法>
【0048】
デシケーターに、炭酸カリウム飽和水溶液を入れて恒湿状態とした雰囲気中に試料(硬質カプセル、又はフィルム)を入れ密閉し、25℃で1週間調湿する。なお、炭酸カリウム飽和水溶液の存在下では、相対湿度約43%の雰囲気を作成することができる。調湿後の試料の質量(湿質量)を測定した後、次いで当該試料を105℃で2時間加熱乾燥し、再度試料の質量(乾燥質量)を測定する。乾燥前の質量(湿質量)と乾燥後の質量(乾燥質量)の差から、下式に従って、105℃で2時間加熱乾燥することによって減少する水分量の割合(含水率)を算出する。
【0049】
【0050】
2.硬質カプセル調製液
本態様の硬質カプセルを調製するためのカプセル調製液は、溶媒と上記1.で述べた皮膜成分を含む。溶媒は、水性溶媒である限り特に制限されない。溶媒として好ましくは水、エタノール、及びこれらの混合物、より好ましくは水である。
【0051】
硬質カプセル調製液に含まれる上記皮膜成分の含有量は、硬質カプセルの皮膜を冷ゲル法により成形できる限り制限されない。ゲル化剤の含有量としては、当該調製液の溶媒以外の皮膜成分合計を100質量%とした場合に、溶媒以外の皮膜成分合計中のゲル化剤の含有量は0.05~10質量%であり、好ましくは0.1~9.5質量%、より好ましくは0.2~9質量、さらに好ましくは0.3~8質量%を挙げることができる。
【0052】
ゲル化補助剤の含有量は、ゲル化剤の含有量に応じて設定してもよい。当該調製液の溶媒以外の皮膜成分合計を100質量%とした場合に、溶媒以外の皮膜成分合計中のゲル化補助剤の含有量は、少なくとも0.6質量%よりも高く、かつ10質量%以下の範囲とすることができる。ゲル化補助剤の含有量の下限値として、好ましくは0.65質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらにより好ましくは2.6質量%以上を挙げることができる。ゲル化補助剤の含有量の上限値として、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3.5質量%以下を挙げることができる。当該上限値と下限値は、適宜組み合わせることができる。
【0053】
硬質カプセル調製液に含まれる還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種の含有量は、ゲル化補助剤の析出を抑制できる限り制限されない。還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種の含有量は、当該調製液の溶媒以外の皮膜成分合計を100質量%とした場合に、溶媒以外の皮膜成分合計中、1質量%~10質量%の範囲とすることができる。前記含有量の下限値として、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上を挙げることができる。前記含有量の上限値として、好ましくは9質量%以下、より好ましくは8質量%以下を挙げることができる。
【0054】
また、還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される二種以上の糖質を用いる場合は、使用する前記糖質の総量が上記含有量の範囲となるようにする。
【0055】
例えば、カプセル調製液中の終濃度として下記の濃度を上げることができる。なお、終濃度とは最終的にできあがった溶液中の濃度、つまり実際にカプセルを調製する際に使用する溶液中の濃度を意味する。当該調製液の溶媒以外の皮膜成分の総量の全調整液中の濃度は、10~30質量%、好ましくは12~25質量%、より好ましくは14~20質量%の範囲を終濃度の範囲として挙げることができる。
【0056】
主成分であるセルロース化合物については、10~30質量%、好ましくは12~25質量%、より好ましくは14~20質量%の範囲を終濃度の範囲として挙げることができる。また、ゲル化剤は、0.005~0.5質量%、好ましくは0.01~0.45質量%、より好ましくは0.015~0.4質量%の範囲を終濃度の範囲として挙げることができる。さらに、ゲル化補助剤は、その濃度として0.06~3質量%の範囲を終濃度の範囲として挙げることができる。ゲル化補助剤の含有量の下限値は、好ましくは0.07質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、ゲル化補助剤の含有量の上限値は、好ましくは1.8質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.2質量%以下である。当該上限値と下限値は、適宜組み合わせることができる。
【0057】
還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種は、0.03~2.5質量%を終濃度の範囲とすることができる。当該含有量の下限値として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上を挙げることができる。当該含有量の上限値として、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下を挙げることができる。
滑沢剤、着色剤、遮光剤、金属封鎖剤、香料等を含む場合、その含有量は、それぞれ0.5質量%以下の範囲で適宜設定することができる。
【0058】
3.硬質カプセルの調製方法
カプセル調製液(浸漬液)の調製方法は、特に制限されない。例えば約70~90℃程度に加熱した精製水に、ゲル化剤やゲル化補助剤、還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールを分散、溶解を溶解した後、水溶性セルロース化合物分散させて、これを所望の浸漬液の温度(通常35~60℃、より好ましくは40~60℃)まで冷却して水溶性セルロース化合物を溶解させて均一なカプセル調製液(浸漬液)を調製する方法;ならびに水溶性セルロース化合物を約70~90℃程度の熱水に分散し、これをいったん冷却して水溶性セルロース化合物を溶解させた後に、再び加温して30~60℃程度に調製して、ゲル化剤及びゲル化補助剤をさらに添加し溶解し、均一なカプセル調製液(浸漬液)を調製して、所望の浸漬液の温度に調整する方法、などを制限なく使用することができる。カプセル調製液の粘度は、特に制限されない。好ましくは、カプセル調製液の粘度は、カプセル成型用ピンの浸漬時に採用される温度(浸漬液の温度)条件下(30~80℃、好ましくは40~60℃)で、カプセル調製液の粘度が100~20000mPa・s、好ましくは300~10000mPa・sとなるように調製することができる。通常、カプセル調製液の溶媒含有量として60~90質量%、好ましくは70~85質量%を挙げることができる。
【0059】
本発明で規定する粘度は、B型回転粘度計で、粘度500mPa・s未満の場合はローター番号2、粘度500mPa・s以上2000mPa・s未満の場合はローター番号3、粘度2000mPa・s以上の場合はローター番号4を用いて、所定温度で、回転数60rpm、測定時間1分の条件で測定した場合の粘度を意味する。
カプセル調製液に含まれる各成分の濃度は、後述する。
【0060】
硬質カプセルの調製(成型)方法は、本発明に係るカプセル調製液を使用してカプセルを調製する工程を含む限り、特に制限されない。硬質カプセルは、一般には、カプセル皮膜成分を溶解した水溶液中に、カプセルの鋳型となるモールドピンを浸漬させ、引き上げた時に付着してくる皮膜を硬化、乾燥させることで所望のカプセル形状と厚みを得る(ディッピング法)。具体的には、硬質カプセルの調製方法は、上記の方法によりカプセル調製液を調製するか、カプセル調製液を購入する等によって準備する工程と、かかるカプセル調製液にカプセル成型用ピンを浸漬した後、これを引き上げ、カプセル成型用ピンに付着した溶液をゲル化させ、その後、ゲル化した皮膜を20~80℃で乾燥する調製工程によって製造される。
より具体的には、本発明で用いる硬質カプセルは下記の成型工程を経て製造することができる。
【0061】
(1)セルロース化合物、ゲル化剤、ゲル化補助剤、並びに還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種を含有するカプセル調製液(浸漬液)に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程(浸漬工程)、
(2)カプセル調製液(浸漬液)からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製液をゲル化する工程(ゲル化工程)、
(3)カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセルフィルム(ゲル化皮膜)を乾燥する工程(乾燥工程)、
(4)乾燥したカプセルフィルム(皮膜)をカプセル成型用ピンから脱離する工程(脱離工程)。
なお、必要に応じて上記(4)の工程後に下記の加熱工程を行なってもよい。
(5)上記のゲル化工程(2)後の、乾燥工程(3)の前後若しくは同時に、または脱離工程(4)後に、ゲル化カプセルフィルム(ゲル化皮膜)を30~150℃で加熱処理する工程(加熱工程)。
【0062】
なお、カプセル調製液(浸漬液)としてカッパ―カラギーナンをゲル化剤として配合した溶液を用いる場合は、当該ゲル化剤が概ね40℃以下の温度でゲル化することを利用して、カプセル製造機周辺の温度を通常35℃以下、好ましくは30℃以下、好ましくは室温下に設定して、上記ゲル化工程(2)をカプセル成型用ピンの外表面に付着したカプセル調製液を放冷することによって行うことができる(冷ゲル法)。具体的には、浸漬工程(1)において、35~60℃、好ましくは40~60℃の一定温度に調整したカプセル調製液(浸漬液)に、その液温に応じて10~30℃、好ましくは15~25℃に調整したカプセル成型用ピンを浸漬し、次いでゲル化工程(2)において、カプセル調製液(浸漬液)からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製液をゲル化する。
【0063】
乾燥工程(3)は室温で行うことができる。通常、室温の空気を送風することによって行なわれる。脱離工程(4)は、カプセル成型用ピン表面に形成された乾燥カプセルフィルムをカプセル成型用ピンから抜き出すことによって行われる。
【0064】
任意工程である加熱工程(5)は、ゲル化工程(2)後、すなわちカプセル調製液がゲル化(固化)した後に行なうことができる。加熱処理の時期は、ゲル化工程(2)後であればどの段階でもよく、乾燥工程(3)の前若しくは後、または加熱と乾燥を同時に行ってもよい。さらに脱離工程(4)後であってもよい。好ましくはゲル化工程(2)後、ゲル化カプセルフィルムを室温下での乾燥工程に供し、乾燥後または半乾きの段階で、加熱処理を行う。加熱処理は、通常20~150℃の空気を送風することによって行うことができる。加熱温度は20~150℃の範囲であれば特に制限されないが、好ましくは25~80℃、より好ましくは30~50℃の範囲である。
【0065】
斯くして調製されるカプセルフィルムは、所定の長さに切断調整された後、ボディ部とキャップ部を一対に嵌合した状態または嵌合しない状態で、硬質カプセルとして提供することができる。
【0066】
硬質カプセルの皮膜厚みは、通常、50~200μmの範囲とされる。特に、カプセルの側壁部分の厚みは、現在市販されているカプセルでは、70~150μm、より好ましくは、80~120μmとするのが通常である。硬質カプセルのサイズとしては、00号、0号、1号、2号、3号、4号、5号等があるが、本発明ではいずれのサイズの硬質カプセルも使用することができる。
【0067】
また、硬質カプセルの調製方法の調製方法は、調製後の硬質カプセルにおいてゲル化補助剤の析出を抑制するための方法でもある。
【0068】
4.硬質カプセルへの内容物の充填、及び用途
硬質カプセルに内容物を充填する方法は、特に制限されない。
内容物の硬質カプセル内への充填は、特開2007-144014号公報、特開2000-226097号公報等に記載の公知のカプセル充填機、例えば全自動カプセル充填機(型式名:LIQFILsuper80/150、クオリカプス社製)、カプセル充填・シール機(型式名:LIQFILsuperFS、クオリカプス社製)等を用いて実施することができる。
【0069】
上記充填方法において、硬カプセルの仮結合、本結合は、米国特許第3508678号明細書、米国特許第3823843号明細書、米国特許第4040536号明細書、米国特許第4822618号明細書、米国特許第5769267号明細書等に示すようなロック機構で担保される。上記のようなロック機構を安定的に維持するためにも、硬カプセルの硬度は重要である。
【0070】
上記のキャップとボディのすりあわせによるロック機構に加えて、さらに確実な厳封を行って、悪意による開封と異物混入を防止するために、及び液体充填物の漏えいを確実に防ぐために、特開2005-187412号公報、もしくは特開2009-504630号公報に記載のバンドシールによって嵌合部を封緘してもよい。
本発明の硬質カプセルの用途は、特に制限されない。好ましくは、経口製剤、及び吸引製剤等を挙げることができる。
【0071】
経口製剤は、胃もしくは腸において速やかに溶解することが望ましい。腸でカプセル皮膜が溶解され薬剤を腸で放出するために、カプセル皮膜表面に、腸溶性基材のコーティングを付加した腸溶性カプセルとすることもできる。カプセル皮膜そのものに、腸溶性基材を全部または一部用いて腸溶性カプセルとすることもできる。腸溶性カプセルとは胃で溶解されず腸で溶解される性質を有するものである限り特に制限されないが、例えばpH1.2での希塩酸溶液中(日本薬局方1液)中で2時間以上ほとんど溶解せず、pH6.8の緩衝溶液(日本薬局方2液)中で溶解するものをいう。
【0072】
また硬質カプセルから薬剤を徐放させることもできる。徐々に薬剤が溶出させる場合は、カプセル皮膜表面に徐放性の皮膜をコーティングしてもよい。
【0073】
吸引製剤は、硬質カプセルに一回分の投与量の薬剤を封止しておき、米国特許4069819、米国特許4210140、米国特許7669596、米国特許2010-0300440号公報等に開示されたようなデバイスに装着する。小さなピンでせん孔するもしくは、カプセルを破断することで、内部の薬剤を適切な流量で吸引することができる。
【0074】
硬質カプセル剤の内容物は、特に制限されず、ヒトまたは動物の医薬品、医薬部外品、化粧料、および食品を、制限なく挙げることができる。
内容物の形状も特に問わない。例えば、液状物、ゲル状物、粉末状、顆粒状、錠剤状、ペレット状、またこれらの混合形状(ハイブリッド状)であってもよい。
【0075】
硬質カプセル剤の内容物としては、医薬品の場合は、例えば滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、脳代謝改善剤、脳循環改剤、抗てんかん剤、交感神経興奮剤、胃腸薬、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、鎮吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張剤、末梢血管拡張薬、抗高脂血症用剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病治療薬、骨粗鬆症用剤、抗リウマチ薬、骨格筋弛緩薬、鎮痙剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療薬、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤などから選ばれる1種または2種以上の薬物成分を挙げることができる。なお、これらの薬効成分は、特に制限されず公知のものを広く挙げることができるが、具体的には、WO2006/070578号パンプレットの段落[0055]~[0060]に記載されている各成分を例示として挙げることができる。
【0076】
また、食品の場合は、例えばドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、α-リポ酸、ローヤルゼリー、イソフラボン、アガリクス、アセロラ、アロエ、アロエベラ、ウコン、エルカルニチン、オリゴ糖、カカオ、カテキン、カプサイシン、カモミール、寒天、トコフェロール、リノレン酸、キシリトール、キトサン、GABA、クエン酸、クロレラ、グルコサミン、高麗人参、コエンザイムQ10、黒糖、コラーゲン、コンドロイチン、サルノコシカケ、スクワレン、ステビア、セラミド、タウリン、サポニン、レシチン、デキストリン、どくだみ、ナイアシン、納豆菌、にがり、乳酸菌、ノコギリヤシ、ハチミツ、はとむぎ、梅肉エキス、パントテン酸、ヒアルロン酸、ビタミンA、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ケルセチン、プロテイン、プロポリス、モロヘイヤ、葉酸、リコピン、リノール酸、ルチン、霊芝などの機能性成分などを挙げることができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0077】
5.ゲル化補助剤の析出の評価
硬質カプセルの皮膜におけるゲル化補助剤の析出の評価は、例えば上記カプセル調製液を調製後、キャストフィルムアプリケーターを使用してフィルムを作製し、そのフィルムにおけるゲル化補助剤の析出を評価することによって行うことができる。フィルムの厚さが100μm±5μmとなるようフィルムを作製し、作製されたフィルムを、10mm×50mmの大きさにカットした後、25℃、相対湿度60%(硝酸アンモニウム飽和水溶液の存在下)の条件下に、1週間おき、その後ゲル化補助剤の析出を目視による白濁の有無で評価することができる。
ゲル化補助剤の析出は、目視で白濁が認められなかった場合、「析出なし」と評価することができる。
【0078】
6.硬度の評価
硬質カプセルの硬度の評価は、例えば上記カプセル調製液を作成後、キャストフィルムアプリケーターを使用してフィルムを作製し、そのフィルムの硬度を評価することによって行うことができる。作製されたフィルムを、フィルムの厚さは100μm±5μmとし、10mm×50mmの大きさにカットした後、25℃、相対湿度43%(炭酸カリウム飽和水溶液)の条件の調湿下に例えば一週間おき、その後硬度を圧縮試験にて評価することができる。
【0079】
硬度の評価は、オートグラフ(例えば島津製作所AGS-J)に上記調湿したフィルムをアーチ状に湾曲させてホルダーにセットし(
図1aに示すように、セットされたフィルムの幅は2cmであり、セットされたフィルムの高さは2cmである)、金属圧子でフィルム頂部を5~8mm圧迫し(
図2b)、フィルムの圧縮試験力のピーク(
図2c)を求めた。その値を標準品(糖質以外の成分は試験品と同一成分であり、糖質の含有量分と同じ量の基剤を増量して作製したフィルム)の圧縮試験力の値と比較することにより行う。圧縮速度は、例えば50mm/minであり、金属製圧子の直径は例えば9mmである(
図2b)。
【0080】
硬度は、例えば下記糖質を含まない標準品の圧縮試験力を100とした場合、90を「硬度変化無し」と評価することができる。さらに、90未満は、「脆弱化」と評価することができる。
【実施例】
【0081】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明は、実施例に限定して解釈されるものではない。
【0082】
1.カプセル皮膜の調製
硬質カプセル皮膜におけるゲル化補助剤の析出、及び硬質カプセルの硬度を評価する場合、カプセル皮膜の厚み、特に金属圧子を押し込むカプセル胴部の皮膜厚みによって測定値が変化する。特に硬度の評価は、被験皮膜の厚みをそろえて比較することが重要である。このため、硬質カプセルの各成分組成に依存するゲル化補助剤の析出、及び硬度の評価は、ディッピング法によって成形された硬質カプセルのかわりに、硬質カプセルの各成分組成と同一成分組成であるフィルムを硬質カプセル皮膜の成分組成毎にキャスト法により作成し、当該フィルムを用いて行った。以下では、ディッピング法によって成形された硬質カプセルのかわりに、硬質カプセルの各成分組成と同一成分組成であるフィルムを作成して評価を行っているが、当該フィルムは、厚みの均一性に優れ評価の再現性に優れており、かつカプセル皮膜としてのゲル化補助剤の析出抑制効果、及び硬度をよく反映するものである。
【0083】
1-1.カプセル調製液の調製
以下の実施例においては、表2に示すように基剤となるHPMCとして、置換度2910のうちの2種、又は3種類の分子量を混合したものを用いた。なお、ゲル化補助剤の析出性、及びカプセルフィルムの硬度はヒプロメロース粘度値には依存しないことを別途確認している。実験に用いた置換度2910のヒプロメロースは、Samsung(現Lotte)精密化学社製、AnyCoat-Cシリーズの粘度グレード4及び6であるAW4及びAW6、信越化学社製、TC-5シリーズの粘度グレード6であるTC-5Rを適宜用いた。同等の粘度グレード値(粘度値)においては、ヒプロメロースの製造メーカーの違いによるゲル化補助剤の析出性、及び硬度への影響は見られなかった。
【0084】
カプセル調製液中の溶媒を除く硬質カプセルの皮膜成分濃度は、10~25質量%の範囲で、所望の膜厚のキャストフィルムが得られるように適宜調整した。水分を除くカプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合の、各成分の含有量は、表2及び表3に示す通りである。
【0085】
純水にカッパーカラギーナン、及びゲル化補助剤として塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを投入し攪拌分散させ、80℃まで昇温後溶解した事を確認した後、還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールよりなる群から選択される少なくとも一種を溶解させた。その後液温を80℃に保持したままでHPMCを投入し分散させ30分静置し、真空脱泡で気泡を除去した。
続いてスリーワンモーターで攪拌しながら50℃~60℃まで降温させスリーワンモーターで1時間攪拌しゼリー状のカプセル調製液を調製した。
【0086】
【0087】
【0088】
1-2.フィルムの形成方法
キャストフィルムは、室温に保持したガラス面上またはペットフィルム上に金属性のアプリケーターを設置し、50℃~60℃のカプセル調製液を流しこみ一定速度で移動させ100μmの均一なフィルムを作成した。均一な100μmの膜厚を得るため、ギャップが0.4 mm~1.5 mmのアプリケーターを適宜使い分けた。その後、室温~30℃で10時間程度の乾燥を行った。
【0089】
2.ゲル化補助剤の析出の評価
作製されたフィルムを、10mm×50mmの大きさにカットした後、25℃、相対湿度60%(硝酸アンモニウム飽和水溶液の存在下)の条件下に、1週間おき、その後ゲル化補助剤の析出を目視による白濁の有無で評価した。
ゲル化補助剤の析出は、目視で白濁が認められなかった場合、「析出なし」と評価することができる。
【0090】
3.硬度の評価
調製したフィルムは、10 mm × 50 mmの短冊状にカットした後、25℃、相対湿度43%(炭酸カリウム飽和水溶液)の条件の調湿下に一週間おき、調湿した後硬度を圧縮試験にて評価した。
【0091】
硬度の評価は、オートグラフ(島津製作所AGS-J)に上記調湿したフィルムをアーチ状に湾曲させてホルダーにセットし(
図1aに示すように、セットされたフィルムの幅は2 cmであり、セットされたフィルムの高さは2 cmである)、金属圧子でフィルムの頂部を5~8 mm圧迫し(
図2b)、フィルムの圧縮試験力のピーク(
図2c)を求めた。圧縮速度は、例えば50 mm/minであり、金属製圧子の直径は9 mmである(
図2b)。これにより、疑似的に硬カプセル胴部への圧縮試験力印加状態を再現した。
【0092】
測定した各フィルムの圧縮応力を標準品(硬度改善剤以外の成分は試験品と同一成分であり、硬度改善剤の含有量分と同じ量の基剤を増量して作製したフィルム)の圧縮試験力の値と比較することにより硬度を評価した。標準品の圧縮試験力を100とした場合の相対圧縮応力を評価した。
【0093】
4.結果
表2及び表3に作成したフィルムの組成と、ゲル化補助剤の析出抑制効果及び硬度の評価結果を示した。表2及び表3の「○」は、フィルム調製後1週間経過後もゲル化補助剤の析出が認められなかったことを示す。表2の参考例1は、ゲル化補助剤が塩化カリウム従来の硬質カプセル皮膜と同程度の含有量のフィルムである。参考例1ではゲル化補助剤の析出は認められないことから、従来のゲル化補助剤の含有量であれば、カプセル調製後にゲル化補助剤が析出するという課題がないことが示された。また、表2の参考例2に示すように、ゲル化補助剤である塩化カリウムの含有量を0.8質量%に増加させると、塩化カリウムが析出した。この傾向は、ゲル化補助剤として塩化ナトリウムを0.8質量%で添加した表3の参考例3であっても同様であり、フィルム調製後5日目で塩化ナトリウムの析出が認められた。
【0094】
一方、ゲル化補助剤の含有量を増加させた条件において、種々の単糖類、二糖類、二糖アルコールのゲル化補助剤の析出抑制効果を確認したところ、還元性のない二糖類であるトレハロース、及びスクロース、並びに還元性のない二糖アルコールであるマルチトール、ラクチトール、及びイソマルトを添加した場合のみ、1週間後も塩化カリウムの析出は認められなかった。また他の糖質では、還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールと同量となるようにフィルムに添加しても、ゲル化補助剤の析出を抑制することはできなかった。表2の比較例3のラクトースでは、カプセルの透明性が失われた。
【0095】
同様に、ゲル化補助剤として塩化ナトリウムを用いた場合でも、トレハロースを添加することによって、塩化ナトリウムの析出が抑制された。このことから、ゲル化補助剤の析出を抑制するためには、還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールが有効であると考えられた。
【0096】
さらに、還元性のない二糖類、又は還元性のない二糖アルコールを添加した場合には、フィルムの硬度の低下もほとんど認められなかったが、単糖の糖アルコールであるキシリトール又はエリスリトールの添加では、ややフィルムの硬度の低下がみとめられた。このことから、硬質カプセルの適切な硬度を維持しつつ、ゲル化補助剤の析出を抑制する点においても、還元性のない二糖類及び還元性のない二糖アルコールが有効であると考えられた。