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特許7039487中性子反射冷却材を有する溶融燃料原子炉
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】中性子反射冷却材を有する溶融燃料原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 1/02 20060101AFI20220314BHJP
   G21C 15/00 20060101ALI20220314BHJP
   G21C 15/12 20060101ALI20220314BHJP
   G21C 1/22 20060101ALI20220314BHJP
   G21C 3/42 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
G21C1/02 230
G21C15/00 F
G21C15/12 F
G21C1/22
G21C3/42
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2018557324
(86)(22)【出願日】2017-05-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 US2017030666
(87)【国際公開番号】W WO2017192607
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】62/330,726
(32)【優先日】2016-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アボット,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】シスネロス,アンセルモ,ティー.,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】フラワーズ,ダン
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン,チャールズ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ハブスタッド,マーク,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,クリストファー,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ケッレヘール,ブライアン,シー.
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ラトコフスキー,ジェフリー,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】マックフィルター,ジョン,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】チータム,ジェシー,アール.,ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】チェルヴィンスキー,ケン
(72)【発明者】
【氏名】エル-ダシャー,バッセム,エス.
(72)【発明者】
【氏名】ケルリン,ウィリアム,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ペトロスキー,ロバート,シー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター,ジョシュア,シー.
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-534413(JP,A)
【文献】特表2015-510588(JP,A)
【文献】米国特許第02874106(US,A)
【文献】米国特許第03136700(US,A)
【文献】米国特許第03383285(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0279658(US,A1)
【文献】特表2014-510284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 1/02
G21C 15/00
G21C 15/12
G21C 1/22
G21C 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部としての容器頭部を有する格納容器と、
上記格納容器の中に囲まれた原子炉心であって、上部領域と下部領域とを有する原子炉心と、
上記格納容器の中に囲まれた熱交換器であって、上記原子炉心の溶融燃料塩から液体中性子反射冷却材へ熱を伝達するように構成されている熱交換器とを含み、
冷却された液体中性子反射冷却材を受領する、上記熱交換器に流体接続された上記容器頭部の液体反射体冷却材注入口と、
加熱された液体中性子反射冷却材を排出する、上記熱交換器に流体接続された上記容器頭部の液体反射体冷却材排出口と、
を含み、
上記容器頭部の上記液体反射体冷却材注入口と上記熱交換器との間の上記格納容器の第1部位の内側にあって上記第1部位と接触する注入口冷却材運搬経路を含み、上記注入口冷却材運搬経路は、冷却された液体中性子反射冷却材を上記液体反射体冷却材注入口から受領し、それによって、上記格納容器の上記第1部位を冷却することを特徴とする溶融燃料原子炉。
【請求項2】
上記液体中性子反射冷却材は、鉛、鉛合金、鉛-ビスマス共融物、酸化鉛、鉄-ウラン合金、鉄-ウラン共融物、グラファイト、炭化タングステン、炭化チタン、劣化ウラン合金、タンタルタングステンおよびタングステン合金から選択されることを特徴とする請求項1に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項3】
上記液体中性子反射冷却材は、0.001MeVの中性子に対して、0.1バーン以上の弾性横断面を示すことを特徴とする請求項1に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項4】
上記液体中性子反射冷却材は、原子炉動作温度で10グラム/cmより大きい密度を有することを特徴とする請求項1に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項5】
上記熱交換器は、骨組み-管熱交換器であることを特徴とする請求項1に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項6】
上記溶融燃料塩は、上記熱交換器の骨組みを通り、上記液体中性子反射冷却材は、上記熱交換器の管を通ることを特徴とする請求項5に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項7】
上記溶融燃料塩は、上記熱交換器の管を通り、上記液体中性子反射冷却材は、上記熱交換器の骨組みを通ることを特徴とする請求項5に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項8】
上記熱交換器は、上部経路によって、上記原子炉心の上部領域に流体接続され、下部経路によって、上記原子炉心の下部領域に流体接続され、上記原子炉心、熱交換器、上部経路および下部経路が、燃料ループを形成していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項9】
上記格納容器の上記第1部位は、少なくとも、上記格納容器の側壁のうちのいくらかを含むことを特徴とする請求項1に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項10】
上記格納容器の上記第1部位は、少なくとも、上記格納容器の底壁のうちのいくらかを含むことを特徴とする請求項1に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項11】
上記格納容器の上記第1部位は、少なくとも、上記格納容器の側壁のうちのいくらかおよび上記格納容器の底壁のうちのいくらかを含むことを特徴とする請求項1に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項12】
上記溶融燃料塩は、以下の核分裂性塩:UF、UF、UF、ThCl、UBr、UBr、PuCl、UCl、UCl、UClFまたはUClのうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の溶融燃料原
子炉。
【請求項13】
上記溶融燃料塩は、以下の非核分裂性塩:NaCl、MgCl、CaCl、BaC
、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClまたはNdClのうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項14】
頭部としての容器頭部を有する格納容器と、
上記格納容器の中に囲まれた原子炉心であって、上部領域と下部領域とを有する原子炉心と、
上記格納容器の中に囲まれた第1熱交換器であって、上記原子炉心の溶融燃料塩から一次冷却材へ熱を伝達するように構成されている第1熱交換器と、
少なくともいくらかの中性子反射液体を含む中性子反射体と、
上記中性子反射体の上記少なくともいくらかの中性子反射液体を循環させる循環システムとを含み、
第2熱交換器と、
冷却された中性子反射液体を受領する、上記第2熱交換器に流体接続された上記容器頭部の液体反射体冷却材注入口と、
加熱された中性子反射液体を排出する、上記第2熱交換器に流体接続された上記容器頭部の液体反射体冷却材排出口と、
を含み、
上記液体反射体冷却材注入口と上記液体反射体冷却材排出口との間の上記格納容器の第1部位の内側にあって上記第1部位と接触する注入口反射体運搬経路を含み、上記注入口反射体運搬経路は、冷却された中性子反射液体を上記液体反射体冷却材注入口から受領し、それによって、上記格納容器の上記第1部位を冷却することを特徴とする溶融燃料原子炉。
【請求項15】
上記中性子反射液体は、鉛、鉛合金、鉛-ビスマス共融物、酸化鉛、鉄-ウラン合金、鉄-ウラン共融物、グラファイト、炭化タングステン、炭化チタン、劣化ウラン合金、タンタルタングステンおよびタングステン合金から選択されることを特徴とする請求項14に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項16】
上記中性子反射液体は、0.001MeVの中性子に対して、0.1バーン以上の弾性断面を示すことを特徴とする請求項14に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項17】
上記中性子反射液体は、原子炉動作温度で10グラム/cmより大きい密度を有することを特徴とする請求項14に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項18】
加熱された中性子反射液体から熱を除去し、冷却された中性子反射液体を排出する、第2熱交換器を含むことを特徴とする請求項14に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項19】
上記第2熱交換器は、原子炉容器の外側にあることを特徴とする請求項18に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項20】
上記格納容器の上記第1部位は、少なくとも、上記格納容器の側壁のうちのいくらかを含むことを特徴とする請求項14に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項21】
上記格納容器の上記第1部位は、少なくとも、上記格納容器の底壁のうちのいくらかを含むことを特徴とする請求項14に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項22】
上記格納容器の上記第1部位は、少なくとも、上記格納容器の側壁のうちのいくらかおよび上記格納容器の底壁のうちのいくらかを含むことを特徴とする請求項14に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項23】
上記溶融燃料塩は、以下の核分裂性塩:UF、UF、UF、ThCl、UBr、UBr、PuCl、UCl、UCl、UClFまたはUClのうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項14ないし19のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
【請求項24】
上記溶融燃料塩は、以下の非核分裂性塩:NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClまたはNdClのうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項14ないし19のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、PCT国際特許出願として2017年5月2日に出願されたものであり、発明の名称を「改良された溶融燃料原子炉構成」として2016年5月2日に出願された米国仮出願第62/330,726号の利益に対する優先権を主張し、これは、参照によってその全体がここに組み込まれる。
【0002】
〔はじめに〕
「増殖燃焼」高速原子炉と称される高速原子炉の特定の分類は、それが消費するよりも多い核分裂性核燃料を生成することができる原子炉を含む。すなわち、中性子経済は、それが核分裂反応で燃焼するよりも、燃料親原子炉燃料(例えばウラン-238)から、より多くの核分裂性核燃料(例えばプルトニウム-239)を増殖するだけ十分高い。特に、増殖燃焼原子炉は、燃料親物質の100%のエネルギー抽出率に近づきうる。増殖工程を開始するために、増殖燃焼原子炉は、まず、濃縮されたウランなどの、ある量の燃料親燃料を与えられる必要がある。その後、増殖燃焼原子炉は、燃料補給なしで、また、従来の原子炉の付帯する増殖リスクなしで、数十年間にわたって、エネルギー生産を維持することができうる。
【0003】
増殖燃焼原子炉の1つのタイプは、溶融塩原子炉(MSR)である。溶融塩原子炉は、高速スペクトル核分裂原子炉の一種であり、そこでは、燃料は、ウランまたは他の核分裂可能な元素などの、混合されたまたは溶解された核燃料を含んでいる溶融塩流体である。MSRシステムでは、燃料塩によって提供される、減速されない高速中性子スペクトルが、ウラン-プルトニウム燃料サイクルを用いる良好な増殖性能を実現する。燃料親燃料から核分裂性燃料の増殖を決定づける高速スペクトル中性子とは対照的に、熱中性子は、核分裂性燃料の核分裂反応を決定づける。核種を有する熱中性子の衝突から得られる核分裂反応は、核分裂反応における核分裂性燃料を消費することができ、高速スペクトル中性子、ガンマ線、大量の熱エネルギーを放出し、より小さい原子核元素などの核分裂性生成物を放出する。核燃料を消費することは、燃焼(burnup)または燃料利用と称される。より高い燃焼は、典型的には、核分裂反応が終わった後に残る核廃棄物の量を減少させる。高速中性子スペクトルはまた、オンラインでの再処理や付帯する増殖リスクなしで、例外的な性能を提供するのに害となる核分裂生成物を緩和する。それゆえ、増殖燃焼MSRの動作パラメータ(例えば、小型の設計、低圧力、高温、高い出力密度)は、ゼロ炭素エネルギーへの、コスト的に効果的な、地球規模に拡張性のある解決策のための可能性を提供する。
【0004】
〔中性子反射冷却材を有する溶融燃料原子炉〕
MSRシステムの動作中、溶融燃料塩の交換は、循環する溶融燃料塩の組成を変化させることによって、反応性についてのいくつかの制御と、所望の動作限界の中で原子炉心において増殖することを可能にする。いくつかの実施形態では、原子炉心は、中性子反射体物質を含んでいる中性子反射体(反射材)(reflector)集合体に全体的または部分的に囲まれている。開示された動的中性子反射体集合体は、中性子反射体集合体の反応性特性を調整することによって、反応性および増殖速度についての付加的な動的および/または増加的な制御を可能にし、原子炉心における中性子スペクトルを管理する。このような制御は、原子炉心における反応性と増殖速度とを管理する。動的中性子反射体集合体での物質の組成は、中性子反射体、減速材、吸収材などの、中性子スペクトルに影響を与える物質を選択的に挿入するまたは除去することによって変化させられてもよく、動的中性子反射体集合体の、中性子スペクトルに影響を与える特性(「反射特性」)を管理する。あるいは、これらの反射特性は、動的中性子反射体集合体の物質の温度、密度または体積を変化させることによって調整されてもよい。いくつかの実施形態では、動的中性子反射体集合体は、燃料と熱接触する、流れる中性子反射体物質(流動中性子反射体物質)(例えば溶融燃料塩)を含んでもよい。流動中性子反射体物質は、限定されないが、鉛-ビスマスのような流体、懸濁粒子のスラリー、粉末などの固体、および/または、炭素ペブルなどのペブル、を含む任意の適切な形であってよい。動的中性子反射体集合体は、集合体の1つ以上の中性子吸収物質を通して選択的に循環または流れてもよく、それによって、そこから、反射体物質を選択的に追加または除去することができる。他の実施形態では、流動中性子反射体物質は、一次または二次の冷却材回路を介して、熱交換器において、溶融燃料塩から熱を抽出することができる。
【0005】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、溶融燃料塩高速原子炉システムでの例示的な中性子反射体集合体の概略図である。
【0006】
図2は、他の中性子反射体集合体構成に対する1つ以上の例示的な動的中性子反射体集合体の高速スペクトル溶融塩原子炉における反射率と時間のプロットである。
【0007】
図3は、溶融核燃料塩高速原子炉を囲む例示的なセグメント化された中性子反射体集合体の概略図である。
【0008】
図4は、オーバーフロータンクを備えた中性子反射体集合体を有する例示的な溶融塩燃料原子炉を示す。
【0009】
図5は、複数のスリーブを有する例示的な中性子反射体集合体のトップダウンの概略図である。
【0010】
図6は、中性子修正部材を含む複数のスリーブを有する例示的な中性子反射体集合体のトップダウンの概略図である。
【0011】
図7は、熱交換器と熱連通する中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
【0012】
図8は、中性子修正部材を含む熱交換器と熱連通する中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
【0013】
図9は、中性子吸収部材および体積置換部材を含む熱交換器と熱連通する中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
【0014】
図10は、管および骨組みの熱交換器を通って溶融核燃料塩と熱連通する中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心の概略の側面図である。
【0015】
図11は、管および骨組みの熱交換器を通って溶融核燃料塩と熱連通する中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
【0016】
図12は、溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの例示的な方法のフローチャートである。
【0017】
図13は、溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの他の例示的な方法のフローチャートである。
【0018】
図14は、溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの他の例示的な方法のフローチャートである。
【0019】
図15は、溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの他の例示的な方法のフローチャートである。
【0020】
図16は、溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの他の例示的な方法のフローチャートである。
【0021】
図17は、複数のスリーブおよび静的中性子反射体副集合体を有する例示的な中性子反射体集合体のトップダウンの概略図である。
【0022】
図18は、内側環状経路と外側環状経路とを含んでさらに体積置換部材を含む中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
【0023】
図19は、内側環状経路と外側環状経路とを含む中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
【0024】
図20は、内側環状経路と外側環状経路とを含む中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図であり、内側環状経路は、ある体積の溶融燃料塩を含んでいる。
【0025】
図21は、半径値が変化する管を含んでいる環状経路を含む中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
【0026】
図22は、循環する反射体物質を利用する原子炉2200の実施形態の横断面図である。
【0027】
図23は、図22の原子炉の半分の、同じ横断面図を用いる骨組み側燃料/管側一次冷却材熱交換器構成を有する原子炉の実施形態を示す。
【0028】
図24は、液体中性子反射体で冷却された原子炉の実施形態を示す。
【0029】
〔発明を実施するための形態〕
図1は、燃料供給部102と燃料排出口104とを有するオープン増殖燃焼燃料サイクルを実現する例示的な溶融塩原子炉(MSR)システム100の概略図である。燃料排出口104は、原子炉容器107から、一次冷却材ループを通して、外部の熱交換器(図示せず)へ、溶融燃料塩108を流し、この外部の熱交換器は、(例えば、蒸気タービンでの使用のために)熱を抽出し、燃料供給部102を介して原子炉容器107に返却するために溶融燃料塩108を冷却する。溶融燃料塩108は、溶融燃料塩入力部111を通って原子炉容器107の中へ流れ、溶融燃料塩出力部113を通って原子炉容器107の外へ流れる。
【0030】
原子炉心部106は、原子炉容器107によって囲まれており、これは、溶融塩原子炉での使用に適した任意の物質から形成しうる。例えば、原子炉心部106のバルク部は、1つ以上のモリブデン合金、1つ以上のジルコニウム合金(例えばジルカロイ)、1つ以上のニオブ合金、1つ以上のニッケル合金(例えばHastelloy N)、または高温鋼および他の類似の物質から形成しうる。原子炉心部106の内側表面109は、腐食および/または放射線損傷への抵抗性を提供するために、コーティング、メッキ、または1つ以上の追加の物質で裏打ちされてもよい。
【0031】
原子炉心部106は、溶融燃料塩108の流れを維持するように設計され、ここでは、このような流れは、図1のように先端が中空の細い矢印で示される。1つの実施形態では、原子炉心部106を囲む原子炉容器107は、垂直すなわちZ軸に沿って切ったときに円形の横断面を有してよく(すなわち、XY平面で円形の横断面を生む)、一方、他の横断面形状は、限定されないが、楕円形の横断面および多角形の横断面を含めて検討される。
【0032】
原子炉の開始動作の一部として、MSRシステム100は、ウラン-233、ウラン-235またはプルトニウム-239のような初期溶融燃料の濃縮燃料装填を装荷される。1つの実施形態では、ウラン-235が、キャリア塩(例えばNaCl、NaFなど)と共に、PuCl、UCl、UClおよび/またはUFの形で、開始燃料として用いられる。1つの例では、初期溶融燃料混合物は濃縮ウランを12.5w%含むが、他の組成を採用してもよい。初期溶融燃料混合物は、MSRシステム100の原子炉心部106を通って循環し、濃縮ウランの熱中性子の臨界または反応性によって点火される。動作の間、原子炉心部106における反応性を管理するために、1つのアプローチでは、初期溶融燃料は、組成を変化させるときに、増殖燃焼工程と溶融燃料塩の抽出および補充とによって増加してもよい。
【0033】
中性子反射体集合体110は、原子炉心部106の外側またはその近くに配置されており、それによって、中性子反射体集合体110は、原子炉心部106の中の核分裂領域の少なくとも一部分を囲む。中性子反射体集合体110は、単一の連続ピースで設計されてもよいし、または、以下に詳細に述べるように、多くのセグメント化された反射体から成ってもよい。中性子反射体集合体110は、例えば、ジルコニウム、鋼、鉄、グラファイト、ベリリウム、炭化タングステン、鉛、鉛-ビスマスなどのうちの1つ以上などの、中性子反射、中性子減速および/または中性子吸収に適した任意の物質から形成されても、および/または、それを含んでもよい。
【0034】
数ある特性のなかで、中性子反射体集合体110は、動的な増加的に調整可能な反射特性に応じて、原子炉心部106から発出して溶融燃料塩108へ戻る中性子を反射するのに適している。動的な増加的に調整可能な反射特性の1つのタイプは、中性子反射であり、それらが反射体原子核と衝突するときの中性子の弾性散乱である。衝突する中性子は、それらが達するのと実質的に同じエネルギーだが異なる方向に散乱する。このようにして、高い割合の高速スペクトル中性子が、高速スペクトル中性子として原子炉心部106に戻るように反射されることができ、そこでは、それらは、燃料親核物質と衝突して、新しい核分裂性核物質を増殖することができる。したがって、中性子反射体集合体110の中性子反射体物質は、増殖燃焼高速原子炉の増殖動作を高めることができる。
【0035】
追加的にまたは代替的に、他の動的に調整可能な反射特性は、中性子減速であり、それらが減速材原子核と衝突するときの中性子の非弾性散乱である。衝突する中性子は、それらが達するのよりも低いエネルギーで(例えば、高速スペクトル中性子は、熱スペクトル中性子として散乱する)、かつ、異なる方向に散乱する。このようにして、高い割合の高速スペクトル中性子が、熱中性子として原子炉心部106に戻るように反射されることができ、そこでは、それらは、核分裂性核物質と衝突して、核分裂反応を起こすことができる。したがって、中性子反射体集合体110の中性子減速材物質は、増殖燃焼高速原子炉の燃焼動作を高めることができる。
【0036】
追加的にまたは代替的に、他の動的に調整可能な反射特性は、中性子吸収であり、中性子捕獲としても知られており、原子核と1つ以上の中性子が衝突して融合し、より重い原子核を形成する核反応である。吸収された中性子は、散乱せず、ベータ粒子の一部としてのように、以降の時刻に放出されない限り、融合した原子核の一部であり続ける。中性子吸収は、ゼロまたは最小の反射の反射特性を提供する。このようにして、原子炉心から発出する高速中性子および熱中性子は、原子炉心部106に戻るように散乱して核分裂性物質や燃料親物質と衝突することが防がれうる。したがって、中性子反射体集合体110の中性子吸収物質は、増殖燃焼高速原子炉の増殖動作および燃焼動作を減少させることができる。
【0037】
中性子反射集合体110の中性子反射特性についての動的制御は、原子炉心部106における所望の反応性レベルの選択を可能にする。例えば、溶融燃料塩108は、原子炉心部106で臨界のままであるためには、最小レベルの熱中性子接触を要する。動的中性子反射体集合体110は、原子炉心部106の中で溶融燃料塩108にて臨界を維持するまたは臨界に貢献するための反射特性を提供するように調整されてもよい。他の例として、MSRシステム100を全出力で動作させることが所望されてもよく、これは、核分裂速度を増加させるために原子炉心部106における中性子の増加した熱化を動機付ける。それゆえ、原子炉心部106に対する全出力を示す所望の反応性レベルに達するまで、動的中性子反射体集合体110の反射特性を増加させて、さらなる減速を提供することができる。
【0038】
それとは対照的に、MSRシステム100は、増殖燃焼炉であるので、原子炉のライフサイクルにわたって種々の点にて増殖速度を動的に制御することが所望されてもよい。例えば、原子炉のライフサイクルの早期には、原子炉心部106における核分裂性物質の利用可能性を増加させるために、高い増殖速度が所望されてもよい。それゆえ、動的中性子反射体110の反射特性は、さらに燃料親物質を増殖して核分裂性物質にするために、原子炉心部106への高速中性子の反射を増加させるように調整されてもよい。時間と共に、より多くの高速中性子が原子炉心部106へ反射されるにつれて、所望の濃度の核分裂性物質に達するまで、高速中性子は、燃料親物質を増殖して核分裂性物質にしてもよい。原子炉のライフサイクルの後期では、増加した出力を、増加した燃焼を通じて提供するために、燃焼を増加させることが所望されてもよい。それゆえ、動的中性子反射体集合体110の反射特性は、所望の燃焼速度を維持するために、熱中性子への高速中性子の減速を増加させるように調整されてもよい。
【0039】
このようにして、動的中性子反射体集合体110の反射特性を調整することによって、炉心反応性と、増殖と燃焼との比率とを、時間と共に正確に制御しうる。例えば、MSRシステム100の動作者は、時間と共に、高い、一貫した燃焼プロフィールを維持することを望んでもよい。いくつかの実施形態では、所望の燃焼プロフィールは、数年または数十年の期間にわたってなどのように、拡張された期間にわたって、MSRシステム100の最大燃焼速度を維持する燃焼プロフィールである。動的中性子反射体集合体110の反射特性は、このような燃焼プロフィールを得るために、拡張された期間にわたって、種々の間隔で選択されうる。上述の例のように、MSRシステム100のライフサイクルの早期には、反射特性は、所望の濃度の核分裂性物質に達するまで、燃料親物質を増殖して核分裂性物質にするために、より多くの高速中性子を原子炉心部106へ反射させるように選択されうる。反射特性は、核分裂性物質の濃度に対して適切な、増加した熱化のために、再び調整されてもよい。時間と共に、核分裂性物質が燃焼するにつれて、動的中性子反射体集合体110の反射特性は、減速を減少させることによって、および/または、高速中性子反射を増加させることによって、高速中性子反射を通じて、より多くの増殖を導入するように、再び調整されてもよい。これらの調整は、MSRシステム100の燃焼プロフィールが高いままであるように持続してもよく、燃料親物質は、拡張された期間にわたってMSRシステム100に燃料を供給するのに十分な速度で、増殖して核分裂性物質になる。
【0040】
図2は、特性に影響を与える静的中性子を有する2つの他の集合体構成に対する1つ以上の動的反射体集合体を有する高速スペクトルMSRにおける反応性と時間のプロット200である。ラインプロット202は、原子炉心を囲む静的鉛中性子反射体集合体を有する高速スペクトルMSR原子炉に対する反応性を時間と共に示し、鉛中性子反射体集合体は、高速中性子を原子炉心に弾性的に散乱する傾向がある。時刻Tの後に、原子炉が初期の燃料装填で開始すると、高速中性子の原子炉心への反射によって、燃料親燃料の増殖が迅速に発生しうる。時刻Tの後に、増殖が、燃焼するのに利用可能な核分裂性物質の量を増加させるにつれて、プロットライン202の反応性は、時間と共に徐々に増加し、Tに近い時刻に最大値に達する。原子炉心に以前存在した燃料親燃料が、中性子の、核分裂の生成物との増加する競合によって、核分裂性物質に変換されるまたは核分裂するにつれて、増殖は、時間と共に、燃焼を増加させるのがゆっくりになってもよい。期間の始まりの付近では、高い燃焼速度を支持する十分な核分裂性物質を増殖するための燃料領域において十分な高速中性子がないので、プロットライン202は、時間と共に、一定の反応性レベルを示さない。時間と共に、大量の高速中性子が燃料親物質を核分裂性物質に増殖し、反応性は、増加するが、原子炉が可能とする最大燃焼速度より下のままである。反応性は、期間の最後の近くでは、時刻Tの付近で、極大値に達し、燃料親物質の供給が減少し始めるにつれて、減少し始める。
【0041】
プロットライン204は、原子炉心を囲む静的グラファイト減速材構成を有する高速MSRに対する反応性を時間と共に示し、減速中性子反射体集合体は、熱化された中性子を原子炉心に提供する傾向がある。プロットライン204では、部分的には、核分裂の可能性を増加させるグラファイト減速材によって起こる熱化によって、プロットライン202より相対的に高いレベルで、時刻T付近で反応性が始まる。プロットライン204は、グラファイト反射体に隣接する熱スペクトル増殖によって、時刻T付近で著しく低下しうる。反応性はその後、時間と共に、原子炉心で熱中性子が核分裂燃料を燃焼させるにつれて、一般に直線的に、徐々に減少しうる。プロットライン204は、どちらのプロットラインも、原子炉心の中で利用可能な最大燃焼速度に達したりそれを維持したりしない点で、プロットライン202と類似している。期間T-Tを通じて時間が進行するにつれて燃焼速度を支持するのに十分高い増殖速度を維持するのに十分な高速中性子がないので、プロットライン204は、原子炉の最大燃焼速度に達しない。プロットライン202および204では、燃焼速度は、期間T-Tの間、最適化されない。代わりに、各プロットは、グラフの進路の間、相対的に高い燃焼速度の期間と相対的に低い燃焼速度の期間とを有する。
【0042】
プロットライン202および204は、プロットライン206と対照させて示されている。プロットライン206は、動的中性子反射体集合体を有する高速MSRシステムに対する反応性を時間と共に示し、高い減速材構成で開始し、高い反射体構成に変化し、その後、動的に制御されて、原子炉心の中の所望の反応性状態を達成する。プロットライン206では、反応性は、時間と共に、時刻Tの付近で初期の燃料装填が装荷された後に相対的に高く開始し、中性子の反射と熱化の動的制御可能な性質によって、高くあり続ける。時刻Tの付近で、中性子反射体集合体の物質の組成は、その時刻に燃料領域で利用可能な核分裂性物質の濃度と関連する減速速度に対して調整される。燃焼が進行するにつれて、中性子反射体集合体の物質の組成は、高速中性子反射を増加させるように調整され、新しく燃焼した核分裂性物質を燃料領域に供給し続けるために、減速を減少させ、一方、同時に、燃料領域で現在の状態と適合するために熱化の適切な量を維持する。調整は、連続的にまたはバッチ処理として行われてもよく、また、時刻Tに向かって時間と共に持続してもよい。これらの動的中性子反射体集合体調整の効果は、プロットライン202によって表されるもののように、静的減速と中性子反射体とで実現可能でない全期間T-Tにわたって、相対的に安定で高い反応性速度を維持することである。にもかかわらず、同一の動的中性子反射体集合体は、他の方法で反応性を制御するために(例えば反応性を減少させるなどのために)、用いられてもよい。
【0043】
中性子反射体集合体の中の中性子吸収材を含むことは、原子炉心の中の反応性に影響を与えることもできることに注意すべきである。中性子反射体集合体の中の中性子反射体、減速材および吸収材物質の間の動的調整は、静的中性子反射体集合体単独よりも、より豊富な制御オプションを提供することができる。
【0044】
図3は、MSR炉心301を囲むセグメント化された動的中性子反射体集合体300の概略図である。MSR炉心301には、燃料供給部308と燃料排出口310とが備えられている。燃料排出口310は、原子炉容器303から一次冷却材ループを通じて外側の熱交換器(図示せず)へ溶融燃料塩を流し、この熱交換器は、熱を抽出し(例えば蒸気タービンでの使用のために)、溶融燃料塩を冷却して、燃料供給部308を介して原子炉容器303へ戻す。溶融燃料塩は、溶融燃料塩入力部312を通って原子炉容器303の中へ流れ、溶融燃料塩出力部314を通って原子炉容器303から外へ流れる。
【0045】
セグメント化された動的中性子反射体集合体300は、MSR炉心301を部分的にまたは実質的に囲んでもよい。例えば、セグメント302、304、306の間に隙間があってもよく、または、またはセグメント302、304、306が、MSR炉心を連続的に取り囲んでもよい。動的反射体集合体300のセグメントは図3に示されているが、動的反射体集合体は、任意の個数のセグメントを含んでもよいことが理解されるべきである。動的反射体集合体300のセグメントは、炉心を放射方向に完全にまたは部分的に取り囲むことによって炉心を囲んでもよい。動的反射体集合体300のセグメントは、随意的に、放射方向の反射体セグメントと組み合わせて、またはそれの代わりとして、原子炉心の上および/または下に配置されてもよい。
【0046】
いくつかの場合には、セグメント化された動的中性子反射体集合体が、途切れずにまたは完全に連続的に、原子炉心を完全に囲むことができないこともありうることが理解されるべきである。例えば、入力/出力配管、電源導管、データ導管、および/または他の装置、連通機器および支持ハードウェアのような、支持要素を有する高速MSR炉心301の周りに種々の構造物および装置を配置することは適切でありうる。これらの構造物および装置は、原子炉心への直接または間接のアクセスを要してもよく、それによって、動的反射体集合体300のセグメントは、アクセスを受け入れるような形状または配置を要してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、原子炉心を囲む領域の一部分が動的反射体集合体300のセグメントによって覆われないようなセグメントや配置の間の隙間を許可することは適切でありうる。
【0047】
動的反射体集合体300のいくつかのまたは各セグメント302、304、306は、流れる反射体物質を案内するための1つ以上の経路(図3に示さず)を含んでもよい。この出願で用いられるように、経路という用語は、管状の囲まれた通路だけでなく、反射体物質を流すのに適した任意の空間を指す。流れる反射体物質は、流体だけでなく、集合体を通って循環するまたは流れることができる物質であってもよい物質を含んでもよく、それによって、反射体物質の追加またはそこからの反射体物質の除去を選択的に行うことができる。適切な中性子反射体物質の例は、流体、懸濁粒子のスラリー、および/または固体、および/または炭素ペブルなどのペブルなどを含む。セグメント302、304、306は、例えば、各セグメントの周辺に沿って下がるような、流れる反射体物質を第1方向に案内する1つ以上の第1経路、および、例えば、動的中性子反射体集合体300の最上部へ戻るような、流れる反射体物質を第2方向に案内する1つ以上の第2経路を含んでもよい。種々の反射体セグメントの経路は、流動中性子反射体物質がセグメント間を流れるように、流体的に連結されていてもよい。他の実施形態では、反射体セグメントは、流れる反射体物質が単一のセグメントだけの中へまたそこだけから外へ流れるように、互いから流体的に分離されていてもよい。
【0048】
1つの実施形態では、反射体セグメントの流体経路のうちの1つ以上が、熱交換器および/または溶融燃料塩と熱連通して、冷却材として作用してもよい。したがって、流れる反射体物質は、熱を溶融燃料塩と交換して、熱交換器を介してその熱を二次冷却材回路に伝達して、原子炉から、タービンまたは他の電気生成装置に供給してもよい。流れる反射体物質が一次および/または二次冷却材回路を通して熱を原子炉心と交換するにつれて、流れる反射体物質の温度は変動しうる。流れる反射体物質の温度が変動するにつれて、その密度が変化しうる。例えば、1つの実施形態では、流れる反射体物質は、溶融鉛-ビスマスであり、溶融鉛-ビスマスは、より低温で、より高い密度を経験する。溶融鉛-ビスマスの温度が下がってその密度が上がるにつれて、鉛-ビスマスの単位体積あたりの分子の個数は増加する。単位体積あたりの分子の個数が増加する(すなわち、より高い密度)につれて、原子炉心から発出する高速スペクトル中性子を反射する可能性が増加し、したがって、物質の体積を変化させることなく、流れる反射体物質の実効反射率を増加させる。他の実施形態では、流れる反射体物質の密度は、流れる反射体物質に、(非反射物質粒子、流体気泡などの)非反射物質を導入することによって調整されてもよい。さらに他の実施形態では、流れる反射体物質の密度は、流れる反射体物質を低密度の気相へ蒸発させるための環境特性を調整することによって調整されてもよい。このようにして、動的中性子反射体集合体の物質組成を、またそれゆえその反射率を、変化させてもよい。
【0049】
図4は、スピルオーバー貯留部408を備えた流れる動的中性子反射体集合体406を有するMSRシステム400を示す。溶融燃料塩402は、内側の中央の原子炉心部にて核分裂反応によって加熱されると、上方向に流れ、原子炉容器401の内側の周辺の周囲で冷えると、下方向に流れる。図4では、先端が中空の矢印は、MSRシステム400を通る溶融燃料塩の流れを示す。溶融燃料の構成部品は、高速燃料循環流動(例えば1秒あたりで1つの完全な循環ループ)によって十分混合されうる。1つの実施形態では、溶融燃料の流れから熱を抽出するために、原子炉容器401の内側の周辺に1つ以上の熱交換器404が配置され、下る流れをさらに冷却するが、熱交換器は、追加的にまたは代替的に、原子炉容器401の外側に配置されてもよい。
【0050】
MSRシステム400は、動的中性子反射体集合体406を含む。MSRシステム400の動作温度は、種々の適した中性子反射体物質を液化するのに十分高くてもよい。例えば、鉛および鉛-ビスマスはそれぞれ、原子炉の動作範囲の中の温度である、およそ327℃およびおよそ200℃で融解する。1つの実施形態では、動的中性子反射体集合体406は、選択された中性子反射体物質(例えば鉛、鉛-ビスマスなど)の流れるおよび/または循環する流体相を含むように構成されている。図4では、先端が詰まった矢印は、中性子反射体物質の流れを示す。動的中性子反射体集合体406は、任意の適した温度および放射線抵抗性物質から形成され、放射線抵抗性物質は、例えば、限定されないが、1つ以上のニッケル合金、モリブデン合金(例えばTZM合金)、タングステン合金、タンタル合金、ニオブ合金、レニウム合金、炭化ケイ素、または1つ以上の他の炭化物を含む、1つ以上の耐熱合金からなる。1つの実施形態では、動的中性子反射体集合体406は、原子炉心部の外側表面の上に配置されて、その外側表面を横切るように分布している。1つの実施形態では、動的中性子反射体集合体406は、図3を参照して上で説明したようにセグメント化されてもよい。1つの実施形態では、動的中性子反射体集合体406は、原子炉心部の外側表面を放射方向に横切るように配置されてもよい。動的中性子反射体集合体406は、原子炉心部の周りに中性子反射体物質の連続した空間を形成するように配置されてもよい。動的中性子反射体集合体406の任意の幾何学的な配置と個数とが、ここで述べる技術に適している。例えば、動的中性子反射体集合体406は、各モジュールが中性子反射体物質の流れで充填されて原子炉心部の周りに円筒型の中性子反射空間を形成する、積層された環状構造で配置されてもよい。動的中性子反射体集合体406は、原子炉心部の上または下に配置されてもよい。
【0051】
動的中性子反射体集合体406の組成は、例えば反射体406の流れる反射体物質の体積を調整することによって、反射特性を変更するように調整されてもよい。反射体406の流れる反射体物質の体積を調整する1つの方法は、物質を、動的反射体406の中へ、またはそこから外へ、配管集合体410とポンプ414とを介してスピルオーバー貯留部408へポンプで送ることである。流動中性子反射体物質の体積を減少させるために、および、それゆえ反射体406の反射特性を減少させるために、流動中性子反射体物質の一部分を、配管集合体410を介してスピルオーバー貯留部408の中へポンプで送るまたは置換・移動してもよい。バルブ412およびポンプ414が共同して、配管集合体410を通じて、流動中性子反射体物質の流れを調整してもよい。流動中性子反射体物質の体積を増加させるために、バルブ412およびポンプ414が共同して、流動中性子反射体物質を、オーバーフロータンク408の外へ出るように、および、配管集合体410を介して反射体406へ戻るように、流してもよい。他の実施形態では、動的中性子反射体集合体406の反射率は、流動中性子反射体物質の、温度、したがって密度、を調整することによって調整されてもよい。より密度の大きい物質が、単位体積当たりの、より高い質量を有するので、流動中性子反射体物質の密度の変化は、その中性子反射特性を変化させる。より密度の大きい物質が、単位体積当たりにより多くの分子を含み、それゆえ中性子をより反射しやすいが、これは、より密度の大きい物質を通って移動する任意の中性子は、流動中性子反射体物質の分子とより衝突しやすくなり、したがって反射されやすくなるからである。ポンプ414とバルブ412は、共同して、動的中性子反射体406の中へ入る、またはそこから外へ出る、流動中性子反射体物質の流速を増加または減少させて、反射する流動中性子反射体物質の温度を調整してもよい。他の実施形態では、スピルオーバー貯留部408は、閉回路ループのような、他の構成で置き換えられてもよい。
【0052】
MSRシステム400は、流動中性子反射体物質清浄集合体416を含んでもよい。流動中性子反射体物質清浄集合体416は、配管集合体410と流体連通しており、また、バルブ412およびポンプ414の一方の側に位置してもよい。流動中性子反射体物質清浄集合体416は、中性子反射体物質を濾過し、および/または、その化学的性質を制御してもよい。例えば、流動中性子反射体物質清浄集合体416は、酸素、亜硝酸塩および他の不純物を中性子反射体物質から除去してもよい。1つの実施形態では、流動中性子反射体物質清浄集合体416の亜硝酸ジルコンコーティングが、流動中性子反射体物質の化学的性質を制御するように構成されている。他の実施形態では、流動中性子反射体物質清浄集合体416は、流動中性子反射体物質清浄集合体416が酸素を酸化物物質として捕獲する「スラッギング」技術を実行してもよい。もし酸化物物質が溶融したら、それは、相分離をしてもよく、また、流動中性子反射体物質清浄集合体416は、例えば酸化物物質を削り落とすことによって、その酸化物物質を中性子反射体物質から除去してもよい。他の実施形態では、流動中性子反射体物質清浄集合体416は、そこに含まれている酸素を除去するための中性子反射体物質の水素処理(hydrogen treatment)のために構成されている。
【0053】
動的中性子反射体406の組成は、流動減速材物質を導入することによって調整されてもよい。流動減速材物質は、貯留タンク(図示せず)に保持されてもよく、また、流体減速材貯留タンクと流体連通している管集合体410とポンプ414とを介して動的中性子反射体406に導入されてもよい。流動減速材物質は、動的反射体406で循環してもよく、また、ポンプ414によって管集合体410を介して貯留タンクの中へ除去されてもよい。1つの実施形態では、動的中性子反射体406において流動減速液体として水または重水が用いられてもよい。他の実施形態では、動的中性子反射体406において流動減速物質としてベリリウムが用いられてもよい。さらに他の実施形態では、動的中性子反射体406および/または燃料塩自身において流動減速物質としてLiF-BeF2が用いられてもよい。ポンプ414は、流動減速液体および/または流動中性子反射体物質を動的反射体406の中へおよびそこから外へ連続的および/またはバッチ処理にてポンプで送ってもよい。
【0054】
すでに述べたように、中性子吸収物質は、個別にまたは中性子反射体物質と中性子減速材物質の種々の組成および/または構成と共に動的中性子反射体集合体406の中へ組み込まれることができる。
【0055】
図5は、そこを通って流動中性子反射体物質を案内するための、複数の耐熱クラッドスリーブ502を有する動的中性子反射体集合体500のトップダウンの概略図である。1つの実施形態では、流動中性子反射体集合体500は、そこから高速スペクトル中性子506が発出する核燃料領域504を実質的に囲む。図5では、高速スペクトル中性子506の例示的な経路は、ライン508のような二重矢印で終わるラインで示されている。例示的な高速スペクトル中性子506は、流動反射体物質から非弾性的に散乱(または反射)して、核燃料領域504へ戻る。図5の反射体構成は、ある体積の中性子反射体物質を有する経路502のそれぞれを選択的に充填することによって、核燃料領域504での中性子スペクトルを増加的にシフトさせるのに用いられてもよい。
【0056】
図5では、中性子反射体物質は、見ている人に向かって、反射クラッド経路502を通って上に流れる。1つの実施形態では、中性子反射体物質は、核燃料領域504の上方で入力ポートおよび出力ポートを有する経路502(例えば、小空洞、スリーブ、導管など)にて循環してもよく、それによって、原子炉の下方には設備やポートは不要である。他の実施形態では、中性子反射体物質は、核燃料領域504の上方の1つのポートと核燃料領域504の下方の他のポートとを有する経路502を通り、上方または下方の一方向のみに流れてもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質は、経路502を通って流れるある程度淀んだまたは徐々に進行する流れを含んでもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質は、放射方向の入力ポートおよび出力ポートを通って流れてもよい。
【0057】
動的中性子反射体集合体500は、燃料領域504とは反対の側に配置されている熱交換器510と熱連通している。熱交換器510は、そこを通って循環する1つ以上のタイプの液体冷却材を含んでもよい。中性子反射体500が熱交換器510と熱を交換するとき、熱交換器510は、二次冷却材回路の一部として、熱を動的中性子反射体集合体500から遠くへ運搬してもよい。二次冷却材回路は、例えば蒸気駆動されるタービンなどの電気生成装置に熱を供給してもよい。1つの実施形態では、溶融燃料塩は、核燃料領域504を通って上方におよび熱交換器510を通って下方へ流れて、そのようにして一次冷却材回路の一部として熱を交換してもよい。言い換えれば、熱交換器は、溶融燃料塩と熱交換し、また、経路502の流動中性子反射体と熱交換してもよい。中性子反射物質の流速は、経路502で流れる反射体物質の温度を変化させるために、熱交換器との接触時間を変化させるように調整されてもよい。反射体物質の温度が変化するにつれて、それに応じてその密度が変化する。より大きな密度の物質ほど、単位体積あたりでより高い質量を有してそれゆえ中性子をより反射しやすくなるので、反射体物質の密度の変化は、その中性子反射特性を変化させる。経路502は、限定されないが、正方形、長方形、円形、環状、多角形などを含む幾何学的形状で形成されてもよい。
【0058】
図6は、流動中性子反射体物質を案内する複数のスリーブ602、および、スリーブ602、604に選択的に挿入される中性子減速部材606を含む複数のスリーブ604を、どのおよび何個のスリーブ602が中性子減速部材606を受領してもよいかに関して任意の所望の構成で、有する動的中性子反射体集合体600のトップダウンの概略図である。動的中性子反射体集合体600は、そこから高速スペクトル中性子610が発出する核燃料領域608を実質的に囲む。図6では、ライン612のような二重矢印で終わるラインは、高速スペクトル中性子を示している。挿入されると、中性子減速部材606は、ある体積(量)の流動中性子反射体物質を置換・移動し、それによって、動的中性子反射体集合体600の中性子反射特性を変化させる。動的中性子反射体集合体600は中性子反射物質および中性子減速物質を含んでいるので、高速スペクトル中性子のうちのいくつかは、反射して燃料領域608に戻り、他の高速スペクトル中性子610は、中性子減速部材606と衝突し、熱中性子へ変換される。
【0059】
図6では、熱中性子の例示的な経路は、ライン614のような単一の矢印で終わるラインで示されている。高速スペクトル中性子の例示的な経路は、二重の矢印で終わるラインで示されている。動的反射体集合体600は、高速スペクトル中性子を熱中性子に変換し、熱中性子は、経路602、604にて流動中性子反射体物質によってまたは、動的反射体600の後ろに配置された他の中性子反射体(図示せず)によって反射されて燃料領域608に戻ってもよい。流動中性子反射体物質の体積のうちのいくらかを置換・移動することによって、反射体600の全体的な反射特性が変化し、それによって、中性子減速体積置換部材606がない構成と比べて、高速スペクトル中性子の減少した反射ゆえに、燃料領域608での増殖速度を減少させる。図6に示す置換部材の構成はまた、置換部材のない構成と比べて、熱スペクトル中性子の増加ゆえに、燃料領域608での燃焼速度を増加させる。中性子減速体積置換部材606を反射体600へ選択的に挿入することによって、燃料領域608において、中性子スペクトル同様、増殖速度と燃焼速度とが動的に調整されてもよい。中性子減速体積置換部材606は、限定されないが、正方形、長方形、円形、環状、多角形などを含む幾何学的形状で形成されてもよい。
【0060】
1つの実施形態では、反射体600の全体的な反射特性は、流動中性子反射体物質の経路602、604のうちの1つ以上を徐々に排出させる(draining)ことによって、変化し、それによって、経路602、604のうちの1つ以上のものにおいて空の空間を残す。燃料塩および/または二次冷却材と熱連通することによって、反射体600に対して積極的な冷却を提供することができる。
【0061】
図6では、経路602を流れる中性子反射体物質は、見ている人に向かって、上に流れる。1つの実施形態では、経路602を流れる中性子反射体物質は、燃料領域608の上方で入力ポートおよび出力ポートを有する経路602にて循環してもよく、それによって、原子炉の下方には設備やポートは不要である。他の実施形態では、経路602を流れる中性子反射体物質は、燃料領域608の上方の1つのポートと燃料領域608の下方の他のポートとを有する経路602を通り、上方または下方の一方向のみに流れてもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質は、経路602を通って流れるある程度淀んだまたは徐々に進行する流れを含んでもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質は、放射方向の入力ポートおよび出力ポートを通って流れてもよい。
【0062】
熱交換器614は、燃料領域608から熱を交換するために、動的反射体集合体600と熱連通している。1つの実施形態では、熱交換器614は、動的反射体集合体600の、燃料領域608とは反対の側に隣接して配置されている。中性子反射体物質が動的反射体集合体600のスリーブを通って流れるとき、それは、発出する熱を燃料領域608から熱交換器614へ伝達して、二次冷却材回路を形成してもよい。二次冷却材回路は、配管から形成された1つ以上の二次冷却材ループを含んでもよい。二次冷却材回路は、溶融塩燃料原子炉での実施に適したその分野で公知の任意の二次冷却材システム配置を含んでもよい。二次冷却材システムは、原子炉心によって生成されて熱交換器614によって受領された熱を下流の熱的に駆動される電気生成装置およびシステムへ伝達するために、1つ以上の二次冷却材ループの1つ以上の配管および/または流体伝達集合体を通して二次冷却材を循環させてもよい。二次冷却材システムは、複数の並列の二次冷却材ループ(例えば2~5個の並列ループ)を含んでもよく、これはそれぞれ、二次冷却材回路を通って二次冷却材の選択された一部分を運ぶ。二次冷却材は、限定されないが、液体ナトリウムを含んでもよい。
【0063】
1つの実施形態では、中性子が熱交換器614と相互作用して熱交換器614に放射線損傷を起こす前に、熱交換器614は、燃料領域608から発出する中性子を捕獲するための毒すなわち中性子吸収材として効果的な1つ以上の物質によって保護されている。1つの実施形態では、熱交換器614は、毒すなわち中性子吸収材として効果的な1つ以上の物質を含む。他の実施形態では、動的反射体集合体600に、毒すなわち中性子吸収材として効果的な1つ以上の物質が含まれている。
【0064】
図7は、中性子反射体集合体700によって囲まれた燃料領域702を有する溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。中性子反射体集合体700は、経路712を通って流れる中性子反射体物質704を含んでいる。図7では、中性子反射体物質704は、見ている人に向かって、上に流れる。1つの実施形態では、中性子反射体物質704は、燃料領域702の上方で入力ポートおよび出力ポートを有する経路712にて循環してもよく、それによって、原子炉の下方には設備やポートは不要である。他の実施形態では、中性子反射体物質704は、燃料領域702の上方の1つのポートと燃料領域702の下方の他のポートとを有する経路712を通り、上方または下方の一方向のみに流れてもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質704は、経路712を通って流れるある程度淀んだまたは徐々に進行する流れを含んでもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質704は、熱交換器706の間に配置されている放射方向の入力ポートおよび出力ポートを通って流れてもよい。
【0065】
流れる動的中性子反射体物質704は、熱交換器706と熱連通している。熱交換器706は、そこを通って循環する1つ以上のタイプの液体冷却材を含んでもよい。中性子反射体物質704が熱交換器706と熱を交換するとき、熱交換器706は、二次冷却材回路の一部として、熱を中性子反射体集合体700から遠くへ運搬してもよい。二次冷却材回路は、例えば蒸気駆動されるタービンなどの電気生成装置に熱を供給してもよい。1つの実施形態では、溶融燃料塩は、燃料領域702を通って上方におよび熱交換器706を通って下方へ流れて、そのようにして一次冷却材回路の一部として熱を交換してもよい。言い換えれば、熱交換器706は、溶融燃料塩と熱交換し、また、流動中性子反射体物質704と熱交換してもよい。中性子反射物質704の流速は、中性子反射体物質704の温度を変化させるために、熱交換器706との接触時間を変化させるように調整されてもよい。中性子反射体物質704の温度が変化するにつれて、それに応じてその密度が変化する。より大きな密度の物質ほど、単位体積あたりでより高い質量を有してそれゆえ中性子をより反射しやすくなるので、中性子反射体物質704の密度の変化は、その中性子反射特性を変化させる。
【0066】
図7は、燃料領域702から発出する例示的な高速中性子710を示す。高速中性子は、二重矢印で終わるラインで示されている。例示的な高速中性子710は、燃料領域702で発生し、中性子反射体物質704によって反射され、燃料領域702へ戻るように移動してもよい。反射して燃料領域702へ戻った例示的な高速中性子710は、燃料親物質との接触時に燃料領域702にて核分裂性物質を増加させてもよい。同様に、図7は、例示的な熱中性子714を示す。例示的な熱中性子714は、単一の矢印で終わるラインで示されている。例示的な熱中性子714は、中性子反射体物質704によって反射され、燃料領域702へ戻るように移動してもよい。燃料領域702で反射した例示的な熱中性子は、そこに位置している核分裂性物質との接触時に燃料領域702での反応性を増加させてもよい。
【0067】
図8は、熱交換器806と熱連通している中性子反射体物質804を有する中性子反射体集合体800によって囲まれた燃料領域802を有する溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。図8では、中性子反射体物質804は、見ている人に向かって、上に流れる。1つの実施形態では、中性子反射体物質804は、燃料領域802の上方で入力ポートおよび出力ポートを有する経路808にて循環してもよく、それによって、原子炉の下方には設備やポートは不要である。他の実施形態では、中性子反射体物質804は、燃料領域802の上方の1つのポートと燃料領域802の下方の他のポートとを有する経路808を通り、上方または下方の一方向のみに流れてもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質804は、経路808を通って流れるある程度淀んだまたは徐々に進行する流れを含んでもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質804は、熱交換器806の間に配置されている放射方向の入力ポートおよび出力ポートを通って流れてもよい。
【0068】
流動中性子反射体物質804は、熱交換器806と熱連通している。熱交換器806は、そこを通って循環する1つ以上のタイプの液体冷却材を含んでもよい。流動中性子反射体物質804が熱交換器806と熱を交換するとき、熱交換器806は、二次冷却材回路の一部として、熱を中性子反射体集合体800から遠くへ運搬してもよい。二次冷却材回路は、例えば蒸気駆動されるタービンなどの電気生成装置に熱を供給してもよい。1つの実施形態では、溶融燃料塩は、燃料領域802を通って上方におよび熱交換器806を通って下方へ流れて、そのようにして一次冷却材回路の一部として熱を交換してもよい。言い換えれば、熱交換器806は、溶融燃料塩と熱交換し、また、流動中性子反射体物質804と熱交換してもよい。中性子反射物質804の流速は、中性子反射体物質804の温度を変化させるために、熱交換器806との接触時間を変化させるように調整されてもよい。
【0069】
反射体集合体800は、流体経路808に挿入された中性子減速体積置換部材812を含む。中性子減速体積置換部材812が挿入されると、経路の中の反射液体804の体積が減少する。体積が減少すると、経路の中に残っている中性子反射体物質804は、変化した中性子反射特性を有し、またそれゆえ、減速部材812が挿入される前よりも、中性子を反射しにくくなる。燃料領域802を囲む領域での減速部材812の存在は、例えば熱化された中性子810のような、中性子の熱化をしやすくする。増加した熱化は、燃料領域802での核分裂性物質の燃焼を増加させる傾向がある。
【0070】
減速体積置換部材812は、単独でまたは任意の複数の部材で、経路808に挿入されてもよい。減速体積置換部材812は、円筒形状、正方形または長方形のプリズム形状、三角形のプリズム形状、多角形のプリズム形状、などを呈していてよい。他の実施形態では、減速体積置換部材812は、1組の部材(図示せず)を含んでもよい。経路808当たりの減速体積置換部材812の選択および幾何学的形状と個数は、経路808での反射体物質に対する減速物質の比率を決定する。減速体積置換部材812を選択的に挿入することは、燃料領域802での増殖速度および反応性の調整を可能にし、所望の燃焼レベルの維持を可能にする。1つの実施形態では、燃焼速度は、減速体積置換部材812の少なくとも1つのサブセットを選択的に挿入および除去することによって、所望の上限および下限の中に維持される。
【0071】
図9は、経路908を通って流動中性子反射体物質904を有する中性子反射体集合体900によって囲まれた燃料領域902を有する溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。図9では、中性子反射体物質904は、見ている人に向かって、上に流れる。1つの実施形態では、中性子反射体物質904は、燃料領域902の上方で入力ポートおよび出力ポートを有する経路908にて循環してもよく、それによって、原子炉の下方には設備やポートは不要である。他の実施形態では、中性子反射体物質904は、燃料領域902の上方の1つのポートと燃料領域902の下方の他のポートとを有する経路908を通り、上方または下方の一方向のみに流れてもよい。さらに他の実施形態では、液体中性子反射体904は、経路908を通って流れるある程度淀んだまたは徐々に進行する流れを含んでもよい。さらに他の実施形態では、液体中性子反射体は、熱交換器914の間に配置されている放射方向の入力ポートおよび出力ポートを通って流れてもよい。
【0072】
流動中性子反射体物質904は、熱交換器914と熱連通している。熱交換器914は、そこを通って循環する1つ以上のタイプの液体冷却材を含んでもよい。流動中性子反射体物質904が熱交換器914と熱を交換するとき、熱交換器914は、二次冷却材回路の一部として、熱を中性子反射体集合体900から遠くへ運搬してもよい。二次冷却材回路は、例えば蒸気駆動されるタービンなどの電気生成装置に熱を供給してもよい。1つの実施形態では、溶融燃料塩は、燃料領域902を通って上方におよび熱交換器914を通って下方へ流れて、そのようにして一次冷却材回路の一部として熱を交換してもよい。言い換えれば、熱交換器914は、溶融燃料塩と熱交換し、また、流動中性子反射体物質904と熱交換してもよい。中性子反射物質904の流速は、中性子反射体物質904の温度を変化させるために、熱交換器914との接触時間を変化させるように調整されてもよい。中性子反射体物質904の温度が変化するにつれて、それに応じてその密度が変化する。より大きな密度の物質ほど、単位体積あたりでより高い質量を有してそれゆえ中性子をより反射しやすくなるので、中性子反射体物質904の密度の変化は、その中性子反射特性を変化させる。
【0073】
反射体集合体900は、選択的に挿入された中性子吸収部材906と、選択的に挿入された体積置換部材910とを含む。中性子吸収部材906および体積置換部材910は、経路908の形状と合致する任意の幾何学的形状であってよい。中性子吸収部材906および体積置換部材910は、そこにそれらが挿入される経路908におけるある体積の流動中性子反射体物質904を置換・移動し、それによって、その経路の中性子反射率を減少させる。中性子吸収部材906および体積置換部材910を選択的に挿入することは、中性子反射体集合体における物質の組成を変化させることによって、原子炉心における中性子反射率を調整する。例えば高速中性子910などのように、体積置換部材910の中への高速中性子の移動については、いくつかの筋書きがある。高速中性子912は、部材910(図9には示さず)を通ってもよく、高速中性子912は、経路における残っている流動中性子反射体物質904によって反射されてもよく、または、高速中性子912は、他の表面(図示せず)によって反射されてもよい。例示的な高速中性子912は、体積置換部材910が挿入されたときには、経路が流動中性子反射体物質904で満杯になっているときよりも、燃料領域902に戻るように反射しにくい。
【0074】
中性子吸収部材906を挿入することは、中性子反射体集合体における物質の組成を変化させることによって、原子炉心における中性子反射率を調整する、もう一つの方法である。中性子吸収部材906が経路908に挿入されると、例示的な高速中性子912は、衝突して、吸収部材906によって吸収されてもよい。他の筋書きも可能である。例示的な高速中性子は、吸収部材906によって置換・移動されなかった流動中性子反射体物質904によって反射されてもよく、または、それは、それが他の物質(図示せず)によって反射または吸収されうるような炉心領域を出てもよい。他の実施形態では、中性子吸収部材906は、経路908に挿入されて、その一方、流動中性子反射体物質904が経路から除去されてもよい。
【0075】
体積置換部材910および中性子吸収部材906は、任意の所望の構成で、および、中性子減速部材のような、図9に示していない他の部材との任意の組み合わせで、経路908に選択的に挿入されてもよいことが理解されるべきである。任意の個数の体積置換部材910および中性子吸収部材906が、単一の経路に、単独で、または、他の挿入可能な部材と組み合わせて挿入されてもよい。体積置換部材910および中性子吸収部材906は、経路908のうちのいくつかのみに、または、動的反射体900の一部分における経路のみに、挿入されてもよい。所望の位置で所望の中性子活動を濃縮する挿入構成を選択することによって、燃料領域902において増殖または燃焼の位置を集中させることが望ましいことがありうる。例えば、中性子反射体物質904が反射体集合体900の上半分にて経路908を充填することを可能にするために、反射体集合体900の上半分に挿入された部材を選択的に除去することによって、燃料領域902の上半分にて、増加した増殖を誘導してもよい。他の例では、反射体集合体900の下半分にて経路908に中性子減速部材を選択的に挿入することによって、燃料領域902の下半分にて、増加した燃焼を誘導してもよい。さらに他の例では、反射体集合体900の所望の側に位置する経路908に中性子吸収部材906を選択的に挿入することによって、燃料領域902の一部分にて、反応性を減少させてもよい。
【0076】
図9の実施形態では、経路908における流動中性子反射体物質904は、熱交換器914と熱連通している。経路908における流動中性子反射体物質904の流速を変化させることは、流動反射液体の温度、したがってその密度と、それゆえその中性子反射特性を変化させてもよい。流動中性子反射体物質904の密度を変化させることは、中性子反射体集合体における物質の組成を変化させることによって、原子炉心における中性子反射率を調整する、もう一つの方法である。熱交換器914を用いることによって、経路908における流動中性子反射体物質904は、燃料領域902に対する二次冷却材であり、なぜなら、流動中性子反射体物質904は、熱交換器914を介して、原子炉心の外側に対し、熱を、燃料領域902における溶融燃料塩と交換するように動作しうるからである。
【0077】
図10は、管-骨組み(シェル)(shell)の熱交換器において溶融核燃料塩1004と熱連通する中性子反射体物質1002を有する動的中性子反射体集合体1000によって囲まれた溶融核燃料塩高速原子炉心の概略の側面図である。流動反射液体1002は、注入口1006を通って外側経路1008へ流れる。外側経路1008は、そこから、燃料領域1004から発出する高速中性子が反射して、燃料領域1004へ戻りうるような、中性子反射層を提供する。外側経路1012を離れた後、流動反射液体1002は、下部経路1012を通って流れる。下部経路1012は、そこから、燃料塩1004から発出する高速中性子が反射して、燃料塩1004へ戻りうるような、中性子反射層を提供する。下部経路1012を離れた後、流動中性子反射体物質1002は、管1014を通って上方へ流れる。
【0078】
管1014は、骨組み-管構成にて管1014を囲む経路1016にて下方に流れる溶融燃料塩1004と熱連通しており、それゆえ、原子炉心のための二次冷却材として機能する。管1014は、任意の直径と横断面の幾何形状の任意の個数の管として構成されてもよい。管1014の構成は、流動中性子反射体物質1002と溶融燃料塩1004との間の所望の熱交換のための領域1016における流動溶融燃料塩1004と接触する所望の表面積に対して選択されてもよい。管1014を離れた後、流動中性子反射体物質1002は、上部経路1020に入る。上部経路1020は、そこから、燃料領域1004から発出する中性子が反射して燃料領域1004へ戻りうるような、反射層を提供する。熱交換器(図示せず)は、流動中性子反射体物質1002と熱連通してもよい。1つの実施形態では、熱交換器は、経路1008の外側に配置されていてもよい。他の実施形態では、熱交換器は、流動中性子反射体物質の注入口1006または排出口1022の上方に配置されていてもよい。熱交換器914を用いることによって、流動中性子反射体物質1002は、燃料領域1004に対する二次冷却材であり、なぜなら、それが、原子炉心の外側に対し、熱を、溶融燃料塩と交換するように動作しうるからである。
【0079】
原子炉心における中性子反射率は、経路1008、1012、1020における反射液体の組成を変化させることによって調整されてもよい。例えば、流動中性子反射体物質1002の体積は、オーバーフロータンク1010の中へ、またはそこから外へ、ある量の流動中性子反射体物質1002をポンプで送ることによって調整されて、それによって、反射率をそれぞれ増加または減少させてもよい。他の例では、経路1008、1012、1020を通る流動中性子反射体物質1002の密度が調整されてもよい。流動中性子反射体物質1002の、より高い密度は、増加した中性子反射率となりえ、その一方、流動中性子反射体物質1002の、より低い密度は、減少した中性子反射率となりうる。流動中性子反射体物質1002の密度は、温度を変化させることによって調整されてもよい。流動中性子反射体物質1002の温度は、流速、そしてそれゆえ溶融燃料塩1004との熱接触時間を変化させることによって調整されてもよい。代替的または追加的に、流動中性子反射体物質1002の流動の方向が逆にされてもよい。したがって、流動中性子反射体物質1002は、管1014を通って下方へ、および、経路1006を上へ通ってオーバーフロータンク1010の中へ流れてもよい。溶融核燃料塩1004の流動の方向も、逆にされてもよい。したがって、溶融核燃料塩1004は、核分裂領域の中央において下方へ、および、管1014の周囲で上方へ流れてもよい。
【0080】
図11は、経路1110を通って流れるとともに経路1112の管1108を通って流れる中性子反射体物質1104を有する中性子反射体集合体1100によって囲まれた燃料領域1102を有する溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図であり、管1108は、管-骨組みスタイルの熱交換器の燃料領域1102を通っておよび経路1112を通って流れる溶融核燃料塩と熱連通している。図11の視点から、溶融燃料塩は、燃料領域1102を通って上方へ、また経路1112を通って下方へ、流れる。流動反射液体は、経路1110を通って下方へ、また管1108を通って上方へ、流れる。この実施形態では、流動反射液体は、1104は、燃料領域1102における燃料のための二次冷却材でもある。管1108は、限定されないが、各経路1112における任意の個数の管、または、任意の幾何学的形状の管を含めて、種々の構成を取ってよい。経路1112当たりの管1108の個数と管1108の形状との選択は、経路1112において上方に流れる溶融燃料塩と接触する表面積を決定し、反射液体1104と溶融燃料塩1102との間で交換される熱の量を変化させる。経路1112当たりの管1108の対は図11に示されており、種々の構成が可能である。例えば、管1108は、溶融燃料塩に熱的に曝露された表面積を増加させるために経路1112を通る蛇行経路を取ってもよい。他の実施形態では、経路1112は、その周りで溶融燃料塩が注入口ポートと排出口ポートとの間の間接的なパターンで流れなければならないような、一連の導風板を含んでもよい。間接的な流動パターンは、溶融燃料塩と管との熱接触を増加させ、また、管と溶融燃料塩流動との間の角度を増加させて、熱連通を増加させる。
【0081】
1つの実施形態では、燃料領域1102から発出する例示的な高速中性子1114は、管1108に含まれる流動反射液体1104によって反射されて、または、管1110に含まれる流動反射液体1104によって反射されて、燃料領域1102に戻ってもよい。経路1112にて流れる溶融燃料塩から発出する例示的な高速中性子1116のような高速中性子も、管1108にて流動反射体物質1104によって反射されて燃料領域1102に戻ってもよい。
【0082】
図12は、溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの例示的な動作1200のフローチャートである。維持動作1202は、動的中性子反射体集合体によって囲まれた原子炉心で核分裂反応を維持する。中性子反射体集合体は、少なくとも1つの中性子反射体物質を有してもよい。中性子反射体集合体は、原子炉心の周りに放射方向、上方に、および/または、下方に、配置されていることによって、原子炉心を囲んでもよい。中性子反射体集合体は、1つの連続ピースで形成され、原子炉心の周りに分布する別個のピースになるように形成され、間の隙間を有する別個のピースにて炉心の周りに配置され、および/または、規則的または不規則な部分にセグメント化されていてもよい。反射体集合体は、流動反射体物質を案内するための1つ以上の経路を含んでもよい。反射体集合体は、流動反射体物質が1つのレベルでは1つの方向に流れ、1つ以上の他のレベルでは他の方向に流れるような、1つ以上の経路を含んでもよい。例えば、反射体集合体は、原子炉心の下の注入口配管や排出口配管を避けるために、下方に流れる流動反射体物質を有する外側経路と、上方に流れる流動反射体物質を有する内側経路と、を含んでもよい。
【0083】
反射体集合体は、さらに、1つ以上の熱交換器と熱連通して、それゆえ、原子炉心のための二次冷却材として機能してもよい。1つの実施形態では、熱交換器は、流動反射体物質を案内するための経路に熱的に連結されている。他の実施形態は、第1経路が流動反射体物質を第1方向に案内し、1つ以上の追加の経路が流動反射体物質を、流動溶融燃料塩によって囲まれた1つ以上の管を通して第2方向に案内するような、管-骨組みの熱交換器を用いてもよい。
【0084】
調整動作1204は、中性子反射体集合体中の反射体物質の反射特性を変化させることによって、維持されている核分裂反応中に原子炉心の中の高速中性子束と熱中性子束を調整する。中性子反射体集合体中の反射体物質の反射特性を変化させることは、反射体集合体の反射体物質の体積を修正すること、反射体集合体の反射体物質の密度を修正すること、反射体集合体の反射体物質の組成を修正すること、中性子減速部材を反射体集合体に挿入するおよび/またはそこから除去すること、中性子吸収部材を反射体集合体に挿入するおよび/またはそこから除去すること、および/または、体積置換部材を反射体集合体に挿入するおよび/またはそこから除去すること、のうちの任意の1つ以上のものを含んでもよい。
【0085】
図13は、溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの他の例示的な動作1300のフローチャートである。維持動作1302は、中性子反射体集合体によって囲まれた原子炉心で核分裂反応を維持する。中性子反射体集合体は、少なくとも1つの中性子反射体物質を有してもよい。中性子反射体集合体は、原子炉心の周りに放射方向、上方に、および/または、下方に、配置されていることによって、原子炉心を囲んでもよい。中性子反射体集合体は、1つの連続ピースで形成され、原子炉心の周りに分布する別個のピースになるように形成され、間の隙間を有する別個のピースにて炉心の周りに配置され、および/または、規則的または不規則な部分にセグメント化されていてもよい。反射体集合体は、流動反射体物質を案内するための1つ以上の経路を含んでもよい。反射体集合体は、流動反射体物質が1つのレベルでは1つの方向に流れ、1つ以上の他のレベルでは他の方向に流れるような、1つ以上の経路を含んでもよい。例えば、反射体集合体は、原子炉心の下の注入口配管や排出口配管を避けるために、下方に流れる流動反射体物質を有する外側経路と、上方に流れる流動反射体物質を有する内側経路と、を含んでもよい。
【0086】
反射体集合体は、さらに、1つ以上の熱交換器と熱連通して、それゆえ、原子炉心のための二次冷却材として機能してもよい。1つの実施形態では、熱交換器が、流動反射体物質を案内するための経路に熱的に連結されている。他の実施形態は、第1経路が流動反射体物質を第1方向に案内し、1つ以上の追加の経路が流動反射体物質を、流動溶融燃料塩によって囲まれた1つ以上の管を通して第2方向に案内するような、管-骨組みの熱交換器を用いてもよい。
【0087】
調整動作1304は、中性子反射体集合体中の反射体物質の体積を修正することによって、維持されている核分裂反応中に原子炉心の中の高速中性子束と熱中性子束を調整する。1つの実施形態では、流動反射体物質の体積は、スピルオーバー貯留部に流体的に連結されたポンプおよびバルブによって変化させられてもよい。反射体集合体の反射体物質の体積を減少させるために、流動反射体物質の体積は、バルブを通してスピルオーバー貯留部へポンプで送られてもよく、そしてそれゆえ、原子炉心の中へ散乱される高速中性子および/または熱中性子の束を減少させる。逆に言えば、反射体集合体の体積を増加させるために、流動物質の体積は、バルブを通してスピルオーバー貯留部へポンプで送られてもよく、そしてそれゆえ、原子炉心の中への中性子の反射率を増加させる。
【0088】
他の実施形態では、中性子反射体集合体の物質の組成を変化させることは、体積置換部材を、流動反射体物質を案内する1つ以上の経路に選択的に挿入するおよび/またはそこから除去することを含んでもよい。実施形態では、体積置換部材は、中性子減速部材、中性子吸収部材、または、中性子束に影響を与えない体積置換部材(例えば中空部材または中性子に影響を与えない物質で形成された部材)であってもよい。原子炉心を囲む流動反射体物質を案内する経路への体積置換部材の挿入は、経路での反射体物質の体積を減少させ、またそれゆえ、中性子の散乱を減少させることによって反射体集合体の反射特性を変化させ、なぜなら、反射体物質の減少した体積ゆえに、散乱しやすい中性子がより少ないからである。原子炉心を囲む流動反射体物質を案内する経路からの体積置換部材の除去は、流動反射体物質の体積を増加させる可能性があり、またそれゆえ、中性子の散乱を増加させることによって反射体集合体の反射特性を変化させ、なぜなら、流動反射体物質が反射体集合体へ戻って、回収された体積置換部材によって空にされた空間の中へ入る可能性があり、それゆえ、原子炉心から発出する中性子が、反射体物質の増加した体積ゆえに散乱する可能性が増加するからである。
【0089】
図14は、溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの他の例示的な動作1400のフローチャートである。維持動作1402は、中性子反射体集合体によって囲まれた原子炉心で核分裂反応を維持する。中性子反射体集合体は、少なくとも1つの中性子反射体物質を有してもよい。中性子反射体集合体は、原子炉心の周りに放射方向、上方に、および/または、下方に、配置されていることによって、原子炉心を囲んでもよい。中性子反射体集合体は、1つの連続ピースで形成され、原子炉心の周りに分布する別個のピースになるように形成され、間の隙間を有する別個のピースにて炉心の周りに配置され、および/または、規則的または不規則な部分にセグメント化されていてもよい。反射体集合体は、流動反射体物質を案内するための1つ以上の経路を含んでもよい。反射体集合体は、流動反射体物質が1つのレベルでは1つの方向に流れ、1つ以上の他のレベルでは他の方向に流れるような、1つ以上の経路を含んでもよい。例えば、反射体集合体は、原子炉心の下の注入口配管や排出口配管を避けるために、下方に流れる流動反射体物質を有する外側経路と、上方に流れる流動反射体物質を有する内側経路と、を含んでもよい。
【0090】
反射体集合体は、さらに、1つ以上の熱交換器と熱連通して、それゆえ、原子炉心のための二次冷却材として機能してもよい。1つの実施形態では、熱交換器が、流動反射体物質を案内するための経路に熱的に連結されている。他の実施形態は、第1経路が流動反射体物質を第1方向に案内し、1つ以上の追加の経路が流動反射体物質を、流動溶融燃料塩によって囲まれた1つ以上の管を通して第2方向に案内するような、管-骨組みの熱交換器を用いてもよい。
【0091】
調整動作1404は、中性子反射体集合体中の反射体物質の密度を修正することによって、維持されている核分裂反応中に原子炉心の中の高速中性子束と熱中性子束を調整する。中性子反射体集合体中の反射体物質の密度は、反射体集合体の流動中性子反射体物質の温度を変化させることによって修正されてもよい。より高い温度では、流動中性子反射体物質は、より低い密度を有する傾向があり、より低い温度では、流動中性子反射体物質は、より高い密度を有する傾向がある。密度の変化は、反射体集合体の反射特性を変化させ、なぜなら、原子炉心から発出する熱中性子は、反射体集合体の反射体物質の原子核との衝突の可能性に依存して、反射体物質によって幾分散乱しやすいからである。流動中性子反射体物質の温度を変化させる1つの方法は、その流速を変化させ、またそれゆえ、流動反射体物質の溶融燃料塩との熱接触時間を変化させることである。より高い流速は、熱い燃料塩との接触時間を減少させる可能性があり、それゆえ、流動反射体物質の温度を下げ、流動反射体物質の密度を増加させる。より低い流速は、熱い燃料塩と熱接触している流動反射体物質を、相対的に長い期間の間、そのままにしておく可能性があり、それゆえ、その温度を増加させ、流動反射体物質の密度を下げる。
【0092】
他の実施形態では、流動反射体物質と溶融燃料塩との間で熱を交換するのに、管-骨組みの熱交換器を採用してもよい。管-骨組みの熱交換器は、流動反射体物質を運ぶ管の周りの蛇行経路に溶融燃料塩の道順をとるための導風板で構成されてもよい。移動可能な導風板は、流動反射体物質と溶融燃料塩との間での熱接触時間を増加または減少させてもよい。上述したように、流動反射体物質と溶融燃料塩との間での熱接触時間の変化は、流動反射体物質の温度を、またそれゆえ、流動反射体物質の密度を変化させる傾向があってもよい。
【0093】
図15は、溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの他の例示的な動作1500のフローチャートである。維持動作1502は、中性子反射体集合体によって囲まれた原子炉心で核分裂反応を維持する。中性子反射体集合体は、少なくとも1つの中性子反射体物質を有してもよい。中性子反射体集合体は、原子炉心の周りに放射方向、上方に、および/または、下方に、配置されていることによって、原子炉心を囲んでもよい。中性子反射体集合体は、1つの連続ピースで形成され、原子炉心の周りに分布する別個のピースになるように形成され、間の隙間を有する別個のピースにて炉心の周りに配置され、および/または、規則的または不規則な部分にセグメント化されていてもよい。反射体集合体は、流動反射体物質を案内するための1つ以上の経路を含んでもよい。反射体集合体は、流動反射体物質が1つのレベルでは1つの方向に流れ、1つ以上の他のレベルでは他の方向に流れるような、1つ以上の経路を含んでもよい。例えば、反射体集合体は、原子炉心の下の注入口配管や排出口配管を避けるために、下方に流れる流動反射体物質を有する外側経路と、上方に流れる流動反射体物質を有する内側経路と、を含んでもよい。
【0094】
反射体集合体は、さらに、1つ以上の熱交換器と熱連通して、それゆえ、原子炉心のための二次冷却材として機能してもよい。1つの実施形態では、熱交換器が、流動反射体物質を案内するための経路に熱的に連結されている。他の実施形態は、第1経路が流動反射体物質を第1方向に案内し、1つ以上の追加の経路が流動反射体物質を、流動溶融燃料塩によって囲まれた1つ以上の管を通して第2方向に案内するような、管-骨組みの熱交換器を用いてもよい。
【0095】
調整動作1504は、中性子反射体集合体へ中性子減速部材を挿入することによって、維持されている核分裂反応中に原子炉心の中の高速中性子束と熱中性子束を調整する。中性子減速部材の挿入は、高速中性子との弾性衝突を起こす傾向がある可能性がある反射体集合体の中へ原子核を導入してもよい。これらの原子核の存在は、熱中性子を散乱させて原子炉心の中へ戻し、それゆえ燃焼を増加させてもよい。調整動作1504は、中性子反射体集合体の反射特性への影響を有する可能性があり、なぜなら、中性子減速部材は、ある体積の流動中性子反射体物質を、中性子反射体集合体から置換・移動するからである。流動中性子反射体物質の体積の減少は、原子炉心から発出する中性子との弾性衝突の量を減少させる傾向があり、それゆえ、原子炉心から発出する高速中性子を散乱させて原子炉心に戻して燃料親物質を増殖して核分裂性物質にする可能性を減少させる。
【0096】
図16は、溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの他の例示的な動作1600のフローチャートである。維持動作1602は、中性子反射体集合体によって囲まれた原子炉心で核分裂反応を維持する。中性子反射体集合体は、少なくとも1つの中性子反射体物質を有してもよい。中性子反射体集合体は、原子炉心の周りに放射方向、上方に、および/または、下方に、配置されていることによって、原子炉心を囲んでもよい。中性子反射体集合体は、1つの連続ピースで形成され、原子炉心の周りに分布する別個のピースになるように形成され、間の隙間を有する別個のピースにて炉心の周りに配置され、および/または、規則的または不規則な部分にセグメント化されていてもよい。反射体集合体は、流動反射体物質を案内するための1つ以上の経路を含んでもよい。反射体集合体は、流動反射体物質が1つのレベルでは1つの方向に流れ、1つ以上の他のレベルでは他の方向に流れるような、1つ以上の経路を含んでもよい。例えば、反射体集合体は、原子炉心の下の注入口配管や排出口配管を避けるために、下方に流れる流動反射体物質を有する外側経路と、上方に流れる流動反射体物質を有する内側経路と、を含んでもよい。
【0097】
反射体集合体は、さらに、1つ以上の熱交換器と熱連通して、それゆえ、原子炉心のための二次冷却材として機能してもよい。1つの実施形態では、熱交換器が、流動反射体物質を案内するための経路に熱的に連結されている。他の実施形態は、第1経路が流動反射体物質を第1方向に案内し、1つ以上の追加の経路が流動反射体物質を、流動溶融燃料塩によって囲まれた1つ以上の管を通して第2方向に案内するような、管-骨組みの熱交換器を用いてもよい。
【0098】
調整動作1604は、中性子反射体集合体から中性子減速部材を除去することによって、維持されている核分裂反応中に原子炉心の中の高速中性子束と熱中性子束を調整する。中性子減速部材の除去は、高速中性子との弾性衝突を起こす傾向がある可能性がある反射体集合体の中の利用可能な原子核を減少させる。これらの原子核の存在は、より少ない熱中性子を散乱させて原子炉心の中へ戻し、それゆえ燃焼を減少させる。調整動作1504は、中性子反射体集合体の反射特性への影響を有する可能性があり、なぜなら、除去された中性子減速部材は、ある体積の流動中性子反射体物質を、中性子減速部材が中性子反射体集合体に導入されたときに置換・移動した可能性があるからである。流動中性子反射体物質の体積の増加は、原子炉心から発出する中性子との弾性衝突の量を増加させる傾向がある可能性があり、それゆえ、原子炉心から発出する高速中性子を散乱させて原子炉心に戻して燃料親物質を増殖して核分裂性物質にする可能性を増加させる。
【0099】
図17は、例示的な中性子反射体集合体1700のトップダウンの概略図である。中性子反射体集合体1700は、2つの副集合体、すなわち、一次静的中性子反射体副集合体1712、および、二次動的中性子反射体副集合体1716を含む。図17では、高速スペクトル中性子1706、1714の例示的な経路は、ライン1708のような二重矢印で終わるラインで示され、例示的な高速スペクトル中性子を示している。1つの実施形態では、流動中性子反射体集合体1700は、そこから高速スペクトル中性子1706、1714が発出する核燃料領域1704を実質的に囲む。
【0100】
一次静的中性子反射体副集合体1712は、中性子反射体物質を含んでもよい。一次静的中性子反射体副集合体1712に含まれる中性子反射体物質は、固体、液体、または流体の中性子反射体物質、またはそれらの組み合わせであってもよい。一次静的中性子反射体副集合体1712は、実質的に、燃料領域1704を囲んでもよい。他の実施形態では、一次静的中性子反射体副集合体1712は、連続した、セグメント化された、および/または、モジュール化されたやり方で、燃料領域1704を部分的に囲んでもよい。核燃料領域1704から発出する例示的な高速スペクトル中性子1714は、一次静的中性子反射体副集合体1716から、核燃料領域1704の中に戻るように、非弾性的に分散され(または反射され)、それゆえ、燃料領域1704における燃料親燃料の増殖速度を増加させる。以下にさらに詳しく説明するように、例示的な中性子1706のような他の例示的な高速スペクトル中性子は、一次静的中性子反射体副集合体1712を通って、二次動的中性子反射体副集合体1716から非弾性的に分散され(または反射され)てもよい。
【0101】
一次静的中性子反射体副集合体1712は、核燃料領域1704と隣接して、および/または、それと熱接触して、配置されていてもよい。核燃料領域1704に関する一次静的中性子反射体副集合体1712の配置ゆえに、一次静的中性子反射体副集合体1712は、損傷または摩耗を起こしうる力への高いレベルの曝露を経験してもよい。例えば、一次静的中性子反射体副集合体は、核燃料領域1704から発出する高いレベルの熱と、限定されないが、アルファ粒子、ベータ粒子および/またはガンマ線を含めて、種々のタイプの放射線とに曝露されてもよい。熱および/または放射線への長期の曝露によって、一次静的中性子反射体副集合体1712が、ある期間の間、過剰な構造的劣化を受ける恐れがある。それゆえ、一次静的中性子反射体副集合体1712は、流動中性子反射体集合体1700から除去可能になっていてもよい。言い換えれば、一次静的中性子反射体副集合体、またはそのモジュール化された部分は、副集合体の選択的交換を許可するために、収容部(図示せず)に対してスライド可能なようにはめ込まれていてもよく、この交換は、一次静的中性子反射体副集合体1712の定期的メンテナンススケジュールに従ってまたは定期的検査に基づいて行われてもよい。
【0102】
図17はまた、二次動的中性子反射体副集合体1716を示す。二次動的中性子反射体副集合体1716は、経路1702のそれぞれにある体積の中性子反射体物質を選択的に充填することによって、核燃料領域1704での中性子スペクトルを増加的にシフトさせるのに用いられてもよい。二次動的中性子反射体副集合体1716は、そこを通って流動中性子反射体物質を案内するための、複数の耐熱クラッドスリーブ1702を含んでもよい。図17では、中性子反射体物質は、見ている人に向かって、反射クラッド経路1702を通って上に流れる。1つの実施形態では、中性子反射体物質は、核燃料領域1704の上方で入力ポートおよび出力ポートを有する経路1702(例えば、小空洞、スリーブ、導管など)にて循環してもよく、それによって、原子炉の下方には設備やポートは不要である。他の実施形態では、中性子反射体物質は、核燃料領域1704の上方の1つのポートと核燃料領域1704の下方の他のポートとを有する経路1702を通り、上方または下方の一方向のみに流れてもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質は経路1702を通って流れるある程度淀んだまたは徐々に進行する流れを含んでもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質は、放射方向の入力ポートおよび出力ポートを通って流れてもよい。
【0103】
二次動的中性子反射体副集合体1716燃料領域1704とは反対の側に配置されている熱交換器1710と熱連通している。動的中性子反射体集合体および/または熱交換器は、静的反射体副集合体の内側、またはその間に、配置されていることができることが認識されるべきである。熱交換器1710は、そこを通って循環する1つ以上のタイプの液体冷却材を含んでもよい。二次動的中性子反射体副集合体1716が熱交換器1710と熱を交換するとき、熱交換器1710は、二次冷却材回路の一部として、熱を二次動的中性子反射体副集合体1716から遠くへ運搬してもよい。二次冷却材回路は、例えば蒸気駆動されるタービンなどの電気生成装置に熱を供給してもよい。1つの実施形態では、溶融燃料塩は、核燃料領域1704を通って上方におよび熱交換器1710を通って下方へ流れて、そのようにして一次冷却材回路の一部として熱を交換してもよい。言い換えれば、熱交換器は、溶融燃料塩と熱交換し、また、経路1702の流動中性子反射体と熱交換してもよい。中性子反射物質の流速は、経路1702で流れる反射体物質の温度を変化させるために、熱交換器との接触時間を変化させるように調整されてもよい。反射体物質の温度が変化するにつれて、それに応じてその密度が変化する。より大きな密度の物質ほど、単位体積あたりでより高い質量を有してそれゆえ中性子をより反射しやすくなるので、反射体物質の密度の変化は、その中性子反射特性を変化させる。
【0104】
図18は、中性子反射体集合体1800によって囲まれた燃料領域1802を有する溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。中性子反射体集合体は、燃料領域1802を囲む、内側環状経路1808および外側環状経路1810を含む。内側環状経路1808および外側環状経路1810は、それぞれ、中性子反射体物質1804、1806を含んでもよい。中性子反射体物質1804、1806は、それらのそれぞれの中性子反射特性または中性子反射体集合体の性能に影響を与えうる他の特性(粘度、密度、比熱など)に関して、互いに同じであっても異なっていてもよい。中性子反射体物質1804、1806は、例示的な高速中性子1812を反射して燃料領域1802に戻す傾向があってもよい。
【0105】
時間と共に中性子反射体集合体1800の中性子反射特性を動的に変化させるために、経路1808、1810において、中性子反射体物質1804、1806は、選択的に、追加され、除去され、および/または、交換されてもよい。1つの実施形態では、中性子反射体集合体1800の中性子反射特性を変化させるために、中性子反射体物質1804、1806の一方または両方が、それらの各経路1808、1810から完全に除去されてもよい。他の実施形態では、中性子反射体物質1804、1806は、同じ物質であってもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質1804、1806は、燃料親燃料の増殖がより大きいときは、原子炉の寿命の開始付近で、より小さい中性子反射を提供するように、選択的に、追加、除去および/または交換されてもよく、原子炉が老朽化して燃焼が燃料領域1802で優勢になり始めるときは、より大きい中性子反射を提供するように、選択的に、追加、除去および/または交換されてもよい。他の実施形態では、中性子反射体物質1804、1806は、経路1808、1810の一方または両方の内側で混合してもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質1804、1806の一方または両方は、その2つの物質同士の比率を変化させて、それゆえ集合体の中性子反射率を変化させるように、時間と共に経路1808、1810に追加されてもよい。もし、2つより多い中性子反射体物質1804、1806が経路1808、1810の内側で混合されれば、分離器部品(図示せず)が、所望であれば物質を分離するように動作してもよく、また、2つ以上の中性子反射体物質の化学的特性および物理的特性に基づく、1つ以上の適切な化学的、機械的、磁気的、電気的、タイムベース的処理を含めて、任意の適したやり方で、2つ以上の中性子反射体物質を分離するように動作してもよい。他の実施形態では、混合された中性子反射体物質1804、1806は、洗い流す動作を介して分離されてもよい。あるいは、中性子反射体物質1804、1806は、経路1808、1810の一方または両方への流れを選択的に調達するために、別個の貯留部(図示せず)にて保持されてもよい。
【0106】
1つの実施形態では、中性子反射体物質1804、1806は、燃料領域1802の上方で入力ポートおよび出力ポートを有する経路1808、1810にて循環してもよく、それによって、原子炉の下方には設備やポートは不要である。他の実施形態では、中性子反射体物質1804、1806は、燃料領域1802の上方の1つのポートと燃料領域1802の下方の他のポートとを有する経路1808、1810を通り、上方または下方の一方向のみに流れてもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質1804、1806は、経路1808、1810を通って流れるある程度淀んだまたは徐々に進行する流れを含んでもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質1804、1806は、放射方向の入力ポートおよび出力ポートを通って流れてもよい。
【0107】
他の実施形態では、経路1808、1810は、中性子反射体ではない物質を選択的に充填されてもよい。1つの例では、経路1808、1810は、中性子減速物質、中性子吸収物質、または中性子的に透光性の物質を充填されてもよい。他の実施形態では、経路1808、1810の一方または両方は、選択的に挿入可能な体積置換部材1814を含んでもよい。体積置換部材1814は、中性子減速物質、中性子吸収物質、または中性子的に透光性の物質を含んでもよい。体積置換部材1814が挿入されると、体積置換部材がその中に挿入される経路の中の反射液体1804、1806の体積が減少する。体積が減少すると、経路の中に残っている中性子反射体物質1804、1806は、変化した中性子反射特性を有し、またそれゆえ、減速部材1814が挿入される前よりも、中性子を反射しにくくなる。
【0108】
図19は、中性子反射体集合体1900によって囲まれた燃料領域1902を有する溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。中性子反射体集合体は、燃料領域1902を囲む、内側環状経路1908および外側環状経路1902を含む。内側環状経路1908および外側環状経路1910は、中性子反射体物質1904を含んでもよい。1つの実施形態では、中性子反射体物質1904は、燃料領域1902の上方で入力ポートおよび出力ポートを有する経路1908、1910にて循環してもよく、それによって、原子炉の下方には設備やポートは不要である。他の実施形態では、中性子反射体物質1904は、燃料領域1902の上方の1つのポートと燃料領域1902の下方の他のポートとを有する経路1908、1910を通り、上方または下方の一方向のみに流れてもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質1904は、経路1908、1910を通って流れるある程度淀んだまたは徐々に進行する流れを含んでもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質1904は、放射方向の入力ポートおよび出力ポートを通って流れてもよい。
【0109】
1つの実施形態では、中性子反射体物質1904は、燃料領域1902を有する原子炉の寿命のうちの開始付近の期間に、経路1908、1910を通って流れてもよい。原子炉が時間と共に燃料親燃料を増殖するにつれて、増殖した核燃料の在庫が、原子炉に燃料を供給するのに必要な量を超えうるので、中性子反射体集合体1900の有効性は減少しうる。それゆえ、時間と共に中性子反射体集合体1900の形状を変化させるために、図20に示すように、中性子反射体集合体の一部分において中性子反射体物質の一部分を交換するのが望ましいことがある。
【0110】
図20は、中性子反射体集合体2000によって囲まれた燃料領域2002を有する溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。図20では、内側環状経路2008の中性子反射体物質の内容は、燃料領域2002からの追加的な燃料塩で選択的に置き換えられている。その結果、原子炉は、より少ない中性子「漏れ」を経験する。例示的な高速中性子2012は、経路2010において中性子反射物質2006に対する反射を経験し続けうる。それゆえ、原子炉が動作するときに、より多くの核分裂性燃料物質が増殖されうるので、原子炉の寿命のうちの開始付近に、より小さい体積の燃料塩を有する原子炉心にて核分裂反応を開始することが可能である。増殖された追加の燃料は、経路2008において、ある体積の中性子反射体物質を置き換えうる。これは、組み立てられた核分裂生成物が少なくとも部分的には原因となって増殖がより挑戦的(challenging)であるときには、原子炉の動作の前払いの(upfront)コストを減少させて、寿命の後半において原子炉の増殖を高めうる。例示的な高速中性子2012が燃料領域2002からまたは内側環状経路2008から発出するかにかかわらず、中性子反射体物質2006は、燃料塩に戻るように例示的な高速中性子2012を反射する傾向があってもよい。
【0111】
図21は、中性子反射体集合体2100によって囲まれた燃料領域2102を有する溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。中性子反射体集合体は、燃料領域2102を囲む、複数の環状経路2104を含む。環状経路2104は、燃料領域2102と中性子連通する流動中性子反射体物質2106を含む複数の管2108を含んでもよい。1つの実施形態では、複数の管2108は、円筒形状の管である。流動中性子反射体物質2106は、燃料領域2102の上方で入力ポートおよび出力ポートを有する管2108にて循環してもよく、それによって、原子炉の下方には設備やポートは不要である。他の実施形態では、中性子反射体物質2106は、燃料領域2102の上方の1つのポートと燃料領域2102の下方の他のポートとを有する管2108を通り、上方または下方の一方向のみに流れてもよい。さらに他の実施形態では、中性子反射体物質2106は、管2108を通って流れるある程度淀んだまたは徐々に進行する流れを含んでもよい。管2108は、全ての管2108の半径が等しいわけではないように配置される。このように、半径値が変化する複数の管2108が、経路2104に配置されていてもよい。1つの実施形態では、半径値が変化する複数の管2108は、経路2104の横断面積の80%の横断面積を占める体積に中性子反射体物質を流してもよい。図21には多数の管2108を示しているので、可読性を改善するため、数字は全ての管には割り当てられてはいない。本開示は、経路2104に示す各管は、そこに番号が付されていないものであっても、中性子反射体物質2106を含んでいる管2108であることを示すものとして理解されるべきである。
【0112】
ここで議論されているように、いくつかの実施形態では、反射体または反射体の一部分は、動作温度、例えば300~350℃ないし800℃では、完全に固体であってもよく、または、格納壁が動作温度で固体であるような囲まれた格納器に包まれた液体反射体物質であってもよい。固体反射体物質の例は、ウラン、ウラン-タングステン、ウランまたはウラン-タングステンの炭化物および酸化マグネシウムを含む。液体冷却材として用いられることができる反射体物質の例は、鉛、鉛合金、PbBi共融物、PbO、鉄-ウラン共融物を含む鉄-ウラン合金、グラファイト、炭化タングステン、高密度合金、炭化チタン、劣化ウラン合金、タンタルタングステンおよびタングステン合金を含む。さらに他の実施形態では、燃料塩は、反射体物質として用いられてもよい。1つの実施形態では、液体冷却材は、原子炉動作温度で液体であって10グラム/cmより大きい密度を有する物質を含む。代替の実施形態では、液体冷却材は、原子炉動作温度で液体であって0.001MeVの中性子に対して、0.1バーン以上の弾性横断面を示す物質を含む。
【0113】
上で議論したように、液体核燃料の例は、PuCl、UCl、UClF、UCl、UCl、UClF、UBrまたはUBrなどの臭化物燃料塩、および、塩化トリウム(例えばThCl)燃料塩のうちの1つ以上を含む塩を含む。さらに、燃料塩は、限定されないが、NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClおよび/またはNdClなどの1つ以上の非核分裂性塩を含んでもよい。原子炉の中の燃料の最小および最大の動作温度は、原子炉の全体にわたる液相の中の塩を維持するために用いられる燃料塩に応じて変化しうることに注意されたい。最小温度は、300~350℃のように低くてもよく、最大温度は、1400℃以上のように高くてもよい。同様に、明示的に別の説明をしたところを除いて、一般に、本開示では、熱交換器は、一組の管を有して一方の端に管シートを有する、簡素な、単一通路、骨組み-管の熱交換器に関して示されている。しかしながら、他よりも一部の設計がより適切ではあっても、一般には、任意の設計の熱交換器が用いられてもよいことが理解されるべきである。例えば、管の熱交換器に加えて、板、板と骨組み、印刷された回路、および板ひれの、熱交換器も適切でありうる。
【0114】
図22は、循環する反射体物質を利用する原子炉2200の実施形態の横断面図である。図は、格納容器2218の中央から左端までの、原子炉2200の半分を示している。原子炉2200は、上部反射体2208A、下部反射体2208Bおよび内側反射体2208Cによって規定された原子炉心2204を含む。示された実施形態では、容器頭部2238の保護を追加するために、下部反射体2208Bは、横へ、および、格納容器2218の側面の上へも延びている。一次熱交換器2210は、骨組み側冷却材が流れる(点線2214で示す)ようにするように構成され、冷却材は、冷却材注入口経路2230を通って入り、加熱された冷却材は、排出口経路2236から出る。示された実施形態では、燃料(破線2206で示す)は、原子炉心2204から、上部経路を介して内側反射体2208Cを通り、および、注入口管シート2232を通って熱交換器2210の中へ流れる。管の組を通った後、今冷却された燃料は、下部管シート2231を出て、下部経路を介して内側反射体2208Cを通り、原子炉心2204の中へ戻るように流れる。燃料の流れは、モーター(この実施形態では上部反射体2208Aの上方に図示)に対してシャフトによって接続された燃料回路(この実施形態では下部管シート2231の下方に図示)にて羽根車を含むポンプ集合体2212によって駆動される。
【0115】
図22では、反射体2208A、2208B、2208Cは、液体反射体物質が原子炉心2204の周りで循環されることを可能にする流体連通にある。反射体物質の流れは、図22では、大きな灰色の矢印2234で示されている。示された実施形態では、反射体物質は、容器頭部2238の注入口を通り、格納容器2218の内側表面に沿って、原子炉2200の中へ流れ、その後、格納容器2218の底に沿って流れ、その後、原子炉心2204の底に隣接した流れのための上昇とUターンとを行う。その後、反射体物質は、内側反射体2208Cを通って上方へ流れ、その後、上部反射体2208Aの中へ流れ、そこから、反射体物質は、容器頭部2238の排出口を介して除去されることができ、または、格納容器2218の内側表面へ再循環されることができる。
【0116】
図22の循環する反射体物質は、原子炉心2204の冷却を支援するのに用いられてもよい。この構成では、加熱された反射体物質は、格納容器2218から除去されて、原子炉2200の外側の熱交換器(図示せず)を通ってもよい。1つの実施形態では、熱交換器2210を介して燃料から直接熱を除去する同じ一次冷却材ループが、反射体物質から熱を除去するのにも用いられてもよい。代替の実施形態では、一次冷却材と同じタイプの冷却材または異なるタイプの冷却材を用いうる、別個の独立した冷却システムが、反射体物質から熱を除去するのに用いられてもよい。さらに他の実施形態では、反射体物質冷却は、一次冷却ループでの流れの消失の場合に反射体物質に対して緊急冷却を行う補助冷却システムの中へ組み込まれてもよい。
【0117】
示された実施形態では、反射体物質が冷却ループの一部分であるとき、図22に示した構成の利益は、格納容器が、積極的に冷却され、また、過剰な中性子束から保護されることである。冷却された反射物質は、まず、格納容器2218の内側表面に沿って流れ、その後、原子炉心2204の近くの位置へ流れるので、冷却された反射物質の初期温度は、格納容器2218の温度を制御するのに用いられることができる。
【0118】
さらに他の実施形態では、格納容器2218の外側表面に冷却ジャケット(図示せず)が提供されることができ、この冷却ジャケットは、格納容器2218の内側表面で循環する反射物質から熱を除去する役目をする。これは、外側反射物質冷却回路に加えてまたはそれの代わりにされてもよい。
【0119】
上述したように、図22の反射体構成の全体的な反射率は、反射体を通る反射物質の流速を制御することによって制御されてもよく、同様に、減速物質または、循環する反射物質の反射率とは異なる反射率の物質を含む、棒または他の部品を挿入または除去することによって制御されてもよい。
【0120】
図23は、図22のような原子炉の半分の、同じ横断面図を用いる骨組み側燃料/管側一次冷却材熱交換器構成を有する原子炉の実施形態を示す。原子炉心2304は、上部反射体2308A、下部反射体2308Bおよび、原子炉心を一次熱交換器2310から分離する内側反射体2308Cによって囲まれている。原子炉心2304から内側反射体2308Cを通り、一次熱交換器2310の骨組みへ入る、燃料塩(破線2306で示す)の循環を可能にする、反射体2308A、2308B、2308Cを通る経路が設けられている。燃料は、管の組の周りの骨組みを通って流れ、それによって、一次冷却材に熱を伝達する。冷却された燃料は、その後、骨組みを出て、内側反射体2308Cを通り、原子炉心2304の底に戻る。骨組みには、より効率的な熱伝達のために、熱交換器の管の周りの回り道経路に燃料塩が従うようにするための導風板2312が設けられている。
【0121】
冷却材は、熱交換器2310の管側を通って流れるが、熱交換器の底に入る前に、まず、容器頭部2338の注入口を通って、下部反射体2308Bの一部分に隣接した冷却材注入口経路2330の長さ分だけ下方へ流れる。一次冷却材は、下部管シート2331を通って流れることによって熱交換器2310の管に入り、この管は、原子炉心の底と同じレベルとして示されている。下部管シート2331は、実施形態に依存して、下部反射体2308Bのレベルと同じまたはそれより下方にあってもよい。冷却材は、上部管シート2332で熱交換器の管を出て、この上部管シートは、図23では原子炉心2304および格納容器2318の上方にいくらか距離をおいて位置している。冷却材の流れは、破線2314によっても示されている。
【0122】
図23は、原子炉心2304における塩のレベルの上方にある熱交換器の骨組みの中の領域2334を示している。この領域は、貫通管を除いて固体であってもよいし、不活性ガスを充填された頭部空間であってもよい。
【0123】
燃料塩循環、一次冷却材循環またはその両方を支援するために、1つ以上のポンプ(図示せず)が設けられてもよい。例えば、原子炉心2304の最上部における加熱された燃料塩注入口経路、または、(以下により詳細に議論するように)原子炉心2304の底における冷却された燃料排出口経路、の片方または両方に、羽根車が設けられてもよい。同様に、一次冷却材の流れの制御を支援するために、冷却材注入口経路2330に羽根車が設けられてもよい。
【0124】
図23では、反射体2308A、2308B、2308Cは、液体反射体物質が原子炉心2304の周りで循環されることを可能にする流体連通にある。反射体物質の流れは、図23では、大きな灰色の矢印2334で示されている。示された実施形態では、反射体物質は、容器頭部2338の注入口を通り、その後、反射体経路における格納容器2318の側面の内側表面に沿って、原子炉2300の中へ流れる。反射体経路は、その後、格納容器2318の底に従い、その後、原子炉心2304の底に隣接した流れのためのUターンと上昇とを行う。その後、反射体物質は、内側反射体2308Cを通って上方へ流れ、上部反射体2308Aの中へ流れ、そこから、反射体物質は、示されているように、容器頭部2338の排出口を介して中央の位置で除去されることができ、または、格納容器2318の内側表面へ再循環されることができる。
【0125】
図22を参照して議論したように、図23の循環する反射体物質は、原子炉心2304の冷却を支援するのに用いられてもよい。この構成では、加熱された反射体物質は、格納容器2318から除去されて、原子炉2300の外側の熱交換器(図示せず)を通ってもよい。反射体物質が冷却ループの一部分であるとき、図23に示した構成の利益は、格納容器が、積極的に冷却され、また、過剰な中性子束から保護されることである。冷却された反射物質は、まず、格納容器2318の内側表面に沿って流れ、その後、原子炉心2304の近くの位置へ流れるので、冷却された反射物質の初期温度は、格納容器2318の温度を制御するのに用いられることができる。
【0126】
上述したように、図23の反射体構成の全体的な反射率は、反射体を通る反射物質の流速を制御することによって制御されてもよく、同様に、減速物質または、循環する反射物質の反射率とは異なる反射率の物質を含む、棒または他の部品を挿入または除去することによって制御されてもよい。
【0127】
上で議論したように、原子炉を冷却するさらに他のアプローチは、一次冷却材として液体反射体を利用することである。この設計では、一次冷却材は、反射体の機能と一次冷却機能との両方を実行する。1つの実施形態では、反射体物質は、最小動作燃料塩温度(例えば300℃ないし800℃)で液体であり、10グラム/cmより大きい密度を有する。代替の実施形態では、反射体物質は、低い中性子吸収横断面と高い散乱横断面とを有する、および、(n、2n)反応をしうる、物質であってもよい。
【0128】
図24は、反射体冷却された原子炉の実施形態を示す。この実施形態では、原子炉2400の半分が、図22および図23のような横断面で示されている。原子炉心2404は、上部反射体2408A、下部反射体2408Bによって囲まれている。灰色の矢印2414で示されているように冷却材注入口経路を通って流れる鉛などの溶融反射体物質が、一次冷却材と同様に、内側反射体2408Cとして作用する。
【0129】
物質を循環させるために、任意のタイプのシステムを用いてもよい。図24の実施形態では、例えば、図22を参照して述べたようなポンプ2413が、冷却された物質注入口経路に設けられている。このようなポンプ2413は、液体中性子反射冷却材の循環を支援または駆動するための、中性子反射冷却材ループ内の都合のよい任意の位置に羽根車があるように、位置されてもよい。
【0130】
示された実施形態では、燃料は骨組み側であり、冷却材でもある反射体物質は管側である。骨組みと管は、動作温度で固体であるなんらかの構造物質から成る。燃料塩の循環(破線2406で示す)は、原子炉心2404から、一次熱交換器2410の骨組み側の中へ入り、それを通り、原子炉心2404の底へ戻る。骨組みには、熱交換器の管の周りの回り道経路に燃料塩が従うようにするための導風板2412が設けられている。
【0131】
反射体/冷却材は、熱交換器2410の管側を通って流れるが、熱交換器の底に入る前に、まず、格納容器2418の側面と底とに隣接した冷却材注入口経路の長さ分だけ下方へ流れる。1つの実施形態では、特に、格納容器2418が冷却された場合に、格納容器の内側表面の上に、反射体物質の固体層が生じうる。これは、それが反射体/冷却材の流れを妨害しない限り、許容可能である。反射体/冷却材は、その後、下部管シート2431を通って流れることによって熱交換器の管に入り、この管は、原子炉心2404の底と同じレベルとして示されている。反射体/冷却材は、上部管シート2432で熱交換器の管を出て、この上部管シートは、図24では原子炉心2404および格納容器2418の上方にいくらか距離をおいて位置している。
【0132】
図24は、原子炉心2404における燃料塩のレベルの上方にある熱交換器の骨組みの中の領域2434を示している。この領域は、貫通管を除いて、任意の反射物質または減速物質を充填されていてもよく、例えば、反射体/冷却材と異なるまたは同じ反射体物質を充填されていてもよい。
【0133】
図24では、上部反射体2408Aと下部反射体2408Bは、循環する反射体/冷却材物質とは別個のものとして示されている。代替の実施形態では、上部反射体2408A、下部反射体2408B、および内側反射体2408Cは、図22および図23に示すように、全て、流体連通していてもよい。例えば、反射体物質は、示されているように、格納容器2418の側面の内側表面に沿って原子炉2400へ道順をとっているが、その後、その後、図23に示されているように、格納容器2418の底に沿って[02]り、原子炉心2404の底に隣接した流れのための上昇とUターンとを行う。同じく図23に示されているように、反射体物質は、そこから反射体物質が中央の位置で除去されることができる上部反射体2408Aへ道順をとってもよい。
【0134】
燃料塩循環または反射体/冷却材循環を支援するために、ポンプ(図示せず)、または少なくともポンプの羽根車が設けられてもよい。例えば、原子炉心2404の最上部における一次熱交換器の加熱された燃料塩注入口、または、(以下により詳細に議論するように)原子炉心2404の底における一次熱交換器の骨組みの冷却された燃料排出口、の片方または両方に、羽根車が設けられてもよい。
【0135】
さらに他の実施形態では、反射冷却材は、上部および下部の軸方向の反射体を通って流れることで、一次冷却ループから離れた循環ループにてこれらの反射体で生成された任意の熱を遠くへ移流させてもよい。
【0136】
反射体の設計のさらに他の実施形態では、メインの炉心を囲む「増殖および燃焼ブランケット」が設けられてもよい。この実施形態では、唯一の反射体として、または、内側(炉心と一次反射体との間)または一次反射体の外側に位置する二次反射体として、ウランを含む反射体「ブランケット」が設けられてもよい。反射体のウランは、液体または固体とすることができ、また、金属ウラン、酸化ウラン、ウラン塩または他の任意のウラン化合物とすることができる。反射体のウランは、中性子を反射するが、それに加えて、時間と共にプルトニウムを増殖し、それによって、燃料の供給源になる。
【0137】
添付の請求項にかかわらず、本開示は、以下の条項によっても規定される。
1.
格納容器および容器頭部と、
上記格納容器および容器頭部の中に囲まれた原子炉心であって、上部領域と下部領域とを有する原子炉心と、
上記格納容器および容器頭部の中に囲まれた熱交換器であって、上記原子炉心の液体燃料から液体中性子反射冷却材へ熱を伝達するように構成されている熱交換器とを含むことを特徴とする溶融燃料原子炉。
2.
上記中性子反射冷却材は、鉛、鉛合金、鉛-ビスマス共融物、酸化鉛、鉄-ウラン合金、鉄-ウラン共融物、グラファイト、炭化タングステン、高密度合金、炭化チタン、劣化ウラン合金、タンタルタングステンおよびタングステン合金から選択されることを特徴とする条項1に記載の溶融燃料原子炉。
3.
上記中性子反射冷却材は、0.001MeVの中性子に対して、0.1バーン以上の弾性横断面を示すことを特徴とする条項1に記載の溶融燃料原子炉。
4.
上記中性子反射冷却材は、原子炉動作温度で液体であって10グラム/cmより大きい密度を有することを特徴とする条項1に記載の溶融燃料原子炉。
5.
上記熱交換器は、骨組み-管熱交換器であることを特徴とする条項1に記載の溶融燃料原子炉。
6.
上記液体燃料は、上記熱交換器の骨組みを通り、上記液体中性子反射冷却材は、上記熱交換器の管を通ることを特徴とする条項5に記載の溶融燃料原子炉。
7.
上記液体燃料は、上記熱交換器の管を通り、上記液体中性子反射冷却材は、上記熱交換器の骨組みを通ることを特徴とする条項5に記載の溶融燃料原子炉。
8.
上記熱交換器は、上部経路によって、上記原子炉心の上部領域に流体接続され、下部経路によって、上記原子炉心の下部領域に流体接続され、上記原子炉心、熱交換器、上部経路および下部経路が、燃料ループを形成していることを特徴とする条項1ないし7のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
9.
冷却された液体中性子反射冷却材を受領する、上記熱交換器に流体接続された上記容器頭部の液体反射体冷却材注入口と、
加熱された液体中性子反射冷却材を排出する、上記熱交換器に流体接続された上記容器頭部の液体反射体冷却材排出口と、
を含むことを特徴とする条項1ないし7のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
10.
上記容器頭部の上記液体反射体冷却材注入口と上記熱交換器との間の上記格納容器の第1部位の内側にあって上記第1部位と接触する注入口冷却材運搬経路を含み、上記注入口冷却材運搬経路は、冷却された液体中性子反射冷却材を上記液体反射体冷却材注入口から受領し、それによって、上記格納容器の上記第1部位を冷却することを特徴とする条項1ないし7のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
11.
上記格納容器の上記第1部位は、少なくとも、上記格納容器の側壁のうちのいくらかを含むことを特徴とする条項10に記載の溶融燃料原子炉。
12.
上記格納容器の上記第1部位は、少なくとも、上記格納容器の底壁のうちのいくらかを含むことを特徴とする条項10に記載の溶融燃料原子炉。
13.
上記格納容器の上記第1部位は、少なくとも、上記格納容器の側壁のうちのいくらかおよび上記格納容器の底壁のうちのいくらかを含むことを特徴とする条項10に記載の溶融燃料原子炉。
14.
燃料塩は、以下の核分裂性塩:UF、UF、UF、ThCl、UBr、UBr、PuCl、UCl、UCl、UClFまたはUClのうちの1つ以上を含むことを特徴とする条項1ないし7のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
15.
燃料塩は、以下の非核分裂性塩:NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClまたはNdClのうちの1つ以上を含むことを特徴とする条項1ないし7のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
16.
格納容器および容器頭部と、
上記格納容器および容器頭部の中に囲まれた原子炉心であって、上部領域と下部領域とを有する原子炉心と、
上記格納容器および容器頭部の中に囲まれた第1熱交換器であって、上記原子炉心の液体燃料から一次冷却材へ熱を伝達するように構成されている第1熱交換器と、
少なくともいくらかの中性子反射液体を含む中性子反射体と、
上記中性子反射体の上記少なくともいくらかの中性子反射冷却材を循環させる循環システムとを含むことを特徴とする溶融燃料原子炉。
17.
上記中性子反射液体は、鉛、鉛合金、鉛-ビスマス共融物、酸化鉛、鉄-ウラン合金、鉄-ウラン共融物、グラファイト、炭化タングステン、高密度合金、炭化チタン、劣化ウラン合金、タンタルタングステンおよびタングステン合金から選択されることを特徴とする条項16に記載の溶融燃料原子炉。
18.
上記中性子反射液体は、0.001MeVの中性子に対して、0.1バーン以上の弾性断面を示すことを特徴とする条項16に記載の溶融燃料原子炉。
19.
上記中性子反射液体は、原子炉動作温度で液体であって10グラム/cmより大きい密度を有することを特徴とする条項16に記載の溶融燃料原子炉。
20.
加熱された中性子反射液体から熱を除去し、冷却された中性子反射液体を排出する、第2熱交換器を含むことを特徴とする条項16に記載の溶融燃料原子炉。
21.
上記第2熱交換器は、上記原子炉容器の外側にあることを特徴とする条項20に記載の溶融燃料原子炉。
22.
冷却された液体中性子反射液体を受領する、上記熱交換器に流体接続された上記容器頭部の液体反射体冷却材注入口と、
加熱された液体中性子反射液体を排出する、上記熱交換器に流体接続された上記容器頭部の液体反射体冷却材排出口と、
を含むことを特徴とする条項16ないし21のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
23.
上記液体反射体冷却材注入口と上記液体反射体冷却材排出口との間の上記格納容器の第1部位の内側にあって上記第1部位と接触する注入口反射体運搬経路を含み、上記注入口反射体運搬経路は、冷却された液体中性子反射液体を上記液体反射体冷却材注入口から受領し、それによって、上記格納容器の上記第1部位を冷却することを特徴とする条項16ないし21のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
24.
上記格納容器の上記第1部位は、少なくとも、上記格納容器の側壁のうちのいくらかを含むことを特徴とする条項23に記載の溶融燃料原子炉。
25.
上記格納容器の上記第1部位は、少なくとも、上記格納容器の底壁のうちのいくらかを含むことを特徴とする条項23に記載の溶融燃料原子炉。
26.
上記格納容器の上記第1部位は、少なくとも、上記格納容器の側壁のうちのいくらかおよび上記格納容器の底壁のうちのいくらかを含むことを特徴とする条項23に記載の溶融燃料原子炉。
27.
燃料塩は、以下の核分裂性塩:UF、UF、UF、ThCl、UBr、UBr、PuCl、UCl、UCl、UClFまたはUClのうちの1つ以上を含むことを特徴とする条項16ないし21のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
28.
燃料塩は、以下の非核分裂性塩:NaCl、MgCl、CaCl、BaCl、KCl、SrCl、VCl、CrCl、TiCl、ZrCl、ThCl、AcCl、NpCl、AmCl、LaCl、CeCl、PrClまたはNdClのうちの1つ以上を含むことを特徴とする条項16ないし21のいずれか1項に記載の溶融燃料原子炉。
【0138】
ここに記載したシステムおよび方法は、その中の特有のものと同様に、述べられた目的と利点を達成するために十分適合している。当業者は、この明細書の中の方法およびシステムが、上で説明した実施形態および実施例によって限定されないような多くのやり方で実施されうることを理解するだろう。これに関し、ここに記載した種々の実施形態の任意の個数の特徴は、ただ単独の実施形態に組み込まれてもよく、また、ここに記載した特徴の全てのものより少ないまたはそれより多いものを有する代替の実施形態が可能である。
【0139】
種々の実施形態がこの開示の目的のために記載されたが、本開示によって考慮される範囲の中に十分ある種々の変化や修正が行われてもよい。当業者に自身を迅速に示唆する、また、本開示の精神に包含される他の多くの変化が行われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0140】
図1】溶融燃料塩高速原子炉システムでの例示的な中性子反射体集合体の概略図である。
図2】他の中性子反射体集合体構成に対する1つ以上の例示的な動的中性子反射体集合体の高速スペクトル溶融塩原子炉における反射率と時間のプロットである。
図3】溶融核燃料塩高速原子炉を囲む例示的なセグメント化された中性子反射体集合体の概略図である。
図4】オーバーフロータンクを備えた中性子反射体集合体を有する例示的な溶融塩燃料原子炉を示す。
図5】複数のスリーブを有する例示的な中性子反射体集合体のトップダウンの概略図である。
図6】中性子修正部材を含む複数のスリーブを有する例示的な中性子反射体集合体のトップダウンの概略図である。
図7】熱交換器と熱連通する中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
図8】中性子修正部材を含む熱交換器と熱連通する中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
図9】中性子吸収部材および体積置換部材を含む熱交換器と熱連通する中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
図10】管および骨組みの熱交換器を通って溶融核燃料塩と熱連通する中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心の概略の側面図である。
図11】管および骨組みの熱交換器を通って溶融核燃料塩と熱連通する中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
図12】溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの例示的な方法のフローチャートである。
図13】溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの他の例示的な方法のフローチャートである。
図14】溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの他の例示的な方法のフローチャートである。
図15】溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの他の例示的な方法のフローチャートである。
図16】溶融核燃料塩高速原子炉における動的スペクトルシフトの他の例示的な方法のフローチャートである。
図17】複数のスリーブおよび静的中性子反射体副集合体を有する例示的な中性子反射体集合体のトップダウンの概略図である。
図18】内側環状経路と外側環状経路とを含んでさらに体積置換部材を含む中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
図19】内側環状経路と外側環状経路とを含む中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
図20】内側環状経路と外側環状経路とを含む中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図であり、内側環状経路は、ある体積の溶融燃料塩を含んでいる。
図21】半径値が変化する管を含んでいる環状経路を含む中性子反射体集合体によって囲まれた例示的な溶融核燃料塩高速原子炉心のトップダウンの概略図である。
図22】循環する反射体物質を利用する原子炉2200の実施形態の横断面図である。
図23図22の原子炉の半分の、同じ横断面図を用いる骨組み側燃料/管側一次冷却材熱交換器構成を有する原子炉の実施形態を示す。
図24】液体中性子反射体で冷却された原子炉の実施形態を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24