(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】止血性フロアブル剤
(51)【国際特許分類】
A61L 26/00 20060101AFI20220314BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220314BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220314BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220314BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
A61L26/00
A61K9/08
A61K47/42
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/02
A61K9/06
(21)【出願番号】P 2019507199
(86)(22)【出願日】2017-08-11
(86)【国際出願番号】 EP2017070428
(87)【国際公開番号】W WO2018029340
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-08
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520308835
【氏名又は名称】ビオムプ、フランス、エスアエス
【氏名又は名称原語表記】BIOM’UP FRANCE SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム、スポットニッツ
(72)【発明者】
【氏名】バレリー、サンティ
(72)【発明者】
【氏名】ドリ、ムーラ、カンポ
(72)【発明者】
【氏名】アレクシア、ド、ガスペリ
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-512734(JP,A)
【文献】特表2007-519450(JP,A)
【文献】特表2014-512403(JP,A)
【文献】特開2004-002271(JP,A)
【文献】特開平02-218616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含んでなる止血性フロアブル剤を調製するためのキット:
・下記を含んでなる組成物を有する止血性粉末:
-線維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量がコラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%である、フィブリル状の非架橋コラーゲン、
-少なくとも1種の単糖類、および
-少なくとも1種のグリコサミノグリカン、
・前記止血性フロアブル剤を形成するために前記止血性粉末と混合される生理食塩水。
【請求項2】
前記止血性粉末の組成物において、
・前記コラーゲンが前記止血性粉末の組成物の総重量に対して80重量%~90重量%の範囲の量で存在し、
・前記少なくとも1種の単糖類が前記止血性粉末の組成物の総重量に対して1重量%~12.5重量%の範囲の量で存在し、かつ
・前記少なくとも1種のグリコサミノグリカンが前記止血性粉末の組成物の総重量に対して2重量%~25重量%の範囲の量で存在する、
請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記止血性粉末の組成物において、
・前記コラーゲンが前記止血性粉末の組成物の総重量に対して80重量%~90重量%の範囲の量で存在し、
・前記少なくとも1種の単糖類が前記止血性粉末の組成物の総重量に対して2.5重量%~7.5重量%の範囲の量で存在し、かつ
・前記少なくとも1種のグリコサミノグリカンが前記止血性粉末の組成物の総重量に対して5重量%~12.5重量%の範囲の量で存在する、
請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記止血性粉末の組成物において、
・前記コラーゲンが前記止血性粉末の組成物の総重量に対して84重量%~88重量%の範囲の量で存在し、
・前記少なくとも1種の単糖類が前記止血性粉末の組成物の総重量に対して4重量%~6重量%の範囲の量で存在し、かつ
・前記少なくとも1種のグリコサミノグリカンが前記止血性粉末の組成物の総重量に対して8重量%~10重量%の範囲の量で存在する、
請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記止血性粉末の組成物において、前記少なくとも1種の単糖類がグルコースであり、かつ前記少なくとも1種のグリコサミノグリカンがコンドロイチン硫酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
前記止血性粉末の組成物において、前記少なくとも1種のグリコサミノグリカンが、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸およびそれらの混合物から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のキット。
【請求項7】
前記止血性粉末の組成物が、少なくとも1種の凝固因子を、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して0.1重量%未満の量でさらに含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
前記凝固因子がトロンビンである、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記生理食塩水が蒸留水および塩化ナトリウムを含んでなり、ここで、前記塩化ナトリウムは、前記生理食塩水の総重量に対して0.5重量%~1.5重量%の範囲の量
で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
前記生理食塩水が蒸留水および塩化ナトリウムを含んでなり、ここで、前記塩化ナトリウムは、前記生理食塩水の総重量に対して0.9重量%の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項11】
前記生理食塩水が純粋である、請求項1~8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項12】
1g~2gの止血性粉末と、4mL~10mLの生理食塩水とを含んでなる、請求項1~
11のいずれか一項に記載のキット。
【請求項13】
前記生理食塩水の質量が前記止血性粉末の質量の2~10
倍である、請求項1~
11のいずれか一項に記載のキット。
【請求項14】
前記生理食塩水の質量が前記止血性粉末の質量の4~5倍である、請求項1~11のいずれか一項に記載のキット。
【請求項15】
前記止血性粉末が、ベローズで形成された容器部と前記容器部上に配置されたノズル部とを有するディスペンサーに封入され、ここで、前記ノズル部は、前記止血性フロアブル剤を形成するために前記止血性粉末と混合される前記生理食塩水を前記容器部に充填するための開口部を有する、請求項1~
14のいずれか一項に記載のキット。
【請求項16】
前記容器部が、前記止血性フロアブル剤を形成するために、前記生理食塩水で前記止血性粉末の水和を促進するように設計された形状を有する、請求項
15に記載のキット。
【請求項17】
前記ディスペンサーが、前記容器部へ出入する任意の開口部を閉じるために、前記ノズル部に取り外し可能に結合されるように設計されたキャップをさらに含んでなる、請求項
15または
16に記載のキット。
【請求項18】
前記止血性粉末と前記生理食塩水とが混合されたときに、前記止血性フロアブル剤が20Pa.s~10000Pa.sの粘度を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載のキット。
【請求項19】
下記の工程を含んでなる、請求項1~
18のいずれか一項に記載のキットを用いて止血性フロアブル剤を調製するための方法:
a.容器中に前記止血性粉末を準備する工程、
b.前記止血性粉末の水和を促進して前記止血性フロアブル剤を形成するために、前記止血性粉末を封入する前記容器中に一定量の前記生理食塩水を添加し、前記容器を閉じて、振盪する工程。
【請求項20】
後続の工程c)を含んでなり、この工程において、前記止血性フロアブル剤を封入する前記容器は一定の静止時間の間放置される、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
工程b)において、前記容器中に添加される生理食塩水の量が前記キットの生理食塩水の量の50%~100%である、請求項
19または
20に記載の方法。
【請求項22】
工程b)において、前記容器中に添加される生理食塩水の量が5mL~10mLである、請求項
19~
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程b)において、前記容器中に添加される生理食塩水の量が7mLである、請求項
19~
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程b)において、前記容器が10秒~30秒振盪される、請求項
19~
23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
工程b)において、前記容器が20秒の間振盪される、請求項
19~
23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
工程c)において、前記静止時間が少なくとも30
秒である、請求項
20~
25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
工程c)において、前記静止時間が少なくとも60秒である、請求項
20~
25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
工程c)において、前記静止時間が少なくとも90秒である、請求項
20~
25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
工程c)において、前記静止時間が30秒~120秒である、請求項
20~
25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
・工程a)において、1.65mgの量の止血性粉末が前記容器中に準備され、
・工程b)において、前記容器中に添加される生理食塩水の量が7mLであり、かつ前記容器が20秒間振盪される、
請求項
19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血組成物の分野、止血剤としての特定の化合物または組成物の使用、止血組成物を調製するための方法ならびに止血方法に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷は、外的または内的にかかわらず、外傷性または外科的にかかわらず、しばしば出血を引き起こす。このような出血は、程度の差はあれ重大な場合がある。出血は、「止血」と呼ばれる一連の生理学的現象を介して防止および停止される。止血は、血管の破損の修復を助け、一般的には、血管および組織の完全性の維持を確保する。
【0003】
血管が損傷を受けると、様々な段階を含んでなる自然機構が誘発されて血液の流れが止まる。第1に、出血を遅らせる血管収縮が15~60秒間続き、複雑な反応カスケードを誘導する。フィブリンからなる線維状メッシュが血小板血栓の周りに形成され、最終血栓が形成され、この血栓は、フィブリンを安定化する第XIII因子によって早期溶解から保護される。最後に、フィブリンメッシュはよりきつく縮まり(収縮)、創傷の縁部が集まり、創傷は収縮する。その後、安定な架橋フィブリン内で、線維芽細胞が増殖し、組織化して血栓内の結合マトリックスとなり、最後に創傷を閉鎖することができる。
【0004】
循環血液中には固体のフィブリンは存在せず、もしそれが存在したならば、それはすぐに重要な血管を閉塞する。しかしながら、フィブリンの前駆体であるフィブリノーゲンは存在する。その合成が凝固因子によって活性化されるトロンビンの作用下で、フィブリノーゲンは不溶性フィブリンに変換される。
【0005】
最後に、創傷の治癒が成功した数日後または数週間後に、フィブリンクラスターは線維素溶解中に破壊される。
【0006】
この生化学的現象にもかかわらず、特には、大きすぎる創傷の場合または広汎性出血の場合には、「人為的に」止血を行うことがしばしば必要である。
【0007】
一次治療として使用される、圧迫、結紮および電気凝固などの、止血を得る助けとなる「機械的」解決策がある。しかしながら、これらの解決策は、少しずつ漏れる毛管出血、脾臓または肝臓などの過血管化器官の出血、例えば骨、および/または脳神経外科手術中の、広汎性出血につながる出血などの一定数の症例ではほとんどまたはまったく効果はない。
【0008】
また、特には、特定の現在の止血製品で実施されている「化学的」解決策も存在する。前記化学的解決策の成分は、一般的に、「吸収性」または「活性」タイプのいずれかである。
【0009】
吸収性止血製品、とりわけ、再生酸化セルロースまたはアルギナートなどの多糖類を含んでなるものは、主に、機械的作用および単純な吸収によって機能する。それらは、しばしば、過剰膨潤の問題を呈する。前記膨潤が、液体、特には血液の急速な吸収をもたらす場合、それはまた、「閉鎖」環境で、例えば硬膜と接触してまたは泌尿器科において使用される際に望ましくない圧力をもたらす可能性がある。
【0010】
加えて、特定の製品、とりわけ、セルロースまたはアルギナートなどの植物性多糖類を含んでなるものは、それらの再吸収中にさらに炎症反応を引き起こす可能性があり、かつ/または宿主によって認識されない分解産物をもたらす可能性がある。この結果、それらが体内に残留せず、それによって、これらの有害作用を引き起こさないようにそのような製品を除去することが望ましいということになる。
【0011】
トロンビンまたはフィブリンを含有する製品などの活性止血製品は、多くの場合、血液由来製品である。そのような製品は、特には、古典的に適用される処理によって疾病媒介生物が不活性化されない場合には、アレルギーおよび疾病伝播の危険性を伴う。加えて、前記下流の処置は、一般的に、複雑でありかつ/または費用がかかる。最後に、一般的には、それらの製品は使用前に調製を必要とする場合があり、これは急患の観点から制約となり、実際に厄介なことになり得る。
【0012】
さらに、フィブリンおよびトロンビンの両方を含有する製品は、それらの作用機序の基礎をその製品を含んでなる2つの血液由来製品間の相互作用に置いている。反応は血液との相互作用なしに時として起こることがあり、その場合、それらの製品は浮遊すると言われている。言い換えれば、製品は流れ続ける血液によって押しのけられ、場合によっては、製品を希釈するかまたは凝固させて血液の上にゲルを形成し、これは血液の流れが遮断されない状態である。従って、止血は達成され得ない。
【0013】
止血性粉末、その製造方法および使用方法は、2012年11月1日にWO2012/146655として公開された国際出願に開示されており、その内容は全体として引用することにより本出願の開示の一部とされる。
【0014】
そのような止血性粉末は、満足のいく吸収能力、良好な止血能を有し、ほとんど副作用がなく、創傷の縁部に固着する良好な能力を有し、それが使用される場所で血流へ満足のいく浸透を示し、かつ/または膨潤が限られる。
【0015】
これらの良好な止血特性に加え、そのような止血性粉末は、出血領域にそれを噴霧することを可能にする極めて良好な流動性を有するという利点を示す。これは、開腹術、腹腔鏡検査、コエリオスコピー(coelioscopy)、およびロボット手術手技などのほとんどの外科的処置で投与することができる。
【0016】
止血性粉末は、外科医による特別な調製なしに出血領域に直接適用することができ、これがもう1つの利点である。
【0017】
極めて限られた出血領域への止血性粉末の塗布を容易にするために、特殊な粉末ディスペンサーを使用する必要がある場合がある。
【0018】
本発明の目的は、使用が簡単で、特に、複雑な調製工程を必要としない止血製品であって、さらに、関与する出血領域全体をカバーするために特定の領域に容易に適用することができる止血製品を提案することである。
【0019】
本発明の別の目的は、良好な止血効力と、既存の止血製品に比べて向上した効力とを有する止血製品を提案することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、止血製品の取り扱いを最小限に抑えて、大がかりな調製なく即使用することができる止血製品を調製するためのキットであって、例えば、いくつかの外科的処置に使用することができるキットを提案することである。
【発明の概要】
【0021】
この目的のために、本発明者らは、添付の特許請求の範囲に定義されるような止血性フロアブル剤(flowable)を調製するためのキットおよび方法を提案する。
【0022】
より詳細には、本発明者らは、下記を含んでなる止血性フロアブル剤を調製するためのキットを提案する:
・下記を含んでなる組成物を有する止血性粉末:
-線維状コラーゲンおよび/またはフィブリル状コラーゲンの含量がコラーゲンの総重量に対して少なくとも70重量%である、フィブリル状のコラーゲン、
-少なくとも1種の単糖類、および
-少なくとも1種のグリコサミノグリカン、
・前記止血性フロアブル剤を形成するために前記止血性粉末と混合される生理食塩水。
【0023】
好ましくは、前記粉末止血組成物に使用されるコラーゲンは架橋されていない。前記組成物において非架橋コラーゲンを使用することは、特には、製造工程を単純化することを目的とする。
【0024】
別の好ましい側面では、前記生理食塩水は純粋であり、蒸留水および塩化ナトリウムだけの混合物からなり、これは溶液中に添加剤成分が存在しないことを意味する。
【0025】
そのようなキットの好ましいが限定されない側面は、単独でまたは組み合わせて、下記の通りである:
・前記止血性粉末の組成物において、
-前記コラーゲンは、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して80重量%~90重量%の範囲の量で存在し、
-前記少なくとも1種の単糖類は、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して1重量%~12.5重量%の範囲の量で存在し、かつ
-前記少なくとも1種のグリコサミノグリカンは、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して2重量%~25重量%の範囲の量で存在する。
・前記止血性粉末の組成物において、
-前記コラーゲンは、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して80重量%~90重量%の範囲の量で存在し、
-前記少なくとも1種の単糖類は、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して2.5重量%~7.5重量%の範囲の量で存在し、かつ
-前記少なくとも1種のグリコサミノグリカンは、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して5重量%~12.5重量%の範囲の量で存在する。
・前記止血性粉末の組成物において、
-前記コラーゲンは、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して84重量%~88重量%の範囲の量で存在し、
-前記少なくとも1種の単糖類は、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して4重量%~6重量%の範囲の量で存在し、かつ
-前記少なくとも1種のグリコサミノグリカンは、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して8重量%~10重量%の範囲の量で存在する。
・前記止血性粉末の組成物において、前記少なくとも1種の単糖類はグルコースであり、かつ前記少なくとも1種のグリコサミノグリカンはコンドロイチン硫酸である。
・前記止血性粉末の組成物において、前記少なくとも1種のグリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸およびそれらの混合物から選択される。
・前記止血性粉末の組成物は、少なくとも1種の凝固因子を、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して0.1重量%未満の量でさらに含んでなる。
・前記凝固因子はトロンビンである。
・前記生理食塩水は、蒸留水および塩化ナトリウムを含んでなり、またはからなり、ここで、前記塩化ナトリウムは、前記生理食塩水の総重量に対して0.5重量%~1.5重量%の範囲の量で、最も好ましくは、前記生理食塩水の総重量に対して0.9重量%の量で存在する。
・前記キットは、1g~2gの前記止血性粉末と、4mL~10mLの生理食塩水とを含んでなる。
・前記生理食塩水の質量は、前記止血性粉末の質量の2~10倍であり、好ましくは、前記止血性粉末の質量の4~5倍である。
・前記止血性粉末は、ベローズで形成された容器部と、前記容器部上に配置されたノズル部とを有するディスペンサーに封入され、ここで、前記ノズル部は、前記止血性フロアブル剤を形成するために前記止血性粉末と混合される前記生理食塩水を前記容器部に充填するための開口部を有する。
・前記容器部は、前記止血性フロアブル剤を形成するために前記生理食塩水での前記止血性粉末の水和を促進するように設計された形状を有する。
・前記ディスペンサーは、前記容器部へ出入する任意の開口部を閉じるために、前記ノズル部に取り外し可能に結合されるように設計されたキャップをさらに含んでなる。
【0026】
本発明者らはまた、上記キットを用いて止血性フロアブル剤を調製するための方法も提案し、その方法は下記の工程を含んでなる:
a.容器中に前記止血性粉末を準備する工程、
b.前記止血性粉末の水和を促進して前記止血性フロアブル剤を形成するために、前記止血性粉末を封入する前記容器中にある量の前記生理食塩水を添加し、前記容器を閉じ、振盪する工程。
【0027】
そのような方法の好ましいが限定されない側面は、単独または組み合わせて、下記の通りである:
・前記方法は、後続の工程c)を含んでなり、この工程において、前記止血性フロアブル剤を封入する前記容器は一定の静止時間放置される。
・工程b)において、前記容器中に添加される生理食塩水の量は、前記キットの生理食塩水の量の50%~100%である。
・工程b)において、前記容器中に添加される生理食塩水の量は5mL~10mLであり、好ましくは、7mLである。
・工程b)において、前記容器は10秒~30秒間、好ましくは20秒間振盪される。
・工程c)において、前記静止時間は少なくとも30秒、好ましくは少なくとも60秒、さらに好ましくは少なくとも90秒である。
・工程c)において、前記静止時間は30秒~120秒、好ましくは90秒である。
【0028】
本発明の他の特徴および利点は、下記の説明から明らかになるであろう。これは、単に例示目的で示されているに過ぎず、何ら限定するものではなく添付の図面を参照して読み取るべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本明細書で提供される止血性フロアブル剤を適用するために使用されるディスペンサーの図である。
【
図2】
図2は、キャップが開いた状態の
図1のディスペンサーの図である。
【
図3】
図3は、
図1のディスペンサーのキャップの概略側面図である。
【
図4】
図4は、
図1のディスペンサーのノズル部の概略側面図である。
【
図5】
図5は、
図1のディスペンサーの容器部の断面図である。
【
図6】
図6は、実施例10に記載の電気泳動の結果の例である。
【0030】
発明の詳細な説明
下記の説明では、そうでないことを述べない限り、重量パーセンテージは、止血性粉末の組成物の総乾燥重量に対して示される。
【0031】
本発明の文脈において、「止血性粉末の組成物の総乾燥重量」とは、溶媒、特には水を含まない止血性粉末の組成物の総重量、従って、無水製品に対する総重量を指す。
【0032】
加えて、成分の重量および結果として得られるパーセンテージは、これらの成分の無水重量、言い換えれば、それが含有し得る水を含まない成分の重量に相当し得る。これはまた、得られるパーセンテージにも適用できる。
【0033】
前記止血性粉末の組成物は、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して70重量%以上、特には75重量%以上、特には77重量%以上、実際には80重量%以上のコラーゲン含量を含んでなり得る。
【0034】
加えて、前記止血性粉末の組成物は、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して99重量%下記、特には96重量%下記、特には93重量%下記、実際には90重量%下記のコラーゲン含量を含んでなり得る。
【0035】
従って、前記止血性粉末の組成物は、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して70重量%~99重量%の範囲の、特には75重量%~96重量%の範囲の、特には77重量%~93重量%の範囲の、実際には80重量%~90重量%の範囲のコラーゲン含量を含んでなり得る。好ましくは、コラーゲンの含量は、前記止血性粉末の組成物の総重量のおよそ86重量%である。
【0036】
コラーゲンは、哺乳動物の主な構造タンパク質である。コラーゲンは、長さおよそ280~300nmおよび直径およそ1.5nmを有するトロポコラーゲン(TC)分子からなる。
【0037】
用語「線維状コラーゲン」とは、フィブリルの集合体に相当する、線維の形態のコラーゲンを指す。線維は、一般的には、1μm~10μmの範囲の直径を有する。用語「フィブリル状コラーゲン」とは、フィブリルの形態のコラーゲンを指す。より正確には、フィブリルは、一般的には、10nm~1μmの範囲の直径を有する。従って、フィブリルは、トロポコラーゲン分子がジグザグに配置された列から形成され、これらのフィブリルは、コラーゲン線維を形成するように配置され得る。線維状および/またはフィブリル状コラーゲンは、一般的には可溶性ではないのに対し、非フィブリル状コラーゲンは可溶性が高い。
【0038】
線維状コラーゲンおよびフィブリル状コラーゲンの定義は、特には、Markus BuehlerによってPNASの「Nature designs tough collagen:explaining the nanostructure of collagen fibrils」(2006年8月15日、第103巻、第33号、第12285~12290頁)に示されたものであり得る。
【0039】
28種を超える異なるコラーゲンが見出されており、フィブリル状のコラーゲン、非フィブリル状のコラーゲン、およびFACITコラーゲンの、3つの主なカテゴリーに分類されている。
【0040】
フィブリル状のコラーゲンは、主としてフィブリル状および/または線維状コラーゲンを含んでなり、非フィブリル状コラーゲンをほとんど含まないコラーゲンである(例えばI型のコラーゲン)。同様に、非フィブリル状のコラーゲンは、主として非フィブリル状コラーゲンを含んでなるコラーゲンである。非フィブリル状のいくつかのコラーゲンは、非フィブリル状コラーゲンのみで構成され得る(例えばIVまたはV型のコラーゲン)。
【0041】
コラーゲンの工業的抽出および精製は、一般的には、1)混在タンパク質の総てまたは大部分を除去するため、および2)製品の最終用途に応じて要求される構造化レベルを得るために、初期組織を破壊することにある。コラーゲン抽出は、一般的には、フィブリル状ではない単分子可溶性コラーゲンの可溶化を可能にする酸性または塩基性条件で行われる。最終的なコラーゲンは、フィブリル状/線維状コラーゲンと非フィブリル状コラーゲンとの混合物を自然に含む。フィブリル状/線維状コラーゲンと非フィブリル状コラーゲンの間の割合は、抽出のために選択された組織および抽出工程によって異なる。
【0042】
最終製品は、フィブリル状コラーゲン単独と非フィブリル状コラーゲン単独との人為的混合によって得られたコラーゲンとは異なる。「Extraction of collagen from connective tissue by neutral salt solutions」と題する論文(Jerome Gross、John H.HighbergerおよびFrancis O.Schmittによる、1955年1月15日発行の米国科学アカデミー(the NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES)会報第41巻、第I号)において、従前に記載されているように、それらの2種のコラーゲンの混合物をもたらす特定の抽出工程後に得られたフィブリル状コラーゲンと非フィブリル状コラーゲンとの間で違いが示されている。
【0043】
本止血性粉末において、コラーゲンは、フィブリル状のものであり、線維状および/またはフィブリル状コラーゲンを、コラーゲンの総重量に対して少なくとも60重量%、特には少なくとも70重量%、特には少なくとも75重量%、実際には少なくとも80重量%の量で含んでなる。
【0044】
より特に、コラーゲンは、本止血性粉末の組成物において、コラーゲンの総重量に対して少なくとも85重量%、特には少なくとも90重量%、特には少なくとも95重量%、実際には少なくとも98重量%の線維状および/またはフィブリル状コラーゲンを含んでなる。
【0045】
好ましくは、前記組成物は、前記組成物中のコラーゲンの総重量に対して85重量%~95重量%、最も好ましくは85重量%~90重量%の範囲の線維状および/またはフィブリル状コラーゲンの含量を含んでなる。
【0046】
これは、好ましい実施形態において、本止血性粉末の組成物は、その組成物中に、コラーゲンの総重量に対して5重量%~15重量%、最も好ましくは10重量%~15重量%の範囲の非フィブリル状コラーゲンの含量を含んでなるということを意味する。
【0047】
特には、粉末止血調調製物としての使用のために、非フィブリル状コラーゲンに対してそのような割合の線維状および/またはフィブリル状コラーゲンを含む組成物を有することが極めて有利である。実際には、線維状および/またはフィブリル状コラーゲンは、止血を行うのに十分な量で存在すべきであり、非フィブリル状コラーゲンもまた、製品の凝集に十分な量で存在すべきであるが、過度の膨潤を避けるためには多すぎる量であってはならない。
【0048】
コラーゲンは、I型コラーゲンまたはI型およびIII型コラーゲンから選択することができる。コラーゲンは、様々な供給源組織、特には皮膚および/または腱から、総ての種から、より特にブタ、ウシまたはウマ種から抽出することができる。
【0049】
コラーゲンは、主として、皮膚および/または腱から抽出されたブタ起源の線維状コラーゲンから製造することができる。腱から抽出されたコラーゲンの場合、抽出は、国際出願WO2010/125086に記載されているようなものであり得る。
【0050】
前述のコラーゲン、特には線維状および/またはフィブリル状コラーゲンは、酸性または塩基性抽出によってもたらされ得る。特定の実施形態によれば、前記コラーゲンは、塩基性抽出から得られる。特定の実施形態によれば、コラーゲンは、特許出願FR2944706に記載されているようなものであり得る。
【0051】
好ましくは、コラーゲンは、塩基性抽出から得られ、この抽出は、抽出されたコラーゲン中の線維状および/またはフィブリル状コラーゲンの含量を最大にすることを可能にする。さらに、そのような塩基性抽出は、抽出されたコラーゲン中のフィブリル状/線維状コラーゲンおよび非フィブリル状コラーゲンの割合を制御するために最適化することができる。酸性抽出とは異なり、塩基性抽出は、プロテオグリカンの加水分解を可能にする。この作用は、組織の破壊および線維の形状の変更を伴わない線維の分離をもたらす。酸性条件では、線維中の内部コラーゲン分子の膨潤は、非フィブリル状可溶性コラーゲンのより多くの量の放出を伴い、工程中にそれらの部分的破壊をもたらす。
【0052】
コラーゲンは、抽出後そのままで、すなわち、それ以上処理せずに使用することができ、またはとりわけ、加熱脱水、例えばホルムアルデヒドおよび/もしくはグルタルアルデヒドなどの架橋剤の使用などの古典的な架橋様式により、例えば国際出願WO2010/125086に記載されている方法に従う酸化多糖類により、および/または酸化アミロペクチンもしくはグリコーゲンにより、架橋することができる。しかしながら、コラーゲンを架橋することは、止血効力を必ずしも増大させることなく、製造工程を複雑にするため好ましくない。
【0053】
従って、好ましくは、前記組成物において使用されるコラーゲンは、それ以上いかなる処理も受けず、特には、架橋されていない。非架橋コラーゲンを使用することは、とりわけ、製造工程を単純化するという利点を有する。
【0054】
前記止血性粉末の組成物は、少なくとも1種の単糖類を、単独でまたは他の単糖類との混合物で含んでなる。前記単糖類は、リボース、スクロース、フルクトース、グルコースおよびそれらの混合物から選択することができる。本発明の組成物中に、単独でまたは単糖類との混合物で存在する単糖類は、特にはグルコースである。
【0055】
前記止血性粉末の組成物は、前記組成物の総重量に対して1重量%~12.5重量%の範囲の、特には、1.5重量%~10重量%の範囲の、特には、2重量%~8重量%の範囲の、実に特に、2.5重量%~7.5重量%の範囲の単糖類含量を含んでなり得る。最も好ましくは、単糖類含量は、前記組成物の総重量に対しておよそ5重量%である。
【0056】
前記止血性粉末の組成物は、5~100、特には7~65、より特に10~50、さらにより特に11~40の範囲のコラーゲン/単糖類重量比率を含んでなり得る。最も好ましくは、前記組成物は、およそ19のコラーゲン/単糖類重量比率を含んでなる。
【0057】
単糖類、とりわけリボース、スクロース、フルクトース、グルコースおよびそれらの混合物、特にはグルコースは、とりわけ、所望の特徴、とりわけサイズおよび密度を有する、主に線維状および/またはフィブリル状コラーゲンと単糖類とを含んでなる粒子を得ることを可能にし得る。コラーゲンの混合物への単糖類の配合は、前記組成物内の電荷の減少をさらに可能にし、これにより、チューブ、ブロアー、噴霧式または塗布式ディスペンサーなどの容器内に入れるのに適した粉末の形成が可能になる。
【0058】
特に、単糖類の存在は、特には、前記組成物の粉末の止血特性を向上させることに関して、所望の密度および/またはサイズの粒子を得ることをより容易にかつ/またはより安価にすることができる。
【0059】
添加剤を含まないコラーゲン線維のグラウンディング(grounding)は、線維のサイズの減少をもたらし、粉末の密度は低下させる。さらに、最終調製物は、最終製品の操作を妨げる有力な量の電荷を含む。コラーゲンを粉砕する前に単糖類を添加すると、混合する調製物の硬化をもたらし、迅速な粉砕(変性の制限)が可能になり、よって、低下した電荷(ディスペンサーなどの容器に粉末を入れるのに好適)および前記組成物を塗布および再構成するのに好適な最終密度を有する粉末の調製が可能になる。
【0060】
予想できたこととは異なり、単糖類のそのような添加は、製品の最終活性に影響を及ぼさない。具体的には、それによって最終製品の生物活性は変更されない。単糖類には止血効果はない。
【0061】
さらに、単糖類のそのような添加は、WO01/97873の場合のように、それを発泡剤として作用させることはない。WO01/97873では、希釈溶液の加熱はゼラチンの形成をもたらす。高濃縮溶液を得るために高濃度のゼラチンを製造することができるが、最終製品はゼラチンを含み、コラーゲンを含まない。血小板凝集はコラーゲンフィブリルの存在とゼラチン中に存在しない未変性コラーゲンの構造とを必要とするため、ゼラチンは、コラーゲンよりも止血性が低いことが知られている。
【0062】
一つの実施形態によれば、前記組成物は、コラーゲンと、とりわけ、リボース、スクロース、フルクトース、グルコースおよびそれらの混合物から選択される単糖類、特にはグルコースとを含んでなる、好ましくは、からなる粒子を含んでなる、好ましくは、からなる。
【0063】
前記組成物は、少なくとも1種の凝固因子を含んでなり得る。前記凝固因子は、当業者に周知である。好ましくは、前記凝固因子の1つはトロンビンである。いっそうより好ましくは、前記止血性粉末の組成物は、凝固因子としてトロンビンのみを含んでなる。
【0064】
前記凝固因子、特にはトロンビンは、動物供給源(動物組織および体液から抽出される)または組換え型供給源(遺伝的に改変された細胞の培養によって産生される)から得ることができる。凝固因子は、例えば、ヒト組織および体液から抽出されたトロンビンであり得る。
【0065】
凝固因子、特にはトロンビンが存在する場合、その含量は、好ましくは、前記止血性粉末の組成物の総重量に対して0.1重量%未満である。
【0066】
トロンビンの場合、国際単位(IU)が一般的に使用される。従って、前記組成物は、前記組成物の0.01IU/mg~20IU/mg、特には0.05IU/mg~10IU/mg、特には0.1IU/mg~5IU/mg、実際には0.2IU/mg~2IU/mgの範囲のトロンビン含量を含んでなり得る。最も好ましくは、存在する場合、トロンビンの含量は、前記組成物のおよそ0.83IU/mgである。
【0067】
単糖類に加えて、前記組成物は、少なくとも1種の他の炭水化物化合物を含んでなり得、それはグリコサミノグリカンであり得る。そのような炭水化物化合物は、トロンビンなどの凝固因子の有無にかかわらず、前記組成物の一部であり得る。
【0068】
前記グリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸およびそれらの混合物、特にはコンドロイチン硫酸から選択することができる。
【0069】
グリコサミノグリカンは、前記止血組成物が血液を吸収する速度を向上させることができる。特に、グリコサミノグリカンは、血液と止血製品との間、特にはコラーゲンとトロンビンとの間の接触を加速する可能性がある。
【0070】
前記組成物は、前記組成物の総重量に対して2重量%~25重量%の範囲の、特には3重量%~20重量%の範囲の、特には4重量%~15重量%の範囲の、特に5重量%~12.5重量%の範囲のグリコサミノグリカン含量を含んでなり得る。最も好ましくは、存在する場合には、グリコサミノグリカンの含量は、前記組成物の総重量のおよそ9重量%である。
【0071】
前記組成物は、2.5~50、特には3.5~35、より特に5~25、さらに特に6.5~20の範囲のコラーゲン/グリコサミノグリカン重量比率を含んでなり得る。
【0072】
一つの実施形態によれば、前記組成物は、少なくとも1種の、特には1種の単糖類と、少なくとも1種の、特には1種のグリコサミノグリカン、とりわけ、上記で定義したものなどを、特には上記で定義した量で含んでなる。
【0073】
炭水化物化合物は、特に単糖類およびグリコサミノグリカンである。
【0074】
前記組成物は、前記組成物の総重量に対して2重量%~25重量%の範囲の、特には 5重量%~23重量%の範囲の、特には7重量%~21重量%の範囲の、特に10重量%~18重量%の範囲の炭水化物含量を含んでなり得る。
【0075】
前記組成物は、2~40、特には2.5~30、特に3~20、さらに特に3.5~15の範囲のコラーゲン/炭水化物化合物重量比率を含んでなり得る。
【0076】
「炭水化物化合物の総重量」との表現は、上記で定義した単糖類の重量と上記の他の炭水化物化合物の重量との合計を指す。
【0077】
一つの実施形態によれば、前記組成物は、下記を含んでなる、好ましくは、からなる:
・コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の線維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を主に含んでなるコラーゲン、および
・少なくとも1種の、特には1種の単糖類。
【0078】
特に、前記組成物は、下記を含んでなる、好ましくは、からなる:
・とりわけ、前記組成物の総重量に対して70重量%~99重量%の範囲の、特には75重量%~96重量%の範囲の、特には77重量%~93重量%の範囲の、実際には80重量%~90重量%の範囲の量のコラーゲンであって、ここで、前記コラーゲンは、コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の線維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなる、コラーゲン、および
・前記組成物の総重量に対して1重量%~12.5重量%の範囲の、とりわけ、1.5重量%~10重量%の範囲の、特には2重量%~8重量%の範囲の、特に2.5重量%~7.5重量%の範囲の量の少なくとも1種の単糖類、特にはグルコース。
【0079】
別の実施形態によれば、前記組成物は、下記を含んでなる、好ましくは、からなる:
・コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の線維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を主に含んでなるコラーゲン、
・少なくとも1種の、特には1種の単糖類、
・少なくとも1種の、特には1種の凝固因子。
【0080】
特に、前記組成物は、下記を含んでなる、好ましくは、からなる:
・とりわけ、前記組成物の総重量に対して70重量%~99重量%の範囲の、特には75重量%~96重量%の範囲の、特には77重量%~93重量%の範囲の、実際には80重量%~90重量%の範囲の量のコラーゲンであって、ここで、前記コラーゲン含量は、コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の線維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなる、コラーゲン、
・前記組成物の総重量に対して1重量%~12.5重量%の範囲の、特には1.5重量%~10重量%の範囲の、特には2重量%~8重量%の範囲の、特に2.5重量%~7.5重量%の範囲の量の少なくとも1種の単糖類、特にはグルコース、および
・前記組成物の0.01IU/mg~20IU/mg、特には0.05IU/mg~10IU/mg、特には0.1IU/mg~5IU/mg、実際には0.2IU/mg~2IU/mgの範囲の量の少なくとも1種の、特には1種の凝固因子、特にはトロンビン。
【0081】
別の実施形態によれば、前記組成物は、下記を含んでなる、好ましくは、からなる:
・コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の線維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を主に含んでなるコラーゲン、
・少なくとも1種の、特には1種の単糖類、および
・少なくとも1種の、特には1種のグリコサミノグリカン。
【0082】
特に、前記組成物は、下記を含んでなる、好ましくは、からなる:
・とりわけ、前記組成物の総重量に対して70重量%~99重量%の範囲の、特には75重量%~96重量%の範囲の、特には77重量%~93重量%の範囲の、実際には80重量%~90重量%の範囲の量のコラーゲンであって、ここで、前記コラーゲン含量は、コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の線維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなる、コラーゲン、
・前記組成物の総重量に対して1重量%~10重量%の範囲の、特には1重量%~12.5重量%の範囲の、特には1.5重量%~10重量%の範囲の、特には2重量%~8重量%の範囲の、特に2.5重量%~7.5重量%の範囲の量の少なくとも1種の単糖類、特にはグルコース、および
・前記組成物の総重量に対して2重量%~25重量%の範囲の、特には3重量%~20重量%の範囲の、特には4重量%~15重量%の範囲の、特に5重量%~12.5重量%の範囲の量の少なくとも1種のグリコサミノグリカン、特にはコンドロイチン硫酸。
【0083】
さらに別の実施形態によれば、前記組成物は、下記を含んでなる、好ましくは、からなる:
・コラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の線維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなるコラーゲン、
・少なくとも1種の、特には1種の単糖類、
・少なくとも1種の、特には1種の凝固因子、および
・少なくとも1種の、特には1種のグリコサミノグリカン。
【0084】
特に、前記組成物は、下記を含んでなる、好ましくは、からなる:
・とりわけ、前記組成物の総重量、特には乾燥重量に対して70重量%~99重量%の範囲の、特には75重量%~96重量%の範囲の、特には77重量%~93重量%の範囲の、実際には80重量%~90重量%の範囲の量のコラーゲンであって、ここで、前記コラーゲンはコラーゲンの総重量に対して少なくとも50重量%の線維状および/またはフィブリル状コラーゲン含量を含んでなる、コラーゲン、
・前記組成物の総重量に対して1重量%~10重量%の範囲の、とりわけ、1重量%~12.5重量%の範囲の、とりわけ、1.5重量%~10重量%の範囲の、特には2重量%~8重量%の範囲の、特に2.5重量%~7.5重量%の範囲の量の少なくとも1種の単糖類、特にはグルコース、
・前記組成物の0.01IU/mg~20IU/mg、特には0.05IU/mg~10IU/mg、特には0.1IU/mg~5IU/mg、実際には0.2IU/mg~2IU/mgの範囲の量の少なくとも1種の凝固因子、特にはトロンビン、および
・前記組成物の総重量に対して2重量%~25重量%の範囲の、とりわけ、3重量%~20重量%の範囲の、特には4重量%~15重量%の範囲の、特に5重量%~12.5重量%の範囲の量の少なくとも1種のグリコサミノグリカン、特にはコンドロイチン硫酸。
【0085】
かなり特定の実施形態によれば、前記組成物は、下記を含んでなる、好ましくは、からなる:
・線維状および/またはフィブリル状コラーゲンを主として含んでなるフィブリル状のコラーゲンであって、フィブリル状の前記コラーゲンは、例えば塩基性媒体での抽出によって得られ、かつ、前記組成物の総重量に対して、およそ85重量%の量で存在する、フィブリル状のコラーゲン、
・前記組成物の総重量に対しておよそ4.9重量%の量のグルコース、
・前記組成物の0.2IU/mg~2IU/mgの量のトロンビン、および
・前記組成物の総重量に対しておよそ10重量%の量のコンドロイチン硫酸。
【0086】
別の特定の実施形態によれば、前記組成物は、下記を含んでなる、好ましくは、からなる:
・線維状および/またはフィブリル状コラーゲンを主として含んでなるフィブリル状のコラーゲンであって、フィブリル状の前記コラーゲンは、例えば塩基性媒体での抽出によって得られ、かつ、前記組成物の総重量に対して、およそ85重量%の量で存在する、フィブリル状のコラーゲン、
・前記組成物の総重量に対して5重量%の量のグルコース、
・および前記組成物の総重量に対して10重量%の量のコンドロイチン硫酸。
【0087】
本発明の文脈において、「およそX%の量」との表現は、プラスまたはマイナス20%の変動を指し、言い換えれば、およそ10%の量は、8%~12%、特にはプラスまたはマイナス10%、実際にはプラスまたはマイナス5%の変動を意味する。
【0088】
粉末の形態の凝固因子、特にはトロンビンを添加する場合、そのような凝固因子の粉末は、好ましくは、すでに調製されたコラーゲン/単糖類の均質分子混合物の粉末と混合される。
【0089】
グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸)および凝固因子(例えば、トロンビン)の両方を添加する場合、それらを好ましくは最初に一緒に混合し、そしてこの混合物を、(すでに粉末に粉砕された)前のコラーゲン/単糖類混合物に添加する。
【0090】
トロンビンは、炭水化物によってもコラーゲンによっても安定化されない。トロンビンは、(第WO98/57678号とは対照的に)単糖類の溶液と決して接触せず、それによってタンパク質の変性と粉末を再び適切に乾燥させることを不可能にするその再水和とを妨げる。
【0091】
粉末形態の前記組成物は、特には、下記を含んでなり得るか、またはそれらからなり得る:
・フィブリル状のコラーゲンおよび少なくとも1種の単糖類、特にはグルコースを含んでなるかまたはそれらからなる粒子であって、ここで、具体的には、前記粒子は本明細書で定義したようなサイズ、粒度分布および/または密度を有し、および
・所望により、少なくとも1種のグリコサミノグリカン、特にはコンドロイチン硫酸、および/または 少なくとも1種の凝固因子、特にはトロンビンを含んでなるかまたはそれらからなる粒子であって、ここで、具体的には、前記粒子は本明細書で定義したようなサイズ、粒度分布および/または密度を有する。
【0092】
前記止血性粉末の組成物は、有利には、少なくとも50重量%の、サイズが200μm~400μmの粒子を含んでなる。
【0093】
前記止血性粉末を構成する粒子は、有利には、10μm~500μm、特には50μm~400μmの範囲の平均粒度分布を有する。
【0094】
有利には、前記止血性粉末を構成する粒子の少なくとも90重量%、特には100重量%は、メッシュが500μm、特には400μmである篩を通過することができる。
【0095】
前記止血性粉末を構成する粒子の少なくとも90重量%、特には少なくとも95重量%は、メッシュが10μm、とりわけ20μm、実際には30μm、実際には50μmである篩によって保持され得る。
【0096】
この再分割は、粉末の水和を可能にするように選択された。粒子サイズが小さすぎると、粉末は、要求される仕様および態様と一致する水和マトリックスを形成しない。
【0097】
粉末形態の前記止血組成物は、特には、下記を含んでなる:
・コラーゲンおよび単糖類を含んでなる粒子、ならびに
・所望により、少なくともグリコサミノグリカンおよび/またはトロンビンなどの凝固因子。
【0098】
止血性粉末の組成物は、下記を含んでなり得る:
・コラーゲン、単糖類ならびに所望により少なくとも1種のグリコサミノグリカンおよび/または凝固因子を含んでなる粒子、
・コラーゲン、単糖類および所望により凝固因子および所望によりグリコサミノグリカン粒子を含んでなる粒子、
・コラーゲンおよび単糖類を含んでなる粒子ならびに少なくとも1種のグリコサミノグリカンおよび/または凝固因子を含んでなる粒子。
【0099】
本発明の文脈において、「乾燥粉末」との表現は、組成物が限られた含量の溶媒、特には水を含んでなることを意味する。前記限られた含量は、前記組成物の総重量に対して、5重量%未満、特には3重量%未満、特に1重量%未満であり得る。
【0100】
前記乾燥形態は、使用される溶媒を単純に蒸発させることによって、有機溶媒による脱水によって得ることができる。
【0101】
上に示したように、記載した止血性粉末は、製造プロセスの点ではるかに単純であることから非架橋コラーゲンから形成され、たとえ前記粉末のコラーゲンが架橋されていなくとも止血に関して良好な効力を有することが証明されている。
【0102】
本発明者らは、驚くべきことに、コラーゲンが架橋されていないという事実にもかかわらず、上記の特定の止血粉末を食塩水と混合することによって出血領域に直接適用して止血を促進することができる粘度を有する止血製品を形成することができることを見出した。
【0103】
反対に、コラーゲンベースの粉末と生理食塩水との混合物からの止血性コラーゲンペーストの調製は、機能し安定するために架橋コラーゲンの使用を必要とすることが知られていたため、これは実際には予想されなかった。これは、特には、1990年1月2日に参考文献米国特許第4,891,359号の下に公開された米国特許に開示されている。すなわち、架橋は対応する分子構造に化学結合を追加することによって分子に安定性を与えることが知られており、それらの追加の化学結合は通常分子が水性形態であるために必要とされる。
【0104】
従って、好ましい実施形態によれば、コラーゲンが架橋されていない上述のような乾燥止血性粉末は、出血領域に適用される止血性フロアブル剤を形成するために生理食塩水で水和されるべきである。
【0105】
本明細書において使用される用語「フロアブル(剤)(flowable)」とは、圧力などの応力が組成物に加えられた場合に変形可能でありながら、応力が加えられることなくその粘稠度が一定の形状を維持することを可能にする組成物に適用される。
【0106】
フロアブル剤は、液体でもスポンジでも粉末でもなく、むしろ、一定の粘度を示す一種のペースト、ゲルまたはマトリックスである。好ましくは、フロアブル剤は、20 Pa.s~10000Pa.s(0.0001(Pa.s)-1~0.05(Pa.s)-1の流動性の範囲に相当する)に含まれる粘度を有する。
【0107】
フロアブル剤とは、例えば、シリンジおよび/またはカニューレを通過することが可能な組成物を指す。
【0108】
本明細書において、本発明者らは、同じ特定の組成物を示すために、止血性フロアブル剤、フロアブル止血薬(flowable hemostat)、および止血性マトリックス(hemostatic matrix)を区別せずに言及する。
【0109】
従って、前記止血性粉末と前記生理食塩水との混合は、上記で定義したような止血性フロアブル剤を作製するために行われる。
【0110】
前記生理食塩水は、好ましくは、手術室で使用される標準的な滅菌生理食塩水である。
【0111】
好ましくは、それは、0.5%~1.5%、好ましくはおよそ0.9%の塩化ナトリウム量を含む蒸留水からなる。
【0112】
前記生理食塩水は、好ましくは、純粋であり、これは、任意の他の成分を添加することなくそれが蒸留水中の塩化ナトリウムの混合物からなることを意味する。
【0113】
前記生理食塩水は、大型容器中のバルクなど、または予め充填されたシリンジのような決められた容量の特定の容器中などの異なる形態で保存することができる。
【0114】
好ましくは、前記生理食塩水は、前記止血性フロアブル剤を製造するためのキットの一部であり、そのようなキットはまた、容器中に特定量の止血性粉末も含んでなる。
【0115】
好ましくは、前記キットの止血性粉末は、
図1および2に示されるように特定のディスペンサーに保存される。
【0116】
従って、前記止血性フロアブル剤を調製する前に、総ての活性成分は、前記ディスペンサー内に粉末形態で総て一緒に含まれている。これはいくつかの側面で非常に有利である。特に、前記止血性粉末を有する容器を管理する必要があり、実際には一般的に入手可能な製品である前記生理食塩水を管理しないため、第一に製品の保存が容易になる。これはまた、前記止血性粉末だけを保存前に滅菌する必要がある製造に関しても非常に有利であり、これは、例えば、いくつかの成分が最初に生理食塩水(例えば、トロンビン)と混合され、次に、止血性粉末に混合される場合は当てはまらないであろう。
【0117】
好ましくは、ディスペンサー1は、容器部10と、容器部10から前記止血性フロアブル剤を塗布することに適しているノズル部20とを有する。
【0118】
図5に更に示されている容器部10は、好ましくは、前記生理食塩水と前記止血性粉末との混合に有利に働き、前記止血性粉末の水和速度を高める形状を有する。
【0119】
加えて、容器部10は、ノズル部20を通してディスペンサー1から前記止血性フロアブル剤を押し出すために、ベローズ11の単なる手動圧縮によって使用者が前記止血性フロアブル剤を適用することを可能にするベローズ11を有し得る。
【0120】
従って、ノズル部20は、容器部12のベローズ11が圧縮されると、ディスペンサーから前記止血性フロアブル剤が流れ出ることが可能なように設計されている。
【0121】
使用者によるベローズ11の手動圧縮を容易にするために、ノズル部20は指置き要素21を含んでなり得、その結果、少なくとも1本、好ましくは2本の指を指置き要素21上に配置してベローズ11に加えられる圧縮力に対してディスペンサー1を保持することができるようになっている。
【0122】
好ましくは、
図4に示されているように、指置き要素21は、ディスペンサー1の長手方向軸から半径方向に突出する2つの細長い部材を含み、前記長手方向軸はベローズ11の圧縮軸に相当する。
【0123】
ノズル部20はまた、好ましくは、使用者がノズル部20を通して容器部10を前記生理食塩水で満たすことが可能なようにも設計されており、これにより、容器部分10からノズル部分20を取り外す必要性が回避され、水和させる前記止血性粉末の汚染の危険が防止される。
【0124】
この目的のために、ノズル部20は、例えば、それを通して前記生理食塩水を容器部10の内部に注入することができるダクト22を含んでなり得る。このようなダクト22はまた、ベローズ11が圧縮されたときに、ダクト22を通って、前記止血性フロアブル剤がディスペンサー1から容易に流出するようにも設計されている。
【0125】
好ましくは、ディスペンサーは、ノズル部20に取り外し可能に連結されるように設計されたキャップ30をさらに含んでなる。
【0126】
このキャップ30は、好ましくは、ディスペンサー1の気密シールを可能にし、これは、保存および混合段階中に特に有利である。
【0127】
ディスペンサー1を使用しない場合、キャップ30は、好ましくは、
図1に示されるように閉じられる。これは、装置内部の汚染の危険性を制限するのに役立ち得る。
【0128】
ディスペンサーに使用される、
図3に示されているキャップ30は、好ましくは、その取り外し、開放および閉鎖を容易にするねじ切りキャップである。
【0129】
1つのキットに対する止血性粉末の量は、好ましくは1g~2gである
【0130】
1つのキットに対する生理食塩水の量は、好ましくは4mL~10mL、より好ましくは5mL~10mLである。
【0131】
好ましい例によれば、前記キットは、7mLの純粋な生理食塩水と混合される1.65gの止血性粉末を含んでなる。
【0132】
好ましくは、キットにおいて、前記止血組成物を水和するために使用されるべき生理食塩水の質量は、前記止血性粉末の質量の2~10倍、好ましくは、前記止血性粉末の質量の4~5倍である。
【0133】
使用者、例えば、外科医が、提案した止血性フロアブル剤の使用を望む場合、使用者は上記のキットを使用してそれを準備することができる。
【0134】
この目的のために、使用者は、対応するキャップ30を取り外すことによって前記止血性粉末を含有する塗布ディスペンサー(アプリケーターとも呼ばれる)を開く。
【0135】
次に、使用者は、ある量の滅菌生理食塩水をディスペンサー1に移さなければならない。
【0136】
ディスペンサー1中の止血性粉末の量に応じて、使用される生理食塩水の量は5mL~10mL、好ましくは7mLである。
【0137】
ディスペンサー1の容器部10に前記生理食塩水を移すために、使用者は、例えば、シリンジを使用することができる。そのようなシリンジは、好ましくは、それが、前記止血性粉末の水和によって前記止血性フロアブル剤を形成するのに必要な生理食塩水の正確な量に対応する容量を有するように、キットに提供される。
【0138】
前記生理食塩水がディスペンサー1に移送される間、前記止血性粉末への前記生理食塩水の取り込みを容易にするために、容器部10は、好ましくは、例えば、それ自体の軸の周りを回転する。前記生理食塩水が使用者によって手動で取り込まれる場合、容器部10の回転もまた手で行うことができる。しかしながら、このプロセスは必要に応じて自動化することができる。
【0139】
前記生理食塩水を移送しながら容器部10を軽くたたき、および/または軽く振盪することもまた、前記止血性粉末への前記生理食塩水の取り込みを促進するために有利であり得る。
【0140】
前記生理食塩水がディスペンサー1に移送されると、ノズル部20の開口部は、好ましくは、ディスペンサー1のキャップ30を使用することによって閉じられ、容器が振盪され、前記止血性粉末は前記生理食塩水と混合される。
【0141】
振盪は、好ましくは、少なくとも15秒間、さらに好ましくは少なくとも30秒間行われる。しかしながら、10秒~30秒、例えば20秒の振盪時間は、前記止血性粉末の水和に関してはすでに有効である。
【0142】
振盪は、好ましくは、手で行われるが、自動化することもできる。
【0143】
手動で行われる場合、混合は、ディスペンサー1を一定の回数上下に動かすことからなり得る。例えば、ディスペンサー1は、少なくとも10~30回、好ましくは20回上下に動かすことができる。また、混合の効率を高めるために、ディスペンサー1をひっくり返した後、一定の回数上下に動かすこともできる。この手動混合第2段階において、ディスペンサー1をまた、少なくとも10~30回、好ましくは20回上下に動かすことができる。
【0144】
振盪後、形成された前記止血性フロアブル剤を封入するディスペンサー1は、好ましくは、少なくとも30秒間、好ましくは少なくとも60秒間、さらに好ましくは少なくとも90秒間静置される。
【0145】
静置時間は、30秒~120秒、好ましくはおよそ90秒であろう。
【0146】
この静止時間により、前記止血性粉末の水和および初期の膨潤が可能になり、水和した止血性フロアブル剤が形成される。
【0147】
このようにして形成された止血性フロアブル剤は均質であるという利点を有する。特には、止血性フロアブル剤はディスペンサー内に均質な流動性を実質的に有する。これは、止血性フロアブル剤の適用がこのように、それがディスペンサーからの生成物の開始時であれまたは残りの生成物であれ同じである場合に、特に有利である。
【0148】
ひと度、止血性フロアブル剤が生理食塩水での止血性粉末の水和によって形成されたならば、止血性フロアブル剤は、特性または性能の低下無く、数時間、例えば少なくとも8時間使用可能である。
【0149】
止血性フロアブル剤が準備されれば、それは次のように使用することができる:
・工程1:止血性フロアブル剤が出血源に直接適用できるように、標的出血部位からガーゼ/パッドまたは吸引によって余分な血液を吸い取る。創傷表面は適用前にできる限り乾燥していなければならない。
・工程2:ベローズを押しつぶすことによって止血性フロアブル剤を出血源に適用する。出血源全体を覆うのに十分な製品が適用されなければならない。
・工程3:すぐに、好ましくは、生理食塩水で湿らせた(血液で湿らせてはならない)ガーゼ/パッドを使用して、標的出血部位の出血表面に対して止血材を保持し、それを傷害部に合わせる。
・工程4:止血血餅複合体を形成するために、止血材を一定の期間、例えば少なくとも2~3分標的出血部位に維持する。そっとガーゼを持ち上げ、その領域を点検する。
・工程5:止血が達成されていなければ、工程1~4を繰り返すか、または止血処置の別の方法を使用する。
・工程6:開放後に使用されなかった製品を廃棄する。
【0150】
止血性フロアブル剤の粘度(それぞれ流動性)に応じて、とりわけ、止血性フロアブル剤に、ガーゼ/パッドを適用することなく適切場所に保持するに十分な粘度がある場合には、工程3を省くことができる。
【0151】
より良好な結果のために、物理的な操作によって血餅複合体を崩さないことが推奨される。
【0152】
加えて、出血が止まったところで、止血血餅に組み込まれなかった余分な止血性フロアブル剤を穏やかな洗浄によって除去しなければならない。
【0153】
提案されるような止血性フロアブル剤の一つの利点は、それが1回で、すなわち、ディスペンサー内に含まれる全製品を一度に使用することによって、または多回で、例えば、同時に処置すべき複数の出血領域が存在する場合、もしくは外科術中に複数回の連続的出血が存在する場合に使用可能であるということである。
【0154】
上記のような止血性フロアブル剤は、創傷との接触面を強化するという利点を有し、特には、出血領域との接触が深くなる。これは特には、出血領域が軟組織および柔組織器官に相当する場合に対象となる。
【0155】
加えて、止血性フロアブル剤は、例えば特殊なアプリケーターでの外科医の操作によって直接、創傷上または出血領域内に容易に適用することができる。止血性フロアブル剤は、例えば、止血性フロアブル剤によって覆われない領域を残さずに、出血領域全体を覆うことができる。
【0156】
提案された止血性フロアブル剤のもう一つの利点は、それがペーストの形態の止血製品で出血を処置することに慣れている外科医の習慣に適合するということである。
【0157】
これはまた外科医に、外科医の習慣、外科術の具体的条件などに応じて、外科医が使用しない止血製品の形態を選択するための選択肢を与える。結果として、外科医は、WO2012/146655に記載されるような止血性粉末、または本明細書に記載されるような止血性フロアブル剤のいずれかを使用することができる。
【0158】
上記のような止血性粉末は、例えば、少なくとも下記の工程を含んでなる方法に従って調製することができる:
a)主に線維状および/またはフィブリル状コラーゲンを含んでなるフィブリル状のコラーゲンとグルコースなどの単糖類を含んでなる、好ましくはからなる水性懸濁液の形成、
b)とりわけ遠心分離またはデカンテーションによる沈澱、ペーストまたはゲルの形態での生成物の回収、
c)例えば蒸発による生成物の乾燥、
d)特にはハンマーミルにより生成物を所望の粒径に粉砕すること、および
e)所望による、トロンビンおよび/またはコンドロイチン硫酸の、とりわけ固体形態、特には粉末形態での添加。
【0159】
工程a)における線維状/フィブリル状コラーゲンと単糖類を含んでなる水性懸濁液の形成は、コラーゲン分子の周囲への単糖類の均質な配分をもたらす。さらに、コラーゲンと単糖類の分子種間の密接な接触は、脱水後に、必要な高密度の粉末をグラウンディング(grounding)によって得るのに好適な堅いケークをもたらす。それとは反対に、コラーゲン粉末とグルコース粉末を混合しても、特には密度および電荷のために、均質で噴霧可能な粉末は得られない。
【0160】
工程a)において、コラーゲンは、30g/L~150g/Lの範囲の濃度で存在することができる。
【0161】
単糖類は懸濁液にまたは均質なコラーゲンペーストに、本明細書に定義されるような量で、特にはコラーゲンの重量に対しておよそ2重量%~5重量%で添加することができる。
【0162】
工程a)において、単糖類は、0.3g/L~10g/Lの範囲の濃度で存在することができる。
【0163】
工程a)のコラーゲンの水性懸濁液は酸であり得、特には、塩酸などの酸を含んでなる。前記の酸は、0.01M~0.5M、特には0.02M~0.1Mの範囲、実際にはおよそ0.05Mの濃度で存在することができる。前記懸濁液は、均質なペーストの形態であり得る。
【0164】
工程b)は、懸濁液をモールドに注ぐことを含んでなり得る。
【0165】
工程c)は、できる限り厚く(望まれる最終粒径を超える)、極めて高密度で、できる限りケーク(cake)内の気泡の少ない(5%未満)ケークを得るために行われる。
【0166】
工程d)の後に、とりわけ所望の粒径を得るために粉末の選別工程を行うことができる。
【0167】
好ましい実施形態によれば、工程a)は、95重量%のフィブリル状のコラーゲンと5重量%のグルコースを含んでなる混合物を形成することからなる。この混合物を乾燥(工程b))および粉砕(工程c))させた後、コンドロイチン硫酸を混合物の総重量の10重量%の含量で添加し、これにより最終組成物は下記を含んでなる:
・コラーゲン:組成物の総重量に対して86.36重量%、
・グルコース:組成物の総重量に対して4.54重量%、
・コンドロイチン硫酸:組成物の総重量に対して9.09重量%。
【0168】
トロンビンも添加される場合、それは組成物の総重量に対して0.01重量%より低い最終含量に相当する。上記の混合物において、トロンビンは0.083IU/組成物mgの量であり得る。
【0169】
前述の全ての粉末生成物に関して、より多いまたは少ない完全粉砕を適用して、粉砕のタイプおよびその期間に応じて変動のある粒径の粉末を得ることは事実上明らかに可能である。
【0170】
特定量の生理食塩水と混合された止血性粉末から形成された止血性フロアブル剤は、止血剤として使用することができる。
【0171】
この止血性フロアブル剤はまた、医薬組成物、特には、止血薬としても使用可能である。
【0172】
上記のように、本発明者らはまた、ヒトを含む動物の身体の出血部分に、上記で定義されたものなどの止血性フロアブル剤を付着させることを含んでなる止血方法も提案する。具体的には、止血性フロアブル剤は、外科的手法、特には開腹術、腹腔鏡検査、コエリオスコピーおよびロボット法において使用することができる。
【0173】
上記の止血性フロアブル剤はまた、内部創傷および外傷のための瘢痕形成剤としても使用することができる。「瘢痕形成剤」との表現は、それが接触する組織の臨床的に満足のいく瘢痕形成を得ることを可能にする製品を指す。
【実施例】
【0174】
例1:in vitroにおいて止血能を測定するためのプロトコール
クエン酸塩(約0.1M)を添加したヒト血液を測定中、水浴で37℃に維持する。供試製品(10mg)をスナップオンキャップ付きの5mLポリプロピレンチューブに堆積させ、次に、クエン酸塩を添加した新鮮な血液(2mL)を添加する。その後、CaCl2を、血中の最終CaCl2濃度が15mMとなるように添加し、次いで、試験管を封止する。次に、これらの内容物を激しく転倒させる(10回)ことによってかき混ぜた後、この試験管を水浴に沈め、この試験管を10秒毎に垂直の位置に戻す。血餅の形成に要される時間を記載し、これは止血能に相当する。
【0175】
例2:粒径を測定するためのプロトコール
既知量の製品、とりわけ粉末を50μm、100μm、200μm、300μmおよび400μmの篩で2分間(篩ごと)篩う。各篩から得られた画分を秤量する。各粒径範囲の割合を決定する。
【0176】
例3:組成物の膨潤を測定するためのプロトコール
15mLのフラスコを秤量し(m0 mg)、次いで、Xmgの乾燥組成物粉末を添加する(m0+X mg)。0.15MのNaCl水溶液(2mL)を添加し、この組成物を20分間膨潤させ、その後、このフラスコを1,000rpmで遠心分離する。
【0177】
過剰なNaClをパスツールピペットで除去し、フラスコを濾紙上にひっくり返すことによって液滴を消去し、その後、このフラスコを、湿潤粉末とともに秤量する(m1 mg)。
【0178】
膨潤率を次のように計算する:((m1-m0)/(m0+X-m0))。
【0179】
例4:塩基性抽出によるフィブリル状のコラーゲンの調製
アセトンで脱脂したブタ真皮片(30kg)を100kgの0.05M NaOH溶液中で3時間膨潤させる。これらの真皮をカッティングミルによって細かく切断し、得られたペーストを50リットルの0.05M NaOHで希釈する。次に、この混合物を加圧下で1mmの篩で篩う。その後、得られたペーストをHClでpH6~7.5とし、得られた沈澱を遠心分離または1mmの篩を通した濾過によって集める。
【0180】
この保持液を当業者に公知の方法に従い、アセトンで脱水する。従って、この脱水保持液は、非フィブリル状コラーゲンに対してフィブリル状/線維状コラーゲン含量の高いフィブリル状のコラーゲンからなる。一般的には、このような抽出コラーゲンは、コラーゲンの総重量に対して85重量%~95重量%のフィブリル状/線維状コラーゲンと、コラーゲンの総重量に対して5重量%~15重量%の非フィブリル状コラーゲンとを含んでなる。
【0181】
例5:止血性粉末#1の調製
30gの例4で調製されたフィブリル状のコラーゲンを1Lの0.02M HCl水溶液に添加した後、この混合物を5時間撹拌する。次に、得られた均質なペーストに粉末フルクトースをコラーゲン重量に対して2重量%(0.6g)の量で添加する。
【0182】
この混合物を1時間ホモジナイズした後、注ぎ出し、脱水する。乾燥後、乾燥生成物を、制御された加熱下、フィッツパトリック(Fitzpatrick)ハンマーミルを用い、7,000rpmで、25g/分の速度で粉砕する。次に、この生成物を、そのサイズが400μmより大きい粒子を除去するために機械的に篩にかけることにより選別する。
【0183】
その後、デルマタン硫酸を前記粉末に粉末の乾物に対して2重量%の量(0.612g)で添加する。
【0184】
次に、この混合物を、ボールミルを用いてホモジナイズし、この混合物に凍結乾燥したトロンビンを15IU/粉末mgの量で添加し、最後に、この混合物を、ボールミルを用いてホモジナイズする。
【0185】
例6:止血性粉末#2の調製
7.5kgの例4で調製されたフィブリル状のコラーゲンを、50Lの0.05M HCl水溶液に添加した後、この混合物を16時間撹拌する。次に、得られた均質なペーストに粉末フルクトースを、コラーゲンの重量に対して5重量%(375g)の量で添加する。
【0186】
この混合物を3時間ホモジナイズした後、プレート上に配置し、脱水する。乾燥後、乾燥生成物を、制御された加熱下、ハンマーミルを用い、12,000rpmで、5g/分の速度での細断により粉砕する。次に、この生成物を、そのサイズが400μmより大きい粒子および50μmより小さい粒子を除去するために機械的に篩にかけることにより選別する。
【0187】
粒度分布を測定し、その分布がサンプルの60重量%が200μmを超える粒度分布を有することを確認する。
【0188】
次に、精製されたコンドロイチン硫酸をこの粉末に、粉末の乾物に対して20重量%の量(1.575kg)で添加する。この混合物を、ボールミルを用いてホモジナイズする。
【0189】
最後に、凍結乾燥したトロンビンをこの混合物に、10IU/粉末mgの量で添加する。従前のように、この混合物を、ボールミルを用いてホモジナイズする。
【0190】
例7:止血性粉末#3の調製
例4で調製された1000gのフィブリル状のコラーゲンを60mLの0.02M HCl水溶液に添加した後、この混合物を5時間撹拌する。次に、得られた均質なペーストに、粉末グルコースをコラーゲンの重量に対して5重量%の量(50g)で添加する。
【0191】
この混合物を1時間ホモジナイズした後、注ぎ出し、脱水する。乾燥後、この乾燥生成物を、制御された加熱下、フィッツパトリックハンマーミルを用い、7,000rpmで、25g/分の速度で粉砕する。次に、この生成物を、そのサイズが400μmより大きい粒子および50μmより小さい粒子を除去するために機械的に篩にかけることにより選別する。
【0192】
次に、コンドロイチン硫酸をこの粉末に、粉末の乾物に対して10重量%の量(105g)で添加する。この混合物を、ボールミルを用いてホモジナイズする。
【0193】
このような粉末組成物は、およそ0.408g/mLのタップ密度を有する。
【0194】
例8:止血性粉末#4の調製
500gの例4で調製されたフィブリル状のコラーゲンを30mLの0.02M HCl水溶液に添加した後、この混合物を5時間撹拌する。次に、得られた均質なペーストに、粉末グルコースをコラーゲンの重量に対して5重量%の量(25g)で添加する。
【0195】
この混合物を1時間ホモジナイズした後、注ぎ出し、脱水する。乾燥後、この乾燥生成物を、制御された加熱下、フィッツパトリックハンマーミルを用い、7,000rpmで、25g/分の速度で粉砕する。次に、この生成物を、そのサイズが400μmより大きい粒子および50μmより小さい粒子を除去するために機械的に篩にかけることにより選別する。
【0196】
次に、トロンビン粉末と混合したコンドロイチン硫酸をこの粉末に、粉末の乾物に対して10重量%の量(52.5g)で添加する。この混合物にトロンビンを0.85U/mgの最終量で添加する。その後、この混合物を、ボールミルを用いてホモジナイズする。
【0197】
このような粉末組成物は、およそ0.425g/mLのタップ密度を有する。
【0198】
例9:止血性粉末#5の調製
750gの例4で調製されたフィブリル状のコラーゲンを6675mLの高精製水と混合する。この混合物を、10分間20rpmの第1の撹拌速度で、次に、15分間40rpmの第2の撹拌速度で撹拌する。
【0199】
次に、グルコースの溶液(300mLの水に37.5gのグルコース)を配合しながら、上記の混合物を再び20rpmの第1の撹拌速度で撹拌する。添加するグルコースの量は、混合物中に使用されているコラーゲンの重量に対して5重量%に相当する。この新たな混合物を、10分間40rpmの第2の撹拌速度で撹拌する。その後、この調製物を16時間保存する。
【0200】
次に、30rpmの撹拌速度で撹拌しながら、この調製物に87.5mLの量の1M HCl水溶液を添加する。この新たな混合物を1分間35rpmの第1の撹拌速度で、次に、1分間40rpmの第2の撹拌速度で撹拌し、その後、同じ40rpmの撹拌速度で5分の数回の撹拌セッションを行い、2回のセッションの間に迅速な一時停止を設ける。
【0201】
前段階で得られた高粘度のペーストを次に、類似した形状および質量を有する数片に分離する。次に、それらのペースト片を、空気をアンモニアで飽和させた密閉エンクロージャー内に24時間置く。この中和工程の後、ペースト片を20℃で96時間乾燥させた後、乾燥生成物を、Forplexの極低温ミルを用い、8,500rpmで、1kg/時の速度で粉砕する。その後、粉末生成物を、そのサイズが200μmより大きい粒子および50μmより小さい粒子を除去するために機械的に篩にかけることにより選別してコラーゲン-グルコース粉末を得る。
【0202】
次に、50μm~200μmのサイズを有する粒子から構成されるコンドロイチン硫酸(CS)の粉末を、コラーゲン-グルコース粉末に、コラーゲン-グルコース粉末の乾物に対して10重量%の量で添加する。例えば、30gのコンドロイチン硫酸粉末を300gのコラーゲン-グルコース粉末と混合する。この止血性粉末#5では、凍結乾燥トロンビンも1000UI/gの量で添加する。次に、この混合物を、Vブレンダーを用いてホモジナイズする。最終止血性粉末は、およそ0.4g/mLのタップ密度を有する。
【0203】
例10:コラーゲンの特性評価->コラーゲン中の可溶性コラーゲンの存在、フィブリル状/線維状コラーゲンおよび非フィブリル状コラーゲンの比率の決定
本試験の目標は、コラーゲン(抽出されたコラーゲンまたは粉砕されて粉末となったコラーゲン)においてフィブリル状/線維状コラーゲンおよび非フィブリル状コラーゲンの割合を決定することである。このような割合は、コラーゲンにおける不溶性(フィブリル状/線維状コラーゲンに相当)および可溶性コラーゲン(非フィブリル状コラーゲンに相当)の割合を調べることによって決定することができる。
【0204】
この試験は、16時間、166mLの水中、pH13で約2.5gの試験下のコラーゲンを可溶化することからなる。次に、この溶液を遠心分離する(10分間10000rpm)。その後、上清(非フィブリル状コラーゲンに相当)および残渣(線維状/フィブリル状コラーゲンに相当)に分ける。残渣をそのまま連続的アセトン浴にて、制御された気流下で乾燥させる。上清のpHを、酢酸および塩酸6MでpH3に調整する。上清からの固体コラーゲンは、NaCl 0.6Mを添加し、遠心分離を行うことによって得られる。これを次に連続的アセトン浴にて、制御された気流下で乾燥させる。
【0205】
残渣(M残渣)および上清(M上清)からのコラーゲン重量を計算し、式:M残渣/(M残渣+M上清)×100は、コラーゲンの総量に対する線維状コラーゲンのパーセンテージを与える。
【0206】
本発明において、M残渣/(M残渣+M上清)比は、粉末を調製するために使用されるコラーゲンおよび最終のコラーゲン粉末の両方について80%を超えなければならない。有利には、この比率は85%を超える。
【0207】
例えば、例4のように調製された3バッチのコラーゲンからなる上記の試験は、それぞれ92.67%、94.60%および91.51%という極めて類似した比率を示す。これら3バッチの粉砕コラーゲンを得た後には、その比率はそれぞれ91.63%、88.02%および88.69%という極めて類似したものにそのまま留まる。
【0208】
線維状/フィブリル状コラーゲンおよび可溶性コラーゲンの両方の存在を示す別の方法は、SDS page電気泳動を実施することである。
【0209】
図6は、このような電気泳動を示し、サンプルS1は第1バッチの上清に相当し(例4のように抽出されたコラーゲンからなる)、サンプルS2はこの第1バッチの残渣に相当し、サンプルS3は第2のバッチの上清に相当し(これもまた例4のように抽出されたコラーゲンからなる)、サンプルS4はこの第2バッチの残渣に相当する。
【0210】
これらの結果は、残渣由来のコラーゲンについては、より多量の線維はアクリルアミドゲルを移動できず、ゲルの停止位置で染まることを示す。このサンプルの調製は、コラーゲンから各鎖を分離することができない。従って、α鎖は極めて低い量で存在する。上清由来のコラーゲンはゲルを完全に移動することができ、最上位で遮断される線維は無く、コラーゲン由来の鎖は電気泳動過程で適宜分離される。
【0211】
書誌データ
- WO 2012/146655
- “Nature designs tough collagen: explaining the nanostructure of collagen fibrils,” by Markus Buehler (PNAS, August 15, 2006, vol.103, no. 33, pp. 12285-12290)
- “Extraction of collagen from connective tissue by neutral salt solutions” by Jerome Gross, John H. Highberger and Francis O. Schmitt (Proceedings of the NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES Volume 41 Number I January 15, 1955)
- WO 2010/125086
- FR 2944706
- WO 01/97873
- US 4,891,359