(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】自動注射デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20220314BHJP
A61M 5/42 20060101ALN20220314BHJP
【FI】
A61M5/20 510
A61M5/42 510
(21)【出願番号】P 2019516065
(86)(22)【出願日】2017-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2017063087
(87)【国際公開番号】W WO2017211628
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-05-19
(32)【優先日】2016-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ケルコウ
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・シャウダーナ
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0093032(US,A1)
【文献】特表2003-533293(JP,A)
【文献】特表2014-532524(JP,A)
【文献】特表平08-508901(JP,A)
【文献】特表2009-538217(JP,A)
【文献】特表2005-516737(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0170557(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体薬剤を送達する自動注射デバイス(110、210)であって:
近位端(21)および遠位端(20)を有する注射器本体(111)と、
該注射器本体内に受け入れられたシリンジ(115)と、
該注射器本体の遠位端内の開口部の方へ延びるように該シリンジの第1の端部内に配置された針(117)と、
患者の皮膚に対する封止を形成し、それによって使用中に該注射器本体内に閉じた容積を画成するように該注射器本体の遠位端に配置された封止要素(124)とを含み、
ここで、自動注射デバイスは、閉じた容積内に減圧を生成して該自動注射デバイスを患者の皮膚に対して引き寄せるように構成され;
該自動注射デバイスは、注射プロセス中に該注射器本体(111)内に減圧を生成するように構成された減圧機構を含み、該減圧機構は、該注射器本体の長手方向において第1の位置から該注射器本体の近位端に向かって第2の位置に可動である可動部材(122、212)を含み、該可動部材は、該第1の位置から該第2の位置への該可動部材(122、212)の動きが、該注射器本体(111)内の閉じた容積を拡大して閉じた容積内に減圧を生成するように構成され、該減圧機構は、該可動部材(122、212)を第2の位置へ付勢するよう構成された付勢要素を含む、前記自動注射デバイス。
【請求項2】
ニードルスリーブ(113)をさらに含み、該ニードルスリーブは、該ニードルスリーブが前記注射器本体(111)の前記遠位端(20)から延びて前記針(117)を取り囲む伸長位置と、該ニードルスリーブが該注射器本体内へ後退して該針を露出させる後退位置との間で可動である、請求項
1に記載の自動注射デバイス(110、210)。
【請求項3】
前記可動部材(212)を前記第1の位置で保持し、前記ニードルスリーブ(113)が前記伸長位置から前記後退位置へ動くと該可動部材を解放するように構成された保持機構をさらに含む、請求項2に記載の自動注射デバイス(210)。
【請求項4】
前記ニードルスリーブ(113)は、第1の連結要素(126)を含み、前記可動部材(122)は、第2の連結要素(127)を含み、該第1および第2の連結要素は、該ニ
ードルスリーブが前記後退位置へ動くと係合する、請求項
2に記載の自動注射デバイス(110)。
【請求項5】
前記注射器本体(111)は、空気が該注射器本体から流れ出ることを可能にするが、空気がデバイス外から該注射器本体内へ流れ込むことを防止するように構成された逆止め弁(216)を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の自動注射デバイス(110、210)。
【請求項6】
前記封止要素(124)は、前記遠位端(20)で前記注射器本体(111)の縁の周りに配置された弾性の環状封止部材を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の自動注射デバイス(110、210)。
【請求項7】
閉じた容積内の減圧を前記注射器本体(111)の外側の空気圧に等しくするように動作可能な解放要素(124a、128)を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の自動注射デバイス(110、210)。
【請求項8】
前記解放要素は、逃し弁(128)を含み、前記自動注射デバイスは、薬剤送達プロセスが完了すると該逃し弁を自動的に動作させるように構成された解放機構をさらに含む、請求項
7に記載の自動注射デバイス(110、210)。
【請求項9】
前記解放要素は、使用者が該解放要素を作動させることができるように手動で動作可能である、請求項
7または
8に記載の自動注射デバイス(110、210)。
【請求項10】
前記シリンジ(115)は、液体薬剤(118)または液体薬剤のカートリッジを含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の自動注射デバイス(110、210)。
【請求項11】
液体薬剤(118)を送達する自動注射デバイス(110、210)の動作方法であって、該自動注射デバイスは、
近位端(21)および遠位端(20)を有する注射器本体(111)と、
該注射器本体内に受け入れられたシリンジ(115)と、
該注射器本体の遠位端内の開口部の方へ延びるように該シリンジの第1の端部内に配置された針(117)と、
該注射器本体の遠位端に配置された封止要素(124)と、
第1の位置から第2の位置へ可動であり、該第2の位置へ付勢される可動部材(122、212)と、該可動部材を該第2の位置へ付勢するよう構成された付勢要素を含む減圧機構と
を含み、
該注射器本体の遠位端が患者の皮膚に配置されたときに、封止要素によって該注射器本体と患者の皮膚との間に封止を形成し、それによって該注射器本体内に閉じた容積を画成することと、
該可動部材(122、212)が該第1の位置から該第2の位置へ動いて該注射器本体(111)内の閉じた容積を拡大し、それによって閉じた容積内に減圧を生成して自動注射デバイスを患者の皮膚に対して引き寄せることとを含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、薬物送達注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
注射デバイスは、様々な液体薬剤を送達するために使用される。これらのデバイスには、正規の医療訓練を受けていない人による定期的な注射が行われる適用分野がある。これは、患者の間でますます一般的になっており、自己治療により、そのような疾病の効果的な管理が有効になる。
【0003】
患者による注射デバイスの適切な使用は、それぞれの症状の効果的な治療を確実にするために不可欠である。そのような適切な使用には、注射工程が適切に行われかつ完全な薬剤用量が患者に注射されることを確実にすることが含まれる。患者が自身で完了することができるように、薬剤送達プロセスを単純明快かつ直感的にすることが有利である。注射デバイスの不完全なまたは誤った使用の結果、症状の治療が効果的でなくなり、場合により患者に負傷または不快を与える可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述した問題の1つまたはそれ以上に対処する注射デバイスを提供すること、および改善された注射デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、液体薬剤を送達する自動注射デバイスが提供され、自動注射デバイスは、近位端および遠位端を有する注射器本体と、注射器本体内に受け入れられたシリンジと、注射器本体の遠位端内の開口部の方へ延びるようにシリンジの第1の端部内に配置された針と、患者の皮膚に対する封止を形成し、それによって使用中に注射器本体内に閉じた容積を画成するように注射器本体の遠位端に配置された封止要素とを含み、自動注射器は、閉じた容積内に減圧を生成して自動注射デバイスを患者の皮膚に対して引き寄せるように構成され、自動注射デバイスは、注射プロセス中に注射器本体内に減圧を生成するように構成された減圧機構を含み、減圧機構は、可動部材を含み、可動部材は、第1の位置から第2の位置への可動部材の動きが、注射器本体内の閉じた容積を拡大して閉じた容積内に減圧を生成するように構成され、可動部材は、第2の位置へ付勢される。
【0006】
シリンジは、第1の端部の反対側に第2の端部を含むことができ、第2の端部は、開いており、注射器本体内の閉じた容積と流体連通しており、減圧機構は、シリンジを含む。
【0007】
自動注射デバイスは、ニードルスリーブをさらに含むことができ、ニードルスリーブは、ニードルスリーブが注射器本体の遠位端から延びて針を取り囲む伸長位置と、ニードルスリーブが注射器本体内へ後退して針を露出させる後退位置との間で可動である。
【0008】
自動注射デバイスは、可動部材を第1の位置で保持し、ニードルスリーブが伸長位置から後退位置へ動くと可動部材を解放するように構成された保持機構をさらに含むことができる。
【0009】
ニードルスリーブは、第1の連結要素を含むことができ、可動部材は、第2の連結要素を含むことができ、第1および第2の連結要素は、ニードルスリーブが後退位置へ動くと係合する。
【0010】
注射器本体は、空気が注射器本体から流れ出ることを可能にするが、空気がデバイス外から注射器本体内へ流れ込むことを防止するように構成された逆止め弁を含むことができる。
【0011】
封止要素は、遠位端で注射器本体の縁の周りに配置された弾性の環状封止部材を含むことができる。
【0012】
自動注射デバイスは、閉じた容積内の減圧を注射器本体の外側の空気圧に等しくするように動作可能な解放要素を含むことができる。
【0013】
解放要素は、逃し弁を含むことができ、自動注射デバイスは、薬剤送達プロセスが完了すると逃し弁を自動的に動作させるように構成された解放機構をさらに含むことができる。
【0014】
解放要素は、使用者が解放要素を作動させることができるように手動で動作可能とすることができる。
【0015】
シリンジは、液体薬剤または液体薬剤のカートリッジを含むことができる。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、近位端および遠位端を有する注射器本体と、注射器本体内に受け入れられたシリンジと、注射器本体の遠位端内の開口部の方へ延びるようにシリンジの第1の端部内に配置された針と、注射器本体の遠位端に配置された封止要素と、第1の位置から第2の位置へ可動であり、第2の位置へ付勢される可動部材を含む減圧機構とを含む、液体薬剤を送達する自動注射デバイスの動作方法が提供され、この方法は、注射器本体の遠位端を患者の皮膚に配置することと、封止要素によって注射器本体と患者の皮膚との間に封止を形成し、それによって注射器本体内に閉じた容積を画成することと、可動部材が第1の位置から第2の位置へ動いて注射器本体内の閉じた容積を拡大し、それによって閉じた容積内に減圧を生成して自動注射デバイスを患者の皮膚に対して引き寄せることとを含む。
【0017】
本発明をより完全に理解することができるように、本発明の実施形態について、例示のみを目的として、添付の図面を参照しながら次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】キャップが取り付けられている自動注射器を示す図である。
【
図1B】キャップが取り外されている
図1Aの自動注射器を示す図である。
【
図2】注射プロセス前の構成にある本発明の第1の実施形態による自動注射器を示す図である。
【
図3】注射プロセス中の第1の構成にある
図2の自動注射器を示す図である。
【
図4】注射プロセス中の第2の構成にある
図2の自動注射器を示す図である。
【
図5】注射プロセス後の構成にある
図2の自動注射器を示す図である。
【
図6】注射プロセス前の構成にある本発明の第2の実施形態による自動注射器を示す図である。
【
図7】注射プロセス中の第1の構成にある
図6の自動注射器を示す図である。
【
図8】注射プロセス中の第2の構成にある
図6の自動注射器を示す図である。
【
図9】
図2~5に示す第1の実施形態の自動注射器に類似している、封止構成にある本発明の第3の実施形態の自動注射器の一部分を示す図である。
【
図10】開封構成にある
図9の自動注射器の一部分を示す図である。
【
図11】封止構成にある圧力解放機構を示す、本発明の第4の実施形態の自動注射器の一部分を示す図である。
【
図12】開封構成にある圧力解放機構を示す、
図11の自動注射器の一部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に記載する薬物送達デバイスは、薬剤を患者に注射するように構成することができる。たとえば、送達は、皮下、筋肉内、または静脈内で行うことができる。そのようなデバイスは、患者または看護師もしくは医師などの医療従事者によって動作することができ、様々なタイプの安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器を含むことができる。デバイスは、封止されたアンプルを使用前に穿孔する必要があるカートリッジベースのシステムを含むことができる。これらの様々なデバイスによって送達される薬剤の体積は、約0.5ml~約2mlの範囲に及ぶことができる。さらに別のデバイスは、一定期間(たとえば、約5、15、30、60、または120分)にわたって患者の皮膚に付着して「大」容量の薬剤(典型的には、約2ml~約10ml)を送達するように構成された大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。
【0020】
特有の薬剤と組み合わせて、本明細書に記載するデバイスはまた、必要とされる仕様の範囲内で動作するようにカスタマイズすることができる。たとえば、デバイスは、特定の期間(たとえば、自動注射器の場合は約3~約20秒、LVDの場合は約10分~約60分)内に薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様は、低いもしくは最小の不快レベル、または人的要因、保管寿命、有効期限、生体適合性、環境的考慮などに関係する特定の条件を含むことができる。そのような変動は、たとえば、薬物の粘性が約3cP~約50cPの範囲に及ぶことなどの様々な要因に起因することができる。したがって、薬物送達デバイスは、サイズが約25~約31ゲージの範囲に及ぶ中空の針を含むことが多い。一般的なサイズは、27および29ゲージである。
【0021】
本明細書に記載する送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を含むことができる。たとえば、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動化工程のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって提供することができる。エネルギー源は、たとえば、機械、空気圧、化学、または電気のエネルギーを含むことができる。たとえば、機械エネルギー源は、エネルギーを貯蔵または解放するためのばね、てこ、エラストマー、または他の機械的機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を組み合わせて単一のデバイスにすることができる。デバイスは、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための歯車、弁、または他の機構をさらに含むことができる。
【0022】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動機能はそれぞれ、起動機構を介して起動することができる。そのような起動機構は、ボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動機能の起動は、1工程または複数工程のプロセスとすることができる。すなわち、使用者は、自動機能を引き起こすために、1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要がある。たとえば、1工程のプロセスでは、使用者は、ニードルスリーブを身体に押し当てて薬剤の注射を行うことができる。他のデバイスは、自動機能の複数工程の起動を必要とすることがある。たとえば、使用者は、注射を行うために、ボタンを押し下げてニードルシールドを後退させる必要がある。
【0023】
加えて、1つの自動機能の起動により、1つまたはそれ以上の次の自動機能を起動し、それによって起動シーケンスを形成することができる。たとえば、第1の自動機能の起動により、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの少なくとも2つを起動することができる。いくつかのデバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を行うために、特有の工程シーケンスを必要とすることがある。他のデバイスは、独立した工程シーケンスによって動作することができる。
【0024】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器のうちの1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された機械エネルギー源(典型的には、自動注射器に見られる)と、用量設定機構(典型的には、ペン注射器に見られる)とを含むことができる。
【0025】
本開示のいくつかの実施形態によれば、例示的な薬物送達デバイス10が、
図1Aおよび1Bに示されている。デバイス10は、上述したように、薬剤を患者の体内へ注射するように構成される。デバイス10は、典型的には注射予定の薬剤を含むリザーバ(たとえば、シリンジ)を含むハウジング11と、送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするために必要とされる構成要素とを含む。デバイス10はまた、ハウジング11に取外し可能に取り付けることができるキャップアセンブリ12を含むことができる。典型的には、使用者は、デバイス10を動作させる前に、キャップ12をハウジング11から取り外さなければならない。
【0026】
図示のように、ハウジング11は、実質上円筒形であり、長手方向軸Xに沿って実質上一定の直径を有する。ハウジング11は、遠位領域20および近位領域21を有する。「遠位」という用語は、注射部位に比較的近い位置を指し、「近位」という用語は、注射部位から比較的遠い位置を指す。
【0027】
デバイス10はまた、ハウジング11に連結されたニードルスリーブ13を含むことができ、ニードルスリーブ13は、ハウジング11に対するスリーブ13の動きを可能にする。たとえば、スリーブ13は、長手方向軸Xに平行して長手方向に動くことができる。具体的には、スリーブ13が近位方向に動くことで、針17がハウジング11の遠位領域20から延びることが可能になる。
【0028】
針17の挿入は、いくつかの機構を介して行うことができる。たとえば、針17は、ハウジング11に対して固定することができ、最初は延ばされたニードルスリーブ13内に位置することができる。スリーブ13の遠位端を患者の身体に押し付け、ハウジング11を遠位方向に動かすことによって、スリーブ13を近位に動かすことで、針17の遠位端が露出される。そのような相対的な動きにより、針17の遠位端が患者の体内へ延びることが可能になる。そのような挿入は、患者がハウジング11をスリーブ13に対して手動で動かすことを介して針17が手動で挿入されるため、「手動」挿入と呼ばれる。
【0029】
別の形態の挿入は、「自動」であり、針17がハウジング11に対して動く。そのような挿入は、スリーブ13の動きによって、またはたとえばボタン22などの別の形態の起動によってトリガすることができる。
図1Aおよび1Bに示すように、ボタン22は、ハウジング11の近位端に位置する。しかし、他の実施形態では、ボタン22は、ハウジング11の側に位置することもできる。
【0030】
他の手動または自動の機能は、薬物の注射もしくは針の後退、または両方を含むことができる。注射とは、栓またはピストン23をシリンジ(図示せず)内の近位位置からシリンジ内のより遠位の位置へ動かし、針17を通ってシリンジから薬剤を押し出すプロセスである。いくつかの実施形態では、デバイス10が起動される前、駆動ばね(図示せず)が圧縮されている。駆動ばねの近位端は、ハウジング11の近位領域21内に固定することができ、駆動ばねの遠位端は、ピストン23の近位面に圧縮力を印加するように構成することができる。起動後、駆動ばね内に貯蔵されているエネルギーの少なくとも一部をピストン23の近位面に印加することができる。この圧縮力は、ピストン23に作用してピストン23を遠位方向に動かすことができる。そのような遠位への動きは、シリンジ内の液体薬剤を圧縮して針17から押し出すように作用する。
【0031】
注射後、スリーブ13またはハウジング11内で針17を後退させることができる。使用者が患者の身体からデバイス10を取り出すときにスリーブ13が遠位に動くため、後退を行うことができる。これは、針17がハウジング11に対して固定されたまま行うことができる。スリーブ13の遠位端が針17の遠位端を越え、針17が覆われた後、スリーブ13をロックすることができる。そのようなロックは、ハウジング11に対するスリーブ13の近位への動きをロックすることを含むことができる。
【0032】
針17がハウジング11に対して動かされる場合、別の形態の針の後退を行うことができる。そのような動きは、ハウジング11内のシリンジがハウジング11に対して近位方向に動かされる場合に生じることがある。この近位への動きは、遠位領域20内に位置する後退ばね(図示せず)を使用することによって実現することができる。圧縮された後退ばねは、起動されると、シリンジを近位方向に動かすのに十分な力をシリンジに供給することができる。十分な後退後は、ロッキング機構によって、針17とハウジング11との間の相対的な動きをロックすることができる。加えて、必要とされる場合、ボタン22またはデバイス10の他の構成要素もロックすることができる。
【0033】
図2~5を次に参照すると、本発明の第1の実施形態による自動注射器110が示されており、自動注射器110は、遠位領域20および近位領域21を有する注射器ハウジング本体111(以下、「本体」)を含む。本体111内にニードルスリーブ113が設けられ、本体111に対して伸長位置(
図2および
図5に示す)と後退位置(
図3および
図4に示す)との間で摺動可能である。ニードルスリーブ113は、略管状の構造である。
【0034】
ニードルスリーブ113内にシリンジホルダ114が配置され、シリンジ115または液体薬剤118のカートリッジを受け入れるように構成される。別法として、シリンジ115が、液体薬剤118のカートリッジを受け入れるように構成することもできる。シリンジ115は、一方の端部に針117を含み、本体111の遠位端20に配置される。針117は、本体の遠位端20を越えて延びる。ニードルスリーブ113は、その伸長位置で針117を取り囲み、ニードルスリーブ113がその後退位置へ動かされると、針117は露出される。
【0035】
シリンジ115は、針117とは反対側の端部にストッパ116を含み、ストッパ116は、シリンジ115内で液体薬剤118を保持するためにシリンジ115の内壁を封止する。ストッパ116に隣接してプランジャ119が配置され、シリンジ115内でストッパ116を動かして針117から薬剤118を排出する。プランジャ119の周りにプランジャばね120が設けられ、プランジャ119をストッパ116に向かう方向へ付勢するように作用する。プランジャ119にパワーパック121(
図2~5に概略的にのみ示す)が連結され、プランジャばね120に支援されて、プランジャ119をストッパ116に向かう方向へ駆動する。
【0036】
本体111の近位端21は、円筒形のカバー122の形態の可動部材によって閉じられる。円筒形のカバー122は、本体111の近位端21内に摺動可能に受け入れられる。カバー122を覆って可撓性キャップ123が配置され、可撓性キャップ123は、カバー122に連結された平坦な端部123aと、本体111に固定されたスカート部分123bとを含む。それによって可撓性キャップ123は、本体111の近位端21を覆う気密封止を形成する。本体111は、遠位端20で開いているが、その長さに沿って、空気が自由に流れることができるいかなる他の通路も含まない。したがって、本体111の遠位端20が閉じられて封止された場合、封止された閉じた容積が本体111内に画成される。
【0037】
可撓性キャップ123は、平坦な端部123aとスカート123bとの間にばねセクション123cを含む。ばねセクション123cは、伸展状態(
図2および
図4に示す)と圧縮状態(
図3および
図5に示す)との間で可撓性キャップが変形することを可能にするように構成される。ばねセクション123cは、可撓性キャップ123を伸展状態に付勢するように構成される。これは、可撓性キャップ123が作られるゴムなどの材料の弾性によるものである。別法または追加として、可撓性キャップ123は、可撓性キャップ123の本体に固定されまたはその中に埋め込まれた追加のばね要素(図示せず)を含むこともできる。
【0038】
本体111の遠位端20は、本体111の端縁の周りに固定された環状要素の形態の封止部材124を含む。
【0039】
ニードルスリーブ113を伸長位置に付勢するスリーブばね125が設けられる。スリーブばね125は、本体111の内壁から延びる内向きの突出部と、ニードルスリーブ113の外壁から延びる外向きの突出部とに連結される。本発明の範囲内で、1つまたは複数のスリーブばね125を設けることができ、内向きおよび外向きの突出部は、環状フランジ、またはそれぞれ本体111およびニードルスリーブ113の周辺部から延びる複数の個別の突出部を含むことができる。
【0040】
本体111の近位端21付近のニードルスリーブ113の端部は、フック126の形態の第1の連結要素を含み、フック126は、本体111の近位端21に向かう方向を向いている傾斜面と、本体111の遠位端20に向かう方向を向いている径方向面とを有する。カバー122は、フック126と位置合わせされたアパーチャ127の形態の第2の連結要素を含む。
【0041】
本発明の第1の実施形態の自動注射器110の動作について、次に説明する。最初に、自動注射器110は
図2に示す構成にあり、ニードルスリーブ113は伸長位置にある。自動注射器110の遠位端20が、患者の身体の注射部位に押し付けられる。ニードルスリーブ113は、本体111内で伸長位置から後退位置へ摺動し、スリーブばね125を圧縮させる。それによって、針117が露出されて患者の皮膚を穿孔し、封止部材124が、注射部位の周りに患者の皮膚に対する気密封止を生み出す。それによって本体111の遠位端20が封止部材124および患者の皮膚によって閉じられて封止されるため、それによって封止された閉じた容積が本体111内に画成される。封止部材124は、患者の皮膚に対する効果的な封止を実現するのを助けるために、
図2および
図3に示す封止部材124の形状の変化によって示すように、変形可能とすることができる。次いで患者は、可撓性キャップ123の平坦な端部123aを押し、ばねセクション123cを圧縮状態に変形させ、カバー122を本体111内へ摺動させる。この本体111内の空気圧の増大により、本体111内から封止部材124を越えて空気が排出される。代替構成では、本体111は、本体111内の圧力が本体111外の周囲空気圧を上回ったとき、空気が本体から大気へ流れ出ることを可能にするための逆止め弁を含むことができる。逆止め弁は、本体111内の圧力が本体111外の周囲大気圧より下がったとき、空気が本体111内へ逆流するのを防止するはずである。フック126の傾斜面は、カバー122の遠位端を載り越え、フック126はアパーチャ127内に位置する。それによって自動注射器は、
図3に示す構成になる。
【0042】
図3に示す構成になった後、ばねセクション123cは、可撓性キャップ123が作られる材料および/または任意の追加のばね要素(図示せず)の弾性によって、その伸展状態に適切に戻るように付勢される。この構成を
図4に示す。これにより本体111内の閉じた容積が拡大し、その結果、本体111によって画成された閉じた容積内で、周囲圧力に対して減圧が生じる。その結果生じる吸引作用により、自動注射器110は患者の皮膚に対して引き寄せられ、自動注射器110を定位置で支持するのを助ける。
【0043】
自動注射器110が
図3に示す構成にあったとき、カバー122が事前にパワーパック121に接触して起動させていたことで、プランジャ119を作動させてストッパ116を駆動し、患者の体内へ薬剤118を送達する。
【0044】
薬剤送達動作が完了した後、患者は自動注射器110を自身の皮膚から取り外す。これは、患者が可撓性キャップ123の平坦な端部123aを押してばねセクション123cを圧縮状態に変形させ、カバー122を本体111内へ摺動させることによって実現することができる。これにより、本体111内の内部閉じた容積が低減され、それによってその中の減圧の程度が低減され、したがって患者の皮膚に対する自動注射器110の吸引作用が低減される。次いでニードルスリーブ113が、スリーブばね125の力を受けて伸長位置に摺動し、針117を取り囲む。フック126がカバー122内のアパーチャ127の縁部に係合し、やはりスリーブばね125によって提供される力を受けて、カバー122をその圧縮位置へ引き寄せる。
【0045】
本発明の自動注射器210の第2の実施形態が
図6~8に示されており、第1の実施形態の機能に共通する機能は、同じ参照番号を有する。自動注射器210は、遠位領域20および近位領域21を有する注射器ハウジング本体111(以下、「本体」)を含む。本体111内にニードルスリーブ113が設けられ、本体111に対して伸長位置(
図6に示す)と後退位置(
図7および
図8に示す)との間で摺動可能である。ニードルスリーブ113は、略管状の構造である。
【0046】
ニードルスリーブ113内にシリンジホルダ114が配置され、シリンジ115または液体薬剤118のカートリッジを受け入れるように構成される。シリンジ115は、一方の端部に針117を含み、本体111の遠位端20に配置される。針117は、本体の遠位端20を越えて延びる。ニードルスリーブ113は、その伸長位置で針117を取り囲み、ニードルスリーブ113がその後退位置へ動かされると、針117は露出される。
【0047】
シリンジ115は、針117とは反対側の端部にストッパ116を含み、ストッパ116は、シリンジ115内で液体薬剤118を保持するためにシリンジ115の内壁を封止する。ストッパ116に隣接してプランジャ119が配置され、シリンジ115内でストッパ116を動かして針117から薬剤118を排出する。プランジャ119の周りにプランジャばね120が設けられ、プランジャ119をストッパ116に向かう方向へ付勢するように作用する。プランジャ119にパワーパック121(
図6~8に概略的にのみ示す)が連結され、プランジャばね120に支援されて、プランジャ119をストッパ116に向かう方向へ駆動する。パワーパック121は、パワーパック121の近位端に起動ボタン211を含み、起動ボタン211は、患者によって作動されるように、本体111の近位端を通って延びる。本体111とパワーパック121/起動ボタン211との間の領域は、本体111とパワーパック121/起動ボタン211との間を空気が通過することができないように封止される。
【0048】
本体111の遠位端20は、本体111の端縁の周りに固定された環状要素の形態の封止部材124を含む。
【0049】
カラー212の形態の可動部材が、本体111内に摺動可能に受け入れられ、本体111とニードルスリーブ113との間に配置される。カラー212は、本体111の遠位端20付近に配置される第1の位置(
図6および
図7に示す)と、本体111の近位端21付近または少なくとも近位端21の方へより遠くに配置される第2の位置(
図8に示す)との間で摺動可能である。カラー212の外周にはOリングなどの第1の環状封止部213が設けられ、本体111の内壁に接触している。それによって第1の環状封止部213は、カラー212と本体111との間に封止を形成する。カラー212の内周にはOリングなどの第2の環状封止部214が設けられ、ニードルシールド113の外壁に接触している。それによって第2の環状封止部214は、ニードルシールド113とカラー212との間に封止を形成する。
【0050】
本体111の近位端21とカラー212との間に延びる少なくとも1つのカラーばね215が設けられる。
図6~8に示す実施形態では、2つのカラーばね215が示されているが、別法として、1つのカラーばねまたは3つ以上のカラーばねが存在することもできる。たとえば、ニードルシールド113を取り囲む単一のカラーコイルばねを設けることができる。カラーばね215は、カラー212を本体111の近位端21の方へ付勢するように構成され、
図6および
図7では引張り状態にあり、
図8では引張りが低減された状態にある。
【0051】
本体111の近位端21に一方向弁216が設けられ、空気が本体111内から外へ流れ出ることを可能にするが、本体111によって画成された内部空間内へ空気が流れ込むことは可能にしないように構成される。
【0052】
本体の近位端21とニードルスリーブ113との間に、少なくとも1つのスリーブばね125が設けられる。
図6~8に示す実施形態では、2つのスリーブばね125が設けられているが、別法として、1つのスリーブばねまたは3つ以上のスリーブばねが存在することもできる。スリーブばね215は、ニードルスリーブ113を
図6に示す伸長位置へ付勢するように構成される。
【0053】
カラー212とニードルスリーブ113との間に、保持機構(図示せず)が設けられる。保持機構は、ニードルスリーブ113が伸長位置にあるとき、カラーばね215の力に逆らって、カラー212を第1の位置で保持する。保持機構は、ニードルスリーブ113が後退位置へ動かされると、カラー212が解放されてカラーばね215の力を受けて本体内で自由に摺動できるように構成される。これは、たとえば、それぞれカラー212およびニードルスリーブ113上の適切な形状のピンおよびスロットの配置によって実現することができる。
【0054】
本発明の第2の実施形態の自動注射器210の動作について、次に説明する。最初に、自動注射器210は
図6に示す構成にあり、ニードルスリーブ113は伸長位置にあり、カラー212は第1の位置にある。自動注射器210の遠位端20は、患者の身体の注射部位に押し付けられる。ニードルスリーブ113は、本体111内へ押し込まれて、伸長位置から後退位置へ摺動し、スリーブばね125を圧縮させる。それによって、針117が露出されて患者の皮膚を穿孔し、封止部材124が、注射部位の周りに患者の皮膚に対する気密封止を生み出す。自動注射器210は、
図7に示す構成になる。それによって本体111の遠位端20が封止部材124および患者の皮膚によって閉じられて封止されるため、それによって封止された閉じた容積が本体111内に画成される。第1の実施形態と同様に、封止部材124は、患者の皮膚に対する効果的な封止を実現するのを助けるために、
図6および
図7に示す封止部材124の形状の変化によって示すように、変形可能とすることができる。
【0055】
ニードルシールド113が後退位置に着いた後、保持機構は、カラー212を解放し、次いでカラー212は、カラーばね215によって本体111の近位端21の方へ引き寄せられる。次いで自動注射器210は、
図8に示す構成になる。第1および第2の環状封止部213、214は、空気が本体111の一方の端部から他方の端部へカラー212を越えて進むのを防止する。したがって、封止部材124が患者の皮膚を封止するため、カラー212が本体111の近位端21の方へ動くことで、カラー212と患者の皮膚との間の本体内の閉じた容積が拡大するが、空気がその容積に入ることはできないことから、容積内に減圧を生み出し、それによって自動注射器210を患者の皮膚に対して引き寄せる吸引作用を生み出し、次の薬剤送達プロセス中に自動注射器210を定位置で支持して安定させるのを助ける。患者の皮膚に対する吸引の感覚はまた、自動注射器210が自身の皮膚で定位置に適切に固定されており、薬剤送達を開始する準備ができているという触覚インジケーションを患者に与える働きをする。
【0056】
本体111のうち、カラー212と本体111の近位端21との間の閉空間内の空気は、逆止め弁216を介して逃げることが可能である。これにより、この領域内の空気圧の蓄積を防止し、カラー212が本体111の近位端21の方へ動くのを抑制する。
【0057】
次いで患者は、本発明の第1の実施形態を参照して上述した方法と同様に、パワーパック121上の起動ボタン211を押し、それによりパワーパック121を起動し、プランジャ119を作動させてストッパ116を駆動し、患者の体内へ薬剤118を送達する。
【0058】
薬剤送達動作が完了した後、患者は自動注射器210を自身の皮膚から取り外す。これは、患者が、負力によって生じる吸引力に逆らって、自身の皮膚からデバイスを引き抜くことによって実現することができる。自動注射器210が患者の皮膚から取り外された後、次いでニードルスリーブ113が、スリーブばね125の力を受けて伸長位置に摺動し、針117を取り囲む。
【0059】
第2の実施形態の自動注射器210について、ニードルスリーブ113が後退位置に動かされるとカラー212を自動的に解放する保持機構を有するものとして説明したが、本発明は、このデバイス構成に限定されるものではなく、代替のカラー解放機構も、本発明の範囲内で意図される。たとえば、自動注射器210は、本体111の外壁上のボタンなど、患者によって作動されてカラー212を解放する手動起動機構を含むことができる。すなわち、使用者は、本体111内に減圧を生成する機構を手動で起動することができる。
【0060】
第2の実施形態の自動注射器210について、逆止め弁216を有するものとして説明したが、本発明の範囲内に入ることが意図される第2の実施形態の変形形態では、逆止め弁を省略することができ、カラー212と本体111の近位端21との間の領域内の空気圧の蓄積をカラーばね215の力によって抑制することができる。
【0061】
第1の実施形態の自動注射器について、それぞれフック126およびアパーチャ127の形態の第1および第2の連結要素を有するものとして説明したが、これらを逆にすることもでき、したがって可動のカバー122が、1つまたはそれ以上のフックを含み、ニードルスリーブ113が、1つまたはそれ以上の対応するアパーチャを含む。また、たとえば係合可能なフック対または爪およびラチェット機構など、連結要素の代替構成も、本発明の範囲内で想定される。
【0062】
本発明の第1および第2の実施形態の両方において、本体111内の減圧を外部の周囲圧力に等しくすることを容易にするように構成された自動注射器の変形形態が、本発明の範囲内で想定される。1つのそのような変形形態が、本発明の第3の実施形態および第1の実施形態の自動注射器110の変形形態として、
図9および
図10に示されている。しかし、この変形形態は、第2の実施形態の自動注射器210にも等しく適用することができる。同様の機能は、同じ参照番号を有する。第3の実施形態の自動注射器の違いは、封止部材124が、封止部材124の外縁から延びる解放タブ124aの形態の解放要素を含むことである。患者は、薬剤送達プロセスが終了した後、解放タブ124aを引っ張って皮膚と封止部材124との間の封止を破り、空気が本体111内の容積に入ることを可能にし、それによって自動注射器110を患者の皮膚から取り外すことを容易にすることができる。
【0063】
第2の変形形態は、本発明の第4の実施形態および第1の実施形態の自動注射器110の変形形態として、
図11および
図12に示されている。しかし、この変形形態は、第2の実施形態の自動注射器210にも等しく適用することができる。同様の機能は、同じ参照番号を有する。第4の実施形態の自動注射器の違いは、本体111が、真空解放機構128の形態の解放要素を含むことであり、患者は、本体111内の減圧を周囲空気圧に等しくするために、この解放要素を手動で作動させることができる。真空解放機構128は、本体111内にアパーチャ129を含む。本体の内壁上でアパーチャ129の周りに弾性封止部130が設けられ、弾性封止部130は、ゴムもしくは類似の材料のビード、またはOリングを含むことができる。本体111の内側では、アパーチャ129を覆って板131が摺動可能に取り付けられ、板131は、アパーチャ129を通って延びる突出部132を含む。板131は、閉位置(
図11に示す)と開位置(
図12に示す)との間で可動である。使用者は、突出部132を操作して、板131を2つの位置間で動かすことができる。板131は、空気がアパーチャ129を通って本体111の内側と本体111の外側との間を流れるのを防止するように、弾性封止部130に接触している。この板に、通気孔133が設けられる。閉位置で、通気孔133は、弾性封止部130の周辺部外にあり、開位置で、通気孔133は、弾性封止部の周辺部内にあり、アパーチャ129と流体連通している。使用の際、本体111内で減圧が維持される薬剤送達プロセス中、板131は、減圧が維持されることを確実にするために閉位置にある。薬剤送達プロセスが終了した後、患者は、真空解放機構128を手動で作動させて、本体111内の減圧を周囲空気圧に等しくし、空気が本体111内の容積に入ることを可能にし、それによって自動注射器110を患者の皮膚から取り外すことを容易にすることができる。これは、突出部132を使用して板131を開位置へ摺動させ、空気がアパーチャ129および通気孔133を通って本体111外から本体111内へ流れることを可能にすることによって行われる。
【0064】
本発明の第3および第4の実施形態の減圧を等しくする構成は、本発明の第2の実施形態の自動注射器210ならびに本発明の第1の実施形態の自動注射器110にも等しく適用することができることが理解されよう。患者が本体111内の減圧を周囲空気圧に手動で等しくすることを可能にする機構の利点は、手動制御機能(manual override function)を提供することであり、したがって患者は、必要な場合、自動注射デバイスを自身の皮膚から迅速に取り外すことができる。
【0065】
本発明の範囲内で、自動注射器は、本体111内の減圧を周囲空気圧に自動的に等しくすることができることが意図される。そのような機構は、注射および薬剤送達プロセスが完了したとき、パワーパック121によってトリガすることができる。たとえば、本体111は、パワーパック121に連結されたアクチュエータを有する弁を含むことができ、したがってパワーパック121は、アクチュエータを動作させて弁を開く。別法として、この機構は、薬剤送達プロセスが完了したとき、機械的にトリガすることができる。たとえば、プランジャ119は、プランジャがシリンジ115から薬剤用量を押し出した後、完全伸長位置に到達すると、本体111内の弁に係合して弁を開く突出部を含むことができる。薬剤送達プロセスの終了時に自動的に圧力を等しくする利点は、薬剤送達プロセスが終了したというフィードバックを触覚インジケーションによって患者に提供し、それによって改善されたデバイスの有用性を提供することである。
【0066】
本発明の実施形態では、患者へ薬剤が送達されるとき、ストッパ116は、本体111の遠位端20の方へ摺動し、シリンジ115内でストッパ116の後ろに空間を残す。この空間は、以前は液体薬剤118で充填されていたものであり、減圧された本体111内の閉空間と流体連通している。これにより、本体内の閉じた総容積が増大するが、これ以上の空気が閉じた容積に入ることはできず、それによって本体111内の圧力をさらに低減させ、患者の皮膚に対する吸引作用を増大させる。場合により、これは許容可能であり、上記で論じた患者の皮膚に対する吸引作用の利点を実現するのを助ける。しかし、減圧が患者にとって不快になり得るレベルに到達する可能性もある。また、減圧は、ストッパ116に逆らうように作用して薬剤118の効果的な送達を失速させ始めるレベルに到達する可能性もある。したがって、本発明の実施形態は、本体111内に形成された過圧弁(overpressure valve)を含むことができる。そのような過圧弁は、本体111内の減圧が閾値レベルに到達すると開くように構成することができる。過圧弁は、所定の開放張力を有する弁ばねを含むことなどによって、閾値レベルで機械的に開くように構成することができる。別法として、過圧弁は、電子的に作動させることができる。たとえば、本体内、たとえばパワーパック121内に、圧力センサを設けることができ、過圧弁は、圧力センサが閾値圧力に到達したことを検出すると送られる信号によって弁を開くように動作されるアクチュエータを含むことができる。そのような過圧弁は、所定の範囲の圧力レベルで本体111内の減圧を調整するように構成することができる。すなわち、過圧弁は、過圧弁が作動するとき、本体111内の減圧を完全に等しくしなくてもよい。それによって過圧弁は、本体111内の減圧が許容できるレベルに戻った後に閉じることができる。
【0067】
上述した本発明の実施形態では、シリンジ115からの薬剤118の放出によって行うことができる補助的な減圧に加えて、本体111内に減圧を生成する機構が提供されることが理解されよう。しかし、第1および第2の実施形態の変形形態を本発明の範囲内に含むことができることが意図され、そのような変形形態では、ストッパ116が本体111の遠位端20の方へ摺動し、シリンジ115内でストッパ116の後ろに空間を残すことのみによって、本体111内の減圧が生み出される。この空間は、以前は液体薬剤118で充填されていたものであり、本体111内の閉空間と流体連通している。これにより、本体内の閉じた総容積が増大するが、これ以上の空気が閉じた容積に入ることはできず、それによって本体111内の圧力を低減させ、患者の皮膚に吸引作用を引き起こし、その結果、前述の利点が得られる。自動注射器のそのような実施形態は、たとえば、
図2~5に示す第1の実施形態の自動注射器110と同様に構成することができるが、可動のカバー122および可撓性キャップ123は省略され、本体111は単に、固定された閉じた近位端21を有する。そのような近位端は、本発明の第2の実施形態と同様に、パワーパック121からの起動ボタン211を含むことができる。別法として、自動注射器のそのような実施形態は、たとえば、
図6~8に示す第2の実施形態の自動注射器210と同様に構成することができるが、カラー212およびカラーばね215は省略される。どちらの場合も、本体111の近位端21付近のシリンジ115の端部が開いており、本体111内の内部閉空間と流体連通していることが必要になるはずである。
【0068】
自動注射器の第1および第2の実施形態について、プランジャ119を作動させるためのパワーパック121を含むものとして説明したが、本発明は、パワーパックを有する自動注射器に限定されることを意図するものではなく、別法として、自動注射器の実施形態は、プランジャ119を駆動するために、パワーパック121ではなくプランジャばね120を含むこともできる。したがって、いくつかの実施形態では、プランジャばね120が、シリンジ115から患者の体内へ液体薬剤を送達するためにプランジャ119を駆動し、なおかつ本体111内に減圧を生成する場合もある。そのような実施形態では、プランジャばね120は、両方の機能を実行するのに十分な力を提供するように構成することができる。そのような実施形態では、プランジャの作動は、たとえば機械的解放機構によって行うことができる。
【0069】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0070】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0071】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0072】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0073】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0074】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0075】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0076】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0077】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0078】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0079】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0080】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0081】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0082】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0083】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0084】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0085】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0086】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0087】
本発明の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、物質、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または除去)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。