(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】抗癌剤としての4-アニリノ-キノリン化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 215/44 20060101AFI20220314BHJP
A61K 31/4706 20060101ALI20220314BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20220314BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20220314BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20220314BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220314BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220314BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
C07D215/44 CSP
A61K31/4706
A61K31/4709
A61K31/496
A61K31/5377
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019521185
(86)(22)【出願日】2017-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2017067306
(87)【国際公開番号】W WO2018007648
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-07-10
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】505039767
【氏名又は名称】ユニベルスィテ・ドゥ・ニース・ソフィア・アンティポリス
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】519005484
【氏名又は名称】セアシュユ・ドゥ・ニース
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー・パッスロン
(72)【発明者】
【氏名】ラシッド・ベンヒーダ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ダオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・マルコ・デ・ドナティス
(72)【発明者】
【氏名】アントニー・マルタン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/130411(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103232444(CN,A)
【文献】米国特許第03075981(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102249997(CN,A)
【文献】OTEVREL,J. et al.,Antimycobacterial and photosynthetic electron transport inhibiting activity of ring-substituted 4-arylamino-7-chloroquinolinium chlorides,Molecules,2013年,Vol.18, No.9,p.10648-10670
【文献】REGISTRY[online],2010.08.05, [Retrieved on 2021.04.05], Retrieved from:STN, CAS登録番号 1235080-72-4
【文献】REGISTRY[online],2007.03.01, [Retrieved on 2021.04.05], Retrieved from:STN, CAS登録番号 924143-41-9
【文献】REGISTRY[online],2010.08.04, [Retrieved on 2021.04.05], Retrieved from:STN, CAS登録番号 1235000-61-9
【文献】Dakshanamurthy, S et al,In-silico fragment-based identification of novelangiogenesis inhibitors,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.17,2007年,p.4551-4556
【文献】Liu, D et al.,Synthesis and Anti-Tumor Activities of 4-Anilinoquinoline Derivatives,Molecules,Vol.21,2016年,p.1-8,URL:http://www.mdpi.com/1420-3049/21/1/21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
[式中、
R
1は、H、アルキル、ハロ、OH、O-アルキル、NH
2、NH-アルキル、N-(アルキル)
2、S-アルキル、CF
3、OCF
3、OCF
2H、及びO(CH
2)
n1O(CH
2)
n2CH
3から選択され、
n
1は1から4であり、n
2は0から3であり、ハロは、Cl、F、Br、及びIから選択され;
nは1または2であり、
nが2である場合には、R
1は、フェニル基と一緒にメタ位及びパラ位でジオキソラン基もしくは1,4-ジオキサン基を形成することができ、
R
2は、ハロ、及びNR
3R
4から選択され、ハロは、既に定義した通りであり、
R
3はHであり、R
4は、OH、O-アルキル、及びハロから選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されたフェニルであり、あるいは、R
3及びR
4は一緒に(CH
2)
2O(CH
2)
2鎖を形成し、すなわちNR
3R
4がモルホリノ基:
【化2】
を形成し、
R
5は、H、環式基、O-アルキル、O-(CH
2)
n1-(環式基)、(CH
2)
n1-(環式基)から選択され、n
1は既に定義した通りであり、前記環式基は、下式:
【化3】
より選択され、
R
6は、H及びハロから選択され、
R
2がハロであるかまたはR
6がハロである場合には、R
5はHではないことを条件とする]
の化合物、あるいはその薬学的に許容される塩及び/または光学異性体、互変異性体、溶媒和物、または同位体変種。
【請求項2】
一般式(2):
【化4】
[式中、R
1、R
3、R
4、R
5、R
6、及びnは、請求項1に定義した通りである]
の、請求項1に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容される塩及び/または光学異性体、互変異性体、溶媒和物、または同位体変種。
【請求項3】
一般式(3):
【化5】
[式中、R
1、R
5、R
6、及びnは、請求項1に定義した通りであり、Xは、Cl、F、Br、及びIから選択されるハロであり、R
5はHではないことを条件とする]
の、請求項1に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容される塩及び/または光学異性体、互変異性体、溶媒和物、または同位体変種。
【請求項4】
R
1は、メチル(CH
3)、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ヒドロキシ(OH)、メトキシ(OCH
3)、CF
3、OCF
3、OCF
2H、及びO(CH
2)
2OCH
3から選択され、ここで、nが2である場合には、置換基R
1が同一または相違する、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
nが2である場合に、2つのR
1が、フェニル基と一緒にメタ位及びパラ位でジオキソラン基もしくは1,4-ジオキサン基を形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
3がHであり、R
4が、OH、OCH
3、及びハ
ロから選択される1つ、または同一もしくは相違する2つの基で置換された、または未置換のフェニルである、請求項1、2、及び4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R
3及びR
4が、共に(CH
2)
2O(CH
2)
2鎖を形成し、すなわちNR
3R
4がモルホリノ基を形成する、請求項1、2、及び4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
・N-(3,5-ジフルオロフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(p-トリル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(o-トリル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(3-メトキシフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N
4, N
7-ビス(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4, N
7-ビス(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N
7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N
7-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(p-トリル)-N
7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(p-トリル)-N
7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-N
7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(o-トリル)-N
7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(4-メトキシフェニル)-N
7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(3-メトキシフェニル)-N
7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N
7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロ-2-メトキシ-キノリン-4-アミン、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-キノリン-4-アミン、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロ-2-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-キノリン-4-アミン、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-(2-モルホリノエトキシ)キノリン-4-アミン、及び
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-メトキシ-キノリン-4-アミン
から選択される、請求項1に記載の化合物、あるいはその薬学的に許容される塩及び/または光学異性体、互変異性体、溶媒和物、または同位体変種。
【請求項9】
癌の治療に使用するための請求項1から8のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項10】
前記癌が、黒色腫、膀胱癌、腎臓癌、前立腺癌、結腸癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、及び血液癌から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項12】
癌の治療用の使用のための、一般式(I):
【化6】
[式中、
R
1は、H、アルキル、ハロ、OH、O-アルキル、NH
2、NH-アルキル、N-(アルキル)
2、S-アルキル、CF
3、OCF
3、OCF
2H、及びO(CH
2)
n1O(CH
2)
n2CH
3から選択され、
n
1は1から4であり、n
2は0から3であり、ハロは、Cl、F、Br、及びIから選択され;
nは1または2であり、
nが2である場合には、R
1は、フェニル基と共にメタ位及びパラ位でジオキソラン基もしくは1,4-ジオキサン基を形成することができ、
R
2は、H、ハロ、及びNR
3R
4から選択され、ハロは、既に定義した通りであり、
R
3はHであり、R
4は、OH、O-アルキル、及びハロから選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されたフェニルであり、あるいは、R
3及びR
4は共に(CH
2)
2O(CH
2)
2鎖を形成し、すなわちNR
3R
4がモルホリノ基:
【化7】
を形成し、
R
5は、H、環式基、O-アルキル、O-(CH
2)
n1-(環式基)、(CH
2)
n1-(環式基)から選択され、n
1は既に定義した通りであり、前記環式基は、下式:
【化8】
より選択され、
R
6は、H及びハロから選択され、
R
2がFであり、R
5=R
6=Hである場合には、R
1は3-Cl;4-Cl;3-F;4-OCH
3;4-CH
3;3-Cl及び4-F;3-Cl及び4-Cl;または4-Fではないことを条件とし、
R
2がClであり、R
5=R
6=Hである場合には、R
1は4-OHでも4-Clでもないことを条件とする]
の化合物、あるいはその薬学的に許容される塩及び/または光学異性体、互変異性体、溶媒和物、または同位体変種を含む、医薬組成物。
【請求項13】
前記癌が、黒色腫、膀胱癌、腎臓癌、前立腺癌、結腸癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、及び血液癌から選択される、請求項
12に規定の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
化合物が、
・N-(3,5-ジフルオロフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン、
・N-(4-メチルフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン、
・N-(3-トリフルオロメチルフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン、
・N-(2-メチルフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン、
・N-(3-メトキシフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン、
・N-(4-トリフルオロメチルフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン、
・N-(3,5-ジフルオロフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(4-(ジフルオロメトキシ)フェニル)-7-クロロ-キノリン-4-アミン、
・N-(4-メトキシ-3-(2-メトキシエトキシ)フェニル)-7-クロロ-キノリン-4-アミン、
・N-(4-トリフルオロメトキシフェニル)-6-クロロキノリン-4-アミン、
・N-(2,4-ジメトキシフェニル)-6-クロロキノリン-4-アミン、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン、
・N-(2,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン、
・N-(p-トリル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(o-トリル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(3-メトキシフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N
4, N
7-ビス(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4, N
7-ビス(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N
7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N
7-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(p-トリル)-N
7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(p-トリル)-N
7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-N
7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(o-トリル)-N
7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(4-メトキシフェニル)-N
7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(3-メトキシフェニル)-N
7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N
4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N
7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロ-2-メトキシ-キノリン-4-アミン、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-キノリン-4-アミン、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロ-2-モルホリノキノリン-4-アミン、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-キノリン-4-アミン、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-(2-モルホリノエトキシ)キノリン-4-アミン、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-メトキシ-キノリン-4-アミン、
・7-クロロ-N-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)キノリン-4-アミン、及び
・7-クロロ-N-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)キノリン-4-アミン、
あるいは、薬学的に許容される、その塩及び/または光学異性体、互変異性体、溶媒和物、または同位体変種から選択される、請求項
12または
13に規定の使用のための医薬品組成物。
【請求項15】
抗PD1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L1抗体、及びこれらの2つ以上の混合物から選択される抗体との併用投与のための、請求項
12から
14のいずれか一項に規定の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療に活性な新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
メラニン形成細胞の転換に由来する皮膚黒色腫は、若年成人の間で最も致死率の高い癌の1つである。その発生率は過去数十年の間に劇的な速度で増加している。黒色腫は他の臓器への侵襲及び急速な転移の高い能力を有する。
【0003】
細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、さらに最近では、プログラム細胞死1(PD1)及びプログラム細胞死リガンド1(PDL-1)を標的とする免疫チェックポイント遮断は、癌治療における最近の大きな進歩である。転移性黒色腫を治療するために最初に開発されたこれらの標的に対する抗体は、患者の全生存を有意に増大させ、現在では、別の固形癌、例えば、腎臓癌、前立腺癌、結腸癌、及び肺癌等を治療するために評価されている。抗PD1抗体は、抗CTLA-4抗体よりも良好な結果を示したとはいえ、癌の種類及び治療の組み合わせによって奏効率は低いままである(10%~57%)。黒色腫の治療には、抗PD1と抗CTLA-4との組み合わせが、これまでで最高の完全奏効率11.5%を挙げているが、ほぼ70%の割合のスケール(Grade)3またはスケール4の副作用を伴う。したがって、これらのアプローチから利益を得る患者はほとんどおらず、こうした反応に対する予測因子は未だ同定されていない。蓄積されている証拠は、インターフェロンガンマ(IFN-γ)が抗PD1治療に対する応答において重要な役割を果たすことを示唆している(1-3)。黒色腫治療への免疫ベースの全てのアプローチ(抗PD1を含む)のメタ分析は、白斑脱色素症の患者が、他の患者と比較して、無増悪生存及び全生存の割合が有意に優れていることを示した(4)。さらに、白斑患者は、黒色腫を発症するリスクが3倍低い(5)。ますます多くのデータが、白斑脱色素症のプロセスに関与するIFN-γ/CXCL10経路が、黒色腫リスクの決定において重要な役割を果たすことを示している(6)。したがって、IFN-γ応答は、チェックポイント遮断治療アプローチを容易にする重要な因子に関係があるとされる。本出願の発明者らは、最近、非標準的なNF-kB経路の阻害並びに上流のNF-kB誘導キナーゼ(NIK)の阻害が、EZH2転写の減少によってメラノーマ細胞における老化プログラムを回復させ、有意に腫瘍成長を抑制することを示した(7)。細胞老化が腫瘍免疫監視機構を誘発または増強しうるとの証拠がますます増えている(8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第3,538, 214号明細書
【文献】米国特許第4,060, 598号明細書
【文献】米国特許第4, 173,626号明細書
【文献】米国特許第3,119, 742号明細書
【文献】米国特許第3,492, 397号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】’Remington’s Pharmaceutical Sciences', 19th Edition (Mack Publishing Company, 1995)
【文献】Journal of the American Chemical Society, 1946, vol 68, 1807-1808
【文献】Angewandte Chemie, International edition,1995, vol 34,1348-1350
【文献】Bioorg. Med. Chem. 2013, 21 (11), 3147-3153
【文献】J. Med. Chem., 2015, 58 (14), 5522-5537
【文献】Tetrahedron Letters, 2013, vol 54, 6900-6904
【文献】"Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use" by Stahl and Wermuth (Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)
【文献】J Pharm Sci, 64 (8), 1269-1288 by Haleblian (August 1975)
【文献】'Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14, ACS Symposium Series (T. Higuchi and W. Stella)
【文献】'Bioreversible Carriers in Drug Design', Pergamon Press, 1987 (ed. E. B Roche, American Pharmaceutical Association)
【文献】"Design of Prodrugs" by H. Bundgaard (Elsevier, 1985)
【文献】"Stereochemistry of Organic Compounds" by E. L. Eliel (Wiley, New York, 1994)
【文献】"Chiral Separation Techniques", by G. Subramanian. John Wiley & Sons, 2008
【文献】"Preparative Enantioselective Chromatography" by G. B. Cox. Wiley, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、転写レベルでEZH2を減少させ、そして処理された細胞によるIFN-γ応答の産生を誘導する新規なNIK阻害剤を提供する。これらのNIK阻害剤は、特異的な毒性を示すことなく皮下腫瘍のサイズを縮小し、抗PD1治療と組み合わせられた場合には、腫瘍のサイズの劇的な縮小をもたらして、場合によっては完全に退縮する。これらの効果は、治療された腫瘍内のマクロファージ、樹状細胞、及びT細胞の数及び活性化における著しい増大と関連している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般式:
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
5、R
6、及びnは、下記の意味を有する]
の化合物及びこうした化合物を含む医薬品組成物並びにこれらの使用に関する。
【0008】
本発明は、一般式(I):
【化2】
[式中、
R
1は、H、アルキル、ハロ、OH、O-アルキル、NH
2、NH-アルキル、N-(アルキル)
2、S-アルキル、CF
3、OCF
3、OCF
2H、及びO(CH
2)
n1O(CH
2)
n2CH
3から選択され、
n
1は1から4であり、n
2は0から3であり、ハロは、Cl、F、Br、及びIから選択され;
nは1または2であり、
nが2である場合には、R
1は、フェニル基と共にメタ位及びパラ位でジオキソラン基もしくは1,4-ジオキサン基を形成することができ、
R
2は、H、ハロ、及びNR
3R
4から選択され、ハロは、既に定義した通りであり、
R
3はHであり、R
4は、OH、O-アルキル、及びハロから選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されたフェニルであり、あるいは、R
3及びR
4は共に(CH
2)
2O(CH
2)
2鎖を形成し、すなわちNR
3R
4がモルホリノ基:
【化3】
を形成し、
R
5は、H、環式基、O-アルキル、O-(CH
2)
n1-(環式基)、(CH
2)
n1-(環式基)から選択され、n
1は既に定義した通りであり、前記環式基は、下式:
【化4】
より選択され、
R
6は、H及びハロから選択され、
R
2がハロであるかまたはR
6がハロである場合には、R
5はHではないことを条件とする]
の化合物、その薬学的に許容される塩及び/または光学異性体、互変異性体、溶媒和物、または同位体変種に関する。
【0009】
上記一般式(I)において、特記のない限り、
アルキルは、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の基を意味する。適切なアルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、シクロプロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシルなどである。
アルキルは、好ましくは、1~4個の炭素原子を含む直鎖の基である。アルキルは、好ましくは、メチルである。
フェニル基上の遊離結合とは、フェニルが、オルト、メタ、またはパラ位で置換されていてよく、nが2の場合には、オルト、メタ、またはパラ位のうち2か所で置換されていてよいことを意味する。
ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを意味する。R1として好ましいハロ基は、フルオロまたはクロロ、より好ましくはクロロである。
R2として好ましいハロ基は、クロロである。
【0010】
第一の好ましい化合物群には、一般式(2):
【化5】
[式中、R
1、R
5、R
6、及びnは、以上に定義した通りであり、R
2は、NR
3R
4であり、R
3及びR
4は以上に定義される通りである]
の化合物が含まれる。
【0011】
第二の好ましい化合物群には、一般式(3):
【化6】
[式中、R
1、R
5、R
6、及びnは、以上に定義した通りであり、R
2はXであり、Xは以上に定義したハロであり、R
5はHでない。好ましくは、Xはクロロである]
の化合物が含まれる。
【0012】
本発明の実施態様によれば、R1は、メチル(CH3)、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ヒドロキシ(OH)、メトキシ(OCH3)、CF3、OCF3、OCF2H、及びO(CH2)2OCH3から選択され、ここで、nが2である場合には、置換基R1は同一または相違する。
【0013】
本発明の別の実施態様によれば、nが2である場合には、2つのR1が、フェニル基と一緒にメタ位及びパラ位でジオキソラン基もしくは1,4-ジオキサン基を形成する。
【0014】
本発明の一実施態様によれば、以上に定義した化合物においてR2がNR3R4である場合、R3はHであり、R4は、OH、OCH3、及びハロから選択され、ハロが好ましい、1つまたは2つの同一または相違する基で置換されているか、または未置換のフェニルである。
【0015】
本発明の別の実施態様によれば、以上に定義した化合物においてR
2がNR
3R
4である場合、R
3及びR
4は一緒に(CH
2)
2O(CH
2)
2鎖を形成し、すなわちNR
3R
4がモルホリノ基:
【化7】
を形成する。
【0016】
本発明の有利な実施態様によれば、好ましい化合物は、一般式(2)において、R2がNR3R4であってモルホリノ基を形成するものであり、前記化合物は、特に下記のものである:
・N-(3,5-ジフルオロフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物10)、
・N-(p-トリル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物11)、
・N-(o-トリル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物12)、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物13)、
・N-(3-メトキシフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物14)、及び
・N-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物15)。
【0017】
本発明の有利な実施態様によれば、好ましい化合物は、一般式(2)において、R2がNR3R4であって、R3はHであり、R4が以上に定義した1つまたは2つの基で置換された、または未置換のフェニルであるものであって、前記化合物は、特に下記のものである:
・N4, N7-ビス(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物16)、
・N4, N7-ビス(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物17)、
・N4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物18)、
・N4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N7-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物19)(2-クロロ-4-((4-((ジフルオロフェニル)アミノ)キノリン-7-イル)アミノ)フェノールとも呼称)、
・N4-(p-トリル)-N7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物20)、
・N4-(p-トリル)-N7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物21)、
・N4-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-N7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物22)、
・N4-(o-トリル)-N7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物23)、
・N4-(4-メトキシフェニル)-N7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物24)、
・N4-(3-メトキシフェニル)-N7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物25)、及び
・N4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物26)。
【0018】
本発明の有利な実施態様によれば、好ましい化合物は、一般式(3)のものであって、特に下記のものである:
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロ-2-メトキシ-キノリン-4-アミン(化合物27)、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物28)、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-キノリン-4-アミン(化合物29)、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロ-2-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物30)、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-キノリン-4-アミン(化合物31)、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-(2-モルホリノエトキシ)キノリン-4-アミン(化合物32)、及び
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-メトキシ-キノリン-4-アミン(化合物33)。
【0019】
式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩及び/または誘導形態は、様々な癌の治療及び予防に好適な、価値ある薬学的活性化合物である。
【0020】
本発明はまた、癌の治療、すなわち固形主要癌、好ましくは、黒色腫、膀胱癌、腎臓癌、前立腺癌、結腸癌、肺癌、乳癌、及び血液癌から選択される癌の治療における使用のための、以上に定義した式(I)の化合物、適切な場合には、その薬学的に許容される塩及び/または光学異性体、互変異性体、溶媒和物、または同位体変種にも関する。
【0021】
本発明の化合物は、結晶性または非晶質製品として投与してよい。これらは、例えば、固体プラグ、粉末、またはフィルムとして、沈降、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥、または蒸発乾燥などの方法によって得られる。この目的のためにマイクロ波または高周波乾燥を使用することができる。
【0022】
これらは、単独で、または本発明の1つ以上の別の化合物と組み合わせて、または1つ以上の別の薬剤(もしくはそれらの任意の組み合わせ)と組み合わせて投与してよい。一般に、これらは、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と一緒に製剤として投与される。「賦形剤」なる語は、本明細書中では、本発明の化合物以外の任意の成分を説明するために使用される。賦形剤の選択は、特定の投与方法、溶解度及び安定性に対する当該賦形剤の効果、ならびに剤形の性質などの要因に大きく依存するであろう。本発明の化合物の送達に適した医薬組成物及びこれらの調製方法は、当業者には容易に明らかであろう。こうした組成物及びそれらの製造方法は、例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第19版(Mack Publishing Company, 1995)に見出すことができる。
【0023】
したがって、本発明の別の態様は、以上に定義した一般式(I)の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
本発明の化合物は任意の適当な経路で投与することができる。
したがって、本発明の化合物は、経口投与、口腔投与、鼻腔内投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋内投与、または皮下投与)、局所投与、または直腸内投与、あるいは吸入もしくは吹送による投与に適した形態で、医薬組成物として製剤化してよい。
【0024】
経口投与のためには、医薬組成物は、例えば、薬学的に許容される賦形剤、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース);フィラー(例えば、ラクトース、微結晶セルロース、またはリン酸カルシウム);滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えば、馬鈴薯澱粉または澱粉グリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)等を用い、従来の手段で調製された錠剤またはカプセル剤の形態をとり得る。
【0025】
錠剤は、当技術分野で周知の方法でコーティングしてよい。経口投与用の液体調剤は、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液の形態をとってよく、あるいは、これらは、使用前に水または他の適当なビヒクルと共に構成するための乾燥製品として提供してよい。こうした液体調剤は、薬学的に許容される添加剤、例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、または水添食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、またはエチルアルコール);防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピル、またはソルビン酸)などを用い、従来の手段によって調製することができる。
【0026】
口腔内投与の場合、該組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはロゼンジの形態であってよい。本発明の化合物はまた、当業者に周知の方法に従って持続送達用に製剤化してもよい。こうした製剤の例は、米国特許第3,538, 214号、第4,060, 598号、第4, 173,626号、第3,119, 742号、及び第3,492, 397号に見られ、これらは参照のためにその全体を本明細書中に援用することとする。
【0027】
本発明の化合物は、従来のカテーテル法または点滴の使用を含む、注入による非経口投与用に製剤化してよい。注入用製剤は、防腐剤を添加した単位剤形、例えば、アンプルまたは多用量容器で提供してよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョン等の形態であってよく、処方剤、例えば、懸濁剤、安定剤及び/または分散剤等を含んでよい。あるいはまた、活性成分が、適切なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフリー水と使用前に再構成されるために粉末形態であってよく、非経口製剤は、典型的には、賦形剤、例えば、塩、炭水化物、及び緩衝剤(好ましくはpHが3から9)を含んでよい水性溶液であるが、用途によって、無菌の非水性溶液として、または無菌のパイロジェンフリー水等の適切なビヒクルと共に使用するための乾燥形態として、より適切に処方してもよい。
【0028】
例えば、特定の疾患または状態を治療する目的で、活性化合物の組み合わせを投与することが望ましい場合があるのと同様に、そのうちの少なくとも1つが本発明による化合物を含む2つ以上の医薬組成物を、当該組成物の共投与に適したキットの形態で都合よく組み合わせても良いことは、本発明の範囲内である。しかるに、本発明のキットは、そのうちの少なくとも1つが本発明による式(I)の化合物を含む2つ以上の別々の医薬組成物、及び前記組成物を別々に保持する手段、例えば、容器、分割ボトル、または分割ホイルパケット等を含む。こうしたキットの例は、錠剤、カプセル等の包装に使用される、慣用のブリスターパックである。
【0029】
本発明のキットは、様々な剤形の投与、例えば、非経口投与、別々の組成物の異なる投与間隔での投与、あるいは別々の組成物を互いに滴定するために特に適する。服薬遵守を助けるために、キットは、典型的には投与のための指示書を含み、また、いわゆる記憶補助を備えていてもよい。
【0030】
ヒトの患者への投与のために、本発明の化合物の全一日量は、むろん投与方法に応じるが、典型的には0.001mgから5000mgの範囲内である。例えば、静注一日量としては、0.001mgから40mgまでを要するのみである。全一日量は、単一用量または分割用量で投与してよく、医師の判断により、本明細書に記載の典型的な範囲外となってもよい。
【0031】
これらの投与量は、約65kgから70kgの体重を有する平均的なヒト対象に基づいている。医師は、体重がこの範囲外となる被験者、例えば、乳児及び高齢者の用量を、容易に決定することができる。
【0032】
疑義を避けるために、本明細書における「治療」への言及は、治療的、緩和的、及び予防的な治療への言及を含む。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、誘導形態、あるいはその組成物はまた、1つ以上のさらなる治療薬との組み合わせとして患者に共投与されて、特に望ましい最終治療結果を得ることができ、例えば、癌の治療、固形腫瘍癌、例えば、黒色腫、膀胱癌、腎臓癌、前立腺癌、結腸癌、膵臓癌、肺癌、及び血液癌、例えば、ホジキン病等を治療することができる。
【0034】
好ましくは、本発明の化合物は、単独または組み合わせとして、黒色腫、腎臓癌、結腸直腸癌、肺癌、特に非小肺癌及び前立腺癌に罹患している転移期の患者に投与される。
【0035】
第二及びそれ以上のさらなる治療薬もまた、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、誘導形態、または組成物、あるいは上に挙げた症状の治療に関して当分野で知られている1つ以上の化合物であってよい。より典型的には、第二及びそれ以上の治療薬は、異なるクラスの治療薬から選択されるであろう。
【0036】
本明細書中で、式(I)の化合物及び1つまたは複数の別の治療薬について使用される、「共投与」、「共投与する」、及び「組み合わせ」なる語は、以下を意味する意図で使用され、以下に言及し、且つ以下を含む:式(I)の化合物と治療薬との組み合わせの、治療を必要とする患者への同時投与(こうした成分が、一緒に単一剤形に製剤化されて、前記成分が前記患者に実質的に同時に放出される場合)、式(I)の化合物と治療薬との組み合わせの、治療を必要とする患者への実質的同時投与(こうした成分が、互いに別個の剤形に製剤化され、前記患者によって実質的に同時に摂取されて、前記成分が前記患者に実質的に同時に放出される場合)、式(I)の化合物と治療薬との組み合わせの、治療を必要とする患者への連続投与(こうした成分が、互いに別個の剤形に製剤化され、前記患者によって各投与間に有意の時間間隔を取って逐次摂取され、前記成分が前記患者に実質的に異なる時点で放出される場合)、及び、式(I)の化合物と治療薬との組み合わせの、治療を必要とする患者への連続投与(こうした成分が、一緒に単一剤形に製剤化されて、前記患者によって同時に、連続して、且つ/あるいは、同時及び/または別の時点で投与され、ここで各部分は同一または異なる経路で投与されてよく、前記成分が制御された方式で放出される場合)。
【0037】
式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、誘導形態、あるいは組成物と組み合わせて使用してよい別の治療薬の適切な例には、以下に限定されるものではないが、
・癌の治療に使用される抗癌剤、例えば、ダカルバジン、
・ニトロソ尿素アルキル化剤、例えば、フォテムスチン、
・BRAF阻害剤、例えば、ベムラフェニブまたはダブラフェニブ、
・MEK阻害剤、例えば、トラメチニブ、
・抗CTLA4抗体、例えば、イピリムマブ、
・抗PD1抗体、例えば、ニボルマブ、ピジリズマブ(pidizilumab)、ペムブロリズマブ、及びAMP-514、
・抗PD1融合タンパク質、例えば、AMP-224、
・抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、ウトミルマブ、及びMPDL3280A、
・別の免疫チェックポイント遮断薬、または一般に癌を治療するための免疫アプローチに基づく治療薬
を含む。
【0038】
本発明の化合物は、抗PD1抗体、抗CTLA4抗体、及び抗PD-L1抗体、並びにこれらの2つ以上の混合物から選択される抗体と共投与される。
【0039】
特定の実施態様によれば、本発明は、
・一般式(I):
【化8】
[式中、
R
1は、H、アルキル、ハロ、OH、O-アルキル、NH
2、NH-アルキル、N-(アルキル)
2、S-アルキル、CF
3、OCF
3、OCF
2H、及びO(CH
2)
n1O(CH
2)
n2CH
3から選択され、
n
1は1から4であり、n
2は0から3であり、ハロは、Cl、F、Br、及びIから選択され;
nは1または2であり、
nが2である場合には、R
1は、フェニル基と共にメタ位及びパラ位でジオキソラン基もしくは1,4-ジオキサン基を形成することもでき、
R
2は、H、ハロ、及びNR
3R
4から選択され、ハロは、既に定義した通りであり、
R
3はHであり、R
4は、OH、O-アルキル、及びハロから選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されたフェニルであり、あるいは、R
3及びR
4は共に(CH
2)
2O(CH
2)
2鎖を形成し、
R
5は、H、環式基、O-アルキル、O-(CH
2)
n1-(環式基)、(CH
2)
n1-(環式基)から選択され、n
1は既に定義した通りであり、前記環式基は、下式:
【化9】
より選択され、
R
6は、H及びハロから選択される]
の化合物、薬学的に許容される、その塩及び/または光学異性体、互変異性体、溶媒和物、または同位体変種、
・抗PD1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L1抗体、及びこれらの2つ以上の混合物から選択される少なくとも1つの抗体、及び
・任意の、少なくとも1つの薬学的に許容される担体
を含む、医薬組成物に関する。
【0040】
本発明の有利な実施態様によれば、上述の医薬組成物において使用される好ましい化合物は、一般式(I)のものであり、とりわけ下記のものである:
・N-(3,5-ジフルオロフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン(化合物1)、
・N-(4-メチルフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン(化合物2)、
・N-(3-トリフルオロメチルフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン(化合物3)、
・N-(2-メチルフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン(化合物4)、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン(化合物5)、
・N-(3-メトキシフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン(化合物6)、
・N-(4-ヒドロキシフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン(化合物7)、
・N-(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン(化合物8)、
・N-(4-トリフルオロメチルフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン(化合物9)、
・N-(3,5-ジフルオロフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物10)、
・N-(4-(ジフルオロメトキシ)フェニル)-7-クロロ-キノリン-4-アミン(化合物34)、
・N-(4-メトキシ-3-(2-メトキシエトキシ)フェニル)-7-クロロ-キノリン-4-アミン(化合物35)、
・N-(4-トリフルオロメトキシフェニル)-6-クロロキノリン-4-アミン(化合物36)、
・N-(2,4-ジメトキシフェニル)-6-クロロキノリン-4-アミン(化合物37)、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン(化合物38)、
・N-(2,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロキノリン-4-アミン(化合物39)、
・N-(p-トリル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物11)、
・N-(o-トリル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物12)、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物13)、
・N-(3-メトキシフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物14)、
・N-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物15)、
・N4, N7-ビス(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物16)、
・N4, N7-ビス(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物17)、
・N4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物18)、
・N4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N7-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物19)、
・N4-(p-トリル)-N7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物20)、
・N4-(p-トリル)-N7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物21)、
・N4-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-N7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物22)、
・N4-(o-トリル)-N7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物23)、
・N4-(4-メトキシフェニル)-N7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物24)、
・N4-(3-メトキシフェニル)-N7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物25)、及び
・N4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物26)、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロ-2-メトキシ-キノリン-4-アミン(化合物27)、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物28)、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-キノリン-4-アミン(化合物29)、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロ-2-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物30)、
・N-(4-メトキシフェニル)-7-クロロ-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-キノリン-4-アミン(化合物31)、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-(2-モルホリノエトキシ)キノリン-4-アミン(化合物32)、
・N-(3,4-ジメトキシフェニル)-7-クロロ-2-メトキシ-キノリン-4-アミン(化合物33)、
・7-クロロ-N-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)キノリン-4-アミン(40)、
・7-クロロ-N-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)キノリン-4-アミン(41)。
【0041】
最後の2つの化合物(40)及び(41)は、以上に定義される化合物(I)において、nが2であって、R1が、フェニル基と共にメタ位及びパラ位でそれぞれジオキソラン基(化合物40)または1,4-ジオキサン基(化合物41)を形成する場合にそれぞれ相当する。
【0042】
本発明はまた、別の抗癌剤をさらに含む、以上に定義される医薬組成物に関する。
【0043】
本発明は、とりわけ、癌の治療における同時、個別、または逐次使用のための組合せ調剤としての、以上に定義される医薬組成物に関し、前記癌は、好ましくは、黒色腫、膀胱癌、腎臓癌、前立腺癌、結腸癌、肺癌、乳癌、及び血液癌から選択される。
【0044】
別の特定の実施態様によれば、本発明は、癌の治療用の使用であって、前記癌が、好ましくは、黒色腫、膀胱癌、腎臓癌、前立腺癌、結腸癌、肺癌、乳癌、及び血液癌から選択され、より好ましくは、黒色腫及び結腸癌から選択される使用のための、一般式(I):
【化10】
[式中、
R
1は、H、アルキル、ハロ、OH、O-アルキル、NH
2、NH-アルキル、N-(アルキル)
2、S-アルキル、CF
3、OCF
3、OCF
2H、及びO(CH
2)
n1O(CH
2)
n2CH
3から選択され、
n
1は1から4であり、n
2は0から3であり、ハロは、Cl、F、Br、及びIから選択され;
nは1または2であり、
nが2である場合には、R
1は、フェニル基と共にメタ位及びパラ位でジオキソラン基もしくは1,4-ジオキサン基を形成することができ、
R
2は、H、ハロ、及びNR
3R
4から選択され、ハロは、既に定義した通りであり、
R
3はHであり、R
4は、OH、O-アルキル、及びハロから選択される1つまたは複数の置換基で任意に置換されたフェニルであり、あるいは、R
3及びR
4は共に(CH
2)
2O(CH
2)
2鎖を形成し、すなわちNR
3R
4がモルホリノ基:
【化11】
を形成し、
R
5は、H、環式基、O-アルキル、O-(CH
2)
n1-(環式基)、(CH
2)
n1-(環式基)から選択され、n
1は既に定義した通りであり、前記環式基は、下式:
【化12】
より選択され、
R
6は、H及びハロから選択され、
R
2がFであり、R
5=R
6=Hである場合には、R
1は3-Cl;4-Cl;3-F;4-OCH
3;4-CH
3;3-Cl及び4-F;3-Cl及び4-Cl;または4-Fではないことを条件とし、
R
2がClであり、R
5=R
6=Hである場合には、R
1は4-OHでも4-Clでもないことを条件とする]
の化合物、その薬学的に許容される塩及び/または光学異性体、互変異性体、溶媒和物、または同位体変種に関する。
【0045】
とりわけ、以上に定義される使用のための化合物は、以上に定義される化合物(1)から(6)及び(8)から(41)から選択される。
【0046】
本明細書中における治療についての全ての言及は、治療的、緩和的、及び予防的治療を含むことが理解されるべきである。以下の説明は、式(I)の化合物を応用してよい治療用途に関する。
【0047】
本発明のさらに別の態様はまた、抗癌活性を有する薬剤の製造のための、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、誘導形態、または組成物の使用に関する。
【0048】
特に、本発明は、黒色腫、結腸癌、肺癌、及び乳癌から選択される固形腫瘍癌の治療のための薬物の製造のための、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、誘導形態、または組成物の使用に関する。
【0049】
結果として、本発明は、有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、誘導形態、または組成物を用いる、ヒトを含む哺乳動物を治療するための特に興味深い方法を提供する。
【0050】
より正確には、本発明は、ヒトを含む哺乳動物における癌性疾患、特に上記の疾患及び/または状態を治療するための特に興味深い方法であって、前記哺乳動物に式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩、及び/または誘導形態の有効量を投与する工程を含む方法を提供する。
【0051】
式(I)の化合物は、特記のない限り、通常の手順を用いて、例えば、様々な置換基が式(I)の化合物についてこれまで定義した通りである、以下の例示的に従うなどして、調製することができる。
【0052】
R
5=R
6=Hであり、R
2がクロロである、本発明の化合物を調製するための手順は、以下の工程:
i)4,7-ジクロロキノリンを式4:
【化13】
の化合物と反応させて式3:
【化14】
の化合物を得る工程;
ii)適切であれば、式3の化合物を一般式5:HNR
3R
4
の化合物と反応させる工程;
iii)式(2)の化合物を得て、続いてこれを単離し精製する工程
を含む。
工程i)は、芳香族求核置換の条件下、酸性媒体中で行われる(Journal of the American Chemical Society, 1946, vol 68, 1807-1808)。
工程ii)は、ブッフバルト・ハートウィッグカップリング(Angewandte Chemie, International edition, 1995, vol 34, 1348-1350)の条件下、触媒、例えば、パラジウム及び塩基等の存在下で、適切な溶媒、例えば、トルエン、DME、またはジオキサン中で行われる。
【0053】
一般式3において、R5=R6=Hであり、Xがフルオロまたはブロモである化合物は、対応する4-クロロ-7-ハロキノリンから出発し、従前に報告された手順に従って調製することができる(例えば、Bioorg. Med. Chem. 2013, 21 (11), 3147-3153; J. Med. Chem., 2015, 58 (14), 5522-5537を参照)。
【0054】
一般式(I)において、R2=R5=Hであり、R2がハロである一般式(I)の化合物は、対応する4-クロロ-6-ハロキノリンから出発し、式(3)の化合物について上述した手順に従って調製することができる。
【0055】
一般式(I)において、R
5がHでなく、R
2=Cl及びR
6=Hである化合物は、以下の工程:
i)2,4,7-トリジクロロキノリンを式4:
【化15】
の化合物と反応させて式6:
【化16】
の化合物を得る工程;
ii)適切であれば、式6の化合物を一般式:HNR
3R
4
またはo-アルキルと反応させる工程によって調製することができ、
工程i)は、芳香族置換の条件下、DMA中の塩基性媒体中で行われる(Tetrahedron Letters, 2013, vol 54, 6900-6904)。
工程ii)は、芳香族置換の条件下で行われる。
【0056】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩には、その酸の付加塩及び塩基性塩が含まれる。
【0057】
適切な酸付加塩は、酸から形成され、これは無毒の塩を形成する。
【0058】
例には、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプチル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素/リン酸二水素塩、サッカレート、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩、並びに及びキシナホ酸塩が含まれる。
【0059】
適切な塩基性塩は、塩基から形成され、これは無毒の塩を形成する。
【0060】
例には、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リシン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、及び亜鉛の塩が含まれる。酸及び塩基の半塩、例えば半硫酸塩及び半カルシウム塩もまた形成され得る。
【0061】
適切な塩についての概説については、Stahl及びWermuthによる「Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use」(Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)を参照のこと。
【0062】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、3つの方法:
(i)式(I)の化合物を所望の酸または塩基と反応させることによる方法;
(ii)式(I)の化合物の適切な前駆体から酸もしくは塩基不安定性保護基を除去することによるか、または、所望の酸または塩基を使用して適切な環状前駆体、例えば、ラクトンまたはラクタムを開環することによる方法;
(iii) 式(I)の化合物の1つの塩を、適切な酸もしくは塩基との反応によって、または適切なイオン交換カラムによって、別の塩に変換することによる方法;
のうちの1つまたは複数によって調製することができる。
【0063】
3つ全ての反応が、典型的には溶液中で行われる。生成する塩は沈殿し、濾過により回収することができ、あるいは溶媒の蒸発により回収することができる。生成する塩のイオン化度は、完全イオン化からほぼ非イオン化まで様々であり得る。
【0064】
本発明の化合物は、非溶媒和形態及び溶媒和形態の両方で存在し得る。
【0065】
「溶媒和物」なる語は、本明細書中では、本発明の化合物と化学量論量の1つ以上の薬学的に許容される溶媒分子、例えばエタノールとを含む分子複合体について記述するために使用される。「水和物」なる語は、前記溶媒が水の場合に用いられる。
【0066】
本発明の範囲に包含されるのは、錯体、例えば、包接体、薬剤-ホスト包接錯体であり、ここでは、前述の溶媒和物とは対照的に、薬剤及びホストは、化学量論的または非化学量論的な量で存在する。さらに包含されるのは、化学量論量または非化学量論量であってよい、2つ以上の有機及び/または無機成分を含有する薬剤の複合体である。生成する錯体は、イオン化、部分イオン化、または非イオン化のいずれでもよい。こうした複合体の概説については、HaleblianによるJ Pharm Sci, 64 (8), 1269-1288(August 1975)を参照のこと。
【0067】
以下、式(I)の化合物に対する全ての言及は、その塩、溶媒和物、及び複合体、ならびにその塩の溶媒和物及び複合体についての言及を含む。
【0068】
本発明の化合物は、以上に定義される式(I)の化合物を含み、以下に定義されるその全ての多形体及び晶癖、そのプロドラッグ及び異性体(光学異性体、幾何異性体、及び互変異性体を含む)、及び式(I)の同位体標識された化合物を含む。
【0069】
記述の通り、式(I)の化合物のいわゆる「プロドラッグ」もまた本発明の範囲内である。しかるに、それ自体は薬理学的活性をほとんど持たないかまたは全く持たない可能性のある式(I)の化合物の所定の誘導体が、身体内または表面に投与された際に、例えば加水分解開裂によって所望の活性を有する式(I)の化合物に変換されうる。こうした誘導体は「プロドラッグ」と呼称される。プロドラッグの使用に関するさらなる情報は、”Pro-drugs as Novel Delivery Systems”, Vol. 14, ACS Symposium Series (T. Higuchi and W. Stella)及び”Bioreversible Carriers in Drug Design”, Pergamon Press, 1987 (ed. E. B Roche, American Pharmaceutical Association)に見られる。
【0070】
本発明によるプロドラッグは、例えば、式(I)の化合物中に存在する適切な官能基を、例えば、H. Bundgaardによる「Design of Prodrugs」(Elsevier, 1985)に「プロ成分」として記載の、当業者に既知の所定の成分で置き換えることによって製造することができる。
【0071】
本発明によるプロドラッグのいくつかの例には、以下:
(i)式(I)の化合物がカルボン酸官能基(COOH)、そのエステルを含む場合、例えば、式(I)の化合物のカルボン酸官能基の水素が(C1-C8)アルキルで置き換えられている化合物;
(ii)式(I)の化合物がアルコール官能基(-OH)、そのエーテルを含む場合、例えば、式(I)の化合物のアルコール官能基の水素が(C1-C6)アルカノイルオキシメチルで置き換えられている化合物;及び
(iii)式(I)の化合物が第一級または第二級アミノ官能基、そのアミドを含む場合、例えば、場合により式(I)の化合物のアミノ官能基の一方または両方の水素が(C1-C10)アルカノイルで置き換えられている化合物;
が含まれる。
【0072】
前述の例及び別のプロドラッグタイプの例に従う、置換基のさらなる例は、前述の参考文献中に見出すことができる。さらにまた、式(I)の所定の化合物は、それ自体が式(I)の別の化合物のプロドラッグとして作用し得る。
【0073】
さらに本発明の範囲内に含まれるのは、式(I)の化合物の代謝産物、すなわち、薬剤の投与時にインビボで形成される化合物である。本発明による代謝産物には、以下:
(i)式(I)の化合物であってメチル基を含有するもの、そのヒドロキシメチル誘導体;
(ii)式(I)の化合物であって第3級アミノ基を含むもの、その第2級アミノ誘導体;
(iii)式(I)の化合物であって第2級アミノ基を含むもの、その第1級アミノ誘導体;
(iv)式(I)の化合物であってフェニル部分を含むもの、そのフェノール誘導体;
の例が含まれる。
【0074】
1つ以上の不斉炭素原子を含む式(I)の化合物は、2つ以上の立体異性体として存在し得る。本発明の範囲に含まれるのは、式(I)の化合物の全ての立体異性体、幾何異性体、及び互変異性形であり、1つ以上のタイプの異性体及びその1つもしくは複数の混合物を呈する化合物が含まれる。また、対イオンが光学活性である酸付加塩または塩基塩、例えば、d-乳酸塩またはl-リジン、あるいはラセミ体、例えば、dl-酒石酸塩またはdl-アルギニンも含まれる。個々のエナンチオマーの調製/単離のための従来の技術は、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または、例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いる、ラセミ体(または塩もしくは誘導体のラセミ体)の分割を含む。
【0075】
あるいはまた、ラセミ体(またはラセミ前駆体)を、適切な光学活性化合物、例えばアルコールと、または、式(I)の化合物が酸性もしくは塩基性部分を含む場合には、酸または塩基、例えば酒石酸または1-フェニルエチルアミンと、反応させてよい。生成するジアステレオ異性体混合物は、クロマトグラフィー及び/または分別結晶化により分離し、ジアステレオ異性体の一方または両方を当業者に周知の手段によって対応する純粋なエナンチオマーに変換してよい。
【0076】
本発明のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)は、不斉樹脂上の、0から50体積%のイソプロパノール、典型的には2%から20%、及び0から5体積%のアルキルアミン、典型的には0.1%のジエチルアミンを含む、炭化水素、典型的には、ヘプタンまたはヘキサンからなる移動相を有するクロマトグラフィー、典型的にはHPLC(キラルカラム)を用いて、エナンチオマー豊富な形態で得られる。逆相HPLCについては、CH3CN及びH2O、MeOHまたはiPrOH及びH2Oが溶媒として使用される。溶出液の濃縮により、濃縮混合物を得る。
【0077】
立体異性体の集成体は、当業者に既知の従来技術によって分離してよく、例えば、E.L. Elielによる「Stereochemistry of Organic Compounds」(Wiley、New York、1994)、G. Subramanianによる「Chiral Separation Techniques」(John Wiley & Sons, 2008)、G. B. Coxによる「Preparative Enantioselective Chromatography」(Wiley, 2005)を参照されたい。
【0078】
本発明による薬学的に許容される溶媒和物は、結晶化の溶媒が同位体置換されていてよいもの、例えば、D2Oを含む。
【0079】
以下の実施例は、式(I)の化合物の調製及びその薬理学的性質を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】化合物5は、異なる癌細胞において、NF-kB非標準経路のノックダウンと同様の分泌現象及び老化誘導能を示す。 A/B.漸増濃度の化合物5で96時間に亘って処理したA375細胞中のEZH2(A)またはCDKN1A及びIFNG(B)のmRNAレベル。C.化合物5またはDMSOで96時間に亘って処理した異なる細胞株におけるELISAによって測定したIFN-γ。*それぞれの対照に対してp <0.05。
【
図2】化合物5は、CT26結腸癌細胞を皮下注射されたBalb/cマウスにおける抗PD1免疫応答を増強する。A.CT26細胞(0.5×10
6)を皮下注射されたBalb/cマウスにおける腫瘍増殖。3日後に、化合物5(10mg/kg)またはDMSOによる処置を、最初の注射の3日後から開始する、隔日の腹腔内注射によって行った。2つの群のマウス(DMSOまたは化合物5のいずれかで処置)を、隔日で抗PD1抗体を皮下注射することで処置した。各処置群のマウスの数は、10である。B.フローサイトメトリーを用いて腫瘍中に検出されたCd11C+(M1マクロファージ)及びCd11C-(M2マクロファージ)細胞のパーセンテージ。C.フローサイトメトリーによって測定されたCD40+DCsのパーセンテージ。D.フローサイトメトリーによって測定された、異なる処置を経た腫瘍におけるCD8+CD3+T細胞の密度。*それぞれの対照に対してp<0.05;#単一治療に対する二重治療の場合p<0.05。
【
図3】化合物5の処置は、単独で使用される場合にインビボで腫瘍増殖を減少させることにおいて有効であり、B16黒色腫細胞を皮下注射されたC57B16マウスにおける抗PD1免疫応答を増強する。B16細胞を皮下注射し、平均体積が100mm
3に達するまで腫瘍を増殖させた。次いで、マウスを同等の平均腫瘍体積及び標準偏差を有する4つの群に分類した。化合物5(10mg/kg)または対照(DMSO)による処置を、腹腔内注射によって毎日行った。抗PD1抗体(125μg/マウス)は、単独で隔日にまたは化合物5の毎日の注射と組み合わせて行った。各処置群のマウスの数は8であった。A.生存曲線。***それぞれの対照に対してp<0.001。B.各条件についての腫瘍増殖の進展(mm
3)。横座標を日数とした進展。
【発明を実施するための形態】
【0081】
実施例
(実施例1:本発明の化合物の調製)
1. 式3においてR5=R6=H及びX=Clである化合物の調製のための一般手順
0.5mlの2M塩酸、400mg(2mmol)の4,7-ジクロロキノリン、及び2mmolの式4のアミンを15mlの水に添加する。この溶液を還流下で2時間撹拌する。反応媒体の色は急速に変化する。2時間反応させた後、媒体を室温に冷却する。予想生成物に相当する沈殿物が現れ、これは濾過によって単離されてさらなる精製を要しない。これを60℃の加熱チャンバに置き、残留水を除去する。
以下の化合物1~9を、上記の手順に従って調製した。
【0082】
1.1.
(4-((3,5-ジフルオロフェニル)アミノ)-7-クロロキノリニウム クロライド(化合物1)
式: C15H10Cl2N2F2
精密質量: 326.0189
分子量: 327.1558
R = 80 %
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6); δ 14.85 (s, 1H), 11.18 (s, 1H), 8.82 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.64 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 8.17 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.93 (dd, J = 9.2, 2.1 Hz, 1H), 7.43 - 7.24 (m, 3H), 7.10 (d, J = 6.9 Hz, 1H).
19F NMR (188 MHz, DMSO-d6); δ 107.96.
13C NMR (126 MHz, DMSO-d6), δ 163.8 (d, J = 15 Hz), 161.9 (d, J = 15 Hz), 154.3, 143.9, 140.1 (t), 139.2, 138.5, 127.7, 126.3, 119.4, 116.3, 108.8-108.3 (2C), 102.7 (t), 101.5.
【0083】
1.2.
4-((4-メチルフェニル)アミノ)-7-クロロキノリニウム クロライド(化合物2)
式: C16H14Cl2N2
精密質量: 304.0534
分子量: 305.2020
R = 81 %
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6); δ 14.46 (s, 1H), 11.03 (s, 1H), 8.79 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 8.50 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.89 (dd, J = 9.1, 2.1 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 1.5 Hz, 4H), 6.73 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 2.39 (s, 3H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6); δ 155.0, 143.3, 139.1, 138.3, 137.2, 134.3, 130.4 (2C), 127.3, 126.1, 125.4 (2C), 119.2, 115.8, 100.1, 20.7.
【0084】
1.3.
4-((3-トリフルオロメチルフェニル)アミノ)-7-クロロキノリニウム クロライド(化合物3)
式: C16H11Cl2F3N2
精密質量: 358.0251
分子量: 359.1732
R = 83 %
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6); δ 14.86 (s, 1H), 11.29 (s, 1H), 8.87 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 8.60 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 8.19 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.97 - 7.75 (m, 5H), 6.91 (d, J = 6.9 Hz, 1H).
19F NMR (188 MHz, DMSO-d6); δ -60.61, -61.13, -61.21, -61.30, -61.32, -62.06.
13C NMR (126 MHz, DMSO-d6); δ 154.7, 144.0, 139.2, 138.6, 138.1, 131.3, 130.5 (q), 129.3, 127.7, 126.1, 123.9 (d, J = 3.6 Hz), 123,8 (q, J = 272 Hz), 122.0 (d, J = 3.8 Hz), 119.5, 116.3, 100.7.
【0085】
1.4.
4-((2-メチルフェニル) アミノ)-7-クロロキノリニウム クロライド(化合物4)
式: C16H14Cl2N2
精密質量: 304.0534
分子量: 305.2020
R = 76 %
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6); δ 14.71 (s, 1H), 11.08 (s, 1H), 8.89 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 8.48 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 8.17 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.89 (dd, J = 9.1, 2.1 Hz, 1H), 7.43 (m, 4H), 6.23 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 2.21 (s, 3H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6); δ 155.4, 143.4, 138.9, 138.3, 135.2, 135.1, 131.6, 128.7, 127.6, 127.4, 127.3, 125.9, 119.2, 115.4, 99.9, 40.7, 40.3, 39.9, 39.7, 39.5, 39.0, 38.6, 38.2, 17.2.
【0086】
1.5.
4-((4-メトキシフェニル)アミノ)-7-クロロキノリニウム クロライド(化合物5)
式: C16H14Cl2N2O
精密質量: 320.0483
分子量: 321.2010
R = 77 %
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6); δ 14.60 (s, 1H), 11.06 (s, 1H), 8.82 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.49 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 8.14 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.87 (dd, J = 9.1, 2.1 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.13 (d, 2H), 6.65 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 3.36 (s, 3H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6); δ 158.4, 155.3, 143.0, 138.9, 138.2, 129.3, 127.1, 127.1, 126.0, 119.1, 115.6, 115.1, 99.9, 55.4.
【0087】
1.6.
4-((3-メトキシフェニル)アミノ)-7-クロロキノリニウム クロライド(化合物6)
式: C16H14Cl2N2O
精密質量: 320.0483
分子量: 321.2010
R = 64 %
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6); δ 14.80 (s, 1H), 11.18 (s, 1H), 8.87 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 8.52 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 8.18 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.88 (dd, J = 9.2, 2.1 Hz, 1H), 7.49 (t, J = 8.3 Hz, 1H), 7.11-6.97 (m, 3H), 6.84 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 3.80 (s, 3H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6); δ 160.3, 154.8, 143.3, 138.9, 138.3, 138.03, 130.7, 127.3, 126.1, 119.1, 117.3, 115.9, 113.2, 111.0, 100.5, 55.4.
【0088】
1.7.
4-((4-ヒドロキシフェニル)アミノ)-7-クロロキノリニウム クロライド(化合物7)
式: C15H12Cl2N2O
精密質量: 306.0327
分子量: 307.1740
R = 77 %
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6); δ 14.71 (s, 1H), 11.04 (s, 1H), 9.96 (s, 1H), 8.83 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.45 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 8.15 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.83 (dd, J = 9.1, 2.0 Hz, 1H), 7.25 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.95 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 6.61 (d, J = 7.0 Hz).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6); δ 156.9, 155.3, 142.8, 138.8, 138.2, 127.6, 127.1 (3C), 125.9, 118.9, 116.4 (2C), 115.5, 99.8.
【0089】
1.8.
4-((4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)アミノ)-7-クロロキノリニウム クロライド(化合物8)
式: C15H11Cl3N2O
精密質量: 339.9937
分子量: 341.6160
R = 85 %
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6); δ 14.59 (s, 1H), 11.03 (s, 1H), 10.75 (s, 1H), 8.79 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 8.50 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 8.13 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.87 (dd, J = 9.1, 2.1 Hz, 1H), 7.50 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.27 (dd, J = 8.7, 2.4 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 7.0 Hz, 1H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6); δ 155.3, 152.7, 143.1, 138.8, 138.3, 128.4, 127.3, 127.2, 126.0, 125.7, 120.2, 119.1, 117.3, 115.6, 100.2.
【0090】
1.9.
4-((4-トリフルオロメチルフェニル)アミノ)-7-クロロキノリニウム クロライド(化合物9)
式: C16H11Cl2F3N2
精密質量: 358.0251
分子量: 359.1732
R = 84 %
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6); δ 14.86 (s, 1H), 11.26 (s, 1H), 8.86 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 8.62 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 8.17 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 8.00 - 7.87 (2つの重複するd, 3H), 7.74 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.05 (d, J = 7.0 Hz, 1H).
19F NMR (188 MHz, DMSO-d6); δ -60.81.
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6); δ 154.3, 143.8, 141.0, 139.1, 138.5, 127.6, 126.9 (4C), 126.2, 125.3 (2C), 119.3, 116.4, 101.0.
【0091】
1.10
7-クロロ-N-(4-(ジフルオロメトキシ)フェニル)キノリン-4-アミン(化合物34)
化学式: C16H11ClF2N2O
精密質量: 320,05
分子量: 320,72
R = 87%
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6) δ 11.25 (s, 1H), 8.89 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.53 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 8.18 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.88 (dd, J = 9.1, 2.1 Hz, 1H), 7.71 (s, 0H), 7.56 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.43-7.32 (m, 2H), 6.98 (s, 0H), 6.75 (d, J = 7.0 Hz, 1H).
13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 155.2, 149.8, 143.7, 139.1, 138.7, 134.0, 127.6, 127.5, 126.2, 120.4, 119.4, 116.4 (t, J = 258.5 Hz), 116.0, 100.4.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C16H11ClF2N2Oについて、理論値321.05、実測値 321.27
HPLC: 純度λ254: 99.8%, tR: 3.23
【0092】
1.11
7-クロロ-N-(4-メトキシ-3-(2-メトキシエトキシ)フェニル)キノリン-4-アミン(化合物35)
化学式: C19H19ClN2O3
精密質量: 358,11
分子量: 358,82
R = 75%
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 14.48 (s, 1H), 10.95 (s, 1H), 8.77 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 8.48 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.86 (dd, J = 9.0, 2.1 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.00 (dd, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 6.73 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 4.09 (t, J = 4.5 Hz, 2H), 3.83 (s, 3H), 3.67 (d, J = 4.7 Hz, 2H), 3.31 (s, 2H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6) δ 155.2, 148.6, 148.2, 142.9, 138.9, 138.2, 129.4, 127.1, 126.1, 119.0, 117.9, 115.6, 112.4, 110.8, 100.2, 70.2, 67.8, 58.2, 55.7, 40.7, 40.3, 39.9, 39.5, 39.0, 38.6, 38.2.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C19H19ClN2O3について、理論値 359,11、実測値 359.20
HPLC: 純度λ254: 100%, tR: 3.41
【0093】
1.12
7-クロロ-N-(3,4-ジメトキシフェニル)キノリン-4-アミン(化合物38)
化学式: C17H15ClN2O2
精密質量: 314,08
分子量: 314,77
R = 59%
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 14.52 (s, 1H), 10.96 (s, 1H), 8.78 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 8.48 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 8.12 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.86 (dd, J = 9.1, 2.2 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.00 (dd, J = 8.5, 2.4 Hz, 1H), 6.73 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 3.78 (s, 3H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6) δ 155.2, 149.4, 148.1, 142.9, 138.9, 138.2, 129.5, 127.1, 126.1, 119.0, 117.7, 115.6, 112.2, 109.7, 100.2, 55.7, 40.7, 40.3, 39.9, 39.5, 39.0, 38.6, 38.2.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C17H15ClN2O2について、理論値315.08、実測値 315.13
HPLC: 純度λ254: 100%, tR: 3.37
【0094】
1.13
7-クロロ-N-(2,4-ジメトキシフェニル)キノリン-4-アミン(化合物39)
化学式: C17H15ClN2O2
精密質量: 314,08
分子量: 314,77
R = 91%
1H NMR (200MHz, DMSO-d6) δ: 14.70 (br, 1H), 10.87 (s, 1H), 8.86 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.45 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 8.20 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.83 (dd, J = 9.0, 2.1 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.81 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.68 (dd, J = 8.7, 2.6 Hz, 1H), 6.27 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 3.84 (s, 3H), 3.77 (s, 3H).
13C NMR (50MHz, DMSO-d6) δ: 160.4, 155.8, 155.3 142.7, 138.9, 138.2, 128.8, 127.2, 126.0, 119.2, 117.4, 115.4, 105.6, 100.6, 99.8, 55.9, 55.6.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C17H15ClN2O2について、理論値315.08、実測値 315.20
HPLC: 純度λ254: 99.6%, tR: 3.49
【0095】
1.14
7-クロロ-N-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)キノリン-4-アミン(化合物40)
化学式: C17H13ClN2O2
精密質量: 312,06
分子量: 312,75
R = 32%
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.02 (s, 1H), 8.83 (d, J = 9.1 Hz, 2H), 8.48 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 8.16 (d, J = 2.2 Hz, 2H), 7.83 (dd, J = 9.1, 2.1 Hz, 2H), 7.03 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.99 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 6.92 (dd, J = 8.5, 2.5 Hz, 2H), 6.71 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 4.30 (s, 9H).
13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 155.1, 144.0, 143.4, 142.8, 139.3, 138.2, 130.0, 127.1, 126.1, 119.4, 118.6, 118.0, 115.8, 114.5, 100.2, 64.2, 64.1, 39.5.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C17H13ClN2O2について、理論値313.06、実測値 313.24
HPLC: 純度λ254: 100%, tR: 3.09
【0096】
1.15
N-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-7-クロロキノリン-4-アミン(化合物41)
化学式: C16H11ClN2O2
精密質量: 298,05
分子量: 298,72
R = 17%
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 14.78 (s, 1H), 11.09 (s, 1H), 8.84 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 8.49 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 8.17 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.85 (dd, J = 9.1, 2.1 Hz, 1H), 7.10 (d, J = 3.9 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 6.94 (dd, J = 8.2, 2.1 Hz, 1H), 6.70 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 6.14 (s, 2H).
13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 155.4, 148.3, 146.7, 143.2, 139.0, 138.3, 130.6, 127.2, 126.1, 119.3, 119.2, 115.7, 108.9, 107.0, 101.9, 100.3, 39.5.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C16H11ClN2O2について、理論値299.05、実測値 299.18
HPLC: 純度λ254: 99.0, tR: 3.21
【0097】
2.式3においてR
5がO-アルキル、O-(CH
2)
n1-(環式基)、(CH
2)
n1-(環式基)から選択され、n
1は1から4であり、前記環式基が以下:
【化17】
より選択され、R
6=H及びX=Clである化合物の調製のための一般手順
式6の化合物のTHF中の溶液(1当量)に、ナトリウムメトキシド(2当量)またはNaH(2当量)をゆっくり加えた後、2-モルホリノエタン-1-オール(2当量)を加えた。生成した混合物をTLCでモニターしつつ反応が完了するまで還流下で撹拌した。室温に冷却した後、粗製混合物をシリカに吸着させ、カラムクロマトグラフィーで、メタノール/ジクロロメタンを溶離液として使用して、精製した(傾斜0/100から5/95、v/v)。
以下の化合物27~33を、上記の手順に従って調製した。
【0098】
2.1
7-クロロ-2-メトキシ-N-(4-メトキシフェニル)キノリン-4-アミン(化合物27)
化学式: C17H15ClN2O2
精密質量: 314,08
分子量: 314,77
R = 37%
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6) δ 8.82 (s, 1H), 8.30 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.66 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.40 (dd, J = 8.9, 2.3 Hz, 1H), 7.26 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.01 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 5.96 (s, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.78 (s, 3H).
13C NMR 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6) δ 164.2, 156.5, 151.3, 148.0, 134.1, 132.4, 125.8, 123.9, 122.6, 116.3, 114.6, 88.6, 55.2, 52.7.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C17H15ClN2O2について、理論値315.08、実測値 315.20
HPLC: 純度λ254: 97.7%, tR: 3.74
【0099】
2.2
7-クロロ-N-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-メトキシキノリン-4-アミン(化合物33)
化学式: C18H17ClN2O3
精密質量: 344,09
分子量: 344,80
R = 34%
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6) δ 8.80 (s, 1H), 8.28 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.64 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.38 (dd, J = 8.8, 2.3 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.93-6.81 (m, 2H), 6.04 (s, 1H), 3.84 (s, 3H), 3.76 (s, 3H), 3.73 (s, 3H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6) δ 164.2, 151.1, 149.3, 148.0, 146.1, 134.1, 132.8, 125.8, 123.9, 122.6, 116.3, 116.2, 112.3, 108.9, 88.9, 55.7, 55.5, 52.7.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C18H17ClN2O3について、理論値345.09、実測値 345.20
HPLC: 純度λ254: 97.2%, tR: 3.57
【0100】
2.3
7-クロロ-N-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-(2-モルホリノエトキシ)キノリン-4-アミン(化合物32)
化学式: C23H26ClN3O4
精密質量: 443,16
分子量: 443,93
R = 37%
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6) δ 8.83 (s, 1H), 8.29 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.63 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.40 (dd, J = 8.9, 2.2 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.92 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 6.87 (dd, J = 8.3, 2.4 Hz, 1H), 5.99 (s, 1H), 4.40 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 3.78 (s, 3H), 3.75 (s, 2H), 3.54 (t, J = 4.7 Hz, 5H), 2.63 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 2.46-2.35 (m, 4H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6) δ 163.8, 151.4, 149.3, 147.9, 146.2, 134.2, 132.7, 125.8, 123.9, 122.6, 116.5, 116.2, 112.3, 109.2, 89.0, 66.1, 62.3, 56.9, 55.6, 55.5, 53.5.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C23H26ClN3O4について、理論値444.16、実測値 444.0
HPLC: 純度λ254: 99.5%, tR: 3.12
【0101】
3.式3においてR
5が下記
【化18】
から選択される環式基であり、R
6=H及びX=Clである化合物の調製のための一般手順
式6の化合物のTHF中の溶液(1当量)を、モルホリン(またはN-メチルピペラジン)0.5mmol/mL中、90℃にて、TLCでモニターしつつ、反応が完了するまで撹拌した。室温に冷却した後、粗製混合物をシリカに吸着させ、カラムで、メタノール/ジクロロメタンを溶離液として使用して精製した(傾斜0/100から5/95、v/v)。
以下の化合物28~31を、上記の手順に従って調製した。
【0102】
3.1
7-クロロ-N-(4-メトキシフェニル)-2-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物30)
化学式: C20H20ClN3O2
精密質量: 369,12
分子量: 369,85
R = 61%
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6) δ 8.60 (s, 1H), 8.16 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 8.8, 2.2 Hz, 1H), 7.04-6.95 (m, 2H), 6.24 (s, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.64 (t, J = 4.7 Hz, 4H), 3.43 (d, J = 4.9 Hz, 4H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6) δ 159.1, 156.0, 149.8, 149.2, 133.8, 132.9, 125.2, 125.0, 123.7, 120.6, 114.6, 114.6, 86.6, 66.0, 55.2, 44.8.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C20H20ClN3O2について、理論値370.12、実測値 370.27
HPLC: 純度λ254: 98.2%, tR: 3.36
【0103】
3.2
7-クロロ-N-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物28)
化学式: C21H22ClN3O3
精密質量: 399,13
分子量: 399,88
R = 56%
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6) δ 8.62 (s, 1H), 8.16 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 8.8, 2.2 Hz, 1H), 7.04-6.93 (m, 2H), 6.86 (dd, J = 8.4, 2.3 Hz, 1H), 6.37 (s, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.74 (s, 3H), 3.65 (t, J = 4.6 Hz, 4H), 3.45 (d, J = 4.8 Hz, 4H).
13C NMR 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6) δ 159.1, 149.5, 149.3, 149.2, 145.5, 133.8, 133.3, 125.0, 123.7, 120.6, 115.2, 114.6, 112.3, 108.0, 87.1, 66.0, 55.6, 55.5, 44.8.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C21H22ClN3O3について、理論値400.13、実測値 400.27
HPLC: 純度λ254: 98.2%, tR: 3.36
【0104】
3.3
7-クロロ-N-(4-メトキシフェニル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)キノリン-4-アミン(化合物31)
化学式: C21H23ClN4O
精密質量: 382,16
分子量: 382,89
R = 57%
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6) δ 8.56 (s, 1H), 8.14 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.26 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.17 (dd, J = 8.8, 2.2 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.24 (s, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.46 (d, J = 4.7 Hz, 4H), 2.34 (d, J = 5.0 Hz, 4H), 2.17 (s, 3H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6) δ 158.9, 156.0, 149.7, 149.4, 133.8, 132.9, 125.1, 124.9, 123.6, 120.4, 114.6, 114.4, 86.8, 55.2, 54.4, 45.7, 44.3.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C21H23ClN4Oについて、理論値383.16、実測値383.20
HPLC: 純度λ254: 99.5%, tR: 2.76
【0105】
3.4
7-クロロ-N-(3,4-ジメトキシフェニル)-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)キノリン-4-アミン(化合物29)
化学式: C22H25ClN4O2
精密質量: 412,17
分子量: 412,92
R = 58%
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6) δ 8.58 (s, 1H), 8.14 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.17 (dd, J = 8.8, 2.2 Hz, 1H), 7.04-6.93 (m, 2H), 6.86 (dd, J = 8.4, 2.3 Hz, 1H), 6.39 (s, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.74 (s, 3H), 3.48 (t, J = 4.7 Hz, 4H), 2.35 (d, J = 4.9 Hz, 4H), 2.17 (s, 3H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6) δ 158.8, 156.1, 149.4, 149.1, 145.4, 133.8, 133.4, 124.9, 123.6, 120.4, 115.1, 114.5, 112.4, 107.9, 87.3, 55.6, 55.4, 54.4, 45.7, 44.3.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C22H25ClN4O2について、理論値413.17、実測値 413.13
HPLC: 純度λ254: 98.8%, tR: 2.71
【0106】
4.式3においてR5=R2=H及びR6=Clである化合物の調製のための一般手順
以下の化合物を、式(3)の化合物と同様の手順を用いて、あるいは、エタノール中の4,6-ジクロロキノリンとアミンとの混合物の、80℃での1時間に亘るマイクロ波照射により調製した。その後室温に冷却した後に酢酸エチルを添加し、生成する沈殿物を回収し、酢酸エチル及びジエチルエーテルで洗って、さらなる精製なしに純粋生成物を得た。
以下の化合物36~37を、上記の手順に従って調製した。
【0107】
4.1
6-クロロ-N-(2,4-ジメトキシフェニル)キノリン-4-アミン(化合物37)
化学式: C17H15ClN2O2
精密質量: 314,08
分子量: 314,77
R=58%
1H NMR (200MHz, CDCl3) δ 14.90 (br, 1H), 10.47 (s, 1H), 9.19 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.19 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.98 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 7.57 (dd, J = 9.0, 1.9 Hz, 1H), 7.30-7.26 (m, 1H), 6.39-6.34 (m, 2H), 6.22 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.64 (s, 3H).
13C NMR (50MHz, CDCl3) δ 160.8, 155.5, 155.3, 140.4, 137.0, 133.8, 132.9, 128.7, 123.9, 122.3, 118.3, 117.7, 105.2, 100.6, 99.6, 55.7.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C17H15ClN2O2について、理論値315.77、実測値 315.13
HPLC: 純度λ254: 100%, tR: 3.52
【0108】
4.2
6-クロロ-N-(4-(trifluoroメトキシ)フェニル)キノリン-4-アミン(化合物36)
化学式: C16H10ClF3N2O
精密質量: 338,04
分子量: 338,71
R = 71%
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6) δ 15.22 (s, 1H), 11.33 (s, 1H), 9.13 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 8.55 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 8.19 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 8.06 (dd, J = 9.1, 2.0 Hz, 1H), 7.61 (q, J = 8.9 Hz, 4H), 6.88 (d, J = 6.9 Hz, 1H).
13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 154.1, 146.7, 143.1, 137.0, 136.3, 134.0, 131.7, 127.2, 123.4, 122.5, 122.4, 120.0 (q, J = 256.7 Hz), 118.3, 100.5.
MS: ESI (m/z): [M+H]+ C16H10ClF3N2Oについて、理論値339.04、実測値339.27
HPLC: 純度λ254: 99.8%, tR: 3.96
【0109】
(実施例2:式2の化合物の調製)
1.式2においてR5=R6=H及びX=NR3R4である化合物の調製のための一般手順
100mgの式3の化合物、1.2当量の式5のアミン、2%モルの[Pd(acac)(IPr*)Cl]、及び3当量のtBuOKを、アルゴン雰囲気下でセプタムを取り付けたネジ蓋バイアルに入れ、1mlの脱気1,4-ジオキサンを添加する。反応媒体を110℃で24時間加熱する。室温に戻して、粗製混合物をシリカに吸着させ、カラムで、メタノール/ジクロロメタンを溶離液として使用して精製する(傾斜0/100から5/95、v/v)。
以下の化合物10、12~13、16、18~19、23、25、及び26を、上記の一般手順に従って調製した。
【0110】
1.1
N-(3,5-ジフルオロフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物10)
式: C19H17F2N3O
精密質量: 341.1340
分子量: 341.3618
R = 46 %
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6); δ 9.14 (br, 1H), 8.45 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 8.13 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 7.43 (dd, J = 9.3, 2.6 Hz, 1H), 7.16 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 7.06-6.92 (m, 3H), 6.82 (tt, J = 9.3, 2.3 Hz, 1H), 3.79 (t, J = 4.5 Hz, 4H), 3.29 (t, J = 4.5 Hz, 4H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6); δ 165.6-165.2 (d), 160.7-160.4 (d), 151.7, 150.5, 150.4, 145.3, 122.8, 116.6, 113.9, 109.6, 102.7 (2C), 102.1, 96.9 (t, J = 26,2 Hz, 2C), 65.9 (2C), 47.9 (2C).
19F NMR (188 MHz, DMSO-d6); δ -109.35, -109.40, -109.44.
HRMS-ESI (m/z) : [M+H]+ C19H18F2N3Oについて、理論値:342.1340、実測値:342.1416.
【0111】
1.2.
N-(o-トリル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物12)
式: C20H21N3O
精密質量: 319.1685
分子量: 319.4080
R = 60 %
1H NMR (200 MHz, CDCl3); δ 8.38 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 7.85 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.36-7.19 (m, 5H), 6.47 (s, 1H), 6.33 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 3.92 (t, J = 4.7 Hz, 4H), 3.34 (d, J = 4.9 Hz, 4H), 2.27 (s, 3H).
13C NMR (50 MHz, CDCl3); δ 152.2, 150.2 149.6, 148.9, 137.8, 133.8, 131.5, 127.3, 126.4, 125.8, 121.1, 116.9, 112.9, 110.7, 100.4, 66.8 (2C), 48.9 (2C), 17.9.
HRMS-ESI (m/z) : [M+H]+ C20H22N3Oについて、理論値:320.1760、実測値:320.1757.
【0112】
1.3.
N-(4-メトキシフェニル)-7-モルホリノキノリン-4-アミン(化合物13)
式: C20H21N3O2
精密質量: 335.1634
分子量: 335.4070
R = 68 %
1H NMR (200 MHz, CDCl3); δ 8.38 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.80 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.34 - 7.21 (m, 4H), 6.97 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.55 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 3.92 (t, J = 4.7 Hz, 4H), 3.85 (s, 3H), 3.33 (t, J = 4.8 Hz, 4H).
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6); δ 156.1, 151.4, 150.4, 150.2, 148.6, 133.0, 125.3, 122.6, 115.8, 114.5 (2C), 112.7, 109.8 (2C), 98.6, 65.9 (2C), 55.2 (2C), 48.0.
HRMS-ESI (m/z) : [M+H]+ C20H22N3O2について、理論値:336.1709、実測値:336,1706.
【0113】
1.4.
N4, N7-bis(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物16)
式: C23H21N3O2
精密質量: 371.1634
分子量: 371.4400
R = 17 %
1H NMR (500 MHz, MeOD); δ 8.10 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 8.02 (d, J = 6.2 Hz, 1H), 7.28-7.23 (m, 2H), 7.23-7.19 (m, 2H), 7.16 (dd, J = 9.2, 2.2 Hz, 1H), 7.11 (d, J = 2.3 Hz, 1H),7.03-6.98 (m, 2H), 6.96-6.92 (m, 2H), 6.42 (d, J = 6.2 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 3.80 (s, 3H).
13C NMR (126 MHz, MeOD); δ 159.9, 158.1, 154.3, 151.1, 148.0, 147.2, 135.8, 133.4, 128.1 (2C), 125.1 (2C), 124.6, 118.9, 116.3 (2C), 116.2 (2C), 112.7, 103.4, 99.7, 56.1, 56.4.
HRMS-ESI (m/z) : [M+H]+ C23H22N3O2について、理論値:372.1709、実測値:372.1706.
【0114】
1.5.
N4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物18)
式: C22H17F2N3O
精密質量: 377.1340
分子量: 377.3948
R = 24 %
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6); δ 9.30 (br s, 1H), 8.41 (s, 1H), 8.37 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 8.08 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 3.2 Hz, 2H), 7.20-7.14 (m, 2H), 6.99 (d, J = 3.2 Hz, 2H), 6.96-6.90 (m, 3H), 6.82 (tt, J = 9.4, 2.3 Hz, 1H), 3.75 (s, 3H).
19F NMR (188 MHz, DMSO-d6); δ -109.62, -109.67, -109.72.
13C NMR (50 MHz, DMSO-d6); δ 165.6, 160.7, 154.7, 150.4, 149.9, 146.72, 145.7, 134.6, 123.2, 121.9 (2C), 117.2, 114.6 (2C), 113.5, 106.3 (2C), 102.7, 102.3, 102.1, 96.8, 55.2.
HRMS-ESI (m/z) : [M+H]+ C22H18F2N3Oについて、理論値:378.1412、実測値:378.1415.
【0115】
1.6.
2-クロロ-4-((4-((3,5-ジフルオロフェニル)アミノ)キノリン-7-イル)アミノ)フェノール(化合物19)
式: C21H14ClF2N3O
精密質量: 397.0793
分子量: 397.8098
R = 65 %
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6); δ 9.90 (s, 1H), 9.09 (s, 1H), 8.39 (s, 1H), 8.37 (s, 1H), 8.07 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.19 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.16 (dd, J = 9.2, 2.5 Hz, 1H), 7.07 (dd, J = 8.7, 2.7 Hz, 1H), 7.00-6.91 (m, 4H), 6.80 (tt, J = 9.6, 2.6 Hz, 1H).
13C NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ 164.1, 163.9, 162.2, 162.1, 153.1, 150.8, 148.4, 146.2, 134.3, 133.1, 123.4, 122.9, 122.9, 121.7, 120.7, 119.8, 117.4, 117.3, 115.8, 115.8, 113.9, 113.5, 107.4, 102.6, 102.5, 102.2, 97.0, 97.0, 96.8, 96.6.
HRMS-ESI (m/z) : [M+H]+ C21H15ClF2N3Oについて、理論値:398.0866、実測値:398.0866.
【0116】
1.7.
N4-(o-トリル)-N7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物23)
式: C23H21N3O
精密質量: 355.1685
分子量: 355.4410
R = 88 %
1H NMR (200 MHz, CDCl3); δ 8.35 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.87 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.36-7.13 (m, 6H), 6.82 (ddd, J = 7.9, 2.0, 0.7 Hz, 1H), 6.77 (t, J = 2.2 Hz, 1H), 6.58 (ddd, J = 8.1, 2.3, 0.7 Hz, 1H), 6.31 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 6.19 (s, 1H), 3.80 (s, 3H), 2.27 (s, 3H).
13C NMR (126 MHz, MeOD); 162.6, 157.9, 151.94, 150.3, 149.5, 142.9, 136.3, 131.6, 124.8 (2C), 124.3, 118.9, 116.9, 116.1 (2C), 114.1, 111.7, 110.5, 105.7, 101.0, 56.4, 56.2.
HRMS-ESI (m/z) : [M+H]+ C23H22N3Oについて、理論値:356.1757、実測値:356.1764.
【0117】
1.8.
N4-(3-メトキシフェニル)-N7-(4-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物25)
式: C23H21N3O2
精密質量: 371.1634
分子量: 371.4400
R = 58 %
1H NMR (500 MHz, MeOD); δ 8.14 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.32 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 7.24-7.20 (m, 2H), 7.19 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.16 (dd, J = 9.1, 2.4 Hz, 1H), 6.96-6.92 (m, 3H), 6.91 (t, J = 2.2 Hz, 1H), 6.77 (ddd, J = 8.3, 2.5, 0.9 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 3.81 (s, 3H), 3.80 (s, 3H).
13C NMR (126 MHz, MeOD); δ 162.6, 157.9, 151.9, 150.28, 149.5, 142.9, 136.3, 131.6, 124.8 (2C), 124.3, 118.9, 116.9, 116.1 (2C), 114.1, 111.7, 110.5, 105.7, 101.0, 56.4, 56.2.
HRMS-ESI (m/z) : [M+H]+ C23H22N3O2について、理論値:372.17093、実測値:372.17065.
【0118】
1.9
N4-(3,5-ジフルオロフェニル)-N7-(3-メトキシフェニル)キノリン-4,7-ジアミン(化合物26)
式: C22H17F2N3O
精密質量: 377.1340
分子量: 377.3948
R = 23 %
1H NMR (500 MHz, MeOD); δ 8.32 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 8.05 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.52 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.27 (dd, J = 9.1, 2.4 Hz, 1H), 7.21 (t, J = 8.1 Hz, 1H), 6.98 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 6.94-6.89 (m, 2H), 6.85 (ddd, J = 8.0, 2.1, 0.9 Hz, 1H), 6.83 (t, J = 2.2 Hz, 1H), 6.62 (tt, J = 9.2, 2.3 Hz, 1H), 6.56 (ddd, J = 8.2, 2.5, 0.9 Hz, 1H), 3.79 (s, 3H).
13C (126 MHz, MeOD): δ 165.19 (dd, J = 245, 15 Hz), 162.2, 151.4 , 151.0 , 148.9 , 147.5 , 145.5 (t, J = 13 Hz), 144.7 , 131.0 , 123.8 , 119.7, 115.6, 112.8, 109.1, 108.4, 106.0, 104.6 (dd, J = 14, 7 Hz), 103.0 , 98.8 (t, J = 26 Hz), 55.6.
HRMS-ESI (m/z) : [M+H]+ C22H18F2N3Oについて、理論値:378.1412、実測値:378.1414.
HPLC: 純度λ254: 96%, tR: 3.94
【0119】
(実施例3:本発明の化合物のインビトロ活性)
3.1 A375におけるEZH2 mRNAレベルを減少させる能力(用量応答の決定)
典型的には、30000~50000細胞を6ウェル培養プレートに播種し、24時間後に漸増濃度のNIK阻害剤またはビヒクルと共にインキュベートした。細胞は、阻害剤と共に4日間に亘りインキュベートした後にRNA抽出及びPCRのために採取した。全RNAを、RNAeasyミニキット(Qiagen)を用い、製造元の手順に従って細胞から単離した。逆転写を、AMV逆転写システム(Promega)を用いて行い、定量的PCRを、Power Sybr green(Applied Biosystems, Life Technologies, Grand Island, NY)を用い、製造元の指示に従って行った。PCRは、Step One plus Real-Time PCRシステム(Applied Biosystems)で行った。全ての分析を三重に行い、融解曲線分析を対照に行って製品品質及び特異性を求めた。発現レベルを、SB34をノーマライザーとして、相対定量の比較方法を用いて算出した。データを、スチューデントt検定を使用して統計的有意性について分析した。結果は、対照に対する平均±SEMとして示される。プライマーはプライマーバンクまたはプライマーデポ(http://pga.mgh.harvard.edu/primerbank/, https://primerdepot.nci.nih.gov)から入手し、これらの特異性をプライマーブラスト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/tools/primer-blast/)を用いて検証した。
【0120】
以下の結果が得られた。
ここで、IC50は、50%のEZH2転写活性を得るために必要な濃度を表す。
【表1】
【0121】
EZH2転写を減少させることにより、NIK阻害剤は、治療された癌細胞において老化を回復させる。漸増用量の化合物を使用する単純なベータ-ガラクトシダーゼアッセイにより、潜在的に優れた候補を評価することができる。さらに、最良の候補を試験し、EZH2転写を減少させると同時にCDKN1A及びIFN-γの発現を増加させる、これらの能力を研究する。
【0122】
3.2 A375細胞増殖アッセイ
細胞を、Malassezチャンバを用いて計数した。平均及び標準偏差は、三重実験から算出した。抗増殖効果は、トリパンブルー排除アッセイによって評価した。簡単に説明すると、細胞を12ウェルプレートに播種し、表示の化合物を添加して1または10μMとした培地中で48時間または96時間に亘り増殖させた。細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理により分離し、回収してトリパンブルーで着色した。死細胞及び生細胞を計数し、増殖を以下のように算出した:増殖(%)=[(処理細胞数/未処理細胞数)×100]。
【0123】
【0124】
これらの結果は、本発明の化合物が腫瘍細胞増殖を遅らせるのに有効であることを示している。
【0125】
3.3 メラニン細胞及び線維芽細胞生存率アッセイ
細胞生存率効果を、トリパンブルー排除アッセイにより評価した。簡単に説明すると、細胞を12ウェルプレートに播種し、表示の化合物を添加して10μMとした培地中で96時間に亘り増殖させた。細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理により分離し、回収してトリパンブルーで着色した。死細胞及び生細胞を計数し、細胞生存率を以下のように算出した:生存率(%)=100-[(死細胞数/全細胞)×100]。
【0126】
以下の結果が得られた。
【表3】
これらの結果は、本発明の化合物が、正常なヒトの線維芽細胞及びメラニン形成細胞に対していかなる毒性も示さないことを示している。
【0127】
本発明の化合物、特に化合物5は、明らかな用量依存性の効果でA375細胞における老化を回復させた。これらはまた、用量依存性の方式でEZH2転写を減少させる(化合物5については
図1A)と共に、CDKN1A及びIFN-γの発現を増加させた(化合物5については
図1B)。化合物5で処置したA375、C12.06、及びA549細胞のセクレトームを調べた。化合物5で処置した細胞によって産生されたセクレトームは、明らかなIFN-γサインを有しており、NFkB2-siRNAで処置した細胞によって産生されたものと類似していた(
図1C)。化合物5の効果とNFkB2-siRNAの効果を、A375、C12.06、及びA549細胞の増殖に関して比較した。対照と比較して、これらの処置は、癌細胞の増殖に対して類似の抑制効果を示した。どちらの処理も、正常なヒトメラニン形成細胞または線維芽細胞の増殖には影響を及ぼさなかった。化合物5で処理したA375、C12.06、及びA549細胞は、対照細胞よりも有意に多くのIFN-γを産生した。最後に、化合物5は、タンパク質レベルでp52及びEZH2を(そしていくつかの場合にはRelBも)各癌細胞型において減少させた。化合物5はまた、STAT1リン酸化の増加を誘導したが、切断PARPは増加させず、またカスパーゼ3、LC3、若しくはCHOPを活性化させることもなく、このことはその特異性を支持する。
【0128】
(実施例4:本発明の化合物のインビボ活性)
有望なインビトロの結果に照らして、化合物5の有効性を、単独でまたは免疫チェックポイント遮断薬を用いて、固形癌の治療のためにインビボで試験した。
【0129】
4.1 結腸直腸癌
皮下腫瘍の発生
100μLのPBS中0.5×106細胞を、4週齢の雌C57Bl/6マウス(B16実験用)またはBalb/cマウス(CT26実験用)に皮下注射した。DZNEPは、EZH2の触媒活性の阻害剤であり、追加の対照として使用された。
【0130】
1mg/kgのDZNEP及び10mg/kgの化合物5をその後の実験に使用した。三次元測定を毎日行い、腫瘍体積をmm3で表した。腫瘍は、マウス1匹毎の総負荷が1000mm3に達するまで、またはマウスが20%超の体重減少を示すまで増殖させ、その時点でマウスを屠殺した。新たに回収した腫瘍を分離し、染色して、フローサイトメーターを用いて免疫細胞浸潤を求めた。脾臓組織由来のCD3+T細胞を、ミルテニー(myltennyi)磁気カラムを用いてネガティブ選択し、ナイーブCT26細胞と24時間または48時間に亘って接触させた。次いでCT26細胞をDAPI(0.5 μg/ml, Molecular Probes, Grand Island, NY, USA)で染色した。T細胞を、CD8、パーフォリン、及びグランザイムB抗体で染色し、MACS-Quant Analyzer(Miltenyi Biotec, Paris, France)を用いてフローサイトメトリーにより直ちに分析した。
【0131】
全ての動物実験はヘルシンキ宣言に従って行われ、フランス倫理委員会によって検討され、承認された(農業大臣、承認番号実施要綱:PEA NCE / 2013-73)。
【0132】
免疫細胞染色及び分析
腫瘍を摘出し、70μMのストレーナーを用いて脱凝集させた。次いで、細胞を氷温PBS(Life Technologies, 14190169)中に再懸濁させ、以下のモノクローナル抗マウス抗体(全てがマウスエピトープに特異的である)の1つまたは複数と共に、製造元のプロトコルに従って、30分間(4℃にて暗所で)インキュベートした:eFluor(登録商標)450-anti-F4/80(BM8, eBioscience)、PE/FITC/APC-anti-CD3(145-2C11, BD Pharmingen)、Pacific Blue-anti-CD4(RM4-5, BD Pharmingen)、PE-Cy7-anti-CD8(53-6.7, BD Pharmingen)、APC-anti-CD11b(M1/70, BD Pharmingen)、FITC/PE-anti-CD11c(HL3, BD Pharmingen)、APC-Cy7-anti-CD25(PC61, BD Pharmingen)、PE-anti-CD40(3/23, BD Pharmingen)、FITC-anti-CD80(B7-1, BD Pharmingen)、PE-Cy7-anti-CD86(B7-2, BD Pharmingen)、FITC/PE-anti-NK1.1(PK136, BD Pharmingen)、PE-anti-FoxP3(MF23, BD Pharmingen)、APC/PE-anti-IFN-γ(XMG1.2, BD Pharmingen)、PE-anti-perforin(eBioOMAK-D, eBioscience)、及びPE-Cy7-anti-Granzyme B(NGZB RUO, eBioscience)。FoxP3が、BD Pharmingen(登録商標)Mouse Foxp3 Buffer Setを製造元の指示に従って用いた細胞核内染色によって検出された。IFN-γ、パーフォリン、及びグランザイムBが、BD Cytofix/Cytoperm(登録商標)Kitを製造元の指示に従って用いた核内染色によって検出された。染色完了後、細胞を、フローサイトメトリーによる分析の前に、PBSで2回洗浄した。蛍光を、MACSQuant(登録商標)Analyzer(Milteny
i, Paris, France)を使用して測定した。
【0133】
ネガティブ選択
脾臓を摘出して脱凝集させ、細胞をPBS中に再懸濁させた。T細胞を、CD3ネガティブ選択によって単離し、活性化を回避した。このために、細胞を、以下のモノクローナルFITC抗マウス抗体の混合物と共に、製造元のプロトコルに従って15分間(4℃にて暗所で)インキュベートした:TER-119(TER-119, eBioscience)、CD19(6D5, BD Pharmingen)、CD45R/B220(30-F11, BD Pharmingen)、CD11b(M1/70, BD Pharmingen)、及びCD49b(DX5, BD Pharmingen)。その後、細胞を洗浄し、磁気抗FITC MicroBeadsと15分間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、遠心分離し、500μLのPBS中に再懸濁させた後、MACS(登録商標)Separator(Miltenyi)を取り付けたLSカラム(Miltenyi)にこれを通し、続いて3mLのPBSを通した。CD3細胞の豊富な画分を含むフロースルーを回収し、フローサイトメトリーで分析して前記富化物の収率を決定した(CD3細胞は回収された全細胞の少なくとも70%を構成した)。
【0134】
統計分析
データの大部分は、それぞれ三重に実施された少なくとも3つの独立した実験の平均±SDとして示される。実験の統計的有意性は、対応のない両側スチューデントt検定を用いて評価した。*は、P値が0.05未満であることを示し、**は、P値が0.01未満であることを示す。代表的な実験は、少なくとも2回再現された実験の三重測定値の平均±SDとして提示される。
動物実験における統計的有意性についての試験は、Mann Whitney Wilcoxon検定を用いて行った。
【0135】
異なる種類の癌における新しいアプローチを評価するために、化合物5を結腸直腸癌細胞において試験した。CT26細胞を同系マウスに皮下注射した。3日後、マウスを、DZNEP、化合物5、及び抗PD1の単剤療法として、並びにこれらを併用して、腹腔内処置した。マウスに、DZNEPまたは化合物5に加えて、T細胞応答を中和するために抗CD8抗体が添加された抗PD1を投与する、追加の処置も行った。CT26腫瘍の増殖は各単剤療法によって有意に減少した(
図2A)。併用処置は腫瘍の大きさに劇的な影響を及ぼし、腫瘍増殖を低減したのみならず、実験の最後の数日間に腫瘍体積を減少させた。腫瘍退縮及び無腫瘍マウスの徴候さえ観察された。抗CD8を併用処置に添加した場合、腫瘍の増殖は著しく増大し、腫瘍発展の制御における免疫監視の役割が強調された。全マクロファージ集団中のM1マクロファージの数及びM1マクロファージのパーセンテージは、全ての処置マウスにおいて、特に併用処置を受けたマウスにおいて、増加した(
図2C)。各処置は、DCの数及び活性、ならびに腫瘍に浸潤するCD8+及びCD4+細胞の数を、増加させた(
図2D)。前記処置により腫瘍に浸潤するNK細胞の数が増加し、その増加分は併用処置について顕著に大きかった。化合物5で処置したマウスは、毒性の臨床的徴候を全く示さず、別のマウスと比較して同様の肝臓質量及び全身血糖を示した。化合物5で処置したマウスの血液中の肝臓酵素は、正常範囲内に留まった。最後に、CD3+ T細胞を処置マウスの脾臓からのネガティブ選択によって単離し、ナイーブCT26細胞と共培養した。DZNEP、化合物5、または併用療法で処置したマウスから単離したT細胞は、CT26細胞を殺すのにより効果的であった。処置マウス由来のCD8+細胞は、パーフォリン及びグランザイムBのより高い発現レベルを示した。
【0136】
これらの結果は、化合物5が優れた耐容性を示し、それ自体で腫瘍増殖の低減に有効であることのみならず、化合物5が抗PD1治療を明らかに増強することを示す。腫瘍部位で化合物5によって回復し、活性化される免疫細胞は、再循環し、新たな腫瘍細胞を認識して効率的に殺すことができる。
【0137】
4.2 黒色腫
次いで、本発明者らは、化合物5が、既に確立された腫瘍を有するマウスの生存率を上昇させることができたか、そうであった場合は、この状況でさらに抗PD1治療と相乗効果を奏することができたかを問うた。そこで、モデルB16黒色腫細胞をC57B16マウスに使用することが決定された。B16細胞が再度皮下注射され、平均体積が100mm
3に達するまで腫瘍を増殖させた。次いで、マウスを同等の平均腫瘍体積及び標準偏差を有する4つの群に分類し、CT26実験と同様のプロトコルで処置(対照群、化合物5、抗PD1、及び化合物5と抗PD1との併用)を行った。腫瘍は、マウス1匹毎の総負荷が1000mm
3に達するまで増殖させ、その時点でマウスを屠殺した。結果は、この場合でさえも、単剤処置(化合物5処置の生存期間中央値は、注射から20日間であり、一方の抗PD1については19日間であった)は、対照(生存期間中央値は13日間であった)と比較して腫瘍増殖の低減に有効であったことを示す(
図3A及び3B)。併用処置は、2例の腫瘍退縮及び28日の生存期間中央値をもって相乗効果を示した。さらにまた、この後者の実験では、化合物5の処置に依存した死亡は全く観察されなかった。
【0138】
全体的に見れば、これら最後の結果は、化合物5が耐容性に優れてそれ自体で腫瘍増殖の低減に有効であるのみならず、化合物5が、特に肺癌及び結腸癌において抗PD1治療を明らかに増強することを示している。
【0139】
(参考文献)
本明細書を通して、様々な参考文献が、本発明が関係する最先端技術を説明している。 これらの参考文献の開示は、参照により本開示に援用することとする。
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2. T. Bald, J. Landsberg, D. Lopez-Ramos, M. Renn, N. Glodde, P. Jansen, E. Gaffal, J. Steitz, R. Tolba, U. Kalinke, A. Limmer, G. Jonsson, M. Holzel, T. Tuting, Immune cell-poor melanomas benefit from PD-1 blockade after targeted type I IFN activation. Cancer discovery 4, 674-687 (2014).
3. Z. Guo, H. Wang, F. Meng, J. Li, S. Zhang, Combined Trabectedin and anti-PD1 antibody produces a synergistic antitumor effect in a murine model of ovarian cancer. J Transl Med 13, 247 (2015).
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8. T. W. Kang, T. Yevsa, N. Woller, L. Hoenicke, T. Wuestefeld, D. Dauch, A. Hohmeyer, M. Gereke, R. Rudalska, A. Potapova, M. Iken, M. Vucur, S. Weiss, M. Heikenwalder, S. Khan, J. Gil, D. Bruder, M. Manns, P. Schirmacher, F. Tacke, M. Ott, T. Luedde, T. Longerich, S. Kubicka, L. Zender, Senescence surveillance of pre-malignant hepatocytes limits liver cancer development. Nature 479, 547-551 (2011).