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特許7039591リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20220314BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220314BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019531454
(86)(22)【出願日】2017-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 KR2017014321
(87)【国際公開番号】W WO2018110899
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2019-06-13
(31)【優先権主張番号】10-2016-0168830
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ナム、 サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジェ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ジョン イル
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジェ ミョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、 グン ギョン
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-181839(JP,A)
【文献】特開2012-014887(JP,A)
【文献】特開平10-199525(JP,A)
【文献】特開2013-239434(JP,A)
【文献】特開2011-082150(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0226985(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
C01G 53/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム遷移金属複合酸化物、および
前記リチウム遷移金属複合酸化物にドーピングされたドーピング金属を含むリチウム二次電池用正極活物質において、
前記リチウム二次電池用正極活物質は、下記の化学式1で表され、
前記ドーピング金属は、下記の化学式1でMおよびMで表され、
下記Mはアルミニウム(Al)であり、
下記Mはモリブデン(Mo)であり、
前記アルミニウムおよび前記モリブデンは、結晶構造内のニッケルサイトに置換される、リチウム二次電池用正極活物質:
[化学式1]
Li(NiCoMn1-x-y(M 1-z
前記化学式1で、
0.95≦a≦1.1であり、0<b<1であり、0<c<0.02であり、0.5≦x<1であり、0≦y≦0.2であり、0.7≦z≦0.83である。
【請求項2】
前記ドーピング金属の平均酸化数は3.5乃至5の範囲内である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記xは0.8以上である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記cは0.015以下である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記二次電池用正極活物質のa軸格子定数(lattice parameter)は、2.865Å乃至2.874Åの範囲内である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記二次電池用正極活物質のc軸格子定数(lattice parameter)は、14.180Å乃至14.214Åの範囲内である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記二次電池用正極活物質のc軸格子定数/a軸格子定数値は、4.945乃至4.950の範囲内である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項8】
遷移金属前駆体、リチウム前駆体の混合物に平均酸化数+3.5超過のドーピング金属前駆体を混合する段階1);
前記段階1で製造された混合物を焼成して正極活物質を形成する段階2)を含み、
前記正極活物質は、下記の化学式1で表され、前記ドーピング金属は、下記の化学式1でMおよびMで表され、
下記Mはアルミニウム(Al)であり、
下記Mはモリブデン(Mo)であり、
前記アルミニウムおよび前記モリブデンは、結晶構造内のニッケルサイトに置換される、
リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[化学式1]
Li(NiCoMn1-x-y(M 1-z
前記化学式1で、
0.95≦a≦1.1であり、0<b<1であり、0<c<0.02であり、0.5≦x<1であり、0≦y≦0.2であり、0.7≦z≦0.83である。
【請求項9】
前記xは0.8以上であり、前記zは0.7以上であり、前記cは0.015以下である、請求項8に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記焼成は、400℃乃至900℃の温度で昇温および降温時間を含んで20時間乃至30時間行われる、請求項8に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の正極活物質を含むリチウム二次電池用正極;
リチウム二次電池用負極;
前記正極と前記負極との間に位置する分離膜および電解質
を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯用小型電子機器の電源として脚光を浴びているリチウム二次電池は、有機電解液を用いることによって、既存のアルカリ水溶液を用いた電池より2倍以上の高い放電電圧を示し、その結果、高いエネルギー密度を示す電池である。
【0003】
リチウム二次電池の正極活物質であるリチウム遷移金属複合酸化物としては、LiCoO、LiMn、LiNi1-xCo(0<x<1)などのようにリチウムイオンのインターカレーションが可能な構造を有するリチウムと遷移金属からなる酸化物が主に用いられる。現在、関連業界で最も広く用いられる正極活物質はLiCoOであり、これをリチウム二次電池に活用する場合、充電および放電電圧の特性を改善することができる。
【0004】
しかし、LiCoOを含むリチウム二次電池は充放電を繰り返すほどその特性(例えば、寿命特性、高温特性、熱安定性など)が急速に低下するという問題点がある。これは、リチウム二次電池の使用によりその内部のLiCoOが劣化する傾向にあるためであり、高温ではこのような問題点はさらに深刻である。
【0005】
これを解決するために、既に商用化されたLiCoOの表面に金属酸化物またはフッ素酸化物のコーティングを試みるなど、リチウム二次電池の活物質の改善のための多くの研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、リチウム遷移金属複合酸化物に平均酸化数3.5超過の金属をドーピングした正極活物質を提供する。
【0007】
また、本発明が解決しようとする技術的課題は以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は下記の記載から本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物、および前記リチウム遷移金属複合酸化物にドーピングされたドーピング金属を含み、前記ドーピング金属は少なくとも2種以上を含み、前記ドーピング金属の平均酸化数は3.5超過である。
【0009】
前記ドーピング金属は、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、インジウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオビウム、タンタルおよびタリウムを含む群より選択された少なくとも1種(M)、およびモリブデン、クロム、およびタングステンを含む群より選択された少なくとも1種(M)を含むことができる。
【0010】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、下記の化学式1で表され得る。
[化学式1]
Li(NiCoMn1-x-y(M 1-z
【0011】
前記化学式1で、0.95≦a≦1.1であり、0<b<1であり、0<c<0.02であり、0.5≦x<1であり、0≦y≦0.2であり、0.5≦z<1である。
【0012】
前記zは0.7以上であってもよい。
【0013】
前記xは0.8以上であってもよい。
【0014】
前記cは約0.01以下であってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、遷移金属前駆体、リチウム前駆体の混合物に平均酸化数+3.5超過のドーピング金属前駆体を混合する段階1);前記段階1)で製造された前記混合物を焼成して正極活物質を形成する段階2)を含み、前記正極活物質は、下記の化学式1で表され得る。
[化学式1]
Li(NiCoMn1-x-y(M 1-z
【0016】
前記化学式1で、0.95≦a≦1.1であり、0<b<1であり、0<c<0.02であり、0.5≦x<1であり、0≦y≦0.2であり、0.5≦z<1である。前記焼成は、400℃乃至900℃の温度で昇温、降温区間を全て含んで20時間乃至30時間行われてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、前述した正極活物質を含むリチウム二次電池用正極;これと重複する負極;前記正極と前記負極との間に位置する分離膜および電解質を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、高温および熱に安定しており、信頼性が向上したリチウム二次電池用正極活物質およびそれを含むリチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1a】Al/Moがコドーピング(co-doping)された正極活物質のEDS元素マッピングイメージに関するものである。
図1b】Al/Moがコドーピング(co-doping)された正極活物質のEDS元素マッピングイメージに関するものである。
図1c】Al/Moがコドーピング(co-doping)された正極活物質のEDS元素マッピングイメージに関するものである。
図1d】Al/Moがコドーピング(co-doping)された正極活物質のEDS元素マッピングイメージに関するものである。
図2】実施例1および比較例1の正極活物質に対するXRDグラフを示したものである。
図3】実施例1および比較例1の正極活物質に対する初期充放電プロフィールに関するものである。
図4】実施例1および比較例1の正極活物質に対する常温寿命特性に関するグラフである。
図5】実施例1および比較例1の正極活物質に対する0.2C充電/0.1C放電に対するプロフィールである。
図6】実施例1および比較例1の正極活物質に対する常温寿命特性に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本開示を説明するに当たり、既に公知となった機能あるいは構成に対する説明は、本開示の要旨を明瞭にするために省略する。
【0021】
本開示を明確に説明するために、説明上不要な部分を省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付した。また、図面に示された各構成の大きさおよび厚さは説明の便宜のために任意に示したため、本開示は必ずしも図示されたことに限定されない。
【0022】
本発明の一実施形態による正極活物質は、下記の化学式1で表される化合物を含むことができる。
[化学式1]
Li(NiCoMn1-x-y(M 1-z
【0023】
前記化学式1で、
はアルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、タリウム(Tl)およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
はモリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)およびこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。
【0024】
前記化学式1で、0.95≦a≦1.1であり、0<b<1であり、0<c<0.02であり、0.5≦x<1であり、0≦y≦0.2であり、0.5≦z<1であってもよい。
【0025】
より具体的に、前記化学式1でzは0.6以上であってもよく、より具体的にzは0.6乃至0.9または0.65乃至0.85範囲であってもよい。化学式1でz値が前記範囲を満足する場合、本実施形態による正極活物質を適用した二次電池は、高率放電特性を大きく向上させることができる。これによって、出力特性が顕著に改善された二次電池を実現することができるという利点がある。
また、前記化学式1でcは0.015以下であってもよく、より具体的にcは0.001乃至0.015範囲であってもよい。化学式1でc値が前記範囲を満足する場合、本実施形態による正極活物質を適用した二次電池の寿命特性を顕著に向上させることができる。
【0026】
前記化学式1で表される正極活物質は、リチウム-ニッケル系酸化物をベースにし、前記化学式1でMおよびMで表されるドーピング金属を含むことによってリチウム-ニッケル系酸化物の構造的不安定性を補完しようとする。
【0027】
具体的には、前記化学式1で表される正極活物質でニッケルの含有量は、ニッケル、コバルトおよびマンガン成分の総量を基準に50乃至95mol%であってもよく、より具体的には70乃至95mol%または80mol%乃至93mol%であってもよい。
【0028】
ニッケル、コバルトおよびマンガンの含有量が前述した条件を満足する場合、これを含む正極活物質は二次電池の放電電圧および容量特性などの電池特性を向上させることができる。
【0029】
また前記ニッケルは、コア部から表面部まで濃度勾配を有し、全体半径中の95長さ%までの領域に濃度勾配があり得る。この時、前記コア部のニッケルの濃度を100mol%にする時、前記表面部のニッケル濃度は50mol%まで徐々に減少することができる。便宜上、前記ニッケルを例に挙げたが、前記濃度勾配に関する説明は前記マンガンおよびコバルトにも適用され得る。
【0030】
前記化学式1で表される正極活物質で、MおよびMで表されるドーピング金属は、正極活物質内のリチウム層でニッケル陽イオンの混入を防止するためにリチウム陽イオンサイトにドーピングされ得る。
【0031】
本発明の一実施形態によると、Mはアルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、タリウム(Tl)およびこれらの組み合わせを含む群より選択されてもよく、Mはモリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)およびこれらの組み合わせを含む群より選択されてもよい。ドーピング金属は、少なくとも2種を含むことができ、前記化学式1はMおよびMで表されたが、これに制限されず、3種以上も含むことができることはもちろんである。
【0032】
選択される少なくとも2種のドーピング金属の平均酸化数は+3.5超過であってもよい。本明細書は2種のドーピング金属を含む正極活物質について説明し、2種の金属の平均酸化数が3.5超過である特徴を説明したが、これに制限されず、3種または4種以上のドーピング金属を含み、平均酸化数が3.5超過である場合も可能である。この時、少なくとも2種のドーピング金属の平均酸化数は3.5超過、より具体的には3.5乃至5または3.5乃至4.5範囲であってもよい。ドーピング元素の平均酸化数が前記範囲を満足する場合、本実施形態による正極活物質を適用した二次電池の電気化学特性を向上させることができる。
【0033】
およびMで表されるドーピング金属は、正極活物質の結晶構造でリチウム陽イオンサイトまたは結晶格子内の空いた空間に位置することができ、これによって、電荷均衡をなすことができる。これによると、リチウム陽イオンサイトに混入される陽イオン混合を抑制することができ、結晶格子内で一種のフィラーとして作用して正極活物質の構造的安定性を図り、リチウム陽イオンの自然的損失を減らすことができる。
【0034】
一方、本実施形態による二次電池用正極活物質のa軸格子定数(lattice parameter)は、2.865Å乃至2.874Å、より具体的には2.868Å乃至2.873Å範囲であってもよい。また、前記正極活物質のc軸格子定数(lattice parameter)は、14.180Å乃至14.214Å、より具体的には14.180Å乃至14.213Å範囲であってもよい。
【0035】
この時、c軸格子定数/a軸格子定数値は、4.945乃至4.950範囲であってもよく、結晶サイズ(Crystalline size)は、82.5nm乃至100nm、より具体的には83nm乃至90nmであってもよい。
【0036】
正極活物質のa軸およびc軸格子定数値とc軸/a軸格子定数値が前記範囲を満足する場合、正極活物質の構造的安定性を向上させることができる。
【0037】
以下、構造的安定性を向上させた正極活物質の製造方法を提供する。
【0038】
一実施形態による正極活物質の製造方法は、遷移金属前駆体とリチウム前駆体を混合した溶液に+3.5超過の平均酸化数を有する金属前駆体を追加混合し、これを焼成して前記化学式1で表される正極活物質を製造する段階を含む。
【0039】
前記段階でリチウム遷移金属複合酸化物を製造するための段階は、方法に制限されず、当業界に通常知られた方法により製造することができ、一例として、固相反応法、共沈法、ゾル-ゲル法、水熱合成法などを利用することができる。
【0040】
具体的には、ニッケル、コバルト、マンガンをそれぞれ含む前駆体を溶媒に溶解した後、共沈させて遷移金属複合水酸化物を製造する。遷移金属複合水酸化物は、Me(OH)で表されてもよく、前記Meは遷移金属を示すもので、前記化学式1で(NiCoMn1-x-y)で表されるものである。ここにリチウム前駆体を追加混合してリチウム遷移金属複合酸化物を製造することができる。
【0041】
以降、ドーピング金属前駆体、一例として第1ドーピング金属前駆体と第2ドーピング金属前駆体を添加して混合物を製造した後に焼成して製造することができる。この時、前記第1ドーピング金属前駆体はAlであってもよく、前記第2ドーピング金属前駆体はMoOであってもよい。
【0042】
正極活物質の製造段階で前記焼成は400℃乃至900℃の温度で昇温、降温区間を全て20時間乃至30時間熱処理して行われてもよく、これに制限されるのではない。
【0043】
また本明細書は、前述した正極活物質を含む正極スラリーが集電体上に塗布されているリチウム二次電池用正極を提供することができる。一実施形態による正極は、前記正極活物質を含む正極活物質スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥および圧延して製造することができる。
【0044】
前記正極集電体は、一般に3μm乃至500μmの厚さのものを用いることができ、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば特に制限されるのではないが、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタンまたは銀などで表面処理したものなどが用いられてもよい。
【0045】
前記正極活物質スラリーは、前記正極活物質にバインダーと導電材および充填剤と分散剤などの添加剤を添加し、混合して製造したものであってもよい。
【0046】
前記バインダーは、前記正極活物質と導電材の結合と集電体に対する結合に助力する成分として、通常、正極活物質総量を基準に1重量%乃至30重量%で添加されてもよい。このようなバインダーは、特に限定されず、当業界に公知となった通常のものを用いることができるが、例えばポリビニリデンフルオリド-コ-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブチレンゴム(SBR)およびフッ素ゴムからなる群より選択された1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0047】
前記導電材は、通常、正極活物質全体重量を基準に0.05重量%乃至5重量%で添加されてもよい。このような導電材は、特に限定されず、電池のその他要素と副反応を誘発せずに導電性を有するものであれば特に制限されるのではないが、例えば天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などであってもよい。
【0048】
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分であり、必要に応じて使用有無を決めることができ、当該電池に化学的変化を誘発せずに繊維状材料であれば特に制限されるのではないが、例えばポリエチレンポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質であってもよい。
【0049】
前記分散剤(分散液)としては、特に限定されるのではないが、例えばイソプロピルアルコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトンなどであってもよい。
【0050】
前記塗布は、当業界に通常公知となった方法により行うことができるが、例えば前記正極活物質スラリーを前記正極集電体一側上面に分配させた後、ドクターブレード(doctor blade)などを用いて均一に分散させて行うことができる。その他にも、ダイキャスティング(die casting)、コンマコーティング(comma coating)、スクリーンプリンティング(screen printing)などの方法を通じて行うことができる。
【0051】
前記乾燥は、特に限定されるのではないが、50℃乃至200℃の真空オーブンで1日以内に行うものであってもよい。
【0052】
本発明の一実施形態は、前述したリチウム二次電池用正極と負極、前記正極と負極との間に位置する分離膜および電解質を含むリチウム二次電池を提供することができる。正極は、前述した正極活物質を含むことによって構造的安定性を向上させた正極を含む。以下、正極についての説明を省略する。
【0053】
前記負極は、特に限定されるのではないが、負極集電体一側上面に負極活物質を含む負極活物質スラリーを塗布した後、乾燥して製造することができ、前記負極活物質スラリーは、負極活物質以外にバインダーおよび導電材と充填剤および分散剤のような添加剤を含むことができる。
【0054】
前記負極集電体は、先に言及した正極集電体と同じものであるか、それに含まれるものであってもよい。
【0055】
前記負極活物質は、特に限定されず、当業界に通常知られたリチウムイオンが吸蔵および放出され得る炭素材、リチウム金属、ケイ素または錫などを用いることができる。好ましくは炭素材を用いることができ、炭素材としては、低結晶炭素および高結晶性炭素などが全て用いられ得る。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が挙げられ、高結晶性炭素としては、天然黒鉛、キッシュ黒鉛(kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbonmicrobeads)、液晶ピッチ(mesophase pitches)および石油と石炭系コークスなどの高温焼成炭素が挙げられる。
【0056】
前記負極に用いられるバインダーおよび導電材と充填剤および分散剤のような添加剤は、先に言及した正極製造に用いられたものと同じであるか、それに含まれるものであってもよい。
【0057】
前記分離膜としては、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄膜であってもよく、一般に0.01μm乃至10μmの気孔直径、5μm乃至300μmの厚さを有するものであってもよい。このような分離膜としては、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して用いることができ、または通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることができるが、これに制限されるのではない。
【0058】
また、前記電解質は、電解質に通常用いられる有機溶媒およびリチウム塩を含むことができ、特に制限されるのではない。
【0059】
前記有機溶媒としては、代表的にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビニレンカーボネート、スルホラン、γ-ブチロラクトン、プロピレンスルフィドおよびテトラヒドロフランからなる群より選択される1種以上であるものであってもよい。
【0060】
また、前記電解質は、必要に応じて充放電特性、難燃性特性などの改善のためにピリジン、トリエチルホスファート、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサ燐酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどを追加的に含むことができる。場合によっては、不燃性を付与するために四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含むことができ、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含むこともでき、FEC(fluoro-ethylene carbonate)、PRS(propene sultone)、FPC(fluoro-propylene carbonate)などをさらに含むことができる。
【0061】
本発明のリチウム二次電池は、正極と負極との間に分離膜を配置して電極組立体を形成し、前記電極組立体は、円筒型電池ケースまたは角型電池ケースに入れた後、電解質を注入して製造することができる。または、前記電極組立体を積層した後、これを電解質に含浸させて得られた結果物を電池ケースに入れて密封して製造することもできる。
【0062】
本発明で用いられる電池ケースは、当該分野で通常使用されるものが採択されてもよく、電池の用途による外形に制限がなく、例えば、カンを用いた円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などになることができる。
【実施例
【0063】
以下、本発明の好ましい実施例および試験例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施形態に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【0064】
実施例1:前駆体の製造およびAl/Moが同時ドーピングされた正極活物質の製造
【0065】
1)前駆体の製造
(Ni0.8Co0.1Mn0.1)(OH)組成を有する前駆体は一般的な共沈法により製造した。
【0066】
具体的には、コア部分のニッケル濃度を一定に維持させ、シェル部分にニッケル濃度を変更させるために、ニッケル濃度が高いフィーディングタンク(Feeding tank)1と、ニッケル濃度が低いフィーディングタンク2を直列に配列した。初期にはフィーディングタンク1のhigh Ni溶液だけを反応器に注入して共沈させ、シェル部分の濃度勾配は、フィーディングタンク2からフィーディングタンク1に、連続してフィーディングタンク1から反応器に溶液を注入して、共沈中のニッケル濃度が変わるようにした。
【0067】
NiSO・6HO、CoSO・7HO、およびMnSO・HOを超純水(DI water)に溶解し、共沈キレート剤(chelating agent)としてNH(OH)、pH調節のためにNaOHを用いた。共沈中のニッケルの酸化を防止するためにNをパージングし、反応器温度は50℃を維持した。製造された前駆体はフィルタリングし、超純水で洗浄した後、100℃オーブンで24h乾燥した。
【0068】
2)正極活物質の製造
1)により製造されたコア-シェルグラジエント(Core-shell gradient)前駆体(Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH))とLiOH・HO(SAMCHUN化学、battery grade)、Al(SAMCHUN化学、2N)、MoO(SAMCHUN化学、2N5)をモル比に合うように称量した後、これを均一に混合して酸素雰囲気下で焼成した。具体的には、チューブファーネス(tube furnace、内径50mm、長さ1,000mm)に装入して酸素を200mL/minで流入させながら焼成した。焼成条件は480℃で5時間、以降800℃で16時間維持し、昇温速度は5℃/minであった。
【0069】
AlとMoはモル比0.8:0.2にして平均酸化数を3.6にし、(Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)):(Al0.8Mo0.2)=0.995:0.005にしてAl/Moドーピング材が0.5mol%を維持するようにした。また、Li:(Ni0.8Co0.1Mn0.10.995(Al0.8Mo0.20.005が1.05:1になるようにLiを5mol%過量入れて全体組成がLi1.05(Ni0.8Co0.1Mn0.10.995(Al0.8Mo0.20.005になるように実施例1の正極活物質を製造した。
【0070】
実施例2
【0071】
実施例1の1)と同様な方法で前駆体を製造した後、これを利用して実施例1の2)と同様な方法で正極活物質を製造するが、下記条件を変更した。
【0072】
AlとMoはモル比0.83:0.17にして平均酸化数を3.51にし、(Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)):(Al0.83Mo0.17)=0.995:0.005にしてAl/Moドーピング材が0.5mol%を維持するようにした。また、Li:(Ni0.8Co0.1Mn0.10.995(Al0.83Mo0.170.005が1.05:1になるようにLiを5mol%過量入れて全体組成がLi1.05(Ni0.8Co0.1Mn0.10.995(Al0.83Mo0.170.005になるように実施例2の正極活物質を製造した。
【0073】
実施例3
実施例1の1)と同様な方法で前駆体を製造した後、これを利用して実施例1の2)と同様な方法で正極活物質を製造するが、下記条件を変更した。
【0074】
AlとMoはモル比0.75:0.25にして平均酸化数を3.75にし、(Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)):(Al0.75Mo0.25)=0.995:0.005にしてAl/Moドーピング材が0.5mol%を維持するようにした。また、Li:(Ni0.8Co0.1Mn0.10.995(Al0.75Mo0.250.005が1.05:1になるようにLiを5mol%過量入れて全体組成がLi1.05(Ni0.8Co0.1Mn0.10.995(Al0.75Mo0.250.005になるように実施例3の正極活物質を製造した。
【0075】
実施例4
実施例1の1)と同様な方法で前駆体を製造した後、これを利用して実施例1の2)と同様な方法で正極活物質を製造するが、下記条件を変更した。
【0076】
AlとMoはモル比0.7:0.3にして平均酸化数を3.9にし、(Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)):(Al0.7Mo0.3)=0.995:0.005にしてAl/Moドーピング材が0.5mol%を維持するようにした。また、Li:(Ni0.8Co0.1Mn0.10.995(Al0.7Mo0.30.005が1.05:1になるようにLiを5mol%過量入れて全体組成がLi1.05(Ni0.8Co0.1Mn0.10.995(Al0.7Mo0.30.005になるように実施例4の正極活物質を製造した。
【0077】
実施例5
実施例1の1)と同様な方法で前駆体を製造した後、これを利用して実施例1の2)と同様な方法で正極活物質を製造するが、下記条件を変更した。
【0078】
AlとMoはモル比0.65:0.35にして平均酸化数を4.05にし、(Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)):(Al0.65Mo0.35)=0.995:0.005にしてAl/Moドーピング材が0.5mol%を維持するようにした。また、Li:(Ni0.8Co0.1Mn0.10.995(Al0.65Mo0.350.005が1.05:1になるようにLiを5mol%過量入れて全体組成がLi1.05(Ni0.8Co0.1Mn0.10.995(Al0.65Mo0.350.005になるように実施例5の正極活物質を製造した。
【0079】
実施例6
実施例1の1)と同様な方法で前駆体を製造した後、これを利用して実施例1の2)と同様な方法で正極活物質を製造するが、下記条件を変更した。
【0080】
AlとMoはモル比0.8:0.2にして平均酸化数を3.6にし、(Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)):(Al0.8Mo0.2)=0.998:0.002にしてAl/Moドーピング材が0.2mol%を維持するようにした。また、Li:(Ni0.8Co0.1Mn0.10.998(Al0.8Mo0.20.002が1.05:1になるようにLiを5mol%過量入れて全体組成がLi1.05(Ni0.8Co0.1Mn0.10.998(Al0.8Mo0.20.002になるように実施例6の正極活物質を製造した。
【0081】
実施例7
実施例1の1)と同様な方法で前駆体を製造した後、これを利用して実施例1の2)と同様な方法で正極活物質を製造するが、下記条件を変更した。
【0082】
AlとMoはモル比0.8:0.2にして平均酸化数を3.6にし、(Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)):(Al0.8Mo0.2)=0.99:0.01にしてAl/Moドーピング材が1mol%を維持するようにした。また、Li:(Ni0.8Co0.1Mn0.10.99(Al0.8Mo0.20.01が1.05:1になるようにLiを5mol%過量入れて全体組成がLi1.05(Ni0.8Co0.1Mn0.10.99(Al0.8Mo0.20.01になるように実施例7の正極活物質を製造した。
【0083】
実施例8
実施例1の1)と同様な方法で前駆体を製造した後、これを利用して実施例1の2)と同様な方法で正極活物質を製造するが、下記条件を変更した。
【0084】
AlとMoはモル比0.8:0.2にして平均酸化数を3.6にし、(Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)):(Al0.8Mo0.2)=0.985:0.015にしてAl/Moドーピング材が1.5mol%を維持するようにした。また、Li:(Ni0.8Co0.1Mn0.10.985(Al0.8Mo0.20.015が1.05:1になるようにLiを5mol%過量入れて全体組成がLi1.05(Ni0.8Co0.1Mn0.10.985(Al0.8Mo0.20.015になるように実施例8の正極活物質を製造した。
【0085】
比較例1:正極活物質の製造
実施例1で製造されたコア-シェルグラジエント(Core-shell gradient)前駆体(Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH))とLiOH・HO(SAMCHUN化学、battery grade)を1:1.05モル比に均一に混合した後、これをチューブファーネス(tube furnace、内径50mm、長さ1,000mm)に装入して酸素を200mL/minに流入させながら焼成した。焼成条件は実施例1と同じである。
【0086】
以下、図1a乃至図1dを参照して説明する。図1a、図1b、図1cおよび図1dは、Al/Moが同時ドーピング(Co-doping)されたことを確認するために焼成後の正極活物質の表面をEDS(Energy dispersive X-ray spectroscopy)で元素マッピングした結果である。図1a乃至図1dに示すようにAlとMoが正極活物質に均一に分布していることを確認した。
【0087】
次に、実施例1(Al/Moが全てドーピングされた素材がNCM分率中に0.5mol%含有されている正極活物質)と比較例1に対するXRD比較結果を図2に示した。XRDはPANalytical社のX’pert3 powder(モデル名)機種であり、スキャンスピードは0.328°/sであった。
【0088】
図2に示すように、実施例1および比較例1共に18.7°付近で(003)が主ピークとしてよく発達しており、37.5°と38.5°間の(006)/(102)ピーク、63.5°と65.5°間での(108)/(110)ピークのスプリッティング(splitting)が示された。これはヘキサゴナルレイヤー(hexagonal layer)での良好な結晶構造を有することを意味する。したがって、典型的なhexagonal α-NaFeO2(space group R-3m)構造を示すことが分かる。
【0089】
ドーピングによる結晶学的考察のためにハイスコアプラスリートベルトソフトウェア(high score plus Rietveld software)を利用してリートベルト(Rietveld)分析を行い、これに対する結果を表1に示した。リートベルト(Rietveld)分析のためにXRD測定範囲は10°乃至130°で測定した結果を用いてフィッティング(fitting)し、GOF(Goodness of Fit)値がほぼ1.1程度に計算された。
【0090】
【表1】
【0091】
実施例1(Al/Mo co-doping正極材)と比較例1(ドーピングなし)の格子定数(lattice parameter)を比較した表1を参照すると、ドーピング後にa軸およびc軸が若干減少する傾向が示された。これはドーピング素材として用いられたアルミニウムのイオン半径が(rAl 3+=0.051nm)ニッケルに比べて小さいため、a軸およびc軸が減少すると推定される。しかし、アルミニウムのドーピング量は小さいため、減少量が微々であるとみられる。
【0092】
このような現像は、実施例2乃至5でも類似するように示されるが、アルミニウムおよびモリブデンの全体ドーピング量を0.5mol%に固定した状態でアルミニウムおよびモリブデンのモル比を平均酸化数が3.5以上である組成に合わせてアルミニウムおよびモリブデンの分率を調整すると、実施例2乃至5でのようにa軸は2.870Å乃至2.871Å、c軸は14.197Å乃至14.207Å、c/aは平均4.948に測定された。つまり、ドーピングしていない比較例1に比べてc/aの平均数値が若干上昇する結果を示すことが分かる。
【0093】
一方、結晶サイズ(Crystalline size)は、アルミニウムとモリブデンをドーピングした実施例1乃至5の正極活物質が86nm乃至86.8nmの範囲に測定されて、ドーピングしていない比較例1に比べて若干上昇することが分かる。
【0094】
また、I(003)/I(104)のピーク面積比を通じてLiとNi2+の陽イオン混合程度を測定し、I(006)+I(102)/I(101)のピーク面積比を通じてヘキサゴナルオーダリング(hexagonal ordering)を示すR_factorを導き出した。
【0095】
比較例1の正極活物質は、I(003)/I(104)値が1.13と示された反面、実施例1乃至5の正極活物質は、1.2に近接した数値を示した。これによって、AlとMoをドーピングした実施例1乃至5による正極活物質の場合、LiとNi2+間の陽イオン混合が小さく発生することが分かる。
【0096】
ただし、R_factorで表記されるヘキサゴナルオーダリング(hexagonal ordering)は、これとは反対に比較例1の正極活物質が0.545を示した。これに反し、実施例1乃至5の正極活物質は0.5付近であるか、それ以下に減少することを確認できるところ、これはヘキサゴナル構造が安定的になされたことを示す。したがって、AlとMoがドーピングされた実施例1乃至5の正極活物質がドーピングしていない比較例1により製造された正極活物質に比べて構造的にさらに安定していることを確認できる。陽イオン混合とヘキサゴナルオーダリングの間には相関関係がある。具体的には、低い温度での焼成は粒子が小さくなり、結晶オーダリング(crystalline ordering)の側面で不利になることもあり得るが、陽イオン混合の側面では有利である。反対に高い温度での焼成は、粒子のサイズが増加してヘキサゴナルオーダリングに有利であるが、陽イオン混合が増加する。陽イオン混合が増加する場合、リチウムイオンの移動度を減少させて電池性能の劣化をもたらすことがあり得る。したがって、焼成温度の最適化が必要である。
【0097】
表1によると、焼成温度が多少高かったが、実施例1乃至5により製造された正極活物質の場合、比較例1に比べて陽イオン混合が少なく発生し、ヘキサゴナル構造が安定的に形成されることを確認した。これは実施例によるドーピング元素がニッケルサイトに置換されて結晶構造を安定化させるためである。
【0098】
電気化学評価1(コイン2016、正極活物質88%使用)
2016コインセルを製造して電気化学評価を行った。極板製造用スラリーは、実施例1乃至5の正極活物質および比較例1の正極活物質を用いて製造した。具体的には、正極活物質:導電材(super-P):バインダー(PVDF、KF1300)=88:8:4wt%であり、固形分が約30%になるようにNMP(N-Methyl-2-pyrrolidone)を添加してスラリー粘度を調整して極板製造用スラリーを製造した。
【0099】
製造されたスラリーは、15μm厚さのアルミニウム箔上にドクターブレード(Doctor blade)を利用してコーティングした後、乾燥後に圧延した。電極ローディング量は9~10mg/cmであり、圧延密度は3.1g/cmであった。電解液は1M LiPF in EC:EMC=1:2(vol%)を用いており、PP分離膜とリチウム負極(200um、Honzo metal)を用いてコインセル製造後、10時間常温でエイジングした後、充/放電テストを行った。
【0100】
容量評価は、200mAh/gを基準容量にし、充放電条件はCC/CV 3.0~4.3V、0.005C cut-offを適用した。Rate特性は、0.1C充電/0.1C放電を2回繰り返した後、0.1C充電条件で1C、4C、7Cを順次にC rateを増加させながら容量を測定した。サイクル寿命特性は常温(25℃)で0.5C充電/1C放電条件で50回を測定した。
【0101】
図3は、Al0.8Mo0.2が0.5mol%ドーピングされた正極活物質(実施例1)とドーピングされていない正極活物質(比較例1)との初期充/放電曲線を比較した結果であり、実施例1が比較例1に比べて初期充電容量、初期放電容量および初期効率が全て増加した。また、初期充電曲線から実施例1の場合、初期充電時に抵抗が比較例1に比べて大きくないことが分かる。セル評価条件は4.3V~3.0V電位領域で200mA/gを1C基準条件とした。
【0102】
このような特性による初期充電容量、初期放電容量、初期効率および寿命(0.1C充電、0.1C放電)特性は下記添付された表2に示した。
【0103】
【表2】
【0104】
図3のドーピング前、後の容量および効率に対して実施例1乃至5の正極活物質のようにAlおよびMoの平均酸化数を3.5以上である条件下でのドーピング材の組成およびドーピングしていない比較例1の正極活物質に対する初期充電容量、放電容量、初期効率および寿命(50回)の測定結果を表2に示した。
【0105】
表2を参照すると、実施例1乃至5のようにAlとMoの同時ドーピング(co-doping)酸化数を3.5以上にした場合、これらをドーピングしていない比較例1と比較する時、充電容量と放電容量、初期効率が上昇する結果を示した。
【0106】
また、50回充電および放電を実施した後の寿命測定結果でも実施例1乃至5の正極活物質は全て95.8%以上を示すところ、AlおよびMoの同時ドーピングを通じた正極活物質の構造安定化がこれを適用したリチウム二次電池の寿命特性を向上させることを確認できる。
【0107】
次に、実施例1乃至5および比較例1により製造された正極活物質に対してC-rate増加による常温放電容量測定結果を表3に示した(1C基準200mA/g)。
【0108】
【表3】
【0109】
表3を参照すると、アルミニウムおよびモリブデンがドーピングされていない比較例1の正極活物質と比較する時、アルミニウムおよびモリブデンがドーピングされた実施例1乃至5の正極活物質の場合、全般的に出力特性に優れていることが分かる。
【0110】
具体的には、アルミニウムおよびモリブデンがドーピングされていない比較例1の正極活物質は4C/0.1Cで84%の効率を示したが、アルミニウムおよびモリブデンがドーピングされた実施例1乃至5の正極活物質は4C/0.1Cで効率が少なくとも85.6%以上である。
【0111】
また、AlMoを固定した組成でモリブデンの影響は、その含有量を増加する場合、4C以上の高率放電で大きい効果を示した。具体的には、7C放電結果を参照すると、Al0.65Mo0.35にドーピングした場合、76.8%の優れた出力特性結果を示した。これによって、アルミニウムおよびモリブデンを同時ドーピングする場合、出力特性改善に効果があることが分かる。
【0112】
図4は、Al/Moがドーピングされる前/後に対する0.5C充電/1C放電条件下で常温寿命を示す結果である。
【0113】
ドーピングされていない場合、初期1C放電で181.4mAh/gの容量と50回サイクル進行後、初期容量に対して95%の容量維持率(capacity retention)を示す反面、Al/Moがドーピングされた場合、初期1C放電で184.5mAh/gの容量と50回サイクル後、初期容量に対して95.8%の高い容量維持率を示した。したがって、Al/Moのドーピングが容量も増加させると同時にサイクル寿命増大にも改善効果があることを確認した。
【0114】
電気化学評価2(コイン2032、正極活物質92.5%使用)
2032コインセルを製造して電気化学評価を行った。極板製造用スラリーは実施例1、6乃至8の正極活物質および比較例1の正極活物質を用いて製造した。
【0115】
具体的には、正極活物質:導電材(denka black):バインダー(PVDF、KF1100)=92.5:3.5:4wt%であり、固形分が約30%になるようにNMP(N-Methyl-2-pyrrolidone)を添加してスラリー粘度を調整した。製造されたスラリーは15μm厚さのアルミニウム箔上にドクターブレード(Doctor blade)を利用してコーティングおよび乾燥した後、圧延した。電極ローディング量は14.6mg/cmであり、圧延密度は3.1g/cmであった。電解液は1M LiPF in EC:DMC:EMC=3:4:3(vol%)に1.5%のVCを添加したものを用いており、PP分離膜とリチウム負極(200um、Honzo etal)を用いてコインセル製造後、10時間常温でエイジングした後、充/放電テストを行った。
【0116】
容量評価は200mAh/gを基準容量にし、充放電条件はCC/CV 2.5~4.25V、0.005C cut-offを適用した。Rate特性は0.1C充電/0.1C放電を2回繰り返した後、0.2C充電条件で1C、2C、4Cに順次にC rateを増加させて容量を測定した。サイクル寿命特性は常温(25℃)で0.5C充電/0.5C放電条件で50回を測定した。
【0117】
図5は、電気化学評価2の条件でAl0.8Mo0.2が0.5mol%ドーピングされた場合とドーピングされていない場合の充/放電曲線を比較した結果である(0.2C充電、0.1C放電)。アルミニウムおよびモリブデンがドーピングされた実施例の場合、188.3mAh/gの放電容量を示す反面、ドーピングされていない比較例の場合、176.3mAh/gの放電容量を示した。つまり、実施例による容量が(12mAh/g)より大きく実現されることを確認した。
【0118】
表4には0.2C充電/0.2C放電条件での初期充電容量、初期放電容量および初期効率(0.2C充電、0.2C放電)を示し、表5にドーピング前後のC-rate増加による常温放電容量(0.2C充電器準)を示した。
【0119】
【表4】
【0120】
【表5】
【0121】
表4でのように実施例1(Al/Moがドーピングされている)の初期効率が増加することを確認した。また表5で比較例1(Al/Moがドーピングされていない)の場合、4C/0.2Cで78.7%を示す反面、実施例1(Li1.05(Ni0.8Co0.1Mn0.10.995(Al0.8Mo0.20.005)の場合、83.9%を示すことを確認した。つまり、出力特性も表3と類似するように大きく改善されることを確認した。
【0122】
一方、図6は、実施例1および比較例1の正極活物質に対する0.5C充電、0.5C放電および2.5~4.25V充放電条件下で常温寿命を示す結果である。
【0123】
図6を参照すると、アルミニウムおよびモリブデンがドーピングされていない比較例1の正極活物質は、初期に対して50回サイクル進行後、97.1%の容量維持率(capacity retention)を示した。反面、アルミニウムおよびモリブデンがドーピングされた実施例1の正極活物質は、同一条件で初期容量に対して99.8%の容量維持率を示した。このような結果からコインセル評価条件変更(正極組成、ローディング量増大、充放電電圧調整)後にも優れた電気化学的物性を示すことを確認した。
【0124】
次に、表6は、実施例1、6乃至8および比較例1の正極活物質に対する初期充電容量、初期放電容量、初期効率および寿命特性を示したものである。
【0125】
【表6】
【0126】
実施例1、6乃至8は、アルミニウムおよびモリブデンを同時ドーピングし、ドーピング組成をAl0.8Mo0.2に固定させた状態で、全体アルミニウムおよびモリブデンのドーピング量を調節して正極活物質を製造したものである。
【0127】
表6を参照すると、アルミニウムおよびモリブデンがドーピングされていない比較例1の正極活物質に比べて実施例1、6乃至8の正極活物質は、初期充電容量、放電容量、効率および寿命特性が全て増加することを確認できる。
【0128】
具体的には、アルミニウムおよびモリブデンの全体ドーピング量が増加するほど、容量は多少減少するが、寿命特性が顕著に向上することが分かる。
【0129】
したがって、実施例7および8の正極活物質のようにアルミニウムおよびモリブデンの全体ドーピング量を増加させる場合、これを適用したリチウム二次電池の寿命特性を画期的に向上させることができることが分かる。
【0130】
以上で、本発明の特定の実施例が説明され図示されたが、本発明は記載された実施例に限定されるのではなく、本発明の思想および範囲を逸脱せずに多様に修正および変形が可能であることは当該技術分野における通常の知識を有する者に自明であるだろう。したがって、かかる修正例または変形例は本発明の技術的な思想や観点から個別的に理解されてはならず、変形された実施例は本発明の特許請求の範囲に属するといえる。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4
図5
図6