(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】螺旋管状ドリルシャフトを有するコアドリル用ビット及びコアドリル用ビットのための螺旋管状ドリルシャフトを製造する方法
(51)【国際特許分類】
E21B 10/02 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
E21B10/02
(21)【出願番号】P 2019534746
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017080663
(87)【国際公開番号】W WO2018114240
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2019-08-18
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン シュレーダー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ローランド シュナイダー
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-177614(JP,U)
【文献】特開平08-303171(JP,A)
【文献】特開平08-142039(JP,A)
【文献】特開平03-268874(JP,A)
【文献】米国特許第03025917(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第02633931(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 10/02
B23K 9/00
B28D 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔径(d2)を有する掘削孔(25)及びコア径(d1)を有する掘削コア(24)を加工製品(23)に形成するコアドリル用ビット(10、40、60)であって、
管状ドリルシャフト(18、44、64)を有するドリルシャフト部(11、41、61)と、
カバー(19、47、67)と、挿入端(20、48、68)とを有する受け取り部(12、42、62)と、
前記ドリルシャフト部(11、41、61)と前記受け取り部(12、42、62)を互いに取り外し可能又は恒久的に接続する接続装置(13、43、63)とを備え、
前記管状ドリルシャフト(18、44、64)は、一定の曲率半径を持つ管体となるよう螺旋状に形成されたストリップ材料(31、51、71)のストリップエッジを螺旋状接続溶接(32、52、72)により一体的に接合して成る管として構成され、
前記管の前記ストリップ材料(31)上で、前記管状ドリルシャフト(18、44)の内側(34、54)の少なくとも1つの前記螺旋状接続溶接(32、52)は内方凸部(ΔI)として突き出るか、又は前記管状ドリルシャフト(18)の外側(33)の少なくとも1つの前記螺旋状接続溶接(32)は外方凸部(ΔA)として突き出るか、又は前記螺旋状接続溶接(32)は、前記管状ドリルシャフト(18)の内側(34)で内方凸部(ΔI)として、また前記管状ドリルシャフト(18)の外側(33)で外方凸部(ΔA)として、突き出る、
ことを特徴とするコアドリル用ビット。
【請求項2】
前記管状ドリルシャフト(18、44、64)はN≧1が成り立つ個数Nの(以下「N、N≧1の」と記す)ストリップ材料(31、51、71)から成形され、よって前記ストリップ材料(31、51、71)のストリップエッジはN、N≧1の前記螺旋状接続溶接(32、52、72)により一体的に接合される、ことを特徴とする請求項
1に記載のコアドリル用ビット。
【請求項3】
前記N、N≧1のストリップ材料(31)は、シート厚が一定の平坦シートとして構成される、ことを特徴とする請求項
2に記載のコアドリル用ビット。
【請求項4】
前記N、N≧1のストリップ材料(51)は、少なくとも1つの凹部(55A、55B、55C)を有する平坦シートとして構成される、ことを特徴とする請求項
2に記載のコアドリル用ビット。
【請求項5】
前記N、N≧1のストリップ材料(71)は、波形に成形されたシートとして構成される、ことを特徴とする請求項
2に記載のコアドリル用ビット。
【請求項6】
前記少なくとも1つの突き出た前記螺旋状接続溶接(32、52)は継ぎ目材料(35、55)を含む、ことを特徴とする請求項2乃至5に記載のコアドリル用ビット。
【請求項7】
前記継ぎ目材料(35、55)と前記N、N≧1のストリップ材料(31、51)とは同じ張力及び耐摩耗性を有する、ことを特徴とする請求項
6に記載のコアドリル用ビット。
【請求項8】
前記継ぎ目材料(35、55)と前記N、N≧1のストリップ材料(31、51)とは異なる張力及び/又は耐摩耗性を有する、ことを特徴とする請求項
6に記載のコアドリル用ビット。
【請求項9】
前記継ぎ目材料(35、55)は、前記ストリップ材料(31、51)より高い張力又は高い耐摩耗性、あるいはより高い張力と耐摩耗性との両方を有する、ことを特徴とする請求項8に記載のコアドリル用ビット。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1つに記載のコアドリル用ビット(10、40、60)の
管状ドリルシャフト(18、46、66)を製造するための方法であって、
前記管状ドリルシャフト(18、46、66)はN≧1が成り立つ個数Nの(以下「N、N≧1の」と記す)ストリップ材料(31、51、71)から成形され、前記N、N≧1のストリップ材料(31、51、71)は、一定の曲率半径を持つ管体となるよう螺旋状に成形され、N、N≧1の螺旋状接続溶接(32、52、72)により当接するストリップエッジで一体的に接続される、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記N、N≧1のストリップ材料(31、51)の前記当接するストリップエッジが前記N、N≧1の螺旋状接続溶接(32、52)により接続される場合に、継ぎ目材料(35、55)が使用される、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記継ぎ目材料(35、55)は、前記ストリップ材料(31、51)より高い張力又は高い耐摩耗性、あるいはより高い張力と耐摩耗性との両方を有する、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記N、N≧1のストリップ材料(31、51)の前記当接するストリップエッジが前記螺旋状接続溶接(32、52)により接続される場合、第1の継ぎ目材料及び第2の継ぎ目材料が用いられ、前記第1の継ぎ目材料の張力及び耐摩耗性は前記第2の継ぎ目材料の張力及び耐摩耗性とは異なる、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載された螺旋管状ドリルシャフトを有するコアドリル用ビット及び請求項13に記載されたかかるコアドリル用ビットのための螺旋管状ドリルシャフトを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コアドリル用ビット(以下ドリルビットと記す)は、管状ドリルシャフトと管状ドリルシャフトを閉じるカバーと挿入端とから成り、ドリルビットはこの挿入端でコアドリルの工具ホルダに締結される。カバー及び挿入端は受け取り部の部品であり、ドリルシャフトはドリルシャフト部の部品である。ドリルシャフト部と受け取り部とは、接続装置により取り外し可能に又は恒久的に接続される。
【0003】
既知のドリルビットの場合、固定ドリルビットと、分離された切削部を組み合わせることができるドリルビットとを区別している。固定ドリルビットはドリルシャフトに恒久的に接続された1つ又はそれ以上の研削領域を有し、よって研削領域はドリルシャフトに溶接、はんだ付け、接着、又は他の適切な方法により接続されている。分離された切削部と組み合わせたドリルビットの場合、切削部はドリルビットに取り外し可能な追加の接続装置を介して接続することができる。切削部はリング部と、リング部に取り付けられた1つ又はそれ以上の研削領域とを備える。
【0004】
穿孔作業の際、ドリルビットはコア径を有する掘削コア及び削孔径を有する掘削孔を加工製品に形成する。研削領域は、コア径に対応する内径と、削孔径に対応する外径とを有する切削リングを形成する。穿孔においては、湿式掘削と乾式掘削とを区別する。湿式掘削のためのドリルビット(湿式ドリルビット)の構成は、乾式掘削のためのドリルビット(乾式ドリルビット)の構成と異なる。湿式掘削には、ドリルビットの研削領域又は切削部を冷却し、洗浄流体として掘削孔から掘削屑を排除する冷却・洗浄流体が必要である。清浄な冷却・洗浄流体は一般的に掘削コアとドリルシャフトとの間の内部隙間を介して供給され、掘削屑が混じった使用済みの冷却・洗浄流体はドリルシャフトと掘削孔との間の外部隙間を通じて排出される。
【0005】
掘削コアとドリルシャフトとの間の内部隙間とドリルシャフトと掘削孔との間の外部隙間の両方を有するドリルビットは、掘削の際には研削領域のみが案内され、ドリルシャフト全体は案内されない。ドリルシャフトの案内の欠如は、穿孔の際にドリルビットの望ましくない挙動を発生させ、掘削孔の質を損ない得る。ドリルビットの挙動が激しいほど、掘削孔の幾何形状と円形との違いが大きくなり得る。さらに、ドリルシャフトの弾性変形が、掘削コア又は掘削孔がドリルシャフトに作用する力により発生し得る。
【0006】
ドリルビットの案内の改善については、内部隙間及び/又は外部隙間がないドリルビットが知られており、その場合は冷却・洗浄流体はドリルシャフトの外側の特殊な搬送チャネル経由で搬送される。不都合な点は、ドリルシャフトが内側では掘削コアとの大きな接触面を有し、外側では掘削孔との大きな接触面を有することである。ドリルシャフトの内側及び外側における大きな接触面では大きな摩擦が発生する。ドリルシャフトと掘削コアとの間又はドリルシャフトと掘削孔との間の摩擦が大きくなるほど、コアドリルの同じ性能に対するドリルビットの掘削の進捗が遅くなり、ドリルシャフトの寿命が短くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ドリルビットをさらに改良し、掘削、特に冷却・洗浄流体による湿式掘削の際のドリルシャフトの安定性及び案内を改善することを目的とする。さらに、ドリルビットの掘削の進捗が加速され、及び/又はドリルシャフトの寿命を延ばすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のドリルビットの場合、この目的は本発明の独立項1に記載の技術的特徴により達成される。方法については、この目的は本発明の独立項13に記載の技術的特徴による方法により達成される。さらなる優位性のある機能は、従属項に記載されている。
【0009】
本発明において、ドリルビットは、その管状ドリルシャフトが溶接螺旋管として形成されることを特徴とし、溶接螺旋管として形成されたドリルシャフトは螺旋管状ドリルシャフトとも呼ばれる。溶接螺旋管は少なくとも1つの螺旋状接続溶接を有し、この螺旋状接続溶接はドリルシャフトの剛性を補強する要素として機能し、同じ壁厚の長い継ぎ目溶接又は管状のドリルシャフトと比較してドリルシャフトの剛性を増加させる。あるいは、壁厚がより薄いストリップ材料であっても、完成されたドリルシャフトにおいては長い継ぎ目溶接又は管状ドリルシャフトと同じ剛性を有することとなるストリップ材料を使用することができる。そのため、溶接螺旋管をドリルシャフトとして使用すると、穿孔の際のドリルシャフトの剛性が向上及び/又はドリルシャフトの重量が減少する。高い剛性を有するドリルシャフトは、掘削の際のドリルシャフトの安定性を改善する。
【0010】
本発明のドリルビットは、螺旋管状ドリルシャフトを有するドリルシャフト部と、カバーと挿入端とを有する受け取り部と、ドリルシャフト部と受け取り部を取り外し可能に又は恒久的に接続する接続装置とを備える。接続装置は、取り外し可能又は恒久的な接続装置として構成される。接続装置が取り外し可能とされるのは、プラグ接続、ピン接続、又はネジ接続等により、いかなる損傷をも与えずにユーザーが接続を解除することができる場合である。接続装置が恒久的とされるのは、はんだ接続、溶接接続、又は接着接続等のように、接続手段を壊すことによってのみユーザーが接続を解除できる場合である。ドリルビットは、固定ドリルビットとしても、分かれた切削部と組み合わせることができるドリルビットとしても構成される。固定ドリルビットはドリルシャフトに恒久的に接続された1つ又はそれ以上の研削領域を有し、よってこの研削領域はドリルシャフトに溶接、はんだ付け、接着、又は他の適切な方法により接続されている。分かれた切削部と組み合わせたドリルビットでは、切削部は取り外し可能な接続手段によりドリルビットに接続され、切削部はリング部と、リング部に取り付けられた1つ又はそれ以上の研削領域とを備える。
【0011】
管状ドリルシャフトはN≧1が成り立つ個数Nの(以下「N、N≧1の」と記す)ストリップ材料から成形されることが好ましく、そこではストリップ材料のストリップエッジが接続溶接数N、N≧1の螺旋状接続溶接を介して一体的に接合される。ドリルシャフトは1つのストリップ材料(N=1)又は複数のストリップ材料(N≧2)からできており、よって使用されるストリップ材料の数は螺旋状接続溶接の数と一致する。螺旋管状ドリルシャフトの製造の際、ストリップ材料は、成形プラントにおいて曲率半径が一定の螺旋管へと継続的に成形され、溶接ラインにおいてそのストリップエッジが溶接される。螺旋管の製造には、成形と溶接が統合されたプラントを使用する方法と、成形と溶接が分離されたプラントを使用する方法が知られている。
【0012】
本発明の第1の変形態様において、N、N≧1のストリップ材料はシート厚が一定の平坦シートとして構成される。螺旋管状ドリルシャフトは、シート厚と幅が一定の平坦シートからできている。平坦シートは、螺旋管へと成形され、そのストリップエッジで螺旋状接続溶接により一体接合される。成形ストリップ材料は、平坦シートのシート厚に対応する一定の壁厚を有する。螺旋状接続溶接の幾何形状は、溶接の際のプロセス制御により変化させ得る。継ぎ目材料を加えることにより、螺旋状接続溶接が、ドリルシャフトの内側又はドリルシャフトの外側、あるいはドリルシャフトの内側と外側との両方で、成形ストリップ材料に対して突き出るようにすることができる。
【0013】
第2の変形態様において、N、N≧1のストリップ材料は少なくとも1つの凹部を有する平坦シートとして構成される。この凹部は、ストリップ材料が螺旋管に成形される前にシートに形成され、湿式掘削の際に必要な冷却・洗浄流体の搬送チャネルとして機能する。ドリルビットによる湿式掘削には、研削領域を冷却する冷却流体として、また掘削孔から掘削屑を排除する洗浄流体としての冷却・洗浄流体が必要である。凹部の数、凹部の幾何形状、及びドリルシャフトの内側及び/又は外側における凹部の配置は、冷却・洗浄流体の流体量によって調節し得る。ドリルシャフトの内側に配置された凹部は清浄な冷却・洗浄流体の供給に用いられ、ドリルシャフトの外側に配置された凹部は掘削屑の混じった使用済みの冷却・洗浄流体の排出に用いられる。本発明の凹部はストリップ材料が成形される前に形成されるため、凹部はドリルシャフトの内側に製造上の努力が殆ど無く形成できる。既知のドリルシャフトにおいて、搬送チャネルの配置がドリルシャフトの外側に限定されているのは、管状ドリルシャフトの場合には多大な製造上の努力を費やすことによってのみドリルシャフトの内側に凹部を形成出来るからである。
【0014】
第3の変形態様において、N、N≧1のストリップ材料は成形断面を有する成形シートとして構成され、よって成形シートはシート厚と成形高とを有する。螺旋管状ドリルシャフトは、プレート型成形シートからできている。成形断面のコース方向は、プレート型成形シートの長手方向と定義される。
【0015】
プレート型成形シートは、様々な成形断面且つ低価格で多数入手可能であり、ドリルビット用のドリルシャフトの費用対効果に優れた製造を可能とする。成形断面はドリルシャフトの内側及び外側に凹部を形成し、この凹部を通じて冷却・洗浄流体の搬送が可能となる。ドリルシャフトの内側に配置される凹部は清浄な冷却・洗浄流体の供給のために機能し、ドリルシャフトの外側に配置された凹部は掘削屑が混ざった使用済みの冷却・洗浄流体の排出のために機能する。成形シートの幾何形状は、冷却及び洗浄に必要な流体量によって調整され得る。
【0016】
ドリルビットのさらなる好ましい改良として、ドリルシャフトの少なくとも1つの螺旋状接続溶接は螺旋管の成形ストリップ材料から突き出し、この少なくとも1つの突き出た螺旋状接続溶接には継ぎ目材料が含まれる。螺旋管の成形ストリップ材料から突き出た螺旋状接続溶接は、穿孔の際のドリルシャフトの案内を改善する。螺旋状接続溶接の凸部を調整して、螺旋状接続溶接はドリルシャフトの外側で掘削孔と及び/又はドリルシャフトの内側で掘削コアと接触するようにする。この突き出た螺旋状接続溶接により、ドリルシャフトは掘削コア及び掘削孔に対し小さな接触面を有し、摩擦は小さい。ドリルシャフトと掘削コアとの間の内側又はドリルシャフトと掘削孔の間の外側における摩擦が小さくなるほど、ドリルビットの同じ性能に対するドリルビットの掘削の進捗が速くなり、ドリルシャフトの寿命が長くなる。螺旋状接続溶接は、ドリルシャフトの内側とドリルシャフトの外側、又はドリルシャフトの内側と外側の両方、から螺旋管の成形ストリップ材料に対して突出し得る。螺旋状接続溶接の凸部を形成するためには継ぎ目材料が必要である。この継ぎ目材料は、ワイヤー状、テープ状、又は粉末状であってよい。
【0017】
湿式掘削及び乾式掘削の際のドリルシャフトの案内が改善されることに加え、螺旋管の成形ストリップ材料に対して突き出た螺旋状接続溶接は、湿式掘削の際の冷却・洗浄流体の搬送を改善することができる。突き出た螺旋状接続溶接は、冷却・洗浄流体のための搬送螺旋として機能する。突き出た螺旋状接続溶接は、ドリルシャフトの内側又は外側における流体搬送を改善することができる。
【0018】
ドリルシャフトの内側では清浄な冷却・洗浄流体が加工点まで搬送され、ドリルシャフトの外側では掘削屑の混じった使用済みの冷却・洗浄流体が排除される。螺旋状接続溶接が清浄な冷却・洗浄流体の搬送螺旋として機能するのは、ドリルシャフトの内側のドリルビットの回転方向と螺旋状接続溶接の方向が一致する場合である。螺旋状接続溶接が掘削屑の混じった使用済みの冷却・洗浄流体の搬送螺旋として機能するのは、ドリルシャフトの外側でドリルビットの回転方向と螺旋状接続溶接の方向が一致する場合である。
【0019】
好ましい変形態様において、継ぎ目材料とN、N≧1のストリップ材料は同じ材料特性を有する。継ぎ目材料とストリップ材料の材料特性が同じであれば、ストリップエッジの溶接の際につなぎが一様になり、継ぎ目材料はストリップ材料と良好に接合できる。
【0020】
代替の好ましい変形態様において、継ぎ目材料とN、N≧1のストリップ材料とは異なる材料特性を有し、継ぎ目材料がストリップ材料より高い張力又は耐摩耗性、あるいはより高い張力と耐摩耗性の両方を有する。成形ストリップ材料から突き出た螺旋状接続溶接の場合、この接続溶接は穿孔作業の際にドリルシャフトの案内を可能とする。ドリルシャフトの内側における螺旋状接続溶接と掘削コアとの間の間隙又は外側における螺旋状接続溶接と掘削孔との間の間隙が小さいほど、ドリルシャフトの案内が改善される。内側における螺旋状接続溶接と掘削コアの間又は外側における螺旋状接続溶接と掘削孔の間の摩擦により、螺旋状接続溶接が除去され得ることから、ドリルシャフトの案内の質は損なわれ得る。ストリップ材料より高い張力又は耐摩耗性あるいはより高い張力と耐摩耗性の両方を有する継ぎ目材料を使用すると、螺旋状接続溶接の特性を変化させることができ、ドリルシャフトの螺旋状接続溶接による案内がドリルシャフトの寿命全体において可能な限り長く保証される。
【0021】
第1の好ましい変形態様において、ドリルシャフトの内側の少なくとも1つの突き出た螺旋状接続溶接は、螺旋管の成形ストリップ材料上で内方凸部ΔIとして突き出る。ドリルシャフトの内側から突き出た螺旋状接続溶接の継ぎ目により、コアドリル用ビットで穿孔する場合に掘削コア上でドリルシャフトを案内することが可能になる。螺旋状接続溶接の内方凸部が設けられると、ドリルビットの掘削後には螺旋状接続溶接がドリルシャフトの内側でドリルビットと接触する。さらに、ドリルシャフトの内側から突き出た螺旋状接続溶接は、ドリルビットによる湿式掘削の際の清浄な冷却・洗浄流体の加工点までの搬送を支援することができる。ドリルシャフトの内側でドリルビットの回転方向と螺旋状溶接接続の方向が一致する場合、螺旋状接続溶接が清浄な冷却・洗浄流体の搬送螺旋として機能する。
【0022】
第2の好ましい変形態様において、少なくとも1つの突き出た螺旋状接続溶接は、ドリルシャフトの外側で螺旋管の成形ストリップ材料から外方凸部ΔAとして突き出る。ドリルシャフトの外側から突き出た螺旋状接続溶接により、ドリルビットによる穿孔の際に掘削孔でドリルシャフトを案内することが可能になる。螺旋状接続溶接の外方凸部が設けられると、ドリルビットが穿孔された後に、螺旋状接続溶接がドリルシャフトの外側で掘削孔と接触する。さらに、ドリルシャフトの外側から突き出た螺旋状接続溶接は、ドリルビットによる湿式掘削の際に掘削屑の混じった使用済みの冷却・洗浄流体の排除を支援することができる。ドリルシャフトの外側でドリルビットの回転方向と螺旋状接続溶接の方向が一致する場合、螺旋状接続溶接は掘削屑の混ざった使用済みの冷却・洗浄流体の搬送螺旋として機能する。
【0023】
第3の好ましい変形態様において、少なくとも1つの螺旋状接続溶接は、ドリルシャフトの螺旋管の内側に成形ストリップ材料から突き出る内方凸部ΔI及び外側に成形ストリップ材料から突き出る外方凸部ΔAを有する。ドリルビットによる穿孔の際、ドリルシャフトの内側及び外側から突き出たこの螺旋状接続溶接により、ドリルシャフトの内側における掘削コア及びドリルシャフトの外側における掘削孔によりドリルシャフトを案内することが可能になる。さらに、ドリルシャフトの内側及び外側から突き出た螺旋状接続溶接は、ドリルシャフトの内側及び外側における湿式掘削の際に冷却・洗浄流体の搬送螺旋として機能する。螺旋状接続溶接の方向は、螺旋状接続溶接によりドリルシャフトの内側と外側のどちらで流体搬送が支援されるかを規定する。ドリルシャフトの内側で螺旋状接続溶接の方向とドリルビットの回転方向が一致する場合、螺旋状接続溶接はドリルシャフトの内側における流体搬送を支援する。ドリルシャフトの外側で螺旋状接続溶接の方向とドリルビットの回転方向が一致する場合、螺旋状接続溶接はドリルシャフトの外側における流体搬送を支援する。
【0024】
本発明における、請求項1乃至12の何れか1つに記載のドリルビット用のドリルシャフトを製造する方法は、N、N≧1のストリップ材料が螺旋管へと成形され、N、N≧1の螺旋状接続溶接により当接するストリップエッジで一体的に接続される、ことを特徴とする。本発明の方法は、ドリルビット用の螺旋管状ドリルシャフトの費用対効果の高い製造を可能とする。ストリップ材料は、螺旋形成形工程において曲率半径が一定の螺旋管に連続的に成形され、溶接ラインにおいてそのストリップエッジで溶接される。
【0025】
この方法のさらなる好ましい改良において、継ぎ目材料が使用されるのは、N、N≧1のストリップ材料の当接するストリップエッジをN、N≧1の螺旋状接続溶接で接合する場合である。継ぎ目材料は、例えば、ワイヤー状、テープ状、又は粉末状であり、成形ストリップ材料から突き出る螺旋状接続溶接を形成する。当接するストリップエッジの縁を一体的に接合する場合に継ぎ目材料を使用すると、成形ストリップ材料の上に突き出た螺旋状接続溶接を成形することができる。穿孔を行う場合、突き出た螺旋状接続溶接は、ドリルシャフトの内側では掘削コアと及び/又はドリルシャフトの外側では掘削孔によりドリルシャフトを案内する。螺旋状接続溶接の幾何形状は、溶接の際のプロセス制御により変化させられ得る。継ぎ目材料は、ドリルシャフトの内側又は外側あるいはドリルシャフトの内側と外側の両方に適用することができる。
【0026】
特に好ましい方法の変形態様において、継ぎ目材料は、N、N≧1のストリップ材料より高い張力又は耐摩耗性、もしくはより高い張力と耐摩耗性との両方を有する。ストリップ材料より高い張力又は耐摩耗性、もしくはより高い張力と耐摩耗性の両方を有する継ぎ目材料を使用すると、螺旋状接続溶接の特性を変化させることができ、ドリルシャフトの螺旋状接続溶接上の案内がドリルシャフトの寿命全体において可能な限り長く保証される。
【0027】
特に好ましい方法の代替の変形態様において、第1の継ぎ目材料及び第2の継ぎ目材料が用いられるのは、N、N≧1のストリップ材料の当接するストリップエッジが螺旋状接続溶接を通じて接合され、第1の継ぎ目材料の材料特性は第2の継ぎ目材料の材料特性と異なる場合である。使用する継ぎ目の材料特性は、螺旋状接続溶接の特性を変化させるために用いることができる。例えば、第1の継ぎ目材料は、ストリップ材料と同じ材料特性を有することができ、その場合は溶接の際にストリップエッジ間の一様なつなぎが実現し、第1の継ぎ目材料はストリップ材料と良好に結合する。例えば、第2の継ぎ目材料は、ストリップ材料より高い張力又は耐摩耗性、もしくはより高い張力と耐摩耗性との両方を有し、螺旋状接続溶接の特性を改善することができる。
【0028】
以下で本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。図面は、必ずしも実施例を縮小して記載することを意図したものではなく、説明のために有用となる場合には概略的及び/又は若干の変更を加えて描かれている。本発明の広義の概念から逸脱することがなければ、実施例の形態及び詳細に様々な変更を加えることができるということは重要である。本発明の広義の概念は以下で示され及び記載された好ましい実施例のそのままの形態又は詳細に限定されることはなく、又は請求項で記載された発明の趣旨と比較して限定されていることもあり得る技術的範囲に限定されることもない。提示されている範囲内について、記載された制限内の値は、制限値としても開示されるべきであり、任意に使用しても請求してもよい。簡潔のため、以下では同じ参照番号が同一若しくは類似の要素又は同一若しくは類似の機能に付与されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】螺旋状シャフトを有するドリルビットであって、分離された切削部と接続可能な、本発明のドリルビットの第1の実施例を示す図である。
【
図1B】螺旋状シャフトを有するドリルビットであって、分離した切削部と接続可能な、本発明のドリルビットの第1の実施例を示す図である。
【
図2A】
図1のドリルビットの、
図1Bの切削線A-Aに沿った長手方向断面図である。
【
図3】螺旋管状ドリルシャフトを有するドリルビットであって、ドリルシャフトは複数の研削領域に接続され、内側に3つの凹部を有する、本発明のドリルビットの第2の実施例を示す図である。
【
図4A】
図3のドリルビットの、
図3の切削線A-Aに沿った長手方向断面図である。
【
図5】螺旋管状ドリルシャフトを有するドリルビットであって、ドリルシャフトは複数の研削領域に接続され、成形シートからできている、本発明のドリルビットの第3の実施例を示す図である。
【
図6A】
図5のドリルビットの、
図5の切削線A-Aに沿った長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1A及び
図1Bはドリルビット10の第1の実施例を示し、以下で第1のドリルビット10と記す。この第1のドリルビット10は、ドリルシャフト部11と、受け取り部12と、ドリルシャフト部11を受け取り部12に恒久的に接続する接続装置13とを備える。第1のドリルビット10は、取り外し可能な接続装置15を通じて別の切削部14に接続することができる。
図1Aは非接続状態の第1のドリルビット10及び切削部14を、
図1Bは接続状態の第1のドリルビット10及び切削部14を示す。
【0031】
切削部11は、リング部16と、リング部16と接続された複数の研削領域17とを備える。研削領域17はリング状に配置され、中間スペースを有する切削リングを形成する。切削部14は、複数の研削領域17に代えて、閉鎖切削リングとして構成される単一の研削領域をさらに有することができる。研削領域17は、リング部16に溶接、はんだ付け、接着、又は他の適切な方法により締結される。ドリルシャフト部11は螺旋管状ドリルシャフト18を備え、受け取り部12はカバー19と挿入端20とを備え、第1のドリルビット10はこの挿入端20によりコアドリルの工具ホルダに固定される。穿孔作業の際、第1のドリルビット10は掘削軸21の周りをコアドリルにより駆動され、掘削軸21と平行な掘削方向22に加工の対象となる加工製品23へと進行する。第1のドリルビット10は、コア径d1を有する掘削コア24及び掘削孔径d2を有する掘削孔25を加工製品23に形成する。
【0032】
ドリルシャフト18は溶接螺旋管として構成され、成形平坦シートの状態のストリップ材料31から成形及び溶接により製造される。平坦なストリップ材料31は、螺旋管へと成形され、当接するストリップエッジで螺旋状接続溶接32により接合される。螺旋状接続溶接32はドリルシャフト18の剛性を補強する要素として機能し、同じ壁厚の長手方向の継ぎ目溶接又は管状ドリルシャフトと比較してドリルシャフト18の剛性を増加させる。
【0033】
【0034】
螺旋状接続溶接32は、ドリルシャフト16の外側33及び内側34で成形ストリップ材料31から突き出る。ドリルシャフト16の外側33における螺旋状接続溶接32の凸部は外方凸部ΔAとし、ドリルシャフト16の内側34における螺旋状接続溶接32の凸部は内方凸部ΔIとする。外側及び内側33、34における成形ストリップ材料31から突き出た螺旋状接続溶接32を形成するため、継ぎ目材料35を用いて成形ストリップ材料31を溶接し、必要な材料体積を補う。継ぎ目材料35は、粉末状、ワイヤー状、又はテープ状でよい。さらに、継ぎ目材料35の材料特性は、螺旋状接続溶接32の所望の特性に適合させ得る。
【0035】
この螺旋状接続溶接32は、第1のドリルビット10で穿孔の際のドリルシャフト18の案内を改善する。外側33における螺旋状接続溶接32と掘削孔25との間の間隙又は内側34における螺旋状接続溶接32と掘削コア23との間の間隙が小さいほど、ドリルシャフト18の案内は改善される。螺旋状接続溶接32は、外側33における螺旋状接続溶接32と掘削孔25の間又は内側34における螺旋状接続溶接32と掘削コア24の間の摩擦により除去されてしまうことがあり、そうなるとドリルシャフト18の案内の質は損なわれる。ストリップ材料31より高い張力及び耐摩耗性を有する継ぎ目材料35を使用すると、螺旋状接続溶接32の特性を変化させることができ、ドリルシャフト18の螺旋状接続溶接32上の案内をドリルシャフト18の寿命全体において可能な限り長く保証することができる。
【0036】
図3は、本発明のドリルビット40の第2の実施例を示し、以下で第2のドリルビット40と記す。この第2のドリルビット40は、ドリルシャフト部41と、受け取り部42と、ドリルシャフト部41を受け取り部42に永続的に接続する接続装置43とを備える。
【0037】
ドリルシャフト部41は、螺旋管状ドリルシャフト44と、ドリルシャフト44に溶接、はんだ付け、接着、又は他の適切な方法により締結される複数の研削領域45とを備える。受け取り部42は、カバー46と挿入端47とを備え、第3のドリルビット40はこの挿入端47によりコアドリルの工具ホルダに固定される。穿孔作業の際、第2のドリルビット40は掘削軸48の周りをコアドリルにより駆動され、加工の対象となる加工製品23へ掘削軸48と平行な掘削方向49に進行する。
【0038】
第2のドリルビット40は、ドリルシャフト44に恒久的に接続された研削領域45を有する。第2のドリルビット40は、複数の研削領域45の代わりに、閉鎖切削リングとして構成される単一の研削領域を有することもできる。研削領域45は、ドリルシャフト44に溶接、はんだ付け、接着、又は他の適切な方法により締結される。
【0039】
ドリルシャフト44は溶接螺旋管の形態の螺旋管として構成され、凹部を有する平坦シートの形態のストリップ材料51から成形及び溶接により製造される。ストリップ材料51は、螺旋管へと成形され、螺旋状接続溶接52により当接するストリップエッジで接合される。
【0040】
【0041】
ドリルシャフト44の螺旋状接続溶接52は、ドリルシャフト44の外側53から外方凸部ΔAの分だけ成形ストリップ材料51に対して突き出し、ドリルシャフト44の内側54では成形ストリップ材料51と実質的に面一になる。外側53から突き出た螺旋状溶接52を形成するために、成形ストリップ材料51を形成する場合に必要な材料体積を補うための継ぎ目材料55を使用する。
【0042】
継ぎ目材料55は、粉末、ワイヤー、又はテープの形状とすることができる。螺旋状接続溶接52の特性は、継ぎ目材料55の材料特性により適合させることができる。継ぎ目材料55の材料特性は、ストリップ材料51の材料特性と同じでも異なっていてもよい。継ぎ目材料55とストリップ材料51の材料特性が同じであれば、テープエッジの溶接は一様な継ぎ目になり、継ぎ目材料55はストリップ材料51と良好に結合できる。ストリップ材料51より高い張力及び/又は高い耐摩耗性を有する継ぎ目材料55を使用すると、螺旋状接続溶接52の特性を変化させることができ、ドリルシャフト44の螺旋状接続溶接52上の案内をドリルシャフト46の寿命全体において可能な限り長く保証することが可能になる。
【0043】
第2のドリルビット40において、螺旋管状ドリルシャフト44はドリルシャフト44の外側53では成形ストリップ材料51から突き出た螺旋状接続溶接52を有し、ドリルシャフト44の内側54では成形ストリップ材料51と実質的に面一になるように成形される。それに代えて、螺旋状接続溶接52はドリルシャフト44の内側54で内方凸部ΔIの分だけ成形ストリップ材料51に対して突き出してよく、ドリルシャフト46の外側53では成形ストリップ材料51と実質的に面一とすることができる。ドリルシャフト44の内側54から突き出た螺旋状接続溶接52により、第2のドリルビット40で穿孔する場合に掘削コア24上でドリルシャフト44を案内することが可能になる。さらに、内側54から突き出た螺旋状接続溶接52は、湿式掘削の際の清浄な冷却・洗浄流体の供給を支援することができる。第2のドリル用ビット40の回転方向とドリルシャフト44の内側54における螺旋状接続溶接52の方向が一致する場合、螺旋状接続溶接52が清浄な冷却・洗浄流体の搬送螺旋として機能する。
【0044】
第2のドリルビット40による湿式掘削には、研削領域45を冷却する冷却流体として、また掘削孔25から掘削屑を排除する洗浄流体としての冷却・洗浄流体が必要である。ドリルシャフト44の外側53から突き出た螺旋状接続溶接52は、掘掘削孔25を通じたドリルシャフト44の案内に加え、掘削屑が混ざった使用済みの冷却・洗浄流体の排除をも支援することができる。第2のドリルビット40の回転方向とドリルシャフト44の外側53における螺旋状接続溶接52の方向が一致する場合、螺旋状接続溶接52が掘削屑の混ざった使用済みの冷却・洗浄流体の搬送螺旋として機能する。
【0045】
第1の凹部56A、第2の凹部56B、及び第3の凹部56Cの3つの凹部56A、56B、56Cがドリルシャフト44の内側54に配置され、ドリルシャフト44の内側54に清浄な冷却・洗浄流体が供給される。凹部56A、56B、56Cは、ストリップ材料51が螺旋管に成形される前にシートに形成され、第2のビット40による湿式掘削の際に必要な冷却・洗浄流体の搬送チャネルとして機能する。凹部56A、56B、56Cは、掘削コアとドリルシャフトの間の内部隙間が小さな場合に特に必要である。凹部56A、56B、56Cの数、凹部56A、56B、56Cの幾何形状、及びドリルシャフト44の外側53における及び/又は内側54における凹部56A、56B、56Cの配置は、冷却・洗浄流体の流体量によって調節し得る。
【0046】
ドリルシャフト44の内側54に配置された凹部56A、56B、56Cは清浄な冷却・洗浄流体の供給に用いられ、ドリルシャフト44の外側53に配置された凹部は掘削屑が混ざった使用済みの冷却・洗浄流体の排除を支援することができる。凹部56A、56B、56Cは第2のドリルビット40にストリップ材料51の成形前に形成されるため、これらの凹部はドリルシャフト44の内側54に製造上の努力が殆ど無く形成できる。
【0047】
図5は、本発明のドリルビット60の第3の実施例を示し、以下で第3のドリルビット60と記す。この第3のドリルビット60は、ドリルシャフト部61と、受け取り部62と、ドリルシャフト部61を受け取り部62に恒久的に接続する接続装置63とを備える。
【0048】
ドリルシャフト部61は、螺旋管状ドリルシャフト64と、ドリルシャフト64に溶接、はんだ付け、接着、又は他の方法により締結される複数の研削領域65とを備える。受け取り部62は、カバー66と挿入端67とを備え、第3のドリルビット60は挿入端67によりコアドリルの工具ホルダに固定される。穿孔作業の際、第3のドリルビット60は掘削軸68の周りをコアドリルにより駆動され、加工の対象となる加工製品23へ掘削軸68と平行な掘削方向69に進行する。
【0049】
第3のドリルビット60は、ドリルシャフト64に恒久的に取り付けられた研削領域65を有する。第3のドリルビット60は、複数の研削領域65の代わりに、閉鎖切削リングとして構成された単一の研削領域を有することもできる。研削領域65は、ドリルシャフト64に溶接、はんだ付け、接着、又は他の適切な方法により接続される。
【0050】
ドリルシャフト64は溶接螺旋管として構成され、波形の成形シートの形態のストリップ材料71から成形及び溶接により製造される。ストリップ材料71は、螺旋管へと成形され、螺旋状接続溶接72により当接するストリップエッジで接合される。螺旋状接続溶接72は、ドリルシャフト64の剛性を補強する要素として機能する。
【0051】
【0052】
ドリルシャフト64の螺旋状接続溶接72はドリルシャフト64の外側73で成形され、ドリルシャフト64の内側74では成形ストリップ材料71と実質的に面一となる。ストリップ材料71、66の成形断面により、ドリルシャフトの外側73及び内側74に凹部が形成され、第3のドリルビット60による湿式掘削の際には、冷却・洗浄流体はこれらの凹部を通じて搬送することができる。ドリルシャフト64の内側74に配置される凹部は清浄な冷却・洗浄流体の供給に用いられ、ドリルシャフト64の外側73に配置された凹部は掘削屑の混じった使用済みの冷却・洗浄流体の排出に用いられる。成形シートの幾何形状は、湿式掘削に必要な流体量に適合され得る。