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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】靴底用ゴム発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20220314BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20220314BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220314BHJP
   A43B 13/04 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEQ
C08L21/00
C08L101/00
A43B13/04 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020098853
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191824
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
(72)【発明者】
【氏名】森田 彰
(72)【発明者】
【氏名】樋口 直矢
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-171263(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230872(WO,A1)
【文献】特開2012-213615(JP,A)
【文献】特開2002-363344(JP,A)
【文献】特開2002-28002(JP,A)
【文献】特開2010-022582(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0186214(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
C08L 21/00
C08L 101/00
A43B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物と発泡剤とを含有する発泡用ゴム組成物により形成された靴底用ゴム発泡体であって、
24℃での周波数10Hzにおける損失係数tanδ(24℃)が0.07以下であり、
下記式(1)にて算出される、-15℃での周波数10Hzにおける損失係数tanδ(-15℃)と24℃での周波数10Hzにおける損失係数tanδ(24℃)との間の損失係数tanδの温度変化の傾きの絶対値が、0.002以下であることを特徴とする靴底用ゴム発泡体。
[数1]
tanδの温度変化の傾きの絶対値=|[tanδ(-15℃)-tanδ(24℃)]/39| (1)
【請求項2】
-15℃での周波数10Hzにおける損失係数tanδ(-15℃)が0.12以下であることを特徴とする請求項1に記載の靴底用ゴム発泡体。
【請求項3】
24℃での周波数10Hzにおける貯蔵弾性率E’(24℃)と-15℃での周波数10Hzにおける貯蔵弾性率E’(-15℃)の差の絶対値が0.30MPa以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の靴底用ゴム発泡体。
【請求項4】
前記ゴム組成物が、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、及びスチレンブタジエンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の靴底用ゴム発泡体。
【請求項5】
樹脂組成物をさらに含み、
前記ゴム組成物と前記樹脂組成物の全体に対する前記樹脂組成物の含有量が40質量%以下であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の靴底用ゴム発泡体。
【請求項6】
40℃における動粘度が19cst以下の可塑剤をさらに含み、
前記ゴム組成物の全体に対する前記可塑剤の含有量が20質量%以上であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の靴底用ゴム発泡体。
【請求項7】
40℃における動粘度が19cst以下の可塑剤をさらに含み、
前記ゴム組成物と前記樹脂組成物の全体に対する前記可塑剤の含有量が20質量%以上であることを特徴とする請求項5に記載の靴底用ゴム発泡体。
【請求項8】
比重が0.6以下であることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の靴底用ゴム発泡体。
【請求項9】
シューズのミッドソール用であることを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の靴底用ゴム発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底に使用されるゴム発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツシューズ等のシューズにおいては、歩行感や着用感を向上させて疲労を軽減し、怪我等の発生を防止するために、シューズの中間部(ミッドソール又は中敷)に発泡体を装着することが行われている。
【0003】
このような発泡体としては、例えば、ゴムを発泡させたミッドソール用の発泡ゴムが提案されている。そして、このような発泡ゴムを使用することにより、ポリウレタン等で形成される靴底と同等の履き心地を維持することができると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、耐久性及びコスト等の観点から、エチレン酢酸ビニル(EVA)発泡体からなるミッドソール用の発泡体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、ゴム成分及び樹脂成分を含み、周波数10Hz、30℃~80℃における損失係数tanδが0.16以下である発泡体が提案されている。そして、このような発泡体を使用することにより、発泡ソールの熱収縮を抑制することができると記載されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-218799号公報
【文献】特開2016-198496号公報
【文献】国際公開第2013/108378号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、スポーツシューズ等は、常温のみならず、低温で使用する場合が想定されるが、上記従来の靴底用の発泡体においては、低温においても優れた反発性を維持することが困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、常温における反発性に優れ、かつ低温においても優れた反発性を維持することができる靴底用ゴム発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の靴底用ゴム発泡体は、ゴム組成物と発泡剤とを含有する発泡用ゴム組成物により形成された靴底用ゴム発泡体であって、24℃での周波数10Hzにおける損失係数tanδ(24℃)が0.07以下であり、下記式(1)にて算出される、-15℃での周波数10Hzにおける損失係数tanδ(-15℃)と24℃での周波数10Hzにおける損失係数tanδ(24℃)との間の損失係数tanδの温度変化の傾きの絶対値が、0.002以下であることを特徴とする。
【0010】
[数1]
tanδの温度変化の傾きの絶対値=|[tanδ(-15℃)-tanδ(24℃)]/39| (1)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、常温における反発性に優れ、かつ低温においても優れた反発性を維持することができる靴底用ゴム発泡体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0013】
本発明の靴底用ゴム発泡体は、ゴム組成物と発泡剤とを含有する発泡用ゴム組成物により形成されており、ゴム組成物を架橋及び発泡させた架橋発泡体である。
【0014】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、天然ゴム及び合成ゴムの少なくとも一方により構成され、合成ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、及びスチレンブタジエンゴムが使用される。なお、これらのゴムは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、天然ゴムと合成ゴムとを併用してもよい。
【0015】
そして、これらのゴムを使用することにより、これらのゴムの主鎖には二重結合が存在するため、自由体積が存在する。これにより、分子鎖が結晶化しにくく、荷重が付与された場合にも分子構造が破壊されにくくなると考えられるため、結果として、本発明のゴム組成物では、常温における反発性に優れ、かつ低温においても優れた反発性を維持することができる靴底用ゴム発泡体を得ることができる。
【0016】
なお、ここでいう「常温」とは、24℃±1℃(23~25℃)の範囲の温度のことを言い、「低温」とは、-15℃±1℃(-14~-16℃)のことを言う。
【0017】
また、これらのゴムのうち、天然ゴムまたはイソプレンゴムの少なくとも一方を使用することにより、天然ゴムは他のポリマーと比較して分子量分布が広いため、練り工程等における加工性が向上することになる。また、天然ゴム及びイソプレンゴムは、練り加工時に分子鎖が切断されることにより、分子量が低下し軟化するため、練り工程等における加工性が向上することになる。その結果、靴底用ゴム発泡体の加工性を向上させることができる。
【0018】
また、ブタジエンゴムのTg(ガラス転移点)が他ポリマーと比較して低温であるため、ブタジエンゴムを使用することにより、靴底用ゴム発泡体の耐寒性を向上させることができる。
【0019】
また、スチレンブタジエンゴムは、スチレンが共重合されているため直鎖構造がより少ない。従って、スチレンブタジエンゴムを使用することにより、靴底用ゴム発泡体の加工性を向上させることができるとともに、コストダウンを図ることが可能になる。
【0020】
なお、靴底用ゴム発泡体の全体に対するゴム組成物の含有量が40質量%~90質量%であることが好ましい。これは、含有量が40質量%未満の場合は、反発弾性を維持することが難しくなるという不都合が生じる場合があるためであり、90質量%よりも大きい場合は、成型時に割れが発生するなど加工が困難になる場合があるためである。
【0021】
また、ブタジエンゴムを使用する場合、ゴム組成物の全体(即ち、ゴム組成物の総質量)に対するブタジエンゴムの含有量の合計が40質量%~100質量%であることが好ましく、60質量%~100質量%であることがより好ましい。ブタジエンゴムは他のポリマーよりもガラス転移温度が低いため、ゴム組成物がブタジエンゴムを含むことにより、常温から低温に変化した場合の周波数10Hzにおける損失係数tanδの変化量を小さくすることができる。特にブタジエンゴムの含有量が上記範囲内であることにより、このtanδの変化量を特に小さくすることができ、低温での反発性を特に向上させることができる。
【0022】
なお、上述の天然ゴム、及び各種合成ゴムの製造方法は特に限定されず、市販されているものを使用することができる。
【0023】
<発泡剤>
発泡剤としては、加熱により、ゴム組成物を発泡させるのに必要なガスを発生させるものであれば特に限定されない。より具体的には、例えば、N,N‘ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジン(OBSH)等を挙げることができる。なお、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
また、靴底用ゴム発泡体における発泡剤の含有量は、ゴム組成物の全体に対して0.5質量%~10質量%が好ましく、2質量%~5質量%がより好ましい。これは、0.5質量%未満の場合は、安定して発泡させることができないという不都合が生じる場合があり、また、10質量%よりも大きい場合は、過発泡に起因して表面や内部の発泡セル径がばらつくという不都合が生じる場合があるためである。
【0025】
<樹脂組成物>
また、樹脂組成物は、高温で軟化しやすく、発泡剤の使用料を低減することができるため、本発明の靴底用ゴム発泡体は、樹脂組成物を含んでもよい。
【0026】
この樹脂組成物としては、例えば、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。なお、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
また、樹脂組成物は、ゴム成分に比べて高温で軟化しやすいため、樹脂組成物を含有することにより、内部まで均一に発泡させることができる。一方、樹脂組成物は、ゴム成分に比べてガラス転移温度が高く、常温から低温に変化した場合の損失係数tanδの変化量が大きいため、樹脂組成物の含有量が多すぎると、低温での反発性が低下してしまう。そのため、靴底用ゴム発泡体における樹脂組成物の含有量は、ゴム組成物の全体(すなわち、ゴム組成物の質量と樹脂組成物の質量の和)に対して40質量%以下であることが好ましい。また靴底用ゴム発泡体における樹脂組成物の含有量は、ゴム組成物の全体に対して15質量%以上であることが好ましい。この場合、ゴム組成物を特に均一に発泡させることができる。
【0028】
<可塑剤>
また、本発明の靴底用ゴム発泡体は、可塑剤を含んでもよい。この可塑剤としては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油、パインタール等の植物油、脂肪酸エステル類、フタル酸エステル類、リン酸エステル類等のエステル系化合物、ポリアルファオレフィン等の化学合成油を挙げることができる。
【0029】
また、可塑剤は、温度40℃における動粘度ν40が19cst以下であることが好ましい。可塑剤の動粘度ν40が19cst以下である場合は、靴底用ゴム発泡体において、低温における周波数10Hzにおける損失係数tanδを低下させやすくなるため、低温において、より一層優れた反発性を維持することが可能になる。
【0030】
また、可塑剤の含有量は、ゴム組成物の全体(上述の樹脂組成物を含む場合は、ゴム組成物と樹脂組成物の全体)に対して20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。これは、可塑剤の含有量が20質量%以上であると、周波数10Hzにおける損失係数tanδを低下させやすくなるためである。
【0031】
なお、可塑剤の含有量は、ゴム組成物の全体(上述の樹脂組成物を含む場合は、ゴム組成物と樹脂組成物の全体)に対して40質量%以下が好ましい。これは、含有量が40質量%を超えると、可塑剤の添加量の増加割合に対して、周波数10Hzにおける損失係数tanδの低下の割合が小さくなるため、効率的にtanδを低下させることが困難になる場合があるためである。
【0032】
本発明の靴底用ゴム発泡体は、上述の発泡用ゴム組成物に、架橋剤、架橋助剤、発泡助剤、加硫促進剤、加工助剤、補強剤、及びシランカップリング剤等を添加し、所定の条件下で架橋発泡させることにより得ることができる。
【0033】
<架橋剤>
架橋剤としては、特に限定する必要はなく、ゴム用の架橋剤として一般的な硫黄、過酸化物架橋を促進させる有機過酸化物を用いることができる。有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド等を挙げることができる。なお、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、靴底用ゴム発泡体における架橋剤の含有量は、ゴム組成物の全体に対して1~7質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましい。これは、1質量%未満の場合は、架橋が不十分のため反発弾性が低下するという不都合が生じる場合があり、また、7質量%よりも大きい場合は、過剰に架橋が進むため十分に発泡しない場合があるためである。
【0035】
<架橋助剤>
架橋助剤としては、特に限定する必要がなく、例えば、酸化亜鉛、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリシクロデカンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等を挙げることができる。なお、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
また、靴底用ゴム発泡体における架橋助剤の含有量は、ゴム組成物の全体に対して1~10質量%が好ましく、3~5質量%がより好ましい。これは、1質量%未満の場合は、架橋が十分に進行せず反発弾性が低下するという不都合が生じる場合があるためであり、また、10質量%よりも大きい場合は、ゴム組成物の比重が大きくなるため、製品の軽量化が困難になる場合があるためである。
【0037】
<発泡助剤>
発泡助剤としては、特に限定する必要がなく、例えば、尿素化合物や亜鉛化合物等を挙げることができる。なお、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、靴底用ゴム発泡体における発泡助剤の含有量は、ゴム組成物の全体に対して0.5~10質量%が好ましい。なお、発泡助剤は発泡剤と等量入れるのが標準であり、発泡剤よりも発泡助剤の添加量が少ない場合、ホルムアルデヒド等が発生する発泡剤もあるため、発泡剤の添加量に応じて適宜調整が必要である。
【0039】
<加硫促進剤>
加硫促進剤としては、特に限定する必要はなく、スルフェンアミド系、グアニジン系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系またはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系等の加硫促進剤等を挙げることができる。なお、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
また、靴底用ゴム発泡体における加硫促進剤の含有量は、ゴム組成物の全体に対して0.2~3質量%が好ましい。これは、0.2質量%未満の場合は、成型時間が長くなることにより生産性が低下し、かつ、架橋不十分になり反発弾性が低下するという不都合が生じる場合があるためであり、また、3質量%よりも大きい場合は、成型品においてブルームが発生する可能性が高くなる場合があるためである。
【0041】
<加工助剤>
また、靴底用ゴム組成物の流動性及び滑性を向上させ、ロール等の混練機への付着を抑制するとともに、離型効果を向上させるとの観点から、本発明の靴底用ゴム発泡体は、加工助剤を含有してもよい。
【0042】
加工助剤としては、例えば、高級脂肪酸エステル、ステアリン酸、金属石けん、ポリエチレンワックス等を挙げることができる。
【0043】
また、靴底用ゴム発泡体における加工助剤の含有量は、ゴム組成物の全体に対して0~2質量%が好ましい。これは、2質量%よりも大きい場合は、潤滑性が大きくなりすぎることに起因してロールと材料とが滑るため、ローラ加工時に材料が混ざり難くなるという不都合が生じる場合があるためである。
【0044】
<補強剤>
また、加硫ゴムの引張強度や耐摩耗性等の機械的性質を向上させるとの観点から、本発明の靴底用ゴム発泡体は、補強剤を含有してもよい。
【0045】
補強剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、クレー、タルク、及び硫酸バリウム等を挙げることができる。
【0046】
また、靴底用ゴム発泡体における補強剤の含有量は、ゴム組成物の全体に対して5~50質量%が好ましい。これは、5質量%未満の場合は、強度が十分に得られない場合があるためであり、また、50質量%よりも大きい場合は、反発弾性が損なわれ、かつ発泡体の比重が大きくなりすぎる場合があるためである。
【0047】
ここで、本発明の靴底用ゴム発泡体においては、反発弾性率を向上させて、優れた反発性を得るとの観点から、24℃での周波数10Hzにおける損失係数tanδ(24℃)が0.07以下である点に特徴がある。
【0048】
この損失係数tanδは、損失係数tanδ=損失弾性率E”/貯蔵弾性率E’で定義される値である。周波数10Hzという値は、通常、人間が歩いた場合、或いは走った場合の靴底用部材の固有周波数(7~12Hz)を表す。したがって、24℃での周波数10Hzにおける損失係数tanδ(24℃)が0.07以下である靴底用ゴム発泡体を用いることにより、例えば、シューズのミッドソールに使用した場合において、反発弾性率を向上させて、優れた反発性を得ることができる。
【0049】
また、本発明の靴底用ゴム発泡体においては、下記式(2)にて算出される、-15℃での周波数10Hzにおける損失係数tanδ(-15℃)と、上述の損失係数tanδ(24℃)との間の損失係数tanδの温度変化の傾きの絶対値が、0.002以下である点に特徴がある。
【0050】
[数2]
tanδの温度変化の傾きの絶対値=|[tanδ(-15℃)-tanδ(24℃)]/温度変化の値|=|[tanδ(-15℃)-tanδ(24℃)]/39| (2)
【0051】
そして、tanδの温度変化の傾きの絶対値が0.002以下であれば、tanδの温度変化による影響が小さくなるため、低温における反発弾性率の変化が小さくなる。
【0052】
すなわち、本発明の靴底用ゴム発泡体においては、損失係数tanδ(24℃)が0.07以下であるとともに、tanδの温度変化の傾きの絶対値が0.002以下であるため、常温における反発性に優れ、かつ低温においても優れた反発性を維持することができる。
【0053】
なお、反発弾性率を向上させて、低温における反発性を確実に向上させるとの観点から、損失係数tanδ(-15℃)が0.12以下であることが好ましい。
【0054】
また、靴底用ゴム発泡体の損失係数tanδは、靴底用ゴム発泡体の動的粘弾性測定によって測定されたデータを、データ処理ソフトを用いて解析することにより決定することができる。
【0055】
具体的には、靴底用ゴム発泡体について、所定の測定温度及び測定周波数に対して得られたデータに基づいて、データ処理ソフトを用いて、24℃(または-15℃)、10Hzのtanδの値を抽出すればよい。動的粘弾性測定には、例えば、株式会社UBM社製「Rheogel-E4000F」を用いることができ、データ処理ソフトには、株式会社UBM社製「UBM Rheo Station ver7.0」を用いる。
【0056】
また、靴底用ゴム発泡体においては、24℃での周波数10Hzにおける貯蔵弾性率E’(24℃)[MPa]と-15℃での周波数10Hzにおけるにおける貯蔵弾性率E’(-15℃)[MPa]の差の絶対値が0.30MPa以下であることが好ましい。このような構成により、低温における硬度の変化を抑制することができる。
【0057】
なお、ここで言う「貯蔵弾性率」とは、後述の実施例における方法により測定されるものを言う。
【0058】
また、同様に、低温における硬度の変化を抑制するとの観点から、24℃におけるC硬度(24℃)-15℃におけるC硬度(-15℃)の差の絶対値が5.0以下であることが好ましい。
【0059】
なお、ここで言う「C硬度」とは、後述の実施例における方法により測定されるものを言う。
【0060】
また、シューズに使用するとの観点から、本発明の靴底用ゴム発泡体の比重は、0.6以下が好ましく、特に、シューズのミッドソールに使用する場合は、0.4以下が好ましい。
【0061】
次に、本発明の靴底用ゴム発泡体の製造方法について説明する。本発明の靴底用ゴム発泡体の製造方法は、発泡用ゴム組成物を作製する混練工程と、発泡用ゴム組成物を発泡させるとともに所望の形状に成形する発泡成形工程とを備える。
【0062】
(混練工程)
まず、基材であるゴム組成物、架橋剤および発泡剤等の各原料を混練機に投入し、これらの原料を混練することにより、発泡用ゴム組成物を作製する。
【0063】
ここで、混練機としては、例えば、ミキシングロール、カレンダーロール、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いることができる。
【0064】
例えば、所定温度に設定したロール(例えば、表面温度が40~60℃)に、ゴム組成物、樹脂組成物、可塑剤、架橋助剤、補強剤、架橋剤、加硫促進剤、発泡助剤、及び発泡剤をこの順序で投入して混練した後、シーティングやペレタイジング等の予備成形を行う。
【0065】
また、複数の混練機を使用して段階的に実施してもよい。例えば、ゴム組成物、樹脂組成物、可塑剤、架橋助剤、及び補強剤をニーダーに投入して混練した後、混練後の組成物をロールに移動させるとともに、ロール内に架橋剤や発泡剤を投入して混練した後、シーティングやペレタイジング等の予備成形を行う。
【0066】
(発泡成形工程)
次に、混練工程により得られた発泡用ゴム組成物を金型に充填して、加熱処理を行うことにより、発泡剤による発泡を進行させた後、成形処理、及び離型処理を行うことにより、所望の形状を有する発泡用ゴム組成物を作製する。
【0067】
なお、加熱処理における加熱温度は、発泡剤及び発泡助剤の種類により異なるが、使用する発泡剤の分解温度以上の温度(例えば、120~180℃)で加熱処理を行う。また、発泡用ゴム組成物を金型に充填し、加圧した状態で加熱処理を行ってもよく、常圧加熱して、発泡剤の分解を進行させてもよい。
【0068】
以上のようにして、本発明の靴底用ゴム発泡体を製造することができる。
【実施例
【0069】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを発明の範囲から除外するものではない。
【0070】
(実施例1~20及び比較例1~13)
<靴底用ゴム発泡体の製造>
表1~3に示す組成(数字は、各成分の質量部を示す)を有する実施例1~20、及び比較例1~11の靴底用ゴム発泡体を、下記の製造方法により製造した。
【0071】
(混練工程)
まず、表1~3に示すゴム組成物、樹脂組成物、可塑剤、架橋助剤、及び補強剤を、40℃に設定されたニーダーに投入し、20分間、各原料を混練した。次に、混練後の組成物を8インチオープンロール(温度:60℃)に投入した後、表1~3に示す架橋剤、発泡助剤、及び加硫促進剤を添加し、10分間、原料を混練した。次に、混練後の組成物に、表1~3に示す発泡剤を添加し、10分間、原料を混練することにより、発泡用ゴム組成物を作製した。
【0072】
(発泡成形工程)
まず、作製した発泡用ゴム組成物570gを、金型(縦:162mm、横:211mm、高さ:15mm)に充填し、120℃、15MPaの条件下で、内部まで均一に発泡するまでプレス成形を行った。次に、成形後のゴム組成物を取り出すとともに、別の金型(縦:265mm、横:345mm、高さ:22mm)にセットし、145℃、15MPaの条件下で、15分間、プレス成形を行い、発泡用ゴム組成物を発泡させることによって、実施例1~20、及び比較例1~11の靴底用ゴム発泡体を製造した。
【0073】
<靴底用樹脂発泡体の製造>
表3に示す組成(数字は、各成分の質量部を示す)を有する比較例12~13の靴底用樹脂発泡体を、下記の製造方法により製造した。
【0074】
(混練工程)
まず、表3に示す樹脂組成物、架橋剤、発泡剤、架橋助剤、加工助剤、シランカップリング剤、及び補強剤を8インチオープンロール(温度:100℃)に投入した後、10分間、原料を混練することにより、発泡用樹脂組成物を作製した。
【0075】
(発泡成形工程)
まず、作製した発泡用樹脂組成物245gを、金型(縦:145mm、横:175mm、高さ:10mm)に充填し、165℃、15MPaの条件下で、17分間、プレス成形を行った。
【0076】
次に、発泡用樹脂組成物を取り出すとともに、厚みが15±1mmになるように加工した。
【0077】
次に、厚みを調製した発泡用樹脂組成物を金型(縦:125mm、横:200mm、高さ:10mm)にセットし、165℃、15MPaの条件下で、プレス成形を行った。そして、プレス成形を終了し、金型の温度が常温になるまで、20分間、冷却した後、発泡成形体を金型から離型することにより、比較例12~13の靴底用樹脂発泡体を製造した。
【0078】
<比重の測定>
作製した靴底用ゴム発泡体、及び靴底用樹脂発泡体の比重を、JIS K 7311(水中置換法)に準拠して測定した。より具体的には、発泡体サンプル(縦:20±1mm、横:15±1mm、厚さ:10±1mm)を準備し、電子比重計(ALFA MIRAGE CO,LTD製、商品名:MDS-300)を用いて、測定温度が20±3℃の条件下で、下記の式(3)により、各発泡体サンプルの比重[g/cm]を算出した。以上の結果を表1~3に示す。
【0079】
[数3]
D[g/cm]=W/(W-W) (3)
なお、式中、Dは比重、Wは空気中での重量、及びWは水中での重量を示す。
【0080】
<C硬度の測定>
作製した靴底用ゴム発泡体、及び靴底用樹脂発泡体の硬度を、JIS K 6253に準拠して測定した。より具体的には、発泡体サンプル(縦:50±1mm、横:50±1mm、厚さ:10±1mm)を準備し、高分子計器(株)製AskerC型硬度計を用いて、24℃、及び-15℃の条件下で9.81Nの荷重で押し付けた後、瞬間最大値の目盛りを読みとりC硬度を求めた。また、求めたC硬度を用いて、24℃におけるC硬度と-15℃におけるC硬度の差の絶対値を算出した。以上の結果を表1~3に示す。
【0081】
<反発弾性率の測定>
作製した靴底用ゴム発泡体、及び靴底用樹脂発泡体の反発弾性率を、ASTM-D2632法に準拠して測定した。より具体的には、発泡体サンプル(厚さ:10±1mm)を準備し、GOTECH製VERTICAL REBOUND RESILIENCE TESTER_GT-7042-Vを用いて、24℃、及び-15℃の条件下で金属プランジャーを5秒ごとに8回落下させ、後半5回における、反発後の金属プランジャーの静止時点(反発高さ)での指針[%]を読み取り、読み取った値の平均値を反発弾性率[%]とした。また、下記式(4)により、反発弾性率の変化率[%]を算出した。以上の結果を表1~3に示す。
【0082】
[数4]
反発弾性率の変化率[%]=(1-((-15℃の反発弾性率)/(24℃の反発弾性率)))×100 (4)
【0083】
<損失係数tanδの測定>
作製した靴底用ゴム発泡体、及び靴底用樹脂発泡体において、動的粘弾性測定装置(Rheogel-E4000F、株式会社UBM社製)を用いて、下記に示す測定条件で動的粘弾性測定を行った。具体的には、まず、実施例、比較例で得た靴底用ゴム発泡体、及び靴底用樹脂発泡体を、長さ30mm、幅6mm、厚み2mmの短冊状に裁断して試験片を得た。次に、この試験片の両端を、動的粘弾性測定装置の固定部に固定し、弛まないように荷重を与えて張りをつけたまま保持した。この状態で、動的粘弾性測定装置の加振機を駆動させることにより試験片に動的応力を与えて動的ひずみを生じさせた。この時の動的応力と動的ひずみをそれぞれの検出器から検出し、それぞれの波形に基づいて位相差及び動的複素弾性率を求め、貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E”を決定した。なお、動的粘弾性測定装置を用いた動的粘弾性測定の測定条件は下記のとおりである。
【0084】
(測定条件)
・測定モード:周波数温度依存性
・歪み波形:正弦波
・測定周波数設定:100Hz、50Hz、30Hz、10Hz、6Hz、3Hz
・歪み制御:50μm(自動制御)
・静荷重制御:自動静荷重
・測定温度:-20℃~50℃
・ステップ温度:2℃
・昇温速度:2℃/min
・ホールド時間:0sec
・オフセット温度:-30℃
【0085】
また、動的粘弾性測定装置の測定で得られたデータから、24℃での周波数10Hzにおける貯蔵弾性率E’(24℃)のデータと-15℃での周波数10Hzにおけるにおける貯蔵弾性率E’(-15℃)のデータを抽出するとともに、貯蔵弾性率E’(24℃)と貯蔵弾性率E’(-15℃)の差の絶対値を算出した。
【0086】
また、動的粘弾性測定装置の測定で得られたデータから、24℃での10Hzにおけるtanδ(24℃)のデータと、-15℃での10Hzにおけるtanδ(-15℃)のデータを抽出するとともに、上述の式(2)を用いてtanδの温度変化の傾きの絶対値を算出した。以上の結果を表1~3に示す。
【0087】
なお、上述のC硬度、反発弾性率、及び損失係数tanδの測定において、24℃の測定結果は、24℃で3回測定を行ったうち、測定温度が最も24℃に近い測定の結果を採用し、-15°の測定結果は、-15℃で3回測定を行ったうち、測定温度が最も-15℃に近い測定の結果を採用した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
*1:SVR-CV60(天然ゴム)
*2:IR2200(イソプレンゴム、日本ゼオン(株)製)
*3:BR230(ブタジエンゴム、宇部興産(株)製)
*4:JSR 1502(スチレンブタジエンゴム、JSR(株)製)
*5:RB820(ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、JSR(株)製)
*6:DF810(αオレフィンコポリマー、三井化学(株)製)
*7:INFUSE9350(オレフィンブロックコポリマー、ダウケミカル製)
*8:UE659(エチレン酢酸ビニル共重合体、USI製)
*9:金星(炭酸マグネシウム、神島化学工業(株)製)
*10:Nipsil ER(シリカ、東ソー・シリカ(株)製)
*11:エクソンモービル製の化学合成油(動粘度:19cst、)
*12:エクソンモービル製の化学合成油(動粘度:5cst)
*13:MORESCO製の流動パラフィン(動粘度:10cst)
*14:出光興産(株)製の鉱物油(動粘度:68cst)
*15:出光興産(株)製の鉱物油(動粘度:91cst)
*16:出光興産(株)製の鉱物油(動粘度:26cst)
*17:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製のパームヤシ脂肪酸エステル(動粘度:5cst)
*18:CABRUS4(ビス-(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、大阪ソーダ(株)製)
*19:ステアリン酸
*20:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製)
*21:微粉硫黄S 200メッシュ(細井化学工業(株)製)
*22:パークミルD(ジクミルペルオキシド、日本油脂(株)製)
*23:ノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学(株)製)
*24:ノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン、大内新興化学(株)製)
*25:TAC-70(トリアリルイソシアヌレート)
*26:セルラーD(N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、永和化成工業(株)製)
*27:ビニホールAC♯3(アゾジカルボンアミド、永和化成工業(株)製)
*28:セルペースト101(尿素、永和化成工業(株)製)
【0092】
表1~2に示すように、実施例1~20においては、24℃での周波数10Hzにおける損失係数tanδ(24℃)が0.07以下であるため、常温における反発性に優れている(24℃における反発が70以上である)ことが分かる。
【0093】
また、損失係数tanδの温度変化の傾きの絶対値が0.002以下であるため、低温においても優れた反発性(-15℃における反発が50以上)を維持することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明は、靴底に使用されるゴム発泡体に、特に、有用である。