(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】自動搬送装置、自動搬送装置に用いられるテープおよびテープ施工方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220314BHJP
【FI】
G05D1/02 D
(21)【出願番号】P 2020101419
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2020-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】301020891
【氏名又は名称】マツダエース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】古本 仁之
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-171368(JP,A)
【文献】特開2017-041152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動搬送装置であって、
車輪が取り付けられた車両本体部を備え、前記車輪を回転させることで自走可能な自走車両と、
前記自走車両が走行する床面に配置されたテープと、
前記自走車両を制御する制御装置とを備え、
前記自走車両は、前記車輪を駆動させる駆動部と、前記車両本体部の下方を撮影するカメラを備え、
前記テープには、互いに同じ記号からなる複数の第1記号が所定の隙間をあけて前記テープの長手方向に沿って互いに等間隔に表示されており、
前記テープの複数の前記隙間には、互いに異なる記号からなる第2記号がそれぞれ表示されており、
各前記第1記号は、それぞれ、前記テープの長手方向に沿って並ぶ複数の単位第1記号で構成されており、
前記制御装置は、
前記カメラが撮影した画像から前記テープに表示された前記単位第1記号および前記第2記号を抽出する記号抽出部と、
前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号および前記第2記号に基づいて前記自走車両の現在位置を特定する車両位置特定部と、
前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号の描画領域に基づいて前記自走車両の走行ラインを特定する走行ライン特定部と、
前記走行ライン特定部により特定された走行ラインに沿って前記自走車両が移動するように前記駆動部を制御する走行制御部とを備え、
前記車両位置特定部は、
前記記号抽出部により抽出された前記第2記号と、前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号の個数とに基づいて、前記自走車両の現在位置を特定
し、
1つの前記第1記号に含まれる複数の前記単位第1記号は、それぞれ互いに異なる種類の記号からなり、
前記車両位置特定部は、前記自走車両の現在位置の特定に用いる前記単位第1記号の個数を、当該単位第1記号の種類に基づいて補正する、ことを特徴とする自動搬送装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の自動搬送装置において、
前記単位第1記号は、それぞれ前記テープの長手方向について非対称となる形状を有し、
前記制御装置は、前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号の向きから前記自走車両の目標の進行方向を特定する進行方向特定部を有し、
前記走行制御部は、前記目標の進行方向と前記自走車両の進行方向とが一致するように前記駆動部を制御する、ことを特徴とする自動搬送装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の自動搬送装置において、
前記走行ライン特定部は、前記記号抽出部により抽出された各前記単位第1記号について、それぞれ、当該単位第1記号を前記テープの幅方向に2等分する単位走行ラインを当該単位第1記号の描画領域に基づいて算出するとともに、算出された各前記単位走行ラインに基づいて前記自走車両の走行ラインを特定する、ことを特徴とする自動搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動搬送装置において、
前記第2記号は、所定の整数をn進数で表した複数の数字あるいは英数字からなる基本記号と、当該基本記号が表す整数の最下位の値と一致する数値からなる付加記号が前記基本記号に隣接して表示されており、
前記記号抽出部は、前記画像から、前記最下位の値が前記付加記号の数値と一致する記号を、前記第2記号として抽出する、ことを特徴とする自動搬送装置。
【請求項5】
自動搬送装置であって、
車輪が取り付けられた車両本体部を備え、前記車輪を回転させることで自走可能な自走車両と、
前記自走車両が走行する床面に配置されたテープと、
前記自走車両を制御する制御装置とを備え、
前記自走車両は、前記車輪を駆動させる駆動部と、前記車両本体部の下方を撮影するカメラを備え、
前記テープには、互いに同じ記号からなる複数の第1記号が所定の隙間をあけて前記テープの長手方向に沿って互いに等間隔に表示されており、
前記テープの複数の前記隙間には、互いに異なる記号からなる第2記号がそれぞれ表示されており、
各前記第1記号は、それぞれ、前記テープの長手方向に沿って並ぶ複数の単位第1記号で構成されており、
前記制御装置は、
前記カメラが撮影した画像から前記テープに表示された前記単位第1記号および前記第2記号を抽出する記号抽出部と、
前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号および前記第2記号に基づいて前記自走車両の現在位置を特定する車両位置特定部と、
前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号の描画領域に基づいて前記自走車両の走行ラインを特定する走行ライン特定部と、
前記走行ライン特定部により特定された走行ラインに沿って前記自走車両が移動するように前記駆動部を制御する走行制御部とを備え、
前記車両位置特定部は、
前記記号抽出部により抽出された前記第2記号と、前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号の個数とに基づいて、前記自走車両の現在位置を特定し、
前記第2記号は、所定の整数をn進数で表した複数の数字あるいは英数字からなる基本記号と、当該基本記号が表す整数の最下位の値と一致する数値からなる付加記号が前記基本記号に隣接して表示されており、
前記記号抽出部は、前記画像から、前記最下位の値が前記付加記号の数値と一致する記号を、前記第2記号として抽出する、ことを特徴とする自動搬送装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の自動搬送装置に用いられる前記テープであって、
互いに同じ記号からなる複数の第1記号が所定の隙間をあけて等間隔に表示された第1テープと、前記第1テープの互いに異なる前記隙間にそれぞれ張り付けられて前記第2記号の1つがそれぞれ表示された複数の第2テープとを備える、ことを特徴とするテープ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の自動搬送装置に用いられる前記テープを前記床面に施工する方法であって、
互いに同じ記号からなる複数の第1記号が所定の隙間をあけて等間隔に表示された第1テープを前記床面に配置する工程と、
前記床面に配置された前記第1テープの互いに異なる前記隙間に、前記第2記号が表示された複数の第2テープをそれぞれ張り付ける工程とを含む、ことを特徴とするテープ施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を保持可能で且つ自走可能な自走車両を備える自動搬送装置、この自動搬送装置に用いられるテープおよび当該テープの配置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造現場等では、作業の効率化やコスト削減等を目的として、自走可能な車両を用いて当該車両に製品等の運搬を行わせることが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両の走行路に所定ピッチでN、S極が交互に着磁された磁気テープを張り付けて、磁気を検出することができる磁気センサを車両の底部の前端と後端にそれぞれ設けるとともに、車両の底部の中央に磁極の変化を検出してカウントする磁気センサを設けた装置が開示されている。この装置では、車両前後の2つの磁気センサによって磁気テープの前後2か所の位置が特定される。これより、これら2か所の間の磁気テープの位置を精度よく推定でき、磁気テープに沿って車両を適切に移動させることができると考えられる。また、車両中央の磁気センサによって車両の移動距離を算出して車両の現在位置を推定することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、車両の走行路と現在位置とを特定するために、所定ピッチでN、S極が交互に着磁された磁気テープと、磁気テープを検出する2つの磁気センサおよび磁気の変化を検出する磁気センサが必要になり、コストがかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、コストを抑えつつ自走車両の走行路および現在位置を適切に特定できる装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、自動搬送装置であって、車輪が取り付けられた車両本体部を備え、前記車輪を回転させることで自走可能な自走車両と、前記自走車両が走行する床面に配置されたテープと、前記自走車両を制御する制御装置とを備え、前記自走車両は、前記車輪を駆動させる駆動部と、前記車両本体部の下方を撮影するカメラを備え、前記テープには、互いに同じ記号からなる複数の第1記号が所定の隙間をあけて前記テープの長手方向に沿って互いに等間隔に表示されており、前記テープの複数の前記隙間には、互いに異なる記号からなる第2記号がそれぞれ表示されており、各前記第1記号は、それぞれ、前記テープの長手方向に沿って並ぶ複数の単位第1記号で構成されており、前記制御装置は、前記カメラが撮影した画像から前記テープに表示された前記単位第1記号および前記第2記号を抽出する記号抽出部と、前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号および前記第2記号に基づいて前記自走車両の現在位置を特定する車両位置特定部と、前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号の描画領域に基づいて前記自走車両の走行ラインを特定する走行ライン特定部と、前記走行ライン特定部により特定された走行ラインに沿って前記自走車両が移動するように前記駆動部を制御する走行制御部とを備え、前記車両位置特定部は、前記記号抽出部により抽出された前記第2記号と、前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号の個数とに基づいて、前記自走車両の現在位置を特定し、1つの前記第1記号に含まれる複数の前記単位第1記号は、それぞれ互いに異なる種類の記号からなり、前記車両位置特定部は、前記自走車両の現在位置の特定に用いる前記単位第1記号の個数を、当該単位第1記号の種類に基づいて補正する、ことを特徴とする自動搬送装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、着磁されたテープに比べて、記号が表示されたテープという比較的安価に入手可能なテープを用いて、自走車両の現在位置と走行ラインが特定される。これより、より安価な自動搬送装置を提供できる。しかも、本発明では、テープとして、複数の単位第1記号で構成され且つ互いに同じ記号からなる複数の第1記号が所定の隙間をあけて表示される、つまり、同じ記号が繰り返し表示されるとともに、複数の隙間に第2記号が表示されたテープが用いられる。そして、テープの画像から抽出された第2記号と単位第1記号の個数とによって自走車両の現在位置が特定されるようになっている。そのため、表示された記号が現在位置に対応してすべて異なるように構成されたテープに比べて、テープにかかるコストを低減することができ、より確実に安価な自動搬送装置を提供できる。
【0010】
また、本発明によれば、1つの前記第1記号に含まれる複数の前記単位第1記号は、それぞれ互いに異なる種類の記号からなり、前記車両位置特定部は、前記自走車両の現在位置の特定に用いる前記単位第1記号の個数を、当該単位第1記号の種類に基づいて補正するように構成されていることで、自走車両の現在位置をより精度よく特定できる。
【0011】
前記構成において、前記単位第1記号は、それぞれ前記テープの長手方向について非対称となる形状を有し、前記制御装置は、前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号の向きから前記自走車両の目標の進行方向を特定する進行方向特定部を有し、前記走行制御部は、前記目標の進行方向と前記自走車両の進行方向とが一致するように前記駆動部を制御する。
【0012】
この構成によれば、単位第1記号によって自走車両の進行方向も特定される。そのため、自走車両の進行方向を特定するために別途表示物を設ける等の必要がなく、簡単な構成で自走車両を適切に移動させることができる。
【0013】
前記構成において、前記走行ライン特定部は、前記記号抽出部により抽出された各前記単位第1記号について、それぞれ、当該単位第1記号を前記テープの幅方向に2等分する単位走行ラインを当該単位第1記号の描画領域に基づいて算出するとともに、算出された各前記単位走行ラインに基づいて前記自走車両の走行ラインを特定する構成が挙げられる。
【0014】
前記構成において、好ましくは、前記第2記号は、所定の整数をn進数で表した複数の数字あるいは英数字からなる基本記号と、当該基本記号が表す整数の最下位の値と一致する数値からなる付加記号が前記基本記号に隣接して表示されており、前記記号抽出部は、前記画像から、前記最下位の値が前記付加記号の数値と一致する記号を、前記第2記号として抽出する。
また、本発明は、自動搬送装置であって、車輪が取り付けられた車両本体部を備え、前記車輪を回転させることで自走可能な自走車両と、前記自走車両が走行する床面に配置されたテープと、前記自走車両を制御する制御装置とを備え、前記自走車両は、前記車輪を駆動させる駆動部と、前記車両本体部の下方を撮影するカメラを備え、前記テープには、互いに同じ記号からなる複数の第1記号が所定の隙間をあけて前記テープの長手方向に沿って互いに等間隔に表示されており、前記テープの複数の前記隙間には、互いに異なる記号からなる第2記号がそれぞれ表示されており、各前記第1記号は、それぞれ、前記テープの長手方向に沿って並ぶ複数の単位第1記号で構成されており、前記制御装置は、前記カメラが撮影した画像から前記テープに表示された前記単位第1記号および前記第2記号を抽出する記号抽出部と、前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号および前記第2記号に基づいて前記自走車両の現在位置を特定する車両位置特定部と、前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号の描画領域に基づいて前記自走車両の走行ラインを特定する走行ライン特定部と、前記走行ライン特定部により特定された走行ラインに沿って前記自走車両が移動するように前記駆動部を制御する走行制御部とを備え、前記車両位置特定部は、前記記号抽出部により抽出された前記第2記号と、前記記号抽出部により抽出された前記単位第1記号の個数とに基づいて、前記自走車両の現在位置を特定し、前記第2記号は、所定の整数をn進数で表した複数の数字あるいは英数字からなる基本記号と、当該基本記号が表す整数の最下位の値と一致する数値からなる付加記号が前記基本記号に隣接して表示されており、前記記号抽出部は、前記画像から、前記最下位の値が前記付加記号の数値と一致する記号を、前記第2記号として抽出する、ことを特徴とする自動搬送装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、前記基本記号が表す数の最下位の値とこれに隣接する付加記号とが一致するか否かによって第2記号の誤検出を抑制して自走車両の現在位置を精度よく特定できる。
【0016】
また、本発明は、前記自動搬送装置に用いられる前記テープであって、互いに同じ記号からなる複数の第1記号が所定の隙間をあけて等間隔に表示された第1テープと、前記第1テープの互いに異なる前記隙間にそれぞれ張り付けられて前記第2記号の1つがそれぞれ表示された複数の第2テープとを備える、ことを特徴とするテープを提供する。
【0017】
この構成によれば、第1記号が繰り返し表示された第1テープと、複数の第2テープとを準備して、第1テープに対して必要に応じて第2テープを張り付けることで、前記のような自走車両の走行ラインおよび現在位置を特定可能なテープを実現でき、容易に且つ安価に当該テープを準備できる。
【0018】
また、本発明は、前記自動搬送装置に用いられる前記テープを前記床面に施工する方法であって、互いに同じ記号からなる複数の第1記号が所定の隙間をあけて等間隔に表示された第1テープを前記床面に配置する工程と、前記床面に配置された前記第1テープの互いに異なる前記隙間に、前記第2記号が表示された複数の第2テープをそれぞれ張り付ける工程とを含む、ことを特徴とするテープ施工方法を提供する。
【0019】
この方法によれば、第1テープを床面に配置した後、第2記号を配置する必要のある個所に確実に第2テープを張り付けることができ、前記のような自走車両の走行ラインおよび現在位置を特定可能なテープを適切に床面に配置できる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、コストを抑えつつ自走車両の走行路および現在位置を適切に特定できる自動搬送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動搬送装置の自走車両にトレイが載置されている状態を示した概略正面図である。
【
図5】第1記号の詳細を説明するための
図4の一部拡大図である。
【
図6】第2記号の詳細を説明するための
図4の一部拡大図である。
【
図8】カメラにより撮影された画像の1例を示す図である。
【
図9】走行ラインの特定手順を説明するための図である。
【
図10】走行路テープの施工方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る自動搬送装置1、これに用いられるテープ200およびこのテープ200の施工方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、自動搬送装置1に用いられるテープ200を、走行路テープ200という。この走行路テープ200は、請求項の「テープ」に相当する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る自動搬送装置1がトレイ3を保持している状態を示した概略正面図である。
図2は、自動搬送装置1の後述する自走車両10の概略底面図である。
【0024】
自動搬送装置1は、自走可能な自走車両10と、自走車両10を制御する制御装置100と、床面Eに配置された走行路テープ200とを備える。本実施形態では、制御装置100は自走車両10に搭載されている。本明細書では、
図1の紙面と直交する方向および
図2の上下方向を前後方向といい、
図1の紙面手前側および
図2の上側を前側であって自走車両10が前進しているときの進行方向側を前側といい、反対側を後側という。また、
図1および
図2の左右方向であって自走車両10の車幅方向を左右方向といい、
図1および
図2の右側であって自走車両10が前進しているときの進行方向を向いた状態での左側を左側、反対側を右側という。
【0025】
(自走車両)
自走車両10は、箱状の車両本体部12と、6つの車輪とを備え、これら車輪の回転によって移動する。車両本体部12は、水平面と平行に延びてトレイ3等の被搬送物が載置される載置部12aと、水平面と平行に延びて車両本体部12の底面を構成する底面部12bを備える。車両本体部12の内側であって載置部12aと底面部12bとの間には、制御装置100等を収容できるスペースSが区画されている。以下では、適宜、この載置部12aと底面部12bとの間のスペースSを、収容スペースSという。
【0026】
車両本体部12には、車両本体部12の下方を撮影するカメラ30が搭載されている。具体的には、底面部12bには、その略中央に底面部12bを上下方向に貫通する貫通孔が形成されている。カメラ30は、そのレンズが底面部12bの貫通孔から下方を臨む姿勢で底面部12bに固定されており、底面部12bの下方を撮影する。
【0027】
底面部12bのうちカメラ30(レンズ)の周囲には、底面部12bの下方を照明するためのライト32が設けられている。本実施形態では、カメラ30(レンズ)の全周にわたり略均一に複数のライト32(図例では8つのライト32)が配設されている。ライト32は、常時、ONとされてカメラ30の撮影領域を照明する。このライト32による照明により、カメラ30の撮影領域に照射される光量は安定し、カメラ30によってその下方の画像が適切に撮影される。
【0028】
各車輪は、底面部12bから下方に突出するように車両本体部12に固定されている。4つの車輪16は底面部12bの四隅に設けられている。2つの車輪14は底面部12bの前後方向の中央に、左右に並ぶように配設されている。底面部12bの四隅に設けられた4つの車輪16は従動輪であり、底面部12bの前後方向の中央に設けられた2つの車輪14は駆動輪である。各従動輪16および各駆動輪14は、その車軸が左右方向に延びる姿勢で車両本体部12に固定されている。
【0029】
前記の収容スペースSには、各駆動輪14をそれぞれ回転駆動させる一対のモータ(以下、適宜、車輪回転モータ18という)が収容されている。各車輪回転モータ18は、対応する駆動輪14をそれぞれ個別に回転駆動させるようになっており、2つの駆動輪14の回転速度の差によって車両本体部12は旋回する。各従動輪16は、駆動輪14の回転によって車両本体部12が移動するのに伴って回転および旋回する。なお、この車輪回転モータ18は、請求項の「駆動部」に相当する。
【0030】
収容スペースSには、さらに、バッテリ40が搭載されている。バッテリ40は、カメラ30、ライト32、車輪回転モータ18および制御装置100と接続されており、これらに電力を供給する。
【0031】
(走行路テープ)
図3は、走行路テープ200を示した概略平面図である。走行路テープ200は、一定の幅を有するテープである。走行路テープ200の幅方向の寸法は、例えば20mm程度とされる。走行路テープ200は、自走車両10の走行路を示すものであり、予め設定された自走車両10の走行経路に沿って床面Eに配置されている。例えば、走行路テープ200は、その裏面に塗布された粘着剤により床面Eに貼り付けられる。
【0032】
走行路テープ200には、互いに同じ記号からなる複数の第1記号Aが走行路テープ200の長手方向に沿って互いに等間隔に表示されている。つまり、走行路テープ200には、その長手方向に沿って第1記号Aが繰り返し表示されている。第1記号Aは、走行路テープ200の長手方向について互いに所定の隙間Cをあけて表示されている。一部の隙間Cであって複数の隙間Cには、互いに異なる記号からなる第2記号Bがそれぞれ表示されている。第2記号Bは、例えば、床面Eに配置された走行路テープ200の隙間Cのうち、自走車両10が停車される場所や自走車両10の進行方向の変更が行われる場所といった主要な場所と対応する隙間Cに配置されている。
【0033】
(第1記号)
図4は、
図3の一部拡大図である。
図5は、
図4の一部拡大図であって第1記号Aの後述する単位第1記号A1を示した図である。
【0034】
第1記号Aは、互いに異なる記号からなる複数の単位第1記号A1で構成されている。また、各単位第1記号A1は、走行路テープ200の長手方向について、互いに非対称な形状を有している。
【0035】
具体的に、各単位第1記号A1は、それぞれ、三角形の図形(三角形の3つの辺を線で表した図形)からなる枠図形A11と、この枠図形A11の内側に表示された1つの数字A12とで構成されている。枠図形A11は、走行路テープ200の長手方向と直交する方向つまり走行路テープ200の幅方向に延びる底辺を有する三角形からなり、枠図形A11は、走行路テープ200の長手方向について非対称な形状を有している。これより、各単位第1記号A1は、走行路テープ200の長手方向について互いに非対称となっている。本実施形態では、枠図形A11は、正三角形ではない二等辺三角形を呈している。各単位第1記号A1の枠図形A11は、互いに同じ形状・大きさを有する。一方、1つの第1記号Aを構成する各単位第1記号A1に含まれる数字A12は、互いに異なる数字である。これより、1つの第1記号Aにおいて、これを構成する各単位第1記号A1は互いに異なる記号となっている。
【0036】
本実施形態では、1つの第1記号Aが9個の単位第1記号A1で構成されている。そして、これら9個の単位第1記号A1が、それぞれ、1から9までの整数の1つをそれぞれ含んでいる。また、第1記号Aは、1つの第1記号Aにおいて、1から9の整数が走行路テープ200の長手方向の一方側から他方側に向かって順に並ぶように構成されている。また、各単位第1記号A1は、1つの第1記号A内において、走行路テープ200の長手方向について、隣接する単位第1記号A1どうしの間に隙間がほぼない状態で配置されている。なお、例えば、走行路テープ200の幅方向の寸法が20mm程度の場合に、走行路テープ200の長手方向についての1つの単位第1記号A1の寸法は、10mm程度とされる。
【0037】
ここで、前記のように、枠図形A11は、走行路テープ200の幅方向に延びる底辺を有する二等辺三角形を呈している。これより、枠図形A11の底辺の中心(走行路テープ200の幅方向について底辺を二等分する点)P2と、枠図形A11の頂点P1を結ぶラインLbは、枠図形A11および単位第1記号A1を走行路テープ200の幅方向に2等分するラインLbと一致し、このラインLbは走行路テープ200の長手方向に沿うラインとなる。
【0038】
(第2記号)
図6は、
図4の一部拡大図であり、第2記号Bを示した図である。
【0039】
第2記号Bは、4つの英数字(数字あるいは/および英字)が走行路テープ200の幅方向に並ぶことで構成された基本記号B11と、1つの数字で構成された付加記号B12とからなる。
【0040】
基本記号B11は、1つの数を16進数で表した数字コードであり、4つの英数字は同じ向きを向いている。つまり、基本記号B11は、所定の整数(10進法で表される整数)を16進法で表したものであり、16を底として16の冪を用いて表される数である。ここで、この数字コードは、10進数における9→10→11→12→13→14→15→16→17を、9→A→B→C→D→E→F→10というように、0~9に加えてA~Fを用いて数を表すものである。これより、基本記号B11の4つの英数字は、それぞれ0~9およびA~Fのうちのいずれか1の英数字で構成されている。例えば、
図6の「000E」からなる基本記号B11が表す数は、10進数における「14」である。
【0041】
各第2記号Bは、その基本記号B11が表す数が互いに異なる数となるように構成されている。
【0042】
付加記号B12は、基本記号B11が表す数の1の位つまり最下位の数を表すものである。付加記号B12は、基本記号B11が表す所定の整数の1の位の数、つまり、基本記号B11を10進数に変換したときの1の位の数からなり、0~9のうちの1の数字で構成されている。
図6の例では、前記のように、「000E」からなる基本記号B11が表す数が10進数における「14」であることに対応して、付加記号B12は「4」となっている。
【0043】
付加記号B12を構成する数字の向きと基本記号B11を構成する英数字とは、互いに同じ向きであってテープ200の長手方向の一方側が英数字の上側となる向きとなっている。また、基本記号B11は、基本記号B11の最上桁の英数字に隣接して配置されているとともに、基本記号B11と基本記号B11の各英数字はほぼ同じ大きさとなっている。また、基本記号B11と基本記号B11の各英数字は、走行路テープ200の幅方向に沿うように配置されている。なお、各第2記号Bの全体の大きさは、ほぼ同じ大きさであって前記の隙間Cに収まる大きさとなっている。
【0044】
以下では、走行路テープ200に表示された記号をその種類を区別することなくいう場合において、適宜、当該記号を表示記号という。
【0045】
(制御装置)
図7は、制御装置100の制御ブロック図である。制御装置100は、車輪回転モータ18を制御する装置であり、これと電気的に接続されている。また、制御装置100は、カメラ30とも電気的に接続されており、カメラ30からの信号は制御装置100に入力される。
【0046】
制御装置100は、機能的に、カメラ30により撮影された画像に基づいて自走車両10の走行動作を決定する走行動作制御部110を備える。また、制御装置100は、機能的に、記号抽出部111と、走行ライン特定部112と、進行方向特定部113と、現在位置・動作特定部114とを備える。走行動作制御部110は、各特定部112~114により特定された情報に基づいて自走車両10の走行動作を決定する。前記の現在位置・動作特定部114は、請求項の「車両位置特定部」に相当し、前記の走行動作制御部110は、請求項の「走行制御部」に相当する。
【0047】
(記号抽出部)
記号抽出部111は、カメラ30により撮影された画像から走行路テープ200に表示された表示記号を抽出する。
【0048】
記号抽出部111は、カメラ30により撮影された画像から以下のようにして単位第1記号A1を抽出する。
【0049】
記号抽出部111には、第1記号Aの枠図形A11の形であって走行路テープ200を床面Eに配置した状態でカメラ30により撮影される枠図形A11の形状が記憶されている。記号抽出部111は、カメラ30により撮影された画像内に、この枠図形A11の形状として記憶している形状と概ね一致する図形があれば、これを枠図形A11の候補として抽出する。次に、記号抽出部111は、抽出した枠図形A11の候補の内側に、1~9のいずれかの整数が表示されているか否かを判定する。記号抽出部111には、画像から文字を読み取るOCR(Optical character recognition)のソフトウエアが組み込まれており、記号抽出部111はOCRのソフトウエアを用いて前記の判定を行う。記号抽出部111は、抽出した枠図形A11の候補の内側に、1~9のいずれかの整数が表示されていると判定すると、抽出した枠図形A11を単位第1記号A1の枠図形A11であると決定し、抽出した枠図形A11とこの内側に表示された整数とで構成される記号を単位第1記号A1として抽出する。なお、記号抽出部111は、抽出した枠図形A11の候補の内側に1~9のいずれかの整数が表示されていないと判定したときは、候補とした枠図形A11で構成される記号は第1記号Aではないと判定し、抽出しない。
【0050】
記号抽出部111は、カメラ30により撮影された画像から以下のようにして第2記号A2を抽出する。
【0051】
記号抽出部111は、OCRのソフトウエアを用いて、カメラ30により撮影された画像から文字を抽出する。次に、記号抽出部111は、抽出した文字のうち、4つの英数字が同じ向きで並び(所定の間隔以下で並び)且つ右隣に英数字が存在しないものがあれば、この4つの英数字からなる記号を第2記号Bの基本記号B11の候補として抽出する。また、記号抽出部111は、抽出した基本記号B11の候補の最上桁の数字に隣接する数字を第2記号Bの付加記号B12の候補として抽出する。次に、記号抽出部111は、候補とした基本記号B11が表す数の10進数での数値と、候補とした付加記号B12の数字の値とが一致するか否かを判定する。そして、これらが一致すれば、記号抽出部111は、候補とした基本記号B11を基本記号B11として抽出し、候補とした付加記号B12を付加記号B12として抽出し、これら基本記号B11と付加記号B12とで構成される記号を第2記号Bとして抽出する。なお、前記の値が不一致の場合は、記号抽出部111は、候補とした基本記号B11および付加記号B12で構成される記号は第2記号Bではないと判定して、抽出しない。
【0052】
図8は、カメラ30が撮影した画像Dの一例を示した図である。
図8に示すように、カメラ30の画角および各表示記号の大きさは、カメラ30が走行路テープ200の上方に位置する状態で複数の表示記号がカメラ30によって撮影されるように設定されている。これより、カメラ30が撮影した画像D内には複数の表示記号が含まれる場合があり、この場合には、記号抽出部111は、1つの画像Dから複数の表示記号を抽出する。
【0053】
なお、カメラ30が撮影した画像Dから表示記号が1つも抽出されなかった場合は、自走車両10が適切な走行路から大きく逸脱しているおそれがある。これより、カメラ30が撮影した画像Dから表示記号が1つも抽出されなかった場合は、制御装置100は、自走車両10の駆動を停止させるとともに、後述する走行ライン特定部112、進行方向特定部113、現在位置・動作特定部114による各種演算を停止させる。また、制御装置100は、自走車両10に設けられた異常表示用のライトやブザー等(不図示)に対して異常発生時の動作を行わせる、あるいは、自走車両10を管理している制御機に無線等で異常を伝える信号を送信する。
【0054】
(走行ライン特定部)
走行ライン特定部112は、記号抽出部111により抽出された単位第1記号A1から、自走車両10が走行すべき走行ラインを決定する。
【0055】
走行ライン特定部112は、各単位第1記号A1について、
図5に示したラインLbであって単位第1記号A1をテープ200の幅方向に2等分するラインLbを、単位走行ラインLbとしてそれぞれ算出する。走行ライン特定部112は、この単位走行ラインLbを、カメラ30により撮影された1の画像Dに含まれる複数の単位第1記号A1についてそれぞれ算出する。そして、走行ライン特定部112は、各単位走行ラインLbをつなぎ合わせることにより形成されるラインを走行ラインLとして決定する。
【0056】
具体的には、走行ライン特定部112は、単位走行ラインLbのうち、対応する単位第1記号A1の描画領域の走行路テープ200の長手方向についての一方端から、隣接する他の単位第1記号A1の描画領域の同一方端までの線分を抽出し、これら線分をつないだラインを走行ラインLとして抽出する。
図9の例では、走行ライン特定部112は、「1」が表示された単位第1記号A1の単位走行ラインLbのうち、この単位第1記号A1の一方端(
図9の例では、図の下側の端部)から隣接する他の単位第1記号A1であって「9」が表示された単位第1記号A1の一方端(図の下側の端部)までの線分Lb1を抽出する。また、「9」が表示された単位第1記号A1、「8」が表示された単位第1記号A1についても同様に線分Lb2、Lb3を抽出する。そして、走行ライン特定部112は、各線分Lb1、Lb2、Lb3を含むラインを走行ラインLとして決定する。なお、各線分Lb1、Lb2、Lb3が連続していない場合は、線分どうしの間を直線でつないだラインが走行ラインLとして決定される。また、
図9では、各線分Lb1、Lb2、Lb3が明瞭になるように、単位第1記号A1に含まれる数字を白抜きの文字で示している。
【0057】
(進行方向特定部)
進行方向特定部113は、自走車両10の進行方向(自走車両10の目標の進行方向)を特定する。前記のように、単位第1記号A1は、走行路テープ200の長手方向について非対称な形状を有している。これより、進行方向特定部113は、記号抽出部111により抽出された単位第1記号A1の向きを特定して、この単位第1記号A1の向きから自走車両10の進行方向を決定する。具体的には、進行方向特定部113は、単位第1記号A1の枠図形A11の向きに基づいて自走車両10の進行方向を決定する。例えば、進行方向特定部113は、
図9の矢印Y1で示すように、記号抽出部111により抽出された単位第1記号A1の枠図形A11において、底辺から二等辺三角形の頂点(長さの等しい辺の交点となる頂点)に向かう側を、自走車両10の進行方向の前側として決定する。
【0058】
(現在位置・動作特定部)
現在位置・動作特定部114は、自走車両10の現在位置を特定する。
【0059】
記号抽出部111は、1つの画像Dから抽出された表示記号のうち画像Dの中心点Xに最も近い表示記号を、基準記号に決定する。
図8の例では、「7」が表示された単位第1記号A1が基準記号として抽出される。
【0060】
基準記号が第2記号Bの場合、現在位置・動作特定部114は、基準記号として決定された第2記号Bの基本記号B11のみに基づいて自走車両10の現在位置を特定する。現在位置・動作特定部114には、第2記号Bが表す数と、自走車両10の現在位置とが予め関連づけてマップで記憶されている。基準記号が第2記号Bの場合は、現在位置・動作特定部114は、このマップから、基準記号(第2記号B)の基本記号B11が表す数に対応する現在位置を抽出し、抽出した位置を自走車両10の現在位置として特定する。
【0061】
一方、
図8の例のように、基準記号が単位第1記号A1の場合、現在位置・動作特定部114は、直前に記号抽出部111によって抽出された第2記号Bと、この第2記号Bが抽出されてから基準記号が抽出されるまでの間に抽出された単位第1記号A1の個数とに基づいて自走車両10の現在位置を特定する。
【0062】
前記のように、第2記号Bと自走車両10の現在位置とは、予め関連づけてマップで記憶されている。従って、第2記号Bからの自走車両10の走行距離がわかれば、現在位置を特定できる。そして、第2記号Bからの自走車両10の走行距離は、第2記号Bを通過した後に自走車両10が通過した単位第1記号A1の個数(以下、適宜、通過記号数という)から算出できる。詳細には、通過記号数を9で割って通過した第1記号Aの個数を算出し、これに第1記号A間の離間距離をかけることで、走行距離を求めることができる。これより、基準記号が単位第1記号A1の場合、現在位置・動作特定部114は、この基準記号よりも進行方向の後側となる範囲で且つこの基準記号が抽出されたタイミングの直前に記号抽出部111によって抽出された第2記号Bと、この第2記号Bが抽出されてから基準記号が抽出されるまでの間に記号抽出部111によって抽出された単位第1記号A1の個数(以下、適宜、通過記号数という)とに基づいて、自走車両10の現在位置を特定する。
【0063】
具体的には、現在位置・動作特定部114は、記号抽出部111により第2記号Bが抽出されると、これ以降にカメラ30により撮影された各画像Dについて、記号抽出部111により抽出された画像D内の単位第1記号A1の個数をカウントするとともに、この個数を積算し、得られた積算値を通過記号数として算出する。
【0064】
ここで、本実施形態では、現在位置・動作特定部114は、カウントした画像D内の単位第1記号A1の個数を、その画像Dに含まれる単位第1記号A1に含まれる数字A12を用いてこれを補正し、補正後の個数を用いて通過記号数を算出する。
【0065】
具体的には、走行路テープ200の一部に損傷や汚れがある場合、
図8に示すように、一部の単位第1記号A1(「3」および「4」と表示された単位第1記号A1)を記号抽出部111が読み取れないおそれがある。しかし、この場合には、抽出した単位第1記号A1が表す整数が、「1」、「2」、「5」、「6」と不連続になることで、「2」と表示された単位第1記号A1と「5」と表示された単位第1記号A1との間に、本来、「3」および「4」と表示された単位第1記号A1が存在したはずであることがわかる。これより、記号抽出部111により抽出された単位第1記号A1が表す整数が1~9の間で連続しておらず一部の整数が抜けている場合、現在位置・動作特定部114は、抜けている整数の個数を、記号抽出部111により抽出された画像D内の単位第1記号A1の個数をカウントした結果に追加して、追加した個数を積算して通過記号数を算出する。
【0066】
ここで、各画像Dに含まれる単位第1記号A1の個数を単純に積算していったのでは、複数の画像Dについて同一の単位第1記号A1が重複してカウントされることから、通過記号数が適切に求められないおそれがある。そこで、現在位置・動作特定部114は、複数の画像Dに含まれる同一の単位第1記号A1を特定し、重複してカウントされた単位第1記号A1の数が通過記号数に含まれないようにする。また、現在位置・動作特定部114は、基準記号を単位第1記号A1に決定した最新の画像Dにおいて、基準記号よりも進行方向前側に位置する単位第1記号A1の数を前記積算値から引いた値を、通過記号数とする。これにより、前記の通過記号数が精度よく算出される。
【0067】
本実施形態では、複数の画像Dに含まれる同一の単位第1記号A1を特定するために、所定時間として、隣接する第1記号Aどうしの離間距離を自走車両10が進む時間の最大値よりも短い時間が設定されて、現在位置・動作特定部114が、カメラ30による撮影された画像Dのうちこの所定時間毎に撮影された画像Dを用いて単位第1記号A1の個数をカウントするようになっている。また、カメラ30の画角が、走行路テープ200のうち、第1記号Aとこれに隣接する1つの隙間Cとを含む領域の全体を少なくとも撮影できるように設定されて、各画像Dに含まれる隙間Cの位置に基づいて、現在位置・動作特定部114が、複数の画像Dに含まれる同一の単位第1記号A1を特定できるようになっている。
【0068】
このようにして、現在位置・動作特定部114は、第2記号Bに基づいて、および、第2記号Bと単位第1記号A1の個数である通過記号数とに基づいて、自走車両10の現在位置を特定する。
【0069】
また、現在位置・動作特定部114は、特定した自走車両10の現在位置の情報から、自走車両10の動作内容を特定する。具体的には、前記マップには、各位置において自走車両10が実施すべき動作の内容であって、前進、停止、旋回等の自走車両10の動作が関連づけて記憶されており、現在位置・動作特定部114は、特定した現在位置に基づいてその位置で実施すべき自走車両10の動作を特定する。なお、旋回動作については、旋回方向および旋回角度も予め設定されてマップに記憶されており、現在位置・動作特定部114は、旋回方向および旋回角度も特定する。
【0070】
自走車両10の走行ラインL、進行方向および動作内容が特定されると、走行動作制御部110は、これらの特定された内容に則して自走車両10が移動あるいは停止するように、車輪回転モータ18に指令を出す。
【0071】
具体的には、動作内容が「前進」の場合、走行動作制御部110は、自走車両10が進行方向特定部113で特定された進行方向を向くように(特定された進行方向と車両前後方向の前方とが一致するように)車輪回転モータ18を制御する。つまり、車輪14が前記の進行方向と一致していない場合は、走行動作制御部110は、2つの駆動輪14の回転速度が異なるように各車輪回転モータ18に指令を出して、車両本体部12および自走車両10を旋回させる。また、走行動作制御部110は、走行ライン特定部112により特定された走行ラインLに沿って自走車両10が移動するように、各車輪回転モータ18によって駆動輪14を回転させる。
【0072】
また、動作内容が「停止」の場合、走行動作制御部110は、車輪回転モータ18の駆動を停止させる。なお、「停止」動作の解除は、自走車両10(車輪回転モータ18)の停止時間や、他の装置から制御装置100への停止解除信号の入力等に基づいて実施される。また、動作内容が「旋回」の場合、走行動作制御部110は、前記マップから抽出した旋回方向に前記マップから抽出した旋回角度分だけ自走車両10が旋回するように、各車輪回転モータ18を駆動する。
【0073】
(走行路テープの構成)
本実施形態では、走行路テープ200は、第1記号Aが繰り返し表示された第1テープ210と、1つの第2記号A2がそれぞれ表示された複数の第2テープ220とで構成されている。そして、第1テープ210の隙間Cの一部に第2テープ220が張り付けられることで、走行路テープ200が形成されている。
【0074】
ここで、第1テープ210に予め第2テープ220を張り付けて第1記号Aと第2記号Bとが表示された走行路テープ200を予め準備して、これを床面Eに配置することもできるが、本実施形態では、次のようにして走行路テープ200を床面Eに施工する。
【0075】
まず、
図10に示すように、第1テープ210を床面Eに配置する。例えば、第1テープ210を接着剤を利用して床面Eに張り付ける。このとき、自走車両10の走行経路に沿うように第1テープ210を配置する。
【0076】
次に、床面Eに配置された第1テープ210の隙間Cのうちの予め設定された複数の隙間Cに、
図10の実線から破線のように、第2テープ220をそれぞれ張り付けていく。例えば、現在位置をより精度よく特定することが必要な場所に存在する隙間Cに第2テープ220を張り付けていく。
【0077】
このようにして、本実施形態では、第1テープ210が床面Eに配置された後に、第2テープ220が第1テープ210に張り付けられることで、走行路テープ200が床面Eに施工される。
【0078】
(作用等)
以上のように、本実施形態では、カメラ30により撮影された画像から走行路テープ200に表示された記号が抽出されて、この抽出された記号に基づいて自走車両10の現在位置と走行ラインLが特定されるようになっており、記号が表示されただけの比較的安価に入手可能な走行路テープ200を用いて自走車両10の現在位置と走行ラインLとが特定できる。そのため、自走車両10の現在位置と走行ラインLとを特定するために、着磁されたテープを用いる場合に比べてコストを大幅に削減できる。
【0079】
しかも、走行路テープ200として、複数の単位第1記号A1で構成された互いに同じ記号からなる第1記号Aが等間隔に表示され、これら第1記号Aの間の隙間Cの一部に互いに異なる第2記号A2が表示されたものが用いられる。そして、抽出された第2記号A2と単位第1記号A1の個数とによって自走車両10の現在位置が特定されるようになっている。従って、表示されるすべての記号が現在位置に対応して互いに異なるように構成されたテープを用いる場合に比べて走行路テープ200にかかるコストをさらに低減でき、より確実に安価な自動搬送装置を提供できる。
【0080】
また、本実施形態では、1つの第1記号Aに含まれる複数の単位第1記号A1にそれぞれ互いに異なる整数が表示されて、これら単位第1記号A1どうしが互いに異なる種類の記号とされている。そして、単位第1記号A1に表示された整数、つまり、単位第1記号A1の種類に基づいて、自走車両10の現在位置の特定に用いる単位第1記号A1の個数が補正されるようになっている。そのため、前記のように、一部の単位第1記号A1が適切に抽出されない場合でも、前記個数を適切に算出でき、自走車両10の現在位置を精度よく特定できる。
【0081】
また、本実施形態では、単位第1記号A1が走行路テープ200の長手方向について非対称となる形状を呈し、単位第1記号A1の向きから自走車両10の進行方向が特定されるようになっており、単位第1記号A1に基づいて、自走車両10の現在位置に加えて進行方向も特定される。従って、自走車両10の進行方向を特定するために別途タグ等を設ける必要がなく、簡単な構成で自走車両10の進行方向の特定ひいては自走車両10の適切な方向への移動を実現できる。
【0082】
また、本実施形態では、第2記号Bが、16進数で表された数値を示す4桁の英数字で構成された基本記号B11と、基本記号B11が表す数値の最下位の値と一致する数値を示す付加記号B12とで構成されている。そして、4桁の英数字で構成された記号を含み、かつ、当該英数字が表す数値の最下位の値と一致する数を含む記号のみが、第2記号Bとして抽出される。そのため、第2記号Bの誤検出を抑制でき、走行ラインLおよび自走車両10の現在位置をより精度よく特定できる。
【0083】
また、本実施形態では、走行路テープ200として、複数の第1記号Aが表示された第1テープ210と、第1テープ210のうちの少なくとも一部の隣接する第1記号Aどうしの間の隙間Cにそれぞれ張り付けられて第2記号Bの1つがそれぞれ表示された複数の第2テープ220とで構成されている。そのため、第1記号Aが繰り返し表示された第1テープ210と複数の第2テープ220とを準備して、第1テープ210に対して必要に応じて第2テープ220を張り付けることで、前記のような自走車両10の走行ラインLおよび現在位置を特定可能な走行路テープ200を実現できる。従って、走行路テープ200を容易に且つ安価に準備できる。
【0084】
特に、本実施形態では、第1テープ210を床面Eに配置した後、第1テープ210のうちの少なくとも一部の隙間C(すなわち隣接する第1記号Aどうしの間)に、前記第2記号が表示された第2テープ220を張り付けることで、走行路テープ200を床面Eに施工している。そのため、走行ラインLのうち第2記号Bの配置が必要な個所に、容易に且つ確実に第2テープ220を張り付けて第2記号Bを配置できる。
【0085】
(変形例)
前記実施形態では、第2記号Bとして、4つの英数字であって数値を16進数で表したものを用いた場合を説明したが、第2記号Bとして利用可能な記号はこれに限らない。例えば、第2記号Bとして、2進数や10進法等で表された数値が用いられてもよい。また、第2記号Bとして、1次元あるいは2次元のバーコードが用いられてもよい。なお、第2記号Bとしてバーコードを用いた場合は、第2記号Bに含まれる情報の一つに現在位置を含め、制御装置100にバーコードを読み取るソフトウエアを組み込んで、カメラ30により撮影された画像から第2記号Bに含まれる情報の読み取りを行うようにすればよい。
【0086】
また、単位第1記号A1の具体的な構成は前記に限らない。例えば、単位第1記号A1の枠図形A11として矢印からなる図形を用いてもよい。また、前記実施形態では、枠図形A11の内側に表示する整数を互いに異なる整数とすることで、各単位第1記号A1を異なる種類の記号とした場合を説明したが、単位第1記号A1の種類を異ならせるための構成はこれに限らない。
【0087】
また、各単位第1記号A1を、互い同じ記号(同じ種類の記号)で構成してもよい。ただし、1つの第1記号Aに含まれる各単位第1記号A1の種類を異ならせれば、前記のように、この種類の違いを利用して自走車両10の現在位置を精度よく特定できる。
【0088】
また、制御装置100を自走車両10とは別に設けて、自走車両10と制御装置100とを無線等で通信させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 自動搬送装置
10 自走車両
12 車両本体部
18 車輪回転モータ(駆動部)
30 カメラ
100 制御装置
110 走行動作制御部(走行制御部)
111 記号抽出部
112 走行ライン特定部
113 進行方向特定部
114 現在位置・動作特定部(車両位置特定部)
200 走行路テープ(テープ)
A 第1記号
A1 単位第1記号
B 第2記号
L 走行ライン