(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】スラリ回収装置
(51)【国際特許分類】
B04C 5/04 20060101AFI20220314BHJP
B04C 5/08 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
B04C5/04
B04C5/08
(21)【出願番号】P 2020155628
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000179328
【氏名又は名称】リックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】星野 高明
(72)【発明者】
【氏名】森光 孝典
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 賢哲
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-210455(JP,A)
【文献】特開2004-321896(JP,A)
【文献】特開昭50-050765(JP,A)
【文献】特開2000-288426(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102963941(CN,A)
【文献】特開2009-090268(JP,A)
【文献】特表2015-506837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 45/12
B04C 5/00-5/30
F04B 39/16
B03B 5/28
D21D 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心が直立した状態に保持された筒状のチャンバと、
前記チャンバの上端開口部を閉塞する蓋体と、
前記チャンバの下方に設けられた漏斗状の回収部と、
前記チャンバの蓋体の中心を貫通し、下方部が前記チャンバ内に位置する状態に配設された排気経路と、
固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った状態で供給される気体流を導入するため前記蓋体を貫通し、下端開口部が前記チャンバ内に位置する状態で配設された給気経路と、を備え、
前記給気経路の下方に、前記給気経路を経由して前記チャンバ内へ供給される前記気体流を前記チャンバの軸心とねじれの位置関係をなす方向へ吹き出
して前記チャンバ及び前記回収部の内部に前記軸心の周りを螺旋状に回転する旋回流を発生させるエルボを設け
、
前記給気経路の下端開口部を形成する前記給気経路の周縁は、前記軸心と直交する仮想平面と一致する直交周縁部と、前記軸心と斜めに交差する仮想平面と一致する斜交周縁部とを有し、前記斜交周縁部を前記給気経路の下端開口部の周縁全体のうちの前記チャンバの内周面に近い方の半周部分に設け、前記直交周縁部を残りの半周部分に設け、
前記チャンバ内にて、前記チャンバの軸心とねじれの位置関係をなす方向へ液体を吹き出すスプレーを前記蓋体の下面側及び前記チャンバの周壁に設け、
前記蓋体の下面側に設けた前記スプレーは前記エルボの下端開口部の上方に配置され、前記下端開口部から吹き出す空気流が前記チャンバの内周面に衝突する領域の中心よりも前記旋回流の上流側に向かって液体を吹き出すことができ、
前記チャンバの周壁に設けた前記スプレーは、前記チャンバの内周面において前記回収部の内周面より上方であって前記スラリが付着する領域よりも前記旋回流の上流側に向かって液体を吹き出すことができ、
二つの前記スプレーは交互に運転することが可能であるスラリ回収装置。
【請求項2】
前記スラリに含まれる固体粒子の粒径が0.5μm以上、20μm以下であり、
前記スラリに含まれる固体粒子の質量濃度が5wt%以上、50wt%以下であり、
前記スラリに含まれる固体粒子の密度が3g/cm
3以上、20g/cm
3以下であり、
前記スラリの粘度が1mPa・S以上、1000mPa・S以下である、請求項
1記載のスラリ回収装置。
【請求項3】
前記エルボから吹き出す前記気体流の気温15℃(標準大気状態)における体積流量(m
3/S)を前記エルボの横断面積(m
2)で除して得られる気体流速度が5m/sec以上、50m/sec以下である請求項1
または2記載のスラリ回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った状態で供給される気体流からスラリを分離して回収するスラリ回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体粒子を含む液体を気体流によって加速して流動状態の微小液滴とし、この微小液滴を衝突させることにより固体粒子を微細粒子に微粒化する装置として、例えば、特許文献1に記載された「微粒化装置」などがある。特許文献1に記載された「微粒化装置」においては、衝突面への衝突により微粒化が行われた後の微小液滴をスラリとして回収する手段として、特許文献1中の
図11並びに
図12などに記載された回収構造が使用されていたが、回収工程におけるスラリ消失量の低減並びにスラリ回収率の向上を図るため、近年は、
図5に示すようなスラリ回収装置101が使用されている。
【0003】
図5に示すスラリ回収装置101は、微粒化装置100より、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った状態で供給される気体流(空気流)からスラリを回収するために使用される。スラリ回収装置101は、下方に漏斗状の回収部102を有する円筒状のチャンバ103と、チャンバ103の上端開口部を覆うように配置された隔壁104b及び蓋体104aと、蓋体104aを貫通し、下端開口部105aが隔壁104bより下方のチャンバ103内に位置する状態で配設された給気管105と、給気管105の下端開口部105aの真下に配置された上ホッパー106及び下ホッパー107と、チャンバ103内において回収部102に向かって液体を噴出するスプレー108などを備えている。
【0004】
液体供給配管110を経由して供給される固体粒子を含む液体は、気体供給配管109を経由して供給される気体流によって加速され流動状態の微小液滴となって微細化処理部111に送り込まれ、微細化処理部111において微小液滴を衝突させることにより固体粒子は微細粒子に微粒化され、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った気体流となって給気管105を経由してスラリ回収装置101へ供給される。
【0005】
スラリ回収装置101へ供給された前記気体流は、上ホッパー106及び下ホッパー107を通過して回収部102へ流下する際に圧力損失によって減速され、気体流に含まれる微小液滴(固体粒子を含む液体)は回収部102の内周面102aに落下してスラリ状態となり、スプレー108から吹き出す液体と共に内周面102aに沿って流下していき、回収管112を経由して所定の回収容器(図示せず)に回収される。上ホッパー106及び下ホッパー107を通過した後の気体流は回収部102の内周面102aに当接して上昇し、隔壁104bの貫通部104cを通過し、排気ダクト113を経由して所定の排気ユニット(図示せず)へ送給される。
【0006】
一方、分散粉体を含んだ気体流から分散粉体を連続して捕集可能な装置として、従来、サイクロン装置が知られているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献2に記載された「サイクロン装置」などがある。
【0007】
特許文献2に記載された「サイクロン装置」は、ほぼ直立円筒形のサイクロン胴体部と、分散粉体を含んだ空気流をサイクロン胴体部の内壁面に沿って水平方向に吹き込むために、そのサイクロン胴体部の一部を外周接線方向に延ばして設けられた粉体導入部と、サイクロン胴体部内の空気を上方向に排気するためにサイクロン胴体部の上部を覆う天部の中心部を貫通して設けられた排気部と、粉体導入部から45度~180度の位置でサイクロン胴体部の接線方向に2次空気を導入する2次空気導入部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4447042号公報
【文献】特許第4422972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5に示すスラリ回収装置101は、上ホッパー106、下ホッパー107並びに隔壁104bの部分の部品点数が多く構造も複雑であるため、給気管105を経由してスラリ回収装置101へ供給された気体流に含まれるスラリがこれらの部品に多量に付着し、回収管112を経由して回収されるスラリの回収率を低下させる要因となっている。
【0010】
また、
図5に示すスラリ回収装置101は構造が複雑であることに起因して、スプレー108から噴出する液体が、チャンバ103及び回収部102の内部全体に隈なく届かないことがあるので、回収部102の内周面102aなどに付着したスラリ成分を残さず洗浄することができない。
【0011】
さらに、
図5に示すスラリ回収装置101においては、スプレー108から真下に向かって液体が吹き出すので、チャンバ103内を流動する気体流に含まれる微小液滴が巻き上がってチャンバ103内の各種部材の表面に付着したり、巻き上がった微小液滴が排気と共にチャンバ103と連通する排気ダクト(図示せず)を経由して排出されたりして、スラリの消失量の増大を招いている。
【0012】
一方、特許文献2に記載された「サイクロン装置」は、分散粉体を含んだ気体流から分散粉体を回収する技術分野においては好適に使用することができるが、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った状態で供給される気体流からスラリを分離して回収する技術分野には不向きである。
【0013】
また、特許文献2に記載された「サイクロン装置」においては、分散粉体を含んだ空気流をサイクロン胴体部の内壁面に沿って水平方向に吹き込むための粉体導入部が、サイクロン胴体部の一部を外周接線方向に延ばして設けられているので、装置全体の大型化を招き易い。
【0014】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、比較的簡素な構造であって、装置の大型化を回避可能であり、スラリ消失量を低減すること(スラリ回収率を向上させること)ができるスラリ回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るスラリ回収装置は、
軸心が直立した状態に保持された筒状のチャンバと、
前記チャンバの上端開口部を閉塞する蓋体と、
前記チャンバの下方に設けられた漏斗状の回収部と、
前記チャンバの蓋体の中心を貫通し、下方部が前記チャンバ内に位置する状態に配設された排気経路と、
固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った状態で供給される気体流を導入するため前記蓋体を貫通し、下端開口部が前記チャンバ内に位置する状態で配設された給気経路と、を備え、
前記給気経路の下方に、前記給気経路を経由して前記チャンバ内へ供給される前記気体流を前記チャンバの軸心とねじれの位置関係をなす方向へ吹き出して前記チャンバ及び前記回収部の内部に前記軸心の周りを螺旋状に回転する旋回流を発生させるエルボを設け、
前記給気経路の下端開口部を形成する前記給気経路の周縁は、前記軸心と直交する仮想平面と一致する直交周縁部と、前記軸心と斜めに交差する仮想平面と一致する斜交周縁部とを有し、前記斜交周縁部を前記給気経路の下端開口部の周縁全体のうちの前記チャンバの内周面に近い方の半周部分に設け、前記直交周縁部を残りの半周部分に設け、
前記チャンバ内にて、前記チャンバの軸心とねじれの位置関係をなす方向へ液体を吹き出すスプレーを前記蓋体の下面側及び前記チャンバの周壁に設け、
前記蓋体の下面側に設けた前記スプレーは前記エルボの下端開口部の上方に配置され、前記下端開口部から吹き出す空気流が前記チャンバの内周面に衝突する領域の中心よりも前記旋回流の上流側に向かって液体を吹き出すことができ、
前記チャンバの周壁に設けた前記スプレーは、前記チャンバの内周面において前記回収部の内周面より上方であって前記スラリが付着する領域よりも前記旋回流の上流側に向かって液体を吹き出すことができ、
二つの前記スプレーは交互に運転することが可能であることを特徴する。
ここで、前記ねじれの位置関係とは、2本の直線が平行をなさず、且つ、交わらない位置関係にあることをいう。
【0016】
前記スラリ回収装置においては、前記チャンバ内にて、前記チャンバの軸心とねじれの位置関係をなす方向へ液体を吹き出すスプレーを前記蓋体の下面側及び前記チャンバの周壁に設けている。
【0017】
前記スラリ回収装置においては、
前記スラリに含まれる固体粒子の粒径が0.5μm以上、20μm以下であり、
前記スラリに含まれる固体粒子の質量濃度が5wt%以上、50wt%以下であり、
前記スラリに含まれる固体粒子の密度が3g/cm3以上、20g/cm3以下であり、
前記スラリの粘度が1mPa・S以上、1000mPa・S以下であることが望ましい。
【0018】
前記スラリ回収装置においては、前記エルボから吹き出す前記気体流の気温15℃(標準大気状態)における体積流量(m3/S)を前記エルボの横断面積(m2)で除して得られる気体流速度が5m/sec以上、50m/sec以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、比較的簡素な構造であって、装置の大型化を回避可能であり、スラリ消失量を低減すること(スラリ回収率を向上させること)ができるスラリ回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態であるスラリ回収装置を示す一部省略垂直断面図である。
【
図2】
図1に示すスラリ回収装置の一部省略拡大図である。
【
図3】
図1中のA-A線における一部省略水平断面図である。
【
図4】
図3中の矢線X方向から見た一部省略図である。
【
図5】従来の微粒化装置に使用されたスラリ回収装置を示す一部省略垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1~
図4に基づいて、本発明の実施形態であるスラリ回収装置10について説明する。
図1に示すように、スラリ回収装置10は、スラリ回収装置10の上方に配置された微粒化装置50より、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った状態で供給される気体流からスラリを回収するために使用される。
【0022】
図1~
図4に示すように、スラリ回収装置10は、チャンバ1、蓋体2、回収部3、排気経路4、給気経路5、エルボ5b、スプレー6,7などを備えている。チャンバ1は円筒形状をなし、その軸心1cが直立した状態に保持されている。チャンバ1の上端開口部1aは開閉可能な蓋体2で閉塞され、チャンバ1の下部には漏斗状の回収部3が着脱可能に取り付けられている。チャンバ1の下端開口部1bの内径と回収部3の上端開口部3aの内径は同等である。回収部3の内周面は下方に向かって連続的に縮径しており、回収部3の下端開口部3bは排液管8に接続されている。
【0023】
排気経路4は、チャンバ1の蓋体2の中心を貫通し、下方部4aがチャンバ1内に位置する状態で配設されている。排気経路4は円筒形状をなし、その軸心4cがチャンバ1の軸心1cと一致するように配置されている。排気経路4の上方部は、気体吸引機能を有する排気ユニット9に接続されている。
【0024】
給気経路5は、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った状態で供給される空気流Sをチャンバ1内へ導入するための円筒形状の部材である。給気経路5は、チャンバ1の蓋体2を貫通し、下端開口部5aがチャンバ1内に位置する状態で配設され、給気経路5の下方部にエルボ5bが設けられている。
図4に示すように、エルボ5bはL字状に湾曲しており、下端開口部5a寄りに位置する水平部分5hの軸心5cはチャンバ1の軸心1cとねじれの位置関係をなしているので、給気経路5を経由してチャンバ1内へ供給される気体流(空気流S)はチャンバ1の軸心1cとねじれの位置関係をなす方向(本実施形態においては水平方向)へ吹き出される。
【0025】
図3,
図4に示すように、給気経路5の下端開口部5aを形成する給気経路5の周縁は、軸心5cと直交する仮想平面と一致する直交周縁部5dと、軸心5cと斜めに交差する仮想平面と一致する斜交周縁部5eとを有している。斜交周縁部5eは、給気経路5の下端開口部の周縁全体のうちチャンバ1の内周面1dに近い方の半周部分に設けられ、直交周縁部5eは残りの半周部分に設けられている。
【0026】
図1~
図4に示すように、スラリ回収装置10においては、チャンバ1の蓋体2の下面側にスプレー6が設けられ、チャンバ1の周壁1wにスプレー7が設けられている。チャンバ1内において、スプレー6は、チャンバ1の軸心1cとねじれの位置関係をなす方向(チャンバ1の内周面1dに向かう方向6s)へ液体(例えば、水や溶剤など)を吹き出す機能を有している。スプレー7は、チャンバ1の軸心1cとねじれの位置関係をなす方向または軸心1cと平行をなす方向(回収部3の内周面3dに直行する方向7sを含む複数方向)へ液体を吹き出す機能を有している。スプレー6,7の液体吹出方向はそれぞれ変更可能である。
【0027】
スプレー6,7は同時に運転したり、交互に運転したりすることが可能であるが、本実施形態ではスプレー6,7を交互に運転する。スプレー6,7の運転間隔は3秒~20秒間隔であり、運転時間は1秒~2秒であるが、これに限定するものではない。
【0028】
図1に示すように、スラリ回収装置10においては、チャンバ1の内径1Dと高さ1Hの比率を1:1とし、排気経路4の内径4Dとチャンバ1の内径1Dとの比率を1:4とし、回収部3の内周面における円錐頂角3Vを70度としているが、これらの数値に限定するものではないので、スラリの種類や作業条件に応じて、チャンバ1の内径1Dと高さ1Hの比率は1:1~1:2の範囲、排気経路4の内径4Dとチャンバ1の内径1Dとの比率は1:3~1:8の範囲、回収部3の内周面における円錐頂角3Vは45度~120度の範囲で変更することができる。
【0029】
次に、
図1~
図4に基づいて、スラリ回収装置10の使い方、機能などについて説明する。
図1に示すように、排気ユニット9を作動させ、微粒化装置50において気体供給配管52を経由して気体流(空気流)を供給するとともに、液体供給配管51を経由して固体粒子を含む液体を供給すると、液体供給配管51を経由して供給される固体粒子を含む液体は、気体供給配管52を経由して供給される気体流によって加速され流動状態の微小液滴となって微細化処理部53に送り込まれる。
【0030】
微細化処理部53においては、送り込まれた微小液滴を衝突部材(図示せず)衝突させることにより固体粒子が微細粒子に微粒化され、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った空気流Sとなって気体流動空間54を経由してスラリ回収装置10の給気経路5へ供給される。
【0031】
図4に示すように、給気経路5へ供給された空気流Sは、エルボ5bによって進行方向が90度曲げられ、チャンバ1の軸心1cとねじれの位置関係をなす方向へ吹き出し、チャンバ1の内周面1dに衝突するので、
図2,
図3に示すように、チャンバ1及び回収部3の内部には軸心1cの周りを螺旋状に回転する旋回流Tが発生し、サイクロン効果が生じる。
【0032】
このサイクロン効果により、空気流Sに含まれている固体粒子を含む液体であるスラリは遠心力でチャンバ1の内周面1dに接近する方向へ移動して内周面1dに付着した後、重力により内周面1dに沿って回収部3の内周面3dに向かって下降し、内周面3dに到達した後は内周面3dに沿って下降して排液管8に流れ込み、所定の回収容器(図示せず)に回収される。
【0033】
また、サイクロン効果により、チャンバ1内の軸心1c近傍の旋回流Tはスラリの含有量が著しく低下した状態となった後、排気経路4の下端開口部4bから排気経路4内へ吸い込まれ、排気経路4を経由して排気ユニット9へ流入する。
【0034】
一方、
図1,
図2に示すように、スプレー6はエルボ5bの下端開口部5a(
図3,
図4参照)の上方に配置され、下端開口部5aから吹き出す空気流Sがチャンバ1の内周面1dに衝突する領域の中心よりも旋回流Tの上流側に向かって液体を吹き出すことができる。また、スプレー7は、チャンバ1の内周面1dにおいて回収部3の内周面3dより上方であってスラリが付着する領域よりも旋回流Tの上流側に向かって液体を吹き出すことができる。
【0035】
前述したように、スプレー6,7を、3秒~60秒の間隔で、1秒~2秒ずつ交互に運転させることにより、チャンバ1の内周面1d並びに回収部3の内周面3dに付着するスラリを速やかに排液管8に向かって流下させることができる。
【0036】
このように、スラリ回収装置10においては、チャンバ1内に旋回流Tを発生させることによりサイクロン効果が生じ、スラリ、液滴、固体粒子の大きな粒子が排気へ混入することを回避することができ、チャンバ1の内周面1d並びに回収部3の内周面3dへのスラリなどの付着を減らすことができるので、スラリ消失量を低減すること(スラリ回収率を向上させること)ができる。
【0037】
図1に示すスラリ回収装置10並びに
図5に示す従来のスラリ回収装置101を同一の条件で稼働させたところ、スラリ回収装置10においては、排気中に混入して消失する固体粒子及びスラリ回収装置10内に付着堆積するスラリが減少し、スラリ回収装置101に比べ、固体粒子を含むスラリの消失量を40%以上低減することができた。
【0038】
スラリ回収装置10は、従来のスラリ回収装置101よりも簡素な構造であるため、部品点数が低減され、製作コストを削減することができ、また、スラリ回収装置10を稼動させた後の洗浄時間も短縮され、メンテナンス性が格段に向上した。また、スラリ回収装置10はチャンバ1や回収部3の構造が簡素な形状であるため、チャンバ1の内周面1dの下方部分や回収部3の内周面3dなどに付着したスラリは、スプレー7から吹き出す液体によって簡単に洗い流され、効率良く回収することができる。
【0039】
前述したように、スラリ回収装置10においては、液体供給配管51を経由して供給される、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った状態の空気流Sに含まれるスラリを効率的に回収することができ、様々な種類、性状のスラリ回収作業に対応可能であるが、例えば、
スラリに含まれる固体粒子の粒径が0.5μm以上、20μm以下であり、
前記スラリに含まれる固体粒子の質量濃度が5wt%以上、50wt%以下であり、
前記スラリに含まれる固体粒子の密度が3g/cm3以上、20g/cm3以下であり、
前記スラリの粘度が1mPa・S以上、1000mPa・S以下であることが望ましい。
【0040】
また、給気経路5のエルボ5bから吹き出す空気流Sの速度についても任意に設定することができるが、例えば、エルボ5bから吹き出す空気流Sの気温15℃(標準大気状態)における体積流量(m3/S)を前記エルボの横断面積(m2)で除して得られる空気流速度が5m/sec以上、50m/sec以下であることが望ましい。
【0041】
なお、
図1~
図4に基づいて説明したスラリ回収装置10は、本発明に係るスラリ回収装置の一例を示すものであり、本発明に係るスラリ回収装置は、前述したスラリ回収装置10に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係るスラリ回収装置は、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った状態で供給される気体流からスラリを分離して回収する作業を必要とする様々な産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 チャンバ
1a,3a 上端開口部
1b,4b,5a 下端開口部
1c,4c,5c 軸心
1d,3d 内周面
1D チャンバの内径
1H チャンバの高さ
2 蓋体
3 回収部
3V 円錐頂角
4 排気経路
4a 下方部
4D 排気経路の内径
5 給気経路
5b エルボ
5d 直交周縁部
5e 斜交周縁部
5h 水平部分
6,7 スプレー
8 排液管
9 排気ユニット
10 スラリ回収装置
50 微粒化装置
51 液体供給配管
52 気体供給配管
53 微細化処理部
54 気体流動空間
S 空気流(気体流)
T 旋回流
【要約】
【課題】構造が簡素であって、装置の大型化を回避可能であり、スラリ消失量を低減すること(スラリ回収率を向上させること)ができるスラリ回収装置を提供する。
【解決手段】スラリ回収装置10は、軸心1cが直立状態に保持された円筒状のチャンバ1と、チャンバ1の上端開口部1aを閉塞する蓋体2と、チャンバ1の下部に設けられた漏斗状の回収部3と、チャンバ1の蓋体2の中心を貫通し、下方部4aがチャンバ1内に位置する状態に配設された排気経路4と、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った状態で供給される気体流を導入するため蓋体2を貫通し、下端開口部5aがチャンバ1内に位置する状態で配設された給気経路5と、を備え、給気経路5の下方部に、給気経路5を経由してチャンバ1内へ供給される気体流(空気流)をチャンバ1の軸心1cとねじれの位置関係をなす方向へ吹き出すエルボ5bを設けている。
【選択図】
図1