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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】顔面装着具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/00 20060101AFI20220314BHJP
   G02C 5/14 20060101ALI20220314BHJP
   G02C 1/00 20060101ALI20220314BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
A61F5/00 Z
G02C5/14
G02C1/00
A41D13/11 Z
A41D13/11 L
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020205426
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2021-01-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開者 田中和寿 公開場所 東京都港区芝5-7-1 公開日 2020年9月3日 他3件 [刊行物等] 公開者 松浦敦 公開ウェブアドレス https://www.youtube.com/watch?v=CNda61karx4 公開日 2020年12月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520488528
【氏名又は名称】田中 和寿
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】田中 和寿
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-073485(JP,A)
【文献】国際公開第2020/174636(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3050063(JP,U)
【文献】実開昭51-007056(JP,U)
【文献】実開昭57-112316(JP,U)
【文献】特開2004-267451(JP,A)
【文献】特開2015-232726(JP,A)
【文献】登録実用新案第3135320(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-7/16
A41D 13/11
A61F 5/00
A63B 69/00
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の視界内に、使用者の有効視野を遮ることなく、使用者の視線を誘導したい方向とは逆側の位置に前記使用者の姿勢の矯正を促す姿勢矯正部材と、
前記姿勢矯正部材と連結され、かつ使用者の顔面に装着される装着部材と、を備えている顔面装着具であって、
前記顔面装着具は、眼鏡であり、
前記姿勢矯正部材は、前記眼鏡のレンズを前記使用者の視線を誘導したい方向を複数の領域に分割する領域分割部材として機能し、前記レンズ上であって、前記使用者が前記レンズを通して正視する際に正面視で前記使用者の黒目に重複しない位置に設けられ
前記眼鏡のレンズは、前記レンズの一端の厚みが、他端の厚みよりも厚いプリズムレンズであり、
前記姿勢矯正部材は、前記プリズムレンズの厚みが厚い側に設けられている
顔面装着具。
【請求項2】
前記姿勢矯正部材は、前記レンズを、上下方向に分割するように設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の顔面装着具。
【請求項3】
前記姿勢矯正部材は、前記レンズの上下方向の中心の下側寄りに設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載の顔面装着具。
【請求項4】
前記姿勢矯正部材は、前記レンズを、左右方向に分割するように設けられる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の顔面装着具。
【請求項5】
前記姿勢矯正部材は、前記眼鏡のレンズに対して着脱自在に構成されている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の顔面装着具。
【請求項6】
前記眼鏡のレンズは、前記姿勢矯正部材を取り付けるための凹部を備え、
前記姿勢矯正部材は、前記凹部と嵌合する凸部を備え、
前記凹部の直径は1.5mm以下である
ことを特徴とする請求項5に記載の顔面装着具。
【請求項7】
前記姿勢矯正部材は、三角形である
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の顔面装着具。
【請求項8】
前記姿勢矯正部材は、円形である
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の顔面装着具。
【請求項9】
前記姿勢矯正部材は、前記眼鏡のリムの一端と他端とを接続する帯状の物体である
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の顔面装着具。
【請求項10】
前記姿勢矯正部材は、前記眼鏡のリム部分に対して上下方向又は左右方向で移動自在に接続されている
ことを特徴とする請求項に記載の顔面装着具。
【請求項11】
前記姿勢矯正部材の幅は、2~4mmである
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の顔面装着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔面装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばスポーツ等に用いられ、視覚情報を制限することで体の動きを矯正する顔面装着具が知られている。
このような顔面装着具として、下記特許文献1には、使用者の上下の視界を制限するとともに、中央部に水平に延びる基準線を設け、この基準線を目安にしてゴルフのスイングを行うことで、体の回動による中心軸のブレを防ぐブリンカー眼鏡が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-38668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のブリンカー眼鏡は、視界を制限することでボールに対する集中力を向上するとともに、基準線を設けることで、ゴルフクラブのヘッドの軌跡をイメージできるというものであり、使用者の無意識下での空間認識能力に働きかけるものではなかった。
【0005】
そこで本発明は、視覚情報に基づく無意識下での空間認識能力に働きかけることで、使用用者の姿勢や神経系統に好適な影響を与えることができる顔面装着具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る顔面装着具は、使用者の視界内に、使用者の有効視野を遮ることなく使用者の下側の周辺視野を遮る、または、使用者の視界を少なくとも上下方向で複数に分割することで、使用者の姿勢の矯正を促す姿勢矯正部材と、姿勢矯正部材と連結され、かつ使用者の顔面に装着される装着部材と、を備えている。
【0007】
上記顔面装着具において姿勢矯正部材は、使用者の眼の下側において、使用者の顔面と接触するとともに、前方に向けて張り出してもよい。
【0008】
上記顔面装着具において姿勢矯正部材は、使用者の左右の眼それぞれの周囲のうち、下側のみを覆うとともに、左右方向に延びる一対の遮蔽帯と、一対の遮蔽帯同士の間に配置され、使用者の鼻根部を覆う連結帯と、を備えてもよい。
【0009】
上記顔面装着具において遮蔽帯は、使用者の眼の下側において、上下方向の大きさが左右の位置により異なっており、使用者が装着した状態で、使用者の眼の下側に位置する部分のうち、正面を向いた状態において、黒目の真下に位置する真下部が、真下部と異なる部分よりも上下方向に大きく形成されてもよい。
【0010】
上記顔面装着具において装着部材は、使用者の後頭部、および左右の側頭部を一体に覆う帯状に形成されてもよい。
【0011】
上記顔面装着具において姿勢矯正部材は、使用者の鉛直視野のうち、下側の60°以上の範囲を遮ってもよい。
【0012】
上記顔面装着具において顔面装着具は、マスクであり、前記使用者の少なくとも口と鼻孔を覆うシート状部材を備え、前記装着部材は、前記使用者の耳にかける紐状の部材であり、前記装着部材は、前記シート状部材を介して前記姿勢矯正部材と接続され、前記シート状部材は、上端側に前記姿勢矯正部材を備え、前記姿勢矯正部材は、前記シート状部材の面垂直方向において、所定以上の高さを有することとしてもよい。
【0013】
上記顔面装着具において上記所定以上の高さは、10mm以上であることとしてもよい。
【0014】
上記顔面装着具において姿勢矯正部材は、前記シート状部材の面垂直方向において、前記所定の高さ以上であって、第2の所定の高さ未満の高さを有することとしてもよい。
【0015】
上記顔面装着具において上記第2の所定の高さは、16mmであることとしてもよい。
【0016】
上記顔面装着具において顔面装着具は、マスクであり、使用者の少なくとも口と鼻孔を覆うシート状部材を備え、シート状部材は所定以上の厚みを有し、シート状部材は、姿勢矯正部材として機能することとしてもよい。
【0017】
上記顔面装着具において所定以上の厚みは、10mm以上であることとしてもよい。
【0018】
上記顔面装着具において顔面装着具は、眼鏡であり、姿勢矯正部材は、眼鏡のフレームのリム部分を上下方向または左右方向で、複数の領域に分割する領域分割部材として機能することとしてもよい。
【0019】
上記顔面装着具において姿勢矯正部材は、眼鏡のリムの左右を接続する帯状の物体であることとしてもよい。
【0020】
上記顔面装着具において姿勢矯正部材は、眼鏡のリムの上下方向の中心よりも下側寄りに設けられることとしてもよい。
【0021】
上記顔面装着具において姿勢矯正部材の上下方向の幅は、3~4mmであることとしてもよい。
【0022】
上記顔面装着具において、前記姿勢矯正部材は、前記リム部分に対して上下方向または左右方向で移動自在に接続されていることとしてもよい。
【0023】
上記顔面装着具において眼鏡のレンズは、レンズの下側の厚みが、上側の厚みよりも厚いプリズムレンズであることとしてもよい。
【0024】
上記顔面装着具においてプリズムレンズは、レンズの上側から下側に向けてその厚みが一様に厚くなるように形成されていることとしてもよい。
【0025】
上記顔面装着具において、姿勢矯正部材は、眼鏡のレンズに対して着脱自在に構成されていることとしてもよい。
【0026】
上記顔面装着具において、眼鏡のレンズは、姿勢矯正部材を取り付けるための凹部を備え、姿勢矯正部材は、凹部と嵌合する凸部を備え、凹部の直径は1.5mm以下であることとしてもよい。
【0027】
上記顔面装着具において、顔面装着具は、眼鏡であり、姿勢矯正部材は、眼鏡のアンダーリムであり、アンダーリムは、顔面装着具を使用する使用者の眼の下の5~10mmに位置するように構成されていることとしてもよい。
【0028】
上記顔面装着具において、顔面装着具は、眼鏡であり、姿勢矯正部材は、眼鏡のアンダーリムであり、眼鏡のレンズは、眼鏡の使用者が正面を見た場合に使用者の眼の位置と正対する場所で分けた上部分h1と下部分h2との比率をh1/h2で表現した場合に比率h1/h2が4/6よりも大きくなるように構成されていることとしてもよい。
【0029】
上記顔面装着具において、顔面装着具は、眼鏡であり、眼鏡は天地双方での使用が可能であり、姿勢矯正部材は、眼鏡のアッパーリムであって、天地逆に使用する場合にアンダーリムとなる部分であり、眼鏡のブリッジには、眼鏡を天地逆に使用する場合に鼻根に当接する位置に、滑り止めとなる緩衝材が設けられていることとしてもよい。
【0030】
また、本発明の一態様は、眼鏡のレンズに対して、使用者の視界内に、使用者の視界を少なくとも複数に分割することで、前記使用者の姿勢の矯正を促す姿勢矯正部材を取り付ける位置を特定する特定方法であって、前記眼鏡のレンズに、使用者が姿勢を矯正したい方向に対して姿勢の矯正を促す位置に、前記姿勢矯正部材を取り付ける取付ステップと、前記姿勢矯正部材をレンズに取り付けた眼鏡を着用した使用者の姿勢を計測する計測ステップと、前記計測ステップにおいて計測した使用者の姿勢に基づいて、前記姿勢矯正部材の取付位置を決定する決定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0031】
本発明の顔面装着具では、遮蔽部材と連結された装着部材を使用者の顔面に装着することで、姿勢矯正部材が、使用者の顔面に装着される。
そして、姿勢矯正部材は、少なくとも使用者の有効視野を遮ることなく、使用者の下側の周辺視野を遮る。または、姿勢矯正部材は、使用者の視界を二つの領域に分割する。これにより、使用者が無意識に地面認知を行うために、使用者の頭部は顎が引けた状態になることが期待できる。つまり、使用者の頭部の前突を抑制し、頚部の伸展を抑制することができる。このようにして、視覚情報に基づく無意識下での空間認識能力に働きかけることで、使用者の姿勢や神経系統に好適な影響を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1実施形態に係る顔面装着具の外観図である。
図2図1に示す顔面装着具の使用状態を示す正面図である。
図3図2に示す使用状態での使用者の右側面図である。
図4】(a)図3における使用者の眼と同じ位置での断面拡大図、(b)比較例として示す一般的な眼鏡における使用者の眼と同じ位置での断面拡大図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る顔面装着具の使用状態を示す正面図である。
図6】(a)図5に示す使用状態での使用者の右側面図、(b)(a)における使用者の眼と同じ位置での断面拡大図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る顔面装着具の使用状態を示す正面図である。
図8】(a)図7に示す使用状態での使用者の右側面図、(b)(a)における使用者の眼と同じ位置での断面拡大図である。
図9】(a)本発明の第4実施形態に係る顔面装着具の外観を示す外観図である。(b)顔面装着具の使用形態を示す概観図である。
図10】(a)顔面装着具の正面図である。(b)顔面装着具の背面図である。(c)顔面装着具の天面図である。
図11】(a)顔面装着具の使用形態を示す側面図である。(b)(a)における使用者の眼と同じ位置での断面拡大図である。
図12】顔面装着具の使用形態を示す天面図である。
図13】(a)本発明の第5実施形態に係る顔面装着具の概観を示す外観図である。(b)顔面装着具の使用形態を示す概観図である。
図14】(a)~(d)顔面装着具の側面断面図の一例である。
図15】第5実施形態に係る顔面装着具を使用者が使用している状態の右側面図である。
図16】(a)第6実施形態に係る顔面装着具の外観を示す概観図である。(b)顔面装着具の使用形態を示す概観図である。
図17】(a)顔面装着具の正面図である。(b)顔面装着具である眼鏡のリムが分割される態様を示す図である。
図18】(a)顔面装着具に領域分割部材を設けない場合の使用者の視線を示す図である。(b)顔面装着具に領域分割部材を設ける場合の使用者の視線を示す図である。
図19】(a)~(d)は顔面装着具を眼鏡とした場合のフレームの形状例と、領域分割部材との関係を示す図である。
図20】(a)は、従来の眼鏡を着用している使用者の視線を示す側面図である。(b)は、アンダーリムを従来よりも高い位置になるように構成した眼鏡を着用している使用者を示す側面図である。
図21】(a)は、従来の眼鏡を着用している使用者の視線を示す側面図である。(b)は、リム全体を従来よりも高い位置になるように構成した眼鏡を着用している使用者を示す側面図である。
図22】(a)は、従来の眼鏡を着用している使用者の視線を示す側面図である。(b)は、テンプルの形状を変更することでアンダーリムを従来よりも高い位置になるように構成した眼鏡を着用している使用者を示す側面図である。
図23】(a)、(b)は、第7実施形態に係る顔面装着具の外観を示す概観図である。(c)、(d)は、レンズ部分の断面図である。(e)は、レンズ部分の他の態様を示す断面図である。
図24】(a)は、領域分割部材の斜視図である。(b)は、領域分割部材の裏面側の斜視図である。(c)は、領域分割部材の正面図である。(d)は、領域分割部材の裏面図である。(e)は、領域分割部材の側面図である。
図25】リムと、遮蔽部材と、使用者の眼との位置関係を示す図である。
図26】領域分割部材の配置位置を決定する情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
図27】情報処理装置の処理例を示すフローチャートである。
図28】(a)、(b)は、領域分割部材の他の態様例を示す図である。
図29】(a)は、第8実施形態に係る顔面装着具の外観を示す概観図である。(b)は、顔面装着具の裏面図である。
図30】顔面装着具の構成例を示すブロック図である。
図31】顔面装着具の動作例を示すフローチャートである。
図32】領域分割部材の取付位置を決定する処理を示すフローチャートである。
図33】(a)は、領域分割部材のレンズへの取付位置を説明する図である。(b)使用者を上から見た図である。(c)は、使用者を上から見た図であって、身体を旋回させた状態を示す図である。(d)~(f)は、領域分割部材のレンズへの他の取付位置を説明する図である。
図34】領域分割部材の取付位置を決定する処理の他の例を示すフローチャートである。
図35】(a)、(b)領域分割部材の取付の他の例を示す図である。(c)、(d)領域分割部材とプリズムレンズの併用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る顔面装着具1について、図1図4を用いて説明する。
図1は第1実施形態に係る顔面装着具1の外観図である。図2は、顔面装着具1の使用状態を示す正面図である。図3は、顔面装着具1の使用者の右側面図である。
図4(a)は、図3における使用者の眼と同じ位置での断面拡大図、図4(b)は、比較例として示す一般的な眼鏡における使用者の眼と同じ位置での断面拡大図である。
【0034】
本発明の顔面装着具1は、視覚情報の一部を制限することで、使用者の身体に好適な影響を与える器具である。
図1に示すように、本実施形態に係る顔面装着具1は、使用者の顔面に装着される装着部材10と、装着部材10と連結され、使用者の視野の一部を遮る遮蔽部材20と、を備えている。遮蔽部材20は、使用者の視界を制限することで、使用者の姿勢を矯正するための姿勢矯正部材として機能する。顔面装着具1は、両目の上側を覆うことなく、下側のみを覆うゴーグルを模した形状を呈している。
装着部材10は、使用者の後頭部、および左右の側頭部を一体に覆う帯状に形成されている。装着部材10の材質には、例えば軟質のゴムバンドを採用することができる。
【0035】
遮蔽部材20は、硬質のゴム材料により形成されている。遮蔽部材20は全体が黒色を呈している。なお、遮蔽部材20は、硬質のゴム材料に代えて、例えば軟質のゴム材料や、エラストマ材料等により形成してもよい。遮蔽部材20は全体が黒色であることで、眼の近くでの遮蔽部材20からの反射を抑えることができる。
【0036】
図2に示すように、遮蔽部材20は、使用者が装着した状態で、使用者の左右の眼それぞれの周囲のうち、下側のみを覆う一対の遮蔽帯21と、一対の遮蔽帯21同士の間に配置された連結帯22と、を備えている。一対の連結帯22および遮蔽帯21は同一のゴム材料により一体に形成されている。
以下の説明では、顔面装着具1を装着した使用者を基準にして、顔面装着具1の前後方向、左右方向、および上下方向を定義する。
【0037】
図1に示すように、遮蔽帯21は、左右方向に延びるとともに、左右方向の中央部が前方におよび下方に向けて突き出した弧状を呈している。図1では、一対の遮蔽帯21は、互いに左右対称となる形状を呈している。なお、図1では、遮蔽帯21を左右対称としているが、目的に応じて左右非対称となっていてもよい。即ち、使用者の眼のうち、片側の眼の周辺視野を遮蔽するように構成してもよい。これは、例えば、使用者の身体において左右のバランスが崩れているのを矯正するような場合に使用することが考えられる。
図2に示すように、遮蔽帯21は、使用者の眼の下側において、上下方向の大きさが左右の位置により異なっている。遮蔽帯21は、使用者が装着した状態で、使用者の眼の下側に位置する部分のうち、正面を向いた状態において、黒目の真下に位置する真下部が、真下部と異なる部分よりも上下方向に大きく形成されている。言い換えれば、遮蔽帯21のうち、左右方向の中央部に位置する部分(真下部)が、真下部と異なる部分よりも上下方向に大きく形成されている。
【0038】
図3および図4に示すように、遮蔽部材20は、使用者の眼の下側において、使用者の顔面と接触するとともに、前方に向けて張り出している。本実施形態では、遮蔽帯21が、使用者の顔面に接触している。
図4に示すように、遮蔽帯21は、使用者の右方向から見た右側面視で、上下方向に向けて延びている。遮蔽帯21の下端部が、左右方向の全域にわたって使用者の顔面に接触している。遮蔽帯21は、上方に向かうに従い漸次、前方に向けて延びている。
【0039】
図1に示すように、一対の遮蔽帯21それぞれにおける左右方向の両外側の端部には、装着部材10が接続される接続部23がそれぞれ形成されている。接続部23は、遮蔽帯21と同一のゴム材料により、一体に形成されている。接続部23は、遮蔽帯21の左右方向の外端部から、上方に向けて延びている。
接続部23には、装着部材10が固定される固定孔24が形成されている。固定孔24は正面視で矩形状を呈している。
【0040】
連結帯22は、一対の遮蔽帯21同士の左右方向の間に配置され、顔面装着具1が使用者に装着された状態で、使用者の鼻根部を覆う。連結帯22は、一対の遮蔽帯21それぞれにおける左右方向の両内側の端部に接続され、一対の遮蔽帯21同士を連結している。本実施形態では、遮蔽帯21と連結帯22とは、同一のゴム材料により一体に形成されている。
連結帯22は、正面視で、下底が除かれた台形状を呈している。一対の脚の下端部が、遮蔽帯21の左右方向の内端部と、接続されている。
【0041】
図3に示すように、遮蔽部材20は、使用者の顔面に装着された状態において、少なくとも使用者の有効視野を遮ることなく、使用者の下側の周辺視野を遮る。本実施形態では、遮蔽帯21が使用者の下側の周辺視野を遮っている。
遮蔽部材20の遮蔽帯21は、使用者の鉛直視野のうち、下側の60°以上の範囲を遮っている。なお、遮蔽部材20が遮蔽する範囲は、使用者の鉛直視野のうち、下側の60°よりも内側であってもよい。また、遮蔽帯21の上下方向の位置を調整することにより、使用者の視野のうち、遮蔽帯21が遮る範囲は、任意に変更することができる。
【0042】
ここで、遮蔽部材20が使用者の視覚情報に与える影響について説明する。
図3に示すように、人の一般的な鉛直方向の有効視野角は、中心視A1に対して上側に約5°、下側に約5°となっている。一方、周辺視野角は、中心視A1に対して上側約60°、下側約70°となっている。これらの各視野角には個人差があり、前述の値はあくまで一般的な値である。
【0043】
そして、使用者が顔面装着具1を装着すると、使用者の視野のうち、下側の一定の範囲が遮られる。本明細書では、遮蔽部材20により遮られる使用者の下側視野のうち、中心視A1から、最も中心視A1に近い部分までの角度を、遮蔽基準角A2と呼ぶ。
本実施形態では、遮蔽基準角A2は60°となっている。すなわち、使用者の鉛直方向の視野のうち、下側の60°以上の範囲が遮蔽部材20により遮られる。この際、使用者の有効視野は遮られていない。
【0044】
そして、図4(a)に示すように、使用者の遮蔽帯21の下端部が、左右方向の全域にわたって使用者の顔面に接触していることで、使用者の鉛直視野のうち、60°よりも外側の部分は全て視界が遮られる。これにより、使用者が無意識のうちに地面の位置を判別しようとする地面認知を行うために、顎を引くとともに、眼球が上転運動をする。すなわち、使用者が顎を引きながら前方を見ようとすることで、顎を引いていない状態に比較して、相対的に上となる方向を見ようとすることになり、眼球が上転する。眼球が上転運動をすると、使用者の身体のうち、頭の位置は後ろに変化する。また、歩行時には、踵接地、および屈筋群の屈曲が促進される。これにより、使用者の姿勢は無意識下において安定した状態となる。
【0045】
さらに、眼球の上転運動することにより、舌が口蓋に接触しようと上方に向けて変位する。この位置に舌があるとき、人は無意識的に鼻呼吸を促進する為、副交感神経優位となる。
このようにして、視覚情報に基づく無意識下での空間認識能力に働きかけることで、使用者の姿勢や神経系統に好適な影響を与えることができる。
【0046】
一方、図4(b)に比較例として示すように、例えば一般的な眼鏡100のように、フレーム80と顔面との間に隙間がある場合には、この隙間からの視界が遮られることがなく、地面認知を行うことができる。このため、一般的な眼鏡100では、顎を無意識に引くことや、眼球が上転運動をすることはない。
【0047】
ここで、最適な遮蔽基準角A2について説明する。遮蔽基準角A2は個人や目的によって調整することができる。遮蔽基準角A2は、有効視野を遮らない範囲であることが求められる。
例えば、遮蔽基準角A2を小さくする(遮蔽する範囲を大きくする)ことで、視野を狭くして集中力を高めることができる。また例えば、遮蔽基準角A2を大きく(遮蔽する範囲を小さくする)することで、視野の一部を遮ることによる緊張状態を緩和することができる。
遮蔽基準角A2の調整は、前述したように、遮蔽帯21の上下方向の位置を調整することにより行うことができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る顔面装着具1によれば、遮蔽部材20と連結された装着部材10を使用者の顔面に装着することで、遮蔽部材20が使用者の顔面に装着される。
そして、遮蔽部材20は、少なくとも使用者の有効視野を遮ることなく、使用者の下側の周辺視野を遮る。これにより、使用者が無意識に地面認知を行うために、使用者の頭部は顎が引けた状態になるとともに、眼球の上転運動が促進される。
【0049】
眼球が上転運動をすると、使用者の身体のうち、脊柱は伸展し、頚部は屈曲する。また、歩行時には、踵接地、および屈筋群の屈曲が促進される。これにより、使用者の姿勢は無意識下において安定した状態となる。
さらに、頭が前方に向けて頸部が傾く状態であるフォワードヘッドが抑制されることで、頭頸部の前方頭位を抑制し、頸部への負担を減らすことが可能になる。
【0050】
例えば、頭が中立位置から10cm前方に位置するように頸部が傾くと、首への負担は約10kg増加する。この為、頸部のニュートラリティー(適切な姿勢)が確保できなくなってしまい、首の痛みや肩こり、頚動脈の流れが阻害され脳への血流量が低下する。
これにより、持続的な血液循環の機能が維持出来ず、眠気や疲労を感じやすくなる。フォワードヘッドは、呼吸機能への影響も大きい為、これを解消することは、目の機能維持、頸部の機能維持のためにも非常に重要である。
【0051】
また、現代病を予防するために、顔面装着具1による空間認知療法を使用する効果が期待できる。眼球は下方回旋、もしくはフォワードヘッドやうつ伏せといった眼球が下方に向いている場合、眼軸の延長につながる眼圧の上昇を引き起こす。
顔面装着具1を使用すれば、眼球の上転機能をサポートして、眼軸の延長を作らない、すなわち近視になりにくい状況をつくることができる。
【0052】
昨今、日常生活に広く普及したデジタルデバイスの影響もあり、近くで物を見る環境が多く、眼球はもっぱら下転運動をする傾向にある。
眼球の下方回旋は、咬合動作、特に上顎の適正な発達を阻害する可能性が発表されている為、顔面装着具1を使用することで、眼球の上転を促進し適正な上顎の発達を促進させることが期待できる。
【0053】
また一般に、デジタルデバイスを見ている姿勢の多くは眼球下転である。眼球下転とは、眼窩内で眼球が下方に向けて回転する動作を指す。眼球下転時には眼窩後方に若干のスペースが生まれる。このスペースが生まれた状態で、デジタルデバイスからの刺激により眼圧が上昇すると眼軸が延長し、近視となる眼球に変化する可能性がある。
【0054】
また、一般に人体において、6mより近いものを見る場合には、水晶体による調節作用が働き、水晶体の前後軸が長くなる。水晶体の前後軸とは、水晶体の最も厚い中心部分の前後方向の厚みを指す。
この為、眼球を充たす体液である房水の流れを阻害し眼圧が上昇する。さらに、眼球の下転はフォワードヘッドの原因でもあり、この姿勢が続くと内頚動脈への負担から眼球への血流が阻害され、血流量の低下+眼圧の上昇といった最悪の組み合わせが、緑内障につながり、進行すると失明につながる問題に発展する。
このような問題に対して、眼球を上転運動させ、頭頸部の前方頭位を抑制する顔面装着具1に効果が期待される。
【0055】
また、スマートフォンやパソコンによるデスクワークといった作業下では眼圧上昇が懸念される。顔面装着具1を処方することにより、空間の水平方向の基準線を上げることができる。これにより、眼球の下方回旋ならびに眼球自体が下方に向くことによって引き起こされる眼圧の上昇を抑制し、緑内障などの眼病から目の機能を守ることが期待できる。
【0056】
また、顔面装着具1を使用者が装着して眼球が上転すると、使用者の舌は上側に寄ることとなる。舌と眼の動きは関係性があり、この場合、眼を上転させることで、無意識下で舌は口腔内で口蓋に触れやすくなる。
これにより、口の中における舌のポジションが適正な位置となり、口呼吸から鼻呼吸に変化させることのアプローチに繋がる。これにより、体幹・下肢筋力の安定化、フォワードヘッドの改善、および低舌位における無呼吸症候群の解消が期待できる。
【0057】
また、顔面装着具1を使い、無意識化において自律神経を調整することができる。
現代人は、主に眼球下転となる眼の使い方をすることが多い。眼球下転の動作は、滑車神経と動眼神経に支配されている。このうち、より優位性の高い第四脳神経の滑車神経は、交感神経に支配されているので、眼球下転時には交感神経は常に過活動となっている。
【0058】
これに対して、顔面装着具1は眼球上転をサポートする。眼球上転の動作は第三脳神経の動眼神経に支配されており、動眼神経は副交感神経支配である。このため、眼球上転の動作を行うことで、副交感神経の活動を増やす効果を期待することができる。
【0059】
また、前述したように、顔面装着具1を使い、舌ポジションの適正化を無意識化にてサポートすることができる。すなわち、眼球上転の動作により、舌が口蓋に接触しようと上方に向けて変位する。この位置に舌があるとき、人は無意識的に鼻呼吸を促進する為、副交感神経優位となる。
また、脳の前頭葉は、口呼吸では、鼻呼吸よりも酸素を消費しやすく、活動が休まらない。逆に、鼻呼吸を行うと、呼吸回数を低下させることができ、副交感神経優位の効果が更に期待できる。
【0060】
また、顔面装着具1を使い屈筋群の屈曲を優位にする姿勢は、後縦隔の緊張を抑制する効果が期待できる。後縦隔は交感神経節の集まりである為、後縦隔の緊張を抑制することで、呼吸時の吸気を促進する効果が期待できる。
前述した眼球上転、舌ポジションの変化、後縦隔の緊張抑制という3つの作用により、現代人の特徴である、常に交感神経優位の状態から、副交感神経優位の状態を作ることで、自律神経のバランス調整に非常に大きな効果が期待できる。
このようにして、視覚情報に基づく無意識下での空間認識能力に働きかけることで、使用用者の姿勢や神経系統に好適な影響を与えることができる。
【0061】
また、遮蔽部材20が、使用者の眼の下側において、使用者の顔面と接触するとともに、前方に向けて張り出している。
このため、遮蔽基準角A2よりも外側の領域を確実に遮ることが可能になり、使用者に、顎を無意識に引く動作、および眼球の上転運動を確実に行わせることができる。
【0062】
また、遮蔽部材20の遮蔽帯21が、使用者の左右の眼それぞれの周囲のうち、下側のみを覆っている。このため、遮蔽部材20の上下方向の位置を調整したときに、例えば一般的な眼鏡のように、使用者の眼の上側に位置する部材が、有効視野を遮ることを抑えることができる。
【0063】
また、遮蔽帯21のうち、使用者の眼の下側に位置する部分のうち、正面を向いた状態において、黒目の真下に位置する真下部が、真下部と異なる部分よりも上下方向に大きく形成されているので、遮蔽帯21により視野の一部を遮る効果を確実に奏功することができる。
【0064】
また、装着部材10が、使用者の後頭部、および左右の側頭部を一体に覆う帯状に形成されているので、顔面装着具1を軽量かつ簡易な構成としながら、確実に使用者の顔面に装着することができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る顔面装着具1Bについて、図5および図6を用いて説明する。図5は、第2実施形態に係る顔面装着具1Bの使用状態を示す正面図である。図6(a)は、図5に示す使用状態での使用者の右側面図、図6(b)は、図6(a)における使用者の眼と同じ位置での断面拡大図である。
第2実施形態では、顔面装着具1Bが、使用者の口および鼻を覆うマスク状に形成されている。
【0066】
図5および図6に示すように、顔面装着具1Bの装着部材30は、マスクの形状をなしている。すなわち、装着部材30は使用者の口および鼻を一体に覆うマスク部31と、マスク部31の左右方向の両端部に設けられた一対のゴム紐部32と、により構成されている。
マスク部31は使用状態において、2辺が上下方向に延びるとともに、残り2辺が左右方向に延びる矩形状を呈している。マスク部31の材質は例えばガーゼであってもよいし、不織布等であってもよい。なお、マスク部31の一部に開口部が形成され、口や鼻を覆っていなくてもよい。
【0067】
そして、顔面装着具1Bの遮蔽部材40は、マスク部31の上端縁に接続され、マスク部31の左右方向の全域に延びている。遮蔽部材40は、マスク部31と同一の材料により一体に形成されている。また、遮蔽部材40の内部にワイヤー等の補強部材を設けることで、遮蔽部材40の形状を保持しやすくしてもよい。遮蔽部材40は、使用者の視界を制限することで、使用者の姿勢を矯正するための姿勢矯正部材として機能する。
遮蔽部材40は、マスク部31の上端縁から上方に向けて延びている。遮蔽部材40の左右方向の大きさは、上方に向かうに従って、大きくなっている。
【0068】
図6(b)に示すように、遮蔽部材40は、使用者の眼の下側において、使用者の顔面と接触している。遮蔽部材40は、上方に向かうに従って、前方に向けて延びることで、前方に張り出している。
このような構成を採用すれば、顔面装着具1Bの着脱を容易にし、取扱性を向上することができる。
【0069】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る顔面装着具1Cについて、図7および図8を用いて説明する。図7は、第3実施形態に係る顔面装着具1Cの使用状態を示す正面図である。
図8(a)は、図7に示す使用状態での使用者の右側面図、図8(b)は、図8(a)における使用者の眼と同じ位置での断面拡大図である。
第3実施形態では、顔面装着具1Cが、使用者の顔面に貼付されるテープ状に形成されている。
【0070】
図7および図8に示すように、顔面装着具1Cにおける装着部材50は、テープ部材により構成されている。このようなテープ部材としては、関節や靭帯の固定に用いられるテーピングテープを採用することができる。なお、装着部材50として、テーピングテープと異なるテープを採用してもよい。
装着部材50は、使用者の顔面において、鼻梁にまたがるように、左右両方の眼の下に、左右方向に延びるように貼付される。
【0071】
図8に示すように、遮蔽部材60は、装着部材50の接着面に接着されている。遮蔽部材60には、例えばコットンやスポンジ等の軽量かつ軟質の部材を採用することができる。
遮蔽部材60は、左右方向に延びる接着部材のうち、両方の眼の下に位置する部分にのみ設けられている。なお、遮蔽部材60の左右方向の大きさは、任意に変更することができる。また、顔面装着具1Cは、遮蔽部材60を備えていなくてもよい。遮蔽部材60は、使用者の視界を制限することで、使用者の姿勢を矯正するための姿勢矯正部材として機能する。
このような構成を採用すれば、顔面装着具1Cを極めて簡易な構成とすることができる。
【0072】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る顔面装着具1Dについて、図9図12を用いて説明する。顔面装着具1Dは、第2実施形態に示した顔面装着具1Bと同様にマスクとしての態様という点において共通するが、遮蔽部材の態様が異なるという点において相違する。
【0073】
図9(a)は、顔面装着具1Dの概観を示す斜視図であり、図9(b)は、顔面装着具1Dの使用形態を示す外観図である。また、図10(a)~(c)は、それぞれ、顔面装着具1Dの正面図、背面図、天面図となる。また、図11(a)は、顔面装着具1Dの使用形態を示す側面図であり、図11(b)は、図11(a)における使用者の眼と同じ位置での断面拡大図である。そして、図12は、顔面装着具1Dの使用形態を示す天面図である。
【0074】
図9(a)、図10(a)~図10(c)に示すように、顔面装着具1Dは、少なくとも使用者の口及び鼻孔を覆うシート状のマスク部31と、マスク部31を使用者に装着させるための装着部材として機能するゴム紐部32と、遮蔽部材90を備える。遮蔽部材90は、マスク部31を介してゴム紐部32に接続される。マスク部31とゴム紐部32とは、一般に使用される使い捨てマスク等と同様であってよく、マスク部13は、ウィル対策のためのフィルタとして機能してもよい。
【0075】
遮蔽部材90は、図10(b)に示すように、マスク部31の裏面の上端部分に設けられる。遮蔽部材90は、図9(b)に示されるように、使用者の鼻根部分を中心に、左右方向に使用者の目尻よりもマスク部31の左右方向の端部に近い位置まで使用者に当接するように設けられている。遮蔽部材90は、クッション性の素材、例えば、ウレタン、天然ゴム(NR)ラテックス、ポリエチレン、合成ゴムなどにより実現することができるが、これらに限定するものではない。遮蔽部材90は、使用者の視界を制限することで、使用者の姿勢を矯正するための姿勢矯正部材として機能する。
【0076】
上記第1実施形態1~第3実施形態においても説明したように、遮蔽部材90は、使用者の下方向の一定範囲よりも下側の視界を遮蔽するために用いる。そのため、遮蔽部材90は、図10(c)に示すように、マスク部31の面垂直方向の長さについて所定以上の長さdを有する。即ち、遮蔽部材90は、十分な遮蔽効果を得るために、所定以上の長さ(厚み、高さともいえる)として、少なくとも5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましいが、この長さに限定するものではない。また、遮蔽部材90は、長さdが長すぎると一般の生活において支障を来す可能性があることから、一定の長さよりも短くあるとよく、例えば、25mm以下であればよく、好ましくは、15mm以下であるとよいがこの長さに限定するものではない。即ち、遮蔽部材90は、10mm~15mmの長さdを有する部材であってよい。これによって、図11(b)に示すように、遮蔽部材90がなかった場合の下方視野が、一点鎖線1002bで示される範囲まで得られるのに対して、遮蔽部材90があることによって、一点鎖線1002aで示される範囲まで制限される。
【0077】
遮蔽部材90は、上述したように、また、図9(b)、図12に示されるように、その左右方向の長さlが、使用者の左右の眼の目尻間の距離よりも長くなっていることが好ましい。元来、人間の眼は、左右それぞれの眼から得られた像を合成した映像を自身の視界の像として脳が認識する。これを、融像という。即ち、人間の脳は、自身の眼が認識したい箇所(焦点を当てた箇所)の像を生成し、認識したものとして、映像として知覚する。例えば、左右の眼のうちいずれか一方の眼を覆ったとしても脳の働きにより他方の眼が取得した映像に基づいて実際に見える映像を提供できることも融像と言えるし、人間の眼のまえに視界を完全には覆わない障害物を置いたとしても、その後ろに焦点を当てた場合に後方の空間を補って生成した光景を提供することができることも融像と言える。逆に言えばいずれの眼からも取得できていない情報は像として結ばせることができない。よって、一方の眼の遮蔽が十分になされない場合に、その一方の眼から得られた像によって使用者の下方向の像を補ってしまうことから、顔面装着具1Dによる効果を得られない可能性がある。そのため、遮蔽部材90は、使用者の双方の眼が、下方向の像を得られないように、少なくとも左右の目尻までの長さlを有することが望ましい。また、遮蔽部材90は、マスク部31の左右方向の端部と一致するまで延伸されていてよい。
【0078】
ここで、顔面装着具1Dによって下方周辺視野を遮ることにより得られる効果について説明する。使用者が、フォワードヘッドポジション(頭が頸よりも前側に位置する姿勢)による頸部前突姿勢を取りやすいパソコンやスマートフォンなどを使用する際に、下方周辺視野が制限された場合、使用者は無意識に行なう姿勢制御として、下の方が見られるように頸部前突状態を減らそうとする。即ち、一般的に顎を引いた姿勢をとることによってパソコンやスマートフォンの画面が見やすい姿勢を視線と取るようにすることができる。また、顎上がりの頸椎伸展姿勢による後頭下筋群の緊張は脳に繋がる動脈や神経の圧迫につながり、下方遮蔽により失われた視野を確保するために頸椎屈曲の姿勢を無意識に選択する。その結果、顔面装着具1Dにより自然と促される人体に対する姿勢変化は、頸椎アライメント異常による、頭痛、頚部痛、肩こり、腰痛などの軽減につながるとともに、眼球下転の癖を改善して眼球上転の動きを誘導することができる。その結果、マスク使用時に鼻呼吸がしやすい姿勢とすることができ、マスクを使用する際に起きやすいとされる口呼吸を改善することができ、マスク使用時の呼吸状態を改善することができる。また、一定以上の高さを有する遮蔽部材90がマスク部31と使用者との間にあることにより、通常のマスクよりも、マスク部31により使用者の間に形成される空間を大きくすることができ、使用者が呼吸をしやすくすることができるとともに、使用者がマスク部31を口に吸いこむ可能性を、通常のマスクよりも抑制することができる。
【0079】
図10(a)、図11(a)に示すように、顔面装着具1Dは、マスク部31の正面に固定部材91を備えてもよい。固定部材91は、マスク部31の上端部分を使用者の鼻を挟み込むことができる部材であり、使用者の鼻根部を挟みこむ。固定部材91は、使用者の鼻を挟み込む挟持部91aと、マスク部31を使用者に押さえつけるための付勢部91bとからなる。挟持部91aは、一例としてU字状に構成された弾性を有する部材であってよく、例えば、プラスチックにより実現されてよいがこれに限定するものではない。また、挟持部91aは、付勢部91bにより挟まれている。付勢部91b双方は、端部が挟持部91aに接続されていることにより挟持部91aが使用者の鼻を挟みこもうとする力によって、使用者に対してマスク部31を付勢、つまり、マスク部31を押さえつけることができる。よって、顔面装着具1Dの上端と、使用者との間にできる隙間を少なくすることができる。したがって、付勢部91bもマスク部31の左右方向の端部まで延伸されていることが望ましい。固定部材91は、クリップなどであってもよい。通常マスクを装着した際に、鼻梁の左右とマスクの間に隙間が生じやすく、例えば、使用者が眼鏡を着用している場合などにレンズを曇らせる要因となる。固定部材91があることによる顔面装着具1Dの使用者の顔面への吸着率を向上させることができる。また、固定部材91により、使用者の鼻根の左右を刺激することができ、これによって、使用者の鼻腔の拡張を促すことができ、鼻呼吸をしやすくすることができる。
【0080】
なお、本実施形態において、遮蔽部材90、固定部材91は、マスク部31とは個別の部材として形成されてよい。即ち、遮蔽部材90、固定部材91は、マスク部31に対して着脱自在に構成されてよく、個別の部材として提供されてよい。この場合に、遮蔽部材90、固定部材91は、マスク部31に取り付けるための取付部を有してもよい。この取付部は、例えば、両面テープやクリップ等により実現されてよい。遮蔽部材90や固定部材91を個別の部材とすることで、遮蔽部材90や固定部材91を市販のマスクに装着することで、本実施形態に示す顔面装着具1Dと同等の構成とすることができる。
【0081】
また、本実施形態において、マスク部31に遮蔽部材90を設けることで、高さを確保して、使用者の下側の周辺視野を遮蔽するように構成したが、これは、遮蔽部材90を設けない代わりに、マスク部31を一定以上の厚み(例えば、10mm以上25mm以下、好ましくは10mm以上16mm以下)を有するように構成することで実現してもよい。
【0082】
(第5実施形態)
上記第4実施形態においては、顔面装着具をマスクとして実現する例を示したが、本実施形態においては、日用品として利用可能な顔面装着具1Eについて説明する。第5実施形態に係る顔面装着具1Eは、眼鏡として実現する例を示す。
【0083】
図13(a)は、顔面装着具1Eを眼鏡として実現した場合の外観図を示しており、図13(b)は、顔面装着具1Eを使用者が装着した例を示す概観図である。
【0084】
顔面装着具1Eは、一般的な眼鏡と同様の構成を備えることとしてよい。そして、顔面装着具1Eは、一般的な眼鏡と異なり、遮蔽部139を備える。ここで、遮蔽部139は、眼鏡のレンズを保持するフレームの一部により実現される。遮蔽部139は、第1実施形態から第4実施形態と同様に、使用者の下方の周辺視野を遮蔽する部材であり、板、あるいは、帯状の部材によって実現されてよい。遮蔽部139は、使用者の視界を制限することで、使用者の姿勢を矯正するための姿勢矯正部材として機能する。また、ここでは、遮蔽部139は、その長さを調整できるように、伸長自在な部材により実現されてもよい。例えば、遮蔽部139は、ある程度の長さが顔面装着具1Eのフレーム内に格納され、使用者が自身の指等で、取り出して伸ばすことで遮蔽部として機能するような部材としてもよい。
【0085】
図13(a)に示されるように、図13(a)は、顔面装着具1Eの斜視図であり、図13(b)は、顔面装着具1Eを使用者が使用している態様を示す概観図である。図13(a)に示すように、顔面装着具1Eは、フレームと、レンズ131とからなる眼鏡である。フレームは、ブリッジ136と、ブリッジ136により接続され、レンズ131を挟持するフロント部132と、フロント部1402から延伸するテンプル133と、テンプルの先端に設けられるモダン134と、フロント部132に設けられ、使用者の鼻に接触してプリズムレンズ眼鏡を支持するノーズパッド135と、を備える。顔面装着具1Eの、ブリッジ136と、フロント部132と、テンプル133と、モダン134とで装着部材として機能する。即ち、顔面装着具1Eの眼鏡のフレームが、顔面装着具1Eを使用者の頭部に装着させるための装着部材として機能する。
【0086】
図14(a)は、顔面装着具1Eを、図13(a)に示すAA線で切断した場合の断面図である。図13(a)、図14(a)に示されるように、フレームのフロント部1402の下側が、使用者に向けて延伸されることで、遮蔽部139が形成されている。即ち、遮蔽部139は、フレームの一部である。遮蔽部139をフレームの一部として形成することで顔面装着具1Eの作成を容易にすることができるとともに、眼鏡のフレームと遮蔽部139とを個別に作成して接続するよりも剛性の向上が見込める。
【0087】
図15は、使用者が顔面装着具1Eを装着した状態の右側から見た側面図である。図15図13(b)に示されるように、顔面装着具1Eを装着した状態では、遮蔽部139は、使用者の眼の下部に位置することになる。そして、遮蔽部139は、第1実施形態から第4実施形態と同様に、使用者の眼の下側の周辺視野を遮蔽する。一般的に、眼鏡を装着しているときのフロント部132と使用者との間の距離はおよそ1cm前後である。よって、遮蔽部139の、側面から見た長さmも、0.8mm~1.5mm程度とするとよい。遮蔽部139の端部は、使用者に接するように形成されていてもよいし、接しなくてもよい。遮蔽部139は、使用者に接しなくても十分な下方遮蔽の効果を得ることは可能であるが、遮蔽部139を使用者に接することができる程度の長さを有するように構成することで下側から上って来る使用者の吐息やその他の蒸気などにより、顔面装着具1Eのレンズ131の曇り止め防止という副次的効果を期待することができる。即ち、遮蔽部139は、使用者が顔面装着具1Eを使用する際に、遮蔽部139の端部が使用者に接するか際まで延伸されていることとしてよいが、下方遮蔽が十分であれば、そこまで延伸しなくてもよい。
【0088】
顔面装着具1Eを眼鏡として実現することで、使用者の外観を損なうことなく使用者の眼の下方の周辺視野を遮蔽することができる。上記実施の形態においても説明したように、使用者の眼の下方の周辺視野が、遮蔽部139により遮蔽されることにより、使用者は無意識に下方を視界に含めようとするために、頭部をより後方に位置させることで使用者の下の方の映像を得ようとする。つまり、自然と顎を引いた姿勢をとるようになる。つまり、使用者の頭部の前突、頚部の屈曲(前曲)を抑制することができる。即ち、顔面装着具を眼鏡という使用者によっては常用するアイテムを利用することで、一般的に人間にとって望ましくない姿勢である頭部の前突、頚部の屈曲を、自然と解消することができる。また、無意識化での姿勢の変化となるので、使用者にとって負担になることもない。
【0089】
なお、図14(b)~図14(d)には遮蔽部139の他の態様の例を示している。遮蔽部139は、使用者の下方周辺視野を遮蔽できればどのような形状であってもよい。例えば、図14(b)に示すように、遮蔽部139は屈曲するように構成されてもよい。また、遮蔽部139は、フロント部132の下部に限らず、図14(c)に示すように、フロント部132の上部にも設けられてもよいし、図示してはいないがフロント部132の左右にも設けられてもよいが、使用者の眼の周囲全てを遮蔽するよりも、下方遮蔽のみとした方が使用者の視野を遮蔽することに伴う使用者の精神的負担を軽減することができる。また、眼鏡のフレームのフロント部132の周囲全周を遮蔽するように帯状の遮蔽部139を形成してもよい。つまり、顔面装着具1Eをゴーグルのような構成としてもよい。
【0090】
また、更には、顔面装着具1Eのレンズ131を、その厚みが一端よりも他端が厚くなるように構成されたプリズムレンズにより構成してもよい。図14(d)の例では、レンズ131の下部側が上部側よりも厚いプリズムレンズを用いた例を示している。図14(d)に示すように、一様に厚みを変化させた場合には、レンズによる光の屈曲も併せて一様になる。図14(d)に示すレンズ131の場合では、上側に光景が屈曲して見やすくなる。即ち、使用者は、下方に頚部を屈曲させた状態で、上方の光景を視認できるようになる。つまり、レンズ131を使用することで、使用者は頚部を屈曲させた状態で上方の光景を視認できるようになるので、頭部の前突、頚部の屈曲を改善できる可能性がある。したがって、遮蔽部139による下方遮蔽と、レンズ131による入射光の屈曲とによる相乗効果により、より頭部の前突、頚部の屈曲を抑制する効果を期待することができる。なお、図14(d)では、レンズ131の上端がアッパーリムにおいて後ろ寄りの位置で接続される例を示しているが、これは、アッパーリムの前寄りの位置で接続されるものであってもよいし、中央で接続されてもよい。
【0091】
(第6実施形態)
上記第1実施形態~第5実施形態にかけては、姿勢矯正部材として、使用者の下側の視界を遮蔽する遮蔽部材を用いることで、下方向の視界情報をなくし、使用者自身が無意識で、下方向の情報を多くできるように、顎を引かせる姿勢を取らせる構成について説明した。そして、その結果、上記実施形態1~5においては、使用者の下側の視覚的情報を制限することで、使用者に対して無意識に姿勢の矯正や、眼球上転を促すこととした。
【0092】
一方で、上記実施形態1~実施形態5においては、使用者の眼の下側の情報を遮蔽することで、顔面装着具を常時使用することで、使用者によっては、歩行等において下側の視覚的情報が確認できないために不安を覚えてしまう可能性がある。
【0093】
そこで、本実施形態6においては、下側の視界を遮らずとも、顎を引く姿勢を取らせて姿勢を矯正し、眼球上転を促すことができる顔面装着具1Fについて説明する。
【0094】
図16(a)は、本実施形態6に係る顔面装着具1Fの外観を示す斜視図である。また、図16(b)は、顔面装着具1Fを使用者が装用した状態を示している。また、図17(a)、(b)は、顔面装着具1Fの正面図である。
【0095】
図16に示すように、実施形態6に係る顔面装着具1Fは、眼鏡である。顔面装着具1Fは、実施形態5に示した顔面装着具1Eとほぼ同様であるが、顔面装着具1Fは、遮蔽部139を備えていない。そして、遮蔽部139を備えていない代わりに、姿勢矯正部材として、領域分割部材160を備える点において、相違する。
【0096】
図16(a)に示すように、顔面装着具1Fは、顔面装着具1Fは、フレームと、レンズ131とからなる眼鏡である。フレームは、ブリッジ136と、ブリッジ136により接続され、レンズ131を挟持するフロント部132と、フロント部1402から延伸するテンプル133と、テンプルの先端に設けられるモダン134と、フロント部132に設けられ、使用者の鼻に接触してプリズムレンズ眼鏡を支持するノーズパッド135と、を備える。顔面装着具1Fの、ブリッジ136と、フロント部132と、テンプル133と、モダン134とで装着部材として機能する。即ち、顔面装着具1Fの眼鏡のフレームが、顔面装着具1Eを使用者の頭部に装着させるための装着部材として機能する。顔面装着具1Fのレンズ131周りのフレームをリムと呼称することもある。
【0097】
図16(a)、(b)や図17(a)、(b)に示すように、領域分割部材160は、レンズ131を上下方向で、二つの領域に分割する。即ち、図17(b)に示すように、領域分割部材160は、レンズ131を、上部領域161と、下部領域162と、に分割する。領域分割部材160は、使用者の視空間を上下に分割するための部材である。領域分割部材160があることにより、顔面装着具1Fは、使用者の眼球の動きの習慣を矯正することができ(スマートフォンや携帯端末、タブレット端末等の画面を確認するために眼球下転の動きをさせている使用者が多い昨今、眼球上転の習慣をつけるようにすることができる)、使用者の姿勢や眼球運動を利用した神経系統への促通や抑制、眼球反射に好適な提供を与えることができる。領域分割部材160は、顔面装着具1Fの左右のリムそれぞれの左右部分と接続されて、リムを上下方向に二つの領域に分割する。
【0098】
領域分割部材160は、レンズ131の上下方向で中心よりも下方に位置する。即ち、領域分割部材160は、上部領域161の方が、下部領域162よりも、その面積が広くなるように、レンズ131を分割する。領域分割部材160は、図16(a)に示すように、レンズ131の正面(顔面装着具1Fを装着した状態で、使用者から見た反対側の面)に、レンズ131を覆うように、フロント部132の一部として構成されてもよい。なお、図16(a)では、領域分割部材160を、レンズ131の正面(使用者が顔面装着具1Fを装着している状態で使用者から見て使用者とは反対側の面)に設ける例を示しているが、これは、レンズ131の裏面(使用者が顔面装着具1Fを装着している状態で使用者側の面)に設けられてもよい。
【0099】
また、あるいは、領域分割部材160は、レンズ131を視界的に分割するものであればよく、物理的にレンズ131を分割するものであってもよい。即ち、フレームの形状としては、図16(a)と同様であるものの、レンズとしては、フレームの二つの上部領域161と二つの下部領域162とに、それぞれの領域のサイズに合わせたレンズを嵌め込む態様で実現されてもよい。
【0100】
また、あるいは、領域分割部材160は、図16に示す態様で、シールのような部材で眼鏡のレンズ131に帖着される態様で実現されてもよい。領域分割部材160は、無色透明でなく、使用者が認識できればどのような部材であってもよい。
【0101】
領域分割部材160は、図17(a)、(b)に示されるように、眼鏡のフロント部132と領域分割部材160により使用者がその視界が分割されていることが認識される必要があるため、所定以上の幅hを有する必要がある。一方で、幅hは、使用者がものを見る際に阻害してもいけないので、所定以下の幅でもあることが望ましい。領域分割部材160は、使用者に顔面装着具1Fのレンズ131を二つの領域に分割し、その領域のいずれかを無意識に選択させ、選択させた領域を通して、物を見ることを促すための部材である。したがって、領域分割部材160は、使用者が、そこに領域分割部材160があることを認識できる程度には、太くある必要があり、一方で、使用者が物を見る際の阻害にならない程度には、細くある必要がある。そのために、一例として、領域分割部材160の上下方向の幅hは、3~4mmとしてよいが、使用者の個人差に併せて増減させてよい。また、使用者によっては、3~4mmだと、気になってストレスになる場合には、それよりも短い、例えば、2mm程度の細さとしてもよい。一方で、2mm以下だと人によっては認識できなくなる可能性があるものの、いずれかの方向で、2mm以上の長さを有する部材であれば、領域分割部材160aとして使用者に認識させることができる。即ち、図示の幅hは、1mmとする一方で、長さを2mm以上、例えば、4mmとすることでも領域分割部材160aは、使用者により認識されて、領域分割部材としての姿勢矯正の作用を使用者に与えることができる可能性がある。なお、領域分割部材160の幅又は長さを2mm以下とした場合に、使用者によって意識的な認識はできないものの無意識下においては視神経及び脳によって認識され、姿勢の矯正を促し得る。
【0102】
次に、実施形態6に係る顔面装着具1Fにより、使用者に促される効果について、図18を用いて説明する。図18(a)は、通常の眼鏡1Lを使用者が装着している際の視線方向を模式的に示した側面図である。図18(a)に示すように、通常、フレームのある(フレームがない場合もレンズの外縁がフレームの代用となる)眼鏡を装用する使用者は、そのレンズの中心を見るようにして物を見るのが一般的である。即ち、図18(a)に示すように、使用者は、眼鏡1Lの縦方向の中心C1を、自身の視線G1が通るようにして、物を見る(視覚的情報を得る)。
【0103】
一方、図18(b)は、本実施形態に係る領域分割部材160を備えて顔面装着具1Fを使用者が装用した場合の使用者の視線G2と、顔面装着具1Fとの関係を模式的に示す側面図である。図18(b)に示すように、領域分割部材160がある場合には、使用者は、物を見る際にはなるべくその視界内に異物を収めたくないので、領域分割部材160がなるべく視界に入らないように、物を見るようにする。その結果、使用者は無意識(あるいは意識的に)に、物を見る際に、より多くの、即ち、より広範囲の視覚的情報を得るために、図17(b)に示す下部領域162よりも広い上部領域161の中心を見るようにして物をみることとなる。したがって、使用者は、図18(b)に示すように、上部領域161の少なくとも上下方向の中心C2を、自身の視線G2が通るように物を見る。
【0104】
図18(b)には、領域分割部材160がない場合の使用者の視線G1も示しているが、視線G1と視線G2とを比較すれば明らかなように、領域分割部材160が有る場合には、使用者の視線は、上部領域161を通して視覚的情報を得るようになることから、上向きになる。即ち、顔面装着具1Fに領域分割部材160がない場合に比して、顔面装着具1Fに領域分割部材160がある場合には、使用者の眼球に上転運動を促すことができる。その結果、視線G2により得られる視覚的情報は、領域分割部材160がない場合に得られる視覚的情報に比して、視線方向下側の情報量が少なくなる。その結果、視線方向下側の情報をより多く得ようとして、使用者は、自然と顎を引く姿勢を取るようにする。
【0105】
また、顔面装着具1Fの場合、使用者の下側の視界を遮蔽するわけではないので、顔面装着具1Fを常時使用するうえで、使用者が視界の一部(下方視界)が遮蔽されることによる不安感を生じさせることはない。
【0106】
なお、本実施形態6において、顔面装着具1Fにレンズ131は必須の構成ではない。レンズ131は、顔面装着具1Fに備えられていなくともよい。また、実施形態6において、顔面装着具1Fにレンズ131を設ける場合に、実施形態5の図14(d)に示したような形状のプリズムレンズを嵌めることとしてもよい。プリズムレンズ単体でも姿勢矯正効果が望めるが、その場合には、プリズムレンズに所定以上の厚みが必要になることが考えられるが、顔面装着具1Fと併用することによる相乗効果により、プリズムレンズ自体は薄くしても、同様の姿勢矯正効果を得ることができる。また、レンズ131は、視力矯正用のレンズであってもよいし、ファッション用の度なしのレンズであってもよいし、透明であれば色付きのレンズであってもよいし、目の保護等に用いられるレンズ(例えば、ブルーライトレンズなど)であってもよいし、美容目的のレンズ(例えば、レンズを通した見た目がよくなる美肌レンズなど)であってもよい。視力矯正用のレンズの場合には、レンズの焦点位置は、上部領域161にくるように調整してもよい。
【0107】
また、本実施形態6に示した眼鏡としての顔面装着具1Fの形状は、図示したものに限定するものではない。眼鏡としての形状は様々であってよい。
【0108】
例えば、図19(a)は、実施形態6の眼鏡として採用可能なフレームの形状の例を示す図である。図19(a)に示すように、顔面装着具1Fは、眼鏡であって、フレームからアッパーリムを除去した形状のフレームに、領域分割部材160を設けた例を示している。また、顔面装着具1Fは、図19(b)に示すように、フレームが丸型の眼鏡であってもよいし、図19(c)に示すように、フレームが四角型の眼鏡であってもよい。いずれの形状であっても、眼鏡のフレームには、リムの上下方向の中央よりも下寄りに領域分割部材160(姿勢矯正部材)を設けることとする。
【0109】
また、上記では、領域分割部材160をリムの左右を接続する態様で形成することとしたが、領域分割部材160をリムの上下で接続する態様としてもよい。即ち、領域分割部材160は、リムで囲われる領域(レンズ131)を、上下ではなく、左右の領域に分割するものであってもよい。また、この場合に、上下方向と同様に、左右のレンズの同じ側で分割してもよいし、左右のレンズで分割する場所を変更することとしてもよい。即ち、縦の領域分割部材160により、左右のレンズ131の右側領域と左側領域との比を同じにしてもよいし、逆にしてもよい。したがって、縦の領域分割部材160を用いる場合には、左右のレンズの右側領域が狭く、左側領域を広くとるように領域分割部材160を設けることとしてもよい。また、あるいは、左右のレンズのうち右のレンズの右側領域が狭く、左側領域を広くなるように領域分割部材160を設けるのに対して、左のレンズの右側領域が広く、右側領域が狭くなるように領域分割部材160を設けるようにしてもよい。また逆に、左右のレンズのうち右のレンズの右側領域が広く、左側領域を狭くなるように領域分割部材160を設けるのに対して、左のレンズの右側領域が狭く、右側領域が広くなるように領域分割部材160を設けるようにしてもよい。このような顔面装着具1Fを用いる場合には、頭の向きが左右のいずれか一方に向く癖がついている使用者の頭の向きの矯正をしたり、左右方向で見る方向が異なる斜視の使用者の眼の向きの矯正をしたりすることができる。
【0110】
また、領域分割部材160は、顔面装着具1Fのリムを上下方向に少なくとも2つに分割すればよく、領域分割部材160を平行に2つ以上設けてリムを上下方向で3つ以上に分割することとしてもよい。なお、領域分割部材160は、使用者の視界内に基準線を設けるという副次的効果をもたらす。したがって、例えば、顔面装着具1Fを使用する使用者がゴルフ等の運動をする際のショット時に自身のストロークが正しい姿勢で行えているかどうかを判断したり、ショットを打つ際のボール及びクラブを通過させるべき位置との基準としたりすることができる。また、領域分割部材160を2つ以上設けた場合には、ショットを打つ際に使用するゴルフクラブによって異なる領域分割部材160を基準線として活用することができる。即ち、ゴルフクラブは、その種類に応じて長さが異なるので、ショットを打つ際の使用者の視点位置との位置関係が異なってくる。そのため、全てのショットを打つ際に、同じ領域分割部材160を基準線として用いることができるとは限らないところ、複数の領域分割部材160を設けることで、顔面装着具1Fは、1つの顔面装着具1Fで、複数のクラブに応じた基準線を提供することができる。
【0111】
また、上述では、領域分割部材160を意識的に基準線として使用者が用いる例を示しているが、領域分割部材160は、無意識的な眼球の反応を引き起こすものであると言える。眼球は、周辺視野内にある基準線側の運動制限を起こし、無意識で反対方向の運動を優位にする。即ち、領域分割部材160を左右に延伸するように構成している場合に、基準線が上に位置すれば、眼球下転、頸椎伸展を使用者に促すことができる。また、領域分割部材160を左右に延伸するように構成している場合に、基準線が下に位置すれば、眼球上転、頸椎屈曲を使用者に促すことができる。一方で、領域分割部材160を上下に延伸するように構成している場合に、基準線が右側に位置すれば、右眼球を内転、左眼球を外転、分割部材を避けるように頸椎は左回旋をする事で、分割材の死角を交わし、開かれた空間に適合する選択をする。また、領域分割部材160を上下に延伸するように構成している場合に、基準線が左側に位置すれば、右眼球を外転、左眼球を内転、分割部材を避けるように頸椎は右回旋をする事で、分割材の死角を交わし、開かれた空間に適合する選択をする。また、領域分割部材160を上下に延伸する場合で共に顔面装着具1Fのリムの外側の両端に設ける場合には、両眼球を内転させるとともに、肩関節の筋緊張を促進(外転、外旋、伸展、水平外旋、水平伸展の制限によるもの)することができる。また、領域分割部材160を上下に延伸する場合で共に顔面装着具Fのリムの内側に設ける場合には、両眼球を外転させるとともに、肩関節の筋緊張を抑制(内転、内旋、屈曲、水平内旋、水平屈曲の制限によるもの)を誘導することができる。これらの動きは、基準線を使用者が自身で意識することによって促されるものではなく、視覚情報として無意識に認識される視覚システムの影響によるところが大きい。
【0112】
上述のゴルフの例で言えば、領域分割部材160(基準線)の有無により、アドレス時の構えにおいて、使用者の重心、使用者による空間の見え方が変化することを発明者は知見している。領域分割部材160が左右方向に延伸している場合で下の方に位置する場合には、頸椎屈曲を促す一方で、重心位置は領域分割部材160がない場合に比して使用者の前方に移動し、使用者としてはボールとの距離が近く感じられるようになる。逆に、領域分割部材160が上の方に位置する場合には、頸椎伸展を促す一方で、重心位置は後方に移動し、ボールとの距離を遠くに感じるようになる。
【0113】
また、領域分割部材160を上下方向に延伸している場合でリムの右の方に設けている場合に、左視野優位になることから、クラブ軌道に於けるトップポジションではフェイスローテーション(左眼球外転/右眼球内転)を行い、左周辺視野にてボールを捉え、深いテイクバックを求める選手の再現性に有効であるといえる。領域分割部材160を上下方向に延伸している場合でリムの左の方に設けている場合に、右視野優位になることから、クラブ軌道に於けるトップのポジションではフェイスローテーションを行わず、右周辺視野にてボールを捉え、浅いテイクバックを求める選手の再現性に有効であるといえる。したがって、顔面装着具1Fを利用することで、使用者に対して無意識の誘導を行い、使用者(選手)のパフォーマンス向上に寄与することができる。これは、人間の視覚情報において、視野(視線)を確保する為に、周辺視野に生じる制限を無意識で感じ、視空間上の視野(視線)を獲得する為の無意識の反応によるものであると言える。
【0114】
また、領域分割部材160は、使用者の視界を上下方向で二つに分割されていることが、使用者が認識できればよい。即ち、使用者が、そこに境界があることが認識できればよく部材を設置する以外にも、図19(d)に示すように、レンズ131を上下方向で2色に色分けする態様により領域分割部材160を実現することとしてもよい。一例として、図19(d)に示すように、上部領域131aを、黒色透明とし、下部領域131bを、赤色透明とすることで、色の差により、その色が変化する境界を、領域分割部材160として機能させることが考えられる。使用者としては、色の違いによりそれぞれの領域を認識することから、領域分割部材160を下限とする視界で物を見ることになり、上述したように、ユーザに頚部屈曲、眼球上転の姿勢を取らせることができる。なお、上部領域131aと下部領域131bとで用いる色は、黒と赤の組み合わせに限定するものではなく、他の色の組み合わせであってもよい。なお、ここでは色の組み合わせによって、レンズ131を複数の領域に分割することとしているが、これは、レンズ131の中に見やすい領域と見にくい領域とを設けることによっても実現し得る。レンズ131の中の見やすい領域は、通常通りの透明なレンズとし、見にくい領域を不透明に構成することで、実現することができる。
【0115】
また、領域分割部材160は、リムに対して、上下(領域分割部材160を左右に延伸している場合)、あるいは、左右(領域分割部材160を上下に延伸している場合)にスライドさせることができるようにリムと接続するように構成することとしてよい。これにより、使用者は、自身で顔面装着具1Fにより得られる姿勢矯正の度合を調節することができるようになる。また、上記実施形態においては、領域分割部材160は、リム内に収める態様を示しているが、領域分割部材160は、リムの外枠を超えて延伸されるように構成されていてもよい。
【0116】
(第7実施形態)
上記第6実施形態においては、従来の眼鏡に対して、姿勢矯正部材として領域分割部材160を設けることとした。この領域分割部材160は、顔面装着具1Fのリムにより規定される使用者の視界における下限を定めることによって、使用者に眼球上転の姿勢を取らせるものであるともいえる。換言すれば、従来の眼鏡において、アンダーリムの位置を従来よりも上に位置するように構成することで、アンダーリムを領域分割部材160(姿勢矯正部材)として機能させることが期待できる。この場合、アンダーリムは、リムによって定められる使用者の視界と、リム外の視界とを、分割するという意味において、領域分割部材160であると言える。
【0117】
図20(a)は、従来の眼鏡を着用している使用者の側面図である。従来、眼鏡は、使用者が正面を見ている際に、使用者の視線G3が通過する位置(使用者の眼(瞳孔)が眼鏡のレンズと正対する位置)が、レンズの上下方向で、4:6となるように、眼鏡を作成するのが暗黙の了解となっている。即ち、図20(a)において、h1:h2=4:6となるように眼鏡を作成している。これは、眼鏡を装着した際の外見上の問題と、アンダーリムを使用者の視界内に入れないようにして視界の邪魔にならないようにするために定められた比率である。
【0118】
一方、これに対して、本第7実施形態においては、故意に使用者にアンダーリムを認識してもらう必要がある。そこで、本第7実施形態における顔面装着具1Gは、眼鏡であって、図20(b)に示すように、使用者が正面を見ている際に使用者の視線G3が通過する位置(使用者の眼(瞳孔)が眼鏡のレンズと正対する位置)が、レンズの上下方向で、上部領域が占める比率が4:6よりも広くなるように構成する。即ち、図20(b)に示す上部領域の長さh4と、下部領域の長さh5との比h4/h5が、4/6よりも大きくなるように構成する。一般に、眼鏡のアッパーリムは、使用者の眉と正対するように構成される。その結果、h4の長さの上下方向全体に対する比率を高めると、自然と、アンダーリムの位置が、従来よりも高くすることができる。図20(a)に示すように、従来の眼鏡の場合、使用者の眼と、アンダーリムとの間の距離h3となる。一方で、図20(b)に示すように、本第7実施形態に係る使用者の眼と、アンダーリムとの間の距離をh6とする。図20(a)と図20(b)とを比較すると、h6がh3よりも短くなっていることから、アンダーリムの位置が、使用者の視界に対して、従来の眼鏡よりも高くなっていることが理解できる。そして、使用者の視界内にアンダーリムが入るようにするには、h6が5~10mmになるように顔面装着具1Gを構成する(作成する)とよい。図20(b)の場合は、顔面装着具1Gの全高は従来よりも短くなる。
【0119】
図21(b)は、顔面装着具1Gとしての眼鏡のアンダーリムを異なる方法で、従来よりも高くする例を示している。図21(a)は、図21(b)と比較するための従来の眼鏡の例を示している。図21(b)に示す例は、リムの全高を変更せずに、アンダーリムの使用者の眼に対する位置を高くする手法を示している。図21(b)に示すように、テンプル133のフロント部132のリムに対する接続位置を従来よりも高くすることで、h4/h5を4/6よりも大きくするとともに、h6をh3よりも短くすることができる。
【0120】
図22(b)は、顔面装着具1Gとしての眼鏡のアンダーリムを、従来よりも高くする他の例を示している。図22(b)に示す例は、テンプル133のリムに対する接続位置を変更することなく、かつ、リムの全高を変更せずに、アンダーリムの使用者の眼に対する位置を高くする手法を示している。図22(b)に示す例では、テンプル133の形状を変更させることで、テンプル133に接続されているリムにおけるアンダーリムの位置を高くしている例を示している。図22(a)は、従来の眼鏡を使用者が装着している例を示しているが、図22(a)と図22(b)とを比較すれば理解できるように、図22(b)では、h4/h5を4/6よりも大きくするとともに、h6をh3よりも短くすることができている。図20(b)、図21(b)、図22(b)などに示されるように、アンダーリムの位置を使用者が視界内で認識できるように従来の眼鏡よりも、その位置を高くすることで、上記第6実施形態に示した領域分割部材160が奏する効果と同様の効果を奏することができる。なお、ここでは、眼鏡のアンダーリムを高くすることで、領域分割部材として機能させる例を示したが、顔面装着具1Gは、使用者の視界内で境界として認識され得る態様で領域分割部材160が構成されるものであればよく、一例として、眼鏡ではなく、使用者の顔の少なくとも上半分を覆い、目の周りがくりぬかれた仮面のようなもので実現されてもよい。このような仮面においても目の周りを、従来のように使用者の視界の妨げにならないようにくりぬくのではなく、くりぬいた下側の境界が、使用者の眼の5~10mm下程に位置するように構成された仮面であっても、上述した眼鏡の顔面装着具1Gと同様の効果を得ることができる。
【0121】
なお、図示はしていないが、顔面装着具1Gは、従来通りの眼鏡としての運用と、姿勢矯正用の眼鏡としての運用と、2通りの運用ができるように構成されてもよい。即ち、図21に示す2通りの態様での使用ができるように構成されてもよい。具体的には、テンプル133は、そのリム側の端部において、リムと、スライド機構を介して接続されてもよい。このスライド機構により、テンプル133は、リムに対して上下方向でスライド自在に接続されてよく、図21(a)に示す位置と、図21(b)に示す位置との間でスライドできるように構成されてよい。このスライド機構は、図21(a)に示す位置と、図21(b)に示す位置とで、テンプル133をロックできるように構成されていることが望ましい。また、図示はしていないが、ノーズパッドもまた、リムに対して上下方向でスライド自在に接続されてよい。
【0122】
また、通常の眼鏡の天地を逆にして使用する、即ち、通常のアッパーリムをアンダーリムとすると、自然とその位置は、通常の眼鏡よりも上に位置することになる。即ち、アッパーリムをアンダーリムにすることで領域分割部材として機能させることができる。その際には、テンプルが上下方向で利用可能な形状(限定ではなく一例として直線状)に形成することとしてもよいし、使用者の頭部を挟み込むバネとして形成するように構成してもよい。また、天地を逆(上下を反転)させて使用する場合には、眼鏡のブリッジ部分が使用者の鼻根部分に当接するようにして使用することとしてもよい。このときに、使用者によっては、ブリッジの硬い部材が当接することで不快感を覚える可能性がある。そこで、例えば、図16のブリッジ136の上端部分に、緩衝材を設けることとしてよい。また、この緩衝材は、所定の摩擦係数を有する部材としてよく、眼鏡が使用者の顔からずり落ちないようにするための滑り止めとして構成することとしてもよい。一例として、緩衝材は、スポンジやゴム、シリコンなどによって実現することとしてよいが、これらに限定するものではない。
【0123】
(第8実施形態)
本第8実施形態においては、第6実施形態と異なる態様の顔面装着具1Hを提供する。顔面装着具1Hの思想としては、第6実施形態に示した顔面装着具1Fと同様である。一方で、第6実施形態においては、領域分割部材160の位置は、リムの一部として形成した場合には、固定となり、眼球を上転させて、顎を引かせる効果を奏する。一方で、姿勢の矯正という観点においては、第6実施形態や第7実施形態に示す顔面装着具では1方向に限定される。
【0124】
そこで、本第8実施形態においては、複数の方向への姿勢の矯正が可能な顔面装着具1Hと、その製造方法について説明する。
【0125】
図23(a)は、第8実施形態に係る顔面装着具1Hであって、領域分割部材160aを取り付けた状態の顔面装着具1Hを示している。また、図23(b)は、第8実施形態に係る顔面装着具1Hであって、領域分割部材160aを取り付けていない状態の顔面装着具1Hを示している。顔面装着具1Hの基本的な眼鏡としての構成は、第6実施形態の顔面装着具1Fと同様であるとして説明を省略し、本第8実施形態に特有の構成について説明する。
【0126】
図23(b)に示すように、レンズ131は、穿孔231a、231b、231c、231dを備える。穿孔231aは、図示するように、レンズ131の上部寄りの位置に設けられた孔であり、領域分割部材160aをレンズ131の上寄りに取り付けるために設けられている。この場合に、顔面装着具1Hのリムにより規定される領域は、上下方向で分割される。穿孔231bは、レンズ131の右寄りの位置に設けられた孔であり、領域分割部材160aをレンズ131の右寄りに取り付けるために設けられている。この場合に、顔面装着具1Hのリムにより規定される領域は、左右方向で分割される。穿孔231cは、レンズ131の下寄りの位置に設けられた孔であり、領域分割部材160aをレンズ131の下寄りに取り付けるために設けられている。この場合に顔面装着具1Hのリムにより規定さえる領域は、上下方向で分割される。穿孔231dは、レンズ131の左寄りの位置に設けられた孔であり、領域分割部材160aをレンズ131の左寄りに取り付けるために設けられている。この場合に、顔面装着具1Hのリムにより規定される領域は、左右方向で分割される。
【0127】
図23(d)は、図23(b)に示すレンズ131を穿孔231aの部分で縦に分割した場合の、レンズ131の縦断面図である。図23(d)に示すように、レンズ131には、穿孔231a、穿孔231cが設けられる。図23(d)は、領域分割部材160aが取り付けられていない状態のレンズ131の断面図である。一方で、図23(c)は、穿孔231cに、領域分割部材160aが取り付けられている状態の、レンズ131を穿孔231aの部分で縦に分割した場合の縦断面図である。図23(c)、図23(d)は、顔面装着具1Hを、図23(a)に示す状態の右側からみた場合の断面図であるが、各穿孔は、レンズ131の内側(使用者側)に設けられてもよく、その場合には、図23(c)、図23(d)は、顔面装着具1hを図23(a)に示す状態の左側側から見た場合の断面図である。
【0128】
なお、本実施の形態においては、穿孔は、レンズ131を貫通しないようにしているが、穿孔は、図23(e)に示すように、貫通孔として形成されてもよい。この場合に、後述する領域分割部材160aに設けられる凸部241は、貫通孔よりも長く構成し、係止部材160bによりレンズ131の反対側から係止するように構成されてもよい。即ち、領域分割部材160aと、係止部材160bとは、ボルトとナットのような関係であるといえ、領域分割部材160aがレンズ131から容易に外れることを防止することができる。係止の手法としては、様々であり、ねじ止めであってもよいし、嵌め込みによる係止であってもよい。
【0129】
各穿孔231a~231dは、領域分割部材160aを取り付けられればよいが、その大きさとしてはあまり大きいと使用者に認識されて、領域分割部材として機能することになってしまうため、あまり大きくない方が好ましい。具体的には、穿孔231a~231dの直径は、1.5mm以下であることが望ましい。個人差もあるが、発明者らは、穿孔231a~231dの直径は、2mm以上であった場合に、使用者に認識されてしまうことを実験により確認し、1.5mm以下とすることが好ましいとの結論に至った。
【0130】
図24(a)は、領域分割部材160aの外観を示す斜視図である。図24(b)は、領域分割部材160の外観であって、図24(a)に示す状態の裏面側から見た外観図である。また、図24(c)は、領域分割部材160aの正面図であり、図24(d)は領域分割部材160aの背面図である。そして、図24(e)は、領域分割部材160aの右側面図である。
【0131】
図24(b)、(d)、(e)に示すように、領域分割部材160aの裏面側には、凸部241が設けられる。凸部241は、各穿孔231a~231dに嵌合する形状となっている。領域分割部材160aは、凸部241を、穿孔231a~231dのいずれかに差し込むことで、レンズ131に取り付けられて、領域分割部材160aとして機能する。
【0132】
なお、図24に示す領域分割部材160aは、弧月状とする例を示しているが、領域分割部材160aの形状は、使用者に認識され、リムで規定される領域を2つの領域に分割することができる形状であれば任意である。領域分割部材160は、使用者の黒目にかからなければ、方形であってもよいし、台形であってもよいし、三角形であってもよいし、円形であってもよい。
【0133】
このように、第8実施形態に係る顔面装着具1Hは、使用者により自由に領域分割部材160aを着脱して使用することができる。したがって、顔面装着具1Hを通常の眼鏡として使用することもできれば、領域分割部材160aを設けた位置に応じて、その反対側への眼球の回転と、姿勢の矯正を行うことができる。
【0134】
ここから、顔面装着具1Hを使用者に適した形で提供する一手法を説明する。図25(a)は、レンズ131の外縁、即ち、リムの形状と、領域分割部材160aと、使用者の眼との関係を示す図である。図25(a)に示すように、領域分割部材160aは、上下方向、左右方向で延伸する場合に、その長さを異なる長さにしてもよい。図25(a)に示すように、領域分割部材160aは、使用者が顔面装着具1Hを装着している状態で正面を見た場合に、その黒目にかからず、かつ、視野内において認識される位置に配される必要がある。そのため、使用者が使用する予定の顔面装着具1H(眼鏡)を使用者が装着した状態で、図25(a)に示すような画像を撮像する。図25(a)は、使用者の右目側を撮像したものであるが、左側も撮像してよく、撮像画像は使用者の眼の周囲が含まれれば、使用者が顔面装着具を装着した状態での顔画像であってもよい。
【0135】
なお、前述のとおり、領域分割部材160aの形状は、図25(a)に示す形状に限定するものではなく、図25(b)に示すように、長方形形状であってもよいし、湾曲させた形状であってもよい。
【0136】
顔面装着具1Hにおいて領域分割部材160aの適切な位置は、どの程度使用者が姿勢の矯正を行いたいのかに依るが、より強い矯正力を効かせたい場合にはより黒目に近い位置に配すればよいが、その場合にも、図25(a)に示すように、使用者の黒目にかからない位置に配するようにする。
【0137】
図26は、顔面装着具1Hにおいて領域分割部材160aの位置を決定し、その情報を出力する情報処理装置2600の構成例を示すブロック図である。情報処理装置2600は、顔面装着具1Hに領域分割部材160aを取り付ける位置を示す情報を出力するコンピュータであり、いわゆるパスコンやサーバ装置等により実現することができる。図26に示すように、情報処理装置2600は、通信部2610と、入力部2620と、制御部2630と、記憶部2640と、出力部2650と、を備える。情報処理装置2600の各部は、バス2660を介して、互いに通信可能に接続されている。
【0138】
通信部2610は、他の装置と通信を実行するための機能を有する通信インターフェースである。通信部2610は、他の装置と通信可能であれば、いずれの通信プロトコルにより通信を行ってもよく、有線、無線のいずれでの通信であってもよい。通信部2610は、情報処理装置2600が生成した顔面装着具1Hに対する領域分割部材aの取り付け位置に関する情報を外部の装置に出力する。外部の装置は、例えば、顔面装着具1Hを製造する装置であってもよいし、顔面装着具に対してシール等で構成された領域分割部材を接着する位置を示すマーカ(例えば、図25に示すような領域分割部材の位置をリムに対して接着する位置を示すようなマーカ)であってもよいし、レンズに直接接着するシールやフィルムを製造するプリンタのような装置であってもよい。このようなマーカを使用する場合には使用者は、メガネのレンズにマーカを重ね合わせ、マーカーで示される領域分割部材の位置と同じ箇所のレンズに領域分割部材を帖着することで、顔面装着具1Hを実現する。また、通信部2610は、外部のカメラあるいは情報処理装置2600に接続されたカメラ等の撮像装置により撮像された顔面装着具を装着した使用者の目の周囲を含む画像を受信し、制御部2630に伝達する。
【0139】
入力部2620は、情報処理装置2600のオペレータ等からの入力を受け付けて、制御部2630に伝達する機能を有する入力インターフェースである。入力部2620は、タッチパネル等のソフトキーにより実現されてもよいし、ハードキーにより実現されてもよい。また、あるいは、入力部2620は、音声入力を受け付けるためのマイクであってもよい。入力部2620は、例えば、領域分割部材を取り付ける位置を示す情報の入力を受け付けて、入力された内容を、制御部130に伝達する。
【0140】
記憶部2640は、情報処理装置2600が動作上必要とする各種のプログラム及びデータを記憶する機能を有する。記憶部2640は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等により実現することができる。記憶部2640は、領域分割部材をレンズに対して取り付ける位置を決定し、その位置に関する情報を出力するためのプログラムを記憶している。
【0141】
出力部2650は、制御部2630からの指示にしたがって、指定された情報を出力する機能を有する。出力部150による出力は、画像信号、音声信号のいずれでの出力であってもよいし、通信部2610を介して外部の装置への情報の送信による出力であってもよい。出力部2650は、制御部2630により生成された顔面装着具1Hのレンズ131に対して領域分割部材160aを取り付ける位置に関する情報を出力する。前述のとおり、領域分割部材160aを取り付ける位置に関する情報とは、顔面装着具1Hの設計情報であってもよいし、通常の眼鏡のレンズに対して、シール等により構成された領域分割部材を接着する位置を特定可能なマーカであってもよいし、通常のメガネのレンズに対して、当該レンズの形状と同一であり、かつ、領域分割部材がプリントされたシールあるいはフィルムを生成するための情報であってもよい。
【0142】
制御部2630は、情報処理装置2600の各部を制御する機能を有するプロセッサである。制御部2630は、シングルコアにより実現されても、マルチコアにより実現されてもよい。制御部2630は、位置特定部2631と、生成部2632と、を備える。
【0143】
位置特定部2631は、通信部2610から伝達された使用者の目の周囲を含む画像を受け付けて、周知の画像認識技術により、使用者の目(黒目)の位置と、リムの外縁との位置関係を特定する。
【0144】
生成部2632は、位置特定部2631が特定した使用者の目の位置と、リムの外縁との位置関係に基づいて、領域分割部材が設けられるべき位置を特定する。そして、特定した位置に基づき、顔面装着具1Hのレンズ131に対して領域分割部材160aを取り付ける位置に関する情報を生成する。そして、生成部2632は、生成した顔面装着具1Hのレンズ131に対して領域分割部材160aを取り付ける位置に関する情報を出力部2650に出力させる。
【0145】
図27は、情報処理装置2600の動作例を示すフローチャートである。図27に示すように、情報処理装置2600の通信部2610は、顔面装着具を装着した使用者の目の周囲を含む顔画像を取得(受信)する(ステップS2701)。通信部2610は、取得した顔画像を制御部2630に伝達する。
【0146】
制御部2630の位置特定部2631は、伝達された顔画像に対して画像認識処理を行い、リムと使用者の目の位置とを特定する(ステップS2702)。そして、生成部2632は、位置特定部2631が特定したリムの位置と、使用者の目(黒目)の位置とに基づいて、使用者の目にかぶらず、かつ、使用者により認識される位置を、領域分割部材の位置として特定する(ステップS2703)。
【0147】
そして、生成部2632は、特定した領域分割部材の位置と、リムと使用者の目の位置とに基づいて、顔面装着具1Hのレンズ131に対して領域分割部材160aを取り付ける位置に関する情報を生成し、出力部2650に伝達する。出力部2650は、伝達された顔面装着具1Hのレンズ131に対して領域分割部材160aを取り付ける位置に関する情報を所定の外部の装置に出力し(ステップS2704)、処理を終了する。
【0148】
なお、眼鏡のレンズ131に対して、領域分割部材160aを取り付ける場所を示す情報としては、レンズ131において穿孔231a~231dを設ける位置を出力することとしてよいが、これは、上述のとおり、領域分割部材のレンズ131における位置を特定可能な情報であれば、他の情報であってもよい。例えば、領域分割部材があるべき位置が色付けされ、他の部分が透明で、顔面装着具1Hにリムの形状に合わせたシールやフィルムとしての出力であってもよい。また、あるいは、リムの形状に合わせて、領域分割部材160を帖着すべき位置を示したマーカなどであってもよい。また、情報処理装置2600は、第6実施形態や第7実施形態に示した領域分割部材相当の部材を含む形状のフレームを生成するための設計情報を出力するものであってもよい。
【0149】
なお、ここでいう、シールやフィルムとは、一例として、図28(a)に示すような眼鏡のレンズ131に帖着することが可能な領域分割部材として機能する領域分割部材160cが描かれたフィルム2801(シールでもよい)のように、レンズ131の形状にあわせた、あるいは、レンズ131のどこに打擲すればよいのかがわかるフィルム2801のことである。情報処理装置2600は、このようなフィルム2801の設計情報、あるいは、フィルム2801を形成可能なプリンタ等と連動して、フィルム2801を生成するものであってもよい。また、フィルムは、領域分割部材160を帖着するための位置を示すためのものであってもよく、レンズ131に裏から重ねて、フィルムに表示されている領域分割部材160cの位置に、別途領域分割部材を帖着することとしてもよい。
【0150】
また、領域分割部材160aは、図28(b)に示すように、ファッション性を考慮した視線を妨げない範囲で、デコレーションが施されてもよい。デコレーションが施されることにより、領域分割部材160aをレンズ131に取り付けて行動することへのモチベーションを向上させることができる。また、使用者の領域分割部材160aの購買意欲を向上させることができる。
【0151】
(第9実施形態)
第9実施形態においては、第8実施形態において物理的に実現した領域分割部材を、フレキシブルに実現する手法について説明する。
【0152】
図29(a)は、第9実施形態における顔面装着具1Jの外観を示す概観図である。また、図29(b)は、顔面装着具1Jを図29(a)に示す状態における裏面側から見た図である。なお、図29(b)においては、図面を見やすくするために、テンプルは示してない。
【0153】
第9実施形態に係る顔面装着具1Jは第8実施形態における顔面装着具1Hと異なり、レンズ131cを備える。レンズ131cは、眼鏡としての顔面装着具1Jのレンズとして機能する一方で、画像を表示可能な表示部(モニタ)としても機能する。即ち、レンズ131cは、所謂透明ディスプレイである。図29(a)、(b)では、レンズ131c上に領域分割部材161bとしての領域分割画像を表示した例を示しているが、領域分割画像の表示が不要な場合は当該部分は透明になる。
【0154】
つまり、顔面装着具1Jは、第7実施形態や第8実施形態に示した領域分割部材相当の構成として、同等の位置に、領域分割画像を表示することで、第7実施形態や第8実施形態に示した顔面装着具と同様に、使用者の眼球の上転を促し、姿勢の矯正を促すことができる。
【0155】
顔面装着具1Jは、外観上は基本的に通常の眼鏡とほぼ同様である。一方で、顔面装着具1Jは、テンプル133に、使用者からの入力を受け付ける入力キーとして機能する複数のボタン2901、2902、2911、2912、2913、2914を備える。なお、図29(a)では、各ボタンを図面右側のテンプル133に設ける例を示しているが、これは左側のテンプル133に設けることとしてもよいし、両方に設けることとしてもよい。ボタン2901は、電源のON/OFFを入力するためのボタンである。ボタン2902は、表示された領域分割画像を消去するためのボタンである。ボタン2901が押下されることによって顔面装着具1Jは駆動する。ボタン2911~2914は、領域分割画像を自身の目に対してどの位置に表示するかを指定する入力を行うためのボタンである。ボタン2911は、使用者から見て、目の左側に領域分割画像を表示するための入力を行うためのボタンである。ボタン2912は、使用者から見て、目の右側に領域分割画像を表示するための入力を行うためのボタンである。ボタン2913は、使用者から見て、目の上側に領域分割画像を表示するための入力を行うためのボタンである。ボタン2914は、使用者から見て、目の下側に領域分割画像を表示するための入力を行うためのボタンである。また、方向キーのうち斜めに隣接する二つのボタンを同時に押すことで領域分割画像を、その方向に斜めにして表示することとしてもよい。また、領域分割画像が表示されている状態で方向キーとしてのボタン2911から2914のいずれかが押下された場合には、その押下されたボタンが示す方向に領域分割画像を移動させるようにしてもよい。
【0156】
また、図29(b)に示されるように、顔面装着具1Jは、裏面側に撮像部3010を備えることとしてもよい。撮像部3010は、いわゆるカメラであり、使用者の目を撮像可能な位置、画角で備え付けられる。撮像部3010は、使用者の目を撮像するのに用いられる。撮像部3010がリムに対して設けられている位置(既知の位置)、撮像された目の位置とから、リムと目の相対位置関係を特定することができ、領域分割画像の表示位置の補正に利用することができる。
【0157】
図30は、顔面装着具1Jの構成例を示すブロック図である。図30に示すように、顔面装着具1Jは、撮像部3010と、入力部3020と、制御部3030と、記憶部3040と、表示部3050と、を備える。顔面装着具1Jの各部は、制御ライン3060を介して互いに接続される。また、図示していないが、顔面装着具1Jは、顔面装着具1Jを動作させるための電源部を備える。この電源部は着脱可能なボタン電池等により実現されてもよく、外部からの電力の供給を受けて充電可能な充電電池であってもよい。
【0158】
撮像部3010は、顔面装着具1Jに設けられたカメラであり、顔面装着具1Jを装着した使用者の目を撮像する機能を有する。撮像部3010は、制御部3030からの指示に従って、撮像を実行し、撮像により得られた撮像画像を制御部3030に伝達する。
【0159】
入力部3020は、顔面装着具1Jのオペレータ等からの入力を受け付けて、制御部3030に伝達する機能を有する入力インターフェースである。入力部3020は、ボタン2901、2902、2911~2914を含み、各ボタンからの入力を受け付ける。入力部3020は、例えば、領域分割部材を表示する位置を指示する入力を受け付けて、入力された内容を、制御部130に伝達する。
【0160】
記憶部3040は、顔面装着具1Jが動作上必要とする各種のプログラム及びデータを記憶する機能を有する。記憶部3040は、例えば、フラッシュメモリ等により実現することができる。記憶部3040は、領域分割画像をレンズ上に表示するためのプログラムを記憶している。
【0161】
表示部3050は、制御部3030からの指示にしたがって、指定された位置に、領域分割画像を表示する機能を有する透明ディスプレイである。
【0162】
制御部3030は、顔面装着具1Jの各部を制御する機能を有するプロセッサである。制御部3030は、シングルコアにより実現されても、マルチコアにより実現されてもよい。制御部3030は、位置特定部3031と、補正部3032と、を備える。
【0163】
位置特定部3031は、撮像部3010が撮像した撮像画像に基づいて、使用者の目と、リムとの位置関係を特定する。撮像部3010がリムに対して設けられている位置は予め定まっているので、撮像画像から、撮像部3010と、目の位置との相対位置関係を計算により特定することができる。その結果、リムと、目の位置との関係を特定することができる。位置特定部3031は、特定したリムと、目の位置との相対位置関係を、補正部3032に伝達する。
【0164】
補正部3032は、伝達されたリムと、目の位置との相対位置関係に基づいて、領域分割画像を表示する表示位置を、必要に応じて補正する。使用者は眼鏡を使用する場合に、たまにずれることがあるが、そのような場合に、領域分割画像の位置によっては、使用者の視界の邪魔になることがある。そのような場合に、補正部3032は、領域分割画像の表示位置を基準表示位置から補正する。
【0165】
制御部3030は、基本的に入力部3020から伝達された押下されたボタン2911~2914に応じた位置に、領域分割画像をレンズ131c(表示部3050)に表示する。また、補正部3032による補正が実行されている場合には、補正後の表示位置に、領域分割画像を表示する。また、制御部3030は、領域分割画像が表示されている状態で方向キー(ボタン2911~2914)のいずれかが押下された場合に、その方向キーが示す方向に表示位置をずらして表示部3050に表示させる。また、制御部3030は、ボタン2902の押下を受け付けた場合であって、領域分割画像を表示していた場合には、領域分割画像の表示を消去する。
【0166】
図31は、顔面装着具1Jの動作例を示すフローチャートである。図31に示すフローチャートは、顔面装着具1Jの電源が入っている状態での動作例である。
【0167】
図31に示すように、顔面装着具1Jの制御部3030は、入力部3020のボタン2911~2914に対する入力があったかを判定する(ステップS3101)。ボタン2911~2914に対する入力がない場合には(ステップS3101のNO)、ステップS3108の処理に移行する。
【0168】
ボタン2911~2914に対する入力があった場合には(ステップS3101のYES)、制御部3030は、撮像部3010に使用者の目を撮像させる。撮像部3010は、制御部3030からの指示に従って撮像を実行し、撮像により得られた撮像画像を、制御部3030に伝達する(ステップS3102)。
【0169】
制御部3030の位置特定部3031は、伝達された撮像画像に基づいて、リムと使用者の目との相対位置関係を特定する。位置特定部3031は、特定したリムと使用者の目との相対位置関係を補正部3032に伝達する。補正部3032は、伝達された情報に基づいて、領域分割画像の表示位置の補正が必要か否かを判定する(ステップS3103)。当該判定は、例えば、リムと使用者の目との相対位置関係の基準位置からのずれが所定の閾値を上回るか否かによって行われる。そして、補正が必要であると判定された場合(ステップS3103のYES)、つまり、所定の閾値を上回る場合に、補正部3032は、ずれている方向とは逆側に領域分割画像の表示位置をずらすように補正する(ステップS3104)。補正が必要でない場合には(ステップS3103のNO)、ステップS3105の処理に移行する。
【0170】
制御部3030は、表示部3050の指定された方向の、領域分割画像を表示部3050に表示させる(ステップS3105)。
【0171】
制御部3030は、領域分割画像の消去指示があるかを、ボタン2902の押下があったか否かに基づいて判定する(ステップS3106)。ボタン2902の押下がない場合には(ステップS3106のNO)、ステップS3108の処理に移行する。ボタン2902の押下があった場合には(ステップS3106のYES)、制御部3030は、表示部3050に表示している領域分割画像の表示を消去させる(ステップS3107)。
【0172】
制御部3030は、終了入力があるか否かを判定する(ステップS3108)。即ち、ボタン2901に対する押下があったか否かを判定する。ボタン2901に対する押下がなかった場合には(ステップS3108のNO)、ステップS3101の処理に戻る。ボタン2901に対する押下があった場合には(ステップS3108)、処理を終了する。このようにして、顔面装着具1Jは、使用者からの入力にしたがって、適宜、領域分割画像をレンズ131c(表示部3050)に表示することができる。顔面装着具1Jに領域分割画像を表示している場合には、表示している目の位置に応じて、その表示位置とは反対側への眼球の回転を促すことができ、また、姿勢の矯正を行うこともできる。
【0173】
なお、顔面装着具1Jは、上述した機能を全て備える必要はなく、外部の装置と連動して同等の機能を実現する構成としてもよい。例えば、制御部3030の位置特定部3031の機能や、補正部3032の機能は外部の装置により実現されてもよい。即ち、顔面装着具1Jは、外部の装置と通信する通信機能を備えてよく、撮像画像を外部の装置に送信し、外部の装置によって算出された補正後の領域分割画像の表示位置を外部の装置から受信する構成としてもよい。
【0174】
(第10実施形態)
上記第7実施形態等において、眼鏡としての顔面装着具のレンズ131に、領域分割部材160を取り付けることにより、使用者の視線方向を誘導、矯正することで、姿勢を矯正することについて説明したが、本第10実施形態においては、領域分割部材160のレンズ131に対する取付位置の決定方法を説明する。
【0175】
図32は、領域分割部材160のレンズ131への取付位置を決定する処理例を示すフローチャートである。
【0176】
図32に示すように、まず使用者の姿勢を矯正したい方向を決定する(ステップS3201)。なお、ここでは、姿勢を矯正と言っているが、これは、無意識による筋緊張等により使用者が本来動かすことが可能な関節の可動域よりも狭い状態で身体を動かしているところ、領域分割部材を用いることで、使用者が本来動かすことができる位置まで身体を動かし、その結果、姿勢の矯正を促すことを含む。そして、姿勢を矯正したい方向に応じた、領域分割部材160の基本取付位置を決定する。ここで、領域分割部材160の位置に応じた姿勢の矯正方向とは、顔面装着具を装着した使用者から見て、領域分割部材160がある方向とは反対方向への眼球の回転を促す方向のことであり、同方向に向かって体の回転も促すことになる。例えば、使用者から見て自身の眼の左側に領域分割部材160がある場合には、右側方向への回転を促す。逆、あるいは、上下の場合も同様である。発明者らは、レンズ131に領域分割部材160を設けた場合に、領域分割部材160を設けていない場合よりも身体をより大きく旋回させられることができる、即ち、姿勢の矯正が促されていることを知見した。
【0177】
そこで、領域分割部材160を設けていない状態での身体の旋回度合を見るために、領域分割部材160を取り付けていない顔面装着具を装着し、身体を旋回させた状態(以下、通常状態と呼称する)の使用者をカメラ等により撮像する(ステップS3202)。
【0178】
次に、領域分割部材160を、レンズ131の基本位置に取り付けて、領域分割部材160が取り付けられた顔面装着具を装着し、身体を旋回させた状態(以下、仮測定状態と呼称する)の使用者をカメラ等により撮像する(ステップS3203)。
【0179】
そして、通常状態の撮像画像における旋回状態と、仮測定状態の撮像画像における旋回状態と、を比較する(ステップS3204)。そして、ステップS3203と、ステップS3204と、の処理を、領域分割部材160のレンズ131への取付位置を変更しながら、実行する。
【0180】
そして、各取付位置に応じて得られた比較結果から、使用者の望む旋回度合を示したときに装着していた顔面装着具の領域分割部材160の取付位置を使用者の望む取付位置として決定する(ステップS3205)。
【0181】
本処理は、第三者により実行されてもよいが、システム的に実行されてもよい。即ち、ステップS3202、S3203の撮像と、ステップS3204の比較、ステップS3205の領域分割部材160の取付位置の決定は、コンピュータにより実行されてもよい。
【0182】
即ち、コンピュータは、各領域分割部材160の取付位置と、その際の撮像画像との入力を受け付ける。撮像画像の入力は、カメラ等の撮像機器からの入力を受け付けることとしてもよいし、カメラ等により撮像された撮像画像を通信ネットワークを介して受信したものの入力を受け付けることとしてもよい。また、コンピュータは、使用者がどれだけの姿勢の矯正強度を所望するかの入力を受け付ける。コンピュータには予め姿勢強度に応じた領域分割部材の取り付け位置のテーブル等のデータを保持し、撮像画像から特定される旋回度合が使用者の望む姿勢の矯正強度に達しているか否かによって、領域分割部材の取り付け位置の補正を行って、使用者が所望する矯正強度に合致する撮像画像に対応する顔面装着具への領域分割部材160の取付位置を決定することとしてもよい。
【0183】
領域分割部材160の取付位置の決定方法は、図32の手法に限定するものではなく、使用者にとって望ましい姿勢矯正が実現できる領域分割部材160の取付位置を特定できれば他の手法を用いてもよい。例えば、領域分割部材160を基本位置に取り付けた状態での使用者の旋回度合を撮像画像から特定し、予め、姿勢矯正と旋回度合との関係を特定した関数を用いて、使用者の望む姿勢矯正強度を入力変数として、領域分割部材160の取付位置を基本位置から補正することで、取付位置を決定することとしてもよい。
【0184】
図33を用いて、図32の処理内容を具体的に説明する。図33(a)は、使用者の左目を正面から見た図であって、レンズ131の左側(使用者から見た場合には、自身の左目の右側に領域分割部材160を設ける例を示している。なお、図示はしていないが、使用者の右目に対向するレンズにも同様にその左側(使用者から見た場合には自身の右目の右側)に領域分割部材160を設ける。このような顔面装着具1を用意した場合、自然と使用者は通常よりも左側の方に視線を向けやすくなる。そうすると、それに伴って図33(b)の状態が正面を向いた状態として、図33(c)の矢印で示す方向、即ち、使用者から見たら反時計回りの左旋回がしやすくなる。
【0185】
図33(a)には、複数の領域分割部材の取付位置の例を示している。領域分割部材の取付位置160a1~160a4はあくまで一例ではあるが、これらの位置に取り付けた場合の使用者の身体の旋回の度合を撮影によって得られる。ここでいう旋回の度合とは、一例として、図33(b)と図33(c)との比較により得られる回転の角度により求めることができる。この角度を、各取付位置で測定する。そして、それらの比較を行うのが、ステップS3204の比較の処理となる。また、取付位置160a1よりも取付位置160a4の方が、姿勢の矯正度合いは強くなる。
【0186】
なお、使用者が右方向への旋回をよりしやすくするための姿勢の矯正を行いたい場合には、図33(d)に示すように、レンズ131の右側、つまり、使用者から見た場合には、自身の眼の左側に領域分割部材160が位置するように取り付ける。また、使用者が身体(顔)を俯かせる方向への姿勢の矯正をしたい場合には、図33(e)に示すように使用者の眼の上側に領域分割部材を取り付け、また、使用者が身体(顔)を上に向かせる方向への姿勢の矯正をしたい場合には、図33(f)に示すように使用者の眼の上側に領域分割部材を取り付けるとよい。
【0187】
領域分割部材の取付位置の決定処理は、上述したように図32に示す処理に限定するものではない。図34に示すフローチャートのように取付位置を決定してもよい。図32に示すフローチャートでは、使用者の黒目にかからない位置であって黒目により近い位置の方が姿勢の矯正度合が強くなることを前提としているが、使用者の身体的な構造的破綻(例えば、使用者の筋肉が凝り固まっていてそもそも姿勢の矯正ができない場合など)などにより使用者によっては、姿勢の矯正度合に影響が出なかったり、そもそも領域分割部材の影響が姿勢の変化に出なかったりする場合もありえる。
【0188】
そこで、図32に示すフローチャートは、図34に示すフローチャートのような処理としてもよい。図32では、姿勢の矯正度合による領域分割部材の取付位置を決定することとしているが、本フローチャートでは、領域分割部材による効果が表れているか否かによって決定する。図34のフローチャートは、図32のステップS3204からの派生例である。
【0189】
図34に示すように、ステップS3204の処理における比較の結果、領域分割部材160による効果がない場合、即ち、通常状態と仮測定状態とで変化がない場合には(ステップS3405のNO)、領域分割部材160を取り付けた顔面装着具を装着した状態で使用者は歩行を実行する(ステップS3406)。歩行を実行することで光学的変化を使用者の眼に取り入れさせるとともに、使用者のCPGに反映されて効果がでる場合があるためである。歩行距離は任意であってよい。
【0190】
そして、領域分割部材160を取り付けた顔面装着具を装着した使用者が所定距離の歩行を実行した後に、再度、使用者の仮測定状態を撮像する(ステップS3407)。そして、撮像しなおした仮測定状態と、通常状態と、の撮像画像における使用者の旋回度合を比較する(ステップS3408)。
【0191】
この比較の結果、効果がある、即ち、仮測定状態の方が通常状態よりも旋回度合が大きい場合には(ステップS3409のYES)、現在の領域分割部材の取付位置に決定し、出力し(ステップS3410)、処理を終了する。また、ステップS3405においても効果があると判定した場合には(ステップS3405のYES)、同様に、現在の領域部活部材の取付位置を、使用者が使用する取付位置として決定し、出力し(ステップS3410)、処理を終了する。
【0192】
一方、歩行を行っても領域分割部材160による効果が使用者の身体に現れなかった場合には(ステップS3409のNO)、他の取付位置で効果が現れるかを試す。ここで、他の取付位置、即ち、使用者の姿勢の矯正方向に鑑みて有効と考えられる取付位置についておおよその位置で試行済みである場合には(ステップS3411のYES)、その使用者には、領域分割部材160を取り付けた顔面装着具の効果がないと判断し、その情報を出力して終了する。このような場合、関節内または筋肉の構造的変化(変形や拘縮)が原因である可能性を示唆して専門医の受診を勧めることとしてもよい。
【0193】
まだ、試行していない取付位置がある場合には(ステップS3411のNO)、領域分割部材160のレンズ131への取付位置を変更し(ステップS3412)、図32のステップS3202の処理に戻る。
【0194】
このように、領域分割部材160の取付位置を、効果の有無だけで判断するようにしてもよい。また、ここでは、身体の旋回度合を比較することとしているが、これはその限りではなく、領域分割部材160の取付位置に応じて関連する関節の可動域の変化をみるようにしてもよいし、歩行における歩容の変化(例えば、歩行の姿勢であったり、歩幅であったり、股関節の開脚角度など)を比較するようにしてもよい。
【0195】
なお、領域分割部材160aの眼に対する取付位置は、必ずしも左右で同じである必要はない。また、1つのレンズ131に対して複数個所に領域分割部材160aを設けてもよい。即ち、一例として、図35(a)に示すように、使用者の眼の下側に領域分割部材160aを設けつつ、使用者の右目の左側(使用者から見ると右側)、使用者の左目の右側(使用者から見ると左側)に領域分割部材160aを設けることとしてもよい。右目と左目とで影響する身体部位が異なる(強く影響がでる部位が異なる)場合に、身体の左右で影響を与えたい場所によって、領域分割部材の取付位置を変更することとしてよい。
【0196】
また、あるいは、図35(b)に示すように、使用者の右眼の下側と左側(使用者から見ると右側)、使用者の左目の上側と右側(使用者から見ると左側)に領域分割部材160aを設けることとしてもよい。このような配置は、例えば、斜視の使用者の眼の向きの矯正を行うことができる可能性がある。
【0197】
また、領域分割部材160は、図14(d)を用いて上述した、一方から他方に向けて厚みを変更したプリズムレンズと併用することとしてもよい。このとき、図35(c)に示すようにプリズムレンズの薄い側に取り付けることとしてもよいし、図35(d)に示すようにプリズムレンズの厚い側に取り付けることとしてもよい。図35(c)、(d)に示すようなプリズムレンズは、領域分割部材と同様の効用を身体にもたらすことができるが、このとき、図35(c)の位置に取り付けた場合には、プリズムレンズによる効用を薄める効果を期待でき、図35(d)の位置に取り付け場合には、プリズムレンズによる効用を助長する効果を期待できる。図35(c)の場合は、プリズムレンズによる効きが強くて使用者が直進して歩行できないような場合に用いることとしてよいし、図35(d)の場合は、プリズムレンズによる効きがいまいち感じられない場合に使用するとよい。
【0198】
(補足)
なお、上述の実施形態は、本発明の代表的な実施形態を単に例示したものにすぎない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に対して種々の変形を行ってもよい。
【0199】
例えば、上記各実施形態においては、顔面装着具1、1B、1C、1D、1E、1Fが、ゴーグルを模した形状、マスク状、眼鏡状、およびテープ状に形成されている構成を示したが、このような態様に限られない。顔面装着具は、遮蔽部材と装着部材とを備えている構成であれば、任意に形状を変更することができる。
一例として、装着部材を耳の両側を覆うヘルメット状に形成し、遮蔽部材を装着部材の前方開口縁から使用者の頬を覆うパット状に形成してもよい。
【0200】
また、上記第1実施形態から第5実施形態における遮蔽部材を用いた、使用者の視空間の一部を遮蔽する手法は、ゾーン遮蔽(または下方ゾーン遮蔽)と呼称されてもよい。これに対して、第6実施形態における領域分割部材を用いた使用者の視空間を二つの領域に分割するための遮蔽は、ライン遮蔽と呼称されてもよい。上述したように、ゾーン遮蔽の場合は、歩行時の使用者の無意識下の下方向を視認できないことに伴う不安や恐怖を覚える可能性があるが、これは、使用者の歩幅や歩行速度を抑制することにつながり、より安定した歩行を与えることができる。しかし、ゾーン遮蔽は歩行時以外、例えば、使用者がパソコン等を操作している場合などでは、身体への不安感を与えることはなく眼球の動きの矯正に留まる。一方で、ライン遮蔽の場合は、上述の通り身体的不安感を覚えることはなく、視空間上で無意識に見るゾーンとその際の見え方を好適環境にするために使用者に姿勢の矯正を促すことができる。また、その際には、眼球上転運動と眼球下転運動の選択を無意識に適正化することができる。また、ライン遮蔽の場合には、ゾーン遮蔽とは逆に、使用者の歩幅を広げ、歩行速度の向上を促すことができる。歩幅が広くなったり、歩行速度が向上したりすると歩行のCPG(Central Pattern Generator)に対する影響が強くなると言える。したがって、ライン遮蔽の場合には、歩行のCPGに対する影響の促進が、ゾーン遮蔽よりも大きく、姿勢矯正の効果がより大きく反映される可能性が高い。
【0201】
また、前述した変形例に限られず、これらの変形例を選択して適宜組み合わせてもよいし、その他の変形を施してもよい。
【符号の説明】
【0202】
1、1B、1C、1D、1E、1G、1H、1J 顔面装着具
10、30、40 装着部材
20、40、60、90、139 遮蔽部材
21 遮蔽帯
22 連結帯
91 固定部材
【要約】
【課題】 使用者の顔面に装着させて使用者の姿勢の矯正を促すことができる顔面装着具を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の使用者の視界内に、使用者の有効視野を遮ることなく使用者の下側の周辺視野を遮る、または、使用者の視界を少なくとも上下方向で複数に分割することで、使用者の姿勢の矯正を促す姿勢矯正部材と、姿勢矯正部材と連結され、かつ使用者の顔面に装着される装着部材と、を備えている。
【選択図】図1
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