(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】マイクロポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 7/06 20060101AFI20220314BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
F04B7/06
B81B3/00
(21)【出願番号】P 2020536121
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018085336
(87)【国際公開番号】W WO2019129532
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-09-08
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514207337
【氏名又は名称】ゼンジーレ・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】ウィース・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ペリエ・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】フーバー・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー・マティアス
【審査官】大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-065870(JP,U)
【文献】特開昭60-036788(JP,A)
【文献】特開昭63-105217(JP,A)
【文献】特開2011-074764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 7/06
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロポンプ(2)において、
ステータ(4)と、前記ステータに対して軸方向に、また回転可能に移動可能なロータ(6)と、を含み、
前記ステータは、ロータシャフト受容キャビティ(18)と、前記ロータシャフト受容キャビティ(18)に流体接続された入口(14)および出口(16)と、を含み、前記ロータは、前記ロータシャフト受容キャビティ(18)内に受容される
ロータシャフト(24)を含み、
前記ロータシャフト(24)は、前記ステータのピストン部分(12)を受容してピストンチャンバ(42)を形成するロータキャビティ(39)と、前記ピストン部分(12)と前記ロータキャビティ(39)の内側側壁との間に装着されて前記ピストンチャンバ(42)の端部を密閉的に閉じるシール(44)と、を含み、前記ロータは、前記ピストンチャンバ(42)を前記ロータシャフト(24)の外側表面(60)に流体接続するロータシャフトポート(38)をさらに含み、前記ロータシャフトポート(38)は、ポンプの吸入段階に対応する前記ロータの回転角(α)にわたって前記入口(14)に少なくとも部分的に重なるように配置され、ポンプの吐出段階に対応する前記ロータの回転角(β)にわたって前記出口(
16)に少なくとも部分的に重なるように配置されて
おり、
前記マイクロポンプは、前記ロータ(6)と前記ステータ(4)との間に位置づけられ、前記ロータシャフト(24)上の前記ロータシャフトポート(38)の入口部分(40)を覆うように配置された弾性の膜(20)をさらに含み、前記膜は、入口側の圧力が前記ピストンチャンバ(42)内の圧力よりも大きいため、前記入口部分(40)内に変形可能である、ことを特徴とする、マイクロポンプ。
【請求項2】
前記ロータシャフトポート(38)は、前記ロータの外側表面(60)に大きな直径を有し、かつ前記ロータキャビティ(39)に向かって小さな直径を有する、凸状またはテーパ状の形状を有する入口部分(40)を含む、請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項3】
前記入口(14)は、少なくとも30°の角度セグメントにわたって延びる長方形の形状を有する、請求項1または2に記載のマイクロポンプ。
【請求項4】
前記出口(16)は、少なくとも30°の角度セグメントにわたって延びる長方形の形状を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロポンプ。
【請求項5】
前記入口は、前記ロータシャフト受容キャビティ(18)の内側表面(62)に沿って回転軸Aの周りに30°~120°の角度にわたって延びる、請求項1から4のいずれか一項に記載のマイクロポンプ。
【請求項6】
前記出口は、前記ロータシャフト受容キャビティ(18)の内側表面(62)に沿って回転軸Aの周りに30°~120°の角度にわたって延びる、請求項1から5のいずれか一項に記載のマイクロポンプ。
【請求項7】
前記ピストン部分(12)は、前記ステータのベース壁(52)から延び、前記ロータシャフト(24)の端部(48)が、前記ベース壁に隣接して配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のマイクロポンプ。
【請求項8】
前記ステータおよび前記ロータは、前記ステータに対する前記ロータの角変位の関数として、前記ステータに対する前記ロータの軸方向変位を定めるカムシステム(28)を構成する、請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロポンプ。
【請求項9】
連結器(30)を介して前記ロータ(6)に回転連結された回転駆動部(8)を含み、前記連結器(30)は、前記ステータに向かって前記ロータに力(Fx)を加える付勢機構(36)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロポンプ。
【請求項10】
前記カムシステムは、前記ロータおよび前記ステータのうちの一方の上のカムトラック(32)と、前記ステータおよび前記ロータのうちの一方の上のカムフォロア(34)と、を含み、前記カムトラックおよび前記カムフォロアは、前記ロータ(6)のヘッド(22)の外径上に位置づけられ、前記ヘッドは、前記ロータシャフト(24)の端部に接続されている、請求項
8に記載のマイクロポンプ。
【請求項11】
前記膜は、前記ステータ(4)に回転不能に固定されている、請求項
1に記載のマイクロポンプ。
【請求項12】
前記膜は、前記ロータに固定され、前記ロータシャフトポート(38)の前記入口部分(40)を覆う、請求項
1に記載のマイクロポンプ。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、マイクロポンプに関する。マイクロポンプは、少量の液体を分配するために、特に医学的適用、例えば薬剤送達装置において使用するために使用され得る。本発明に関連するマイクロポンプは、少量の液体の高精度送達を必要とする非医学的適用においても使用することができる。
【0002】
〔関連技術の説明〕
特に医学的および非医学的適用において使用され得る、少量の液体を送達するためのマイクロポンプが、EP1803934およびEP1677859に記載されている。前述の文献に記載されたマイクロポンプは、異なる直径の第1および第2の軸方向延長部を有するロータを含み、第1および第2の軸方向延長部は、ステータの第1および第2のシールと係合して、ロータの角変位および軸方向変位の関数として、それぞれのシールを横切る液体連通を開閉する、第1および第2のバルブを形成する。ステータの第1のシールと第2のシールとの間にポンプチャンバが形成され、それによって、ロータの1回転サイクル当たりの液体のポンピング体積は、ロータの第1の軸方向延長部と第2の軸方向延長部との直径の差、およびステータに対するロータの角度位置の関数としてカムシステムによってもたらされるロータの軸方向変位の両方の関数である。
【0003】
ロータの連続的な回転によって少量の液体をポンピングする能力は、多くの状況において有利である。1回転サイクル当たりにポンピングされる液体の体積が小さいことを考慮すると、回転駆動部の出力部は、ピストンポンプのピストンを前進させるためのねじ機構の速度よりも一般に大きい速度で回転することができる。回転駆動部は制御が簡単で、ピストン機構が回避されることにより、ポンプを非常にコンパクトにすることができる。また、ポンプモジュールは、低コストの使い捨て部品で、例えば注入されたポリマーで、作られ得る。
【0004】
しかしながら、特に摩擦に敏感な分子を含有する液体をポンピングするための、特定の適用では、EP1803934に記載のようなロータシャフトとポンプのバルブシールとの間の摩擦は望ましくない場合がある。これは、例えば、剪断応力に敏感である、特定のタンパク質などの大きな分子では問題となり得る。
【0005】
上記の問題は、他のポンプシステム、特にピストンロッドによって前進されるプランジャを備えたカートリッジを含むピストンポンプまたはポンプを提供することによって克服することができる。しかしながら、このようなポンプシステムは、あまり経済的でなく、また、ピストン機構の長さを考慮すると、あまりコンパクトではない。ピストンポンプシステムの信頼性および安全性もまた、液体容器とポンプシステムの出口との間の直接的な流体連通をポンプシステムが本質的に遮断しないので、問題となり得る。
【0006】
〔発明の概要〕
前述した事柄を考慮して、本発明の目的は、信頼性が高く安全な方法で少量の液体をポンピングすることができるマイクロポンプを提供することである。
【0007】
ポンピングされている液体に剪断応力を加えないマイクロポンプを提供することは、特定の適用において有利である。
【0008】
非常にコンパクトなマイクロポンプを提供することが有利である。
【0009】
製造が経済的であり、かつ、薬剤送達装置の使い捨て部品など、使い捨ての再利用不可能な構成要素に組み込まれ得る、マイクロポンプを提供することは有利である。
【0010】
本発明の目的は、請求項1に記載のマイクロポンプによって達成される。
【0011】
本明細書では、ステータと、ステータに対して軸方向に、また回転可能に移動可能なロータと、を含むマイクロポンプが開示され、ステータは、ロータシャフト受容キャビティと、ロータシャフト受容キャビティに流体接続された入口および出口と、を含み、ロータは、ロータシャフト受容キャビティに受容されるシャフトを含む。ロータシャフトは、ステータのピストン部分を受容してピストンチャンバを形成するロータキャビティと、ピストン部分とロータキャビティの内側側壁との間に装着されてピストンチャンバの端部を密閉的に閉じるシールと、を含み、ロータは、ピストンチャンバをロータシャフトの外側表面に流体接続するロータシャフトポートをさらに含み、ロータシャフトポートは、ポンプの吸入段階に対応するロータの回転角(α)にわたって入口に少なくとも部分的に重なるように配置され、ポンプの吐出段階に対応するロータの回転角(β)にわたって出口に少なくとも部分的に重なるように配置される。
【0012】
有利な実施形態では、ロータシャフトポートは、ロータ外側表面に大きな直径を有し、かつロータキャビティに向かって小さな直径を有する、凸状またはテーパ状の形状を有する入口部分を含む。
【0013】
有利な実施形態では、入口は、少なくとも30°の角度セグメントにわたって延びる長方形の形状を有する。
【0014】
有利な実施形態では、出口は、少なくとも30°の角度セグメントにわたって延びる長方形の形状を有する。
【0015】
有利な実施形態では、入口は、ロータシャフト受容キャビティの内側表面に沿って回転軸Aの周りに30°~120°の角度にわたって延びる。
【0016】
有利な実施形態では、出口は、ロータシャフト受容キャビティの内側表面に沿って回転軸Aの周りに30°~120°の角度にわたって延びる。
【0017】
有利な実施形態では、ピストン部分は、ステータのベース壁から延び、ロータシャフトの端部が、ベース壁に隣接して配置される。
【0018】
有利な実施形態では、ステータおよびロータは、ステータに対するロータの角変位の関数としてステータに対するロータの軸方向変位を定めるカムシステムを構成する。
【0019】
有利な実施形態では、ポンプは、連結器を介してロータに回転連結された(coupled in rotation)回転駆動部を含み、連結器は、ステータに向かってロータに力(Fx)を加える付勢機構を含む。
【0020】
有利な実施形態では、カムシステムは、ロータおよびステータのうちの一方の上のカムトラックと、ステータおよびロータのうちの一方の上のカムフォロアと、を含み、カムトラックおよびカムフォロアは、ロータのヘッドの外径上に位置づけられ、ヘッドは、ロータシャフトの端部に接続される。
【0021】
別の実施形態では、ポンプは、ロータとステータとの間に位置づけられ、ロータシャフト上のポートの入口部分を覆うように配置された弾性膜をさらに含み得、膜は、入口側の圧力がピストンチャンバ内の圧力よりも大きいため、入口部分内に変形可能である。
【0022】
一実施形態では、膜はステータに回転不能に固定され得る。
【0023】
一実施形態では、膜は、ロータに固定され、ポートの入口部分を覆うことができる。
【0024】
本発明のさらなる目的および有利な特徴は、特許請求の範囲、詳細な説明および添付図面から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるマイクロポンプのポンプモジュールの概略断面図である。
【
図2a】第1の実施形態によるポンプのポンプサイクルにおける、液体の吸入から吐出までの間の、1つのロータ位置を示す概略断面図である。
【
図2b】第1の実施形態によるポンプのポンプサイクルにおける、液体の吸入から吐出までの間の、別のロータ位置を示す概略断面図である。
【
図2c】第1の実施形態によるポンプのポンプサイクルにおける、液体の吸入から吐出までの間の、別のロータ位置を示す概略断面図である。
【
図2d】第1の実施形態によるポンプのポンプサイクルにおける、液体の吸入から吐出までの間の、別のロータ位置を示す概略断面図である。
【
図3a】第1の実施形態の変形例による、360°の回転サイクルにわたるステータの入口および出口に対するロータのバルブポートの展開変位プロファイルを示す図である。
【
図3b】第1の実施形態の別の変形例による、360°の回転サイクルにわたるステータの入口および出口に対するロータのバルブポートの展開変位プロファイルを示す図である。
【
図3c】第1の実施形態の別の変形例による、360°の回転サイクルにわたるステータの入口および出口に対するロータのバルブポートの展開変位プロファイルを示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態によるマイクロポンプのポンプモジュールの概略断面図である。
【
図5a】第2の実施形態によるポンプのポンプサイクルにおける、液体の吸入から吐出までの間の、1つのロータ位置を示す概略断面図である。
【
図5b】第2の実施形態によるポンプのポンプサイクルにおける、液体の吸入から吐出までの間の、別のロータ位置を示す概略断面図である。
【
図5c】第2の実施形態によるポンプのポンプサイクルにおける、液体の吸入から吐出までの間の、別のロータ位置を示す概略断面図である。
【
図5d】第2の実施形態によるポンプのポンプサイクルにおける、液体の吸入から吐出までの間の、別のロータ位置を示す概略断面図である。
【
図6】第2の実施形態による、360°の回転サイクルにわたるステータの入口および出口に対するロータのバルブポートの展開変位プロファイルを示す図である。
【0026】
〔例示的な実施形態の詳細な説明〕
図面を参照すると、本発明の実施形態によるマイクロポンプ2は、ステータ4と、回転駆動部8に連結されたロータ6と、を含み、回転駆動部8は、ステータ4に対して軸Aを中心にロータ6を回転させる。また、ロータ6は、ステータに対して軸方向に移動可能であり、軸方向Axは、回転軸Aと整列している。
【0027】
回転駆動部8は、連結器30を介してロータ6に連結され、連結器30は、モータに対するロータの軸方向変位を可能にするが、回転駆動部の出力部をロータに回転連結する。連結器30は、ステータ4に向かって軸方向の力Fxを加える例えばコイルばねのようなばねの形態の付勢機構36を含む。
【0028】
ロータおよびステータは、ロータの角変位の関数としてロータの軸方向変位を定めるカムシステム28を構成する。カムシステム28は、相補的なカムフォロア34に対して付勢されるカムトラック32を含むことができ、付勢機構36は、カムフォロアがカムトラックを圧迫することを確実にする。カムトラック32は、ステータに対するロータの角度位置の関数としてステータに対するロータの軸方向位置を定めるプロファイルPを有する。
【0029】
360°の回転サイクルにわたって展開されたカムトラックプロファイルPの一例を
図3および
図6に示す。
【0030】
図示の実施形態では、カムトラック32はロータ6のヘッド22上に形成され、相補的なカムフォロア34はステータ4のリム上に設けられている。しかしながら、当業者は、カムフォロアがロータ上に設けられ、カムトラックがステータ上に設けられてもよいことを理解するであろう。
【0031】
図示された実施形態では、付勢機構36およびカムシステム28は、ロータの角度位置の関数としてステータに対するロータの軸方向変位を定める軸方向変位システムを共に形成するが、本発明の範囲から逸脱することなく他の軸方向変位システムを実装してもよい。例えば、軸方向変位は、回転駆動部に連結された電磁アクチュエータによってもたらされてもよく、または回転運動と軸方向運動の両方を出力する駆動部によってもたらされてもよい。
【0032】
ステータ4はキャビティ18を含み、ロータ6はキャビティ18内に回転可能かつスライド可能に挿入されたシャフト24を含む。ロータシャフト受容キャビティ18は、特にロータシャフト24の外側表面に極めて近接した円筒状内側表面を有することができる側壁50を含む。ステータ4は、入口14および出口16を含む。ロータの回転方向に応じて、入口は出口に、出口は入口に、それぞれなり得ることが理解されよう。変形例では、ポンプは、ポンプを通じた液体の双方向ポンピングのために可逆的であってもよく、その方向は、ロータの回転方向に依存する。代替的に、ポンプは、一方向となるように構成することができ、ポンプを通じて一方向にのみ流体をポンピングするために、ロータを一方向にのみ回転させることができる。
【0033】
図示の実施形態では、入口および出口の両方がステータの側壁50を通って延びるが、入口および/または出口は、適用および所望の構成に応じて、ステータの様々な位置で液体源または液体出力装置に連結するようにステータの本体内に延びる様々な形状のチャネルとして形成され得ることが理解されよう。
【0034】
本発明の実施形態によるマイクロポンプは、患者に液体薬剤を投与するための薬剤送達装置において有利に使用され得る。したがって、出口は、薬剤の経皮投与のために針に、または患者に接続されたカテーテルもしくは他の液体導管に、接続され得る。入口は、薬剤バイアル、カートリッジ、または他の液体薬剤源に接続され得る。
【0035】
マイクロポンプは、ロータ6とステータ4との間にシール26をさらに含み、このシールは、ステータのロータシャフト受容キャビティ18内でステータキャビティの挿入端部54に近接して位置づけられる。図示の実施形態では、ステータ24上のカムフォロアは、挿入端部54から突出している。
【0036】
ロータ6はキャビティ39を含み、ステータ4はキャビティ39内にスライド可能に受容されるピストン部分12を含む。シールリング44が、キャビティ39とピストン部分12との間でピストン部分の周囲に位置づけられる。シールリング44は、ピストン部分12の自由端部56に隣接して位置づけられる。このようにして、自由端部56と、シール44と、ロータキャビティ39の境界を定める内壁58との間にピストンチャンバ42が形成される。ピストンチャンバ42は、ポート38を介してロータシャフト24の外側表面60に流体接続されている。
【0037】
図示の実施形態では、ポート38は、キャビティ39から延びるチャネル46と、ロータシャフトの外側表面60から延びる入口部分40と、を含む。外側表面60は、特に、本質的に円筒状の表面とすることができる。入口部分40は、チャネル46に対して拡大されており、例えば、外側表面60に大きな開口部を有し、チャネル46に向かって、かつチャネル46に接続された、より小さなセクションを有する、本質的にテーパ状、漏斗、またはカップの形状を有することができる。
【0038】
図1~
図3に示す第1の実施形態では、ステータに対するロータの回転中に、ポート38の入口部分40が入口14および出口16に対して軸方向および回転方向に移動して、ロータ6内のピストンチャンバ42がポンプサイクルの吸入部分中に入口と液体連通し、次いでポンプサイクルの吐出部分中に出口16と液体連通することができる。シール45が、ロータシャフト受容キャビティ18の内側で入口14を囲み、シール45が、ロータシャフト受容キャビティ18の内側で出口16を囲み、これらのシールは、ロータの外側表面60に対して付勢する。また、入口部分40の周囲にシール(不図示)を設けてもよい。入口および出口のシール45は、入口および出口を通って流れる液体が、ロータシャフトとステータ内の受容キャビティ18との間の空間内に漏れないことを確実にする。
【0039】
ポンプサイクルの吸入部分の間、ロータの入口部分40は、吸入角αにわたり入口14の一部と重なり、これにより、軸方向変位システムはロータに軸方向運動Axを与え、ピストンチャンバ42の容積が増加し、かくして、液体を入口14からピストンチャンバ42内に引き込む。ロータが吸入角αを通過した後、ポート38は側壁50の内側表面によって閉じられ、入口14にも出口16にも重ならない。
【0040】
ロータが回転した後、ポート38が出口16と重なると、吐出段階が開始する。ポンプサイクルの吐出段階は、ポート38が出口16と少なくとも部分的に重なったままであり、ロータ6がステータ4に対して変位してピストンチャンバ42の容積が減少する、角度吐出範囲βにわたって生じる。
【0041】
吸入段階の間、ロータシャフトポート38とステータ入口14との重なりは、開放入口バルブV1を形成し、ロータシャフトポート38とステータ出口16との重なりは、開放出口バルブV2を形成する。入口バルブV1および出口バルブV2は、ロータシャフトポート38が入口14とも出口16とも重ならないときに、ポンプサイクルの吸入段階とポンプサイクルの吐出段階との間の、ある角回転にわたって閉じられる。
【0042】
ロータキャビティ39内に挿入されたステータピストン部分12は、有利には、ピストンチャンバ42を入口および出口の高さに位置させ、ほぼ完全に空にすることを可能にして、これにより、吸入動作と吐出動作との間の液体のデッドボリュームを減少させる。これはまた、小径のロータキャビティ39および対応するステータピストンを単に設けることによって、1サイクル当たりのポンピング体積をロータシャフトの寸法と比較して小さくすることを可能にする。
【0043】
ピストン部分12はまた、ロータシャフトのセンタリングおよび案内を都合よく改善して、ロータシャフトの回転方向および軸方向の案内を改善する一方で、ロータとステータとの間のシール44による摩擦力を低減する。また有利には、入口14は、入口14と出口16との間のポート38の閉鎖位置のために、出口16と直接流体連通することができない。入口14は、軸Aを中心として回転角α’にわたって延在する長方形のスロット形状を備えていてもよく、このスロット形状は、吸入角αにわたってロータポート38と重なることを可能にし、この吸入角αの間、ロータは、ポンプサイクルの吸入段階中にポンプチャンバ容積42を増加させる軸方向変位をもたらす。出口16は、軸Aを中心として回転角β’にわたって延在する長方形のスロット形状を備えることができ、このスロット形状は、吐出角βにわたってロータポート38と重なることを可能にし、この吐出角βの間、ロータは、ポンプサイクルの吐出段階の間にポンプチャンバ容積42を減少させる軸方向変位をもたらす。有利な実施形態では、吸入段階の回転角αおよび吐出段階の回転角βは、有利には、それぞれ60°~120°の範囲内とすることができる。これにより、一方では、ロータの円滑な軸方向変位を生じさせてポンプチャンバを満たすか、または空にするのに十分な角度範囲が可能になると共に、入口と出口との間のバルブ閉鎖安全マージンを確保する。
【0044】
本発明の範囲内では、吸入角αは、吐出角βとは異なっていてもよいことに注目することができる。
【0045】
有利な実施形態では、例えば
図3bに示されるように、吸入角αは吐出角βよりも大きい。前述の実施形態では、ポンプサイクルの吸入段階は、吐出段階よりも遅く、液体への負圧を減少させて、気泡発生のような関連する悪影響を回避する。多くの適用において、液体は高い吐出流量および圧力に耐えることができるので、吐出段階は短くてよい。それにもかかわらず、別の変形例では、例えば
図3cに示すように、吐出段階よりも短い吸入段階を有するように関係を逆にすることも可能である。例えば、より遅い吐出段階は、吐出段階中の液体のインパルス送達を減少させるために、特定の適用において所望され得る。
【0046】
図3aに示す実施形態では、吸入段階および吐出段階は実質的に同一であるが、上述したように、所望の吸入および排気口圧力(intake and outtake pressures)ならびに流量に応じて、軸方向変位システムに関連して、入口および出口の角度範囲を変化させることができる。
【0047】
角変位φの関数としての軸方向変位プロファイルPも、液体の吸入流量および吐出流量を制御および最適化するように変化させることができる。
【0048】
図4、
図5a~
図5dおよび
図6に示される第2の実施形態では、ピストンチャンバ42は、入口14または出口16と直接流体連通していない。ステータ側壁50の内側表面に固定された膜20が、ロータの外側表面60とステータキャビティ18の内側表面62との間に装着される。膜20は、弾性であり、入口部分40と流体連通するピストンチャンバ42内に不十分な圧力があるときに入口部分40に吸い込まれるように構成されている。吸入段階の間、ピストンチャンバ42の増大した容積は、膜20の一部を入口部分40に吸い込む不十分な圧力をピストンチャンバ内に生じさせる。ポンプサイクルの吸入段階の間、入口部分40は入口14と少なくとも部分的に重なるので、入口からの液体は、膜の吸い込まれた部分によって形成された入口部分40の容積内に引き込まれる。ロータが回転すると、入口部分内の液体が入口部分と共に回転し、これにより、ロータが回転すると、回転しない膜が入口部分にスライドしながら吸い込まれる。入口部分内の液体は、その容積内に捕捉され、ロータと共に移動する。入口部分40が入口14と重ならなくなると、入口部分内の液体は、膜とステータ側壁50の内側表面62との間に捕捉され、入口部分40が出口16と重なるまでこれらに沿って移動する。ピストンチャンバ42内の不十分な圧力が元に戻り(reduced)、入口部分内の膜がステータキャビティ側壁に接する位置に戻り、よって、入口部分に捕捉された液体を、出口16を通じて吐出する。膜は、特に、ロータが回転するときに容易にスライドおよび変形して入口部分に出入りするように構成された、薄い弾性ポリマーシートから作ることができる。
【0049】
変形例では、弾性膜をロータに固定して、ロータシャフトポート38の入口部分40を覆ってもよい。このようにして、この変形例の膜はロータと共に回転する。この変形例では、入口と出口との間で入口部分内に捕捉された液体が密閉され、ポンプサイクルの吸入段階と吐出段階との間で入口部分内に留まることを確実にするために、入口部分40を囲み、ステータ側壁の内側表面62に対して付勢されるシールが設けられる。
【0050】
〔図示された特徴部のリスト〕
マイクロポンプ2
ステータ4
入口14
出口16
ロータシャフト受容キャビティ18
側壁50
挿入端部54
ベース壁52
ピストン部分12
自由端部56
シール44
膜20
ロータ6
ヘッド22
シャフト24
ロータシャフトポート38
入口部分40
チャネル46
シール45
ロータキャビティ39
ピストンチャンバ42
内壁58
端部48
外側(円筒状)表面60
ロータ-ステータシール26
第1のバルブV1
第2のバルブV2
軸方向変位システム
カムシステム28
ロータ上のカムトラック32
ステータ上の相補的なカムフォロワ34
連結器30
付勢機構36
回転駆動部8
【0051】
〔実施の態様〕
(1) マイクロポンプ(2)において、
ステータ(4)と、前記ステータに対して軸方向に、また回転可能に移動可能なロータ(6)と、を含み、
前記ステータは、ロータシャフト受容キャビティ(18)と、前記ロータシャフト受容キャビティ(18)に流体接続された入口(14)および出口(16)と、を含み、前記ロータは、前記ロータシャフト受容キャビティ(18)内に受容されるシャフト(24)を含み、
前記ロータシャフト(24)は、前記ステータのピストン部分(12)を受容してピストンチャンバ(42)を形成するロータキャビティ(39)と、前記ピストン部分(12)と前記ロータキャビティ(39)の内側側壁との間に装着されて前記ピストンチャンバ(42)の端部を密閉的に閉じるシール(44)と、を含み、前記ロータは、前記ピストンチャンバ(42)を前記ロータシャフト(24)の外側表面(60)に流体接続するロータシャフトポート(38)をさらに含み、前記ロータシャフトポート(38)は、ポンプの吸入段階に対応する前記ロータの回転角(α)にわたって前記入口(14)に少なくとも部分的に重なるように配置され、ポンプの吐出段階に対応する前記ロータの回転角(β)にわたって前記出口(14)に少なくとも部分的に重なるように配置されていることを特徴とする、マイクロポンプ。
(2) 前記ロータシャフトポート(38)は、前記ロータの外側表面(60)に大きな直径を有し、かつ前記ロータキャビティ(39)に向かって小さな直径を有する、凸状またはテーパ状の形状を有する入口部分(40)を含む、実施態様1に記載のマイクロポンプ。
(3) 前記入口(14)は、少なくとも30°の角度セグメントにわたって延びる長方形の形状を有する、実施態様1または2に記載のマイクロポンプ。
(4) 前記出口(16)は、少なくとも30°の角度セグメントにわたって延びる長方形の形状を有する、実施態様1から3のいずれかに記載のマイクロポンプ。
(5) 前記入口は、前記ロータシャフト受容キャビティ(18)の内側表面(62)に沿って回転軸Aの周りに30°~120°の角度にわたって延びる、実施態様1から4のいずれかに記載のマイクロポンプ。
【0052】
(6) 前記出口は、前記ロータシャフト受容キャビティ(18)の内側表面(62)に沿って回転軸Aの周りに30°~120°の角度にわたって延びる、実施態様1から5のいずれかに記載のマイクロポンプ。
(7) 前記ピストン部分(12)は、前記ステータのベース壁(52)から延び、前記ロータシャフト(24)の端部(48)が、前記ベース壁に隣接して配置されている、実施態様1から6のいずれかに記載のマイクロポンプ。
(8) 前記ステータおよび前記ロータは、前記ステータに対する前記ロータの角変位の関数として、前記ステータに対する前記ロータの軸方向変位を定めるカムシステム(28)を構成する、実施態様1から7のいずれかに記載のマイクロポンプ。
(9) 連結器(30)を介して前記ロータ(6)に回転連結された回転駆動部(8)を含み、前記連結器(30)は、前記ステータに向かって前記ロータに力(Fx)を加える付勢機構(36)を含む、実施態様1から8のいずれかに記載のマイクロポンプ。
(10) 前記カムシステムは、前記ロータおよび前記ステータのうちの一方の上のカムトラック(32)と、前記ステータおよび前記ロータのうちの一方の上のカムフォロア(34)と、を含み、前記カムトラックおよび前記カムフォロアは、前記ロータ(6)のヘッド(22)の外径上に位置づけられ、前記ヘッドは、前記ロータシャフト(24)の端部に接続されている、実施態様1から9のいずれかに記載のマイクロポンプ。
【0053】
(11) 前記ロータ(6)と前記ステータ(4)との間に位置づけられ、前記ロータシャフト(24)上の前記ロータシャフトポート(38)の入口部分(40)を覆うように配置された弾性膜(60)をさらに含み、前記膜は、入口側の圧力が前記ピストンチャンバ(42)内の圧力よりも大きいため、前記入口部分(40)内に変形可能である、実施態様1から10のいずれかに記載のマイクロポンプ。
(12) 前記膜は、前記ステータ(4)に回転不能に固定されている、実施態様11に記載のマイクロポンプ。
(13) 前記膜は、前記ロータに固定され、前記ロータシャフトポート(38)の前記入口部分(40)を覆う、実施態様11に記載のマイクロポンプ。