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特許7039719地面との界面における空気入りタイヤの挙動分析装置
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  • 特許-地面との界面における空気入りタイヤの挙動分析装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】地面との界面における空気入りタイヤの挙動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20220314BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020545575
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 IB2019051536
(87)【国際公開番号】W WO2019171208
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】102018000003276
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
【住所又は居所原語表記】Kleine Kloosterstraat 10, B-1932 Zaventem (BE)
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ マウリ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ アレバ
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-014428(JP,A)
【文献】特開2003-240681(JP,A)
【文献】特開2004-354193(JP,A)
【文献】特開2017-67690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面との界面領域における空気入りタイヤ(100)の動的挙動を分析する装置(1)であり:
・支持フレーム(3);
・前記支持フレーム(3)によって担持された多層検出プレート(2)であって:
-使用中に、動作中の前記空気入りタイヤ(100)と接触する界面層(4)と;
-前記界面層(4)と接合された基層(5)と、を順に備える多層検出プレート(2);および
・前記多層検出プレート(2)の前記基層(5)をフレーミングし、かつ直接または間接的にキャプチャすることができるように配置された画像検出装置(9)を含む装置(1)であって、
前記界面層(4)が、前記界面層に当たる光のほとんどを反射することなく透過させるように少なくとも部分的に透明であり、少なくとも前記界面領域で16μm~160μmの粗さ(Ra)を有し、前記基層が少なくとも部分的に透明であることを特徴とする、装置(1)。
【請求項2】
前記界面層(4)の粗さ(Ra)が32μm~140μmである、請求項に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記界面層(4)の粗さ(Ra)が約125μmに等しい、請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記界面層(4)が、複数のミクロ幾何学的不規則性を含む粗い表面仕上げを有する、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記画像検出デバイス(9)が高速度カメラである、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記多層検出プレート(2)の前記基層(5)を直接照明するのに適した照明要素(7)をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記界面層(4)と接触して前記多層検出プレート(2)上に水層をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤと路面との間の界面領域に関する実データを分析する装置に関する。特に、この装置は、とりわけ湿潤路面において、様々な動的走行条件(例えば、空気入りタイヤの回転(rolling)、制動(braking)および/または操舵(steering))下で、空気入りタイヤの接地領域および/または水の排出プロファイルを検出することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
湿潤路面において、回転、制動、操舵などの様々な動的走行条件下で空気入りタイヤの挙動を分析することは、その性能を評価し、高いレベルの安全性を確保するために不可欠である。特に、空気入りタイヤと路面との間の界面領域、すなわち、空気入りタイヤと路面との間の接触領域を分析することにより、湿潤路面上を走行している状態での排水能力など、空気入りタイヤの設計の良さに関する重要な情報を得ることができる。
【0003】
様々な動的走行条件下での空気入りタイヤの密着力およびアクアプレーニング現象に対する耐性を評価できるようにするには、排水プロファイル、すなわち、トレッドの様々な溝から排出される水の流れを調べるために界面領域を分析することが重要である。
【0004】
これらの類の分析を実行するには、理論シミュレーションモデルを使用することが可能であるが、それでもなお、様々な動的走行条件下での空気入りタイヤの実際の挙動に関するデータを実証的に分析することが望ましい。この場合、空気入りタイヤの実際の挙動に関するデータを得るためには、路上試験に頼る必要がある。しかしながら、現時点では、界面領域の分析、特にトレッドの様々な溝から排出される水の排出プロファイルおよび/または速度の分析を、湿潤路面における動的走行条件下での空気入りタイヤの試験中に高い精度で実行することは不可能である。
【0005】
一般に、これらの試験では、様々な動的走行条件下で、空気入りタイヤを測定装置の検出プレートに接触させて回転させ、制動し、および/または操舵する。このような検出プレートは、ガラス、樹脂、または高分子材料でできた透明で滑らかな層で構成されている。検出プレートの下には、照明源および画像検出デバイスがあり、空気入りタイヤの通過中に該空気入りタイヤの界面領域の一連の画像を取得するためにレンズが検出プレートに面している。
【0006】
しかしながら、特定の試験条件、例えば湿潤路面の試験条件、すなわち路面上に、したがって検出プレート上に水が存在する試験条件下では、空気入りタイヤが検出プレート上で回転し、操舵され、または制動される場合、特に、検出プレート上の水の存在によって摩擦が減少するため、検出デバイスによってキャプチャされた画像は、完全に使用可能でなく、かつ/あるいは現実的でない。
【0007】
これは、特に、(この場合に限らないが)湿潤路面における、空気入りタイヤのトレッドの様々な溝を通して排出される水の排出プロファイルおよび/または速度のその後の研究を困難にし、信頼性を低下させる。
【0008】
DE102013107018は、透明な接触載荷板上の構成要素の支持面を検出する装置であって、該接触載荷板の下に配置され、支持面を検出するためにその上に位置合わせされた少なくとも1つの画像取得システムを備える装置を開示している。
【0009】
欧州特許第2554969号は、空気入りタイヤ試験機に使用される回転ドラムであって、アルミニウム合金からなり、空気入りタイヤが押し付けられる路面を備えた路面基材を有する回転ドラムを開示している。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の目的は、特に湿潤路面において、動的走行条件下で、路面との界面における空気入りタイヤの挙動を分析する装置であって、従来技術を参照して上述した欠点を回避することができる装置を提供することである。
【0011】
これは、請求項1に記載の装置によって達成される。本発明の2次的特徴は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明は、前述の問題を克服することにおいて、多数の明らかな利点を含む。
【0013】
特に、本発明による装置では、使用時に、動作(回転、制動および/または操舵)している空気入りタイヤと接触している検出プレートの表面が、従来技術の装置に対して空気入りタイヤと検出プレートとの摩擦を増加させるように実装されている。
【0014】
このようにして、摩擦を増加させることにより、空気入りタイヤが装置の検出プレートにより多く密着し、従来技術の装置に関する滑動または摺動が回避される。これにより、画像検出デバイスは、様々な動的走行条件下での水の排出プロファイルのより鮮明かつより正確な画像であって、道路での通常の使用における空気入りタイヤの実際の動作にも対応し、かつそれにより近い画像を取得することができる。
【0015】
本発明の利点、ならびに特徴および使用方法は、添付の図面を参照して、単に非限定的な例として与えられる、本発明の好適な実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による装置の第1の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の利点、特徴および使用方法は、単に非限定的な例として与えられる、いくつかの実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0018】
ここで、上述の図を参照して、本発明の様々な実施形態および変形例を説明する。
【0019】
本発明は、様々な動的走行条件(例えば、回転、操舵、制動および/またはその組み合わせ)下、および様々な路面条件、特に湿潤条件下で、空気入りタイヤと路面との間の界面領域における該空気入りタイヤの挙動を分析する装置に関する。
【0020】
図1を特に参照すると、全体として符号1で示される装置は、検出プレート2と、該検出プレートを担持するのに適した支持フレーム3と、を備える。
【0021】
検出プレート2と支持フレーム3とで、略箱状の中空構造を形成している。
【0022】
好ましくは、装置の使用中、検出プレート2は路面200の高さに配置され、支持フレーム3は少なくとも部分的に地下にある。特に、検出プレート2は、該検出プレート2に対して垂直に配置された支持フレーム3の4つの側壁31,32,33,34によって、該検出プレート2の周囲に沿って囲われ、支持されている。
したがって、箱状構造は、検出プレート2に平行な底壁35によって閉じられている。
【0023】
検出プレート2は、多層であり、すなわち、互いに重なり合う少なくとも2つの異なる層からなる。
【0024】
多層検出プレートの第1の層は、使用中に、動作中の空気入りタイヤ100と接触する界面層4で表される。湿潤路面上で空気入りタイヤの挙動を試験するために、界面層4を水で覆うことができる。
【0025】
この界面層4は、好ましくはプラスチックで粗い材料からなる。すなわち、界面層4は、その表面の一方に、少なくとも空気入りタイヤ100との界面に、該界面層4に対する空気入りタイヤの密着を促進するような方法で、溝、しわ、波紋、または粒状性などのミクロ幾何学的不規則性を有する材料からなる。
好ましくは、界面層の粗さRaは16μm~160μmである。より好ましくは、粗さRaは32μm~140μmであり、さらに好ましくは、約125μmに等しい。
【0026】
界面層4は、少なくとも部分的に透明であり、好ましくは光学的に透明であり、すなわち、界面層4に当たる光のほとんどを反射することなく透過させることができる。
界面層4の透明度は、乾燥条件下よりも水と接触しているときの方が大きい。すなわち、湿潤条件下では、乾燥条件下よりも、界面層4に当たるより多くの光を、反射することなく透過させることができる。
【0027】
この特性は、特に濡れているときに、様々な動的走行条件(例えば、回転、操舵、制動および/またはその組み合わせ)下で、空気入りタイヤ100と路面との間の界面領域における該空気入りタイヤの挙動を分析するのに特に有利である。
【0028】
16μm~160μmである界面層4の粗さ範囲Raは、過小(16μm未満)と過大(160μm超)との間の最良の妥協のウィンドウを表している。粗さが過小であると、界面層4の透明性に有利に働くが、空気入りタイヤ100との改善された密着特性が損なわれ、粗さが過大であると、空気入りタイヤ100との改善された密着特性は増すが、界面層4の透明性が減少する。
【0029】
粗さRaを有する表面は、好ましくは成形によって得られる。
【0030】
多層検出プレート2は、基層5をさらに備える。この層5は、界面層4と直接接合されている。
【0031】
この接合のために、界面層4は、好ましくは、基層5と直接接触する滑らかな接着性下面を有する。この滑らかな下面は、界面層4の粗さRaを有する面とは反対側にある。
基層5は、少なくとも部分的に透明であり、好ましくは光学的に透明である材料から作られ、該基層に当たるほとんどの光は反射せずにそれを通過することができる。例えば、基層5は、ガラスまたはプレキシガラスで作ることができる。
【0032】
好ましい実施形態では、装置(1)は、界面層(4)と接触して多層検出フロア(2)上に水層をさらに含む。
【0033】
この水層は、好ましくは10mm未満であり、より好ましくは7mm未満であり、さらに好ましくは約2mmに等しい。
【0034】
ベース層5は、支持フレーム3上に配置された少なくとも1つの照明要素7によって直接照明することができる。好ましくは、均一な照明を確保するために、複数の照明要素7を支持フレーム3の側壁31,32,33,34に適用する。
【0035】
あるいは、またはさらに、いくつかの照明要素7を支持フレーム3の底壁35に適用することができる。
【0036】
この装置は、基層5をフレーミングし、かつ直接(または適切に配置されたミラーを用いて間接的に)キャプチャすることができるように配置された画像検出デバイス9をさらに備えることができる。好ましくは、画像検出デバイス9は、支持フレーム3の底壁35上に載置されるか、またはそのレンズが基層5に向けられた状態で側壁内に挿入される。
【0037】
さらに、画像検出デバイス9は、好ましくは、高速度カメラである。
【0038】
基層5および界面層4の照明および透明性により、画像検出装置9は、空気入りタイヤが検出プレートの界面層4上を通過する際に、該空気入りタイヤの界面領域100の一連の画像を明確に取得することができる。
【0039】
以上に、好ましい実施形態を参照して本発明を説明した。以下に述べる請求項の保護範囲によって定義されるように、同じ発明の核に関連する他の実施形態が存在し得ることを理解されたい。
図1