(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】テンショナ
(51)【国際特許分類】
F16H 7/12 20060101AFI20220314BHJP
F02B 67/06 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
F16H7/12 A
F02B67/06 A
(21)【出願番号】P 2020552346
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 US2019022752
(87)【国際公開番号】W WO2019190805
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-11-16
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】サーク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】モラ,アンソニー アール.
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508116(JP,A)
【文献】特表2005-511984(JP,A)
【文献】実開平5-14711(JP,U)
【文献】特開2005-188659(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005039719(DE,A1)
【文献】特開2007-231968(JP,A)
【文献】特表2013-525698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/12
F02B 67/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベー
スと、
前記ベースに装着され、ワンウェイクラッ
チと、第1のピボットアー
ムと、第1の方向に負荷がかかる第1の捩じりバ
ネと、前記ピボットアームに軸支される第1のプー
リとを備えた第1のテンショナサブアッセンブ
リと、
前記ベースに装着され、第2のピボットアー
ムと、第1の方向とは逆の第2の方向に負荷がかかる第2の捩じりバ
ネと、前記第2のピボットアームに軸支される第2のプー
リとを備えた第2のテンショナサブアッセンブ
リとを備え、
前記第1のテンショナサブアッセンブリが、延性の可撓性部
材と前記ワンウェイクラッチを通じて、前記第2のテンショナサブアッセンブリと協働的に係合し、
前記第1の捩じりバネと前記第2の捩じりバネは、前記可撓性部材に対して引張負荷を与え、
前記ワンウェイクラッチが、前記第1のピボットアームに摩擦係合し、これによって、前記第1のピボットアームの前記第2のピボットアームから離れる相対的な動きが制限されることを特徴とするテンショナ。
【請求項2】
前記ワンウェイクラッチが、径方向に拡大可能で、負荷のかかる条件で前記第1のピボットアームと摩擦係合する巻き付けバネを備えることを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項3】
前記第1のピボットアームと回転係合する第1のスプロケットと、
前記第2のピボットアームと回転係合する第2のスプロケットとをさらに備え、
前記延性の
可撓性部材が、前記第1のスプロケットと係合し、
前記第1の捻りバネが、前記第1のピボットアームと前記第1のスプロケットとの間で係合し、
前記第2のスプロケットが、前記
可撓性部材と係合し、
前記第2の捩じりバネが、前記第2のピボットアームと前記第2のスプロケットとの間で係合することを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項4】
前記ワンウェイクラッチは、前記第1のスプロケットと前記第1のピボットアームとの間で係合することを特徴とする請求項3に記載のテンショナ。
【請求項5】
前記ワンウェイクラッチには、巻き戻し方向に荷重が掛かることを特徴とする請求項2に記載のテンショナ。
【請求項6】
ベースと、
前記ベースに装着され、ワンウェイクラッチと、第1のピボットアームと、第1の方向に負荷が掛かる第1の捩じりバネと、前記第1のピボットアームに軸支される第1のプーリとを備えた第1のテンショナサブアッセンブリと、
前記第1のピボットアームと回転係合し、延性の引張部材と係合する第1のスプロケットと、
前記ベースに装着され、第2のピボットアームと、第1の方向とは反対の第2の方向に負荷がかかる第2の捩じりバネと、前記第2のピボットアームに軸支される第2のプーリとを備えた第2のテンショナアッセンブリと、
前記第2のピボットアームと回転係合し、前記引張部材と係合する第2のスプロケットを備え、
前記第1の捩じりバネが、前記第1のピボットアームと前記第1のスプロケットとの間で係合するとともに、前記ワンウェイクラッチが、前記第1のスプロケットと係合し、
前記第2の捩じりバネが、前記第2のピボットアームと前記第2のスプロケットとの間で係合し、
前記第1の捩じりバネと前記第2の捩じりバネは、前記延性の可撓性部材に対して引張負荷を与え、
前記ワンウェイクラッチが、前記第1のピボットアームと摩擦係合し、これによって、前記第1のピボットアームの前記第2のピボットアームから離れる相対的な動きが制限されることを特徴とするテンショナ。
【請求項7】
前記第1のテンショナサブアッセンブリが、前記第2のテンショナサブアッセンブリと反対の方向へ付勢されることを特徴とする
請求項1に記載のテンショナ。
【請求項8】
ベースと、
前記ベースに軸回転装着される第1のテンショナサブアッセンブリと、
前記ベースに軸回転装着される第2のテンショナサブアッセンブリと、
前記第1のテンショナサブアッセンブリと前記第2のテンショナサブアッセンブリとをつなぐ延性部材とを備え、
前記第1のテンショナサブアッセンブリが、前記第2のテンショナサブアッセンブリと反対の方向へ付勢され、
前記第1のテンショナサブアッセンブリと摩擦係合するワンウェイクラッチをさらに備え、これによって、前記第1のテンショナサブアッセンブリの前記第2のテンショナサブアッセンブリから離れる相対的な動き
が制限され、
さらに、
前記第1のテンショナサブアッセンブリが、第1のピボットアームと、第1の方向に負荷が掛かる第1の捩じりバネと、前記第1のピボットアームに軸支される第1のプーリとを備え、
前記第2のテンショナサブアッセンブリが、第2のピボットアームと、第1の方向とは反対の第2の方向に負荷が掛かる第2の捩じりバネと、前記第2のピボットアームに軸支される第2のプーリとを備えることを特徴とす
るテンショナ。
【請求項9】
前記第1のピボットアームと回転係合し、前記延性部材と係合する第1のスプロケットと、
前記第2のピボットアームと回転係合し、前記延性部材と係合する第2のスプロケットとをさらに備え、
前記第1の捩じりバネが、前記第1のピボットアームと前記第1のスプロケットとの間で係合し、
前記第2の捩じりバネが、前記第2のピボットアームと前記第2のスプロケットとの間で係合し、
前記ワンウェイクラッチが、前記第1のスプロケットと前記第1のピボットアームとの間で摩擦係合することを特徴とする請求項8に記載のテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンショナに関し、特に、延伸する可撓性部材とワンウェイクラッチを通じて、第2のテンショナサブアッセンブリと協働的に係合する第1のテンショナサブアッセンブリを備えたテンショナであって、第1の捩じりバネと第2の捩じりバネが、長く延びた可撓性部材に対して引張負荷を与え、ワンウェイクラッチが、第1のピボットアームに摩擦して係合し、これによって第1のピボットアームの第2のピボットアームから離れる相対的な動きが制限されるテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトテンショナは、ベルトに荷重を与えるために使用される。ベルト荷重は、動作中に1つまたは複数の掛け回されたプーリ上でベルトが滑るのを抑える。一般的に、ベルトは、エンジンに関する様々なアクセサリーを駆動するためのエンジンアプリケーションに使用される。例えば、エアコンディショニングコンプレッサおよびオルタネータは、ベルト駆動システムによって駆動されるアクセサリーの2つである。
【0003】
ベルトテンショナは、アームに軸支されるプーリを備える。バネは、アームとベースとの間で接続される。また、バネは、減衰機構と係合する。減衰機構は、互いに接触する摩擦面を有する。減衰機構は、ベルト駆動の動作によって生じるアームの振動を減衰する。これは、ベルトの予想寿命を延ばす。
【0004】
燃料の経済性および効率性を高めるため、多くの自動車メーカーが、アクセサリーベルト駆動システム(ABDS)を駆動する動力に、交流発電機を組み込むことを始めている。そのような交流発電機は、モータジェネレータユニット(MGU’s)あるいはベルトスタータージェネレータ(BSG’s)と一般的に呼ばれている。これらは、エンジンの始動、バッテリチャージ、あるいは乗り物の加速に用いることができる。標準的な動作中において、クランクシャフトプーリは、ABDSを駆動する。この場合、ベルトのクランクプーリへ入る側が、引張側で、ベルトのクランクプーリから出ていく側が、緩む側である。しかしながら、MGUが、(始動時など)システムを駆動するために用いられる場合、ベルトの引張側は、MGUへ入る側となり、ベルトの緩む側は、MGUから離れてクランクプーリに入る側となる。
【0005】
代表的な技術として、米国特許第9140338号明細書には、ベースと、ベースに軸回転しながら係合する第1のピボットアームと、第1のピボットアームに軸支される第1のプーリと、ベースに軸回転しながら係合する第2のピボットアームと、第2のピボットアームに軸支される第2のプーリと、第1のピボットアームおよび第2のピボットアームと係合する歯付き係合部を有する可撓性の引張部材を備え、これによって、第1および第2のピボットアームが協調して動作し、テンショナアッセンブリがベースに対して軸回転係合し、可撓性の引張部材と係合するテンショナが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
必要とされるのは、長く伸びた可撓性部材とワンウェイクラッチを通じて、第2のテンショナサブアッセンブリと協働的に係合する第1のテンショナサブアッセンブリを備えたテンショナであって、第1の捩じりバネと第2の捩じりバネが、延性のある可撓性部材に対して引張負荷を与え、ワンウェイクラッチが、第1のピボットアームに摩擦係合し、これによって第1のピボットアームの第2のピボットアームから離れる相対的な動きが制限されるテンショナである。本発明はこれを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主な側面は、延性のある可撓性部材とワンウェイクラッチを通じて、第2のテンショナサブアッセンブリと協働的に係合する第1のテンショナサブアッセンブリを備えたテンショナであって、第1の捩じりバネと第2の捩じりバネが、長く伸びる可撓性部材に対して引張負荷を与え、ワンウェイクラッチが、第1のピボットアームに摩擦係合し、これによって第1のピボットアームの第2のピボットアームから離れる相対的な動きが制限されるテンショナを提供することである。
【0008】
本発明の他の側面は、以下の本発明の記述および添付図面によって示され、あるいは明らかにされる。
【0009】
本発明のテンショナは、ベースと、ベースに軸回転装着される第1のテンショナサブアッセンブリと、ベースに軸回転装着される第2のテンショナサブアッセンブリと、第1のテンショナサブアッセンブリと第2のテンショナサブアッセンブリとをつなぐ引張部材と、第1のテンショナサブアッセンブリと摩擦係合するワンウェイクラッチとを備え、第1のテンショナサブアッセンブリが、第2のテンショナサブアッセンブリと反対の方向へ付勢され、第1のテンショナサブアッセンブリの第2のテンショナサブアッセンブリから離れる相対的な動きが、第1の定められた動作条件に対して制限され、第1のテンショナサブアッセンブリの第2のテンショナサブアッセンブリに向けた相対的な動きが、第2の定められた動作条件に対して制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
明細書の一部として組み込まれて形成された添付図面は、明細書の記述とともに本発明の好ましい実施形態を例示し、本発明の本質を説明するのに役立つ。
【0011】
【
図6】補償バネと巻き付けバネを備えたプーリアームアッセンブリの断面図である。
【
図8】スプロケットを備えたサブアッセンブリの断面図である。
【
図11】スプロケット同期ベルトアッセンブリの斜視図である。
【
図14】プーリ軸受けアッセンブリの断面図である。
【
図15】アームプーリアッセンブリの断面図である。
【
図16】主要バネを備えたアームプーリアッセンブリの断面図である。
【
図17】主要バネの向きを示した斜視底面図である。
【
図18】スプロケットを備えたサブアッセンブリの断面図である。
【
図19】スプロケット同期ベルトアッセンブリの斜視図である。
【
図20】ベルトを備えたサブアッセンブリの断面図である。
【
図23A】ベルトの緩む側が交互するテンショナのダイアグラムである。
【
図23B】ベルトの緩む側が交互するテンショナのダイアグラムである。
【
図24】MGUのトルク性能に対するベルト張力を例示している。
【
図25】ベルトの延びに対するテンショナの反応図である。
【
図26】第1のサブアッセンブリの補償機構の詳細図である。
【
図28】サブアッセンブリに硬いバネを備えたトルク張力曲線を示す図である。
【
図29】サブアッセンブリに柔らかいバネを備えたトルク張力曲線を示す図である。
【
図30】補償機構がない場合のベルト長さの変化を示す図である。
【
図31】最適な補償機構を備えた場合のベルト長さの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、テンショナの上面図である。テンショナは、2つのサブアッセンブリ、すなわち第1のテンショナサブアッセンブリ10と第2のテンショナサブアッセンブリ20とを備える。各サブアッセンブリは、装着用ブラケット30に対して軸回転するように装着されている。可撓性の長く伸びる歯付きベルトあるいは結合部材40が、2つのサブアッセンブリを接続させる。
【0013】
図2は、テンショナの底面図である。ブラケット30は、テンショナを装着面(図示せず)に取り付けるために使用される。
【0014】
図3は、サブアッセンブリの分解図である。第1のテンショナアッセンブリは、第1のプーリ50、軸受け60、ピボットピン70、ブッシュ80、第1のピボットアーム90、補償バネ100、巻き付けバネ(wrap spring)110、第1のスプロケット120、そしてリベット130とを備える。軸受け60は、プーリ50の軸面53と軸受け60の内輪62との間の締まりばめ(interference fit)によって、プーリ50に圧入されている。プーリ50の端部52は、内輪62の底部上および底部を超えて加締められている。
【0015】
ブッシュ80は、孔91の内面とブッシュ80の外面81との間で滑合して第1のピボットアーム90内に配置されている。ピボットピン70は、ピン外表面71とブッシュ内表面82との間できつく滑合して、第1のピボットアーム90の孔91とブッシュ80を通るように配置され、これによって各ブッシュをピボットピン70上に所定の場所へ固定する。第1のピボットアーム90は、ピン70周りに軸回転する。ピン70は、ブラケット30に圧入されている。
【0016】
図4は、プーリ軸受けアッセンブリの断面図である。プーリ軸受けアッセンブリ50、60は、軸受けの外輪64と第1のピボットアーム90の内面93との間でわずかなクリアランスをもって第1のピボットアーム90に圧入されている。第1のピボットアーム上面92は、外輪64の上面上あるいは上面を超えて加締められている。
【0017】
図5は、アームプーリアッセンブリの断面図である。アーム90は、ブッシュ80上でピボットピン70周りに軸回転する。
【0018】
図6は、補償バネと巻き付けバネを備えたプーリアームアッセンブリの断面図である。
巻き付けバネ110の外表面は、ピボットアーム90の径方向内表面97に対して擦るように配置されている。代わりの形態として、巻き付けバネ110は、スプラグ式クラッチで構成してもよい。バネ100の端部101は、ピボットアーム90の停止部99と係合している。
【0019】
図7は、補償バネの向きを示した斜視図である。補償バネ100は、第1のアーム90内に配置されている。動作中、補償バネ100には、巻き戻し方向に負荷が掛けられる。
【0020】
図8は、スプロケットを備えたサブアッセンブリの断面図である。第1のスプロケット120は、第1のスプロケット中心内径部121と第1のピボットアーム軸95との間で滑合して、第1のピボットアーム90と回転係合する。
【0021】
図9は、巻き付けバネの向きを示す平面図である。巻き付けバネ先端部111は、第1のスプロケット120の巻き付けバネ先端受け部122と係合する。動作中、巻き付けバネ110には、巻き戻し方向に荷重が掛かる。巻き戻し方向へ荷重が掛かることで巻き付けバネ110が径方向に拡がり、第1のピボットアーム90の内表面97を擦りながら掴むことになり、これによって、第1のサブアッセンブリと係合するベルトセグメントがベルトの引張側にあるといったあらかじめ定められた条件に対し、第1のピボットアーム90が第2のピボットアーム200から相対的に動くことを、制限する、あるいは防ぐ。
【0022】
図10は、補償バネの斜視図である。補償バネ100は、第1のスプロケット120に装着され、バネ端部102は、第1のスプロケットアーム停止部123と接触する。補償バネは、捻りばねで構成される。
【0023】
図11は、スプロケット同期ベルトアッセンブリの斜視図である。延性のある歯付きベルト40は、レリーフカット124を通すことで第1のスプロケット120と係合し、部材125によって所定の場所に保持されている。第1のスプロケット120は、歯付きベルト40と係合する歯付き面を有する。しかしながら、平ベルト、マルチリブベルト、あるいは、ワイヤやコードが同じように作用する適当な引張部材には、ベルトおよびスプロケット上に歯付き面は必要とされない。
【0024】
図12は、サブアッセンブリの断面図である。リベット130は、リベット外側表面133と第1のアーム内側シャフトの内面96との間で第1のアーム90に圧入されている。リベット頂部底面137は、第1のスプロケットリベット表面98と接し、第1のスプロケット120を、自由に回転させながら所定の場所に維持する。
【0025】
図13は、第2のサブアッセンブリの分解図である。第2のテンショナサブアッセンブリは、第2のプーリ51、軸受け61、ピボットピン72、ブッシュ85、第2のピボットアーム200、主要バネ210、第2のスプロケット220、そしてリベット134とを備える。軸受け61は、軸外側表面52と軸受け61の内輪65との間でプーリ51に圧入されている。軸外側表面52の端部は、内輪65の上および内輪65を超えて加締められている。
【0026】
主要バネ210では、補償バネ100の負荷の掛かる方向とは反対方向に負荷が掛かり、これによって引張荷重が連結ベルト40に与えられる。
【0027】
図14は、プーリ軸受けアッセンブリの断面図である。プーリ軸受けアッセンブリは、外輪66と第2のピボットアーム200の内側表面203との間に僅から隙間をもって第2のピボットアーム200内に配置されている。第2のピボットアーム上面202は、軸受け61の外輪66の上面の上および上面を超えて加締められている。
【0028】
図15は、アームプーリアッセンブリの断面図である。両方のブッシュ85が、穴201の内表面とブッシュ85の外側表面との間で擦り合って第2のアーム200内に配置されている。ピボットピン72は、ピン72の外側表面とブッシュ内側表面84との間できつく擦り合うように穴201およびブッシュ85を通して配置され、これによって、ブッシュがピボットピン72にロックされる。
【0029】
図16は、主要バネを備えたアームプーリアッセンブリの断面図である。主要バネ210は、第2のピボットアーム200内に配置され、主要バネ端部211は、第2のアームバネ停止部204と接する。
【0030】
図17は、主要バネの向きを示した斜視底面図である。主要バネ210は、巻き戻し方向に荷重が掛かる。
【0031】
図18は、スプロケットを備えたサブアッセンブリの断面図である。第2のスプロケット220は、第2のスプロケット中心内径221と第2のピボットアーム軸205との間で擦り合って、第2のピボットアーム200に対して回転するように装着されている。主要バネ210の端部212は、第2のスプロケット220の停止部224と係合する。
【0032】
図19は、スプロケット同期ベルトアッセンブリの斜視図である。ベルト40の端部は、レリーフカット222を通って第2のスプロケット220に配置され、部材223によって所定の場所で保持される。
【0033】
図20は、同期ベルトを備えたサブアッセンブリの断面図である。ベルト40は、第2のスプロケット220と係合する。ピボットピン72の外表面73は、ブッシュ85と係合する。
【0034】
図21は、サブアッセンブリの断面図である。リベット134は、リベット外側表面131と第2のピボットアーム内側軸表面206との間で第2のピボットアーム200内に圧入されている。リベット頭部底面132は、第2のスプロケットのリベット面225と接し、第2のスプロケット220を、自由に回転させながら所定の場所に維持している。
【0035】
図22は、テンショナの断面図である。第1のテンショナサブアッセンブリ10と、第2のテンショナサブアッセンブリ20は、ピン70、72に対する締まりばめによって、ブラケット30にそれぞれ圧入されている。
【0036】
<動作>
ベルトの緩む側と引張側が、異なる動作モードで変わるため、テンショナは、ベルト張力を適切にコントロールするため、このような変化状況に対して即時対応する。
【0037】
本テンショナは、交替する緩む側または引張側の位置に応答するため、駆動部の両側のベルト張力をコントロールする。テンショナは、フレキシブルな結合によって繋がる第1のテンショナサブアッセンブリと、第2のテンショナサブアッセンブリとを備える。ベルト張力が増加すると、ベルトの引張側が、第1のテンショナサブアッセンブリを押し出し、これによって主要捩じりばねに荷重が掛かる。主要捩じりばねの荷重は、フレキシブルな結合を通じて、緩む側にある第2のテンショナサブアッセンブリへ伝達される。これによって、第2のテンショナサブアッセンブリのプーリがベルト緩み側に引っ張られることになり、緩む側の張力を増加させる。この緩み補償動作は、任意のタイミングでベルトのどちら側で緩み(あるいは引張)が生じることに関わらず、生じる。
【0038】
図23A、23Bは、交替するベルトの緩む側がテンショナのダイアグラムである。
プーリ50とプーリ51は、ベルトBと係合する。ベルトBは、クランクシャフト(crank)とモータジェネレータユニット(MGU)との間で掛け回されている。クランクシャフトが時計回りに駆動する間(
図23A)、プーリ51は、ベルトBの引張側にある。プーリ50は、緩む側にある。停止/スタートなどの動作中にMGUが駆動しているとき(
図23B)、プーリ50はベルトBの引張側にあって、プーリ51は緩む側にある。
【0039】
一方のプーリの他方のプーリに対する角運動は、非線形である。すなわち、引張側のプーリ(与えられたモードでどちらか一方のテンショナに当たる)は、つねに緩む側のプーリよりもより大きな角度で動く。この動きの相違は、主要バネ210に対して十分な負荷を与え、緩む側を十分に引っ張る。
【0040】
図24は、MGUのトルク性能に対するベルト張力を例示している。曲線A、Bは、ベルトの各側の張力を表す。曲線Aは、MGUから離れて下流側に該当するベルトの一部が、負のトルクとなる引張側にある、すなわちMGUがクランクシャフトによって駆動されることを示す。曲線Bは、クランクシャフトから離れて下流側に該当するベルトの一部が、正のトルクとなる引張側にある、すなわちクランクシャフトがMGUによって駆動されるときに引張側にあることを示す。
【0041】
トルクが小さい時だけ、緩む側の張力が、ずっと(トルクがゼロになる)装着張力より下に落ちるように、デザインされている。引張側において張力がトルクに対して線形的に増加すると、緩む側の張力が幾分対数的に増加する。これは、ベルトの寿命期間短縮の傾向をもたらす過度な装着張力を導入せずに、緩む側の張力が効果的に制御されることを可能にする。
【0042】
図25は、ベルトの延びに対するテンショナの応答図である。装着されたベルトの静的長さは、許容および耐性という2つの理由のため、名目上の装着長さからずれている。動作中にベルトが名目上の長さより長くなると、テンショナは、ベルト側により一層動かなければならず、これによって、元の装着張力(予荷重)を幾分あるいは場合によってすべてを失い、各テンショナは、位置Aから位置Bに移動する。従来のテンショナでは、予荷重がベルトの延びを通じて全く失われないような超過の予荷重をもって装着することで、この問題に対処している。しかしながら、このような超過の予荷重は、多くの場合、過剰なベルト張力をもたらし、最終的にはベルトの寿命を短くする。本テンショナは、張力が定められた閾値を超えるまで落ちたときに、予測して予荷重が回復できる補償機構を備えている。
【0043】
補償機構は、第1のテンショナサブアッセンブリ10におけるワンウェイクラッチである巻き付けバネ110と、補償バネ100とを組み合わせることによって実現されている。巻き付けバネ110は、スプロケット120が予荷重を減少させる方向へ回転するのを抑え、一方で、予荷重が増加する方向への動きを許可するように使用される。主要バネ210の予荷重が、いったん閾値を超えて落ちると、結合ベルト40の張力が落ちる。結合ベルトの張力が、補償バネ100に対して与えられた予荷重で釣り合っている量を超えて低下すると、補償バネ100は、スプロケット120を巻き、これによって、釣り合いと幾分かのシステム予荷重が戻る。
【0044】
図26は、第1のサブアッセンブリの補償機構の詳細図である。巻き付けバネ110は、スプロケット120と係合する。補償バネ100は、スプロケット120とピボットアーム90との間で係合している。補償バネ100は、巻き戻し方向に荷重が掛かる。
【0045】
図27は、補償機構の働きの概略的描写である。限定しない一例として、
図27は、最大長さL
0の結合ベルトにより接続された、ばね定数k
pをもつ主要バネと、ばね定数k
Cをもつ補償バネとを例示する。結合ベルトには、予荷重F
0に対する張力で荷重がかけられている。補償バネは、予荷重閾値F
Tを有し、システム予荷重がF
Tを超えて落ちない限り、補償バネは効果的に機能しないようになっている。これら線形性のバネは、捻りバネがスプロケット周りの緩む側を巻き上げるのと同様に、結合ベルトの緩む側を“巻き上げる”すなわち集めることができる。
【0046】
テンショナは、最短ベルト(図示せず)が装着可能な位置で最初固定される。最短ベルトがシステムに装着されると、結合ベルトは、“緩む”ようにならず、予荷重はF0で維持される。しかしながら、より長いベルトが装着されると、テンショナが非固定となる上、結合ベルトは緩み、ΔF=kPΔLiに従う中間緩み量ΔLiだけ巻かれるに応じて、主要バネは、予荷重を失う。これは、システム張力が補償閾値FTに届くまで続く。補償閾値FTに到達すると、補償バネが機能する状態となり、両方のバネは、残りの緩み部分を巻くように動作する。各バネによって巻かれる緩み量は、対応するばね定数によって定められる。詳細に説明すると、各バネは、ΔLP=ΔF/kPおよびΔLC=ΔF/kCに従って緩み部分を巻く。これは、すべての緩み部分が巻かれるまで続き、その結果、最終的なシステム予荷重FFになる。補償機構を備えた最終的なシステム予荷重は、以下の式によって与えられる。
FF=(ΔL-((FT-F0)/kP))/((1/kP+1/kC)+FT)
一方、補償機構のない場合、最終予荷重は、以下の式によって与えられる。
FF=F0+ΔLkP
【0047】
上記直線モデルは、回転モデルに展開することができる。例えば、主要バネ210は、ばね定数が0.0798Nm/degであって、例えば名目上の長さが1664mmのベルトへ装着したときに2.11Nmの荷重が掛けられるように設計されている。さらに、補償バネ100は、1.89Nmの荷重が掛けられるように設計され、これは荷重閾値となる。補償バネ100が荷重の掛からない状態となるのを防ぐため、巻き付けバネ110が使用される。巻き付けバネ110は、十分に大きな反作用モーメントを生成するのに十分足りる摩擦力をピボットアーム90に対して提供し、反作用モーメントと補償予荷重とを合わせたものは、主要バネ210におけるトルクに等しい。この荷重条件は、ベルト部材40に対して100Nの張力、および有効長さ108.2mmをもたらす。仮にテンショナが、名目長さより4mm長く許容範囲内にある1668nmのベルトに装着された場合、
図25に示すように、テンショナは、より長いベルトによって互いに内側へ動く。
【0048】
主要バネ210を含むテンショナは、内側へ5.6°動き、補償バネ100を含むテンショナは、内側へ5.8°動く。この平衡な配置構成での角度変化は、結合ベルト40の有効長さを102.1mmにまで短くし、結合ベルトが6.1mm緩む。補償機構がない場合、主要バネは、緩む側を巻き上げるために16.6°向きを変える。これは、所定のばね定数に対し、1.33Nmの予荷重損失となる。最終的な予荷重が0.78Nmだけしかないと、ベルト40の連結張力は、100Nから37.1Nまで低下し、62.9%の損失となる。
【0049】
一方、0.0077Nm/degの補償ばね定数をもつ補償機構を備えていると、予荷重の損失は著しく減少する。なぜなら、主要バネ210は最初2.76°だけ向きを変え、結合ベルト40の緩み部分を1.01mmだけしか巻かないからである。この時点で、主要バネ210の予荷重は、補償閾値である1.89Nmまで落ちる。一度予荷重が補償閾値まで落ちると、巻き付けバネ110は補償バネ100と係合しなくなり、補償バネ100を動作可能にさせる。両方のバネが協働してベルト結合の緩む側の残りの5.09mmを巻く。補償バネ100は、より緩いばね定数をもつことで12.8°向きを変え、緩み部分を4.7mm巻き、一方でより硬い主要バネ210は、1.06°向きを変え、残りの0.39mを巻く。これは、両方のバネにおいて1.79Nmの最終的な捻り予荷重をもたらし、85.3Nの結合張力に変換する。捻りの平衡が一度確立されると、巻き付けバネ110はベルトと再び係合し、ベルト結合が緩むのを防ぐ。このような補償機構を備えることで、同じベルト長さおよび結合ベルト長さの変化に対し、最初の結合張力から14.7%だけしか損失しない。
【0050】
図28は、ばね定数k
P=0.0798Nm/degの主要バネに対するトルク張力曲線を示し、
図29は、ばね定数k
P=0.00769Nm/degの主要バネに対するトルク張力曲線を示す。曲線Aおよび曲線Bは、
図24で示している。概略的システムに関しては
図25を参照。
【0051】
図29では、トルクが高いとき、ベルトBの緩む側の張力が装着張力より下回り(トルクゼロ)、一方、ベルトBの引張側の張力は最大となる。引張側と緩む側の張力の大きな差が、ベルトを滑らせようとする。
【0052】
一方で
図28は、トルクが高いとき、より硬いバネを使うことでベルト装着張力より十分大きな張力を緩む側に生じさせることを示す。これは、引張側張力と緩む側張力との差の大きさを減少させ、ベルトの滑りを減少させる。
【0053】
補償バネ100のばね定数が低いほど、補償バネによって巻かれる結合ベルトの緩み部分が大きくなり、最後には予荷重がより低くなる。なぜなら、補償バネに対するトルクが閾値に達すると、両方のバネが、同じ量の捻り予荷重の損失を受けるからである。ばね定数が軟らかいほど、同じ捻り変化に達するため、向きをより一層変えなければならない。向きをより変更すればするほど、結合ベルトの巻かれる緩み部分が増える。しかしながら、より軟らかいばね定数であると、適切な補償閾値で予荷重をかけるために、バネの向きを非常に大きく変えなければならない。ばね定数が柔らかすぎて所望する予荷重が高すぎると、バネは荷重をかけている間に壊れる。
【0054】
ばね定数と予荷重の最適化によれば、補償閾値を主要バネの予荷重と等しくなるように設定し、残りのテンショナのパラメータを許容範囲内で最短ベルトとすべき値に設計することが好ましいことを示す。結果的に、パフォーマンスは短いベルト同様に期待され、それと同時に、より長いベルトが装着されて主要バネがトルク損失し始めると、補償機構が機能する。すなわち、閾値到達前では、主要バネの予荷重の初期損失が生じない。
【0055】
図30は、補償バネのないレイアウトにおけるトルク張力曲線を示し、許容範囲内での新品の最短ベルト(曲線A)、名目長さの新品ベルト(曲線B)、そしてベルト寿命終末の許容される最長ベルト(曲線C)を示している。この例では、新品の名目長さベルト寿命終末の長いベルトの装着張力が、補償機構のないためにゼロまで落ちる。
【0056】
図31は、最適化された補償機構で分析された同じレイアウトを示し、それ以外のすべてのパラメータは、
図30に示す結果を生じさせるパラメータと同じである。装着張力の変化が少なく、過度な張力は、各ベルト長さに対してほぼ等しい。
【0057】
この創造性ある補償機構は、名目上の予荷重が従来のテンショナと比べて非常に低くなるのを可能にする。より低い予荷重は、より低いベルト張力を全面的に導き、システムの動作寿命期間に渡ってベルト長さの変化を受け入れるのに必要なベルト装着張力を過度にする必要性を省く。これは、より長いベルトの寿命、より長いコンポーネントの寿命、改善された燃料経済性を提供する。
【0058】
テンショナは、ベースと、ベースに装着され、ワンウェイクラッチと、第1のピボットアームと、第1の方向に負荷が掛かる第1の捩じりバネと、第1のピボットアームに軸支される第1のプーリとを備えた第1のテンショナサブアッセンブリと、ベースに装着され、第2のピボットアームと、第1の方向とは反対の第2の方向に負荷がかかる第2の捩じりバネと、第2のピボットアームに軸支される第2のプーリとを備えた第2のテンショナサブアッセンブリと、第1のテンショナサブアッセンブリが、延性の可撓性部材とワンウェイクラッチを通じて第2のテンショナサブアッセンブリと協働的に係合し、第1の捩じりバネと第2の捩じりバネは、フレキシブルな延性部材に対して引張負荷を与え、ワンウェイクラッチが、第1のピボットアームに摩擦係合し、これによって第1のピボットアームの第2のピボットアームから離れる相対的な動きが制限される。
【0059】
テンショナは、ベースと、ベースに軸回転装着される第1のテンショナサブアッセンブリと、ベースに軸回転装着される第2のテンショナサブアッセンブリと、第1のテンショナサブアッセンブリと第2のテンショナサブアッセンブリとをつなぐ延性部材と、第1のテンショナサブアッセンブリと摩擦係合するワンウェイクラッチとを備え、第1のテンショナサブアッセンブリが、第2のテンショナサブアッセンブリと反対の方向へ付勢され、第1のテンショナサブアッセンブリの第2のテンショナサブアッセンブリから離れる相対的な動きが、第1の定められた動作条件に対して制限され、第1のテンショナサブアッセンブリの第2のテンショナサブアッセンブリへ向けた相対的な動きが、第2の定められた動作条件に対して制限されない。
【0060】
ここでは発明の一態様が示されているが、ここで示された発明の意図および範囲から離れることなく構成およびパーツ関係においてバリエーションが作成されることは、その技術における当業者にとって自明である。