(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】真空チャネル型電子素子、光伝送回路及び積層チップ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20220314BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
H01L29/78 301X
H01L29/78 301H
H01L29/78 301Z
(21)【出願番号】P 2021185919
(22)【出願日】2021-11-15
【審査請求日】2021-11-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598100221
【氏名又は名称】安藤 善文
(73)【特許権者】
【識別番号】520351071
【氏名又は名称】安藤 里江子
(73)【特許権者】
【識別番号】520351082
【氏名又は名称】野口 由紀子
(73)【特許権者】
【識別番号】520351093
【氏名又は名称】高平 永美子
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】特許業務法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 善文
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-508596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0337359(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0286621(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0062743(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0299773(US,A1)
【文献】国際公開第2009/151170(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0005640(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層上に形成された絶縁性の第1絶縁層、前記第1絶縁層上に形成された導電性のゲート層、前記ゲート層上に形成された絶縁性の第2絶縁層及び前記第2絶縁層上に形成された導電性のドレイン層を有し、前記第1絶縁層の端面、前記ゲート層の端面及び前記第2絶縁層の端面を含んで形成される第1側壁を含む壁面で画定される空間に前記第1側壁が露出された積層体と、
前記半導体層の表面に設けられ、前記空間内で前記第1側壁に接して設けられるとともに前記積層体が形成されていない非形成領域を通って前記空間内から前記積層体を超えて延在した前記半導体層よりも抵抗率が低い導電性の導電層と
を備え、
前記導電層、前記ゲート層及び前記ドレイン層に所定の電圧を印加することにより、前記半導体層の電荷キャリアが前記空間中を前記ドレイン層に移動する
ことを特徴とする真空チャネル型電子素子。
【請求項2】
前記積層体は、一部に間隙を形成した周状に設けられ、前記第1側壁が前記空間の周囲に沿って配されており、
前記導電層は、前記半導体層の表面上において、前記間隙より前記積層体を超えて延在していることを特徴とする請求項1に記載の真空チャネル型電子素子。
【請求項3】
前記空間を挟んで2つの前記積層体が対向して設けられ、
前記導電層は、前記積層体の両端の間からそれぞれ前記積層体の外側にまで延在する
ことを特徴とする請求項1に記載の真空チャネル型電子素子。
【請求項4】
前記ドレイン層は、前記空間の開口部を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の真空チャネル型電子素子。
【請求項5】
半導体層と、
前記半導体層上に形成された絶縁性の第1絶縁層、前記第1絶縁層上に形成された導電性のゲート層及び前記ゲート層上に形成された絶縁性の第2絶縁層を有し、前記第1絶縁層の端面、前記ゲート層の端面及び前記第2絶縁層の端面を含んで形成される第1側壁を含む壁面で画定される空間に前記第1側壁が露呈された第1積層体と、
前記半導体層上に形成された絶縁性の第3絶縁層及び前記第3絶縁層上に形成された導電性のドレイン層を有し、前記第3絶縁層の端面及び前記ドレイン層の端面を含んで形成される第2側壁が前記壁面に含まれ、前記空間に前記第2側壁が露呈された第2積層体と、
前記半導体層の表面に設けられ、前記空間内で前記第1側壁に接して設けられるとともに前記第1積層体及び前記第2積層体以外の領域を介して前記空間内から前記第1積層体を超えて延在した前記半導体層よりも抵抗率が低い導電性の導電層と
を備え、
前記導電層、前記ゲート層及び前記ドレイン層に所定の電圧を印加することにより、前記半導体層の電荷キャリアが前記空間中を前記ドレイン層に移動する
ことを特徴とする真空チャネル型電子素子。
【請求項6】
前記導電層は、前記空間内の前記半導体層の表面の一部領域に設けられ、前記第1側壁の周囲の一部にのみに接触することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の真空チャネル型電子素子。
【請求項7】
前記導電層は、不純物拡散層であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の真空チャネル型電子素子。
【請求項8】
絶縁性のベース層と、
前記ベース層上の絶縁性のベース絶縁層、前記ベース絶縁層上に形成された半導体層、前記半導体層上に形成された絶縁性の第1絶縁層、前記第1絶縁層上に形成された導電性のゲート層及び前記ゲート層上に形成された絶縁性の第2絶縁層を有し、前記ベース絶縁層の端面、前記半導体層の端面、前記第1絶縁層の端面、及び前記ゲート層の端面を含んで形成される第1側壁が空間に露出された積層体と、
前記ベース層上に設けられ、表面が前記空間に露出するとともに前記半導体層と前記ベース絶縁層との界面から前記ベース層側に離された導電性のドレイン層と
を備え、
前記半導体層、前記ゲート層及び前記ドレイン層に所定の電圧を印加することにより、前記半導体層の電荷キャリアが前記空間中を前記ドレイン層に移動する
ことを特徴とする真空チャネル型電子素子。
【請求項9】
前記積層体は、一部に間隙を空けて周状に設けられ、前記第1側壁が前記空間の周囲に沿って配されており、
前記ドレイン層は、前記空間内から前記間隙を通って前記積層体を超えて延在している
ことを特徴とする請求項8に記載の真空チャネル型電子素子。
【請求項10】
前記空間を挟んで2つの前記積層体が対向して設けられていることを特徴とする請求項8に記載の真空チャネル型電子素子。
【請求項11】
前記ゲート層は、前記第1側壁に含まれる端面が絶縁膜で覆われていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の真空チャネル型電子素子。
【請求項12】
前記空間は、閉じていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の真空チャネル型電子素子。
【請求項13】
前記ドレイン層は、電荷キャリアの入射により発光する透明な蛍光電極部であることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の真空チャネル型電子素子。
【請求項14】
前記第1絶縁層と前記半導体層との界面に光が入射するようにされ、
前記半導体層の表面に空乏層が形成されるように前記半導体層と前記ゲート層との間に電圧が印加され、
前記半導体層の表面に入射する光による電荷キャリアが前記ドレイン層に移動することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の真空チャネル型電子素子。
【請求項15】
半導体層、前記半導体層上に形成された絶縁性の第1絶縁層、前記第1絶縁層上に形成された導電性のゲート層及び前記ゲート層に形成された絶縁性の第2絶縁層を有し、前記半導体層の端面、前記第1絶縁層の端面、前記ゲート層の端面及び前記第2絶縁層の端面を含んで形成される第1側壁を含む壁面で画定される空間に前記第1側壁が露呈された積層体と、
前記第2絶縁層上に形成されたドレイン層と
を備え、
前記第1絶縁層と前記半導体層との界面に光が入射するようにされ、
前記半導体層の表面に空乏層が形成されるように前記半導体層と前記ゲート層と間に電圧が印加されるとともに、前記半導体層と前記ドレイン層との間に所定の電圧を印加することにより、前記半導体層の表面に入射する光による電荷キャリアが前記ドレイン層に移動することを特徴とする真空チャネル型電子素子。
【請求項16】
発光素子として設けられた請求項12に記載の真空チャネル型電子素子と、
受光素子として設けられた請求項13または15に記載の真空チャネル型電子素子と、
前記発光素子からの光を前記受光素子に導波する導波路と
が同一の基板上に設けられた光伝送回路。
【請求項17】
第1チップと第2チップとが積層された積層チップにおいて、
前記第1チップは、発光素子として設けられた請求項12に記載の真空チャネル型電子素子を含み、前記発光素子からの光を前記第1チップと前記第2チップとの積層方向に出力し、
前記第2チップは、前記発光素子からの光を受光する受光素子を含む
ことを特徴とする積層チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャネル型電子素子、光伝送回路及び積層チップに関する。
【背景技術】
【0002】
真空を電荷キャリアの媒体として利用する真空チャネル型電子素子として、例えば高速動作に適した真空チャネル電界効果トランジスタが知られている(例えば、非特許文献1、2、特許文献1を参照)。
【0003】
非特許文献1には、シリコン半導体基板からなるソース電極と、ソース電極上に順次形成されたシリコン酸化膜、ゲート電極、シリコン酸化膜及びドレイン電極とを有し、ソース電極の側壁から電荷キャリアを真空に放出する真空チャネルFETが記載されている。例えばn型の真空チャネル電界効果トランジスタの場合には、ソース電極としてp型のシリコンが用いられ、ゲート電圧及びソース・ドレイン間電圧によって、ソース層とソース層上のシリコン酸化膜との界面付近に誘起された2DES(2次元電子系)及び反転層の電子が電子間のクーロン斥力によりFNトンネリングより低い電圧でソース電極の端面から真空に放出され、ドレイン電極に到達することで、ソース・ドレイン間に電流が流れる。特許文献1についても、同様の構成を有する真空チャネル電界効果トランジスタが記載されている。
【0004】
非特許文献2には、アノード電極(ドレイン)と、アノード電極上に順次形成されたシリコン酸化膜、ゲート電極、シリコン酸化膜及びカソード電極(ソース)とを有し、カソード電極の端面から電子を真空に放出する真空チャネル電界効果トランジスタが記載されている。カソード電極の側壁から真空への電子の放出は、ゲート電圧及びカソード・アノード間電圧によって生じるFNトンネリングによって行われる。
【0005】
また、真空チャネルを用いた光検出器が知られている。例えば、非特許文献3には、グラフェンと酸化シリコン膜からなる絶縁層とn型またはp型のシリコン層とを積層した積層構造を有する光検出器が記載されている。グラフェンとシリコン層との間に逆バイアスを印加した状態で、シリコン層に光が入射することにより、キャリア(電子)は、シリコン層と絶縁層との界面にドリフトして2DEGを形成し、シリコン層の端面から空間に放出されて、グラフェンに捕捉される。これにより、グラフェンとシリコン層との間に電流が流れる。特許文献1についても、同様の構成を有する光検出器が記載されている。
【0006】
さらに、真空チャネルを用いた電界放出ディスプレイアレイが特許文献1に記載されている。この電界放出ディスプレイアレイは、p型またはn型のシリコンからなる透明な第1導電層と、第1導電層の底面に設けられた蛍光体層と、第2導電層と、蛍光体層と第2導電層との間に設けられた絶縁層とからなる構造を有している。第1導電層と第2導電層との所定電圧を印加することにより、絶縁層と第2導電層との界面に蓄積される電子が空間に放出されて蛍光体層に入射することにより、蛍光体層が発光する。
【0007】
特許文献2には、ソース・ドレイン間電流を増大させるために不純物拡散層を設けた真空チャネル電界効果トランジスタが記載されている。この真空チャネル電界効果トランジスタでは、半導体基板上に第1絶縁層、ゲート電極、第2絶縁層、ドレイン電極が層設されるとともに、これら第1絶縁層、ゲート電極、第2絶縁層、ドレイン電極によって囲まれる空間内の底部となる半導体基板の表面に不純物拡散層が形成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Siwapon Srisonphan, Yun Suk Jung, and Hong Koo Kim, "Metal-oxide-semiconductor field-effect transistor with a vacuum channel," NATURE NANOTECHNOLOGY,VOL7,AUGUST 2012
【文献】Fatemeh Kohani Khoshkbijari, and Mohammad Javad Sharifi, "Reducing the gate current in vacuum channel field-emission transistors using a finger gate," Journal of Computational Electronics (2020) 19 : 263-270
【文献】Myungji Kim and Hong Koo Kim, "Ultraviolet-enhanced photodetection in a graphene/SiO2/Si capacitor structure with a vacuum channel," Journal of Applied Physics 118, 104504 (2015)
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第9331189号明細書
【文献】特許第6818931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の真空チャネル電界効果トランジスタでは、ソースとなる基板と絶縁膜の界面に対しソース電源は基板裏面となっていることから界面と裏面間の基板抵抗がトランジスタのオン抵抗に加算されトランジスタの特性が劣化してしまう為、ソースとなる界面と電源とを接続する配線が必要になるが、ソースを配線に簡単に接続することができる構造が望まれている。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、製造が容易な構造を有する真空チャネル型電子素子、それを用いた光伝送回路及び積層チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の真空チャネル型電子素子は、半導体層と、前記半導体層上に形成された絶縁性の第1絶縁層、前記第1絶縁層上に形成された導電性のゲート層、前記ゲート層上に形成された絶縁性の第2絶縁層及び前記第2絶縁層上に形成された導電性のドレイン層を有し、前記第1絶縁層の端面、前記ゲート層の端面及び前記第2絶縁層の端面を含んで形成される第1側壁を含む壁面で画定される空間に前記第1側壁が露出された積層体と、前記半導体層の表面に設けられ、前記空間内で前記第1側壁に接して設けられるとともに前記積層体が形成されていない非形成領域を通って前記空間内から前記積層体を超えて延在した前記半導体層よりも抵抗率が低い導電性の導電層とを備え、前記導電層、前記ゲート層及び前記ドレイン層に所定の電圧を印加することにより、前記半導体層の電荷キャリアが前記空間中を前記ドレイン層に移動するものである。
【0013】
本発明の真空チャネル型電子素子は、半導体層と、前記半導体層上に形成された絶縁性の第1絶縁層、前記第1絶縁層上に形成された導電性のゲート層及び前記ゲート層上に形成された絶縁性の第2絶縁層を有し、前記第1絶縁層の端面、前記ゲート層の端面及び前記第2絶縁層の端面を含んで形成される第1側壁を含む壁面で画定される空間に前記第1側壁が露呈された第1積層体と、前記半導体層上に形成された絶縁性の第3絶縁層及び前記第3絶縁層上に形成された導電性のドレイン層を有し、前記第3絶縁層の端面及び前記ドレイン層の端面を含んで形成される第2側壁が前記壁面に含まれ、前記空間に前記第2側壁が露呈された第2積層体と、前記半導体層の表面に設けられ、前記空間内で前記第1側壁に接して設けられるとともに前記第1積層体及び前記第2積層体以外の領域を介して前記空間内から前記第1積層体を超えて延在した前記半導体層よりも抵抗率が低い導電性の導電層とを備え、前記導電層、前記ゲート層及び前記ドレイン層に所定の電圧を印加することにより、前記半導体層の電荷キャリアが前記空間中を前記ドレイン層に移動するものである。
【0014】
本発明の真空チャネル型電子素子は、絶縁性のベース層と、前記ベース層上の絶縁性のベース絶縁層、前記ベース絶縁層上に形成された半導体層、前記半導体層上に形成された絶縁性の第1絶縁層、前記第1絶縁層上に形成された導電性のゲート層及び前記ゲート層上に形成された絶縁性の第2絶縁層を有し、前記ベース絶縁層の端面、前記半導体層の端面、前記第1絶縁層の端面、及び前記ゲート層の端面を含んで形成される第1側壁が空間に露出された積層体と、前記ベース層上に設けられ、表面が前記空間に露出するとともに前記半導体層と前記ベース絶縁層との界面から前記ベース層側に離された導電性のドレイン層とを備え、前記半導体層、前記ゲート層及び前記ドレイン層に所定の電圧を印加することにより、前記半導体層の電荷キャリアが前記空間中を前記ドレイン層に移動するものである。
【0015】
本発明の真空チャネル型電子素子は、半導体層、前記半導体層上に形成された絶縁性の第1絶縁層、前記第1絶縁層上に形成された導電性のゲート層及び前記ゲート層に形成された絶縁性の第2絶縁層を有し、前記半導体層の端面、前記第1絶縁層の端面、前記ゲート層の端面及び前記第2絶縁層の端面を含んで形成される第1側壁を含む壁面で画定される空間に前記第1側壁が露呈された積層体と、前記第2絶縁層上に形成されたドレイン層とを備え、前記第1絶縁層と前記半導体層との界面に光が入射するようにされ、前記半導体層の表面に空乏層が形成されるように前記半導体層と前記ゲート層と間に電圧が印加されるとともに、前記半導体層と前記ドレイン層との間に所定の電圧を印加することにより、前記半導体層の表面に入射する光による電荷キャリアが前記ドレイン層に移動するものである。
【0016】
本発明の光伝送回路は、発光素子として設けられた上記真空チャネル型電子素子と、受光素子として設けられた上記真空チャネル型電子素子と、前記発光素子からの光を前記受光素子に導波する導波路とが同一の基板上に設けられたものである。
【0017】
本発明の積層チップは、第1チップと第2チップとが積層された積層チップにおいて、前記第1チップは、発光素子として設けられた上記真空チャネル型電子素子を含み、前記発光素子からの光を前記第1チップと前記第2チップとの積層方向に出力し、前記第2チップは、前記発光素子からの光を受光する受光素子を含むものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体層よりも抵抗率が低い導電性の導電層が、積層体の側壁によって画定される空間から積層体が形成されていない非形成領域を通って積層体を超えて延在した構成であるので、導電層に電源からの配線を簡単に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るFETを示す斜視図である。
【
図2】
図1のII―II線に沿うFETの断面を示す断面図である。
【
図3】半導体層上における不純物拡散層の形成領域を示すFETの平面図である。
【
図4】半導体層上における不純物拡散層の別の形成領域を示すFETの平面図である。
【
図5】半導体層上における間隙の領域内から不純物拡散層を延在させた例を示すFETの平面図である。
【
図6】半導体層上におけるチャネル空間内の全面に不純物拡散層を形成した例を示すFETの平面図である。
【
図7】FETのチャネル空間の上部開口をドレイン層で閉じた例を示す斜視図である。
【
図8】チャネル空間の上部を塞ぐ手順の一例を示す説明図である。
【
図9】一対の積層体を設けたFETを示す斜視図である。
【
図10】ゲート層とドレイン層とを半導体層の面内方向に離して配置したFETの例を示す斜視図である。
【
図11】ゲート層とドレイン層との間に半導体層を配したFETの例を示す斜視図である。
【
図13】ゲート層と蛍光電極部とを半導体層の面内方向に離して配置した発光素子の断面構造を示す断面図である。
【
図14】ゲート層と蛍光電極部との間に半導体層を配した発光素子の断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1に第1実施形態における真空チャネル型電子素子としての真空チャネル電界効果トランジスタ(以下、FETと称する)10を示す。また、
図2に、
図1のII―II線に沿うFET10の断面を示す。この例におけるFET10は、n型の電界効果トランジスタであり、p型の半導体層11上に積層体12が形成されている。積層体12は、半導体層11側から順番に絶縁性の第1絶縁層14、ゲート電極となる導電性のゲート層15、絶縁性の第2絶縁層16、ドレイン電極となる導電性のドレイン層17が層設されており、各層の厚みはほぼ一定である。また、半導体層11の表面には、不純物拡散層18が形成され、裏面には裏面電極19が形成されている。半導体層11、不純物拡散層18及び裏面電極19は、FET10のソース電極となる。
【0021】
なお、以下では、
図1に示されるように、半導体層11の積層体12が設けられている面側を上側、裏面電極19が設けられている面側を下側として、上方向及び下方向を定義するが、この上下方向は、FET10の使用する姿勢、向きを限定するものではない。
【0022】
半導体層11は、例えばシリコン基板であり、本例ではp型のものが用いられている。
なお、半導体層11は、後述するように反転層あるいは蓄積層が形成されるものであれば、単結晶シリコン、多結晶シリコン(ポリシリコン)であってもよく、シリコン以外のGaAs、GaN等の他の半導体で形成されたものであってもよい。
【0023】
積層体12は、半導体層11から上方向に延びた四角筒形状の一部を上下方向に切り欠いた間隙21を設けた形状をしており、周方向の一部に間隙21を形成した周状に設けられている。この積層体12の側壁12aによって画定される空間は、電荷キャリア(この例では電子)が放出されて移動するチャネルとなる空間(以下、チャネル空間と称する)24を構成している。より具体的には、積層体12と間隙21とからなる環状部23によって囲まれた空間25と所定の間隔で対面した側壁12aに挟まれた空間である間隙21とがチャネル空間24を構成している。なお、不純物拡散層18の形成後に間隙21内に酸化シリコン(SiO2)等の絶縁材料を充填し、空間25だけをチャネル空間24としてもよい。
【0024】
カバー層26は、環状部23の周囲及び上部を覆っている。これにより、チャネル空間24は、その上面及び間隙21の開口がカバー層26によって塞がれて、閉じた空間となっている。カバー層26は、絶縁材料(例えば酸化シリコン(SiO2))で形成されている。また、チャネル空間24は、その一部が外部と繋がった開いた空間であってもよい。チャネル空間24の画定は、厳密なものではなく、チャネル空間24が例えば対向する一対の壁面の間の空間として画定されるようなものであってもよい。
【0025】
チャネル空間24を構成する空間25の上下方向に直交する断面における開口サイズは、一辺の長さが、例えば0.05μm以上0.5μm以下の矩形状となっている。なお、空間25の上下方向に直交する断面形状は、矩形状に限られず、多角形、円形、楕円形、星形等であってもよい。
【0026】
第1側壁としての上記の側壁12aは、第1絶縁層14、ゲート層15、第2絶縁層16のチャネル空間24側の各端面を含んで形成され、チャネル空間24に露出している。この例では、側壁12aには、ドレイン層17のチャネル空間24側の端面も含まれる。また、ゲート層15のチャネル空間24側の端面には、それを覆う絶縁膜27を形成してある。したがって、第1絶縁層14及び第2絶縁層16の各端面と、ゲート層15の端面としての絶縁膜27とがチャネル空間24に露出している。絶縁膜27は、チャネル空間24にゲート層15の端面が露呈しないようにすることで、チャネル空間24に放出された電荷キャリアがゲート層15に捕獲されてリーク電流として流れることを抑制する。これにより、ドレイン・ソース間電流を増加させることができる。
【0027】
なお、第1絶縁層14、第2絶縁層16、カバー層26、絶縁膜27は概念的なものであり、これらを同じ絶縁材料で作製した場合に、それらの相互の境界が確認できない場合がある。
【0028】
第1絶縁層14及び第2絶縁層16は、絶縁材料、例えば酸化シリコン(SiO2)で形成されている。第1絶縁層14は、半導体層11がシリコン基板である場合には、その表面を酸化したシリコン酸化膜とすることができる。また、第1絶縁層14は、CVD法等によって堆積したシリコン酸化膜として形成することもできる。第2絶縁層16は、例えばCVD法等によって堆積したシリコン酸化膜として形成することができる。第1絶縁層14及び第2絶縁層16をシリコン窒化膜等としてもよい。
【0029】
第1絶縁層14の厚さは、例えば2nm以上20nm以下であり、第2絶縁層16は、例えば10nm以上30nm以下である。第1絶縁層14と第2絶縁層16との厚さは同じ厚さである必要はなく、第1絶縁層14の厚さを第2絶縁層16の厚さより薄くすることが好ましい。この場合には、例えば、第1絶縁層14の厚さを2nm以上10nm以下とし、第2絶縁層16の厚さを15nm以上30nm以下とすればよい。FET10のチャネル長は、半導体層11の表面からドレイン層17の下面までの高さ、すなわち、第1絶縁層14、ゲート層15及び第2絶縁層16の厚さの合計値となる。空気中の電子の平均自由行程は約60nmであるため、チャネル空間24が空気の場合は半導体層11の表面からドレイン層17の下面までの高さは、60nm以下とすることが望ましい。電子の平均自由工程は、真空度を上げれば大きくなるので、例えばドレイン耐圧を大きくするために第2絶縁層16を厚くする場合は、その膜厚に応じてチャネル空間24の真空度を上げればよい。
【0030】
ゲート層15は、金属又は不純物を導入したポリシリコン等の導電材料で形成されている。このゲート層15の厚さは、例えば10nm以上20nm以下である。絶縁膜27は、例えば、ポリシリコンで形成したゲート層15の端面を熱酸化することによって形成することができる。また、絶縁膜27は、CVD法やスパッタリング法によって形成してもよい。絶縁膜27の厚みは、例えば1nm以上10nm以下である。なお、ゲート層15の端面をチャネル空間24に直接露出した構成とすることもできる。
【0031】
不純物拡散層18は、半導体層11よりも抵抗率が小さい導電層として形成されている。この例では、p型のシリコン基板である半導体層11に対してn型不純物(例えばAs(砒素)またはP(燐))を高濃度に導入することで、不純物拡散層18が形成されている。この不純物拡散層18は、電荷キャリアを放出する実質的なソースとGNDとの電位差がドレイン電流の変化によって変動することを抑制する。また、不純物拡散層18は、それを設けない場合に比べて電荷キャリアの、チャネル空間24への放出量を増加させることでソース・ドレイン間電流を増大させる機能を持つ。
【0032】
不純物拡散層18は、半導体層11の表面において、チャネル空間24内で側壁12aすなわち第1絶縁層14の端面に接するように設けられ、その側壁12aに接した位置から間隙21に対応する領域を通って積層体12の外側に延びて設けられている。すなわち、不純物拡散層18は、チャネル空間24内から積層体12が形成されていない非形成領域を通って積層体12を超えて積層体12の外周領域にまで延設されている。不純物拡散層18の積層体12を超えた領域18aが所定の電圧を印加するための配線が接続されるコンタクト領域として用いられる。この例では、
図2に示されるように、不純物拡散層18と側壁12a(第1絶縁層14)の端縁で接するように、不純物拡散層18が設けられている。なお、不純物拡散層18が第1絶縁層14の下側にまで広がっていてもよい。
【0033】
図3に示すように、この例では、不純物拡散層18は、チャネル空間24側の端部が半導体層11の表面において、空間25内にあり、空間25に露出している側壁12aに接触した位置から間隙21に対応する領域を通って積層体12の外周領域まで延びている。
【0034】
ドレイン層17は、Al(アルミニウム)等の金属や不純物を導入したポリシリコン等の導電材料で形成され、その厚さは例えば50nm以上200nm以下である。裏面電極19は、Al等の金属又は不純物拡散層等の導電材料で形成され、厚さは例えば50nm以上200nm以下である。なお、半導体層11の表面に、この半導体層11に電圧を印加するための半導体層11と同じ型の拡散層、この例ではp型拡散層を別途設ける場合は、裏面電極19は省略することができる。
【0035】
半導体層11としてp型のシリコン基板を用いた場合には、FET10は、次のような手順で製造することができる。なお、以下に説明する手順は一例であり、これにFET10の製造方法を限定するものではない。
【0036】
まず、p型のシリコン基板である半導体層11の表面に、熱酸化法により、第1絶縁層14としてシリコン酸化膜を形成する。次に、第1絶縁層14上にCVD法により、ゲート層15として、例えばP(燐)ドープのポリシリコン層を形成し、そのゲート層15上に、プラズマCVD法により、第2絶縁層16としてシリコン酸化膜を形成する。
【0037】
第2絶縁層16上に、フォトリソグラフィ法で、積層体12を形成する領域以外の領域が開口したフォトレジスト(図示せず)を形成する。続いて、ドライエッチング法で、フォトレジストをマスクとしてエッチングを行うことで、所定形状の積層体12を形成する。この段階で間隙21を含むチャネル空間24が形成される。この後、フォトレジストを除去する。
【0038】
フォトリソグラフィ法で、不純物拡散層18を形成する領域が開口したフォトレジストを形成し、イオン注入法で、開口内の半導体層11にイオンを注入して不純物拡散層18を形成する。この後、フォトレジストを除去する。なお、導入した不純物を熱処理により拡散して、所定の領域に不純物拡散層18を形成してもよい。
【0039】
不純物拡散層18の形成後、熱酸化法によって、露出しているゲート層15の端面を熱酸化することで、絶縁膜27を形成する。この熱酸化によって絶縁膜27の形成と同時に不純物拡散層18上に形成される熱酸化膜を、異方性エッチング法によって除去する。
【0040】
なお、ゲート層15を銅、タングステン等の金属とする場合には、例えば不純物拡散層18を形成した後、CVD法によって例えばゲート層15の端面部分に酸化シリコンを堆積して絶縁膜27を形成すればよい。なお、この場合にも不純物拡散層18上に堆積したシリコン酸化膜を、例えば異方性エッチング法によって除去する。
【0041】
次に、例えばAl(アルミニウム)膜を形成した後、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法で、形成したAl膜をドレイン層17の形状に加工する。さらに、半導体層11の裏面に、スパッタリング法で裏面電極19としてのAl膜を形成する。
【0042】
ドレイン層17の形成後、充填剤をチャネル空間24内を含めて堆積する。充填剤としては、ドレイン層17の融点以下の高温で揮発する例えばアモルファスカーボンを用いることができる。充填剤は、スパッタリング法で堆積し、続いてCMP法によって、充填剤を積層体12と同じ高さにする。
【0043】
次に、CVD法により、カバー層26の一部となるシリコン酸化膜を形成する。フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法でパターニングして、環状部23の上部以外のシリコン酸化膜を除去する。この後、酸素を含む雰囲気中で、例えば400℃、2時間の熱処理を行う。この熱処理により、充填剤であるアモルファスカーボンを気化させて除去する。チャネル空間24内の充填剤は、間隙21から外部に放出されて除去される。続いて、CVD法により、シリコン酸化膜を形成する。これにより、環状部23の上部及び外周にカバー層26が形成され、チャネル空間24が閉じられる。
【0044】
上記のように間隙21を通してチャネル空間24内の充填剤を除去できるので、閉じたチャネル空間24を有するFET10を容易に作製することができる。なお、このように間隙21を利用して閉じたチャネル空間24を容易に形成することができる効果は、不純物拡散層18を設けない構成においても同様の効果がある。チャネル空間24は、空気であってもよく、真空でもよい。なお、チャネル空間24内に、不活性ガス等のガスを封入してもよい。ただし、電子の散乱や移動度の低下による特性の劣化を避ける観点からは真空とすることがより好ましい。
【0045】
上記のようにしてFET10を作製することができる。不純物拡散層18に配線をする場合には、例えば、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法でパターニングして、不純物拡散層18の積層体12の外周にある領域18aの上方のカバー層26の部分を除去してから、領域18aに接続する配線を形成すればよい。不純物拡散層18が間隙21を通ってチャネル空間24から積層体12を超えて延設されているので、チャネル空間24の密閉性を破壊することなく、不純物拡散層18に容易に配線することができる。
【0046】
なお、チャネル空間24は、例えばFIB(Focused Ion Beam)装置を用いて、Ga(ガリウム)イオンによるドライエッチングによって形成してもよい。また、ドレイン層17及び裏面電極19となるAlはスパッタリング法で形成するとしたが、Alの代わりに、例えばFIB装置によってGaを堆積させて形成してもよい。また、半導体層11には、必要に応じてNウエルを形成してもよい。
【0047】
上記FET10を使用する場合には、ドレイン層17とソース電極との間にドレイン・ソース間電圧VDSを印加した状態で、ゲート層15とソース電極との間にゲート・ソース間電圧VGSを印加してオンにする。具体的には、不純物拡散層18及び裏面電極19に対してドレイン層17が正電圧となるようにドレイン・ソース間電圧VDSを印加し、ソース電極となる不純物拡散層18及び裏面電極19に対して、ゲート層15が正電圧となるようにゲート・ソース間電圧VGSを印加する。
【0048】
ゲート・ソース間電圧VGSの印加により、第1絶縁層14との界面である半導体層11の表面に電子が蓄積して反転層が形成される。そして、この反転層における電子相互に生じるクーロン斥力により、チャネル空間24への電子の放出の障壁が著しく低下する。これにより、反転層の電子が半導体層11の表面のエッジからチャネル空間24に放出される。また、不純物拡散層18が側壁12aに接しているため、反転層と不純物拡散層18は接続された状態となる。このため、半導体層11の電子が不純物拡散層18に流入し、流入した電子がチャネル空間24へ放出される。このようにして、チャネル空間24に放出された電子はドレイン・ソース間電圧VDSによって生じる電界に誘引されてドレイン層17に移動する。これにより、ゲート・ソース間電圧VGSの印加でFET10がオンして、ドレイン・ソース間電流IDSが流れる。
【0049】
上記のように、半導体層11のからの電子の放出に電子間のクーロン斥力を利用しているため、Fowler-Nordheim(F-N)トンネリングによってチャネル空間に電子を放出する場合と比べて、低いゲート・ソース間電圧VGSで電子の放出すなわちFET10をオンにすることが可能である。
【0050】
また、FET10では、半導体層11の表面に設けられた不純物拡散層18からは、不純物拡散層18の表面からその法線方向に電子がチャネル空間24に放出されるため、効率的にまた大きな面積から電子が放出される。このため、不純物拡散層18を設けていない従来の構成よりも電子の放出量を増加させ、ソース・ドレイン間電流を増大させることができる。
【0051】
上記ではFET10がn型FETである場合について説明しているが、半導体層11をn型のものまたはNウエルとし、不純物拡散層18をp型のものとすることで、FET10をp型FETとすることができる。FET10がp型FETである場合は、正孔が電荷キャリアとなり、チャネル空間24に放出されてチャネル空間24中を移動してドレイン層17に到達する。この場合には、ソース電極となる不純物拡散層18及び裏面電極19に対してゲート層15が負電圧となるようにゲート・ソース間電圧VGSを印加し、不純物拡散層18及び裏面電極19に対してドレイン層17が負電圧となるようにドレイン・ソース間電圧VDSを印加する。
【0052】
上記ではn型FETであるFET10をp型の半導体層11に形成する構成を説明しているが、n型FETであるFET10をn型の半導体層11に、またp型FETであるFET10をp型の半導体層11に形成してもよい。この構成の場合には、半導体層11と不純物拡散層18との間にPN接合を形成しない構成となる。例えば、n型の半導体層11又はNウエル上に積層体12を形成するとともに、その表面にn+の不純物拡散層18を形成した構成になり、半導体層11と不純物拡散層18との間にPN接合が形成されない。これは半導体基板上に1個のFET又は同一タイプ(p型またはn型)のFETを複数個設ける場合は有効である。このようにした場合、PN接合に起因する寄生容量及び接合リークがなくなり、FET10の高速性及び信頼性を向上させることができる。また、不純物拡散層18を導電層として用いているが、導電層は、金属等の導電材料で形成されたものであってもよい。
【0053】
上記では第1絶縁層14と接する半導体層11の表面に反転層を形成して電荷キャリアを放出する例について説明しているが、ゲート・ソース間電圧VGSを上述とは逆向きに印加することで、半導体層11の多数キャリアが第1絶縁層14と接する半導体層11の表面に蓄積した蓄積層を形成させ、多数キャリアが電荷キャリアとしてチャネル空間に放出されるようにしてもよい。この場合には、ドレイン・ソース間電圧VDSについても上述とは逆向きに印加する。
【0054】
また、上記では導電層としての不純物拡散層18のチャネル空間24側の端部を、半導体層11の表面上において空間25内にしているが、不純物拡散層18のチャネル空間24側の端部の位置はこれに限定されない。例えば、
図4に示すように、不純物拡散層18のチャネル空間24側の端部が間隙21と空間25との境界の位置、
図5に示すように、間隙21内の位置であってもよい。
図4、
図5の例では、不純物拡散層18は、側壁12aの間隙21を挟む2面にだけ接触している。
図3~
図5に示す例では、チャネル空間24内において半導体層11の表面に不純物拡散層18が形成されていない領域が形成されている。なお、
図6に示すように、チャネル空間24内の半導体層11の表面の全部を覆うように不純物拡散層18を形成してもよい。
【0055】
さらに、上記の例では、積層体12の上部にのみドレイン層17を設けているが、
図7に示すように、チャネル空間24の上部開口を覆って塞ぐようにドレイン層17を設けてもよい。この場合には、例えばドレイン層17を形成する前に充填剤をチャネル空間24内を含めて堆積し、充填剤を積層体12と同じ高さにする。その後に、ドレイン層17となる例えばAl(アルミニウム)膜を形成し、そのAl膜をドレイン層17の形状に加工すればよい。その他は、上記同様な手順でFET10を作製することができる。
【0056】
また、チャネル空間24の上部開口を塞ぐようにドレイン層17を形成する場合に、
図8(A)のように、ドレイン層17となる薄膜29を環状部23に載せてから、
図8(B)に示すように、薄膜29に圧力をかけて圧着し、その後に、
図8(C)に示すように、薄膜29の不要な部分をエッチングして除去してドレイン層17とすることもできる。さらに薄膜と基板の密着度を高めるために熱処理を追加してもよく、また薄膜29の膜厚を薄くしたい場合は、圧着後に薄膜29をエッチングして所定の膜厚にした後に不要な部分を除去するようにパターン形成のエッチングをしてもよい。なお、同様な手法は、絶縁膜、後述する蛍光電極部などを形成する場合にも利用できる。
【0057】
図9に示すように、チャネル空間24を挟むように一対の積層体12を半導体層11上に設けてもよい。
図9に示すFET10Aでは、半導体層11上に一対の積層体12が形成されている。一対の積層体12は、各々が直方体形状であって、互いに1つの側壁12aが所定の間隔を空けて対面するように面対称に設けられている。積層体12は、上述のものと同様に、半導体層11側から順番に第1絶縁層14、ゲート層15、第2絶縁層16、ドレイン層17が層設されている。また、この例のFET10Aでは、半導体層11の表面には、一対の不純物拡散層18がそれぞれ導電層として形成されている。
【0058】
FET10Aでは、一対の積層体12の各側壁12aに挟まれた空間がチャネル空間24になっており、チャネル空間24は、対面する一対の積層体12の側壁12aによって画定されている。FET10Aは、一対の積層体12とチャネル空間24の上部及び周囲を覆うようにカバー層26が設けられている。これにより、チャネル空間24は、半導体層11の表面の法線方向及び積層体12が並ぶ方向にそれぞれ直交する方向(以下、第1方向という)における両端の開口と上部開口とがカバー層26でそれぞれ塞がれて閉じた空間となっている。なお、各第2絶縁層16の上部に架かるドレイン層17を設け、このドレイン層17でチャネル空間24の上部開口を塞いでもよい。いずれの場合にも、上記と同様な手順でFET10Aを作製することができる。
【0059】
一対の不純物拡散層18のうち、一方の不純物拡散層18は、半導体層11の表面において、チャネル空間24内で側壁12aに接した位置から、チャネル空間24の第1方向の一端の非形成領域である開口の領域を通ってチャネル空間24の外側すなわち積層体12の一端を超えて延設されている。他方の不純物拡散層18は、半導体層11の表面において、チャネル空間24内で側壁12aに接した位置から、チャネル空間24の第1方向の他端の非形成領域である開口の領域を通ってチャネル空間24の外側すなわち積層体12の他端を超えて延設されている。各不純物拡散層18のチャネル空間24の外側の領域18aは、コンタクト領域としてそれぞれ用いられる。
【0060】
なお、一対の不純物拡散層18は、チャネル空間24内の端部が互いに離れて形成されており、半導体層11の表面において、チャネル空間24内に不純物拡散層18が形成していない領域を設けているが、チャネル空間24内の半導体層11の表面の全部を覆うように不純物拡散層18を設けてもよい。この場合には、不純物拡散層18の一端のみを積層体12の一端を超えて延設してもよい。
【0061】
上記FET10Aを動作させる際には、一対の積層体12のゲート層15に同じゲート・ソース間電圧VGSを、またドレイン層17に同じドレイン・ソース間電圧VDSをそれぞれ印加すればよい。これにより、それぞれの積層体12において、第1絶縁層14と接した半導体層11の表面及び不純物拡散層18の表面からチャネル空間24に電荷キャリアが放出されてドレイン層17に移動し、ドレイン・ソース間電流IDSが流れる。
【0062】
上記の例のおけるFET10、10Aは、光検出素子として用いることもできる。この場合には、第1絶縁層14と接する半導体層11の表面に光が入射するように、積層体12における光の入射経路上の部材を透明な材料で形成する。
【0063】
例えばFET10について、その上方すなわちドレイン層17の上方から半導体層11と第1絶縁層14との界面(半導体層11の表面)に光を入射させる場合には、ゲート層15及びドレイン層17を、それぞれ光を透過するとともに導電性を有する透明導電膜、例えばITO(酸化インジウムスズ)で形成し、第1絶縁層14、第2絶縁層16、カバー層26を透明な例えば酸化シリコン(SiO2)で形成すればよい。また、第1絶縁層14の側方より光を入射させる場合には、第1絶縁層14、カバー層26を酸化シリコン(SiO2)等の透明な材料で形成すればよい。
【0064】
FET10を光検出素子として用いる場合には、ゲート・ソース間電圧VGS及びドレイン・ソース間電圧VDSを上記と同様に印加しておくが、ゲート・ソース間電圧VGSについては、例えば半導体層11の表面に空乏層が形成されるように調整しておく。これにより、半導体層11と第1絶縁層14との界面に光が入射すると、それによって半導体層11の表面の空乏層に生じる電子-ホール対が空乏層中の電界によって分離し、電子が半導体層11の表面に蓄積される。そして、電子相互に生じるクーロン斥力により、チャネル空間24に電子が放出され、放出された電子がチャネル空間24を移動してドレイン層17に達することで、ドレイン電流が流れる。すなわち、FET10がオンになる。このようにFET10のドレイン電流の有無により光検出を行うことができ、また入射光の強度に応じたドレイン電流を流すことができる。なお、FET10Aについても同様である。なお、この構成において不純物拡散層18を省略することもできる。不純物拡散層18を設けない場合は、裏面電極19または半導体層11の表面に設けた半導体層11と同じ型の拡散層から半導体層11に所定の電圧(電位)を与えればよい。
【0065】
上記のようにFET10、10Aを光検出素子として用いる場合には、ゲート電圧を制御して空乏層の形成をコントロールする事により光検出感度を制御でき、さらにドレイン電圧の制御により光電流の大きさを制御できる。このような効果は、不純物拡散層18を設けない構成においても得られるため、不純物拡散層18を省略した構成においても有用である。
【0066】
(第2実施形態)
図10に第2実施形態の真空チャネル型電子素子としてのFET30を示す。FET30は、ゲート層15とドレイン層17とを半導体層11の面内方向にチャネル空間24を挟んで配置している。なお、以下に詳細を説明する他は、第1実施形態と同様であり、実質的に同じ部材には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0067】
この例のFET30では、半導体層11上に、ゲート層15を含む第1積層体31とドレイン層17を含む第2積層体32とが形成されている。第1積層体31及び第2積層体32は、いずれも直方体形状であり、第1積層体31の第1側壁としての側壁31aと第2積層体32の第2側壁としての側壁32aとが所定の間隔を空けて平行に対面するように設けられている。また、第1積層体31と第2積層体32との端部において、これらを連結する連結部33が設けられている。この例では、連結部33に隠されていない有効な第1積層体31の側壁31aと第2積層体32の側壁32aとが挟む空間がチャネル空間24であり、側壁31aと側壁32aとによってチャネル空間24が画定されている。
【0068】
第1積層体31は、半導体層11側から順番に第1絶縁層14、ゲート層15、第2絶縁層16が層設されており、その側壁31aは第1絶縁層14の端面、ゲート層15の端面に形成された絶縁膜27、第2絶縁層16の端面で形成されている。第2積層体32は、半導体層11側から順番に絶縁性の第3絶縁層37、ドレイン層17が層設されており、その側壁32aは第3絶縁層37の端面、ドレイン層17の端面で形成されている。これら側壁31a、32aは、チャネル空間24に露出している。第3絶縁層37は、絶縁材料、例えば第1絶縁層14、第2絶縁層16と同様に酸化シリコンで形成されている。なお、第3絶縁層37は、ドレイン・ソース間電圧VDSを印加したときに、半導体層11の第3絶縁層37と接する表面に蓄積される電荷キャリアがチャネル空間24に放出されてドレイン層17に移動しない厚みとするのがよい。
【0069】
半導体層11の表面において、チャネル空間24の連結部33と反対側の端部側に不純物拡散層18が形成されている。不純物拡散層18は、半導体層11の表面において、チャネル空間24内で側壁31aに接した位置から、チャネル空間24の連結部33と反対側の端部側の非形成領域である開口の領域を通ってチャネル空間24の外側すなわち第1積層体31の一端を超えるように延設されており、外側の領域18aはコンタクト領域として用いられる。不純物拡散層18は、側壁32aを含む第2積層体32に接触しないように設けられている。この例では、有効な側壁31aの一部分と接触するように不純物拡散層18を設けているが、チャネル空間24内の側壁31aの全部と接触するように不純物拡散層18を設けてもよい。
【0070】
FET30は、第1積層体31、第2積層体32、連結部33及びチャネル空間24の上部及び周囲を覆うようにカバー層26が設けられている。これにより、チャネル空間24は、閉じた空間になっている。この場合にも、ドレイン層17の形成後、チャネル空間24内を含めて充填剤を堆積してチャネル空間24の上部のカバー層26を形成する手法を用いれば、閉じた空間としてチャネル空間24を容易に形成することができる。
【0071】
FET30においても、第1実施形態と同様に、ゲート層15とソース電極間にゲート・ソース間電圧VGSを、またドレイン層17とソース電極間にドレイン・ソース間電圧VDSをそれぞれ印加する。これにより、第1積層体31側において、ゲート・ソース間電圧VGSによって、第1絶縁層14と接した半導体層11の表面のエッジ及び不純物拡散層18の表面からチャネル空間24に電荷キャリアが放出される。そして、チャネル空間24に放出された電荷キャリアは、ドレイン・ソース間電圧VDSにより、第1積層体31側から第2積層体32のドレイン層17に向かってチャネル空間24を移動し、ドレイン層17に捕獲される。これによりドレイン・ソース間電流IDSが流れる。
【0072】
上記の例では、連結部33にゲート層15及びドレイン層17を設けていないが、連結部33に第1積層体31及び第2積層体32のいずれか一方の層構造を持たせてもよい。また、連結部33を設けずにチャネル空間24の両端の開口をカバー層26によって閉じてもよい。
【0073】
上記のFET30についても、受光素子(光検出素子)として用いることもできる。この場合、半導体層11と第1絶縁層14との界面(半導体層11の表面)に光が入射するようにすればよい。具体的には、例えばFET30の上方から半導体層11と第1絶縁層14との界面に光を入射させる場合には、ゲート層15及びドレイン層17を、それぞれ光を透過するとともに導電性を有する透明導電膜、例えばITO(酸化インジウムスズ)で形成し、第1絶縁層14、第2絶縁層16、カバー層26を透明な例えば酸化シリコン(SiO2)で形成すればよい。また、第1絶縁層14の側方より光を入射させる場合には、第1絶縁層14、カバー層26を酸化シリコン(SiO2)等の透明な材料で形成すればよい。なお、この構成においても不純物拡散層18を省略することもできる。
【0074】
(第3実施形態)
図11に第3実施形態の真空チャネル型電子素子としてのFET40を示す。FET40は、ゲート層15とドレイン層17との間に半導体層11を配した構成である。なお、以下に詳細を説明する他は、第1実施形態と同様であり、実質的に同じ部材には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0075】
FET40は、絶縁材料で形成されたベース層としての基板41上に積層体42が形成されている。積層体42は、基板41側から順番に絶縁材料で形成されたベース絶縁層45、ソースとなるp型またはn型の半導体層11、第1絶縁層14、ゲート層15、第2絶縁層16が層設されている。積層体42は、第1実施形態の積層体12(
図1参照)と同様に、上方向に延びた四角筒形状の一部を上下方向に切り欠いた間隙47を設けた形状をしており、周方向の一部に間隙47を形成した周状に設けられている。
【0076】
上記積層体42の側壁42aによって画定される空間がチャネル空間48になっている。すなわち、積層体42と間隙47とからなる環状部51によって囲まれた空間52と所定の間隔で対面した側壁42aに挟まれた空間である間隙47とがチャネル空間48を構成している。ゲート層15のチャネル空間48側の端面には絶縁膜27が形成されている。なお、厳密には、第1絶縁層14と半導体層11との界面と、後述するように基板41上に設けたドレイン層17との間の空間が、電荷キャリアの移動する空間である。
【0077】
また、基板41上にはドレイン層17が設けられている。ドレイン層17は、基板41の表面において、チャネル空間48内の領域から間隙47の領域を通って積層体42の外側に延びている。すなわち、ドレイン層17は、チャネル空間48内の領域から積層体42が形成されていない非形成領域を通って積層体42を超えて積層体42の外周領域にまで延設されている。積層体42を超えた領域17aがドレイン層17に所定の電圧を印加するための配線が接続されるコンタクト領域となっている。この例では、チャネル空間48内においては、ドレイン層17は、基板41のチャネル空間48内の全領域を覆うように形成されている。なお、間隙47を設けずに積層体42を閉じた環状に設け、ドレイン層17をチャネル空間48内にだけ形成した構成とすることもできる。
【0078】
環状部51の周囲及び上部を覆うようにカバー層54が設けられている。これにより、チャネル空間48は、その上面及び間隙47の開口が塞がれて閉じた空間となっている。カバー層54は、絶縁材料(例えば酸化シリコン(SiO2))で形成されている。第1実施形態と同様に、ドレイン層17の形成後に、チャネル空間48内を含めて充填剤を堆積してチャネル空間48の上部にカバー層54を形成する手法を用いれば、閉じた空間としてチャネル空間48を形成することができる。なお、チャネル空間48は、上部、周囲が開いた空間であってもよい。したがって、例えば基板41上に積層体42を直方体形状に形成し、その積層体42の1つの面の側壁42aに面した空間をチャネル空間とすることもできる。
【0079】
上記FET40は、例えば、シリコン基板上にBOX層(SIO2膜)とシリコン膜とを層設したSOI基板を用いて作製することができる。この場合には、BOX層を基板41及びベース絶縁層45とし、BOX層上に形成されたシリコン膜を半導体層11とすればよい。このようにBOX層の一部をベース絶縁層45とする場合には、ドレイン層17を形成するBOX層の部分をドレイン層17の厚みよりも深くエッチングしてから、ドレイン層17を形成すればよい。なお、この場合、基板41、ベース絶縁層45との境界は確認できない。
【0080】
FET40を使用する場合には、ゲート層15及びドレイン層17にそれぞれ正電圧が印加されるようにして、ゲート層15と半導体層11との間にゲート・ソース間電圧VGSを、またドレイン層17と半導体層11との間にドレイン・ソース間電圧VDSをそれぞれ印加する。これにより、ゲート・ソース間電圧VGSによって、第1絶縁層14との界面である半導体層11の表面のエッジからチャネル空間48に電荷キャリアである電子が放出される。そして、チャネル空間48に放出された電子は、ドレイン・ソース間電圧VDSにより、ドレイン層17に向かってチャネル空間48を移動し、ドレイン層17に捕獲される。これによりドレイン・ソース間電流IDSが流れる。なお、この例においても、上記とは逆向きにゲート・ソース間電圧VGS、ドレイン・ソース間電圧VDSをそれぞれ印加して、電荷キャリアとして正孔を放出し、その正孔がドレイン層17に捕獲されるようにしてもよい。また、半導体層11に反転層を形成する代わりに、蓄積層を形成してもよい。
【0081】
上記のFET40についても、受光素子(光検出素子)、光電変換素子等として用いることもできる。この場合にも、半導体層11と第1絶縁層14と界面(半導体層11の表面)に光が入射するようにすればよい。したがって、FET40の上方より光を入射させる場合には、第1絶縁層14、ゲート層15、第2絶縁層16、カバー層54を透明な材料で形成する。また、第1絶縁層14の側方より光を入射させる場合には、第1絶縁層14、カバー層54を透明な材料で形成する。
【0082】
(第4実施形態)
図12に第4実施形態の真空チャネル型電子素子としての発光素子60を示す。発光素子60は、ドレイン層として蛍光電極部61を用いている他は、
図7に示されるFET10と同様な構成であるので、実質的に同じ部材には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。なお、
図12では、断面のハッチングを省略している。
図13~
図15についても、同様に断面のハッチングを省略している。
【0083】
発光素子60は、チャネル空間24の上方に設けたドレイン層として蛍光電極部61が設けられている。この例では、蛍光電極部61は、蛍光体層61aと透明電極層61bとの二層構造であり、チャネル空間24側に蛍光体層61aが配されている。したがって、チャネル空間24に蛍光体層61aの一部が露出している。蛍光体層61aは、電子の入射により発光する蛍光体を層状(薄膜状)に形成したものである。透明電極層61bは、光を透過するとともに導電性を有する透明導電膜であり、例えばITO(酸化インジウムスズ)で形成されている。透明電極層61bには、ドレイン・ソース間電圧VDSが印加される。
【0084】
ゲート・ソース間電圧VGSの印加によって第1絶縁層14との界面である半導体層11の表面のエッジからチャネル空間24に放出された電子は、ドレイン・ソース間電圧VDSによって、蛍光体層61aに入射する。これにより、蛍光体層61aが発光し、その光が透明電極層61bを透過して発光素子60の外部に放出される。
【0085】
図13に示す発光素子65は、ゲート層15と蛍光電極部61とを半導体層11の面内方向にチャネル空間24を挟んで配置したものである。なお、発光素子65の構成は、以下に詳細を説明する他は、第2実施形態のFET30と同じであり、実質的に同じ部材には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0086】
発光素子65では、ドレイン層として蛍光電極部61が第2積層体32に設けられている。蛍光電極部61は、蛍光体層61aがチャネル空間24に露出するように配されており、チャネル空間24を挟んで第1積層体31の側壁31aに対面している。蛍光電極部61の背面側(チャネル空間24と反対側の面側)に透明な背面絶縁層63が第3絶縁層37と一体に設けられている。この発光素子65では、第1積層体31側の半導体層11から放出される電子が蛍光体層61aに入射して、その蛍光体層61a発光し、蛍光体層61aからの光が透明電極層61b、背面絶縁層63を通して外部に放出される。
【0087】
なお、上記発光素子60、65において、カバー層を設け、カバー層を通して蛍光体層61aからの光を外部に放出する場合には、カバー層を透明な絶縁材料、例えば酸化シリコンで形成すればよい。また、発光素子60、65において、第1実施形態における受光素子の場合と同様に、不純物拡散層18を省略してもよい。
【0088】
図14に示す発光素子68は、ゲート層15とドレイン層としての蛍光電極部61との間に半導体層11を配した構成である。なお、発光素子68の構成は、以下に詳細を説明する他は、第3実施形態のFET40と同じであり、実質的に同じ部材には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0089】
発光素子68では、基板41上にドレイン層として蛍光電極部61が設けられている。蛍光電極部61は、基板41側に透明電極層61bが配され、蛍光体層61aがチャネル空間48に露出するように配されている。基板41が透明な絶縁材料、例えば酸化シリコンで作製されており、蛍光体層61aからの光は、透明電極層61b、基板41を通して外部に放出される。
【0090】
上記の各発光素子60、65、68では、ゲート・ソース間電圧VGSによって、電子の放出が制御され、ドレイン・ソース間電圧VDSによって蛍光体層61aへの電子の入射速度すなわち発光強度が制御されるため、電子の放出と発光強度をそれぞれ最適に制御できる。したがって、第1絶縁層14による絶縁性が破壊されない小さいゲート・ソース間電圧VGSで電子を放出させ、第1絶縁層14による絶縁性が破壊されるような大きなドレイン・ソース間電圧VDSで発光強度を大きくすることも可能になる。なお、上記では蛍光電極部61を蛍光体層61aと透明電極層61bとの二層構造としているが、蛍光電極部の構成は、これに限定されない。例えば電子入射により発光する導電性材料だけで構成してもよい。このような発光する導電性材料としては、GaN、ZnO:Zn、SrTiO3:Pr3+、SrTiO3:Pr3+にAl化合物を添加して合成した化合物、SrIn2O4:Pr3+にAl(アルミニウム)やY(イットリウム)等を添加して合成した化合物が挙げられる。これらは、電子線励起発光の開始電圧が比較的に低く(例えば10V以下)好ましい。
【0091】
上記のような発光素子の構成は、例えば携帯電話、TV等の表示装置等に応用できる。すなわち、発光素子を画素として表示装置を構成することができる。
【0092】
(第5実施形態)
第1~第3実施形態に示される受光素子、第4実施形態で示される発光素子の一方を用いて、また両方を組み合わせて用いることで、光伝送回路、光通信回路を構成することができる。なお、第1~第4実施形態と実質的に同じ部材には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0093】
図15は、1つの基板上に真空チャネル型電子素子を用いた光伝送回路70を設けた一例を示している。光伝送回路70は、それぞれ真空チャネル型電子素子である素子71から素子72に光信号を伝送するように構成されている。
【0094】
素子71には、半導体層11上に、上述の発光素子65と同様な、第1絶縁層14A、ゲート層15A、第2絶縁層16Aからなる第1積層体31Aと、第3絶縁層37A、蛍光電極部61A、背面絶縁層63Aからなる第2積層体32Aと、不純物拡散層18Aとが設けられ、第1積層体31Aと第2積層体32Aとがチャネル空間24Aを挟んで配されている。
【0095】
素子72についても、半導体層11上に、上述の発光素子65と同様な、第1絶縁層14B、ゲート層15B、第2絶縁層16Bからなる第1積層体31Bと、第3絶縁層37B、蛍光電極部61B、背面絶縁層63Bからなる第2積層体32Bと、不純物拡散層18Bとが設けられ、第1積層体31Bと第2積層体32Bとがチャネル空間24Bを挟んで配されている。第1積層体31A、31B及び第2積層体32A、32Bが設けられた半導体層11は、素子71、72に共通なものであって同一の基板である。半導体層11の裏面には素子71、72に共通な裏面電極19が設けられている。なお、素子71、72に対して電気的に分離した裏面電極を設けてもよい。
【0096】
第1絶縁層14A、14B、第2絶縁層16A、16B、第3絶縁層37A、37B及び背面絶縁層63A、63Bは、例えば酸化シリコン(SiO2)で形成されており、半導体層11は、例えばp型のシリコン半導体で形成されている。裏面電極19は、例えばAl(アルミニウム)で形成されている。
【0097】
素子71は、それに印加されるゲート・ソース間電圧VGSにより、その発光の制御がなされる。すなわち、素子71は、電気入力光出力の発光素子であり、ゲート・ソース間電圧VGSの増減によりオン・オフ、又は変調した光信号を出力する。一方の素子72は、ゲート・ソース間電圧を制御する事により素子71からの光に対してのオン・オフの制御、または光入力レベルに対する光出力レベルの制御がなされる。すなわち、素子72は、光入力光出力の素子として機能するものであり、受光素子であると同時に発光素子である。なお、素子72は、入力される光に対してドレイン電流を変化させる光入力電気出力の素子としてもよい。
【0098】
半導体層11上において、素子71の第2積層体32Aと素子72の第1積層体31Bの間には、例えば酸化シリコン(SiO
2)で形成された導波路75が設けられている。導波路75の第2積層体32A側の端部は、第3絶縁層37A及び背面絶縁層63Aと連結されて一体にされおり、導波路75の第1積層体31B側の端部は、第1絶縁層14Bと連結されて一体にされている。なお、この例では、第2積層体32Aと第1積層体31Bの間の半導体層11も導波路の一部として機能するため、半導体層11を各積層体と同じ程度の幅(
図15の紙面垂直方向の長さ)とすることが損失を抑える観点から好ましい。
【0099】
この例では、光伝送回路70の表面は、第1絶縁層14A、14B、第3絶縁層37A、37B、背面絶縁層63A、63B、導波路75及び半導体層11よりも屈折率が低い空気中に露出している。なお、素子71、72及び導波路75をカバー層で覆ってもよい。この場合には、少なくとも第1絶縁層14A、14B、第3絶縁層37A、37B、背面絶縁層63A、63B、導波路75及び半導体層11を覆う部分は、それらよりも屈折率が低い材料で形成し、光がカバー層に漏れ出ないようする。また、背面絶縁層63Aの蛍光電極部61と反対側の面に、背面絶縁層63Aの内部からの光を遮断または反射する膜を形成しておくことも好ましい。
【0100】
上記構成によれば、素子71に印加されるゲート・ソース間電圧VGSに応じて変調された蛍光電極部61Aから光の一部が背面絶縁層63A、第3絶縁層37A、導波路75を介して素子72の第1絶縁層14Bに達し、半導体層11と第1絶縁層14Bとの界面に入射する。また、導波路75に入射した光の一部は、半導体層11内部を通って、その半導体層11の第1絶縁層14Bの直下の領域から半導体層11と第1絶縁層14Bとの界面に入射する。これにより、素子72では、半導体層11の表面に電子が蓄積され、それらの電子相互に生じるクーロン斥力により、チャネル空間24Bに電子が放出される。そして、放出された電子がチャネル空間24Bを移動して蛍光電極部61Bに入射することで、蛍光電極部61Bから光が出力される。
【0101】
図16は、上記のように構成される発光素子を用いて積層されたチップ間で信号の授受を行うチップ間伝送の例を示している。積層チップ(積層MCP(マルチチップパッケージ))80は、チップ81とチップ82とを上下方向に積層したものであり、チップ82の上にチップ81が配されている。なお、この例では、チップ81が第1チップであり、チップ82が第2チップである。
【0102】
チップ81は、上記発光素子68と同じ構成であり、基板41上に設けた蛍光電極部61からの光を透明な基板41を通して下方に出力する発光素子81aが設けられている。一方のチップ82は、例えばシリコン半導体からなる基板84の表面の蛍光電極部61の直下となる領域に受光素子85が形成されている。受光素子85は、例えばフォトダイオードでありPN接合した半導体で構成されている。また、基板84上には、例えば酸化シリコン(SiO2)で形成された絶縁層86が設けられている。この絶縁層86は、受光素子85の上方となる部分に貫通孔86aが形成されている。チップ81の下面が絶縁層86の上面に接するようにして、チップ82の上にチップ81が積層されている。
【0103】
上記の構成により、例えばチップ81に設けた回路で生成される信号に基づいて発光素子81aの蛍光電極部61から出力される光が変調される。そして、蛍光電極部61からの光が基板41、貫通孔86aを介して受光素子85で受光されて電気的な信号に変換され、その信号がチップ82に設けた回路に送られる。このようにして、チップ81から信号をチップ82に光信号で送る。
【0104】
従来、チップ間の信号の伝送としては、シリコン基板を貫通するビア配線で接続するシリコン貫通ビア(TSV;through silicon via)技術によるものが知られているが、上記構成においては、チップ上下間を貫通するビア、及びビアを埋める配線は必要なく、また光により信号を授受するのでチップ間の高速通信が可能となる。
【0105】
なお、貫通孔86a内に蛍光電極部61が露出するように構成してもよい。また、発光素子としては、発光素子60、65と同様な構成であってもよい。さらに、受光素子としては第1~第3実施形態に示される光検出素子を用いることもできる。
【0106】
上記の例では、積層された上側のチップからの光を下側のチップで受光しているが、下側のチップからの光を上側のチップで受光するように構成してもよい。
図17に示す積層チップ90は、チップ91の上側にチップ92を積層したものであり、下側のチップ91に設けた発光素子91aからの信号としての光を上側のチップ92に設けた受光素子93で受光する構成である。なお、この例では、チッ91が第1チップであり、チップ92が第2チップである。
【0107】
チップ91の発光素子91aは、例えばシリコン基板である半導体層11と、この半導体層11上に設けた積層体12と、積層体12の上部及びチャネル空間24の上方に設けた蛍光電極部61と、蛍光電極部61の上に層設された透明な絶縁層94とから構成されている。絶縁層94は、例えば酸化シリコン(SiO
2)で形成されている。発光素子91aの構成は、不純物拡散層が省略されるとともに蛍光電極部61の上に絶縁層94を設けている他は、上述の発光素子60(
図12参照)と同じ構成である。なお、半導体層11にはソース間電圧V
GSを印加するための裏面電極(図示省略)を設けてある。他の例と同様に、半導体層11の表面に不純物拡散層等の導電層や半導体層11と同じ型の拡散層を設けてもよい。
【0108】
チップ92は、例えば酸化シリコン(SiO2)からなる透明な絶縁性の基板95上の半導体層96に受光素子93が設けられている。受光素子93は、例えばPN接合したフォトダイオードであり、蛍光電極部61の直上に設けられている。チップ92の下面がチップ91の絶縁層94の上面に接するようにして、チップ91の上にチップ92が積層されている。
【0109】
積層チップ90では、例えばチップ91に設けた回路で生成される信号に基づいて発光素子91aの蛍光電極部61から出力される光が変調され、その光が絶縁層94及び基板95を通して受光素子93で受光されて電気的な信号に変換される。このようにして、チップ91から信号をチップ92に光信号で送る。
【0110】
上記では、一方のチップを他方のチップに接するよう重ねた2層に積層した積層チップの例について説明しているが、積層チップは、これに限定されない。例えば、積層チップは、3層以上にチップを層設したものでもよい。3層以上の場合でも、相接する層間(チップ間)で上記の手法で光伝送を行う事により、相接する層間でなくても層間で次々に伝送すれば光による信号の伝送は可能となる。この場合、光による伝送なので、浮遊容量、配線抵抗を伴うTSV技術による相接しない層間の直接伝送よりも高速での信号伝送が可能となる。
【符号の説明】
【0111】
10、10A、30、40 真空チャネル電界効果トランジスタ(FET)
11、96 半導体層
12、42 積層体
12a、31a、32a、42a 側壁
14、14A,14B 第1絶縁層
15、15A、15B ゲート層
16、16A、16B 第2絶縁層
17 ドレイン層
18、18A、18B 不純物拡散層
24、24A,24B、48 チャネル空間
27 絶縁膜
31、31A、31B 第1積層体
32、32A、32B 第2積層体
37、37A、37B 第3絶縁層
41、84、95 基板
45 ベース絶縁層
60、65、68、81a、91a 発光素子
61、61A、61B 蛍光電極部
70 光伝送回路
71、72 素子
75 導波路
80,90 積層チップ
85,93、受光素子
【要約】
【課題】製造が容易な構造を有する真空チャネル型電子素子、それを用いた光伝送回路及び積層チップを提供する。
【解決手段】
半導体層11上に積層体12が周方向の一部に間隙21を形成した周状に設けられている。積層体12は、半導体層11側から順番に第1絶縁層14、ゲート層15、第2絶縁層16、ドレイン層17が層設されている。半導体層11の表面に不純物拡散層18が形成され、裏面には裏面電極19が形成されている。不純物拡散層18は、半導体層11の表面において、チャネル空間24内で側壁12aに接した位置から間隙21に対応する領域を通って積層体12の外側に延びている。不純物拡散層18の積層体12を超えた部分が所定の電圧を印加するための配線が接続されるコンタクト領域となっている。積層体12及び間隙21からなる環状部23の上部及び周囲に絶縁材料からなるカバー層26が形成されている。
【選択図】
図1