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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-11
(45)【発行日】2022-03-22
(54)【発明の名称】容器詰め炭酸アルコール飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/00 20190101AFI20220314BHJP
【FI】
C12G3/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021521856
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2021004732
(87)【国際公開番号】W WO2021171998
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2020033947
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】神津 早希
(72)【発明者】
【氏名】吉弘 晃
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-013115(JP,A)
【文献】特開平10-262642(JP,A)
【文献】特開2007-039610(JP,A)
【文献】特開2018-143212(JP,A)
【文献】特開2018-143213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器詰め炭酸飲料であって、
前記飲料の炭酸ガス圧が1.9~5.0kgf/cmであり、
前記飲料のpHが3.5以上5.0未満であり、
前記飲料のアルコール含有量が~16v/v%であり、
前記飲料のナトリウム含有量が60~600mg/100mLであり、
前記飲料の酸度(クエン酸換算)が0.41g/100mL以上であり、そして
前記飲料のナトリウム含有量に対するカリウム含有量の重量比(K/Na)が0.001~0.1である、前記炭酸飲料。
【請求項2】
果汁含有量が0~9w/w%である、請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】
クエン酸カリウム含有量が20mg/100mL未満である、請求項1又は2に記載の炭酸飲料。
【請求項4】
炭酸ガス圧が1.9~5.0kgf/cmであり、pHが3.5以上5.0未満であり、そしてアルコール含有量が~16v/v%である容器詰め炭酸飲料の炭酸に由来する好ましくない刺激を軽減する方法であって、
当該飲料のナトリウム含有量を60~600mg/100mLに調整する工程、
当該飲料の酸度(クエン酸換算)を0.41g/100mL以上に調整する工程、及び
当該飲料のナトリウム含有量に対するカリウム含有量の重量比(K/Na)を0.001~0.1に調整する工程
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的高い炭酸ガス圧を有する容器詰め炭酸アルコール飲料、及びそれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RTDに代表される炭酸アルコール飲料の人気が高まっている。RTDとは、「Ready to Drink」の略語であり、それには、そのまますぐ飲める缶チューハイや缶カクテル、缶ハイボールなどのアルコール飲料が包含される。
【0003】
炭酸アルコール飲料には様々な問題があり、その問題に対処するための技術が公開されている。たとえば、特許文献1には、アルコール由来の苦味を低減するための技術が記載されている。また、特許文献2には、所望の炭酸の刺激感を得るための技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-143212号公報
【文献】特開2018-143213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭酸アルコール飲料においては、炭酸による爽快感を追及して炭酸ガス圧を高めることがある。しかしながら、本願発明者が検討したところ、アルコール飲料において炭酸ガス圧を高めると、アルコールに由来する刺激と相まって、炭酸に由来する刺激が過度に増強されうることを見出した。さらに、低いpH範囲も、その刺激感を高めることを見出した。
【0006】
本願発明の課題は、比較的高い炭酸ガス圧を有しかつ低いpHを有するアルコール炭酸飲料において、炭酸に由来する好ましくない刺激を軽減する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、比較的高い炭酸ガス圧を有し低いpHを有するアルコール飲料において、ナトリウム含有量、酸度、及びナトリウム含有量に対するカリウム含有量の重量比を特定範囲にすると、当該飲料における炭酸に由来する好ましくない刺激が軽減されることを見出した。
【0008】
本発明は、以下のものに関するが、これらに限定されない。
[1]容器詰め炭酸飲料であって、
前記飲料の炭酸ガス圧が1.9~5.0kgf/cmであり、
前記飲料のpHが3.5以上5.0未満であり、
前記飲料のアルコール含有量が1~16v/v%であり、
前記飲料のナトリウム含有量が60~600mg/100mLであり、
前記飲料の酸度(クエン酸換算)が0.41g/100mL以上であり、そして
前記飲料のナトリウム含有量に対するカリウム含有量の重量比(K/Na)が0.001~0.1である、前記炭酸飲料。
[2]果汁含有量が0~9w/w%である、[1]に記載の炭酸飲料。
[3]クエン酸カリウム含有量が20mg/100mL未満である、[1]又は[2」に記載の炭酸飲料。
[4]炭酸ガス圧が1.9~5.0kgf/cmであり、pHが3.5以上5.0未満であり、そしてアルコール含有量が1~16v/v%である容器詰め炭酸飲料の炭酸に由来する好ましくない刺激を軽減する方法であって、
当該飲料のナトリウム含有量を60~600mg/100mLに調整する工程、
当該飲料の酸度(クエン酸換算)を0.41g/100mL以上に調整する工程、及び
当該飲料のナトリウム含有量に対するカリウム含有量の重量比(K/Na)を0.001~0.1に調整する工程
を含む、前記方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、比較的高い炭酸ガス圧を有し低いpHを有するアルコール飲料の炭酸に由来する好ましくない刺激を軽減することができる。
なお、本明細書において用いられる「炭酸に由来する好ましくない刺激」との用語には、バーニング感や痛みを伴う刺激感が包含される。「バーニング感」とは、アルコール飲料を飲用する際にアルコールに由来して生じる、口腔から喉にかけて感じる強い刺激感を意味し、これは炭酸の刺激によって助長される。「痛みを伴う刺激感」とは、炭酸含有飲料を飲用する際に炭酸ガスに由来する口腔から喉を通る際に炭酸の泡がはじけて感じる刺激感を意味する。
【0010】
また、本発明は、その一態様において、当該飲料のお酒としての飲みごたえ、及び/又はドリンカビリティーを高めることもできる。
なお、「お酒としての飲みごたえ」とは、アルコール含有飲料の味わいが持つ複雑味や、アルコール由来の厚み、余韻の長さなどの、飲んだ際に満足感を与えるアルコール含有飲料の性質を意味し、「ドリンカビリティー」とは、飲料が有する、飲みやすく、何杯でも飲みたくなる性質を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の容器詰め炭酸アルコール飲料(以下、「本発明の飲料」とも記載する)、及び関連する方法について、以下に説明する。
(炭酸ガス)
本発明の飲料は、高いガス圧で炭酸ガスを含む。当該ガス圧は、具体的には、1.9~5.0kgf/cm、好ましくは1.9~3.7kgf/cm、より好ましくは2.0~3.0kgf/cm、より好ましくは2.0~2.7kgf/cmである。
【0012】
炭酸ガスは、当業者に通常知られる方法を用いて飲料に付与することができ、例えば、これらに限定されないが、二酸化炭素を加圧下で飲料に溶解させてもよいし、ツーヘンハーゲン社のカーボネーター等のミキサーを用いて配管中で二酸化炭素と飲料とを混合してもよいし、また、二酸化炭素が充満したタンク中に飲料を噴霧することにより二酸化炭素を飲料に吸収させてもよいし、飲料と炭酸水とを混合してもよい。これらの手段を適宜用いて炭酸ガス圧を調節する。
【0013】
本明細書においては、特に断りがない限り、炭酸ガス圧は、20℃における炭酸ガス圧を意味する。当該ガス圧は、京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500Aを用いて測定することができる。例えば、試料温度を20℃にし、前記ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とう後、炭酸ガス圧を測定する。
【0014】
(pH)
本発明の飲料のpHは、3.5以上5.0未満であり、好ましくは3.5~4.5、より好ましくは3.6~4.2、より好ましくは3.7~4.1である。
【0015】
なお、本明細書において、飲料のpHは、炭酸ガス抜きの状態で測定されたpHを意味する。したがって、たとえば、上記のガス圧の測定時に行われるガス抜きと振とうの工程を実施したのちにpHを測定することができる。
【0016】
(アルコール含有量)
本発明の飲料は、アルコールを含有する。本明細書に記載の「アルコール」との用語は、特に断らない限りエタノールを意味する。
【0017】
本発明の飲料のアルコール含有量は、1~16v/v%であり、好ましくは3~12v/v%であり、より好ましくは3~10v/v%である。
アルコールはどのような手段で飲料に含有させてもよいが、本発明の特に好ましい態様の一つはチューハイなどのRTDであるため、本発明の飲料は蒸留酒を含有することが好ましい。蒸留酒は、その原料や製造方法によって限定されない。当該蒸留酒としては、例えば、スピリッツ(例えば、ウオツカ、ラム、テキーラ、ジン、アクアビット、コルン)、醸造用アルコール、ニュートラルスピリッツ、リキュール類、ウイスキー、ブランデー、焼酎が挙げられる。またこれら蒸留酒に果実、野菜、お茶、スパイス、ハーブなどを浸漬させたものを使用しても良い。
【0018】
本明細書においては、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、飲料から濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。
【0019】
(ナトリウム)
本発明の飲料は、ナトリウムを含有する。本発明の飲料におけるナトリウムの含有量は60~600mg/100mLであり、好ましくは65~500mg/100mL、より好ましくは70~400mg/100mL、より好ましくは80~300mg/100mLである。ナトリウム含有量の別の好ましい例は、60~300mg/100mL、60~200mg/100mL、及び60~150mg/100mLである。ナトリウムの含有量を適切な範囲にすると、炭酸に由来する好ましくない刺激を軽減することができる。
【0020】
本発明においてナトリウムは、飲食品に用いることができる塩の形態で飲料に添加することができる。本発明の飲料にナトリウムを配合することができる塩としては、例えば、クエン酸三ナトリウムなどのクエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、安息香酸ナトリウム、L-アスコルビン酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、ナトリウムを飲料に添加するためには、ナトリウム又はナトリウム塩を含有する原料、例えば果汁、野菜汁、天然水、海洋深層水を飲料に添加してもよい。
【0021】
本発明に含まれるナトリウムが塩の形態にある場合は、これを遊離体(フリー体)の量に換算した上で飲料中のナトリウムの含有量を算出することができる。また、本発明に関する、飲料(試料溶液)中のナトリウムの含有量又は濃度は、ICP発光分光分析装置を用いて公知の方法により測定することができる。
【0022】
(カリウム)
本発明の飲料は、さらにカリウムを含有してもよい。本発明の飲料におけるナトリウム含有量に対するカリウム含有量の重量比(K/Na)は、好ましくは0.001~0.1であり、より好ましくは0.0057~0.1であり、より好ましくは0.001~0.05である。K/Na重量比を適切な範囲にすると、炭酸に由来する好ましくない刺激を軽減することができる。
【0023】
本発明においてカリウムは、飲食品に用いることができる塩の形態で飲料に添加することができる。本発明の飲料にカリウムを配合することができる塩としては、例えば、酒石酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、ソルビン酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、アセスルファムカリウム、アルギン酸カリウム、クエン酸三カリウムなどのクエン酸カリウム、グルコン酸カリウム、L-グルタミン酸カリウム、アスコルビン酸カリウムなどが挙げられる。また、カリウムを飲料に添加するためには、カリウム又はカリウム塩を含有する原料、例えば果汁、野菜汁、茶、天然水、海洋深層水を飲料に添加してもよい。
【0024】
本発明において用いられるカリウムが塩の形態にある場合は、これを遊離体(フリー体)の量に換算した上で飲料中のカリウムの含有量を算出することができる。また、本発明に関する、飲料(試料溶液)中のカリウムの含有量又は濃度は、ICP発光分光分析装置を用いて公知の方法により測定することができる。
【0025】
(酸度)
本発明の飲料の酸度は、0.41g/100mL以上であり、好ましくは0.41~2.2g/100mL、より好ましくは0.43~1.5g/100mL、より好ましくは0.45~1.5g/100mL、より好ましくは0.45~1.2g/100mLである。酸度を適切な範囲にすると、炭酸に由来する好ましくない刺激を軽減することができる。
【0026】
本明細書において用いる「酸度」とは、酸の含有量の指標となる値であり、一定量の飲料(試料)に水酸化ナトリウムなどのアルカリを加えて中和する際の、中和に要した(pH7.0)アルカリの量から計算により求めることができる。酸度の測定には、自動滴定装置(Mettler toledo DL50など)を用いることができる。本発明において、酸度は、クエン酸量に換算した値(中和量から、飲料に含まれている酸が全てクエン酸であると仮定して計算して求める)を用いる。
【0027】
(果汁)
本発明の飲料は、果汁を含有してもよい。果汁は、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁、濃縮した濃縮果汁などのいずれの形態であってもよい。また、透明果汁、混濁果汁を使用することもでき、果実の外皮を含む全果を破砕し種子など特に粗剛な固形物のみを除いた全果果汁、果実を裏ごしした果実ピューレ、或いは、乾燥果実の果肉を破砕もしくは抽出した果汁を用いることもできる。
【0028】
果汁の種類は、特に限定されないが、例えば、柑橘類果汁(オレンジ果汁、うんしゅうみかん果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、柚子果汁、いよかん果汁、なつみかん果汁、はっさく果汁、ポンカン果汁、シイクワシャー果汁、かぼす果汁等)、リンゴ果汁、ブドウ果汁、モモ果汁、熱帯果実果汁(パイナップル果汁、グァバ果汁、バナナ果汁、マンゴー果汁、アセロラ果汁、ライチ果汁、パパイヤ果汁、パッションフルーツ果汁等)、その他果実の果汁(ウメ果汁、ナシ果汁、アンズ果汁、スモモ果汁、ベリー果汁、キウイフルーツ果汁等)、イチゴ果汁、メロン果汁などが挙げられる。これらの果汁は、1種類を単独使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の飲料における果汁の含有量は、特に限定されないが、典型的には、果汁率に換算して0~100w/w%、10w/w%未満、又は0~9w/w%である。
本発明では、飲料中の「果汁率」を飲料100g中に配合される果汁配合量(g)を用いて下記換算式によって計算することとする。また濃縮倍率を算出する際はJAS規格に準ずるものとし、果汁に加えられた糖質、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。
【0030】
果汁率(w/w%)=<果汁配合量(g)>×<濃縮倍率>/100mL/<飲料の比重>×100
(飲料の種類)
本発明の飲料の種類は特に限定されないが、好ましくは、ハイボール、チューハイ(酎ハイ)、カクテル、サワーなどである。「ハイボール」、「チューハイ」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、水と蒸留酒と炭酸とを含有する飲料を意味する。ハイボール、チューハイは、さらに果汁を含有してもよい。また、「サワー」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、スピリッツと、柑橘類などの酸味のある果汁と、甘味成分と、炭酸とを含有する飲料を意味する。「カクテル」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、ベースとなる酒に果汁等を混ぜて作られたアルコール飲料を意味する。
(甘味料)
本発明の飲料は、一定量の甘味料を含有しても良い。本発明において、甘味料として天然甘味料、糖アルコール、人工甘味料等を用いることができる。例えば、天然甘味料としては、グルコース、フルクトース、モグロール配糖体、グリチルリチン酸配糖体、マルトース、スクロース、ラクトース、希少糖、高果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、オリゴ糖、はちみつ、サトウキビ搾汁液(黒糖蜜)、砂糖(白糖、三温糖、黒糖、和三盆など)、メープルシロップ、モラセス(糖蜜)、水飴などが挙げられるが、これらに限定されない。糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトールなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、人工甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、アリテーム、ネオテームなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明で用いられる甘味料は、好ましくはアセスルファムカリウム、スクラロース、果糖ブドウ糖液糖、砂糖、水飴、オリゴ糖からなる群より選ばれる1種または2種以上を含むものである。また、本発明で用いられる甘味料は、好ましくはアセスルファムカリウム、スクラロース、果糖ブドウ糖液糖、砂糖からなる群より選ばれる1種または2種以上を含むものである。
【0032】
本明細書において、「甘味度」は、炭酸飲料に添加される甘味料由来の甘味度を意味し、レモン果汁のような柑橘類果汁等にもともと含まれている甘味成分由来の甘味度は含まない。また、本明細書において「甘味度」は、ショ糖の甘味を基準とした甘味の度合いで、ショ糖水溶液におけるショ糖濃度(w/v%)に相当する。例えば、甘味度2は、ショ糖水溶液2w/v%の甘味に相当する。以下に、本明細書における各甘味料の甘味度の例を示す。ショ糖の甘味度を100として、アセスルファムカリウム、スクラロース、果糖ブドウ糖液糖の甘味度を、それぞれ20000、60000、75.5とみなす。甘味度の調整のためには、添加される天然甘味料および/または人工甘味料の量を調整すればよい。
【0033】
本発明の飲料における甘味料由来の甘味度の範囲は、ショ糖換算(w/v%)で0.5~7.0、好ましくは0.6~6.0、より好ましくは0.7~4.0、さらに好ましくは1.0~3.0でもよい。
【0034】
(他の成分)
本発明における飲料には、他にも、本発明の効果を損なわない限り、飲料に通常配合する添加剤、例えば、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を配合することができる。
【0035】
一態様において、本発明の飲料におけるクエン酸カリウムの含有量は20mg/100mL未満である。
一態様において、本発明の飲料におけるマグネシウムの含有量は10mg/L未満である。
【0036】
一態様において、本発明の飲料におけるアスコルビン酸塩の含有量は、3g/L未満である。
一態様において、本発明の飲料は、1-オクテン-3-オールを含まない。
【0037】
(容器詰め飲料)
本発明の飲料は、容器詰めの形態で提供される。容器の形態には、缶等の金属容器、ペットボトル、紙パック、瓶、パウチなどが含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明の飲料を容器に充填した後にレトルト殺菌等の加熱殺菌を行う方法や、飲料を殺菌して容器に充填する方法を通じて、殺菌された容器詰め製品を製造することができる。
【0038】
(関連する方法)
本発明は、別の側面では、炭酸ガス圧が1.9~5.0kgf/cmであり、pHが3.5以上5.0未満であり、そしてアルコール含有量が1~16v/v%である容器詰め炭酸飲料の炭酸に由来する好ましくない刺激を軽減する方法である。当該方法は、以下の工程を含む:
当該飲料のナトリウム含有量を60~600mg/100mLに調整する工程、
当該飲料の酸度(クエン酸換算)を0.41g/100mL以上に調整する工程、及び
当該飲料のナトリウム含有量に対するカリウム含有量の重量比(K/Na)を0.001~0.1に調整する工程。
【0039】
当該方法は、当該飲料の炭酸ガス圧が1.9~5.0kgf/cmとなり、pHが3.5以上5.0未満となり、そしてアルコール含有量が1~16v/v%となるように原料を配合する工程を更に含んでもよい。
【0040】
飲料中の成分の種類、その含有量、成分の重量比、炭酸ガス圧、pH、酸度、及びその好ましい範囲、並びにその調整方法については、本発明の飲料に関して上記した通りであるか、それらから自明である。そのタイミングも限定されない。例えば、上記工程をすべて同時に行ってもよいし、別々に行ってもよいし、それらの工程の順番を入れ替えてもよい。最終的に得られた飲料が、上記の条件を満たせばよい。
【0041】
(数値範囲)
明確化のために記載すると、本明細書における数値範囲は、その端点、即ち下限値及び上限値を含む。
【実施例
【0042】
以下に実施例に基づいて本発明の説明をするが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実験1) 炭酸の好ましくない刺激の検討
以下の表に示された配合にしたがって飲料サンプルを調製した(残部は水である)。アルコール源として醸造用アルコール(アルコール度数95v/v%)を、香料として柑橘フレーバーを、果汁として柑橘果汁を用いた。酸度はクエン酸で調整した。また、pH調整のために、少量のpH調整剤を用いた。
【0043】
得られたサンプルを官能評価に付した。具体的には、専門パネラー4名が、バーニング感の弱さ、痛みを伴う刺激感の弱さ、お酒としての飲みごたえ、ドリンカビリティーの4項目について評価を行った。いずれも5段階で評価し(最も優れているもののスコアを5とし、最も劣っているもののスコアを1とした)、それぞれの項目について、得られた評価点から平均点を求めた。そして、平均点が4以上の結果を◎、3以上4未満の結果を〇、2以上3未満の結果を△、1以上2未満の結果を×で表した。その結果も、以下の表に示される。
【0044】
なお、評価に先立って、各点数と、それに対応する基準飲料を用いて、各点数に関する共通認識を形成した。
【0045】
【表1】
【0046】
炭酸ガス圧が高まるとバーニング感と、痛みを伴う刺激感が高まった。また、アルコールが存在すると、その傾向が強まった。さらに、pHが低くなると、刺激感が強まった。したがって、比較的高い炭酸ガス圧、低いpHと共にアルコールが存在すると、炭酸に由来する好ましくない刺激が強くなることが明らかとなった。
【0047】
(実験2) 炭酸の好ましくない刺激の軽減
比較的高い炭酸ガス圧と低いpHとを有し、アルコールを含有する飲料に対し、ナトリウムとカリウムを添加し、さらに酸度を調整して、複数の飲料サンプルを調製した。配合は以下の表に示すとおりである。ナトリウム源として食塩またはクエン酸三ナトリウムを用い、カリウム源として塩化カリウムまたはアセスルファムカリウムを用いたことを除いて、実験1と同じ方法を実施した。官能評価方法も実験1と同じである。官能評価結果も以下の表に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
飲料の炭酸ガス圧が比較的高く、pHが低く、アルコールが含まれていても、ナトリウム含有量、酸度、K/Naが特定の範囲にあれば、炭酸に由来する好ましくない刺激を軽減することができた。また、その場合には、お酒としての飲みごたえとドリンカビリティーも良好であった。