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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】絶縁診断用アンテナ
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20220315BHJP
   G01R 31/16 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/16
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2016245399
(22)【出願日】2016-12-19
(65)【公開番号】P2018100844
(43)【公開日】2018-06-28
【審査請求日】2019-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直喜
(72)【発明者】
【氏名】大木 秀人
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-53364(JP,A)
【文献】特開平4-4725(JP,A)
【文献】特開平3-164023(JP,A)
【文献】特開平10-51917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁診断装置に用いられる絶縁診断用アンテナであって、絶縁スペーサを介して複数の金属管を接続して構成されたガス絶縁電気機器の容器の絶縁スペーサ部に取付けられ、前記容器内で発生する部分放電に伴って前記絶縁スペーサから漏洩する電磁波を、スロットアンテナで検出する絶縁診断用アンテナにおいて、
前記容器は、前記金属管の端部に前記絶縁スペーサを挟着するフランジを備えており、
前記スロットアンテナのスロットをH型に形成するとともに、該H型のスロットを前記絶縁スペーサの円周上において前記絶縁スペーサの円周方向と直交する方向に配置し、
記H型のスロットの上部及び下部を前記フランジ上まで延設し、
前記スロットをH型とする一対の対向する突出片の先端部近傍に給電部をそれぞれ設け、前記各給電部を前記絶縁診断用アンテナとは別部材である同軸ケーブルを介して前記絶縁診断装置に接続するとともに、両給電部のうち一方の前記給電部には前記同軸ケーブルとの間に前記絶縁診断用アンテナが備えるコンデンサを介在し該コンデンサ及び前記同軸ケーブルを介して前記絶縁診断装置に接続するとともに、前記両給電部のうち他方の前記給電部には前記同軸ケーブルとの間にコンデンサを介在することなく前記同軸ケーブルを介して前記絶縁診断装置に接続して、前記コンデンサの容量と前記スロットアンテナ自体のインダクタンスとを組み合わせることで、UHF帯の電磁波の受信強度特性を平坦化するとともに、前記コンデンサをVHF帯以下の電磁波を減衰させるハイパスフィルタとして構成したことを特徴とする絶縁診断用アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の絶縁診断を行う装置に使用されるアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁ガスを充填した密閉金属容器内に高圧導電体を絶縁物により支持したガス絶縁機器では、接触不良、金属異物混入等の不具合により、内部で部分放電が発生することがある。
【0003】
このような部分放電に起因する絶縁破壊を防止するための絶縁診断装置の一種類として、部分放電発生時にガス絶縁機器内で発生する電磁波をアンテナで検出する絶縁診断装置が実用化されている。
【0004】
特許文献1には、ガス絶縁開閉装置内で発生する部分放電を検出する絶縁診断装置用アンテナが開示されている。このアンテナは、図6に示すように、ガス絶縁開閉装置の容器の絶縁スペーサ1を挟む金属フランジ2に重なるように設置されるスロットアンテナ3であり、I字状のスロット4が開口されている。スロット4の長手方向中間部の両側に給電部5が設けられ、その給電部5が同軸ケーブルを介して診断装置に接続される。
【0005】
そして、部分放電の発生にともなって容器内から絶縁スペーサ1を経て漏洩する電磁波をスロットアンテナ3で検出し、かつ金属フランジ2間に発生する電位差Vを検出するようにしている。
【0006】
特許文献2には、アンテナ出力を、バンドパスフィルタを介して診断装置に入力することにより、アンテナ出力に含まれるノイズを除去して、部分放電による電磁波の検出精度を向上させるようにした絶縁診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-51917号公報
【文献】特開平10-285731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された絶縁診断装置用アンテナでは、電磁波を効率よく検出するために、スロットアンテナ3の長辺側の電極が金属フランジ2に重なるように設置する必要があるため、スロットアンテナ3が大型化する。
【0009】
また、スロットアンテナ3の外形を大型化することにより、特に受信しようとする電磁波のUHF帯の受信領域において、アンテナの受信周波数特性が平坦ではなくなる。すなわち、スロットアンテナの開口部を拡大することにより、スロットアンテナ自身のインダクタンスが増大するため、図7に示すように、高周波領域(UHF帯)の受信特性が悪化して、受信強度特性fcの凹凸が大きくなる。従って、部分放電により発生するUHF帯の電磁波の周波数が、受信強度特性fcの谷部分に重なると、部分放電を安定して検出することができないという問題点がある。
【0010】
特許文献2に開示された絶縁診断装置では、アンテナで受信する周波数帯域のうち、不要なノイズであるVHF帯の受信信号をバンドパスフィルタで除去することにより、部分放電により発生するUHF帯の受信信号の検出精度を向上させることができる。
【0011】
しかし、診断装置にバンドパスフィルタを備えたフィルタ装置を設置する必要があるので、診断装置が大型化するとともに、コストが上昇するという問題点がある。
【0012】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は小型化を図りながら、部分放電による電磁波の検出精度を向上させ得る絶縁診断用アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する絶縁診断用アンテナは、絶縁診断装置に用いられる絶縁診断用アンテナであって、絶縁スペーサを介して複数の金属管を接続して構成されたガス絶縁電気機器の容器の絶縁スペーサ部に取付けられ、前記容器内で発生する部分放電に伴って前記絶縁スペーサから漏洩する電磁波を、スロットアンテナで検出する絶縁診断用アンテナである。前記容器は、前記金属管の端部に前記絶縁スペーサを挟着するフランジを備えており、前記スロットアンテナのスロットをH型に形成するとともに、該H型のスロットを前記絶縁スペーサの円周上において前記絶縁スペーサの円周方向と直交する方向に配置し、前記H型のスロットの上部及び下部を前記フランジ上まで延設し、前記スロットをH型とする一対の対向する突出片の先端部近傍に給電部をそれぞれ設け、前記各給電部を前記絶縁診断用アンテナとは別部材である同軸ケーブルを介して前記絶縁診断装置に接続するとともに、両給電部のうち一方の前記給電部には前記同軸ケーブルとの間に前記絶縁診断用アンテナが備えるコンデンサを介在し該コンデンサ及び前記同軸ケーブルを介して前記絶縁診断装置に接続するとともに、前記両給電部のうち他方の前記給電部には前記同軸ケーブルとの間にコンデンサを介在することなく前記同軸ケーブルを介して前記絶縁診断装置に接続して、前記コンデンサの容量と前記スロットアンテナ自体のインダクタンスとを組み合わせることで、UHF帯の電磁波の受信強度特性を平坦化するとともに、前記コンデンサをVHF帯以下の電磁波を減衰させるハイパスフィルタとして構成した
【0014】
この構成により、スロットアンテナが小型化されるとともに、受信強度特性が平坦化される。
【0016】
この構成により、スロットアンテナでフランジ間の電位差が測定可能となる。
【0018】
この構成により、スロットアンテナの受信強度特性がVHF帯以下で減衰される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の絶縁診断用アンテナによれば、小型化を図りながら、部分放電による電磁波の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一の実施形態のスロットアンテナを示す正面図である。
図2】第一の実施形態のスロットアンテナの受信特性図である。
図3】第二の実施形態のスロットアンテナを示す説明図である。
図4】第二の実施形態のスロットアンテナの受信特性図である。
図5】ガス絶縁開閉装置を示す概要図である。
図6】従来のスロットアンテナを示す正面図である。
図7】従来のスロットアンテナの受信特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
【0022】
図6は、絶縁診断用アンテナが設置されるガス絶縁開閉装置の一例を示す。筒状の金属管にてなる容器11内には絶縁ガスGが充填されるとともに、母線12が挿通されている。
【0023】
容器11は、所定間隔あるいは所定位置で絶縁スペーサ13を介して接続される。絶縁スペーサ13は、容器11の接続端に形成されるフランジ14間に挟着されて、容器11の内外を密封するようになっている。
【0024】
絶縁スペーサ13の近傍には母線12の部分放電を検出するためのスロットアンテナ15が設置される。図1に示すように、スロットアンテナ15は、H型に開口するスロット16を中央部に備え、そのH型のスロット16が容器11の前記絶縁スペーサの円周上において前記絶縁スペーサの円周方向と直交する方向に配設されている。また、H型のスロット16の上部及び下部が絶縁スペーサ13の両側のフランジ14上に達するように延設されている。
【0025】
スロット16は、スロット16の長手方向両端部から突出して所定の間隙を隔てて対向する突出片17によりH型に形成され、両突出片17の先端部近傍にそれぞれ設けられる給電部18が同軸ケーブルを介して絶縁診断装置に接続される。
【0026】
給電部18は、突出片17の先端部近傍に給電線を半田付け可能とした穴を形成し、あるいは給電線をネジ止め可能とした穴を形成し、あるいは穴を設けることなく給電線を半田付けする構成とすることが可能である。
【0027】
このように構成されたスロットアンテナ15は、スロット16をH型とするとともに、その長手方向両端部が絶縁スペーサ13の両側のフランジ14上まで延設されているので、図2に示すようにUHF帯で平坦となる受信強度特性fc1が得られる。
【0028】
従って、図5に示すように母線12と容器11の間等で部分放電arcが発生したときに発生するUHF帯の電磁波を安定して検出可能となる。
【0029】
また、給電部18は各突出片17の先端部近傍に設けられるので、両フランジ14上に位置するスロットアンテナ15の端部から延びる突出片17間の電位差を検出可能となる。従って、診断装置で両フランジ14間の電位差Vを検出可能となる。
【0030】
上記のように構成された絶縁診断用アンテナでは、次に示す効果を得ることができる。
(1)H型のスロット16により、UHF帯の電磁波の受信強度特性fc1を平坦化することができる。従って、部分放電にともなって発生するUHF帯の電磁波を安定して検出することができる。
(2)スロットアンテナ15を小型化することができる。
(3)絶縁スペーサ13を挟むフランジ14間の電位差Vを検出することができる。
【0031】
(第二の実施形態)
【0032】
図3は、絶縁診断用アンテナの第二の実施形態を示す。この実施形態は、第一の実施形態と同様なスロットアンテナ15にコンデンサ19を備えたものである。
【0033】
詳述すると、スロットアンテナ15の一方の給電部18はコンデンサ19及び同軸ケーブル20を介して絶縁診断装置に接続され、他方の給電部18は同軸ケーブル20を介して絶縁診断装置に接続されている。
【0034】
このような構成により、コンデンサ19はスロットアンテナ15自体のインダクタンスと組み合わせることでスロットアンテナ15の給電部18から出力される受信信号に対しハイパスフィルタとして作用する。コンデンサ19の容量を0.5pF~数pFに設定すると、図4に示すように、受信強度特性fc2はスロットアンテナ15の受信信号のうちVHF帯の受信強度が減衰する。因みに、コンデンサ19を接続しない場合には、図2に示すように、VHF帯が減衰せず、受信強度に凹凸が発生している。従って、不要な受信信号を受信する可能性がある。
【0035】
上記のように構成された絶縁診断用アンテナでは、次に示す効果を得ることができる。
(1)H型のスロット16を備えたスロットアンテナとコンデンサ19の作用により、UHF帯の電磁波の受信強度を平坦化することができるとともに、VHF帯の受信強度を減衰させることができる。従って、部分放電にともなって発生するUHF帯の電磁波を第一の実施形態よりさらに安定して検出することができる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・H型のスロットを備えたスロットアンテナ以外のアンテナに対し、第二の実施形態に示すようなコンデンサを接続してもよい。専用のフィルタ装置を備えることなく、VHF帯の受信信号を減衰させることができるので、絶縁診断装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0037】
11…容器、13…絶縁スペーサ、14…フランジ、15…スロットアンテナ、16…スロット、18…給電部、19…コンデンサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7