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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20220315BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20220315BHJP
   G05D 1/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
E02F9/20 N
H04Q9/00 301B
G05D1/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017173078
(22)【出願日】2017-09-08
(65)【公開番号】P2019049114
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-05-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度11月から平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術/維持管理ロボット・災害対応ロボットの開発/無人化施工の新展開~遠隔操作による半水中作業システムの実現~」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】渋川 文哉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将旭
(72)【発明者】
【氏名】前田 宗彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 弘記
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-281754(JP,A)
【文献】特開平11-132071(JP,A)
【文献】特開2014-011517(JP,A)
【文献】特開平08-105075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
H04Q 9/00
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行ブレーキを解除するブレーキ解除装置を備えた建設機械に搭載され、遠隔操縦装置と無線通信することで前記建設機械の動作を制御する制御装置であって、
通常時において、前記遠隔操縦装置から第1の通信方式で第1無線通信部が無線受信した遠隔制御指令に基づいて前記建設機械の走行を制御する常用制御装置と、
非常時において、前記遠隔操縦装置から第2の通信方式で第2無線通信部が無線受信した操作指令に基づいて、前記ブレーキ解除装置に対する電力供給を制御するのに不必要な機器への電力供給を制御する非常用制御装置とを備え、
前記不必要な機器は、前記ブレーキ解除装置、前記非常用制御装置及び第2無線通信部以外の前記建設機械に搭載されている機器であることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記非常用制御装置は、前記第2の通信方式で無線受信する操作指令としてリセット信号を受信した場合には前記常用制御装置への電力供給を一旦停止し、再度電力供給を行うことを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記常用制御装置は、通常時において、前記遠隔操縦装置から前記第1の通信方式で無線受信した操作指令に基づいて当該常用制御装置に搭載されている機器への電力供給を制御する電源制御部を更に備える請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記非常用制御装置は、前記第2の通信方式で無線受信する操作指令として解除信号を受信した場合には前記ブレーキ解除装置に電力を供給することで前記走行ブレーキを解除させることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1の通信方式は、無線LANによる通信方式であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、無線遠隔操縦の建設機械が開示されている。この建設機械は、操作中継ステーションから特定小電力無線によって送信されてくる制御電波を受信することにより動作するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-132265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特定小電力無線では、無線通信できるデータ量が少なく、遠隔走行するために十分なデータ量を無線通信できない場合がある。そこで、無線できるデータ量が多い無線LANを用いて建設機械を遠隔制御する方法が考えられる。
【0005】
ただし、無線LANにおける無線通信は、通信電波を遮る障害物に弱いという一面がある。したがって、建設機械が災害復興工事で使用される場合には、周囲の障害物により建設機械と無線LANで無線通信できない場合が考えられる。そのため、搭載機器の機能不全で建設機械が停止してしまった場合には、作業員が建設機械に接近して復旧作業を行う必要があり、建設機械を迅速に復旧させることができない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、建設機械の復旧作業を迅速に行うことができる制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、建設機械に搭載され、遠隔操縦装置と無線通信することで前記建設機械の動作を制御する制御装置であって、通常時には第1の通信方式で前記遠隔操縦装置と無線通信し、非常時には前記第1の通信方式よりも安定性が高い第2の通信方式で前記遠隔操縦装置と無線通信することを特徴とする制御装置である。
【0008】
本発明の一態様は、上述の制御装置であって、通常時において、前記遠隔操縦装置から前記第1の通信方式で無線受信した遠隔制御指令に基づいて前記建設機械の走行を制御する常用制御装置と、非常時において、前記遠隔操縦装置から前記第2の通信方式で無線受信した操作指令に基づいて、前記建設機械に搭載されている機器への電力供給を制御する非常用制御装置と、を更に備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様は、上述の制御装置であって、前記非常用制御装置は、前記第2の通信方式で無線受信する操作指令としてリセット信号を受信した場合には前記常用制御装置への電力供給を一旦停止し、再度電力供給を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様は、上述の制御装置であって、前記常用制御装置は、通常時において、遠隔操縦装置から前記第1の通信方式で無線受信した操作指令に基づいて当該常用制御装置に搭載されている機器への電力供給を制御する電源制御部を更に備える。
【0011】
本発明の一態様は、上述の制御装置であって、前記建設機械は、前記建設機械に搭載されているブレーキを解除可能なブレーキ解除装置を備え、前記非常用制御装置は、前記第2の通信方式で無線受信する操作指令として解除信号を受信した場合には前記ブレーキ解除装置に電力を供給することで前記ブレーキを解除させることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様は、上述の制御装置であって、前記非常用制御装置は、前記ブレーキ解除装置に電力を供給する場合には、前記建設機械に搭載されている機器のうち、前記ブレーキ解除装置に対する電力供給を制御するのに不必要な機器への電力供給を停止することを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様は、上述の制御装置であって、前記第1の通信方式は、無線LANによる通信方式であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、建設機械の復旧作業を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る制御装置を備えた遠隔制御システムAの全体構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る制御装置10及び遠隔操縦装置20の具体的な構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る非常用制御装置18及び電源制御部154による電源供給の制御するための構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る制御装置を、図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置を備えた遠隔制御システムAの全体構成の一例を示す図である。遠隔制御システムAは、建設機械1を遠隔操縦するためのシステムである。
【0018】
建設機械1は、土木工事や建築工事に使用される機械装置であり、例えばショベルカー、ブルドーザあるいはクレーン車である。
【0019】
建設機械1は、操縦室2、履帯3、動輪機構4、及びブレーキ解除装置5を備える。
【0020】
操縦室2には、操作ボタンや操作レバー等の操作機器が設けられると共に運転手が座る操縦席が設けられている。
【0021】
履帯3は、無端帯状に接続されたシュー(履板)によって形成されている。この履帯3は、建設機械1の左右に一対で配置されている。建設機械1は、この履帯3が駆動することで走行する。
【0022】
動輪機構4は、履帯3を駆動する。例えば、動輪機構4は、建設機械1に搭載されているエンジンによって駆動し、左右一対の履帯3を駆動させる。
【0023】
ブレーキ解除装置5は、建設機械1に搭載されている動輪機構4のブレーキを解除可能な装置である。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係る遠隔制御システムAについて説明する。
【0025】
遠隔制御システムAは、パトライト(登録商標)6、制御装置10、遠隔操縦装置20、車載カメラ30、電磁波レーダ40、及びエンコーダ50を備える。
【0026】
パトライト6は、建設機械1が稼働中であることや建設機械1に異常が発生したことなどをランプの点灯又は点滅等により外部に報知する。
【0027】
制御装置10は、建設機械1に搭載されている。例えば、制御装置10は、図1に示すように、建設機械1に備えられた操縦室2の屋根上に設けられている。
【0028】
制御装置10は、遠隔操縦装置20と無線通信することで建設機械1の動作を制御する。ここで、遠隔操縦装置20との無線通信は、少なくとも二つ以上の通信方式が用いられる。本実施形態では、制御装置10は、通常時には第1の通信方式で遠隔操縦装置20と無線通信し、非常時には第2の通信方式で遠隔操縦装置20と無線通信する。
【0029】
第1の通信方式とは、データ容量の大きな通信方式であって、例えば、無線LANによる通信方式である。第2の通信方式は、第1の通信方式よりも安定性が高い通信方式であって、例えば、特定小電力無線や小エリア簡易無線による通信方式である。安定性が高い通信方式とは、例えば、第1の通信方式よりも電波透過性が高いことである。
なお、通常時とは、例えば、建設機械1が問題なく走行可能又は作業可能な状態である場合である。非常時とは、例えば、建設機械1に搭載されている機器(以下、「搭載機器」という。)の機能不全により建設機械1の走行又は作業が不可能な場合である。
【0030】
遠隔操縦装置20は、制御装置10と第1の通信方式で無線通信することで建設機械1を遠隔操縦する。具体的には、遠隔操縦装置20は、制御装置10に対して第1の通信方式で遠隔制御指令を電波として無線送信する。この遠隔制御指令は、建設機械1を遠隔操縦するための制御指令が情報として含まれている信号である。これにより、遠隔操縦装置20は、建設機械1に対して所望の動作を行わせることができる。
【0031】
また、遠隔操縦装置20は、建設機械1の制御状態を示す制御状態信号を制御装置10から第1の通信方式で無線受信する。
【0032】
遠隔操縦装置20は、制御装置10と第2の通信方式で無線通信することで非常時において建設機械1を遠隔操作する。具体的には、遠隔操縦装置20は、制御装置10に対して第2の通信方式で操作指令(以下、「非常時操作指令」という。)を電波として無線送信する。この非常時操作指令は、搭載機器への電力供給を制御するための信号である。この非常時操作指令には、搭載機器のうち、電力供給する機器(動作させる機器)、又は電力供給を停止する機器(動作を停止させる機器)を示す情報が含まれている。
【0033】
車載カメラ30は、建設機械1に搭載されている。車載カメラ30は、建設機械1の周辺を撮像し、その撮像した画像(以下、「撮像画像」という。)を制御装置10に出力する。
【0034】
電磁波レーダ40は、走行する地面や水中の地層の状況を計測する。そして、電磁波レーダ40は、計測したデータ(以下、「計測データ」という。)を制御装置10に出力する。
【0035】
エンコーダ50は、動輪機構4の回転を検出する。そして、エンコーダ50は、その検出した動輪機構4の回転に応じた信号を制御装置10に出力する。
【0036】
次に、本発明の一実施形態に係る制御装置10及び遠隔操縦装置20の具体的な構成について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る制御装置10及び遠隔操縦装置20の具体的な構成を示す図である。
【0037】
制御装置10は、電源装置11、第1のアンテナ12、第1無線通信部13、GNSSアンテナ14、常用制御装置15、第2のアンテナ16、第2無線通信部17、非常用制御装置18、及び非常時機器監視部19を備える。
【0038】
電源装置11は、制御装置10に搭載されているバッテリである。この電源装置11は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、電源装置11は、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。この電源装置11に蓄電された電力は、搭載機器の動作電源である。すなわち、電源装置11は、搭載機器への電力供給源である。
【0039】
第1のアンテナ12は、制御装置10が遠隔操縦装置20と第1の通信方式で無線通信するためのアンテナである。
【0040】
第1無線通信部13は、第1のアンテナ12を介して遠隔操縦装置20と第1の通信方式で無線通信する。そして、第1無線通信部13は、その無線通信により遠隔操縦装置20から遠隔制御指令を取得すると、その遠隔制御指令を常用制御装置15に送信する。
【0041】
第1無線通信部13は、遠隔操縦装置20との無線通信により操作指令(以下、「通常時操作指令」という。)を取得すると、その通常時操作指令を常用制御装置15に送信する。この通常時操作指令は、非常時操作指令とは異なる操作指令であって、常用制御装置15に対して常用制御装置15に搭載されている機器の電源供給を制御することを指示する信号である。この通常時操作指令には、常用制御装置15に搭載されている機器のうち、電力供給する機器、又は電力供給を停止する機器の情報が含まれている。
【0042】
第1無線通信部13は、車載カメラ30から出力された撮像画像のデータを電波として遠隔操縦装置20に無線送信する。
第1無線通信部13は、電磁波レーダ40から出力された計測データを電波として遠隔操縦装置20に無線送信する。なお、この撮像画像のデータや計測データは、上記制御状態信号に相当する。
【0043】
GNSS(全地球航法衛星システム)アンテナ14は、GNSS用の人工衛星から出力される信号を受信して遠隔操縦装置20に送信する。
【0044】
常用制御装置15は、GNSS/IMU装置151、半自動制御部152、遠隔制御統括部153、及び電源制御部154を備える。
【0045】
GNSS/IMU装置151は、GNSSアンテナ14から送信される信号に基づいて建設機械1の位置と姿勢との情報を求めて、遠隔制御統括部153に送信する。
【0046】
半自動制御部152は、遠隔制御統括部153による制御により、建設機械1を予め設定されたルートを自動で走行させる機能を有する。
【0047】
遠隔制御統括部153は、第1無線通信部13から遠隔制御指令を取得する。そして、遠隔制御統括部153は、その取得した遠隔制御指令に基づいて建設機械1の走行を制御する。例えば、遠隔制御統括部153は、操縦室2に設けられた操作ボタンや操作レバー等の操作機器が接続されているCANに接続し、その接続したCANを介して上記操作機器を操作することで、建設機械1の走行を制御する。
【0048】
電源制御部154は、第1無線通信部13から通常時操作指令を取得する。そして、電源制御部154は、その取得した通常時操作指令に基づいて、常用制御装置15に搭載されている機器への電源供給を制御する。ここで、電源制御部154が電源供給を制御する機器は、電力供給を停止しても建設機械1の走行や作業に支障がない範囲の機器であって、例えば、GNSS/IMU装置151や半自動制御部152である。
【0049】
第2のアンテナ16は、制御装置10が遠隔操縦装置20と第2の通信方式で無線通信するためのアンテナである。
【0050】
第2無線通信部17は、第2のアンテナ16を介して遠隔操縦装置20と第2の通信方式で無線通信する。そして、第2無線通信部17は、その無線通信により遠隔操縦装置20から非常時操作指令を取得すると、その非常時操作指令を非常用制御装置18に送信する。
【0051】
非常用制御装置18は、第2無線通信部17から非常時操作指令を取得する。そして、非常用制御装置18は、取得した非常時操作指令に基づいて、電源装置11から搭載機器への電源供給を制御する。
【0052】
ここで、遠隔操縦装置20から第2の通信方式で第2無線通信部17に無線送信される非常時操作指令には、大別してリセット信号と解除信号の2つの指令信号がある。
リセット信号は、電源装置11から常用制御装置15への電力供給をリセットすることを指示する信号である。
解除信号は、建設機械1のブレーキを解除させることを指示する信号である。
【0053】
したがって、非常用制御装置18は、第2の通信方式で無線受信した非常時操作指令としてリセット信号を受信した場合には、電源装置11から常用制御装置15への電力供給を一旦停止した後に、再度電力供給を行うことで、常用制御装置15への電力供給をリセットする。
【0054】
一方、非常用制御装置18は、第2の通信方式で無線受信した非常時操作指令として解除信号を受信した場合にはブレーキ解除装置5に電力を供給することで上記ブレーキを解除させる。なお、非常用制御装置18は、搭載機器のうち、ブレーキ解除装置5に対する電力供給を制御するのに不必要な搭載機器への電源供給を停止することができる。ここで、本実施形態において、ブレーキ解除装置5に対する電力供給を制御するのに不必要な搭載機器とは、すべての搭載機器のうち、ブレーキ解除装置5、第2無線通信部17、及び非常用制御装置18以外の機器である。
【0055】
非常時機器監視部19は、非常用制御装置18が動作している場合において、制御装置10における各機能部や搭載機器の動作状況を監視する。この動作状況とは、異常の有無や電源装置11から電力が供給されているか否か等の情報である。非常時機器監視部19は、上記各機能部の監視結果を第2無線通信部17に送信する。そして、第2無線通信部17は、その監視結果を第2のアンテナ16を介して遠隔操縦装置20に電波として無線送信する。
【0056】
次に、本発明の一実施形態に係る遠隔操縦装置20について、説明する。
【0057】
遠隔操縦装置20は、無線通信装置21、電磁波レーダ表示装置22、車載カメラ表示装置23、操作支援ガイダンス装置24、遠隔操作部25、無線通信装置26、非常用遠隔操作部27、及び非常時機器表示装置28を備える。
【0058】
無線通信装置21は、第1のアンテナ12を介して第1無線通信部13と第1の通信方式で無線通信する。この無線通信装置21は、第1の通信方式で通信するための無線アンテナを含む。
【0059】
電磁波レーダ表示装置22は、第1無線通信部13から無線通信装置21に無線送信された計測データ(制御状態信号)を表示画面に表示する。すなわち、電磁波レーダ表示装置22は、電磁波レーダ40が計測した計測データを表示画面に表示する。
【0060】
車載カメラ表示装置23は、第1無線通信部13から無線通信装置21に無線送信された撮像画像(制御状態信号)を表示画面に表示する。すなわち、車載カメラ表示装置23は、車載カメラ30が撮像した撮像画像を表示画面に表示する。
【0061】
操作支援ガイダンス装置24は、GNSS/IMU装置151が計測した建設機械1の位置の情報を、第1無線通信部13から無線通信装置21を介して取得する。そして、操作支援ガイダンス装置24は、その取得した建設機械1の位置の情報に基づいて、建設機器1のモデルを3次元地図上にプロットして表示画面に表示する。なお、この3次元地図は、予め生成されていてもよいし、リアルタイムで生成されてもよい。
【0062】
遠隔操作部25は、制御装置10と第1の通信方式で無線通信することで建設機械1に対して所定の動作を行うことを指示する。具体的には、遠隔操作部25は、ユーザの操作に応じた指令信号を、無線通信装置21を介して制御装置10に第1の通信方式で送信する。ユーザの操作に応じた指令信号とは、遠隔制御指令又は通常時操作指令である。
これにより、ユーザは、電磁波レーダ表示装置22や車載カメラ表示装置23の表示画面をモニタリングしながら遠隔操作部25を操作することで、建設機械1に対して所望の動作を行わせることができる。
【0063】
また、ユーザは、操作支援ガイダンス装置24の表示画面をモニタリングしながら遠隔操作部25を操作することができる。これにより、例えば、車載カメラ30の視界が悪い場合であっても、ユーザは操作支援ガイダンス装置24の表示画面に表示された3次元画像をモニタリングすることで、建設機械1に対して所望の動作を行わせることができる。また、車載カメラ30の視点がユーザの所望の視点ではない場合においても、ユーザは操作支援ガイダンス装置24の表示画面に表示された3次元画像から所望の視点での画像を確認することができる。
【0064】
無線通信装置26は、第2のアンテナ16を介して第2無線通信部17と第2の通信方式で無線通信する。この無線通信装置26は、第2の通信方式で通信するための無線アンテナを含む。
【0065】
非常用遠隔操作部27は、制御装置10と第2の通信方式で無線通信することで任意の搭載機器への電力供給を停止又は開始させることを指示する。具体的には、遠隔操作部25は、ユーザの操作に応じた非常時操作信号を、無線通信装置26を介して制御装置10に第2の通信方式で送信する。
これにより、ユーザは、機能不全となった搭載機器に対して電力供給をリセットすることができる。そのため、ユーザは、機能不全となった搭載機器を遠隔操作により機能回復させることが可能となる。
【0066】
非常時機器表示装置28は、第2無線通信部17から無線通信装置26に無線送信された非常時機器監視部19の監視結果を表示画面に表示する。これにより、ユーザは、非常時において、制御装置10における各機能部や搭載機器の動作状況を確認することができる。
【0067】
以下に、本発明の一実施形態に係る非常用制御装置18及び電源制御部154による電源供給の制御の一例について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る非常用制御装置18及び電源制御部154による電源供給の制御するための構成の一例を示す図である。
【0068】
図3に示すように、制御装置10は、第1変換部100、第2変換部200、第3変換部300、第1スイッチ群400、第2スイッチ群500、第3スイッチ群600、及び第4スイッチ群700を更に備える。
【0069】
制御装置10では、搭載機器の使用用途を考慮し、電源装置11から搭載機器へ電力を供給する系統(以下、「電力系統」という。)が複数に分類されている。すなわち、制御装置10は、複数の電力系統を有する。本実施形態では、制御装置10は、第1系統、第2系統、第3系統、及び第4系統の4つの電力系統を有する。
【0070】
第1系統は、第1無線通信部13、車載カメラ30、及び第2無線通信部17のそれぞれに接続されている。
第2系統は、遠隔制御統括部153、パトライト6、エンコーダ50、GNSS/IMU装置151、及び半自動制御部152のそれぞれに接続されている。
第3系統は、電磁波レーダ40に接続されている。
第4系統は、冷却ファン60及びブレーキ解除装置5のそれぞれに接続されている。なお、冷却ファン60は、制御装置10の内部を冷却するものであって、制御装置10に搭載されている。
【0071】
第1変換部100は、電源装置11から供給される電力Wを、第1系統に供給するための電力Wに変換する。そして、第1変換部100は、変換した電力Wを第1系統に供給する。
【0072】
第2変換部200は、電源装置11から供給される電力Wを、第2系統に供給するための電力Wに変換する。そして、第2変換部200は、変換した電力Wを第2系統に供給する。
【0073】
第3変換部300は、電源装置11から供給される電力Wを、第3系統に供給するための電力Wに変換する。そして、第3変換部300は、変換した電力Wを第3系統に供給する。
【0074】
なお、第4系統には電源装置11からの電力Wが直接供給されている。
【0075】
第1スイッチ群400は、手動操作される複数のスイッチである。第1スイッチ群400は、第1スイッチ401~第1スイッチ404を備える。なお、本実施形態では、第1スイッチ群400は、制御装置10に設けられているが、これに限定されず、例えば、建設機械1に設けられていてもよい。例えば、第1スイッチ群400は、操縦室2に設けられている。
【0076】
第1スイッチ401は、第1系統に設けられている。この第1スイッチ401は、手動操作によって、第1系統に接続されている搭載機器(第1無線通信部13、車載カメラ30、及び第2無線通信部17)のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0077】
第1スイッチ402は、第2系統に設けられている。この第1スイッチ402は、手動操作によって、第2系統に接続されている搭載機器(遠隔制御統括部153、パトライト6、エンコーダ50、GNSS/IMU装置151、及び半自動制御部152)のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0078】
第1スイッチ403は、第3系統に設けられている。この第1スイッチ403は、手動操作によって、第3系統に接続されている搭載機器(電磁波レーダ40)のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0079】
第1スイッチ404は、第4系統に設けられている。この第1スイッチ404は、手動操作によって、第4系統に接続されている搭載機器(冷却ファン60及びブレーキ解除装置5)のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0080】
第2スイッチ群500は、非常用制御装置18によってオン状態又はオフ状態が制御される複数のスイッチである。第2スイッチ群500は、第2スイッチ501~第2スイッチ504を備える。
【0081】
第2スイッチ501は、第1系統に接続されている。第2スイッチ501は、非常用制御装置18による制御によって、第1無線通信部13及び車載カメラ30のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0082】
第2スイッチ502は、第2系統に接続されている。第2スイッチ501は、非常用制御装置18による制御によって、遠隔制御統括部153、パトライト6、エンコーダ50、GNSS/IMU装置151、及び半自動制御部152のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0083】
第2スイッチ503は、第3系統に接続されている。第2スイッチ503は、非常用制御装置18による制御によって、電磁波レーダ40のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0084】
第2スイッチ504は、第4系統に接続されている。第2スイッチ504は、非常用制御装置18による制御によって、冷却ファン60のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0085】
第3スイッチ群600は、非常用制御装置18によってオン状態又はオフ状態が制御される複数のスイッチである。第3スイッチ群600は、第3スイッチ601~第3スイッチ603を備える。
【0086】
第3スイッチ601は、第1系統に接続されている。第3スイッチ601は、非常用制御装置18による制御によって、第1無線通信部13のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0087】
第3スイッチ602は、第2系統に接続されている。第3スイッチ602は、非常用制御装置18による制御によって、遠隔制御統括部153のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0088】
第3スイッチ603は、第4系統に接続されている。第3スイッチ603は、非常用制御装置18による制御によって、ブレーキ解除装置5のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0089】
第4スイッチ群700は、電源制御部154によってオン状態又はオフ状態が制御される複数のスイッチである。第4スイッチ群700は、第4スイッチ701~第4スイッチ704を備える。
【0090】
第4スイッチ701は、第1系統に接続されている。第4スイッチ701は、電源制御部154による制御によって、車載カメラ30のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0091】
第4スイッチ702は、第2系統に接続されている。第4スイッチ702は、電源制御部154による制御によって、GNSS/IMU装置151のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0092】
第4スイッチ703は、第2系統に接続されている。第4スイッチ703は、電源制御部154による制御によって、半自動制御部152のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0093】
第4スイッチ704は、第3系統に接続されている。第4スイッチ704は、電源制御部154による制御によって、電磁波レーダ40のみへの電力Wの電力供給を制御する。
【0094】
次に、図3に示す制御装置10の動作及び構成による本実施形態の作用効果について説明する。
【0095】
(第1スイッチ群400による作用効果)
ユーザは、第1スイッチ群400のスイッチを操作することで、建設機械1の使用条件によっては予め不要となる搭載機器への電力供給を最初から実行しないようにすることができる。例えば、電磁波レーダ40を用いない場合には、ユーザは最初から第1スイッチ403をオフ状態に操作する。また、建設機械1を遠隔操縦ではなく手動操縦(ユーザによる操作機器の手動操作)する場合には、ユーザは最初から第1スイッチ401~404をすべてオフ状態に操作する。これにより、建設機械1の作業に必要な最低限の搭載機器のみで建設機械1を運用できる。したがって、建設機械1の消費電力を削減し、電源装置11の省電力化に寄与することができる。
【0096】
(第4スイッチ群700による作用効果)
例えば、通常時に使用する搭載機器である車載カメラ30、GNSS/IMU装置151、及び半自動制御部152のうち、少なくともいずれかの機器において機能不全又は機能不全を起こす可能性があるとする。この場合には、ユーザは、通常時において、遠隔操作部25を操作することで、第1の通信方式の無線通信により第4スイッチ群700の各スイッチを遠隔操作する。具体的には、ユーザは、通常時において、遠隔操作部25を操作することで、通常時に使用する搭載機器である車載カメラ30、GNSS/IMU装置151、及び半自動制御部152のうち、機能不全となった又は機能不全を起こす可能性のある機器に対して電力供給を停止又は電力供給をリセットする。例えば、半自動制御部152が機能不全になった場合には、ユーザは、遠隔操作部25を操作することで、第4スイッチ703を一旦オフ状態にし、再度オン状態に制御する。これにより、ユーザは、通常時において、遠隔から機能不全又は機能不全を起こす可能性がある機器(通常時に使用する搭載機器)を再起動させ、機能を回復させることができる。
【0097】
(第3スイッチ群600による作用効果)
例えば、第1無線通信部13又は遠隔制御統括部153が機能不全となり、建設機械1の走行や作業に支障をきたす非常事態が発生したとする。この場合には、第1の通信方式による無線通信を使用することができない。したがって、ユーザは、非常用遠隔操作部27を操作することで、第2の通信方式の無線通信により第3スイッチ群600の各スイッチを遠隔操作する。具体的には、ユーザは、上記非常時において、非常用遠隔操作部27を操作することで、建設機械1の走行や作業に必要不可欠な搭載機器である第1無線通信部13及び遠隔制御統括部153のうち、機能不全となった機器に対して電力供給をリセットする。例えば、遠隔制御統括部153が機能不全になった場合には、ユーザは、非常用遠隔操作部27を操作することで、第3スイッチ602を一旦オフ状態にし、再度オン状態に制御する。これにより、ユーザは、非常時において、建設機械1の走行や作業に必要不可欠な搭載機器が機能不全になった場合には、その搭載機器を遠隔から再起動させ、機能を回復させることができる。
【0098】
(第3スイッチ603及び第2スイッチ群500による作用効果)
例えば、上記非常事態が発生し、ユーザによる第2の通信方式での遠隔操作によって機能不全となった機器を再起動してもその機器の機能が回復しなかったとする。この場合には、遠隔操作による機能回復は望めず建設機械1が走行不可能となるため、救援専用の遠隔操作重機等で建設機械1を牽引して復旧作業ができる場所まで脱出させる牽引救出を行う必要がある。
したがって、ユーザは、非常時において、非常用遠隔操作部27を操作することで、第2の通信方式の無線通信により第3スイッチ603をオン状態に遠隔操作する。これにより、ブレーキ解除装置5に電力が供給され、ブレーキが解除される。したがって、ユーザは、遠隔操作により、建設機械1を牽引可能な状態に移行させることができる。
【0099】
また、建設機械1を牽引救出するにあたり、ユーザは、非常用遠隔操作部27を操作することで、第2の通信方式の無線通信により第2スイッチ群500の第2スイッチ501~505をオフ状態に遠隔操作する。これにより、ユーザは、遠隔操作により、ブレーキを解除させておくのに不必要な搭載機器(ブレーキ解除機能以外の搭載機器)への電力供給を停止させることが可能になり、建設機械1が牽引救出されるまでの期間において常にブレーキを解除させておくだけの電力(電源装置11からブレーキ解除装置5への電力)を確保することができる。なお、ブレーキ解除機能以外の搭載機器への電力供給を停止するタイミングや期間は、建設機械1が牽引救出されるまでの期間において常にブレーキを解除させておくだけの電力を確保できる範囲で適宜変更可能である。
【0100】
例えば、ブレーキの解除を開始するのは建設機械1を救援専用の建機(救援建機)で牽引するときであって、非常事態が発生してから建設機械1を救援建機で牽引できるようになるまでの間は必ずしもブレーキを解除しておく必要がない。ただし、電源装置11においてブレーキ解除用の電力を確保するために、ユーザは、非常事態が発生した場合に遠隔操作によりブレーキ解除機能以外の搭載機器への電力供給を遠隔操作により停止させる。
【0101】
以下に、本実施形態に係る建設機器1を牽引救出する動作の一例を以下に示す。
非常事態が発生し、建設機械1を牽引救出する以外の手段がないと判断された場合には、ユーザは、非常用遠隔操作部27を操作することで、第2の通信方式の無線通信により、ブレーキ解除機能以外の搭載機器への電力供給を停止させる。その後、ユーザは、救援建機を準備し、その準備が完了した場合には、建設機械1が停止している現場まで救援建機を移動させる。救援建機が現場に到着し、建設機械1を牽引する準備が完了すると、ユーザは、非常用遠隔操作部27を操作することで、第2の通信方式の無線通信によりブレーキ解除装置5に電力を供給し、ブレーキを解除させる。そして、建設機械1の牽引救出が完了するまでは、ブレーキ解除装置5に電力が供給され続け、ブレーキが解除されたままに制御される。なお、この牽引救出の一例では、ブレーキ解除機能以外の搭載機器への電力供給の停止期間は、非常事態が発生して牽引救出する以外の手段がないと判断されてから建設機械1の牽引救出が完了するまでとなる。
【0102】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
【0103】
(変形例1)上記実施形態では、電源装置11が制御装置10に備えられている構成としたが、これに限定されない。例えば、電源装置11は、建設機械1自体に搭載されていてもよい。
【0104】
(変形例2)上記実施形態において、制御装置10を箱形のボックスに収納して建設機械1に備えられた操縦室の屋根上に着脱自在に設置されていてもよい。ただし、第2のアンテナ16は、このボックスに収納されず、建設機械1に設置されてもよい。
【0105】
(変形例3)上記実施形態では、建設機械1に備えられた操縦室2の屋根上に制御装置10を設置したが、本発明はこれに限定されない。建設機械1の本来の機能を疎外しない場所であれば、操縦室2の屋根上以外の場所に制御装置10を設置してもよい。
【0106】
上述したように、本発明の一実施形態に係る制御装置10は、建設機械1に搭載され、遠隔操縦装置20と無線通信することで建設機械1の動作を制御する制御装置である。そして、制御装置10は、通常時には第1の通信方式で遠隔操縦装置20と無線通信し、非常時には第1の通信方式よりも安定性が高い第2の通信方式で遠隔操縦装置20と無線通信する。これにより、搭載機器の機能不全で建設機械1が停止してしまった場合等の非常時において、障害物等により遠隔操縦装置20から建設機械1に対して第1の通信方式では無線通信ができなくても、ユーザは遠隔操縦装置20から建設機械1に対して第2の通信方式で無線通信することができる。したがって、ユーザは、建設機械に接近しなくても機能不全となった搭載機器に対して復旧作業を行うことが可能となる。そのため、作業員が建設機械1に接近して復旧作業を行う頻度を削減でき、建設機械1を迅速に復旧させることができる。
【符号の説明】
【0107】
1 建設機械
5 ブレーキ解除装置
10 制御装置
20 遠隔操縦装置
11 電源装置
15 常用制御装置
18 非常用制御装置
154 電源制御部
図1
図2
図3