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<図1>
  • 特許-レーザ加工装置 図1
  • 特許-レーザ加工装置 図2
  • 特許-レーザ加工装置 図3
  • 特許-レーザ加工装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20220315BHJP
【FI】
B23K26/00 Q
B23K26/00 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017200446
(22)【出願日】2017-10-16
(65)【公開番号】P2019072739
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】若林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】東條 公資
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-211556(JP,A)
【文献】特開2016-115829(JP,A)
【文献】特開平10-335729(JP,A)
【文献】特開平05-277775(JP,A)
【文献】国際公開第2014/014068(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工用レーザ光を出力するレーザ光源と、
前記加工用レーザ光と波長が異なる検査用レーザ光を出力する検査用光源と、
前記加工用レーザ光と前記検査用レーザ光が入射面から入射され、出射面から加工対象物に向けて前記加工用レーザ光と前記検査用レーザ光が出射される光導波路と、
主軸および、前記主軸に対し垂直な面を有し、前記加工用レーザ光と前記検査用レーザ光を前記垂直な面における互いに異なる位置において受け、前記光導波路の前記入射面に結合させる結合光学系と、
前記検査用レーザ光が前記加工対象物で反射して前記光導波路の前記出射面から入射し前記入射面から出射される戻り光を検出する検出器と
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記検査用光源と前記光導波路の前記入射面との間に配置され、前記戻り光の光路を変更する光路変更手段を更に備え、
前記光導波路の前記入射面から出射された前記戻り光が、前記光路変更手段によって光路を変更されて前記検出器に入射されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記光路変更手段が、前記加工用レーザ光の波長の光は透過し、前記検査用レーザ光及び前記戻り光の波長の光の一部は反射し且つ一部は透過する光学素子を用いて構成されていることを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記光学素子が一対のダイクロイックミラーであることを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記検出器が、前記戻り光を検出した場合に前記レーザ光源からの前記加工用レーザ光の出力を停止させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記加工用レーザ光と前記検査用レーザ光を前記光導波路に結合する結合レンズを更に備え、
前記結合レンズを透過した後の前記戻り光を検出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記レーザ光源から出力された直後の前記加工用レーザ光と前記検査用光源から出力された直後の前記検査用レーザ光を、それぞれコリメートする複数の入力側コリメートレンズを更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記光導波路の前記出射面から出射された前記加工用レーザ光と前記検査用レーザ光をコリメートする出力側コリメートレンズを更に備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光により金属材を加工するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス、アルミニウム、銅などの金属材を加工対象物とするレーザ加工では、レーザ光が加工対象物の表面で反射する。光ファイバ結合型レーザでは、加工対象物で反射した光が、光ファイバの出射面で再結合され、光ファイバを伝搬してレーザ光源に戻る場合がある。光ファイバを伝搬して戻った光(以下において「戻り光」という。)がレーザ光を出力しているレーザ光源に入射すると、レーザ光源の故障の原因となることが知られている。
【0003】
このため、加工対象物からの戻り光がレーザ光源に入射するか否かを検出することが望まれる。例えば特許文献1では、加工対象物に近接して配置される加工ヘッドに検出手段を設ける方法により、加工対象物でのレーザ光の反射を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-179627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加工対象物に近い加工ヘッドに検出手段を設ける方法では、戻り光が光路を伝搬してレーザ光源に入射するか否かを正確に検出することができない。本発明は、加工対象物で反射したレーザ光の戻り光がレーザ光源に入射することを検出できるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、加工用レーザ光を出力するレーザ光源と、加工用レーザ光と波長が異なる検査用レーザ光を出力する検査用光源と、加工用レーザ光と検査用レーザ光が入射面から入射され、出射面から加工対象物に向けて加工用レーザ光と検査用レーザ光が出射される光導波路と、主軸および、主軸に対し垂直な面を有し、加工用レーザ光と検査用レーザ光を垂直な面における互いに異なる位置において受け、光導波路の入射面に結合させる結合光学系と、検査用レーザ光が加工対象物で反射して光導波路の出射面から入射し入射面から出射される戻り光を検出する検出器とを備えるレーザ加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加工対象物で反射したレーザ光の戻り光がレーザ光源に入射することを検出できるレーザ加工装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の光路変更手段の機能を説明するための模式図である(その1)。
図3】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の光路変更手段の機能を説明するための模式図である(その2)。
図4】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置による戻り光の検出方法の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
本発明の実施形態に係るレーザ加工装置は、図1に示すように、加工用レーザ光L1を出力する複数のレーザ光源10と、加工用レーザ光L1と波長が異なる検査用レーザ光L2を出力する検査用光源20と、加工用レーザ光L1と検査用レーザ光L2が入射面61から入射され、出射面62から加工対象物2に向けて加工用レーザ光L1と検査用レーザ光L2が出射される光導波路60と、検査用レーザ光L2が加工対象物2で反射して光導波路60の出射面62から入射し入射面61から出射される戻り光Lrを検出する検出器90とを備える。光導波路60は、例えば光ファイバである。
【0011】
レーザ光源10は、半導体レーザなどである。レーザ光源10は駆動装置100によって駆動される。例えば半導体レーザを駆動する駆動電流が、駆動装置100からレーザ光源10に供給される。
【0012】
レーザ光源10から出力された直後のそれぞれの加工用レーザ光L1は、入力側コリメートレンズ30によってコリメートされる。入力側コリメートレンズ30は、加工用レーザ光L1のそれぞれに用意されている。
【0013】
図1に示すように、レーザ光源10及び検査用光源20と結合レンズ50との間に光路変更手段40が配置されている。図1に示す光路変更手段40は、第1のダイクロイックミラー411と第2のダイクロイックミラー412により構成されている。以下において、第1のダイクロイックミラー411と第2のダイクロイックミラー412を総称して「ダイクロイックミラー41」という。ダイクロイックミラー41は、加工用レーザ光L1の波長の光は透過する一方で、検査用レーザ光L2及びその戻り光Lrの波長の一部を反射し、一部を透過する光学素子である。
【0014】
加工用レーザ光L1はダイクロイックミラー41を透過するため、図1に示すように一部の加工用レーザ光L1の光路にダイクロイックミラー41が配置されていても、加工用レーザ光L1の光路は光路変更手段40による影響を受けない。
【0015】
検査用レーザ光L2は、検査用光源20から出力された直後に入力側コリメートレンズ30でコリメートされた後、光路変更手段40で光路を変更されて、結合レンズ50に入射する。即ち、図2に示すように、検査用レーザ光L2の一部は第1のダイクロイックミラー411で反射され、検査用レーザ光L2の一部は第1のダイクロイックミラー411を透過する。第1のダイクロイックミラー411を透過する透過光をL21で示した。第1のダイクロイックミラー411で反射された検査用レーザ光L2は、その一部が第2のダイクロイックミラー412で反射して、結合レンズ50に入射する。第1のダイクロイックミラー411で反射された検査用レーザ光L2の残りは、第2のダイクロイックミラー412を透過する。第2のダイクロイックミラー412を透過する透過光をL22で示した。
【0016】
コリメートされた加工用レーザ光L1と、コリメートされ、光路変更手段40によって光路を変更された検査用レーザ光L2が、結合レンズ50に入射する。そして、結合レンズ50により、加工用レーザ光L1と検査用レーザ光L2が光導波路60に結合する。
【0017】
光導波路60の入射面61から入射した加工用レーザ光L1及び検査用レーザ光L2は、光導波路60の出射面62から出射されて、出力側コリメートレンズ70によってコリメートされる。コリメートされた加工用レーザ光L1は、集光レンズ80を透過して加工対象物2に照射される。これにより、加工対象物2がレーザ加工される。
【0018】
一方、出力側コリメートレンズ70によってコリメートされた検査用レーザ光L2は、集光レンズ80を透過して加工対象物2に照射される。なお、検査用レーザ光L2は、加工対象物2の加工に寄与しない程度に低いパワーのレーザ光である。
【0019】
加工対象物2の表面で反射された加工用レーザ光L1は、加工対象物2からレーザ光源10までの光路で減衰したり散乱したりしない場合に、レーザ光源10まで戻る可能性がある。この戻り光が加工用レーザ光L1を出力しているレーザ光源10に入射すると、レーザ光源10の故障の原因となる。
【0020】
図1に示したレーザ加工装置では、検査用レーザ光L2が加工対象物2の表面で反射した戻り光Lrを検出器90によって検出することにより、加工用レーザ光L1の戻り光がレーザ光源10に入射すると判定する。即ち、加工用レーザ光L1の戻り光がレーザ光源10に入射する場合には、検査用レーザ光L2の戻り光Lrが、集光レンズ80、出力側コリメートレンズ70を透過して、光導波路60の出射面62に入射する。そして、光導波路60の入射面61から出射された戻り光Lrが、結合レンズ50を透過し、光路変更手段40で光路を変更された後、検出器90に入射する。図1では、加工用レーザ光L1の戻り光の図示を省略している。
【0021】
このとき、検査用レーザ光L2の戻り光Lrは、図3に示すように光路変更手段40の内部を進行する。即ち、戻り光Lrの一部は第2のダイクロイックミラー412で反射され、戻り光Lrの一部は第2のダイクロイックミラー412を透過する。第2のダイクロイックミラー412を透過する透過光をLr2で示した。第2のダイクロイックミラー412で反射された戻り光Lrは、その一部が第1のダイクロイックミラー411を透過して、検出器90に入射する。第2のダイクロイックミラー412で反射された戻り光Lrの残りは、第1のダイクロイックミラー411で反射される。第1のダイクロイックミラー411で反射される反射光をLr1で示した。
【0022】
なお、図1に示しレーザ加工装置では、光路変更手段40に一対のダイクロイックミラーを使用する場合を例示的に示したが、戻り光Lrの光路を変更できる他の光学素子を光路変更手段40に使用してもよい。例えば、プリズムやビームスプリッタなどを用いて光路変更手段40を構成してもよい。
【0023】
検出器90は、入射した戻り光Lrを検出するための受光素子を有する。受光素子には、例えばフォトダイオードなどが使用される。
【0024】
戻り光Lrを検出した場合、検出器90は、レーザ光源10からの加工用レーザ光L1の出力を停止する。例えば、駆動装置100に制御信号Sを送信して、レーザ光源10の駆動電流の供給を停止する。加工用レーザ光L1の出力を停止させることにより、戻り光によるレーザ光源10の故障を抑制することができる。
【0025】
上記のように、図1に示したレーザ加工装置では、光導波路60の入射面61から出射され、結合レンズ50を透過した戻り光Lrを検出器90によって検出する。これにより、加工用レーザ光L1の戻り光がレーザ光源10に入射する否かを判定できる。即ち、検出器90によって検査用レーザ光L2の戻り光Lrが検出される場合には、加工用レーザ光L1の戻り光がレーザ光源10に入射すると判定される。一方、検出器90によって検査用レーザ光L2の戻り光Lrが検出されない場合には、加工用レーザ光L1の戻り光はレーザ光源10に入射しないと判定される。
【0026】
図1に示したレーザ加工装置では、光導波路60の入射面61から出射された後の戻り光Lrを検出する。つまり、レーザ光源10の近傍で戻り光Lrを検出する。このため、加工用レーザ光L1の戻り光がレーザ光源10に入射するか否かを高い精度で検出できる。これに対し、加工ヘッドに検出手段を設けるなどして加工対象物2の周辺で戻り光を検出する方法の場合には、戻り光がレーザ光源10に入射するか否かを正確に検出することが困難である。
【0027】
以上に説明したように、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置によれば、加工対象物2からの戻り光がレーザ光源10に入射するか否かを正確に判定することができる。このため、加工用レーザ光L1を出力時に戻り光が入射することによるレーザ光源10の故障を抑制することができる。なお、検査用レーザ光L2はパワーが低く、且つ、戻り光Lrの検出は短時間で行えるため、戻り光Lrによって検査用光源20が故障することを防止できる。
【0028】
戻り光がレーザ光源10に入射することが判明した場合には、種々の対策を実施して、加工対象物2のレーザ加工を実施する。例えば、加工用レーザ光L1の戻り光を遮蔽したり減衰させたりするなどの対策や、戻り光の光路を変更するなどの対策を実施する。
【0029】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0030】
例えば、検査用レーザ光L2の戻り光Lrを検出した場合に加工用レーザ光L1の出力を停止させる対策を実施する場合を上記に示したが、他の対策を実施してもよい。例えば、加工用レーザ光L1を遮蔽したり、光路を変更したりしてもよい。
【0031】
また、上記では、加工用レーザ光L1と検査用レーザ光L2を同時に加工対象物2に照射しながら、検査用レーザ光L2の戻り光Lrを検出する場合を説明した。しかし、図4に示すように、レーザ加工の前に検査用レーザ光L2のみを加工対象物2に照射し、戻り光Lrを検出してもよい。この場合には、レーザ光源10から加工用レーザ光L1を出力する前に、加工用レーザ光L1の戻り光がレーザ光源10に入射することを検出でき、予め対策を実施することができる。
【0032】
なお、加工用レーザ光L1及び検査用レーザ光L2をコリメートする入力側コリメートレンズ30を使用する例を上記に示した。しかし、レーザ光源10や検査用光源20からコリメートされたレーザ光が出力される場合などは、入力側コリメートレンズ30を配置しなくてもよい。
【0033】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことはもちろんである。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0034】
10…レーザ光源
20…検査用光源
30…入力側コリメートレンズ
40…光路変更手段
50…結合レンズ
60…光導波路
61…入射面
62…出射面
70…出力側コリメートレンズ
80…集光レンズ
90…検出器
100…駆動装置
図1
図2
図3
図4