(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】熱動弁及び温水暖房装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/68 20060101AFI20220315BHJP
F24D 3/10 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
F16K31/68 R
F24D3/10 Q
(21)【出願番号】P 2017203192
(22)【出願日】2017-10-20
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 康司
(72)【発明者】
【氏名】小川 恭平
(72)【発明者】
【氏名】濱田 誠
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-235055(JP,A)
【文献】実開昭62-137596(JP,U)
【文献】実開昭60-56877(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/64-31/72
F24D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端と、前記第1端の反対側の端である第2端とを有する筒状の駆動部筐体と、
弁軸と、
加熱されることにより前記弁軸を移動させ、かつ、前記駆動部筐体内に収納される熱応動素子と、
前記熱応動素子よりも前記第1端側に位置し、かつ、前記熱応動素子を加熱するヒータと、
前記熱応動素子よりも前記第1端側に位置し、かつ、前記ヒータに電気的に接続される電極部と、
前記熱応動素子よりも前記第2端側に位置するように前記駆動部筐体内に収納され、かつ、前記熱応動素子を前記ヒータに向かって付勢する弾性部材とを備え、
前記駆動部筐体は、前記第1端から前記第2端に向かう方向と交差する交差壁部が設けられ、
前記電極部は、前記交差壁部に前記第2端側から当接することにより、前記駆動部筐体に係止され、
前記電極部は、前記ヒータの前記第2端側に位置する第1電極部材と、前記ヒータの前記第1端側に位置する第2電極部材とを有し、
前記駆動部筐体には、前記第1電極部材を挿入する第1挿入溝と、前記第2電極部材を挿入する第2挿入溝とが設けられ、
前記第1挿入溝と前記第2挿入溝の少なくとも一方は、前記第1端から前記第2端に向かう方向と交差するように延在し、かつ、前記駆動部筐体を厚さ方向に貫通する第1溝部と、前記第1溝部から前記第1端に達するように延在し、かつ、前記駆動部筐体を厚さ方向に貫通する第2溝部とを有し、
前記第1溝部の前記第1端側にある壁部は、前記交差壁部を構成し、
前記第1電極部材及び前記第2電極部材の少なくとも一方は、前記交差壁部に前記第2端側から当接することにより、前記駆動部筐体に係止される、熱動弁。
【請求項2】
前記第1電極部材は、前記ヒータと対向するように配置される第1部分と、前記第1部分の径方向に沿って前記第1部分の周囲から突出する第2部分とを有し、
前記第2電極部材は、前記ヒータと対向するように配置される第4部分と、前記第4部分の径方向に沿って前記第4部分の周囲から突出する第5部分とを有し、
前記第2部分及び前記第5部分の少なくとも一方は、前記駆動部筐体の内周面側から前記駆動部筐体の外周面側に向かって前記第1溝部を通過するように構成される、請求項
1に記載の熱動弁。
【請求項3】
前記第2部分の突出方向と前記第5部分の突出方向とがなす角度は、0°を超える、請求項
2に記載の熱動弁。
【請求項4】
前記角度は、180°±10°である、請求項
3に記載の熱動弁。
【請求項5】
前記駆動部筐体を封止する蓋をさらに備え、
前記第1電極部材は、前記第2部分から前記駆動部筐体の外周面に沿って折れ曲がる第3部分をさらに有し、
前記第2電極部材は、前記第5部分から前記駆動部筐体の外周面に沿って折れ曲がる第6部分をさらに有し、
前記蓋の内周面には、折り曲げられた前記第3部分が収納される第1凹部と、折り曲げられた前記第6部分が収納される第2凹部とが設けられる、請求項
2に記載の熱動弁。
【請求項6】
弁座を有する通水経路が内部に設けられた本体部をさらに備え、
前記駆動部筐体は、前記第2端側において前記本体部と一体になっている、請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の熱動弁。
【請求項7】
配管と、
前記配管の経路上に配置される請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の前記熱動弁とを備える、温水暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱動弁及び温水暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特開平11-37340号公報(特許文献1)に記載の熱動弁及び特許4394236号公報(特許文献2)に記載の熱動弁が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の熱動弁は、弁軸と、弁体と、ボディと、ケースと、熱応動素子と、発熱体と、第1の端子と、第2の端子とを有している。ボディの内部には、流体通路が設けられている。流体通路には、弁座が設けられている。ケースの内部には、熱応動素子、発熱体、第1端子及び第2端子が収納されている。発熱体は、第1端子及び第2端子により通電されることで発熱し、熱応動素子を加熱する。加熱された熱応動素子は、弁軸を移動させる。弁体は、弁座と対向するように弁軸に取り付けられている。弁体は、弁軸が移動することにより、弁座から離間する。これにより、湯水は、流体通路を流れる。
【0004】
特許文献1に記載の熱動弁において、熱応動素子、第1端子、発熱体及び第2端子は、第2端から第1端に向かう方向に付勢されていない。そのため、第1端子及び第2端子と発熱体との密着が不十分となる場合や、発熱体から熱応動素子への熱伝導が不十分となる場合がある。
【0005】
特許文献2に記載の熱動弁は、第1ユニット保持部材と、第2ユニット保持部材と、弁筐体と、弁軸と、弁体と、サーモエレメントと、下部電極板と、上部電極板と、正特性サーミスタと、セットアップ用コイルばねとを有している。弁筐体の内部には、流路が設けられている。流路には、弁座が設けられている。
【0006】
第1ユニット保持部材と第2ユニット保持部材は、一対となっている。第1ユニット保持部材及び第2ユニット保持部材は、第1端と、第2端とを有している。第2端は、第1端の反対側の端である。第2端は、弁筐体側に位置している。第1ユニット保持部材及び第2ユニット保持部材は、セットアップ用コイルばね、サーモエレメント、下部電極板、正特性サーミスタ及び上部電極板を保持している。
【0007】
サーモエレメントは、セットアップ用コイルばねよりも第1端側に配置されている。下部電極板は、サーモエレメントよりも第1端側に配置されている。正特性サーミスタは、下部電極板よりも第1端側に配置されている。上部電極板は、正特性サーミスタよりも第1端側に配置されている。
【0008】
正特性サーミスタは、下部電極板及び上部電極板により通電されることで発熱し、サーモエレメントを加熱する。加熱されたサーモエレメントは、弁軸を移動させる。これにより、弁座に取り付けられた弁体が弁座から離間し、流路に湯水が流れる。
【0009】
セットアップ用コイルばねは、縮んだ状態で第1ユニット保持部材及び第2ユニット保持部材により保持されている。つまり、セットアップ用コイルばねは、サーモユニット、下部電極板、正特性サーミスタ及び上部電極板を、第2端から第1端に向かう方向に付勢している。そのため、特許文献2に記載の熱動弁においては、下部電極板及び上部電極板と正特性サーミスタとの密着が不十分となるおそれや、正特性サーミスタからサーモユニットへの熱伝導が不十分となるおそれは小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-37340号公報
【文献】特許4394236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2に記載の熱動弁においては、セットアップ用コイルばね、サーモユニット、下部電極板、正特性サーミスタ及び上部電極板を、セットアップ用コイルばねからの付勢力に抗って第1ユニット保持部材及び第2ユニット保持部材に組み付ける必要がある。そのため、特許文献2に記載の熱動弁は、組み付け性に改善の余地がある。
【0012】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、組み付け性を改善することができる熱動弁及びそのような熱動弁を用いた温水暖房装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る熱動弁は、第1端と、第1端の反対側の端である第2端とを有する筒状の駆動部筐体と、弁軸と、加熱されることにより弁軸を移動させ、かつ、駆動部筐体内に収納される熱応動素子と、熱応動素子よりも第1端側に位置し、かつ、熱応動素子を加熱するヒータと、熱応動素子よりも第1端側に位置し、かつ、ヒータに電気的に接続される電極部と、熱応動素子よりも第2端側に位置するように駆動部筐体内に収納され、かつ、熱応動素子をヒータに向かって付勢する弾性部材とを備える。駆動部筐体は、第1端から第2端に向かう方向と交差する交差壁部が設けられる。電極部は、交差壁部に第2端側から当接することにより、駆動部筐体に係止される。
【0014】
本発明の一態様に係る熱動弁においては、熱応動素子、電極部及びヒータを駆動部筐体に組み付ける際に、熱応動素子、電極部及びヒータに対して、弾性部材からの付勢力が作用する。本発明の一態様に係る熱動弁においては、電極部が交差壁部に第2端側から当接することにより第1端から第2端に向かう方向において駆動部筐体に係止されるため、弾性部材からの付勢力に抗って駆動部筐体に収納される各部品の位置を仮固定することができる。したがって、本発明の一態様に係る熱動弁によると、組み付け性を改善することができる。
【0015】
上記の熱動弁において、電極部は、ヒータの第2端側に位置する第1電極部材と、ヒータの第1端側に位置する第2電極部材とを有していてもよい。駆動部筐体には、第1電極部材を挿入する第1挿入溝と、第2電極部材を挿入する第2挿入溝とが設けられていてもよい。第1挿入溝と第2挿入溝の少なくとも一方は、第1端から第2端に向かう方向と交差するように延在し、かつ、駆動部筐体を厚さ方向に貫通する第1溝部と、第1溝部から第1端に達するように延在し、かつ駆動部筐体を厚さ方向に貫通する第2溝部とを有していてもよい。第1溝部の第1端側の壁部は、交差壁部を構成していてもよい。第1電極部材及び第2電極部材の少なくとも一方は、交差壁部に第2端側から当接することにより、駆動部筐体に係止されていてもよい。
【0016】
この場合には、第1電極部材(又は第2電極部材)を駆動部筐体の第1端から第2端に向かって駆動部筐体の内部に押し込んだ状態で、第1電極部材(又は第2電極部材)を駆動部筐体の周方向に沿って回転させることにより、駆動部筐体に収納される各部品の位置を簡易に仮固定することができるため、組み付け性をさらに改善することができる。
【0017】
上記の熱動弁において、第1電極部材は、ヒータと対向するように配置される第1部分と、第1部分の径方向に沿って第1部分の周囲から突出する第2部分とを有していてもよい。第2電極部材は、ヒータと対向するように配置される第4部分と、第4部分の径方向に沿って第4部分の周囲から突出する第5部分とを有していてもよい。第2部分及び第5部分の少なくとも一方は、駆動部筐体の内周面側から駆動部筐体の外周面側に向かって第1溝部を通過するように構成されていてもよい。
【0018】
上記の熱動弁においては、第2部分の突出方向と第5部分の突出方向とがなす角度が、0°を超えていてもよい。この場合には、第1電極部材と第2電極部材とが接触し難くなるため、第1電極部材と第2電極部材との間の短絡を防止することができる。
【0019】
上記の熱動弁においては、第2部分の突出方向と第5部分の突出方向とがなす角度が、180°±0°であってもよい。
【0020】
上記の熱動弁は、駆動部筐体を封止する蓋をさらに備えていてもよい。上記の熱動弁において、第1電極部材は、第2部分から駆動部筐体の外周面に沿って折れ曲がる第3部分を有しており、第2電極部材は、第5部分から駆動部筐体の外周面に沿って折れ曲がる第6部分を有していてもよい。蓋の内周面には、第3部分が収納される第1凹部と、第6部分が収納される第2凹部とが設けられていてもよい。
【0021】
上記の熱動弁は、弁座を有する通水経路が内部に設けられた本体部をさらに備えていてもよい。駆動部筐体は、第2端側において本体部と一体になっていてもよい。
【0022】
本発明の一態様に係る温水暖房装置は、配管と、上記の熱動弁とを備える。上記の熱動弁は、配管の経路上に配置される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様に係る熱動弁及び温水暖房装置によると、組み付け性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図3】実施形態に係る熱動弁10における第1電極部材7a及び第2電極部材7bの斜視図である。
【
図4】
図1の方向IVからみた実施形態に係る熱動弁10の側面図である。
【
図5】
図1の方向Vからみた実施形態に係る熱動弁10の側面図である。
【
図7】実施形態に係る熱動弁10における蓋9の底面図である。
【
図8】実施形態に係る温水暖房装置100の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照しながら、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の符号を付すものとし、重複する説明は繰り返さない。
【0026】
(実施形態に係る熱動弁の構成)
以下に、実施形態に係る熱動弁10の構成を、
図1~
図5を参照して説明する。
【0027】
図1及び
図2に示すように、熱動弁10は、本体部1と、駆動部筐体2と、弁軸3と、弁体4と、絶縁リテーナ5aと、絶縁スペーサ5bと、熱応動素子6と、電極部7(第1電極部材7a及び第2電極部材7b)と、ヒータ7cと、第1弾性部材8aと、第2弾性部材8bと、蓋9とを有している。
【0028】
本体部1の内部には、通水経路1aが設けられている。通水経路1aは、入水口1b及び出水口1cにおいて、外部と接続している。通水経路1aには、弁座1dが形成されている。弁座1dは、弁軸3の中心軸3cに交差する方向に、通水経路1aの内壁面から突出している。本体部1は、複数の部材を組み立てることにより形成されていてもよい。
【0029】
駆動部筐体2は、筒状の形状を有している。駆動部筐体2は、円筒形状を有していてもよい。駆動部筐体2は、第1端2aと、第2端2bとを有している。第2端2bは、第1端2aの反対側の端である。第2端2bは、本体部1側に配置されている。駆動部筐体2は、第1端2aにおいて開口している。駆動部筐体2は、本体部1と一体に形成されていてもよい。駆動部筐体2は、第2端2b側において内部にOリング2cを収納している。
【0030】
弁軸3は、第1端3aと、第2端3bとを有している。第2端3bは、第1端3aの反対側の端である。弁軸3は、中心軸3cを有している。中心軸3cは、第1端3aから第2端3bに向かう方向に沿っている。弁軸3は、中心軸3cに沿って(第1端2aから第2端2bに向かう方向に沿って)移動可能に構成されている。弁軸3の外周面と駆動部筐体2の内周面とは、Oリング2cにより水密に封止されている。
【0031】
弁軸3は、その少なくとも一部が駆動部筐体2の内部に収納され、その残部が本体部1の内部に収納されている。より具体的には、弁軸3は、第1端3a側が駆動部筐体2の内部に収納され、第2端3b側が本体部1の内部に収納されている。弁軸3の第2端3b側は、通水経路1a内に位置している。
【0032】
弁体4は、弁軸3に取り付けられている。より具体的には、弁体4は、弁軸3の第2端3b側に取り付けられている。弁体4は、弁座1dに対向するように弁軸3に取り付けられている。弁体4は、弁軸3が中心軸3cに沿って第1端3a側から第2端3b側に向かって移動することにより、弁座1dから離間する。弁体4は、弁軸3が中心軸3cに沿って第2端3b側から第1端3a側に向かって移動することにより、弁座1dに当接する。
【0033】
絶縁リテーナ5aは、筒状の形状を有している。絶縁リテーナ5aは、駆動部筐体2の内部に収納されている。絶縁リテーナ5aは、Oリング2cよりも第1端2a側に配置されている。絶縁リテーナ5aは、第1端5aaと、第2端5abとを有している。第2端5abは、第1端5aaの反対側の端である。絶縁リテーナ5aは、第1端5aaが第1端2a側を向き、かつ、第2端5abが第2端2b側を向くように、駆動部筐体2の内部に収納されている。絶縁リテーナ5aは、絶縁性の材料により形成されている。
【0034】
絶縁スペーサ5bは、柱状の形状を有している。絶縁スペーサ5bは、絶縁リテーナ5aの内部に収納されている。絶縁スペーサ5bは、第1面5baと、第2面5bbとを有している。第1面5baは、絶縁スペーサ5bの上面を構成し、第2面5bbは、絶縁スペーサ5bの底面を構成している。第2面5bbは、第1面5baの反対面である。第1面5ba及び第2面5bbは、絶縁スペーサ5bの外周面に連なっている。
【0035】
絶縁スペーサ5bは、第1面5baが第1端2a側を向き、第2面5bbが第2端2b側を向き、かつ、その外周面が絶縁リテーナ5aの内周面と対向するように、絶縁リテーナ5aの内部に収納されている。絶縁スペーサ5bは、第1面5baから第2面5bbに向かう方向に沿って絶縁リテーナ5aに対して移動可能に構成されている。第2面5bbは、弁軸3の第1端3aに当接している。絶縁スペーサ5bは、絶縁性の材料により形成されている。
【0036】
熱応動素子6は、加熱されることにより、弁軸3を中心軸3cに沿って移動させる。より具体的には、熱応動素子6は、加熱されることにより、弁軸3を中心軸3cに沿って第1端3aから第2端3bに向かう方向に移動させる。熱応動素子6は、絶縁リテーナ5aよりも第1端2a側において、駆動部筐体2の内部に収納されている。
【0037】
熱応動素子6は、例えばワックスエレメントである。すなわち、熱応動素子6は、内部にワックスが充填された感熱部61と、感熱部61の内部に挿入される第1端62aと、第1端62aの反対側の端である第2端62bとを含む軸体62とを有している。感熱部61に充填されるワックスは、例えばパラフィンワックスである。
【0038】
感熱部61は、加熱されることにより、内部に充填されたワックスが膨張する。このワックスの膨張に伴い、軸体62は、感熱部61の内部から押し出され、第1端62aから第2端62bに向かう方向に沿って移動する。これにより、第2端62bが、絶縁スペーサ5bの第1面5baに当接し、絶縁スペーサ5bを第1面5baから第2面5bbに向かう方向に沿って移動する。その結果、絶縁スペーサ5bが、弁軸3を中心軸3cに沿って第1端3aから第2端3bに向かう方向に移動させる。
【0039】
電極部7は、熱応動素子6よりも第1端2a側に配置されている。より具体的には、第1電極部材7aは、熱応動素子6よりも第1端2a側において駆動部筐体2の内部に収納されている。第2電極部材7bは、第1電極部材7aよりも第1端2a側において駆動部筐体2の内部に配置されている。ヒータ7cは、第1端2aから第2端2bに向かう方向において、第1電極部材7a及び第2電極部材7bに挟み込まれている。ヒータ7cは、第1電極部材7a及び第2電極部材7bによって通電されることにより発熱する。ヒータ7cは、例えばPTC(Positive Thermal Coefficient)サーミスタ(正特性サーミスタ)である。ヒータ7cは、熱応動素子6を加熱する。より具体的には、ヒータ7cは、感熱部61を加熱する。
【0040】
電極部7は、第1端2aから第2端2bに向かう方向において、駆動部筐体2に係止されている。より具体的には、電極部7は、後述する交差壁部2dcに第2端2b側から当接することにより、駆動部筐体2に係止されている。さらに具体的には、第1電極部材7a及び第2電極部材7bの少なくとも一方は、後述する交差壁部2dcに第2端2b側から当接することにより、駆動部筐体2に係止されている。
【0041】
図3に示すように、第1電極部材7aは、第1部分7aaと、第2部分7abと、第3部分7acとを有している。第1部分7aaは、ヒータ7cに対向する位置に配置されている部分である。第1部分7aaは、例えば円形形状を有している。第2部分7abは、第1部分7aaの周囲から、第1部分7aaの径方向に沿って突出している。第3部分7acは、駆動部筐体2の外周面に沿って第2部分7abから折り曲げられている。
【0042】
第2電極部材7bは、第4部分7baと、第5部分7bbと、第6部分7acとを有している。第4部分7baは、ヒータ7cに対向する位置に配置されている部分である。第4部分7baは、例えば円形形状を有している。第5部分7bbは、第4部分7baの周囲から、第4部分7baの径方向に沿って突出している。第6部分7bcは、駆動部筐体2の外周面に沿って第5部分7bbから折り曲げられている。
【0043】
なお、図示されていないが、第3部分7ac及び第6部分7bcには、第1電極部材7a及び第2電極部材7bと外部の電源とを接続するためのリード線が接続されている。
【0044】
図4及び
図5(
図4及び
図5において、蓋9の図示が省略してある)に示すように、駆動部筐体2には、第1挿入溝2dと、第2挿入溝2eとが設けられている。第1挿入溝2dには、第1電極部材7aが挿入される。第2挿入溝2eには、第2電極部材7bが挿入される。
【0045】
第1挿入溝2dは、第1溝部2daと、第2溝部2dbとを有している。第1溝部2da及び第2溝部2dbは、厚さ方向に(駆動部筐体2の内周面から駆動部筐体2の外周面に向かう方向に)、駆動部筐体2を貫通している。
【0046】
第1溝部2daは、第1端2aから第2端2bに向かう方向と交差するように延在している。別の観点からいえば、第1溝部2daは、駆動部筐体2の周方向に沿って延在している。第1溝部2daの第1端2a側の壁部は、交差壁部2dcとなっている。第2溝部2dbは、第2端2bから第1端2aに向かう方向に沿って、第1溝部2daから第1端2aに達するように延在している。
【0047】
第2部分7abは、第1溝部2daを駆動部筐体2の内周面側から外周面側に向かって通過している。これにより、第1電極部材7aは、交差壁部2dcに第2端2b側から当接し、駆動部筐体2に係止されている。
【0048】
第2挿入溝2eは、第1端2aから第2端2bに向かう方向に沿って、第1端2aから延在している。なお、第2挿入溝2eの第2端2b側の端は、第1挿入溝2dの第2端2b側の端よりも、第1端2a側に位置している。
【0049】
なお、上記の例においては、第1挿入溝2dが第1溝部2daと第2溝部2dbとを含み、第2部分7abが第1溝部2daを駆動部筐体2の内周面側から外周面側に向かって通過するように構成されているが、第2挿入溝2eが第1溝部2daと第2溝部2dbとを含み、第5部分7bbが第1溝部2daを駆動部筐体2の内周面側から外周面側に向かって通過するように構成されていてもよい。すなわち、第1挿入溝2d及び第2挿入溝2eの少なくとも一方が第1溝部2da及び第2溝部2dbを含んでおり、第2部分7ab及び第5部分7bbの少なくとも一方が、第1溝部2daを駆動部筐体2の内周面側から外周面側に向かって通過するように構成されていればよい。
【0050】
図6(
図6において、蓋9の図示が省略してある)に示すように、第2部分7abは、第1部分7aaから、第1方向D1に沿って突出している。第5部分7bbは、第4部分7baから、第2方向D2に沿って突出している。第1電極部材7a及び第2電極部材7bは、平面視において、第1方向D1と第2方向D2とが角度θをなすように配置されている。角度θは、0°を超えていることが好ましい。角度θは、180°±10°であることがさらに好ましい。
【0051】
図2に示すように、第1弾性部材8aは、駆動部筐体2の内部に収納されている。第1弾性部材8aは、例えばコイルばねである。第1弾性部材8aは、熱応動素子6をヒータ7cに向かって付勢している。より具体的には、第1弾性部材8aは、熱応動素子6、第1電極部材7a、第2電極部材7b及びヒータ7cを、第2端2bから第1端2aに向かう方向に付勢している。
【0052】
第2弾性部材8bは、本体部1の内部に収納されている。より具体的には、第2弾性部材8bは、通水経路1a内に収納されている。第2弾性部材8bは、例えばコイルばねである。第2弾性部材8bは、弁体4を第2端3bから第1端3aに向かう方向に付勢している。熱応動素子6がヒータ7cにより加熱されていない場合、第2弾性部材8bは、弁体4を第2端3bから第1端3aに向かう方向に付勢することにより、弁体4を弁座1dに当接させる。
【0053】
図1及び
図2に示すように、蓋9は、駆動部筐体2を覆うように取り付けられている。
図7に示すように、蓋9の内周面には、第1凹部9aと、第2凹部9bとが設けられている。第1凹部9a及び第2凹部9bにおいて、蓋9の内周面は、蓋9の外周面に向かって窪んでいる。第3部分7ac及び第6部分7bcは、蓋9が駆動部筐体2に取り付けられた状態において、第1凹部9a及び第2凹部9bにそれぞれ収納されている。
【0054】
(実施形態に係る熱動弁の組立方法)
以下に、実施形態に係る熱動弁10の組立方法を説明する。
【0055】
熱動弁10の組立においては、第1に、絶縁スペーサ5bが内部に収納された絶縁リテーナ5aが、第1端2aに設けられた開口から、駆動部筐体2の内部に挿入される。第2に、第1弾性部材8aが、第1端2aに設けられた開口から、駆動部筐体2の内部に挿入される。第3に、熱応動素子6が、第1端2aに設けられた開口から、駆動部筐体2の内部に挿入される。
【0056】
第4に、第1電極部材7aが、第1端2aに設けられた開口から、駆動部筐体2の内部に挿入される。この際、第1電極部材7aは、第2部分7abが第2溝部2dbに対応する位置に載置された状態で、第1端2aから第2端2bに向かう方向に押し込まれる。その後、第1電極部材7aを第1端2aから第2端2bに向かう方向に押し込んだまま、第1電極部材7aを駆動部筐体2の周方向に沿って回転させることにより、第2部分7abを第1溝部2daに通過させる。これにより、第1電極部材7aが、第1端2aから第2端2bに向かう方向において、駆動部筐体2に係止される。
【0057】
熱動弁10の組立においては、第5に、第1端2aに設けられた開口から、ヒータ7cが駆動部筐体2の内部に挿入される。第6に、第1端2aに設けられた開口から、第2電極部材7bが駆動部筐体2の内部に挿入される。第7に、蓋9が、駆動部筐体2を覆うように取り付けられる。以上により、熱動弁10の組立が完了する。
【0058】
(実施形態に係る熱動弁の動作)
以下に、実施形態に係る熱動弁10の動作を説明する。
【0059】
熱応動素子6がヒータ7cにより加熱されていない場合には、弁体4が第2弾性部材8bにより第2端3bから第1端3aに向かう方向に付勢されることにより、弁体4と弁座1dとが当接しているため、入水口1bから通水経路1aに流れ込んだ湯水は、弁体4と弁座1dにより遮断される(以下において、この状態を第1状態という)。
【0060】
他方で、熱応動素子6がヒータ7cにより加熱されている場合には、熱応動素子6が弁軸3を中心軸3cに沿って第1端3aから第2端3bに向かう方向に移動させるため、弁体4が弁座1dから離間する。その結果、入水口1bから通水経路1aに流れ込んだ湯水は、弁体4と弁座1dとの間を通過し、出水口1cから流出する(以下において、この状態を第2状態という)。
【0061】
そして、ヒータ7cによる熱応動素子6の加熱が終了すると、熱応動素子6が弁軸3を中心軸3cに沿って第1端3aから第2端3bに向かう方向へ移動させなくなるため、第2弾性部材8bの付勢力により、弁体4と弁座1dとが再び当接し、第1状態に戻る。このように、熱動弁10においては、ヒータ7cによる加熱を行うか否かにより、湯水が通水経路1aを通水するか否かを切り替えることができる。
【0062】
(実施形態に係る熱動弁の効果)
以下に、実施形態に係る熱動弁10の効果を説明する。
【0063】
熱動弁10において、熱応動素子6、第1電極部材7a、ヒータ7c及び第2電極部材7bは、第1弾性部材8aにより、第2端2bから第1端2aに向かう方向に付勢されている。そのため、第1電極部材7a、第2電極部材7b及びヒータ7cの密着不足、並びにヒータ7cから熱応動素子6に対する伝熱不足が抑制されている。
【0064】
熱応動素子6、電極部7及びヒータ7cには、駆動部筐体2に組み付ける際に第1弾性部材8aからの付勢力が作用する。熱動弁10においては、電極部7が、交差壁部2dcに第2端2b側から当接することにより、第1端2aから第2端2bに向かう方向において、駆動部筐体2に係止されている。
【0065】
そのため、熱動弁10においては、組み付けの際に、第2端2bから第1端2aに向かう方向に作用する第1弾性部材8aからの付勢力に抗って駆動部筐体2に収納される各部品の位置を仮固定することができる。したがって、熱動弁10によると、組み付け性を改善することができる。
【0066】
このことを別の観点からいえば、熱応動素子6、電極部7、ヒータ7c及び第2電極部材7bが第1弾性部材8aからの付勢力により駆動部筐体2から飛び出してしまわないように駆動部筐体2を長くする必要はないため、駆動部筐体2を小型化することができる。
【0067】
より具体的には、熱動弁10においては、第1挿入溝2d及び第2挿入溝2eの少なくとも一方が、第1溝部2da及び第2溝部2dbを有しており、第2部分7ab及び第5部分7bbの少なくとも一方が、駆動部筐体2の内周面から外周面に向かう方向に第1溝部2daを通過することにより、第1電極部材7a及び第2電極部材7bの少なくとも一方が、第1端2aから第2端2bに向かう方向において駆動部筐体2に係止されている。
【0068】
この場合には、第1電極部材7a(又は第2電極部材7b)を第1端2aから第2端2bに向かって駆動部筐体2の内部に押し込んだ状態で、第1電極部材7a(又は第2電極部材7b)を駆動部筐体2の周方向に沿って回転させることにより、駆動部筐体2に収納される各部品の位置を簡易に仮固定することができるため、組み付け性をさらに改善することができる。
【0069】
第2部分7abと第5部分7bbとが平面視において重なって配置されている場合、第3部分7acに接続されているリード線と第6部分7bcに接続されているリード線とが短絡してしまうおそれがある。熱動弁10において、角度θが0°を超えている場合、第2部分7abと第5部分7bbとが平面視において重なって配置されないため、このような短絡の発生を抑制することができる。
【0070】
特に、角度θが180°±10°である場合、平面視において第2部分7ab及び第3部分7acと第5部分7bb及び第6部分7bcとを対称な位置に配置することができるため、このような短絡をさらに抑制することができる。
【0071】
蓋9の内周面に第1凹部9a及び第2凹部9bが設けられている場合、蓋9の外径を大きくすることなく第3部分7ac及び第6部分7bcが通過する領域を確保することができる。そのため、この場合には、熱動弁10を小型化することができる。
【0072】
(実施形態に係る温水暖房装置の構成)
以下に、実施形態に係る温水暖房装置100の構成を、
図8を参照して説明する。
【0073】
図8に示すように、温水暖房装置100は、熱動弁10と、配管20a~20fと、一次熱交換器30aと、二次熱交換器30bと、バーナ30cと、ポンプ40と、タンク50とを有している。配管20aの一方端は、タンク50に接続されている。配管20aの他方端は、配管20bの一方端及び配管20cの一方端が接続している部分に接続されている。配管20bの他方端は、一次熱交換器30aに接続されている。配管20cの他方端は、低温暖房端末60aに接続されている。
【0074】
配管20dの一方端は、一次熱交換器30aに接続されている。配管20dの他方端には、高温暖房端末60bが接続されている。配管20eの一方端は、二次熱交換器30bに接続されている。配管20eは、他方端において分岐している。他方端において分岐している配管20eの一方は、高温暖房端末60bに接続されている。他方端において分岐している配管20eの他方は、低温暖房端末60aに接続されている。配管20fの一方端は、二次熱交換器30bに接続されている。配管20eの他方端は、タンク50に接続されている。
【0075】
バーナ30cは、一次熱交換器30aの近傍に配置されている。ポンプ40は、配管20a上に配置されている。ポンプ40は、図中の矢印の方向に湯水を循環させる。タンク50には、湯水が貯留されている。
【0076】
タンク50に貯留されている湯水は、配管20bを介して一次熱交換器30aに供給される。一次熱交換器30aに供給された湯水は、バーナ30cとの間で熱交換を行うことにより、温度が上昇する。この温度が上昇した湯水は、配管20dを介して、高温暖房端末60bに供給される。高温暖房端末60bを通過して温度が低下した湯水は、配管20eを介して二次熱交換器30bに供給される。二次熱交換器30bに供給された湯水は、一次熱交換器30aと熱交換を行った後の余熱で熱交換が行われることにより、温度が上昇する。この温度が上昇した湯水は、配管20fを介して、タンク50に戻る。なお、配管20fを流れる湯水の温度は、配管20dを流れる湯水の温度よりも低い。
【0077】
タンク50に貯留されている湯水は、配管20cを介して、低温暖房端末60aにも供給される。低温暖房端末60aを通過して温度が低下した湯水は、配管20eを介して二次熱交換器30bに供給されることで温度が上昇するとともに、配管20fを介してタンク50に戻る。これにより、低温暖房端末60a及び高温暖房端末60bが配設される室内において暖房動作が行われる。なお、低温暖房端末60aによる暖房動作が行われてない場合、熱動弁10が閉状態とされることにより、配管20cを介して低温暖房端末60aへと湯水が流れない。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
上記の実施形態は、熱動弁及び熱動弁を用いた温水暖房装置に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0080】
1 本体部、10 熱動弁、100 温水暖房装置、1a 通水経路、1b 入水口、1c 出水口、1d 弁座、2 駆動部筐体、2a 第1端、2b 第2端、2c Oリング、2d 第1挿入溝、2da 第1溝部、2db 第2溝部、2dc 交差壁部、2e 第2挿入溝、3 弁軸、3a 第1端、3b 第2端、3c 中心軸、4 弁体、5a 絶縁リテーナ、5aa 第1端、5ab 第2端、5b 絶縁スペーサ、5ba 第1面、5bb 第2面、6 熱応動素子、61 感熱部、62 軸体、62a 第1端、62b 第2端、7 電極部、7a 第1電極部材、7aa 第1部分、7ab 第2部分、7ac 第3部分、7b 第2電極部材、7ba 第4部分、7bb 第5部分、7bc 第6部分、7c ヒータ、8a 第1弾性部材、8b 第2弾性部材、9 蓋、9a 第1凹部、9b 第2凹部、20a,20b,20c,20d,20e,20f 配管、30a 一次熱交換器、30b 二次熱交換器、30c バーナ、40 ポンプ、50 タンク、60a 低温暖房端末、60b 高温暖房端末、D1 第1方向、D2 第2方向、θ 角度。