(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/22 20060101AFI20220315BHJP
C08L 61/06 20060101ALI20220315BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20220315BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20220315BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20220315BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220315BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C08L23/22
C08L61/06
C08K5/098
C08K5/20
B29C33/02
B60C1/00 Z
B60C5/14 A
(21)【出願番号】P 2017550645
(86)(22)【出願日】2017-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2017024472
(87)【国際公開番号】W WO2018008630
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2016132561
(32)【優先日】2016-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 達也
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-112847(JP,A)
【文献】特開2012-092243(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104371266(CN,A)
【文献】国際公開第2010/122755(WO,A1)
【文献】特開2015-232110(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0098252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
B60C 5/00- 5/24
B29C 33/00- 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチル系ゴムを80質量%以上含有するゴム成分100質量部に対し、
ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドを0.1~10質量部、並びに
樹脂を0.1~100質量部含有するゴム組成物であり、
前記樹脂は、
アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂を含み、
前記ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドを、20~80質量%のω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミド、並びに20~80質量%のステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩を含む混合物として含有するゴム組成物。
【請求項2】
前記樹脂が、さらに粘着樹脂および相溶化樹脂からなる群から選ばれる1以上の樹脂を含
み、
前記粘着樹脂が、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、およびジシクロペンタジエン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
プロセスオイルおよび液状
スチレンブタジエンゴムの少なくとも1種を含み、
プロセスオイル、および液状
スチレンブタジエンゴムの合計含有量が4~100質量部である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
4質量部以上のプロセスオイルを含有する請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のゴム組成物で構成される、タイヤ加硫用またはタイヤ成形用のブラダー。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のゴム組成物で構成される、タイヤ内部部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム成分、脂肪酸アミドおよび樹脂を含有するゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤや加硫ブラダーなどのゴム製品は、配合剤を混練して得られた未加硫ゴム組成物を加硫することで製造される。加硫は、外枠金型および内側から加硫ブラダーまたは金属コアにより加圧加熱することで行う、加硫金型などへの過密着が発生すると、製品不良や耐久ライフの低下、金型汚染が発生するおそれがある。
【0003】
ブチル系ゴム成分を多く含むゴム組成物は、プロセスオイルや樹脂成分を含有することで、高度な気密性、空気保持性、表面平滑性を確保している。特に加硫ブラダー用ゴム組成物では、プロセスオイルや架橋性樹脂を用いる。そのため、加硫金型や加工設備に対する過密着が発生しやすいという問題がある。
【0004】
また、タイヤ内部部材用ゴム組成物は、インナーライナーゴムを含め、天然ゴム、プロセスオイル、樹脂および相溶化樹脂を含有することで、隣接部材との密着性を確保している。そのため、加硫金型や加工設備に対する過密着が発生しやすいという問題がある。
【0005】
これらの問題の解決方法として離型剤を配合する方法があるが、ゴム組成物に付与する滑性、ゴム表面へのブルーム性、フィラー分散能力等が適切でない場合、加硫品の軽不良(ベアーなど)の抑制効果や耐久性が低下するという問題がある。
【0006】
特許文献1には、所定の離型剤を配合することで、耐摩耗性能およびウェットグリップ性能を維持しつつ、金型離型および金型汚染が抑制されたゴム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、ブラダー用ゴム組成物およびタイヤ内部部材用ゴム組成物については考慮されていない。また、離型剤によるフィラー分散性の向上およびタイヤ性能の向上については考慮されていない。
【0009】
本発明は、加工性、離型性および耐久性に優れたゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
所定の脂肪酸アミドおよび樹脂を含有することで、ゴム組成物中のフィラー分散性が向上しゴム特性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ブチル系ゴムを80質量%以上含有するゴム成分100質量部に対し、ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドを0.1~10質量部、並びに樹脂を0.1~100質量部含有するゴム組成物であり、前記ω-9脂肪酸アミドまたはステアリン酸アミドを、20~80質量%のω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドと20~80質量%のステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩を含む混合物として含有するゴム組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、前記のゴム組成物で構成されるタイヤ内部部材およびタイヤ加硫用またはタイヤ成形用のブラダーに関する。
【0013】
軟化点が130℃以下の樹脂を含み、プロセスオイルおよび液状ポリマーの少なくとも1種を含み、軟化点が130℃以下の樹脂、プロセスオイル、および液状ポリマーの合計含有量が10質量部以上であることが好ましい。
【0014】
4質量部以上のプロセスオイルを含有することが、本発明の効果をより発揮できる点で好ましい。
【発明の効果】
【0015】
ブチル系ゴムを80質量%以上含有するゴム成分100質量部に対し、所定量のω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミド、並びに樹脂を含有する本発明のゴム組成物は、加工性、離型性および耐久性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施態様のゴム組成物は、ゴム成分、ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドとステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩を含む混合物、および樹脂を含有する。
【0017】
<ゴム成分>
本実施態様において使用されるゴム成分としては、ブチル系ゴムが好適に用いられる。ブチル系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム(非ハロゲン化ブチルゴム、IIR)、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)や塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)等のハロゲン化ブチルゴム(X-IIR)、イソブチレンとp-アルキルスチレンとの共重合体(例えば、エクソンモービル社製のExxpro3035)、該共重合体のハロゲン化物等が挙げられる。高い耐熱性を有するという理由から、非ハロゲン化ブチルゴム(IIR)が好ましい。これらのブチル系ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
非ハロゲン化ブチルゴム中のイソプレンの含有量は、耐熱性の向上効果に優れるという理由から、3モル%以下が好ましく、2モル%以下がより好ましい。また、非ハロゲン化ブチルゴム中のイソプレンの含有量は、0.5モル%以上が好ましく、0.7モル%以上がより好ましく、1.0モル%以上がさらに好ましい。
【0019】
なお、ブチル系ゴムには、通常2重結合部位が0.5%以下しかなく、架橋を行っても、架橋数は極めて少なくなる。ブチル系ゴムは、通常、イソブチレンとイソプレンモノマーを混合し、反応させることにより製造できる。
【0020】
ゴム成分の総量中に占めるブチル系ゴムの割合(2種以上を併用する場合は合計含有量)は、耐空気透過性および耐熱性に優れるという理由から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、92質量%以上がさらに好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0021】
本実施態様においてブチル系ゴム以外に使用されるゴム成分としては、特に限定されず、天然ゴム(NR)およびポリイソプレンゴム(IR)を含むイソプレン系ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等のジエン系ゴム等が挙げられる。これらのゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
なお、ブラダー用ゴム組成物としての耐久性の観点から、本実施態様のゴム組成物は、ブチル系ゴムおよびクロロプレンゴムを含むことが好ましく、クロロプレンゴムおよびブチル系ゴムのみからなるゴム成分とすることがより好ましい。前記ブチルゴムは、レギュラーブチルゴム(非ハロゲン化ブチルゴム)とすることがさらに好ましい。
【0023】
<脂肪酸および樹脂>
本実施態様のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部のω-9脂肪酸アミド(オメガ9脂肪酸アミド)および/またはステアリン酸アミド、並びに0.1~100質量部の樹脂を含有することを特徴とする。ω-9脂肪酸アミドまたはステアリン酸アミドと樹脂とを併用することにより、耐久性に優れるにもかかわらず、混練機や加硫金型などの設備への過密着が抑えられ、加工性および離型性に優れるゴム組成物となる。
【0024】
「ω-9脂肪酸」は、カルボン酸末端から9番目に二重結合を持つ脂肪酸を意味する。また「ω-9脂肪酸アミド」は、ω-9脂肪酸のヒドロキシ基がアミノ基に置換された化合物を意味する。好ましくは、炭素数が18~24のω-9脂肪酸アミドである。
【0025】
ω-9脂肪酸アミドの具体例としては、例えば、オレイン酸アミド、エイコセン酸アミド、ミード酸アミド、エルカ酸アミド、ネルボン酸アミド等が挙げられ、オレイン酸アミドおよびエルカ酸アミドが好ましい。ここで、本実施態様の脂肪酸アミドは、市販の離型剤(ストラクトール社製のWB16等)に含まれる脂肪酸モノエタノールアミドおよび脂肪酸モノエタノールアミドのエステルとは化学構造が異なり、SP値の観点で優れたものである。具体的には、本実施態様の脂肪酸アミド(例えば、オレイン酸アミドのSP値は10.2)は、タイヤ分野のゴム組成物に常用される樹脂(一般的にSP値が8~11(例えば、テルペン系樹脂のSP値は約8.3付近、フェノール系樹脂のSP値は約10.5付近))とSP値が近く、相溶性に優れており、かつ、本実施態様の脂肪酸アミドは、タイヤ分野のゴム組成物に常用されるゴム成分(一般的にSP値が7.8~9(例えば、ブチルゴムのSP値は約7.8付近))と適度にSP値に差があり(SP値の差は約2.4程度)、その結果ブリードしやすくなり、離型性を発揮する。
【0026】
樹脂を所定量含有する未加硫ゴム組成物は低粘度となるが、ω-9脂肪酸アミドが設備の金属表面で薄いアミド結合膜を形成し、樹脂が金属表面と強く結合することを抑制しているため、混練機や加硫金型などの設備への過密着が抑えられると考えられる。
【0027】
ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドは、ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドとステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩との混合物として含有することが好ましい。ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドとステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩との混合物として含有することにより、物理的離型性が向上し、物理的離型性とアミド結合膜による離型性とが相乗作用するため、本発明の効果がより発揮されると考えられる。ω-9脂肪酸アミドおよびステアリン酸アミドは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、ω-9脂肪酸のうち1種を用いることが好ましく、オレイン酸アミドを単独で用いることがより好ましい。
【0028】
前記の混合物は、常温での単純混合物であっても溶融混合物であってもよいが、ステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩が、ゴム成分に溶解せずに異物として物理的な離型性を発揮させるため、単純混合物が好ましい。
【0029】
溶融混合物は、例えばオレイン酸アミド(透明融点74℃)およびステアリン酸カルシウム(透明融点154℃)とを混合しながら、両化合物が溶融する温度まで加熱することで調製することができる。この混合方法としては、特に限定されないが、例えばシリコンオイルバス中で加温しながらスターラー撹拌する方法が挙げられる。
【0030】
前記の混合物の総量中において、20~80質量%のω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミド、並びに20~80質量%のステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩を含むことが好ましく;25~75質量%のω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミド、並びに25~75質量%のステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩を含むことがより好ましく;40~60質量%のω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミド、並びに40~60質量%のステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩を含むことがさらに好ましい。
【0031】
「ステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩」の具体例としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられ;ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸アルミニウムが好ましく;ステアリン酸カルシウム、および12-ヒドロキシステアリン酸カルシウムがより好ましい。
【0032】
ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドのゴム成分100質量部に対する含有量は、0.1質量部以上であり、0.2質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。また、ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドのゴム成分100質量部に対する含有量は、10質量部以下であり、8質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。なお、当該質量部は、ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドとステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩との混合物としての質量部ではなく、ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドそのものの質量部を意味する。
【0033】
樹脂としては、例えば、粘着樹脂、架橋性樹脂および相溶化樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
粘着樹脂には、ゴム加工中およびゴム貼り合わせ時の粘着性を付与する目的のもの、並びに加硫後、タイヤ走行中の路面との粘着グリップ性を向上させる目的のものがある。粘着樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)などが挙げられる。フェノール系樹脂としては例えばコレシン(BASF社製)、タッキロール(田岡化学工業(株)製)等が挙げられる。クマロンインデン樹脂としては例えばエスクロン(新日鉄住金化学(株)製)、ネオポリマー(JX日鉱日石エネルギー(株)製)等が挙げられる。スチレン樹脂としては例えばSylvatraxx 4401(Arizona chemical社製)等が挙げられる。テルペン系樹脂としては例えばTR7125(Arizona chemical社製)、TO125(ヤスハラケミカル(株)製)等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐久性に優れるという理由から、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、およびアクリル樹脂が好ましく、テルペン系樹脂がより好ましい。
【0035】
テルペン系樹脂のなかでも、ブチル系ゴム成分との相溶性に優れ、化学構造中の二重結合が水素添加により単結合になっているため、より耐久性に優れた加硫ブラダーが得られるという理由から、水素添加されたテルペン系樹脂が好ましい。また、100%に近い水素添加が可能であり、さらに耐久性に優れるという理由から、水素添加されたポリテルペン樹脂がより好ましい。水添ポリテルペン樹脂としては例えばクリアロンPシリーズ(ヤスハラケミカル(株)製)等が挙げられる。テルペン系樹脂への水素添加処理は、公知の方法で行うことができ、また、本実施態様においては、市販の水素添加されたテルペン系樹脂を使用することもできる。
【0036】
架橋性樹脂は、主にブチル系ゴム成分を架橋する目的で含有する。架橋性樹脂としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(田岡化学工業(株)製のタッキロール201)等が挙げられる。
【0037】
相溶化樹脂は、ゴム成分間やゴム成分とフィラー間の相溶性を向上させることを目的として含有する。相溶化樹脂としては、ストラクトール社製のストラクトール40MS、ラインケミー社(Rhein Chemie Corp.)製のレノジン145A、フローポリマー社(Flow Polymers Inc.)製のプロミックス400等が挙げられる。
【0038】
樹脂の軟化点は、耐久性の観点から0℃以上が好ましい。また、樹脂の軟化点は、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、145℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。本発明における樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0039】
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、ゴム成分との相溶性の観点から、-35℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。また、樹脂のTgは、ゴム成分との相溶性の観点から、110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
【0040】
樹脂のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.1質量部以上であり、1.0質量部以上が好ましく、2.0質量部以上がより好ましい。樹脂の含有量が0.1質量部未満の場合は、隣接部材との密着性、耐久性の改善効果が不十分となる傾向がある。また、樹脂の含有量は、100質量部以下であり、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましい。樹脂の含有量が100質量部を超える場合は、ゴム組成物のTgが高くなり、低温でのHsが高くなるため耐久性が悪化する傾向がある。
【0041】
樹脂として特に軟化点が130℃以下の樹脂を含有することが好ましい。軟化点が130℃以下の樹脂としては特に限定されず、タイヤなどのゴム製品に使用されている樹脂が挙げられる。なお、軟化点が130℃以下の樹脂には、Ruetgers Chemicals社製のNOVARES C10などの液状樹脂も含まれる。
【0042】
軟化点が130℃以下の樹脂を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴム加工設備、加硫金型との過密着が発生しやすくなるため本発明の効果がより発揮されるという理由から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また。当該樹脂の含有量は、耐久性の観点から、100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましい。
【0043】
本実施態様のゴム組成物は、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般的に使用される配合剤、例えば、オイル、液状ポリマー、補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、脂肪酸亜鉛石けん、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤などを適宜含有することができる。
【0044】
オイルとしては特に限定されず、ゴム工業において一般的に用いられるプロセスオイルやミネラルオイル等のパラフィンオイル、TDAEオイル、キャスターオイル(ヒマシ油)等が挙げられる。
【0045】
プロセスオイルおよび液状ポリマーとしては特に限定されず、タイヤなどのゴム製品に使用されているプロセスオイルを含有することができる。プロセスオイルおよび液状ポリマーの少なくとも1種を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、低粘度配合となり過密着が発生しやすくなるため本発明の効果がより発揮されるという理由から、4質量部以上が好ましく、9質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また。当該樹脂の含有量は、Hsおよび耐久性の観点から、100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましい。
【0046】
軟化点が130℃以下の樹脂を含み、かつ、プロセスオイルおよび液状ポリマーの少なくとも1種を含み、軟化点が130℃以下の樹脂、プロセスオイル、および液状ポリマーの合計含有量が10質量部以上であることが好ましい。これにより、過密着を抑えて、本発明の効果をより発揮することができる。
【0047】
軟化点が130℃以下の樹脂、プロセスオイル、および液状ポリマーを含有する場合の合計含有量は、低粘度配合となり過密着が発生しやすくなるため本発明の効果がより発揮されるという理由から、10質量部以上が好ましく、12質量部以上がより好ましい。また。当該合計含有量は、Hs、耐久性の観点から、100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましい。
【0048】
補強用充填剤としては特に限定されず、白色充填剤やカーボンブラックが挙げられる。
【0049】
白色充填剤としては、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、タルクなどが挙げられ、これらの白色充填剤を単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。耐久性および低燃費性能に優れるという理由から、シリカおよび水酸化アルミニウムの少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0050】
水酸化アルミニウムの平均粒子径(D50)は、水酸化アルミニウムの分散性、再凝集防止、耐久性の観点から、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。また、水酸化アルミニウムの平均粒子径(D50)は、耐久性の観点から、3.0μm以下が好ましく、2.0μmがより好ましい。なお、本明細書における平均粒子径(D50)とは、粒子径分布測定装置により求めた粒子径分布曲線の積算質量値50%の粒子径である。
【0051】
水酸化アルミニウムを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐久性の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、水酸化アルミニウムの含有量は、耐久性の観点から、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
【0052】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐久性の観点から、80m2/g以上であり、100m2/g以上が好ましく、140m2/g以上がより好ましく、151m2/g以上がさらに好ましく、195m2/g以上が特に好ましい。また、N2SAは、良好なフィラー分散性を確保するという観点から、600m2/g以下が好ましく、500m2/g以下がより好ましく、400m2/g以下がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217-2:2001に準拠してBET法で求められる。
【0053】
カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は、紫外線クラック防止性能を確保するという理由から3質量部以上である。好ましいカーボンブラックの含有量は、にゴム組成物に期待される性能により異なる。ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は20~70質量部が好ましい。
【0054】
加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄が挙げられる。加硫剤の含有量は本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、通常のゴム組成物における含有量とすることができる。
【0055】
加硫促進剤としては、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾリルスルフェンアミド類、ベンゾチアゾリルスルフェンイミド類、グアニジン類などが挙げられる。これらの加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加硫速度が適度となり、十分に加硫できるという理由から、0.5質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましい。また、加硫促進剤の含有量は、加硫速度が適度となり、スコーチングし難いという理由から、4.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましい。
【0057】
加硫促進助剤としては、例えば、酸化亜鉛を配合することができる。酸化亜鉛の含有量は特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、さらに好ましくは7質量部以上であり;好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは9質量部以下である。
【0058】
酸化亜鉛の平均一次粒子径は特に限定されないが、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは120nm以下、特に好ましくは90nm以下である。
【0059】
酸化亜鉛の平均一次粒子径は特に限定されないが、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上である。なお、酸化亜鉛の平均一次粒子径は、窒素吸着によるBET法により測定した比表面積から換算された平均粒子径(平均一次粒子径)を表す。
【0060】
本実施態様のゴム組成物は、一般的な方法で製造できる。例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどの一般的なゴム工業で使用される公知の混練機で、前記各成分のうち、架橋剤および加硫促進剤以外の成分を混練りした後、これに、架橋剤および加硫促進剤を加えてさらに混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0061】
本実施態様のゴム組成物は、耐久性に優れることから、ブラダー用ゴム組成物、インナーライナー、ウイングなどのタイヤ内部部材用ゴム組成物として使用することが好ましい。
【0062】
本実施態様のゴム組成物を用いたブラダーは、通常の方法により製造できる。すなわち、ゴム成分に対して前記の配合剤を必要に応じて配合した未加硫ゴム組成物を、押出し機により押出し成形し、ブラダーの形状に成形した後、架橋反応を行うことで製造することができる。
【0063】
タイヤ内部部材用ゴム組成物を用いたタイヤは、通常の方法により製造できる。すなわち、ゴム成分に対して前記の配合剤を必要に応じて配合した未加硫ゴム組成物を、タイヤ内部部材の形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。
【0064】
以上のように、本実施態様においては、例えば以下の〔1〕~〔12〕等を提供する。
【0065】
〔1〕ブチル系ゴムを80質量%以上含有するゴム成分100質量部に対し、ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドを0.1~10質量部、並びに樹脂を0.1~100質量部含有するゴム組成物であり、前記ω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミドを、20~80質量%のω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミド、並びに20~80質量%のステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩を含む混合物として含有するゴム組成物。
【0066】
〔2〕ブチル系ゴムを80質量%以上含有するゴム成分100質量部に対し、ω-9脂肪酸アミドを0.1~10質量部、および樹脂を0.1~100質量部含有するゴム組成物であり、前記ω-9脂肪酸アミドを、20~80質量%のω-9脂肪酸アミドおよび20~80質量%のステアリン酸カルシウムからなる溶融混合物として含有するゴム組成物。
【0067】
〔3〕ブチル系ゴムが非ハロゲン化ブチルゴム(IIR)である、〔1〕または〔2〕に記載のゴム組成物。
【0068】
〔4〕ω-9脂肪酸アミドが、オレイン酸アミドまたはエルカ酸アミドである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のゴム組成物。
【0069】
〔5〕ステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩が、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、またはステアリン酸亜鉛である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のゴム組成物。
【0070】
〔6〕樹脂が、粘着樹脂、相溶化樹脂、および架橋性樹脂からなる群から選ばれる1以上の樹脂である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のゴム組成物。
【0071】
〔7〕粘着樹脂が、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、およびアクリル樹脂からなる群から選ばれる1以上の粘着樹脂である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のゴム組成物。
【0072】
〔8〕軟化点が130℃以下の樹脂を含む〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のゴム組成物。
【0073】
〔9〕軟化点が130℃以下の樹脂を含み、プロセスオイルおよび液状ポリマーの少なくとも1種を含み、軟化点が130℃以下の樹脂、プロセスオイル、および液状ポリマーの合計含有量が10質量部以上である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のゴム組成物。
【0074】
〔10〕4質量部以上のプロセスオイルを含有する〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のゴム組成物。
【0075】
〔11〕〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のゴム組成物で構成される、タイヤ加硫用またはタイヤ成形用のブラダー。
【0076】
〔12〕〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のゴム組成物で構成される、タイヤ内部部材。
【実施例】
【0077】
実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定して解釈されるものではない。
【0078】
実施例および比較例で使用した各種薬品について説明する。
オレイン酸アミド:日油(株)製のアルフローE-10(透明融点:74℃)
ステアリン酸カルシウム:日油(株)製のカルシウムステアレートG(透明融点:154℃)
12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム:日油(株)製のカルシウムヒマステ(透明融点:152℃)
ステアリン酸アミド:日油(株)製のアルフローS-10(透明融点:103℃)
エルカ酸アミド:日油(株)製のアルフローP-10(透明融点:82℃)
IIR:エクソンモービル化学社製のBUTYL268(イソプレンの含有量:1.70モル%、非ハロゲン化ブチルゴム)
CR:昭和電工(株)製のネオプレンW
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(N2SA:114m2/g)
粘着樹脂:ヤスハラケミカル(株)製のクリアロンP85(水添ポリテルペン樹脂、軟化点:85℃、Tg:43℃)
相溶化樹脂:ストラクトール社製の40MS(スチレン・エチレン・プロピレンの共重合樹脂、軟化点:102℃、Tg:62℃)
キャスターオイル:伊藤製油(株)製の工業用1号ヒマシ油
プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH-24
液状ポリマー:(株)クラレ製のL-SBR820(液状SBR、Mw:10000)
ステアリン酸:日油(株)製つばき
離型剤1:ストラクトール社製のEF44(脂肪酸亜鉛、透明融点:103℃)
離型剤2:ストラクトール社製のWB16(脂肪酸カルシウム塩、脂肪酸モノエタノールアミドおよび脂肪酸モノエタノールアミドのエステルとの混合物、透明融点:101℃)
老化防止剤1:川口化学工業(株)製のアンチテーゼW-500(2,2’-メチレン-ビス-(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール))
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
架橋性樹脂:田岡化学工業(株)製のタッキロール201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、軟化点:78~93℃)
【0079】
常温による単純混合物の調製
表1に記載のアミドと脂肪酸金属塩を別々に製造したもの(粉体0.5mm以下径)を常温にて混合した。
【0080】
【0081】
実施例および比較例
表2に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度160℃で5分間混練りし、混練物を得た。さらに、得られた混練物を前記バンバリーミキサーにより、排出温度150℃で4分間、再度混練りした(リミル)。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を190℃で20分間プレス加硫することで、試験用ゴム組成物を作製した。得られた未加硫ゴム組成物および試験用ゴム組成物について下記の評価を行った。結果を表2に示す。
【0082】
粘度指数
各リミル後の未加硫ゴム組成物について、JIS K 6300-1の「未加硫ゴム-物理特性-第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じたムーニー粘度の測定方法に従い、130℃の温度条件にて、ムーニー粘度(ML1+4)を測定した。結果は比較例1のムーニー粘度の逆数を100として指数表示した。粘度指数が大きいほどムーニー粘度が低いことを示す。なお、100以上を性能目標値とする。
【0083】
離型性指数
1.7Lバンバリーミキサーにおける混練時の、未加硫ゴム組成物とローター金属およびミキサー内壁との密着程度を目視および引き剥がし作業時間により評価した。結果は比較例1の離型性を100として指数表示した。離型性指数が大きいほど離型性に優れることを示す。なお、105以上を性能目標値とする。
【0084】
耐久性指数
各試験用ゴム組成物からJIS-K6251に準じて3号ダンベル試験片を作製し、引っ張り試験を実施した。破断時の伸び(EB)を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数の値が高いほど、ゴム強度が高く、耐久性に優れることを示す。
【0085】
【0086】
表2の結果より、ゴム成分100質量部に対し、ω-9脂肪酸アミドまたはステアリン酸アミドを0.1~10質量部、並びに樹脂を0.1~100質量部含有するゴム組成物であり、前記ω-9脂肪酸アミドまたはステアリン酸アミドを、20~80質量%のω-9脂肪酸アミドまたはステアリン酸アミドと20~80質量%のステアリン酸またはヒドロキシステアリン酸の金属塩を含む混合物として含有するブチル系ゴムを80質量%以上含有するゴム組成物が、加工性、離型性および耐久性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
ブチル系ゴムを80質量%以上含有するゴム成分100質量部に対し、所定量のω-9脂肪酸アミドおよび/またはステアリン酸アミド、並びに樹脂を含有する本発明のゴム組成物は、加工性、離型性および耐久性に優れる。