(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】不整地走行用の二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20220315BHJP
B60C 11/11 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B60C11/03 E
B60C11/11 A
B60C11/03 C
(21)【出願番号】P 2018015491
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】白神 和也
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-173459(JP,A)
【文献】特開2012-245934(JP,A)
【文献】特開2012-025307(JP,A)
【文献】特開平08-332809(JP,A)
【文献】特開2014-213686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有する不整地走行用の二輪車用タイヤであって、
前記トレッド部は、回転方向が指定され、
少なくとも、前記トレッド部の一方のトレッド端とタイヤ赤道との間の領域において、前記タイヤ赤道と前記トレッド端との間に配された複数のミドルブロックと、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向外側に配された複数のショルダーブロックと、前記ミドルブロックと前記ショルダーブロックとをつなぐタイバーとが設けられており、
前記複数のショルダーブロックは、踏面のタイヤ軸方向の外端が前記トレッド端を構成する第1ショルダーブロックと、踏面のタイヤ軸方向の外端が前記トレッド端よりもタイヤ軸方向内側に位置する第2ショルダーブロックとを含み、
前記タイバーは、前記ミドルブロックを前記第1ショルダーブロックに連結する第1タイバーと、前記ミドルブロックを前記第2ショルダーブロックに連結する第2タイバーとを
含み、
前記第1タイバー及び前記第2タイバーのそれぞれは、前記トレッド端側からタイヤ赤道側に向かって、前記回転方向の先着側に傾斜している、
不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記第2タイバーは、前記第1タイバーが連結していない前記ミドルブロックに連結している、請求項1記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記第1タイバー及び前記第2タイバーのそれぞれは、タイヤ周方向に対して20~80°の角度で傾斜している、請求項1又は2記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記第2タイバーの前記角度は、前記第1タイバーの前記角度よりも小さい、請求項3記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記トレッド部には、複数の前記第1タイバーが設けられ、
前記複数の第1タイバーの少なくとも1つにおいて、その長さ方向と直交する向きの幅が前記ミドルブロックから前記第1ショルダーブロックに向かって漸増している、請求項1ないし4のいずれかに記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記トレッド部には、複数の前記第2タイバーが設けられ、
前記複数の第2タイバーの少なくとも1つにおいて、その長さ方向と直交する向きの幅が前記ミドルブロックから前記第2ショルダーブロックに向かって漸減している、請求項1ないし5のいずれかに記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記タイバーの高さは、前記ミドルブロックの最大高さの0.5倍以下である、請求項1ないし6のいずれかに記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項8】
トレッド部を有する不整地走行用の二輪車用タイヤであって、
少なくとも、前記トレッド部の一方のトレッド端とタイヤ赤道との間の領域において、前記タイヤ赤道と前記トレッド端との間に配された複数のミドルブロックと、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向外側に配された複数のショルダーブロックと、前記ミドルブロックと前記ショルダーブロックとをつなぐタイバーとが設けられており、
前記複数のショルダーブロックは、踏面のタイヤ軸方向の外端が前記トレッド端を構成する第1ショルダーブロックと、踏面のタイヤ軸方向の外端が前記トレッド端よりもタイヤ軸方向内側に位置する第2ショルダーブロックとを含み、
前記タイバーは、前記ミドルブロックを前記第1ショルダーブロックに連結する第1タイバーと、前記ミドルブロックを前記第2ショルダーブロックに連結する第2タイバーとを含み、
前記第1タイバー及び前記第2タイバーのそれぞれは、前記ミドルブロックとの連結部分を有し、
前記第2タイバーの前記連結部分の幅は、前記第1タイバーの前記連結部分の幅よりも大きい、
不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項9】
トレッド部を有する不整地走行用の二輪車用タイヤであって、
前記トレッド部は、回転方向が指定され、
少なくとも、前記トレッド部の一方のトレッド端とタイヤ赤道との間の領域において、前記タイヤ赤道と前記トレッド端との間に配された複数のミドルブロックと、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向外側に配された複数のショルダーブロックと、前記ミドルブロックと前記ショルダーブロックとをつなぐタイバーとが設けられており、
前記複数のショルダーブロックは、踏面のタイヤ軸方向の外端が前記トレッド端を構成する第1ショルダーブロックと、踏面のタイヤ軸方向の外端が前記トレッド端よりもタイヤ軸方向内側に位置する第2ショルダーブロックとを含み、
前記タイバーは、前記ミドルブロックを前記第1ショルダーブロックに連結する第1タイバーと、前記ミドルブロックを前記第2ショルダーブロックに連結する第2タイバーとを含み、
前記第2タイバーは、前記第2ショルダーブロックの前記回転方向の先着側のブロック壁と連結する、
不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記第2タイバーの前記第2ショルダーブロックとの連結部分の幅は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック壁のタイヤ軸方向の幅の0.30~0.70倍である、請求項9記載の不整地走行用の二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車用タイヤであって、詳しくは、不整地走行に適した二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に、ミドルブロック及びショルダーブロックが設けられた不整地走行用モーターサイクルタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような従来のタイヤでは、比較的大きなキャンバー角での旋回時、ミドルブロックとショルダーブロックとの間のトレッド溝底面がタイヤ内腔側に凹むように弓形状に湾曲する傾向があった。そして、このような状態で旋回すると、ミドルブロック及びショルダーブロックの根本に応力が集中し、これらのブロックが損傷するという傾向があった。また、トレッド溝底面が上記の様に湾曲し易い場合、ショルダーブロックが接地するような大きなキャンバー角での旋回時、ライダーにフィードバックされる手応えが急変し、操縦安定性の低下を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、優れたブロック耐久性及び操縦安定性を発揮し得る不整地走行用の二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有する不整地走行用の二輪車用タイヤであって、少なくとも、前記トレッド部の一方のトレッド端とタイヤ赤道との間の領域において、前記タイヤ赤道と前記トレッド端との間に配された複数のミドルブロックと、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向外側に配された複数のショルダーブロックと、前記ミドルブロックと前記ショルダーブロックとをつなぐタイバーとが設けられており、前記複数のショルダーブロックは、踏面のタイヤ軸方向の外端が前記トレッド端を構成する第1ショルダーブロックと、踏面のタイヤ軸方向の外端が前記トレッド端よりもタイヤ軸方向内側に位置する第2ショルダーブロックとを含み、前記タイバーは、前記ミドルブロックを前記第1ショルダーブロックに連結する第1タイバーと、前記ミドルブロックを前記第2ショルダーブロックに連結する第2タイバーとを含む。
【0007】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記第2タイバーは、前記第1タイバーが連結していない前記ミドルブロックに連結しているのが望ましい。
【0008】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記トレッド部は、回転方向が指定され、前記第1タイバー及び前記第2タイバーのそれぞれは、前記トレッド端側からタイヤ赤道側に向かって、前記回転方向の先着側に傾斜しているのが望ましい。
【0009】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記第1タイバー及び前記第2タイバーのそれぞれは、タイヤ周方向に対して20~80°の角度で傾斜しているのが望ましい。
【0010】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記第2タイバー前記角度は、前記第1タイバーの前記角度よりも小さいのが望ましい。
【0011】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記トレッド部には、複数の前記第1タイバーが設けられ、前記複数の第1タイバーの少なくとも1つにおいて、その長さ方向と直交する向きの幅が前記ミドルブロックから前記第1ショルダーブロックに向かって漸増しているのが望ましい。
【0012】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記トレッド部には、複数の前記第2タイバーが設けられ、前記複数の第2タイバーの少なくとも1つにおいて、その長さ方向と直交する向きの幅が前記ミドルブロックから前記第2ショルダーブロックに向かって漸減しているのが望ましい。
【0013】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記タイバーの高さは、前記ミドルブロックの最大高さの0.5倍以下であるのが望ましい。
【0014】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記第1タイバー及び前記第2タイバーのそれぞれは、前記ミドルブロックとの連結部分を有し、前記第2タイバーの前記連結部分の幅は、前記第1タイバーの前記連結部分の幅よりも大きいのが望ましい。
【0015】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記トレッド部は、回転方向が指定され、前記第2タイバーは、前記第2ショルダーブロックの前記回転方向の先着側のブロック壁と連結するのが望ましい。
【0016】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤにおいて、前記第2タイバーの前記第2ショルダーブロックとの連結部分の幅は、前記第2ショルダーブロックの前記ブロック壁のタイヤ軸方向の幅の0.30~0.70倍であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤは、少なくとも、トレッド部の一方のトレッド端とタイヤ赤道との間の領域において、タイヤ赤道とトレッド端との間に配された複数のミドルブロックと、ミドルブロックのタイヤ軸方向外側に配された複数のショルダーブロックと、ミドルブロックとショルダーブロックとをつなぐタイバーとが設けられている。
【0018】
複数のショルダーブロックは、踏面のタイヤ軸方向の外端がトレッド端を構成する第1ショルダーブロックと、踏面のタイヤ軸方向の外端がトレッド端よりもタイヤ軸方向内側に位置する第2ショルダーブロックとを含む。タイバーは、ミドルブロックを第1ショルダーブロックに連結する第1タイバーと、ミドルブロックを第2ショルダーブロックに連結する第2タイバーとを含む。
【0019】
このようなタイバーは、ミドルブロックとショルダーブロックとの間のトレッド溝底面の剛性を高め、そこでの湾曲(バックリング)を抑制することができる。このため、各ブロックの根本に応力が集中し難くなり、ひいてはブロック耐久性が高められる。
【0020】
また、本発明では、上述のショルダーブロックの配置により、車体のキャンバー角が増加する旋回動作時において、第1ショルダーブロックと第2ショルダーブロックとは時間差を伴って接地する。従って、本発明の不整地走行用の二輪車用タイヤは、ショルダーブロックの接地によってライダーにフィードバックされる手応えが急変するのを抑制でき、ひいては優れた操縦安定性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の不整地走行用のタイヤの一実施形態を示す横断面図である。
【
図3】
図2のミドルブロック及びショルダーブロックの拡大図である。
【
図4】第1タイバー及び第2タイバーの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本発明の一実施形態を示す不整地走行用の二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態における横断面図が示されている。
図2は、タイヤ1のトレッド部2のトレッドパターンを示す展開図である。
図1は、
図2のA-A線断面図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、自動二輪車用であって、例えば、モトクロス競技に好適に用いられる。但し、本発明のタイヤ1は、このような使用態様に限定されるものではない。
【0023】
「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
【0024】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0025】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0026】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2は、横断面において、その外面がタイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲している。
【0027】
本実施形態のタイヤ1は、例えば、カーカス4及びベルト層5を具えている。これらには、公知の構成が適宜採用される。
【0028】
図2に示されるように、トレッド部2は、回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。回転方向Rは、例えば、サイドウォール部3(
図1に示す)に、文字又は記号で表示される。
【0029】
トレッド部2には、例えば、少なくとも一方のトレッド端Teとタイヤ赤道Cとの間の領域において、複数のミドルブロック9と、複数のショルダーブロック6と、ミドルブロック9とショルダーブロック6とをつなぐタイバー10とが設けられている。本実施形態では、他方のトレッド端Teとタイヤ赤道Cとの間の領域にも、同様のミドルブロック9及びショルダーブロック6並びにタイバーが配されている。トレッド端Teは、トレッド部2に配されたブロックの内、最もタイヤ軸方向外側に位置するブロックのタイヤ軸方向外側の端縁を意味する。
【0030】
図3には、複数のミドルブロック9及び複数のショルダーブロック6の拡大図が示されている。
図3に示されるように、複数のショルダーブロック6は、第1ショルダーブロック7と第2ショルダーブロック8とを含む。第1ショルダーブロック7は、踏面のタイヤ軸方向の外端7eがトレッド端Teを構成している。本実施形態では、複数の第1ショルダーブロック7について、その外端がタイヤ軸方向の同じ位置になるように配されている。第2ショルダーブロック8は、踏面のタイヤ軸方向の外端8eがトレッド端Teよりもタイヤ軸方向内側に位置している。
【0031】
第1ショルダーブロック7の外端7eから第2ショルダーブロック8の外端8eまでのタイヤ軸方向の距離である外端位置ずれ量L5(トレッド部2の外面に沿った位置ずれ量であり、以下、同様である。)は、例えば、トレッド展開半幅TWhの0.03~0.08倍であるのが望ましい。より望ましい態様では、外端位置ずれ量L5は、例えば、ショルダーブロック6のタイヤ軸方向の幅よりも小さいのが望ましい。トレッド展開半幅TWhは、トレッド部2を平面に展開したときのタイヤ赤道Cからトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離に相当する。
【0032】
タイバー10は、トレッド溝底面2dが部分的に隆起して構成されている。本実施形態のタイバー10の高さは、例えば、ミドルブロック9の最大高さの0.5倍以下であり、より望ましくは0.3倍以下である。タイバー10は、ミドルブロック9を第1ショルダーブロック7に連結する第1タイバー11と、ミドルブロック9を第2ショルダーブロック8に連結する第2タイバー12とを含む。
【0033】
このようなタイバー10は、ミドルブロック9とショルダーブロック6との間のトレッド溝底面2dの剛性を高め、そこでの湾曲(バックリング)を抑制することができる。このため、各ブロックの根本に応力が集中し難くなり、ひいてはブロック耐久性が高められる。
【0034】
また、本発明では、上述のショルダーブロック6の配置により、車体のキャンバー角が増加する旋回動作時において、第1ショルダーブロック7と第2ショルダーブロック8とは時間差を伴って接地する。従って、本発明のタイヤ1は、ショルダーブロック6の接地によってライダーにフィードバックされる手応えが急変するのを抑制でき、ひいては優れた操縦安定性を発揮することができる。
【0035】
本実施形態では、1つのミドルブロック9に1つのタイバー10が連結している。換言すれば、第2タイバー12は、第1タイバー11が連結していないミドルブロック9に連結している。このようなタイバー10の配置は、トレッド溝底面2dの全体の剛性を均一に高めるのに役立つ。
【0036】
第1タイバー11及び第2タイバー12は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している。本実施形態では、第1タイバー11と第2タイバー12とが同じ向きに傾斜している。望ましい態様では、第1タイバー11及び第2タイバー12のそれぞれは、トレッド端Te側からタイヤ赤道C側に向かって、回転方向Rの先着側に傾斜している。このような第1タイバー11及び第2タイバー12は、不整地走行時、トレッド溝底面2dに付着した土や泥をトレッド端Te側に案内し、これらを積極的に排出することができる。
【0037】
第1タイバー11及び第2タイバー12のそれぞれは、例えば、タイヤ周方向に対して20~80°の角度で傾斜している。具体的には、第1タイバー11は、例えば、タイヤ周方向に対して50~80°の角度θ1で傾斜しているのが望ましい。第2タイバー12は、例えば、タイヤ周方向に対して20~50°の角度θ2で傾斜しているのが望ましい。
【0038】
さらに望ましい態様では、第2タイバー12の角度θ2は、第1タイバー11の角度θ1よりも小さい。これにより、第2タイバー12によって第2ショルダーブロック8のタイヤ周方向の変形が抑制され、旋回時のトラクションが高められる。
【0039】
図4には、第1タイバー11及び第2タイバー12の拡大図が示されている。
図4に示されるように、第1タイバー11は、例えば、ミドルブロック9の回転方向Rの後着側のブロック壁9a、又は、トレッド端Te側のブロック壁9bに連結している。本実施形態の第1タイバー11は、上記後着側のブロック壁9aに連結している。第1タイバー11は、ミドルブロック9の上記後着側のブロック壁9aとトレッド端Te側のブロック壁9bとで構成される角部分を含んで連結されても良い。
【0040】
第1タイバー11は、例えば、第1ショルダーブロック7の回転方向Rの先着側のブロック壁7a、又は、タイヤ赤道C側のブロック壁7bに連結している。本実施形態の第1タイバー11は、例えば、第1ショルダーブロック7の上記先着側のブロック壁7aとタイヤ赤道C側のブロック壁7bとで構成される角部分を含んで連結されている。
【0041】
複数の第1タイバー11の少なくとも1つにおいて、その長さ方向と直交する向きの幅W1がミドルブロック9から第1ショルダーブロック7に向かって漸増しているのが望ましい。このような第1タイバー11は、トレッド溝底面2dの剛性をトレッド端Te側に向かって漸増させ、ひいてはライダーにフィードバックされる手応えが急変するのをさらに抑制することができる。
【0042】
本実施形態の第1タイバー11は、幅が滑らかに上記の向きに漸増することにより、例えば、ミドルブロック9から第1ショルダーブロックまで延びる直線状の2本のエッジを含んでいる。但し、第1タイバー11は、幅が上記の向きにステップ状に漸増するものでも良い。
【0043】
第1タイバー11のタイヤ軸方向の長さL1は、例えば、ミドルブロック9及びショルダーブロック6のタイヤ軸方向の幅よりも大きいのが望ましい。具体的には、第1タイバー11の上記長さL1は、例えば、トレッド展開半幅TWh(
図2に示す)の0.25~0.35倍であるのが望ましい。
【0044】
図4に示されるように、第2タイバー12は、例えば、ミドルブロック9の回転方向Rの後着側のブロック壁9a、又は、トレッド端Te側のブロック壁9bに連結している。本実施形態の第2タイバー12は、上記後着側のブロック壁9aに連結している。第2タイバー12は、ミドルブロック9の上記後着側のブロック壁9aとトレッド端Te側のブロック壁9bとで構成される角部分を含んで連結されても良い。
【0045】
第2タイバー12は、例えば、第2ショルダーブロック8の回転方向Rの先着側のブロック壁8aに連結している。第2タイバー12は、例えば、第2ショルダーブロック8のタイヤ赤道C側のブロック壁8bに連結しても良く、このブロック壁8bと上記回転方向Rの先着側のブロック壁8aとで構成される角部分を含んで連結されても良い。
【0046】
複数の第2タイバー12の少なくとも1つにおいて、その長さ方向と直交する向きの幅W2がミドルブロック9から第2ショルダーブロック8に向かって漸減しているのが望ましい。このような第2タイバー12は、不整地走行時の第2ショルダーブロック8付近の変更量を適度に増やし、トレッド溝底面2dに土や泥が保持されるのを抑制することができる。
【0047】
本実施形態の第2タイバー12は、幅が滑らかに上記の向きに漸減することにより、例えば、ミドルブロック9から第2ショルダーブロック8まで延びる直線状の2本のエッジを含んでいる。但し、第2タイバー12は、幅が上記の向きにステップ状に漸減するものでも良い。
【0048】
本実施形態の第2タイバー12のミドルブロック9との連結部分の幅は、例えば、第1タイバー11のミドルブロック9との連結部分の幅よりも大きいのが望ましい。これにより、第1タイバー11付近と第2タイバー12付近とにおいて、不整地走行時のトレッド溝底面2dの変形量が相違する。従って、不整地走行時、トレッド溝底面2dから土や泥が排出され易くなる。
【0049】
第2タイバー12の第2ショルダーブロック8との連結部分の幅W2aは、第2タイバー12が連結する第2ショルダーブロック8のブロック壁のタイヤ軸方向の幅W3の0.30~0.70倍であるのが望ましい。
【0050】
図3に示されるように、本実施形態では、少なくとも一部の領域において、第1ショルダーブロック7と第2ショルダーブロックとがタイヤ周方向に交互に設けられている。これにより、第1タイバー11と第2タイバー12とがタイヤ周方向に交互に設けられている。このようなタイバー10の配置は、トレッド溝底面2dの全体の剛性を均一に高めるのに役立つ。
【0051】
ショルダーブロック6は、例えば、トレッド端Teからトレッド展開半幅TWhの1/3の領域に設けられるのが望ましい。さらに望ましい態様では、トレッド端Teから各ショルダーブロック6のタイヤ軸方向内側の内端までのタイヤ軸方向の距離L2が、トレッド展開半幅TWhの0.18倍以下であるのが望ましい。これにより、最大キャンバー角付近で各ショルダーブロック6が大きなタイヤ軸方向の反力を発揮し、ひいては優れた旋回性が得られる。
【0052】
本実施形態のショルダーブロック6には、例えば、タイヤ軸方向にブロックを完全に横切る1本又は複数本のショルダーサイプ16が設けられている。本実施形態では、2本のショルダーサイプ16が設けられている。本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.5mm未満の切れ込みを意味する。
【0053】
望ましい態様では、2本のショルダーサイプ16のタイヤ周方向の間隔が、トレッド端Te側に向かって漸増しているのが望ましい。このようなショルダーサイプ16の配置は、ショルダーブロック6のトレッド端Te側の剛性を維持し、トレッド端Teが接地する旋回時において優れた操縦安定性を発揮するのに役立つ。
【0054】
ミドルブロック9は、例えば、第1タイバー11と連結する第1ミドルブロック13と第2タイバー12と連結する第2ミドルブロック14とを含んでいる。第1ミドルブロック13は、例えば、第2ミドルブロック14よりもタイヤ赤道C側に設けられている。より具体的には、第1ミドルブロック13の踏面の図心が、第2ミドルブロック14の踏面の図心よりもタイヤ赤道C側に位置している。また、本実施形態では、第1ミドルブロック13と第2ミドルブロック14とは、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0055】
第1ミドルブロック13は、少なくとも1つの第2ミドルブロック14とタイヤ軸方向でオーバーラップしているのが望ましい。タイヤ赤道Cから第1ミドルブロック13の図心までのタイヤ軸方向の距離L3は、例えば、トレッド展開半幅TWhの0.40~0.55倍であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから第2ミドルブロック14の図心までのタイヤ軸方向の距離L4は、例えば、トレッド展開半幅TWhの0.60~0.80倍であるのが望ましい。
【0056】
ミドルブロック9には、例えば、U字状に曲がったミドルサイプ17が設けられているのが望ましい。本実施形態では、ミドルサイプ17の両端が、例えば、ミドルブロック9のタイヤ赤道C側のブロック壁9cに連通している。このようなミドルサイプ17は、多方向の摩擦力を提供しつつ、ミドルブロック9のトレッド端Te側の剛性を維持し、優れた操縦安定性を発揮するのに役立つ。
【0057】
図2に示されるように、トレッド部2には、タイヤ軸方向の中央部に複数のクラウンブロック20が設けられているのが望ましい。本実施形態のクラウンブロック20は、例えば、踏面の図心が、タイヤ赤道Cを中心にトレッド展開半幅TWhの0.60倍の幅の領域に配されているのが望ましい。望ましい態様では、クラウンブロック20の全体が上記領域内に配される。
【0058】
クラウンブロック20は、例えば、形状の異なる第1クラウンブロック21及び第2クラウンブロック22を含んでいる。本実施形態では、第1クラウンブロック21と第2クラウンブロック22とは、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0059】
第1クラウンブロック21は、例えば、回転方向Rの先着側のブロック壁21aが、回転方向Rの後着側に凹んでいるのが望ましい。このような第1クラウンブロック21は、不整地走行時のトラクションを高めることができる。
【0060】
第1クラウンブロック21は、例えば、タイヤ軸方向の中央部に幅広溝23が設けられているのが望ましい。幅広溝23のタイヤ軸方向の最大の幅W5は、例えば、第1クラウンブロック21のタイヤ軸方向の最大の幅W4の0.30~0.50倍であるのが望ましい。
【0061】
幅広溝23は、例えば、回転方向Rの後着側に向かって幅が漸増しているのが望ましい。このような幅広溝23は、ブロック壁21aが捕まえた土を適度に回転方向Rの後着側に逃がすことができ、トレッド溝底面に泥が保持されるのを抑制することができる。
【0062】
第2クラウンブロック22は、例えば、タイヤ周方向の長さ及びタイヤ軸方向の長さが、第1クラウンブロック21よりも小さい。このような第2クラウンブロック22は、路面に刺さり易く、比較的硬質の不整地でトラクションを高めることができる。
【0063】
以上、本発明の一実施形態の不整地走行用の二輪車用タイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0064】
図1のトレッドパターンを有する不整地走行用の自動二輪車用の後輪タイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例1として、
図5に示されるように、ミドルブロックaとショルダーブロックbとの間にタイバーが設けられていないタイヤが試作された。
図5のタイヤは、上記の点を除き、
図1のタイヤと実質的に同じである。比較例2として、
図6に示されるように、各ショルダーブロックcがトレッド端Teを構成しているタイヤが試作された。
図6のタイヤは、上記の点を除き、
図1のタイヤと実質的に同じである。各テストタイヤのブロック耐久性及び操縦安定性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
タイヤサイズ:120/80-19
リムサイズ:2.10×19
内圧:80kPa
テスト車両:排気量450cc モトクロス競技車両
【0065】
<ブロック耐久性>
各テストタイヤを、縦荷重1.95kN、速度50km/hで直径1.7mのドラム上でミドルブロック及びショルダーブロックを接地させて走行させ、ブロック欠けが発生するまでの走行距離が測定された。評価は、比較例1の値を100とする指数であり、数値が大きい程、ブロック耐久性が優れていることを示す。
【0066】
<操縦安定性>
上記テスト車両で不整地を走行したときの操縦安定性が、テストライダーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点であり、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0067】
【0068】
テストの結果、実施例のタイヤは、ブロック耐久性及び操縦安定性が向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0069】
2 トレッド部
6 ショルダーブロック
7 第1ショルダーブロック
8 第2ショルダーブロック
9 ミドルブロック
10 タイバー
11 第1タイバー
12 第2タイバー
C タイヤ赤道
Te トレッド端