(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】旋回制御装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20220315BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20220315BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20220315BHJP
F15B 11/028 20060101ALI20220315BHJP
B66C 23/86 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
E02F9/22 C
F15B11/02 C
F15B11/08 A
F15B11/028 G
B66C23/86 A
(21)【出願番号】P 2018028847
(22)【出願日】2018-02-21
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柚本 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】山下 耕治
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-222384(JP,A)
【文献】実開平05-027301(JP,U)
【文献】特開2009-127313(JP,A)
【文献】特開2000-328603(JP,A)
【文献】特開平10-299034(JP,A)
【文献】特開2009-133194(JP,A)
【文献】特開2011-001871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/00- 3/96
9/00- 9/28
F15B 11/00-11/22
B66C 23/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体を備える建設機械の旋回制御装置であって、
作動油を吐出するポンプと、
前記ポンプから作動油が供給されることで前記旋回体を旋回させる旋回モータと、
前記旋回体の旋回状態を検出する旋回状態センサと、
前記旋回体のハンチングを抑制する動作であるハンチング抑制動作を行うハンチング抑制手段と、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記旋回状態センサが検出した旋回状態から取得した、前記旋回体の振動の周波数、振幅、および継続時間
、ならびに前記コントローラに予め設定されたハンチング検出範囲に基づいて、ハンチングが検出されたか否かを判定するハンチング判定処理と、
前記ハンチング判定処理でハンチングが検出されたと判定した場合に、ハンチングが検出された時の前記建設機械の状態に基づいて決定される条件であるハンチング発生条件を記憶する条件記憶処理と、
前記建設機械の状態が前記ハンチング発生条件を満たすか否かを判定する条件判定処理と、
前記条件判定処理で前記ハンチング発生条件を満たすと判定した場合に、前記ハンチング抑制手段に前記ハンチング抑制動作を行わせるハンチング抑制処理と、
を実行する、
旋回制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の旋回制御装置であって、
前記コントローラは、前記条件判定処理で前記ハンチング発生条件を満たさないと判定した場合に、前記ハンチング抑制手段に前記ハンチング抑制動作を行わせない、
旋回制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の旋回制御装置であって、
前記旋回モータを作動させる指令を、操作量に応じて出力する旋回操作部と、
前記旋回操作部の操作量を検出する旋回操作量センサと、
を備え、
前記ハンチング発生条件には、前記旋回操作量センサに検出された前記旋回操作部の操作量が含まれる、
旋回制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の旋回制御装置であって、
前記ハンチング抑制手段は、前記ハンチング抑制動作を行う場合に、前記ハンチング抑制動作を行わない場合に比べ、前記ポンプの吐出圧の変化量に対する前記ポンプの流量の変化量が減少するように前記ポンプの流量を減らす、
旋回制御装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の旋回制御装置であって、
前記ハンチング抑制手段は、前記ハンチング抑制動作を行う場合に、前記ハンチング抑制動作を行わない場合に比べ、前記ポンプの吐出圧の変化量に対する前記ポンプの流量の変化量が減少するように前記ポンプの流量を増やす、
旋回制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の旋回制御装置であって、
前記ハンチング抑制処理を実行するか否かを指令する選択部を備え、
前記コントローラは、
前記条件判定処理で前記ハンチング発生条件を満たすと判定し、かつ、前記ハンチング抑制処理を実行することが前記選択部で選択されている場合、前記ハンチング抑制処理を実行し、
前記ハンチング抑制処理を実行しないことが前記選択部で選択されている場合、前記ハンチング発生条件を満たすか否かにかかわらず、前記ハンチング抑制処理を実行しない、
旋回制御装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の旋回制御装置であって、
前記コントローラに記憶された前記ハンチング発生条件をリセットする指令を出力するリセット部を備える、
旋回制御装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の旋回制御装置であって、
ハンチングが検出された時の、前記旋回体の周波数、振幅、継続時間、および、前記ハンチング発生条件を、前記建設機械の外部に送信する送信部を備える、
旋回制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回体の旋回を制御する旋回制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1、2などに、旋回体のハンチングの抑制を図った技術が記載されている。特許文献1に記載の技術では、旋回体の加速度変化を検出することで、ハンチングが発生したか否かが判定される(同文献の請求項1などを参照)。特許文献2に記載の技術では、運転席のシートの揺れを検出することで、ハンチングが発生したか否かが判定される(同文献の要約などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平05-027301号公報
【文献】特開平11-222384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、旋回体の加速度変化が基準値より大きい場合に、ハンチングの抑制を図った動作が行われる。しかし、旋回体の加速度変化が基準値より大きい場合に、旋回体のハンチングが発生するとは限らない。また、特許文献2に記載の技術では、シートの揺れが閾値を超えた場合に、ハンチングの抑制を図った動作が行われる。しかし、シートが揺れている場合に、旋回体がハンチングしているとは限らない。このように特許文献1、2に記載の技術では、ハンチングの検出の確実性が不十分である。
【0005】
また、特許文献2に記載の技術では、ハンチングが発生した後に、ハンチングの抑制を図った動作が行われる。そのため、ハンチングへの対処の遅れが問題となる。
【0006】
そこで、本発明は、ハンチングの検出の確実性を高くでき、ハンチング発生以前にハンチングに対処できる、旋回制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の旋回制御装置は、旋回体を備える建設機械に設けられる。旋回制御装置は、ポンプと、旋回モータと、旋回状態センサと、ハンチング抑制手段と、コントローラと、を備える。前記ポンプは、作動油を吐出する。前記旋回モータは、前記ポンプから作動油が供給されることで前記旋回体を旋回させる。前記旋回状態センサは、前記旋回体の旋回状態を検出する。前記ハンチング抑制手段は、前記旋回体のハンチングを抑制する動作であるハンチング抑制動作を行う。前記コントローラは、ハンチング判定処理と、条件記憶処理と、条件判定処理と、ハンチング抑制処理と、を実行する。前記ハンチング判定処理は、前記旋回状態センサが検出した旋回状態から取得した、前記旋回体の振動の周波数、振幅、および継続時間に基づいて、ハンチングが検出されたか否かを判定する処理である。前記条件記憶処理は、前記ハンチング判定処理でハンチングが検出されたと判定した場合に、ハンチング発生条件を記憶する。前記ハンチング発生条件は、ハンチングが検出された時の前記建設機械の状態に基づいて決定される条件である。条件判定処理は、前記建設機械の状態が前記ハンチング発生条件を満たすか否かを判定する処理である。前記ハンチング抑制処理は、前記条件判定処理で前記ハンチング発生条件を満たすと判定した場合に、前記ハンチング抑制手段に前記ハンチング抑制動作を行わせる処理である。
【発明の効果】
【0008】
上記構成により、ハンチングの検出の確実性を高くでき、ハンチング発生以前にハンチングに対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】旋回制御装置10を有する建設機械1の回路図である。
【
図2】
図1に示すポンプ21の吐出圧と流量との関係を示す図である。
【
図3】
図1に示す旋回制御装置10の作動のフローチャートである。
【
図4】
図1に示す旋回体5の減速時のハンチングを示す図であり、旋回体5の旋回速度の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1~
図4を参照して、
図1に示す旋回制御装置10を備える建設機械1について説明する。
【0011】
建設機械1は、建設作業などを行う機械であり、例えばショベルである。建設機械1は、旋回体5と、旋回制御装置10と、を備える。旋回体5(慣性体、上部旋回体)は、下部走行体(図示なし)よりも上に配置され、下部走行体に対して旋回可能である。下部走行体は、建設機械1を走行させる部分であり、例えばクローラ(図示なし)を備える。
【0012】
旋回制御装置10は、旋回体5の旋回を制御する装置である。旋回制御装置10は、エンジン11と、ポンプ21と、レギュレータ23(ハンチング抑制手段)と、旋回モータ25と、コントロールバルブ27と、旋回操作部31と、走行操作部33と、を備える。また、旋回制御装置10は、センサ40と、選択部51と、リセット部52と、送信部53と、コントローラ60と、を備える。
【0013】
エンジン11は、建設機械1の駆動源であり、ポンプ21の駆動源である。
【0014】
ポンプ21は、作動油を吐出する油圧ポンプである。ポンプ21は、複数の油圧アクチュエータ(旋回モータ25を含む)の油圧源である。ポンプ21は、可変容量型である。
【0015】
レギュレータ23(ハンチング抑制手段)(ポンプレギュレータ)は、ポンプ21の容量を制御することで、ポンプ21が吐出する作動油の流量を制御する。レギュレータ23は、例えば弁(流量制御弁)であり、例えば比例弁である。レギュレータ23は、ハンチング抑制動作(後述)を行う。
【0016】
旋回モータ25は、下部走行体(図示なし)に対して旋回体5を旋回させる。旋回モータ25は、減速機(図示なし)を介して旋回体5を旋回させる。旋回モータ25は、ポンプ21から作動油が供給されることで作動する油圧モータである。
【0017】
コントロールバルブ27は、旋回モータ25の作動を制御する。コントロールバルブ27は、ポンプ21から旋回モータ25に供給される作動油の、方向および流量を制御する弁である。コントロールバルブ27は、ポンプ21と旋回モータ25との間(油路における間)に設けられる。
【0018】
旋回操作部31は、旋回体5を操作するための装置である。旋回操作部31は、旋回体5の旋回方向および旋回速度を操作するための装置である。旋回操作部31は、建設機械1の操作者に操作される。旋回操作部31は、例えばリモコン弁であり、例えば操作レバーを有する(走行操作部33も同様)。旋回操作部31は、操作量(レバー操作量)に応じて、コントロールバルブ27を制御する指令(例えばパイロット油圧)を出力する。
【0019】
走行操作部33は、下部走行体(図示なし)を操作するための装置である。走行操作部33は、下部走行体の走行方向および走行速度を操作するための装置である。走行操作部33は、建設機械1の操作者に操作される。走行操作部33は、操作量に応じて、下部走行体を制御する指令(例えばパイロット油圧)を出力する。
【0020】
センサ40には、ポンプ圧センサ41と、旋回状態センサ42と、旋回操作量センサ43と、走行操作量センサ44と、エンジン回転数センサ45と、作動油温度センサ46と、がある。
【0021】
ポンプ圧センサ41(ポンプ圧力検出装置)は、ポンプ21が吐出する作動油の圧力(吐出圧力、ポンプ圧P)を検出する。
【0022】
旋回状態センサ42は、旋回体5の旋回状態を検出する。旋回状態センサ42は、下部走行体に対する旋回体5の旋回方向における、旋回体5の揺れを検出する。例えば、旋回状態センサ42は、旋回方向における旋回体5の角速度(旋回角速度)を検出する。例えば、旋回状態センサ42は、旋回方向における旋回体5の加速度(旋回加速度)を検出する。例えば、旋回状態センサ42は、下部走行体に対する旋回体5の角度(旋回角度)を検出する。
【0023】
この旋回状態センサ42は、例えば、ジャイロセンサである。旋回状態センサ42がジャイロセンサの場合、旋回状態センサ42は、旋回角速度および旋回加速度を検出できる。旋回状態センサ42がジャイロセンサの場合、旋回状態センサ42を、旋回体5の様々な位置に容易に取り付けることができる。この場合、旋回状態センサ42を、例えば運転室(図示なし)の内部などに取り付けることができる。一方、旋回状態センサ42がエンコーダの場合、旋回状態センサ42は、旋回モータ25または減速機(図示なし)の回転軸に取り付けられることが考えられる。この場合、旋回モータ25または減速機の種類(機種)を変える際、旋回状態センサ42の取り付け部分の設計を変える必要が生じ得る。また、この場合、旋回モータ25または減速機の周囲を加工する必要が生じ得る。よって、旋回状態センサ42がエンコーダの場合に比べ、旋回状態センサ42がジャイロセンサの場合は、旋回体5への取り付けが容易であり、取り付け、設計、加工などのコストを抑制できる。なお、旋回状態センサ42は、エンコーダでもよい。
【0024】
旋回操作量センサ43は、旋回操作部31の操作量(旋回操作量)(例えば旋回用レバー操作量)を検出する。例えば、旋回操作量センサ43は、旋回操作部31が出力するパイロット油圧を検出してもよい。さらに詳しくは、旋回操作量センサ43は、旋回操作部31とコントロールバルブ27とにつながれるパイロットラインの圧力を検出してもよい。旋回操作量センサ43は、旋回操作部31の操作レバーの角度を検出してもよい。
【0025】
走行操作量センサ44は、走行操作部33の操作量(走行操作量)(例えば走行用レバー操作量)を検出する。走行操作量センサ44は、旋回操作量センサ43と同様に、パイロット油圧を検出してもよく、操作レバーの角度を検出してもよい。
【0026】
エンジン回転数センサ45は、エンジン11の回転数を検出する。その結果、エンジン回転数センサ45は、ポンプ21の回転数を検出する。例えば、エンジン回転数センサ45は、エンジン11に入力される回転数の指令を検出してもよい。例えば、エンジン回転数センサ45は、エンジン11に回転数の指令を出力するコントローラ60でもよい。
【0027】
作動油温度センサ46は、旋回モータ25に供給される作動油の温度を検出する。
【0028】
選択部51は、ハンチング抑制処理(後述)を実行するか否か(要否、有効か無効か)を指令する。選択部51は、例えば、操作者に操作されるスイッチまたはボタンなどである(リセット部52も同様)。選択部51は、物理的なスイッチまたはボタンなどでもよく、モニタ(図示なし)に表示されたスイッチまたはボタンなどでもよい(リセット部52も同様)。選択部51は、何らかの条件が満たされた場合に自動的に指令を出力するものでもよい(リセット部52も同様)。リセット部52は、ハンチング発生条件(後述)をリセット(消去)する指令を出力する。送信部53は、建設機械1の外部に情報を送信する(後述)。
【0029】
コントローラ60は、信号の入出力、判定および算出などの演算、並びに情報の記憶などを行う。コントローラ60には、センサ40の検出信号、選択部51の指令、およびリセット部52の指令が入力される。コントローラ60は、送信部53に情報を出力する。コントローラ60は、アクチュエータ(旋回モータ25を含む)の作動に必要な流量を演算する。コントローラ60は、レギュレータ23を制御することで、ポンプ21の容量を制御する。その結果、コントローラ60は、ポンプ21から吐出される作動油の流量(ポンプ21の回転数と容量とに比例)を制御する。
【0030】
(作動)
旋回制御装置10は、次のように作動する。以下では、上記の建設機械1の各構成要素については
図1を参照して説明し、
図2に示すフローチャートの各ステップについては
図2を参照して説明する。
【0031】
(走行操作量判定処理(S10))
ステップS10では、コントローラ60は、走行操作部33の操作量(走行操作量)(例えば走行用レバー操作量)を判定する(走行操作量判定処理)。具体的には、走行操作量センサ44で検出された走行操作量が、閾値T1未満か否かが判定される。閾値T1は、コントローラ60に予め設定される(下記の閾値T2および閾値T3も同様)。この判定を行う理由は次の通りである。旋回体5は、旋回操作部31が操作されると、下部走行体に対して旋回する。また、旋回体5は、走行操作部33が操作されると、地面に対して旋回する場合がある。例えば、左右のクローラ(図示なし)が互いに逆向きに回転する場合など、左右のクローラの走行速度が相違する場合には、旋回体5は、地面に対して旋回する。ここで、旋回制御装置10では、下部走行体に対する旋回体5の旋回方向におけるハンチングの抑制を図っている。一方、旋回状態センサ42がジャイロセンサの場合は、旋回体5の旋回が、下部走行体に対する旋回か、地面に対する旋回か、判別できない。そこで、コントローラ60は、走行操作量を判定する。走行操作量が閾値T1未満の場合(YESの場合)は、ステップS20に進む。走行操作量が閾値T1以上の場合(NOの場合)は、ステップS20以降の処理を行わず、今回のフローを終了する(スタートに戻る)。なお、旋回状態センサ42がエンコーダの場合は、走行操作量判定処理(S10)を行う必要はない。
【0032】
(ハンチング判定処理(S20))
ステップS20では、コントローラ60は、ハンチングが検出されたか否かを判定する(ハンチング判定処理)。ハンチングは、操作者の意図に反して(操作者が旋回体5を振動させるような操作をしていない場合に)、旋回体5が旋回方向に振動する動作である。ハンチングは、旋回体5が旋回方向に加速(旋回加速)する時に発生する場合がある。ハンチングは、旋回体5が旋回方向に減速(旋回減速)する時に発生する場合がある。なお、以下では、旋回加速を単に「加速」という場合があり、旋回減速を単に「減速」という場合がある。ハンチングは、旋回モータ25に供給される作動油の流量が増減を繰り返すことで発生する。
図3に、旋回体5の減速時のハンチングの例を示す。
図3は、旋回体5の旋回速度と時間との関係を示すグラフである。
図3では、旋回体5の減速の開始時から、旋回速度が一定(または略一定)の周波数で増減している、すなわち旋回体5がハンチングしている。
【0033】
ハンチングが検出されたか否かの判定は、旋回体5の振動の周波数、振幅、および継続時間に基づいて行われる。コントローラ60は、旋回体5の振動の周波数、振幅、および継続時間を、旋回状態センサ42が検出した旋回状態から取得する。上記「取得」は、旋回状態センサ42の検出値からの直接的な取得でもよく、旋回状態センサ42の検出値を変換(演算)することによる取得(間接的な取得)でもよい。例えば、コントローラ60は、旋回状態センサ42が検出した旋回角速度を、周波数および振幅に変換してもよい。例えば、コントローラ60は、所定値以上の振幅の振動の継続時間を、コントローラ60が備えるタイマで測定してもよい。この振幅の「所定値」は、コントローラ60に予め設定される(他の所定値、所定時間なども同様)。
【0034】
ハンチングが検出されたか否かの判定は、具体的には例えば次のように行われる。コントローラ60には、「ハンチングが検出された」と判定する範囲(ハンチング検出範囲)が予め設定される。例えば、操作者が振動に気付きやすいハンチングの状態(周波数、振幅、および継続時間)は、ハンチング検出範囲内に設定される。具体的には例えば、振動の振幅が所定値以上であり、周波数が2~4Hzであり、継続時間が2秒以上である場合などが、ハンチング検出範囲内に設定される。具体的には例えば、4Hzよりも高い周波数の振動や、2秒未満の振動は、操作者が振動に気付きにくいため、ハンチング検出範囲外に設定される。なお、上記のハンチング検出範囲の具体的数値は一例にすぎず、様々に変更されてもよい。例えば、旋回体5の加速時と減速時とで、ハンチング検出範囲が相違してもよい。例えば、旋回体5の振動の周波数によって、ハンチング検出範囲内となる振幅が相違してもよい(継続時間についても同様)。
【0035】
ハンチングが検出された場合(S20でYESの場合)、ステップS31に進む。ハンチングが検出されない場合(NOの場合)、ステップS41に進む。
【0036】
(条件記憶処理(S31~S34))
コントローラ60は、ハンチング判定処理でハンチングが検出されたと判定した場合(S20でYESの場合)に、ハンチング発生条件を記憶する(条件記憶処理)。条件記憶処理の詳細は次の通りである。
【0037】
(加減速の操作の判定(S31、S32))
ステップS31では、コントローラ60は、旋回体5を加速させる操作(旋回加速操作)が検出されたか否かを判定する。さらに詳しくは、ハンチングが検出された時(S20でYESと判定された時)に、旋回加速操作が行われていたか否かが判定される。この判定は、旋回操作量センサ43で検出された旋回操作量に基づいて行われる。この判定では、旋回操作量が増加したか否かが判定される。具体的には、現在の(今回のフローの)旋回操作量が、所定時間前の(例えば前回のフローの)旋回操作量と閾値T2との和よりも大きいか否かが判定される。例えば、「今回の旋回操作量>(前回の旋回操作量+閾値T2)」であるか否かが判定される。旋回加速操作が検出された場合(YESの場合)、ステップS33に進む。旋回加速操作が検出されない場合(NOの場合)、ステップS32に進む。
【0038】
ステップS32では、コントローラ60は、旋回体5を減速させる操作(旋回減速操作)が検出されたか否かを判定する。さらに詳しくは、ハンチングが検出された時(S20でYESと判定された時)に、旋回減速操作が行われていたか否かが判定される。この判定は、旋回操作量センサ43で検出された旋回操作量に基づいて行われる。この判定では、旋回操作量が減少したか否かが判定される。具体的には、現在の(今回のフローの)旋回操作量が、所定時間前の(例えば前回のフローの)旋回操作量から閾値T3を引いた値よりも小さいか否かが判定される。例えば、「今回の旋回操作量<(前回の旋回操作量-閾値T3)」であるか否かが判定される。旋回減速操作が検出された場合(YESの場合)、ステップS34に進む。旋回加速操作も旋回減速操作も検出されない場合(S31およびS32でNOの場合)、今回のフローを終了する。旋回加速操作も旋回減速操作も検出されない場合、ハンチング発生条件の記憶(S33、S34)をしなくてもよく、ハンチング抑制処理(S43、S44)を実行しなくてもよい。なお、旋回加速操作も旋回減速操作も検出されない場合に、ステップS41に進んでもよい。
【0039】
(ハンチング発生条件の記憶(S33、S34))
コントローラ60は、ハンチング発生条件(
図2では「条件」)を記憶する。コントローラ60に記憶されるハンチング発生条件は、ハンチングが検出された時(ハンチング検出時)(S20でYESと判定された時)の建設機械1の状態に基づいて決定される。ハンチング発生条件は、ハンチング抑制処理(S43、S44)を行うか否かを決定するために用いられる。記憶されるハンチング発生条件には、ハンチング検出時の建設機械1の状態が含まれる。記憶されるハンチング発生条件には、ハンチング検出時の建設機械1の状態に近い状態が含まれることが好ましい。
【0040】
記憶されるハンチング発生条件には、ハンチングの発生のしやすさに影響のある内容(値、パラメータ)が含まれる。記憶されるハンチング発生条件には、例えば次の内容が含まれる。
【0041】
記憶されるハンチング発生条件には、ハンチング検出時に旋回操作量センサ43に検出された旋回操作量が含まれてもよい。記憶されるハンチング発生条件には、旋回操作量の大きさが含まれてもよく、旋回操作量の変化量が含まれてもよい。
【0042】
記憶されるハンチング発生条件には、ハンチング検出時に旋回加速操作が検出されたこと(S31でYESであること)が含まれてもよい。記憶されるハンチング発生条件には、ハンチング検出時に旋回減速操作が検出されたこと(S32でYESであること)が含まれてもよい。ステップS31でYESの場合は、加速時用のハンチング発生条件が記憶される(S33)。ステップS32でYESの場合は、減速時用のハンチング発生条件が記憶される(S34)。
【0043】
記憶されるハンチング発生条件には、ハンチング検出時にエンジン回転数センサ45で検出されたエンジン11の回転数(エンジン11回転数)が含まれてもよい。なお、エンジン11回転数によって、ポンプ21の回転数が変わり、ポンプ21から旋回モータ25に供給される作動油の流量が変わり、ハンチングの発生しやすさが変わる場合がある。例えば、エンジン11回転数が所定回転数以下の場合にハンチングが発生し、エンジン11回転数が所定回転数よりも大きい場合にはハンチングが発生しないことなどがある。
【0044】
記憶されるハンチング発生条件には、ハンチング検出時に作動油温度センサ46で検出された作動油の温度(作動油温度)が含まれてもよい。なお、作動油温度によって、作動油の粘度が変化し、作動油の圧力が変化する結果、ハンチングの発生しやすさが変わる場合がある。
【0045】
ハンチング発生条件には、範囲(幅)を持たせることが好ましい。ハンチング発生条件には、ハンチング検出時の建設機械1の状態に近い状態が含まれることが好ましい。具体的には例えば、ハンチング検出時にエンジン回転数センサ45で検出されたエンジン11回転数をNとしたとき、エンジン11回転数に関するハンチング発生条件の範囲を、N±100回/分などとする。また、例えば、ハンチング検出時に作動油温度センサ46で検出された温度をTとしたとき、作動油温度に関するハンチング発生条件の範囲を、T±10度などとする。
【0046】
コントローラ60は、ハンチング発生条件を記憶する際に、ハンチングの情報を記憶してもよい。コントローラ60は、ハンチングが検出された時のハンチング発生条件と、このハンチング自体の情報と、を記憶してもよい。例えば、上記「ハンチング自体の情報」は、ハンチング判定処理(S20)で判定に用いられた、旋回体5の振動の周波数、振幅、および継続時間である。
【0047】
ハンチング発生条件が記憶された後(S33、S34の後)、今回のフローを終了する。今回のフローで記憶したハンチング発生条件は、次回のフロー以降で(例えば次回以降の旋回時に)用いられる。この理由は、ハンチングが検出された時(S20でYESと判定された時)には、既にハンチングが発生した状態であり、今回のフローでハンチング抑制処理(S43、S44)を行っても間に合わないからである。なお、変形例として、今回のフローでハンチング抑制処理(S43、S44)を行ってもよい。
【0048】
(条件判定処理(S41、S42))
コントローラ60は、建設機械1の状態が、ハンチング発生条件を満たすか否かを判定する(条件判定処理)。コントローラ60は、現在の建設機械1の状態が、過去(前回のフロー以前、例えば前回の旋回以前)に記憶されたハンチング発生条件を満たすか否かを判定する。条件判定処理の詳細は、次の通りである。
【0049】
コントローラ60は、建設機械1の状態が、加速時用のハンチング発生条件を満たすか否か(S41)、および、減速時用のハンチング発生条件を満たすか否か(S42)を判定する。加速時用のハンチング発生条件を満たす場合(S41でYESの場合)、ステップS43に進む。減速時用のハンチング発生条件を満たす場合(S42でYESの場合)、ステップS44に進む。ハンチング発生条件を満たさない場合(S41およびS42でNOの場合)、今回のフローを終了する。この場合、ハンチング抑制処理(S43、S44)は行われない。なお、例えば、旋回加速操作が有ることと、旋回減速操作があることとが、ハンチング発生条件に含まれていない場合などには、加速時用と減速時用とに分けてハンチング発生条件を満たすか否かを判定する必要はない。
【0050】
(ハンチング抑制処理(S43、S44))
コントローラ60は、条件判定処理でハンチング発生条件を満たすと判定した場合(S41またはS42でYESの場合)に、ハンチング抑制処理を行う。ハンチング抑制処理は、レギュレータ23に、旋回体5のハンチングを抑制する動作(ハンチング抑制動作)を行わせる制御である。ハンチング抑制動作の概要は、次の通りである。コントローラ60は、ポンプ21の吐出圧(
図4に示すポンプ圧P)の変化量に対する、ポンプ21の流量(
図4に示すポンプ流量Q)の変化量が減少するように(ゲインが下がるように)、ポンプ21の流量を制御する。ハンチング抑制動作を行う場合は、ハンチング抑制動作を行わない場合に比べ、ポンプ21の流量を減らす(
図4の線
図Ba参照)、または増やす(
図4の線
図Bb参照)。ハンチング発生の原因の例、および、ハンチング抑制動作の詳細は次の通りである。
【0051】
(ハンチング発生の原因の例)
ポンプ21から吐出される作動油の流量(
図4に示すポンプ流量Q)が増減することで、旋回モータ25に供給される作動油の流量が増減し、旋回体5のハンチングが発生する場合がある。そこで、ポンプ流量Qの制御について説明する。コントローラ60は、ポンプ流量Qを、例えば次のように制御する。コントローラ60は、旋回モータ25を含むアクチュエータの操作量(レバー操作量)、および、ポンプ圧センサ41で検知したポンプ圧P(
図4参照)に基づいて、ポンプ流量Qを増減させる。例えば、コントローラ60は、レバー操作量に比例(または略比例)するように、ポンプ流量Qを増減させる。また、例えば、コントローラ60は、ポンプ圧Pに応じて、ポンプ流量Qを増減させる、PQ(Pressure - Quantity of flow)制御を行う。PQ制御の例は次の通りである。
図4に示すように、ポンプ圧Pとポンプ流量Qとの関係(PQ制御線図)が、コントローラ60に予め設定される。コントローラ60は、ポンプ圧センサ41で検出されたポンプ圧Pに対応する、ポンプ流量Qの目標値を、PQ制御線図に基づいて決定する。そして、コントローラ60は、実際のポンプ流量Qが、目標値のポンプ流量Qとなるように、レギュレータ23を制御する。
【0052】
図4では、ハンチング抑制動作が行われない場合のPQ制御線図を実線で示す。ハンチング抑制動作が行われる場合、PQ制御線図の一部が、
図4において破線で示す線
図Baまたは線
図Bbとなる。まず、ハンチング抑制動作が行われない場合のPQ制御について説明する。ポンプ圧Pが圧力P1未満の場合、ポンプ流量Qは、一定の流量Q1に制御される。ポンプ圧Pが圧力P1以上、圧力P2以下の場合、ポンプ21のトルク(ポンプ圧Pとポンプ流量Qとの積に比例)が一定(設定トルク)となるように、ポンプ流量Qが制御される。設定トルクは、コントローラ60に予め設定される。コントローラ60は、ポンプ圧Pおよびポンプ流量Qを、この設定トルクで制限する。ポンプ圧Pが圧力P2の場合、ポンプ流量Qは、流量Q2以下となる。
【0053】
PQ制御では、次のようにハンチングが発生する場合がある。例えば、旋回体5の減速時などに、ポンプ圧Pが、圧力P1未満から上昇し、圧力P1に到達する場合がある(経路A1を参照)。このとき、ポンプ圧Pおよびポンプ流量Qは、PQ制御線図の肩部分Sに到達する。そして、ポンプ圧Pが、圧力P1よりも高くなる。すると、PQ制御線図に沿ってポンプ流量Qが減る。ポンプ流量Qが減ることによって、ポンプ圧Pが低くなる。ポンプ圧Pが低くなると、PQ制御線図に沿って、ポンプ流量Qが増える。ポンプ流量Qが増えると、再びポンプ圧Pが高くなり、再びPQ制御線図に沿ってポンプ流量Qが減る。このように、ポンプ圧Pの増加、ポンプ流量Qの減少、ポンプ圧Pの減少、ポンプ流量Qの増加、ポンプ圧Pの増加・・・を繰り返す。その結果、旋回モータ25に供給される流量が増減し、旋回体5がハンチングする場合がある。このハンチングは、肩部分Sでの、ポンプ圧Pの変化に対するポンプ流量Qの変化の度合いが大きいほど(ゲインが大きいほど、変化が急峻であるほど)顕著に現れる。
【0054】
例えば、旋回体5の加速時などに、ポンプ圧Pが高い状態(少なくとも圧力P1よりも高い状態)から、ポンプ流量Qが増えるとともに、ポンプ圧Pが下がっていく場合がある(経路A2を参照)。この場合も、上記と同様に、ポンプ流量Qおよびポンプ圧Pが肩部分Sに到達すると、旋回体5がハンチングする場合がある。
【0055】
(ハンチング抑制動作の例)
そこで、ハンチング抑制動作では、ポンプ圧Pの変化に対するポンプ流量Qの変化量を減らし、肩部分Sの急峻な変化を和らげる。ハンチング抑制動作には、ポンプ流量減少制御と、ポンプ流量増加制御と、がある。
【0056】
(ポンプ流量減少制御(S43))
ポンプ流量減少制御は、ハンチング抑制動作を行わない場合のポンプ流量Qに比べ、ハンチング抑制動作を行う場合のポンプ流量Qを減らす制御である。例えば、ハンチング抑制動作を行わない場合のポンプ流量Qの最大値は、流量Q1である。一方、ハンチング抑制動作を行う場合のポンプ流量Qの最大値を、流量Q1よりも小さい流量Q1aにする(ポンプ流量Qを頭切りする)。具体的には例えば、PQ制御線図は、次のように設定される。ポンプ圧PがP1a以上の場合、ポンプ流量Qは、ハンチング抑制動作が行われない場合と同様に設定される。ポンプ圧PがP1a未満の場合は、ポンプ流量Qを流量Q1aで一定とする(
図4の線
図Baを参照)。
【0057】
ポンプ流量Qの最大値を減らすことで、ハンチング抑制動作を行わない場合の肩部分Sに比べ、ハンチング抑制動作を行う場合の肩部分Saでの、ポンプ圧Pの変化に対するポンプ流量Qの変化量が減る(急峻な変化が和らぐ、ゲインが下がる)。よって、旋回モータ25に供給される作動油の流量の増減を抑制できる。よって、旋回体5のハンチングを抑制できる。
【0058】
例えば、ポンプ流量減少制御は、ポンプ圧Pが、圧力P1aよりも高い状態から低い状態に変化する場合などに行われる。例えば、ポンプ流量減少制御は、ポンプ圧Pおよびポンプ流量Qが、経路A2をたどる場合などに行われる。例えば、ポンプ流量減少制御は、旋回体5の加速時などに行われる。
【0059】
(ポンプ流量増加制御(S44))
ポンプ流量増加制御は、ハンチング抑制動作を行わない場合のポンプ流量Qに比べ、ハンチング抑制動作を行う場合のポンプ流量Qを増やす制御である。例えば、ハンチング抑制動作を行わない場合のPQ制御の設定トルクに比べ、ハンチング抑制動作を行う場合のPQ制御の設定トルクを増やす。具体的には例えば、ハンチング抑制動作を行わない場合の設定トルクは、流量Q1と圧力P1との積に比例する大きさであった。一方、ハンチング抑制動作を行う場合の設定トルクは、流量Q1と、圧力P1よりも大きい圧力P1bと、の積に比例する大きさである。さらに具体的には、ポンプ圧Pが圧力P1以上、圧力P1b未満の場合は、ポンプ流量Qを流量Q1で一定とする。また、ポンプ圧Pが圧力P1b以上の場合は、圧力P1bと流量Q1との積から決まるトルクを維持する(
図4の線
図Bbを参照)。
【0060】
PQ制御の設定トルクを増やすことで、ハンチング抑制動作を行わない場合の肩部分Sに比べ、ハンチング抑制動作を行う場合の肩部分Sbでの、ポンプ圧Pの変化に対するポンプ流量Qの変化量が減る(急峻な変化が和らぐ、ゲインが下がる)。よって、旋回モータ25に供給される作動油の流量の増減を抑制でき、旋回体5のハンチングを抑制できる。
【0061】
例えば、ポンプ流量増加制御は、ポンプ圧Pが、圧力P1よりも低い状態から高い状態に変化する場合などに行われる。例えば、ポンプ流量増加制御は、ポンプ圧Pおよびポンプ流量Qが、経路A1をたどる場合などに行われる。例えば、ポンプ流量増加制御は、旋回体5の減速時などに行われる。
【0062】
(ハンチング抑制動作の変形例)
なお、ハンチング抑制動作は、上記の動作でなくてもよい。ハンチング抑制動作は、ハンチング抑制動作を行わない場合に対してPQ制御線図を変える動作である必要はない。例えば、ハンチング抑制動作は、コントロールバルブ27と旋回モータ25とにつながれる2本の油路を連通させる動作などでもよい。例えば、ハンチング抑制動作は、旋回操作部31の指令を変える動作(例えば、遅らせる、または小さくする)などでもよい。
【0063】
図2に示すように、ハンチング抑制処理(S43、S44)が行われると、今回のフローを終了する。
【0064】
ハンチング抑制処理(S43、S44)で行われるハンチング抑制動作は、旋回体5の挙動や操作性に影響を与える。さらに詳しくは、ハンチング抑制動作を行う場合、ハンチング抑制動作を行わない場合に対して、旋回体5の旋回の挙動が変化し、旋回体5の操作性が変化する。具体的には例えば、ハンチング抑制動作としてポンプ流量Qを減らした場合(
図4の線
図Ba参照)は、旋回体5の速度が下がる。ハンチング抑制動作としてポンプ流量Qを増やした場合(
図4の線
図Bb参照)は、旋回体5の速度が上がる。一方、旋回制御装置10では、ハンチング発生条件が満たされない場合(
図2に示すS41およびS42でNOの場合)は、ハンチング抑制動作は行われない。よって、ハンチング発生条件が満たされない場合は、旋回体5の挙動や操作性に、ハンチング抑制動作が影響を与えることはない。
【0065】
(選択部51の作動)
上記のハンチング抑制処理(S43、S44)を実行するか否かを、選択部51で選択できる。コントローラ60は、ハンチング発生条件が満たされ(S41またはS42でYES)、かつ、ハンチング抑制処理を実行することが選択部51で選択されている場合、ハンチング抑制処理(S43、S44)を実行する。コントローラ60は、ハンチング抑制処理(S43、S44)を実行しないことが選択部51で選択されている場合は、ハンチング発生条件が満たされるか否かにかかわらず、ハンチング抑制処理(S43、S44)を実行しない。ハンチング抑制処理(S43、S44)を実行しないことにより、旋回体5の挙動や操作性に、ハンチング抑制動作が影響を与えることはない。選択部51は、例えば建設機械1の操作者(ユーザ)に操作されてもよく、サービスマンなどによって操作されてもよい。
【0066】
ハンチング抑制処理(S43、S44)を実行しないことが選択部51で選択されている場合、ハンチング抑制処理(S43、S44)以外の処理が、行われてもよく、行われなくてもよい。例えば、この場合、ハンチング判定処理(S20)および条件記憶処理(S31~S34)が、行われてもよく、行われなくてもよい。例えば、この場合、条件判定処理(S41、S42)が行われてもよく、行われなくてもよい。
【0067】
(リセット部52の作動)
例えば、建設機械1の周囲の状態の変化(現場変更などによる環境条件の変化)や、建設機械1の装備品の変化などにより、ハンチングが発生する条件が変化する場合がある。その結果、コントローラ60に記憶されたハンチング発生条件と、実際にハンチングが発生する条件と、が相違する場合がある。そこで、リセット部52の指令により、コントローラ60に記憶されたハンチング発生条件をリセット(消去)できる。なお、ハンチング発生条件がリセットされる際に、ハンチングが検出された時の旋回体5の周波数、振幅、および継続時間の情報がリセットされてもよい。ハンチング発生条件がリセットされた後、ハンチングが検出された場合(S20でYESの場合)は、ハンチング発生条件が再記憶される(S33、S34)。
【0068】
(送信部53の作動)
送信部53は、ハンチングに関する情報を、建設機械1の外部に送信する。送信部53が送信する情報には、ハンチングが検出された時の、旋回体5の周波数、振幅、継続時間、および、ハンチング発生条件が含まれる。送信部53は、通信手段(無線および有線の少なくともいずれか)を介して、情報を送信する。送信部53は、ハンチングに関する情報を、いつ送信してもよく、例えばハンチングの検出時に送信してもよく、ハンチングの検出後に送信してもよい。送信部53は、インターネットを介して情報を送信してもよい。送信部53が送信する情報は、WEB(world wide web)を用いて閲覧などが可能なものでもよい。送信部53が送信した情報は、例えば、建設機械1の外部の外部記憶部M1に記憶される。外部記憶部M1は、例えば、建設機械1の稼働状況を管理するサーバなどである。ハンチングに関する情報が建設機械1の外部に送信されることで、建設機械1の外部の者が、ハンチングに関する情報を把握できる。建設機械1の外部の者は、例えば、建設機械1の管理者や設計者などである。例えば、ハンチングに関する情報を統計して、設計、開発などに利用できる(設計工程へフィードバックできる)。
【0069】
(効果)
図1に示す旋回制御装置10による効果は次の通りである。建設機械1の各構成要素については
図1を参照し、各ステップ(S10~S44)については
図2を参照して説明する。
【0070】
(第1の発明の効果)
旋回制御装置10は、旋回体5を備える建設機械1に設けられる。旋回制御装置10は、ポンプ21と、旋回モータ25と、旋回状態センサ42と、レギュレータ23(ハンチング抑制手段)と、コントローラ60と、を備える。ポンプ21は、作動油を吐出する。旋回モータ25は、ポンプ21から作動油が供給されることで旋回体5を旋回させる。旋回状態センサ42は、旋回体5の旋回状態を検出する。レギュレータ23は、旋回体5のハンチングを抑制する動作であるハンチング抑制動作を行う。コントローラ60は、ハンチング判定処理(S20)と、条件記憶処理(S31~S34)と、条件判定処理(S41、S42)と、ハンチング抑制処理(S43、S44)と、を実行する。
【0071】
[構成1-1]ハンチング判定処理(S20)では、コントローラ60は、旋回状態センサ42が検出した旋回状態から取得した、旋回体5の振動の周波数、振幅、および継続時間に基づいて、ハンチングが検出されたか否かを判定する。
【0072】
[構成1-2]条件記憶処理(S31~S34)では、コントローラ60は、ハンチング判定処理(S20)でハンチングが検出されたと判定した場合(YESの場合)に、ハンチング発生条件を記憶する。ハンチング発生条件は、ハンチングが検出された時の建設機械1の状態に基づいて決定される条件である。条件判定処理(S41、S42)では、コントローラ60は、建設機械1の状態がハンチング発生条件を満たすか否かを判定する。
【0073】
[構成1-3]ハンチング抑制処理(S43、S44)では、コントローラ60は、条件判定処理(S41またはS42)でハンチング発生条件を満たすと判定した場合(YESの場合)に、レギュレータ23にハンチング抑制動作を行わせる。
【0074】
上記[構成1-1]により、例えば旋回体5の加速度変化のみに基づいてハンチングを検出しようとする場合などに比べ、ハンチングを確実に検出できる。すなわち、ハンチングの検出の確実性を高くできる。
【0075】
旋回制御装置10は、上記[構成1-2]および[構成1-3]を備える。上記[構成1-2]により、ハンチングが検出されると、ハンチング発生条件がコントローラ60に記憶される。その後、上記[構成1-3]により、ハンチング発生条件が満たされると、ハンチング抑制動作が行われる。よって、ハンチングの発生以前であっても、ハンチング発生条件が満たされれば、ハンチング抑制動作が行われる。よって、ハンチング発生以前に、ハンチングに対処できる。なお、上記「発生以前」には、発生前と、発生しようとしている瞬間と、が含まれる。
【0076】
上記[構成1-1]、[構成1-2]、および[構成1-3]により、ハンチングを確実に抑制できる。
【0077】
(第2の発明の効果)
[構成2]コントローラ60は、条件判定処理(S41およびS42)でハンチング発生条件を満たさないと判定した場合(NOの場合)に、レギュレータ23にハンチング抑制動作を行わせない。
【0078】
上記[構成2]により、旋回体5の挙動や操作性に、ハンチング抑制動作が影響を与えることを防ぐことができる。
【0079】
(第3の発明の効果)
[構成3]旋回制御装置10は、旋回操作部31と、旋回操作量センサ43と、を備える。旋回操作部31は、旋回モータ25を作動させる指令を、操作量に応じて出力する。旋回操作量センサ43は、旋回操作部31の操作量を検出する。ハンチング発生条件には、旋回操作量センサ43に検出された旋回操作部31の操作量が含まれる。
【0080】
ハンチングが発生するか否かは、旋回操作部31の操作量によって変わりやすい。そこで、上記[構成3]では、ハンチング発生条件に、旋回操作部31の操作量が含まれる。よって、ハンチング発生条件をより適切にできる。さらに詳しくは、ハンチングが発生する可能性が高い状態を、ハンチング発生条件が満たされる状態とすることができ、ハンチングが発生する可能性が低い状態を、ハンチング発生条件が満たされない状態とすることができる。
【0081】
(第4の発明の効果)
[構成4]レギュレータ23(ハンチング抑制手段)は、ハンチング抑制動作を行う場合に、ハンチング抑制動作を行わない場合に比べ、
図4に示すポンプ圧Pの変化量に対するポンプ流量Qの変化量が減少するように、ポンプ流量Qを減らす(線
図Ba参照)。
【0082】
上記[構成4]では、ハンチング抑制手段として、ポンプ21の流量を変えるもの(レギュレータ23)が用いられる。よって、ハンチング抑制手段としての専用の装置を設ける必要がない。よって、旋回制御装置10を簡易に構成にでき、コストを抑制できる。なお、ハンチング抑制手段としての専用の装置には、例えば、コントロールバルブ27と旋回モータ25とにつながれる2本の油路を連通させる切換弁などがある。
【0083】
(第5の発明の効果)
[構成5]レギュレータ23は、ハンチング抑制動作を行う場合に、ハンチング抑制動作を行わない場合に比べ、ポンプ圧Pの変化量に対するポンプ流量Qの変化量が減少するようにポンプ流量Qを増やす(線
図Bb参照)。
【0084】
上記[構成5]により、上記[構成4]による効果と同様の効果が得られる。
【0085】
(第6の発明の効果)
[構成6]旋回制御装置10は、ハンチング抑制処理を実行するか否かを指令する選択部51を備える。コントローラ60は、条件判定処理(S41またはS42)でハンチング発生条件を満たす(YES)と判定し、かつ、ハンチング抑制処理(S43、S44)を実行することが選択部51で選択されている場合、ハンチング抑制処理(S43、S44)を実行する。コントローラ60は、ハンチング抑制処理(S43、S44)を実行しないことが選択部51で選択されている場合、ハンチング発生条件を満たすか否かにかかわらず、ハンチング抑制処理(S43、S44)を実行しない。
【0086】
旋回制御装置10は、上記[構成6]を備える。よって、ハンチング抑制処理(S43、S44)を実行しないことが選択部51で選択された場合は、旋回体5の挙動や操作性にハンチング抑制動作が影響を与えない。ハンチング抑制処理(S43、S44)を実行することが選択部51で選択された場合は、旋回体5のハンチングを抑制できる。
【0087】
(第7の発明の効果)
[構成7]旋回制御装置10は、コントローラ60に記憶されたハンチング発生条件をリセットする指令を出力するリセット部52を備える。
【0088】
旋回制御装置10は、上記[構成7]を備える。よって、コントローラ60に記憶されたハンチング発生条件が、実際にハンチングが発生する条件と相違する場合など、ハンチング発生条件を再記憶させたい場合に対応できる。
【0089】
(第8の発明の効果)
[構成8]旋回制御装置10は、送信部53を備える。送信部53は、ハンチングが検出された時の、旋回体5の周波数、振幅、継続時間、および、ハンチング発生条件を、建設機械1の外部に送信する。
【0090】
上記[構成8]により、ハンチングに関する情報を、建設機械1の外部で利用できる。例えば、ハンチングに関する情報を、建設機械1の管理、設計、開発などに利用できる。
【0091】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、
図1に示す回路の接続は変更されてもよい。例えば、
図2に示すフローチャートのステップの順序は変更されてもよい。例えば、建設機械1構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、選択部51、リセット部52、および送信部53の少なくともいずれかが設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 建設機械
5 旋回体
10 旋回制御装置
21 ポンプ
25 旋回モータ
23 レギュレータ(ハンチング抑制手段)
31 旋回操作部
42 旋回状態センサ
43 旋回操作量センサ
51 選択部
52 リセット部
53 送信部
60 コントローラ