(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】積層フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220315BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220315BHJP
B32B 27/08 20060101ALI20220315BHJP
C09D 129/04 20060101ALI20220315BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B32B27/00 C
B32B27/30 A
B32B27/30 102
B32B27/08
C09D129/04
C09J133/04
(21)【出願番号】P 2018030391
(22)【出願日】2018-02-23
【審査請求日】2021-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2017038059
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017162127
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤本 恵子
(72)【発明者】
【氏名】青野 春樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悠
(72)【発明者】
【氏名】太田 一善
(72)【発明者】
【氏名】高田 育
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-231352(JP,A)
【文献】特開2010-229377(JP,A)
【文献】特開2007-314636(JP,A)
【文献】特開平08-222535(JP,A)
【文献】特開2001-262093(JP,A)
【文献】特開2007-118362(JP,A)
【文献】プラスチック成形加工データブック(第2版),初版1刷,日本,日本工業新聞社,2002年01月28日,p.2-p.3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00- 7/26
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
C09J 7/00- 7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に樹脂層(A)を有し、前記樹脂層(A)の熱可塑性樹脂フィルムと接する反対側の面に樹脂層(B)を有する積層フィルムであって、
前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)の層界面に、前記樹脂層(A)の成分と前記樹脂層(B)の成分が混在する領域を有し、該領域の厚みが0.1μm以上1.5μm以下であり、前記樹脂層(A)と
前記樹脂層(B)との剥離力が、0.03N/25mm以上、5.0N/25mm以下である積層フィルム。
【請求項2】
熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に樹脂層(A)を有し、前記樹脂層(A)の熱可塑性樹脂フィルムと接する反対側の面に樹脂層(B)を有する積層フィルムであって、前記樹脂層(B)がポリビニルアルコール樹脂を含有し、前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)との剥離力が、0.03N/25mm以上、5.0N/25mm以下である積層フィルム。
【請求項3】
前記樹脂層(A)の前記樹脂層(B)と接する面の表面エネルギー(Ea)と、前記樹脂層(B)の前記樹脂層(A)と接する面の表面エネルギー(Eb)の差(|Ea-Eb|)が、5mN/m以上50mN/m以下である請求項1
または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記樹脂層(B)の厚みが3μm以上、50μm以下であり、且つ、破断強度が5MPa以上、300MPa以下である請求項1
~3のいずれかに記載の積層フィルム
。
【請求項5】
前記樹脂層(A)がアクリル樹脂を含有する請求項1~4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記樹脂層(B)がポリビニルアルコール樹脂を含有する請求項1
、3~5のいずれかに記載の積層フィルム
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に樹脂層(A)を有し、前記樹脂層(A)の熱可塑性樹脂フィルムと接する反対側の面に樹脂層(B)を有する積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるように、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料、フラットディスプレイ等に用いられる反射防止フィルム、拡散シート、プリズムシート等の光学フィルム、透明タッチパネル、およびそれら保護フィルムなど幅広く使用されている。
【0003】
それらの用途の中で、フラットパネルディスプレイやタッチパネルの製造工程の保護や、製品出荷時にディスプレイやパネルを保護することを目的として、熱可塑性樹脂フィルムに粘着層を積層した粘着フィルムがある。この粘着フィルムは通常、離型フィルムと貼り合わせた状態で販売、保管され、粘着フィルムとして使用する際は、離型フィルムを剥がして用いられる。粘着フィルムには、その粘着力によって分類され、例えば、微粘着層を設けたフィルムは、微粘着フィルム、または再剥離フィルムと呼ばれ、フラットパネルディスプレイやタッチパネルの製造工程の保護フィルムや、製品出荷時の保護フィルムとして用いられる。この微粘着フィルムは、ディスプレイやパネルを保護したい製造工程の間だけ貼り付けられ、その工程を終えた後は、きれいに剥がれる必要がある。また、製品出荷時にもディスプレイやパネルを保護するために貼り付けられるが、最終ユーザーが使用する際には、きれいに剥がせる必要がある。近年、これまで以上に製品の大面積化や高精細化の需要に伴い、高品位且つ低コストな粘着フィルムが求められている。
【0004】
しかし、これらの用途において熱可塑性樹脂フィルム上に粘着剤を塗布、積層し、離型フィルムと貼合する場合に、粘着層へのゴミや気泡、オリゴマーなどの異物の付着問題がしばしば発生している。
【0005】
そこで、上記の課題を解決するために、離型フィルムを製造する上で、ポリエステルフィルムの表面にポリビニルアルコールを含有する塗布層(粘着層)を積層し、その粘着層の上に離型層を積層する方法(特許文献1)や、粘着層が積層されたポリエステルの反対面に、帯電防止機能を備えた離型層を積層し、ゴミや気泡の混入を抑制する方法(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-71420号公報
【文献】特開2002-60707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、ポリエステルフィルム表面からのオリゴマーの析出抑制は可能であるが、粘着層を設けた後、離型層を設けるまでの間、外部からのゴミや異物が侵入する場合があり、粘着層や離型層を積層する環境によってはゴミや異物の付着が課題となる。また、特許文献2でも、特許文献1と同様に粘着層や離型層を積層し、巻き取る環境によってはゴミや異物の付着が起こる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明では上記の欠点を根本的に解消し、ゴミや異物の付着が無く、且つ従来の粘着フィルムに対して低コスト化が可能な積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は次の構成からなる。すなわち、
[I]熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に樹脂層(A)を有し、前記樹脂層(A)の熱可塑性樹脂フィルムと接する反対側の面に樹脂層(B)を有する積層フィルムであって、前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)の層界面に、前記樹脂層(A)の成分と前記樹脂層(B)の成分が混在する領域を有し、該領域の厚みが0.1μm以上1.5μm以下であり、前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)との剥離力が、0.03N/25mm以上、5.0N/25mm以下である積層フィルム、
[II]熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に樹脂層(A)を有し、前記樹脂層(A)の熱可塑性樹脂フィルムと接する反対側の面に樹脂層(B)を有する積層フィルムであって、前記樹脂層(B)がポリビニルアルコール樹脂を含有し、前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)との剥離力が、0.03N/25mm以上、5.0N/25mm以下である積層フィルム、
[III]前記樹脂層(A)の前記樹脂層(B)と接する面の表面エネルギー(Ea)と、前記樹脂層(B)の前記樹脂層(A)と接する面の表面エネルギー(Eb)の差(|Ea-Eb|)が、5mN/m以上50mN/m以下である[I]または[II]に記載の積層フィルム、
[IV]前記樹脂層(B)の厚みが3μm以上、50μm以下であり、且つ、破断強度が5MPa以上、300MPa以下である[I]~[III]のいずれかに記載の積層フィルム、
[V]前記樹脂層(A)がアクリル樹脂を含有する[I]~[IV]のいずれかに記載の積層フィルム、
[VI]前記樹脂層(B)がポリビニルアルコール樹脂を含有する[I]、[III]~[V]のいずれかに記載の積層フィルム、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な粘着性を有し、ゴミや異物の付着がない高品位な粘着層を有する積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。
【0012】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に樹脂層(A)を有し、前記樹脂層(A)の上に樹脂層(B)を積層してなる積層フィルムであって、前記樹脂層(A)と樹脂層(B)との剥離力が、0.03N/25mm以上、5.0N/25mm以下である積層フィルムである。本発明の積層フィルムは、フラットパネルディスプレイやタッチパネルの製造工程の保護フィルムや、製品出荷時の保護フィルムとして、良好な粘着性と剥離性を有する。
【0013】
(1)積層フィルム
本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に樹脂層(A)を有し、前記樹脂層(A)の熱可塑性樹脂フィルムと接する反対側の面に樹脂層(B)を有することが必要であり、樹脂層(A)と樹脂層(B)とが一定の剥離力によって剥離することが必要である。
【0014】
樹脂層(A)と樹脂層(B)の詳細は後述するが、樹脂層(A)と樹脂層(B)の剥離力が、0.03N/25mm以上、5.0N/25mm以下であることが必要である。剥離力を0.03N/25mm以上とすることで、本発明の積層フィルムを粘着フィルムとして使用することが可能になる。また5.0N/25mm以下とすることで、再剥離が可能な、微粘着フィルムとしてフラットパネルディスプレイやタッチパネルの製造工程の保護フィルムや、製品出荷時の保護フィルムとして、好適に使用することができる。本発明において、樹脂層(A)と樹脂層(B)の剥離力は、後述する測定方法により求められるものである。より好ましくは、0.05N/25mm以上、1.0N/25mm以下である。また、本発明の積層フィルムにおいて、熱可塑性樹脂フィルムと樹脂層(A)の剥離力は、樹脂層(A)と樹脂層(B)の剥離力よりも大きいことが好ましい。当該範囲とすることで、熱可塑性樹脂フィルムと樹脂層(A)の間ではなく、樹脂層(A)と樹脂層(B)の間で剥離することが容易となる。
【0015】
また、本発明の積層フィルムは、樹脂層(A)の樹脂層(B)と接する面の表面エネルギー(Ea)と、樹脂層(B)の樹脂層(A)と接する面の表面エネルギー(Eb)の差(|Ea-Eb|)が、5mN/m以上、50mN/m以下であることが好ましく、より好ましくは5mN/m以上、45mN/m以下、さらに好ましくは5mN/m以上、40mN/m以下である。樹脂層(A)の樹脂層(B)と接する面の表面エネルギー(Ea)と、樹脂層(B)の樹脂層(A)と接する面の表面エネルギー(Eb)の差(|Ea-Eb|)を5mN/m以上とすることで、樹脂層(A)と樹脂層(B)が接着することを抑制でき、樹脂層(A)と樹脂層(B)の間で剥離することが可能となる。また、(|Ea-Eb|)を50mN/m以下とすることで、後述する粘着剤を含む塗剤(a)と、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を塗布、乾燥した際に、硬化性樹脂を含む塗剤(b)のはじきを抑制し、均一な樹脂層(B)を形成させることができる。なお、表面エネルギー(Ea)、(Eb)は、後述する測定方法により求められるものである。
【0016】
本発明の積層フィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に、粘着剤を含む塗剤(a)と、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を塗布した後、熱処理することで形成されることが好ましい。また、粘着剤を含む塗剤(a)と、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に同時に塗布した後、熱処理することで形成されることがさらに好ましい。樹脂層(A)と樹脂層(B)は、それぞれ、粘着剤を含む塗剤(a)と、硬化性樹脂を含む塗剤(b)にて同時塗布により形成することで、従来の粘着フィルムよりも大幅に低コスト化が可能となり、また粘着剤を含む塗剤(a)の上に同時に硬化性樹脂を含む塗剤(b)を積層するため、樹脂層(A)と樹脂層(B)の間に外部からの異物が入りこむことがほとんど無く、高品位の積層フィルムを提供できる。また、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に、粘着剤を含む塗剤(a)と、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を逐次で塗布し、樹脂層(A)と樹脂層(B)を形成しようとした際、樹脂層(A)の表面エネルギーが低いことにより、塗剤(b)のはじきが生じる結果、均一な樹脂層(B)の形成が難しい場合があるが、樹脂層(A)と樹脂層(B)を粘着剤を含む塗剤(a)と、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を同時に塗布して形成することで、はじきなく塗布できるため、均一な樹脂層を得ることができる。
【0017】
前記粘着剤を含む塗剤(a)、硬化性樹脂を含む塗剤(b)は、後述する測定方法により求められる粘度がともに、3mPa・s以上、1000mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは、10mPa・s以上、700mPa・s以下、さらに好ましくは、10mPa・s以上、400mPa・s以下である。粘着剤を含む塗剤(a)、硬化性樹脂を含む塗剤(b)の粘度がともに、3mPa・s以上であることで、樹脂層(A)、樹脂層(B)を形成する過程において、粘着剤を含む塗剤(a)、硬化性樹脂を含む塗剤(b)の混合を抑制し、樹脂層(A)と樹脂層(B)の2層を形成することが可能となり、かつ、樹脂層(A)と樹脂層(B)を剥離することが可能になる。また、粘着剤を含む塗剤(a)、硬化性樹脂を含む塗剤(b)の粘度がともに、1000mPa・s以下であることで、粘着剤を含む塗剤(a)、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を熱可塑性樹脂フィルムの上に均一に塗布することができる。
【0018】
また、後述する測定方法により求められる前記粘着剤を含む塗剤(a)の表面張力は、硬化性樹脂を含む塗剤(b)の表面張力よりも3mN/m以上大きいことが好ましく、6mN/m以上大きいことがより好ましい。粘着剤を含む塗剤(a)の表面張力を、硬化性樹脂を含む塗剤(b)よりも3mN/m以上大きくすることで、粘着剤を含む塗剤(a)、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を同時塗布した際に、硬化性樹脂を含む塗剤(b)にはじきが発生することなく、粘着剤を含む塗剤(a)の上に塗布することが可能となり、均一に樹脂層(A)、樹脂層(B)を形成できる。
【0019】
さらに、本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に、粘着剤を含む塗剤(a)と、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を同時に塗布した後、少なくとも一軸方向に延伸した後、熱処理する製造方法、すなわちインラインコート法によって製造されることが好ましい。インラインコート法によって製造することで、例えば2軸延伸されたPETフィルム上にオフコートによって樹脂層(A)、樹脂層(B)を形成させるよりも、より低コストで積層フィルムを製造できるだけでなく、オフコートでは実質的に不可能である200℃以上の高温熱処理を施すことにより、後述する樹脂層(A)の樹脂層(B)と接する面の表面エネルギー(Ea)と、樹脂層(B)の樹脂層(A)と接する面の表面エネルギー(Eb)の差(|Ea-Eb|)が、5mN/m以上、50mN/m以下である場合において、樹脂層(A)と樹脂層(B)の相分離が促進され、より均一に且つ安定して樹脂層(B)を樹脂層(A)から剥離することができる。
【0020】
(2)樹脂層(A)
本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層(A)は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に有する。樹脂層(A)は、積層フィルムにおいて、熱可塑性樹脂フィルムと樹脂層(B)を粘着する粘着層として機能し、粘着剤を含む塗剤(a)を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布することで形成させることができる。本発明において粘着剤とは、ガラス転移点が20℃未満である物質を表すものである。樹脂層(A)を塗布によって形成させることで、樹脂層(A)の粘着力を調整することが可能となるだけでなく、後述する積層フィルムの製造方法(インラインコート製法)にて、熱可塑性樹脂フィルムと同時に樹脂層(A)を形成させることができる。なお、樹脂層(A)は塗布によって形成させることで、結晶化度を抑えることが可能となる。樹脂層(A)が、粘着剤を含む塗剤(a)を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布後、熱処理することによって形成させると、後述する示差走査熱量分析(DSC)において測定される溶解熱(|ΔHf|)が、樹脂を溶融製膜して樹脂層(A)を得るときよりも圧倒的に低い25mJ/mg以下となる。したがって、本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層(A)の溶解熱(|ΔHf|)は、25mJ/mg以下であることが好ましい。
【0021】
樹脂層(A)の組成は特に限定されることはないが、アクリル樹脂を含むことが好ましい。アクリル樹脂を含むことで、樹脂層(A)を粘着層とし、剥離した樹脂層(B)を離型層とした剥離力を、0.03N/25mm以上、5.0N/25mm以下に調整することが容易となる。
【0022】
樹脂層(A)に含まれるアクリル樹脂としては、特に限定されることはないが、粘着層として機能させるために、ガラス転移点が0℃未満であるアルキルメタクリレートおよび/またはアルキルアクリレートから構成されるものが好ましい。
【0023】
アルキルメタクリレートおよび/またはアルキルアクリレートとしては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等を用いるのが好ましい。これらは1種もしくは2種以上を用いることができる。
【0024】
またエポキシ基含有アクリル系モノマーはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が好ましく挙げられる。これらは1種もしくは2種以上を用いることができる。
【0025】
樹脂層(A)の厚みについては、特に限定されることはないが、0.5μm以上、10μm以下が好ましい。樹脂層(A)と樹脂層(B)の剥離力は、粘着層である樹脂層(A)の厚みに特に依存するため、樹脂層(A)の厚みを0.5μm以上、10μm以下とすることで、樹脂層(A)と樹脂層(B)の剥離力を0.03N/25mm以上、5.0N/25mm以下にすることが容易となる。
【0026】
さらに、樹脂層(A)の厚みの公差は±15%未満であることが好ましく、±10%未満であることがより好ましい。上述の通り、樹脂層(A)と樹脂層(B)の剥離力は、粘着層である樹脂層(A)の厚みに特に依存するため、樹脂層(A)の厚みの平均値が0.5μm以上、10μm以下であっても、公差が±15%以上であると、剥離力を制御することが困難となる場合がある。樹脂層(A)の厚みの公差を±15%未満とすることで、樹脂層(A)と樹脂層(B)の剥離力を0.03N/25mm以上、5.0N/25mm以下にすることが容易となる。なお、樹脂層(A)の均一性は、後述する測定方法により求められるものである。なお、樹脂層(A)の厚みの公差を上記の範囲とする方法は、特に限られるものでは無いが、熱可塑性樹脂フィルムにコロナ放電処理等の表面処理を行うといった方法が挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムに表面処理を行うことで、粘着剤を含む塗剤(a)の熱可塑性樹脂フィルムへの濡れ性を向上させ、粘着剤を含む塗剤(a)のはじきを防止し、均一な塗布厚みを達成することができる。
【0027】
(3)樹脂層(B)
本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層(B)は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に有する樹脂層(A)の上に、積層されることが必要であり、樹脂層(B)の上に熱可塑性樹脂フィルムが積層されることや、熱可塑性樹脂フィルムの上に樹脂層(B)を積層した離型フィルムを樹脂層(A)と貼合することはない。樹脂層(B)は、積層フィルムにおいて、剥離層として機能し、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を塗布することで形成させることができる。また、粘着剤を含む塗剤(a)と、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を同時に塗布することで形成させることが好ましい。なお、樹脂層(B)は、樹脂層(A)と同様に、塗布によって形成させることで、結晶化度を抑えることが可能となる。樹脂層(B)が、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布後、熱処理することによって形成させると、後述する示差走査熱量分析(DSC)において測定される溶解熱(|ΔHf|)が、樹脂を溶融製膜して樹脂層(B)を得るときよりも圧倒的に低い25mJ/mg以下となる。したがって、本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層(B)の溶解熱(|ΔHf|)は、25mJ/mg以下であることが好ましい。樹脂層(B)の組成は特に限定されることはないが、ポリエステル樹脂やポリビニルアルコール樹脂からなる硬化性樹脂を含むことが好ましい。硬化性樹脂を含むことで、樹脂層(B)を剥離層とし、粘着層である樹脂層(A)上から剥離させることが容易となる。本発明において硬化性樹脂とは、物質単独、もしくは他の反応性物質と架橋反応して硬化する特性を有する物質を表すものである。
【0028】
本発明の積層フィルムは、樹脂層(B)の厚みが3μm以上、50μm以下であることが好ましい。樹脂層(B)の厚みを3μm以上とすることで、剥離層として破断すること無く樹脂層(A)上から剥離することができる。また、樹脂層(B)の厚みが50μm以下であることで、樹脂層(B)を、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を塗布、乾燥によって形成させることができる。
【0029】
本発明の積層フィルムは、後述する方法によって樹脂層(A)から剥離した樹脂層(B)の破断強度は、5MPa以上、300MPa以下であることが好ましく、5MPa以上、200MPa以下であることがより好ましく、5MPa以上、150MPa以下であることがさらに好ましい。樹脂層(B)の破断強度を5MPa以上とすることで、剥離層として破断すること無く樹脂層(A)上から剥離することができる。また、樹脂層(B)の破断強度を300MPa以下とすることで、粘着フィルムとして使用する際、剥離した樹脂層(B)を、脆性破壊することなく巻き取ることが可能となる。
【0030】
さらに、樹脂層(B)の厚みの公差は±15%未満であることが好ましく、±10%未満であることがより好ましい。樹脂層(B)の厚みの公差が±15%以上の場合、樹脂層(B)の破断強度にばらつきが生じ、樹脂層(A)から均一に剥離することが困難となる場合がある。樹脂層(B)の厚みの公差を±15%未満とすることで、剥離層として破断すること無く樹脂層(A)上から剥離することができる。なお、樹脂層(B)の均一性は、後述する測定方法により求められるものである。なお、樹脂層(B)の厚みの公差を上記の範囲とする方法は、特に限られるものでは無いが、樹脂層(A)の樹脂層(B)と接する面の表面エネルギー(Ea)と、樹脂層(B)の樹脂層(A)と接する面の表面エネルギー(Eb)の差(|Ea-Eb|)を50mN/m以下とするといった方法が挙げられる。表面エネルギーを上記通りに制御することで、樹脂層(A)上に、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を塗布、乾燥した際に、硬化性樹脂を含む塗剤(b)のはじきを抑制し、均一な樹脂層(B)を形成させることができる。中でも、表面処理を施した熱可塑性樹脂フィルム上に、粘着剤を含む塗剤(a)と、表面エネルギーを上記通りに制御した硬化性樹脂を含む塗剤(b)を同時塗布する方法は、樹脂層(A)の厚みの公差、樹脂層(B)の厚みの公差のいずれをも小さく出来るので好ましい方法として挙げられる。
【0031】
本発明の積層フィルムの好適な態様としては、樹脂層(A)の厚みの公差、樹脂層(B)の厚みの公差がともに±15%であることが挙げられ、かかる態様とすることで、樹脂層(A)の破断を抑制しつつ、剥離力を制御することが可能となり、均一に破断することが容易となる。
【0032】
樹脂層(B)に含まれる樹脂は、特に限定されることはないが、剥離層として機能させるために、次のような樹脂を用いることができる。ポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するものでジカルボン酸成分とジオール成分とから構成される。ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸を使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0033】
ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、などを用いることができる。
【0034】
またポリエステル樹脂成分を水系溶媒へ溶解、または分散させ水系樹脂組成物として用いる場合にはポリエステル樹脂成分の水溶性化あるいは水分散化を容易にするため、スルホン酸塩基を含む化合物やカルボン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。
【0035】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4-メチルシクロヘキセン-1,2,3-トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸、など、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、4-スルホイソフタル酸、などあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
樹脂層(B)は、上述した樹脂の中でも、ポリビニルアルコール樹脂を含むことが好ましい。樹脂層(B)に含まれるポリビニルアルコール樹脂は、特に限定されることはないが、剥離層として機能させるために、次のような樹脂を用いることができる。ポリビニルアルコールとしては、完全ケン化型、部分ケン化型ともに利用することは出来るが、部分ケン化型の方が、水系溶媒へ溶解、または分散させ水系樹脂組成物として用いる場合に好ましい。また、重合度としては、2000以下のもの、より好ましくは1000以下のものが良い。重合度としては、2000以下にすることで、硬化性樹脂を含む塗剤(b)の粘度を塗布に適した範囲にすることができる。
【0038】
また、ポリビニルアルコール樹脂の硬化性を向上させるために、分子内に(メタ)アクリロイル基もしくは(メタ)アクリルアミド基および、ポリビニルアルコールと反応する為のアルデヒド基もしくはジアルキルアセタール基を含む化合物とを反応させた変性ポリビニルアルコール樹脂を用いることができる。具体例として、(メタ)アクリロイルオキシアセトアルデヒド、3-(メタ)アクリロイルオキシプロパナール、4-(メタ)アクリロイルオキシブタナール、N-(2,2-ジメトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシ-2,2-ジメトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3,3-ジエトキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(4,4-ジエトキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-(2,2-ジメトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、などが挙げられ、1種もしくは2種以上を組み合わせて利用することができる。
【0039】
(4)熱可塑性樹脂フィルム
本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に樹脂層(A)を有し、前記樹脂層(A)の熱可塑性樹脂フィルムと接する反対側の面に樹脂層(B)を有する積層フィルムである。本発明でいう熱可塑性樹脂フィルムとは、熱可塑性樹脂を用いてなり、熱によって溶融もしくは軟化するフィルムの総称であって、特に限定されるものではない。熱可塑性樹脂の例として、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンフィルムなどのポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリレート樹脂やポリスチレン樹脂などのアクリル樹脂、ナイロン樹脂などのポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムに用いられる熱可塑性樹脂はモノポリマーでも共重合ポリマーであってもよい。また、複数の樹脂を用いても良い。
これらの熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性樹脂フィルムの代表例として、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリ乳酸フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメタクリレートフィルムやポリスチレンフィルムなどのアクリル系フィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンフィルム、フッ素系フィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムなどを挙げることができる。
【0040】
これらのうち、機械的特性、寸法安定性、透明性などの点で、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルムなどが好ましく、更に、機械的強度、汎用性などの点でポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0041】
そこで、以下、本発明において、熱可塑性樹脂フィルムとして特に好適に用いられるポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂について詳しく説明する。
【0042】
まず、ポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン-2,6-ナフタレート、エチレン-α,β-ビス(2-クロロフェノキシ)エタン-4,4‘-ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを好ましく用いることができる。これらの構成成分は1種のみを用いても、2種以上併用してもよいが、中でも品質、経済性などを総合的に判断すると、エチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。すなわち、本発明では、熱可塑性樹脂フィルムに用いられる熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。また熱可塑性樹脂フィルムに熱や収縮応力などが作用する場合には、耐熱性や剛性に優れたポリエチレン-2,6-ナフタレートが特に好ましい。これらのポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下含まれていてもよい。
【0043】
上述したポリエステルの極限粘度(25℃のo-クロロフェノール中で測定)は、0.4~1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5~0.8dl/gの範囲にあるのもが本発明を実施する上で好適である。
【0044】
上記ポリエステルを使用したポリエステルフィルムは、二軸配向されたものであるのが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシート又はフィルムを長手方向および長手方向に直行する幅方向に各々2.5~5倍程度延伸され、その後、熱処理を施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。熱可塑性樹脂フィルムが二軸配向していない場合には、導電性フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなるので好ましくない。
【0045】
また、熱可塑性樹脂フィルム中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0046】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは10~500μm、より好ましくは38~250μm、最も好ましくは50~125μmである。また、熱可塑性樹脂フィルムは、共押出しによる複合フィルムであってもよいし、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムであっても良い。
【0047】
(5)混在領域
本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に樹脂層(A)を有し、前記樹脂層(A)の熱可塑性樹脂フィルムと接する反対側の面に樹脂層(B)を有する積層フィルムであり、樹脂層(A)と樹脂層(B)の層界面に、樹脂層(A)と樹脂層(B)の成分が混在した混在領域を有することが好ましい。混在領域の有無は、GCIB-TOF-SIMS(GCIB:ガスクラスターイオンビーム、TOF-SIMS:飛行時間型二次イオン質量分析法)を用いて確認できる。測定方法の詳細は後述する。樹脂層(A)ならびに熱可塑性樹脂フィルムの樹脂成分からは発生せず、樹脂層(B)のみに由来する負2次イオンのうち、最もイオン強度が大きいものを積層フィルムの表面側から深さ方向に追跡した際の強度プロファイルにおいて、樹脂層(B)の樹脂層(A)と接する面とは反対側の表面から深さ方向100nm以上300nm以下の領域における該イオンの強度の平均値を100%とした際、該イオンの相対強度が10%以上90%以下である領域を混在領域と判定した。混在領域の厚みは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上1.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1.0μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。混在領域の厚みが1.5μmより大きいと、樹脂層(A)と樹脂層(B)がアンカー効果によって剥離困難となる場合がある。また、混在領域の厚みが0.1μmより小さいと、樹脂層(A)と樹脂層(B)の剥離力が0.03N/25mm未満となり、両者の密着が不十分となる結果、製膜工程中で樹脂層(B)が経時で自然に剥離し、樹脂層(A)の粘着剤が巻取機に付着するといった工程汚染が生じ、ハンドリング性が問題となる場合がある。
【0048】
(6)粘着剤を含む塗剤(a)、硬化性樹脂を含む塗剤(b)の調製方法
粘着剤を含む塗剤(a)、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を作成する場合、溶媒は水系溶媒(D)を用いることが好ましい。粘着剤を含む塗剤(a)は、必要に応じて水分散化または水溶化した粘着剤と水系溶媒(D)を任意の順番で所望の重量比で混合、撹拌することで作製することができる。次いで必要に応じて硬化剤や界面活性剤などの各種添加剤を、樹脂組成物により設けた樹脂層の特性を悪化させない程度に任意の順番で混合、撹拌することができる。
【0049】
硬化性樹脂を含む塗剤(b)は、必要に応じて水分散化または水溶化した硬化性樹脂と水系溶媒(D)を任意の順番で所望の重量比で混合、撹拌することで作製することができる。次いで必要に応じて硬化剤や易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤、熱開始剤などの各種添加剤を、樹脂組成物により設けた樹脂層の特性を悪化させない程度に任意の順番で混合、撹拌することができる。混合、撹拌する方法は、容器を手で振って行ったり、マグネチックスターラーや撹拌羽根を用いたり、超音波照射、振動分散などを行うことができる。
【0050】
(7)塗布方式
ポリエステルフィルムへの樹脂組成物の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。特に、同時塗布の場合は、多層ダイコート法、特に2層塗布が可能な2層スリットダイコート法が好ましい。
【0051】
(8)積層フィルムの製造方法
本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に、樹脂層(A)を有し、前記樹脂層(A)の熱可塑性樹脂フィルムと接する反対側の面に樹脂層(B)を有する積層フィルムであって、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一面に粘着剤を含む塗剤(a)、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を同時塗布して、樹脂層(A)、樹脂層(B)を形成せしめる工程を有する製造方法により得られることが好ましい。
【0052】
以下に本発明の積層フィルムの製造方法について、熱可塑性樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す。)フィルムを用いた場合を例として詳述するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
【0053】
まず、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルム(Aフィルム)を作製する。このフィルムを80~120℃に加熱したロールで長手方向に2.5~5.0倍延伸して一軸配向PETフィルム(Bフィルム)を得る。このBフィルムの片面に所定の濃度に調製した粘着剤を含む塗剤(a)、その上に硬化性樹脂を含む塗剤(b)を塗布する。この時、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、粘着剤を含む塗剤(a)のPETフィルムへの濡れ性を向上させ、粘着剤を含む塗剤(a)のはじきを防止し、均一な塗布厚みを達成することができる。
【0054】
塗布後、PETフィルムの端部をクリップで把持して80~130℃の熱処理ゾーン(予熱ゾーン)へ導き、塗液の溶媒を乾燥させる。乾燥後幅方向に1.1~5.0倍延伸する。引き続き150~250℃の加熱ゾーン(熱処理ゾーン)へ導き1~30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させるとともに、樹脂層の形成を完了させる。この加熱工程(熱処理工程)により、樹脂層(A)と樹脂層(B)の表面エネルギー差に起因して、樹脂層(A)が熱可塑性樹脂フィルム側へ、樹脂層(B)が表面側へと移動する相分離が促進され、混在領域の厚みが小さくなると考えている。なお、この加熱工程(熱処理工程)で、必要に応じて幅方向、あるいは長手方向に3~15%の弛緩処理を施してもよい。かくして得られた積層フィルムは、樹脂層(A)と樹脂層(B)との剥離力が、0.03N/25mm以上、5.0N/25mm以下となる。
【0055】
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
【0056】
(1)樹脂層(A)と樹脂層(B)との剥離力
積層フィルムを長さ150mm×幅25mmの矩形に切り出し測定サンプルとする。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT-100)を用いて、上部チャックに熱可塑性樹脂フィルムと樹脂層(A)を把持し、下部チャックに樹脂層(B)を把持させ、引張速度を300mm/分、移動距離100mm、180°の角度で引張試験を行った。樹脂層(B)が樹脂層(A)を剥離した100mm間の荷重の平均値を読み取り、剥離力とした。なお、測定は3回行い、その平均値を剥離力とした。なお、測定中に樹脂層(B)が破断した場合は、剥離不可(樹脂層(A)と樹脂層(B)との剥離力が、5.0N/25mmより大きい)とした。
【0057】
(2)示差走査熱量分析(DSC)による溶解熱測定方法
示差走査熱量測定装置”ロボットDSC-RDC220”(セイコー電子工業(株)製)を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200” (セイコー電子工業(株)製)を用いて、JIS K7122(1999)に基づいて、溶解熱(|ΔHf|)を算出した。まず、樹脂層(A)、または樹脂層(B)を5mgずつ採取した。採取したサンプルを、アルミ製パンに入れ、昇温速度は5℃/minで、25℃~250℃まで走査した。測定は各サンプル毎に3回ずつ実施し、結晶融解時のピークトップを融点とし、ベースラインからの積分値である溶解熱の吸熱ピーク面積の平均値を溶解熱(|ΔHf|)とした。
【0058】
(3)表面エネルギーの算出方法
まず、(1)の条件にて剥離した樹脂層(A)と樹脂層(B)を室温23℃相対湿度65%の雰囲気中に24時間放置後した。その後、同雰囲気下で、樹脂層(A)の樹脂層(B)と接していた面、樹脂層(B)の樹脂層(A)と接していた面に対して、純水、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンの4種の溶液のそれぞれの接触角を、接触角計CA-D型(協和界面科学(株)社製)により、それぞれ5点測定する。5点の測定値の最大値と最小値を除いた3点の測定値の平均値をそれぞれの溶液の接触角とする。
【0059】
次に、得られた4種類の溶液の接触角を用いて、畑らによって提案された「固体の表面自由エネルギー(γ)を分散力成分(γS
d)、極性力成分(γS
p)、および水素結合力成分(γS
h)の3成分に分離し、Fowkes式を拡張した式(拡張Fowkes式)」に基づく幾何平均法により、本発明の分散力、極性力、水素結合力及び分散力と極性力の和である表面エネルギーを算出する。
【0060】
具体的な算出方法を示す。各記号の意味について下記する。γS
Lは固体と液体の界面での張力である場合、数式(1)が成立する。
【0061】
γS
L: 樹脂層と表1に記載の既知の溶液の表面エネルギー
γS : 樹脂層の表面エネルギー
γL : 表1に記載の既知の溶液の表面エネルギー
γS
d: 樹脂層の表面エネルギーの分散力成分
γS
p: 樹脂層の表面エネルギーの極性力成分
γS
h: 樹脂層の表面エネルギーの水素結合力成分
γL
d : 表1に記載の既知の溶液の表面エネルギーの分散力成分
γL
p : 表1に記載の既知の溶液の表面エネルギーの極性力成分
γL
h: 表1に記載の既知の溶液の表面エネルギーの水素結合力成分
γS
L=γS+γL-2(γS
d・γL
d)1/2-2(γS
p・γLp)1/2-2(γS
h・γL
h)1/2 ・・・ 数式(1)。
【0062】
また、平滑な固体面と液滴が接触角(θ)で接しているときの状態は次式で表現される(Youngの式)。
【0063】
γS=γS
L+γLcosθ ・・・ 数式(2)。
【0064】
これら数式(1)、数式(2)を組み合わせると、次式が得られる。
(γS
d・γL
d)1/2+(γS
p・γL
p)1/2+(γS
h・γL
h)1/2=γL(1+cosθ)/2 ・・・ 数式(3)。
【0065】
実際には、水、エチレングリコール、ホルムアミド、及びジヨードメタンの4種類の溶液に接触角(θ)と、表1に記載の既知の溶液の表面張力の各成分(γL
d、γL
p、γL
h)を数式(3)に代入し、4つの連立方程式を解く。その結果、固体の表面エネルギー(γ)、分散力成分(γS
d)、極性力成分(γS
p)、および水素結合力成分(γS
h)が算出される。
【0066】
(4)樹脂層(A)、樹脂層(B)、混在領域の厚み測定方法
GCIB-TOF-SIMS(GCIB:ガスクラスターイオンビーム、TOF-SIMS:飛行時間型二次イオン質量分析法)を用いて、積層フィルムの樹脂層(A)、樹脂層(B)、及び混在領域の厚みを測定した。測定条件は、下記の通りであった。
<スパッタリング条件>
イオン源:アルゴンガスクラスターイオンビーム
<検出条件>
1次イオン:Bi3++(25keV)
2次イオン極性:Negative
質量範囲:m/z 0~1000
測定範囲:200×200μm2
GCIB-TOF-SIMSにより、樹脂層(A)ならびに熱可塑性樹脂フィルムの樹脂成分からは発生せず、樹脂層(B)のみに由来する負2次イオンのうち、最もイオン強度が大きいものを積層フィルムの表面側から深さ方向に追跡した際の強度プロファイルにおいて、樹脂層(B)の樹脂層(A)と接する面とは反対側の表面から深さ方向100nm以上300nm以下の領域における該イオンの強度の平均値を100%とした際、該イオンの相対強度が90%より大きい領域を樹脂層(B)、10%以上90%以下である領域を混在領域、10%未満である領域を樹脂層(A)と判定し、それぞれの厚みを樹脂層(B)、混在領域、樹脂層(A)の厚みとした。なお、積層フィルム表面側からの深さ方向の距離については、樹脂層(B)のエッチング速度で換算することにより算出した。
【0067】
(5)樹脂層の均一性
A4カットサイズに裁断した積層フィルムを縦横それぞれ3分割し、合計9点を測定サンプルとして用い、樹脂層(A)、樹脂層(B)の厚みを(4)に記載の方法によって測定し、樹脂層(A)、樹脂層(B)の厚みの公差から、以下の評価基準で評価した。
【0068】
A:樹脂層(A)、樹脂層(B)の厚みの公差がともに±10%未満
B:樹脂層(A)、樹脂層(B)の厚みの公差が、いずれかが±10%以上±15%未満
C:樹脂層(A)、樹脂層(B)の厚みの公差がともに±10%以上±15%未満であるか、いずれかが±15%以上。
【0069】
(6)樹脂層(B)の破断強度測定
(1)にて剥離した樹脂層(B)を長さ150mm×幅25mmの矩形に切り出しサンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT-100)を用いて、初期チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分として、フィルムの長手方向と幅方向にそれぞれ引張試験を行った。サンプルが破断する直前のフィルムにかかっていた荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×10mm)で除した値を破断強度とした。なお、測定は各サンプル、各方向に5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
【0070】
(7)粘度の測定方法
粘着剤を含む塗剤(a)、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を(株)東京計器製B型粘度計B-8Lを用いて、温度25℃で測定したときの粘度を求めた。測定は5回実施し、その平均値を粘度とした。
【0071】
(8)表面張力の測定方法
粘着剤を含む塗剤(a)、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を協和界面科学(株)製自動表面張力計DY-200/プレート法を用いて、温度25℃で測定したときの表面張力を求めた。測定は5回実施し、その平均値を表面張力とした。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
粘着剤を含む塗剤(a)と、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を以下のように調整した。
・粘着剤を含む塗剤(a):
日本カーバイド工業(株)製 アクリル系樹脂エマルジョン
“ニカゾール”(登録商標)MH-5484L
・硬化性樹脂を含む塗剤(b):
ポリビニルアルコール水溶液((株)クラレ製 ポリビニルアルコール“ポバール”(登録商標)PVA-205)、メチル化メラミン樹脂(日本カーバイド工業(株)製“ニカラック”(登録商標)MW-12LF)を95質量部/5質量部に調整した。さらに、フッ素系界面活性剤(互応化学(株)製 プラスコート(登録商標)RY-2)を、調整した塗剤の重量100質量部に対して0.06質量部になるよう添加したものを、固形分重量が20重量%となるよう水を溶媒として用いて、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を調整した。
・積層フィルム:
PETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.3倍延伸し、一軸配向フィルム(Bフィルム)を得た。
【0073】
次いで、粘着剤を含む塗剤(a)と、硬化性樹脂を含む塗剤(b)を一軸配向フィルムに、2層スロットダイを用いて、一軸配向フィルム上に、粘着剤を含む塗剤(a)、その粘着剤を含む塗剤(a)の上が、硬化性樹脂を含む塗剤(b)となるように、同時2層塗布した。続いて、粘着剤を含む塗剤(a)と硬化性樹脂を含む塗剤(b)を塗布した一軸配向フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導いた。予熱ゾーンの雰囲気温度は90℃~100℃にし、塗剤(a)、塗剤(b)に含まれる溶媒を乾燥させた。引き続き、連続的に100℃の延伸ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、続いて235℃の熱処理ゾーンで20秒間熱処理を施し、樹脂層を形成せしめ、ポリエステルフィルムの結晶配向の完了した積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいてPETフィルムの厚みは50μmであり、樹脂層(A)を有し、その樹脂層(A)の熱可塑性樹脂フィルムと接する反対側の面に樹脂層(B)を有する積層フィルムを得た。
【0074】
得られた積層フィルムの特性等を表に示す。樹脂層(B)は剥離可能であり、剥離力は良好であった。
【0075】
(実施例2~4)
粘着剤を含む塗剤(a)の塗布量を変更し、樹脂層(A)の膜厚を表に記載の厚みに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。樹脂層(B)は剥離可能であり、剥離力は良好であった。
【0076】
(実施例5)
硬化性樹脂を含む塗剤(b)をアクリル・ウレタン共重合樹脂水分散体(山南合成化学(株)製“サンナロン”WG-658)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。樹脂層(B)は剥離可能であり、剥離力は良好であった。
【0077】
(実施例6)
硬化性樹脂を含む塗剤(b)の塗布量を変更し、樹脂層(B)の膜厚を表に記載の厚みに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。樹脂層(B)は剥離可能であり、剥離力は良好であった。
【0078】
(実施例7)
硬化性樹脂を含む塗剤(b)を水系感光性樹脂(中京油脂(株)製 O-391)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。樹脂層(B)は剥離可能であり、剥離力は良好であった。
【0079】
(比較例1)
粘着剤を含む塗剤(a)の塗布量を変更し、樹脂層(A)の膜厚を表に記載の厚みに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。樹脂層(A)と樹脂層(B)の剥離力は5.0N/25mmより大きく、樹脂層(B)は樹脂層(A)から剥離する途中で破断した。そのため、Ea、Ebを測定できなかった。
【0080】
(比較例2)
硬化性樹脂を含む塗剤(b)の塗布量を変更し、樹脂層(B)の膜厚を表に記載の厚みに変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。樹脂層(B)の強度がなかったため、樹脂層(A)から剥離する途中で破断した。そのため、Ea、Ebを測定できなかった。
【0081】
(比較例3)
粘着剤を含む塗剤(a)の粘度を水希釈により変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。粘着剤を含む塗剤(a)の粘度が低いため、塗布後に硬化性樹脂を含む塗剤(b)と混合し、樹脂層(A)と樹脂層(B)の混在領域の厚みが大きくなった。また、樹脂層(B)は樹脂層(A)から剥離する途中で破断した。そのため、Ea、Ebを測定できなかった。
【0082】
(比較例4)
硬化性樹脂を含む塗剤(b)の粘度を水希釈により変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。硬化性樹脂を含む塗剤(b)の粘度が低いため、塗布後に粘着剤を含む塗剤(a)と混合し、樹脂層(A)と樹脂層(B)の混在領域の厚みが大きくなった。また、樹脂層(B)は樹脂層(A)から剥離する途中で破断した。そのため、Ea、Ebを測定できなかった
(比較例5)
樹脂層(A)と樹脂層(B)の組成は実施例1と同様であるが、厚み50μmの二軸配向PETフィルムに、樹脂層(A)を積層後、熱風オーブンにて120℃×2分の乾燥処理を施し、次いで樹脂層(A)の上に樹脂層(B)を積層後、120℃×2分の乾燥処理を施した。さらに、240℃×1分の熱処理を施すことにより、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの物性等を表に示す。樹脂層(A)と樹脂層(B)の剥離力が0.03N/25mmより小さいため、樹脂層(B)が製膜工程中で自然に剥離し、樹脂層(A)の粘着剤が巻取機に付着する問題が発生した。
【0083】
(比較例6)
樹脂層(A)と樹脂層(B)を同時塗布により設けたこと、240℃×1分の熱処理を施さなかったこと以外は、比較例5と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの物性等を表に示す。樹脂層(A)と樹脂層(B)の剥離力が5.0N/25mmより大きく、樹脂層(B)は樹脂層(A)から剥離する途中で破断した。そのため、Ea、Ebを測定できなかった。
【0084】
【0085】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、塗布によって形成した粘着層による良好な粘着性と、その上に塗布によって剥離層を形成させることで低コスト化を両立させた粘着フィルムであり、さらに、粘着層と剥離層を同時塗布によって形成させることで、ゴミや異物の付着がない高品位な粘着フィルムに関するものである。本発明の粘着フィルムは、フラットパネルディスプレイやタッチパネルの製造工程の保護フィルムや、製品出荷時の保護フィルムとしての利用が可能である。