IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】トレッド用ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20220315BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20220315BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20220315BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220315BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L7/00
C08L9/00
B60C1/00 Z
C08K3/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018037760
(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公開番号】P2019151738
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姫田 眞吾
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-211042(JP,A)
【文献】特開2000-219778(JP,A)
【文献】特開2007-302715(JP,A)
【文献】特開2014-009243(JP,A)
【文献】特開2008-156458(JP,A)
【文献】特開昭57-087441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴムを50質量%以上、ブタジエンゴムを30質量%以上、およびスチレンブタジエンゴムを1~20質量%含むゴム成分を含有し、
前記スチレンブタジエンゴムの数平均分子量が15万以上、スチレン含量が18~38質量%、かつビニル含量が30~60モル%であり、
スチレンブタジエンゴムの含量(質量%)にスチレンブタジエンゴムのスチレン含量(質量%)を乗じた値が100~400であり、
スチレンブタジエンゴムの含量(質量%)にスチレンブタジエンゴムのビニル含量(モル%)を乗じた値が200~600であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分が、イソプレン系ゴムを50~69質量%、ブタジエンゴムを30~49質量%、および前記スチレンブタジエンゴムを1~20質量%含む、請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)が130m2/g以上のカーボンブラックを、ゴム成分100質量部に対して20質量部以上含有する、請求項1または2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
ヨウ素吸着量が130mg/g以上のカーボンブラックを、カーボンブラック全体の30質量%以上含有する、請求項1~のいずれか一項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のタイヤ用ゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ用ゴム組成物およびこのゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一部のタイヤ、特にトラックやバスなどの重荷重用タイヤ、不整地走行用タイヤのトレッドにはトレッドパターン(溝)で囲まれ、独立したブロックが設けられている。このブロックは、駆動力および制動力の伝達、雪上やぬかるんだ路面などでの操縦安定性、および排水性の向上に貢献している。しかしながら、悪路走行や経年劣化によりブロック欠けが生じやすく、欠けが生じるとタイヤ本来の性能を発揮しにくくなる。
【0003】
特許文献1には、結晶化された結晶化カーボンブラックを含有することで、耐摩耗性能および耐ブロック欠け性能を向上させたトレッド用ゴム組成物が記載されているが、これらの両立性については改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-024890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能、および発熱性能の総合性能が改善されたタイヤ用ゴム組成物およびこのゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イソプレン系ゴムを50質量%以上、ブタジエンゴムを30質量%以上、および数平均分子量が15万以上でありスチレン含量が18~38質量%のスチレンブタジエンゴムを1~20質量%含むゴム成分を含有し、スチレンブタジエンゴムの含量(質量%)にスチレンブタジエンゴムのスチレン含量(質量%)を乗じた値が100~400であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0007】
また、本発明は前記タイヤ用ゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物により構成されたタイヤ部材を使用することにより、タイヤの耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能、および発熱性能の総合性能を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態であるタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴムを50質量%以上、ブタジエンゴムを30質量%以上、および数平均分子量が15万以上でありスチレン含量が18~38質量%のスチレンブタジエンゴムを1~20質量%含むゴム成分を含有し、スチレンブタジエンゴムの含量(質量%)にスチレンブタジエンゴムのスチレン含量(質量%)を乗じた値が100~400であることを特徴とする。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0010】
本実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン/ブタジエンポリマーにスチレンブタジエンゴム(SBR)を分散させることで、悪路面走行時に発生する衝撃が緩和され、さらにSBRのスチレン含量と配合量を規定範囲にすることで、発熱量が少なく、走行によるブロック剛性の低下を抑えることができるため、相乗的に、耐ブロック欠け性能が向上していると考えられる。さらに、数平均分子量(Mn)が大きいSBRを使用することで、耐摩耗性の低下を抑制することができる。
【0011】
<ゴム成分>
本実施形態において使用されるゴム成分としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレン系ゴム、およびブタジエンゴム(BR)が好適に用いられる。
【0012】
(SBR)
SBRとしては特に限定はなく、溶液重合SBR(S-SBR)、乳化重合SBR(E-SBR)、これらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)などが挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物などでカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するものなど)などが挙げられる。なかでもS-SBRが好ましい。
【0013】
本実施形態で使用できるS-SBRとしては、JSR株式会社、住友化学株式会社、宇部興産株式会社、旭化成株式会社、日本ゼオン株式会社などによって製造販売されるS-SBRが挙げられる。
【0014】
SBRのスチレン含量は、本発明の効果が十分得られるという理由から、18質量%以上であり、20質量%以上が好ましく、22質量%以上がより好ましい。また、当該スチレン含量は、38質量%以下であり、35質量%以下が好ましく、33質量%以下がより好ましい。スチレン含量が38質量%を超える場合は、発熱性が高くなる傾向がある。なお、本明細書におけるSBRのスチレン含量は、H1-NMR測定により算出される。
【0015】
SBRのビニル含量は、30モル%以上が好ましく、33モル%以上がより好ましく、35モル%以上がさらに好ましい。ビニル含量が30モル%未満の場合は、ウェット性能が低下する傾向がある。また、当該ビニル含量は、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。ビニル含量が60モル%を超える場合は、発熱性が高くなる傾向がある。なお、本明細書において、SBRのビニル含量とはSBRにおけるブタジエン部の1,2-結合単位量のことを示し、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
【0016】
SBRの数平均分子量(Mn)は、耐摩耗性およびグリップ性能等の観点から、15万以上であり、18万以上が好ましく、20万以上がより好ましい。また、Mnは、架橋均一性等の観点から、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。なお、Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0017】
SBRのゴム成分中の含有量は、1質量%以上であり、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。1質量%未満の場合は、本発明の効果が不十分となる傾向がある。また、SBRの含有量は、20質量%以下であり、18質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。20質量%を超える場合は、発熱性が高くなる傾向がある。
【0018】
スチレンブタジエンゴムの含量(質量%)にスチレンブタジエンゴムのスチレン含量(質量%)を乗じた値は、100~400が好ましく、120~350がより好ましく、150~300がさらに好ましい。400を超える場合は、発熱性が高くなる傾向がある。
【0019】
スチレンブタジエンゴムの含量(質量%)にスチレンブタジエンゴムのビニル含量(質量%)を乗じた値は、200~600が好ましく、250~600が好ましく、300~600がさらに好ましい。600を超える場合は、発熱性が高くなる傾向がある。
【0020】
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
NRとしては、特に限定されず、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
【0022】
イソプレン系ゴムのゴム成分中の含有量は、50質量%以上であり、55質量%以上が好ましい。50質量%未満の場合は、本発明の効果が不十分となる傾向がある。また、イソプレン系ゴムの含有量は、69質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。69質量%を超える場合は、耐亀裂成長性が低下する傾向がある。
【0023】
(BR)
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス1,4結合含有率が50%未満のBR(ローシスBR)、シス1,4結合含有率が90%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらのBRのなかでも、耐摩耗性に優れるという理由から、ハイシスBRが好ましい。
【0024】
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B、BR150L、JSR(株)製のBR730等が挙げられる。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性能を向上させることができる。希土類系BRとしては、例えば、ランクセス(株)製のBUNA-CB25等が挙げられる。
【0025】
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものが挙げられる。このようなSPB含有BRとしては、宇部興産(株)製のVCR-303、VCR-412、VCR-617等が挙げられる。
【0026】
変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)や、ブタジエンゴムの活性末端に縮合アルコキシシラン化合物を有するブタジエンゴム(シリカ用変性BR)等が挙げられる。このような変性BRとしては、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1250H(スズ変性)、住友化学工業(株)製のS変性ポリマー(シリカ用変性)等が挙げられる。
【0027】
BRのゴム成分中の含有量は、30質量%以上であり、35質量%以上が好ましい。30質量%未満の場合は、本発明の効果が不十分となる傾向がある。また、BRの含有量は、49質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。49質量%を超える場合は、ブロック欠けが発生しやすくなる傾向がある。
【0028】
BRのシス1,4結合含有率(シス含量)は、耐久性や耐摩耗性能の観点から、90質量%以上が好ましく、93質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましい。シス含量が高い方が、ポリマー鎖が規則正しく配列されることから、ポリマー同士の相互作用が強くなりゴム強度が向上し、耐摩耗性能が向上すると考えられる。
【0029】
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性およびグリップ性能等の観点から40万以上が好ましく、45万以上がより好ましく、50万以上がさらに好ましい。また、Mwは、架橋均一性等の観点から、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0030】
(その他のゴム成分)
本実施形態に係るゴム成分として、前記のイソプレン系ゴム、SBRおよびBR以外のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、ゴム工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。これらその他のゴム成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
<カーボンブラック>
本実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物は、臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)が130m2/g以上の小粒子カーボンブラックを所定量含有することが好ましい。イソプレン系ゴム、BR、およびSBRの各相の境界近傍に小粒子カーボンブラックを分散させ、SBRとカーボンブラックとの接触を増加させることで、各相間の結びつき強くし、悪路面走行時に発生する衝撃をより効果的に吸収し得るゴム組成物とすることができる。また、小粒子カーボンブラックの使用により、ゴム組成物に対する補強効果が向上し、耐ブロック欠け性能および耐摩耗性能が向上すると考えられる。
【0032】
小粒子カーボンブラックの臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)は、耐ブロック欠け性能の観点から、130m2/g以上が好ましく、135m2/g以上がより好ましく、140m2/g以上がさらに好ましい。一方、小粒子カーボンブラックのCTABに特に上限はないが、十分な低発熱性の観点からは、165m2/g以下が好ましく、162m2/g以下がより好ましく、160m2/g以下がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのCTABは、JIS K 6217-3:2001準拠して測定できる。
【0033】
小粒子カーボンブラックのヨウ素吸着量は130mg/g以上が好ましく、135mg/g以上が好ましく、140mg/g以上がより好ましい。ヨウ素吸着量が130mg/g未満の場合は、耐ブロック欠け性能が不十分となる傾向がある。また、ヨウ素吸着量の上限は特に限定されないが、加工性の観点から180mg/g以下が好ましく、160mg/g以下がより好ましく、150mg/g以下がさらに好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックのヨウ素吸着量はJIS K 6217-1に準じて測定された値である。
【0034】
小粒子カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は、20質量部以上が好ましく、22質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましい。20質量部未満の場合は、耐ブロック欠け性能が不十分となる傾向がある。また、小粒子カーボンブラックの含有量は、40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましい。40質量部を超える場合は、発熱しやすくなる傾向がある。
【0035】
また、カーボンブラックとして、前記の小粒子カーボンブラックに加えてヨウ素吸着量が130mg/g未満のカーボンブラック、好ましくはヨウ素吸着量が110~130mg/gのカーボンブラックを併用してもよい。ヨウ素吸着量が130mg/g未満のカーボンブラックを使用することで、耐ブロック欠け性能と発熱性のバランスをとることができる。ヨウ素吸着量が130mg/g未満のカーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、特に限定されないが、補強性の観点から40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましい。
【0036】
カーボンブラックとしては、前記に規定した小粒子カーボンブラック単独で使用してもよく、他種のカーボンブラックをブレンドして使用してもよい。前記小粒子カーボンブラックは、カーボンブラック全体の30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上含有することが好ましい。30質量%未満であると、本実施形態において使用する小粒子カーボンブラックの性能を十分に発揮できないという問題がある。また、前記に規定した小粒子カーボンブラック以外のカーボンブラックを、好ましくはカーボンブラック全体の0~70質量%、より好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%含有することができる。
【0037】
他種のカーボンブラックとしては、ゴム用として一般的なものを適宜利用することができる。具体的にはN110、N115、N120、N125、N134、N135、N219、N220、N231、N234、N293、N299、N326、N330、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991等を好適に用いることができ、これ以外にも自社合成品等も好適に用いることができる。
【0038】
<その他の成分>
本実施形態のトレッド用ゴム組成物は、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般的に使用される配合剤、例えば、前記のカーボンブラック以外の充填剤(他の充填剤)、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、ワックス、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤などを適宜含有することができる。
【0039】
前記他の充填剤としては特に限定されず、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、タルクなどが挙げられ、これらの充填剤を単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0040】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0041】
シリカのBET比表面積は、耐久性や破断時伸びの観点から、80m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましい。また、シリカのBET比表面積は、低燃費性および加工性の観点から、250m2/g以下が好ましく、220m2/g以下がより好ましい。なお、本明細書におけるシリカのBET比表面積は、ASTM D3037-93に準じて測定された値である。
【0042】
シリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐久性や破断時伸びの観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。また、シリカの含有量は、耐摩耗性の観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
【0043】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、Momentive社製のNXT-Z100、NXT-Z45、NXTなどのメルカプト系(メルカプト基を有するシランカップリング剤)、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
シランカップリング剤を含有する場合のシリカ100質量部に対する含有量は、十分なフィラー分散性の改善効果や、粘度低減等の効果が得られるという理由から、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。また、十分なカップリング効果、シリカ分散効果が得られず、補強性が低下するという理由から、シランカップリング剤の含有量は、12質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0045】
前記老化防止剤としては特に限定されず、ゴム分野で使用されているものが使用可能であり、例えば、キノリン系、キノン系、フェノール系、フェニレンジアミン系老化防止剤などが挙げられる。
【0046】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましい。また、老化防止剤の含有量は、充填剤等の分散性、破断時伸び、混練効率の観点から、2.0質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましく、1.2質量部以下がより好ましい。
【0047】
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩等が挙げられる。具体的には、例えば、ストラクトール社製のEF44、WB16等の脂肪酸石鹸系加工助剤が挙げられる。加工助剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に3質量部以下であるのが好ましい。
【0048】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0049】
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加硫速度の観点から、0.2質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、加工性の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0050】
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加硫速度の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0051】
前記軟化剤は、アセトンに可溶な成分を意味し、例えば、プロセスオイルや植物油脂等のオイル、液状ジエン系重合体等が挙げられる。これらの軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、オイルが好ましい。
【0052】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、その混合物などが挙げられる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル(アロマオイル)等が挙げられる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。なかでも、アロマオイルが好ましい。
【0053】
液状ジエン系重合体としては、重量平均分子量が50000以下のジエン系重合体であれば特に限定されず、例えば、スチレンブタジエン共重合体(ゴム)、ブタジエン重合体(ゴム)、イソプレン重合体(ゴム)、アクリロニトリルブタジエン共重合体(ゴム)等が挙げられる。液状ジエン系重合体のなかでも、雪氷上性能に優れるという理由からは、液状スチレンブタジエン共重合体(液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR))が好ましい。また、耐摩耗性能の向上効果が大きいという理由からは、液状ブタジエン重合体(液状ブタジエンゴム(液状BR))が好ましい。
【0054】
液状ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性の向上効果に優れるという理由から、1000以上が好ましく、1500以上がより好ましい。また、雪氷上性能の観点から、50000以下が好ましく、20000以下がより好ましく、15000以下がより好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0055】
軟化剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。また、軟化剤の含有量は、耐ブロック性能および耐摩耗性の観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0056】
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0057】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保し、良好なグリップ性能および耐摩耗性を得るという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。また、劣化の観点からは、3.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましい。
【0058】
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200、フレキシス社製のDURALINK HTS(1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物)、ランクセス社製のKA9188(1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)等の硫黄原子を含む加硫剤や、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0059】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、又はキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、およびグアニジン系加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤がより好ましい。
【0060】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、およびN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)が好ましい。
【0061】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0062】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジンが好ましい。
【0063】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫速度を確保するという観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上が好ましい。また、加硫促進剤の含有量は、ブルーミングを抑制するという観点から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0064】
<ゴム組成物およびタイヤの製造>
本実施形態に係るゴム組成物は、一般的な方法で製造できる。例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどの一般的なゴム工業で使用される公知の混練機で、前記各成分のうち、架橋剤および加硫促進剤以外の成分を混練りした後、これに、架橋剤および加硫促進剤を加えてさらに混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0065】
本発明の他の実施形態は、上記ゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤである。上記ゴム組成物により構成されるタイヤ部材としては、トレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード等の各タイヤ部材が挙げられる。なかでも、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能および低燃費性能に優れることからトレッドが好ましい。
【0066】
本実施形態に係るタイヤは、上記ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造することができる。すなわち、上記の各成分を混練して得られた未加硫ゴム組成物をトレッド等のタイヤ部材の形状にあわせて押出し加工した部材をタイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成形することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより製造することができる。
【0067】
本実施形態に係るタイヤは、特にカテゴリーは限定されないが、乗用車用タイヤ、トラックやバス等の重荷重用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、ランフラットタイヤ、非空気入りタイヤ等とすることが好ましく、トラック用のドライブ用タイヤとしての使用に特に適している。また、本実施形態に係るタイヤは、耐摩耗性能と耐チッピング性能に優れるので、悪路路面(未舗装の荒れた路面)の走行に適している。
【実施例
【0068】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0069】
実施例および比較例で使用した各種薬品について説明する。
NR:TSR20
SBR1:非油展溶液重合SBR(Mn:30万、スチレン含量:27質量%、ビニル含量:57モル%)
SBR2:非油展溶液重合SBR(Mn:18万、スチレン含量:20質量%、ビニル含量:60モル%)
SBR3:非油展溶液重合SBR(Mn:43万、スチレン含量:10質量%、ビニル含量:40モル%)
SBR4:非油展溶液重合SBR(Mn:10万、スチレン含量:24質量%、ビニル含量:16モル%)
BR:宇部興産(株)製のUBEPOL BR150B(ハイシスBR、シス-1,4結合含量:96%)
カーボンブラック1:CTAB:138m2/g、ヨウ素吸着量:145mg/g
カーボンブラック2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(CTAB:110m2/g、ヨウ素吸着量:121mg/g)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース355
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
オイル:(株)ジャパンエナジー製のTDAEオイル
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS))
【0070】
実施例および比較例
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度170℃になるまで5分間混練りし、混練物を得た。さらに、得られた混練物を前記バンバリーミキサーにより、排出温度150℃で4分間、再度混練りした(リミル)。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間プレス加硫することで、試験用ゴム組成物を作製した。
【0071】
また、前記未加硫ゴム組成物を所定の形状の口金を備えた押し出し機でタイヤトレッドの形状に押し出し成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、プレス加硫することにより、試験用タイヤ(12R22.5、トラック バス用タイヤ)を製造した。
【0072】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物および試験用タイヤについて下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0073】
<耐ブロック欠け性能>
各試験用タイヤを車両(トラック)の全輪に装着し、走行距離8000km後のブロック欠け状態を目視で観察して評点をつけた。結果は実施例3の評点を100とし、下記計算式による指数で示す。指数が大きいほど、ブロック欠けが発生しておらず、耐ブロック欠け性能が高いことを示す。
(耐ブロック欠け性能指数)=(各配合例の評点)/(実施例3の評点)×100
【0074】
<耐摩耗性能>
各試験用タイヤを車両(トラック)の全輪に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を求めた。結果は実施例3のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離を100とし、下記計算式による指数で示す。指数が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示す。
(耐摩耗性指数)=(各配合例のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)/(実施例3のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)×100
【0075】
<発熱性能>
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターVESを用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定した。結果は実施例3のtanδを100とし、下記計算式による指数で示す。指数が大きいほど低燃費性に優れることを示す。
(発熱性指数)=(実施例3のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0076】
【表1】
【0077】
表1の結果より、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム、および所定のスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分を含有する本発明のタイヤ用ゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤは、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能および発熱性能の総合性能が改善されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能、および発熱性能の総合性能が改善されたタイヤ用ゴム組成物およびこのゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤを提供することができる。