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特許7040133光走査装置、画像形成装置、および光走査装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】光走査装置、画像形成装置、および光走査装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20220315BHJP
   G02B 26/12 20060101ALI20220315BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20220315BHJP
   G03G 15/04 20060101ALI20220315BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20220315BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G02B26/10 F
G02B26/12
B41J2/47 101Z
G03G15/04
G03G21/16 166
H04N1/12 102
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018038471
(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公開番号】P2019152776
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷山 彰
(72)【発明者】
【氏名】田島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 崇
(72)【発明者】
【氏名】小林 大介
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-113956(JP,A)
【文献】特開2017-032612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10
G02B 26/12
B41J 2/47
G03G 15/04
G03G 21/16
H04N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部材と前記底面部材に立設された壁部材とが一体に形成されたハウジングと、
前記底面部材に固定された偏向器と、
前記偏向器との間に所定の状態を保って前記ハウジングに保持された光学部材とを備えた光走査装置において、
前記壁部材は、前記底面部材に沿った延設方向の線膨張係数が、前記底面部材との接合部側よりも前記壁部材の高さ方向の頂部側で大きく構成されている
光走査装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、強化繊維を含む樹脂材料によって構成され、
前記壁部材における前記強化繊維の配向方向は、前記底面部材との接合部側において前記底面部材に沿った前記壁部材の延設方向であり、前記頂部側において前記壁部材の高さ方向である
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、射出成型によって前記底面部材と前記壁部材とが一体に形成されたものであり、
前記壁部材は、前記頂部側から前記接合部側に向かうスリットを有する
請求項1または2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記壁部材の頂部には、前記ハウジングの本体とは別体の補強部材が、前記スリットを前記頂部側から塞ぐ状態で設けられている
請求項3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記壁部材のスリットは、前記ハウジングの本体とは埋め込み部材でシールされている
請求項3に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記スリットは、前記壁部材の厚みを削って薄くした部分である
請求項3に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記底面部材と前記壁部材との接合部に、孔部を有する
請求項1~6の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記偏向器は、前記底面部材の中央に固定されている
請求項1~7の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の光走査装置の製造方法であって、
底面部材と前記底面部材に立設された壁部材とを備え、前記壁部材が高さ方向の頂部側から前記底面部材との接合部側に向かうスリットを有するハウジングを、強化繊維を含む樹脂材料の射出成型によって一体に形成する際、
前記壁部材の形成部には前記接合部側の端部から前記底面部材に沿った方向に前記樹脂材料を流し込む
光走査装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1~8の何れか1項に記載の光走査装置を備えた
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、画像形成装置、および光走査装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、帯電、露光、および現像を行う電子写真プロセスによって感光体上に各色のトナー画像を形成し、このトナー画像を記録媒体上に転写するものである。このような画像形成装置において、露光に用いる光走査装置は、光源から射出された光ビームを偏向して走査する偏向器を有する。この偏向器は、複数の反射面を有する反射部材と、これを回転させるためのモーターを備え、他の光学部材と共に光走査装置の筐体に保持されているが、モーターの駆動による発熱が筺体を熱変形させ、偏向器を含む光学部材の配置状態を狂わす要因となっている。
【0003】
そこで、強化繊維の配向方向に応じて強化樹脂を含有する繊維強化樹脂の線膨張係数が異なることを利用し、強化繊維の配向方向を所定状態に設定した繊維強化樹脂によって筐体の蓋、あるいは筐体の底部に固定した補強部材を形成することにより、筺体の熱変形を抑制する構成が提案されている(下記特許文献1参照)。またこの他にも、複数の発光素子設置部が、光学系保持部から相互に異なる高さで複数の発光素子それぞれを保持し、保持する前記発光素子の高さ位置が高いものほど、その延設方向に沿った熱膨張係数が小さくなるように、発光素子設置部それぞれを構成する樹脂材料における繊維強化剤の配向方向を異なる方向とする構成が提案されている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-32612号公報
【文献】特開2014-235341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成の光走査装置は、モーターの駆動による筐体(保持部)の熱変形自体を防止する構成ではなく、熱変形を防止する効果が十分ではない。そこで本発明は、偏向器を含む光学部材を保持する筐体の変形を効果的に防止することが可能な光走査装置およびその製造方法を提供すること、およびこの光走査装置を用いたことにより形成画像の画質の向上を図ることが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、底面部材と前記底面部材に立設された壁部材とが一体に形成されたハウジングと、前記底面部材に固定された偏向器と、前記偏向器との間に所定の状態を保って前記ハウジングに保持された光学部材とを備えた光走査装置において、前記壁部材は、前記底面部材に沿った延設方向の線膨張係数が、前記底面部材との接合部側よりも前記壁部材の高さ方向の頂部側で大きく構成されている。
【発明の効果】
【0007】
以上のような構成の本発明によれば、偏向器を含む光学部材が保持されたハウジングの変形を効果的に防止することが可能な光走査装置およびその製造方法を提供すること、およびこの光走査装置を用いたことにより形成画像の画質の向上を図ることが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の各実施形態に係る画像形成装置の全体構成を説明するための図である。
図2】第1実施形態に係る光走査装置の構成図(その1)である。
図3】第1実施形態に係る光走査装置の構成図(その2)である。
図4】第1実施形態に係る光走査装置におけるハウジングの要部斜視図である。
図5】第1実施形態に係る光走査装置におけるハウジングの製造方法を示す図である。
図6】本発明の比較となるハウジングの熱変形を説明するための要部斜視図である。
図7】第2実施形態に係る光走査装置の構成図(その1)である。
図8】第2実施形態に係る光走査装置の構成図(その2)である。
図9】第2実施形態に係る光走査装置におけるハウジングの要部斜視図である。
図10】第3実施形態に係る光走査装置におけるハウジングの要部斜視図である。
図11】第4実施形態に係る光走査装置におけるハウジングの要部斜視図である。
図12】第5実施形態に係る光走査装置におけるハウジングの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪本発明の実施形態に係る画像形成装置≫
先ず、本発明を適用した各実施形態に係る光走査装置および画像形成装置の説明に先立ち、図1を用いて本発明の各実施形態および変形例に係る画像形成装置の概略構成を説明する。
【0010】
図1は、本発明の各実施形態に係る画像形成装置の全体構成を説明するための図であり、以降に説明する各実施形態の光走査装置を有する電子写真方式の画像形成装置1を前面(正面)から見た構成図である。図1に示す画像形成装置1は、筐体10を有し、その内部に、画像形成部20、光走査部30、転写部40、定着部50、用紙供給部60、および用紙搬送部70を備えている。これらの各要素の構成は次のようである。
【0011】
<画像形成部20>
画像形成部20は、例えばイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット20y,20m,20c,20kを有する。各画像形成ユニット20y,20m,20c,20kは、それぞれが感光体21と、感光体21の周囲に配置されたクリーナー22、帯電装置23、および現像装置24とを備えている。
【0012】
このうち感光体21は、トナー像が形成される像担持体の1つであって、各感光体21は、駆動モーターによって回転するドラム状のものであり、ドラム状の側周表面を像担持面とするものである。このような感光体21は、転写部40に当接して配置されている。なお、クリーナー22、帯電装置23、および現像装置24は、感光体21と転写部40との当接位置から感光体21の回転方向下流側に、クリーナー22、帯電装置23、および現像装置24の順に配置されている。
【0013】
クリーナー22は、感光体21の像担持面21aに残留したトナーを除去するためのものである。また、帯電装置23は、感光体21の像担持面をコロナ放電により帯電させるためのものである。さらに現像装置24は、攪拌して帯電させたトナーを、感光体21の像担持面に付着させるためのものである。
【0014】
<光走査部30>
光走査部30は、画像形成部20と並列して配置されている。この光走査部30は、画像データに基づいて、感光体21の像担持面にレーザー光Hを照射して静電潜像を形成する書込部である。画像データは、画像形成装置1に備えられた画像読取部(図示省略)で生成されるデータや、画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピュータや他の画像形成装置などの外部装置から受信したデータであることとする。
【0015】
このような光走査部30は、複数の光走査装置31を有する。各光走査装置31は、例えば2つのレーザー光Hを走査する両側偏向のものであるが、偏向器を有する光学系を備えたものであれば、1つのレーザー光Hを走査する1つの片側偏向のものであってもよく、さらに他の構成のものであってもよい。ここでは、各光走査装置31が、同一構成の両側偏向のものであることとして説明を行う。これらの光走査装置31の詳細な構成は、以降の各実施形態において説明する。
【0016】
<転写部40>
転写部40は、画像形成部20と並列して配置されている。この転写部40は、回転する無端ベルトとして構成された中間転写ベルト41、中間転写ベルト41に内接された駆動ローラー42および従動ローラー43、複数の一次転写ローラー44、二次転写ローラー45、およびクリーナー46を備えている。
【0017】
このうち中間転写ベルト41は、トナー像が形成される像担持体の1つであって、駆動ローラー42および従動ローラー43に掛け渡された状態で配置されている。駆動ローラー42および従動ローラー43に掛け渡された状態の中間転写ベルト41の外周面は、像担持面41aであって、画像形成ユニット20y,20m,20c,20kの各感光体21の回転とは逆方向に回転し、感光体21の全てに順次接触する状態で配置されている。
【0018】
そして一次転写ローラー44は、中間転写ベルト41の内周側で、各画像形成ユニット20y,20m,20c,20kの感光体21と対向するそれぞれの位置に、各感光体21との間に中間転写ベルト41を挟持する状態で配置されている。これらの一次転写ローラー44は、トナーと反対の極性の電圧が印加され、これにより感光体21の像担持面上に付着したトナーを中間転写ベルト41の像担持面41aに転写させる。また中間転写ベルト41の回転駆動により、中間転写ベルト41の像担持面41aには、4つの画像形成ユニット20y,20m,20c,20kの各感光体21に形成された各色のトナー像が順次転写され、中間転写ベルト41上には、各色のトナー像が重なり合ったカラー画像が形成される。
【0019】
また二次転写ローラー45は、中間転写ベルト41の像担持面41a側において、例えば従動ローラー43に対向する位置に、従動ローラー43との間に中間転写ベルト41を挟持する状態で配置されている。そして、二次転写ローラー45と従動ローラー43とが接触するニップ部は、中間転写ベルト41の像担持面41a上に形成されたトナー画像を、以降に説明する用紙供給部60から搬送されたシート状の記録媒体Pに転写する転写位置となる。
【0020】
またクリーナー46は、中間転写ベルト41の回転方向において、二次転写ローラー45の下流側で、かつ画像形成部20の上流側の位置において、中間転写ベルト41の像担持面41aに対向して配置されている。このクリーナー46は、中間転写ベルト41の像担持面41aに残留したトナーを除去するためのものである。
【0021】
<定着部50>
定着部50は、次に説明する用紙供給部60から搬送された記録媒体Pの搬送方向に対して、転写部40における二次転写ローラー45の下流側に配置されている。この定着部50は、加熱ローラー51と、この加熱ローラー51に対向配置された圧着ローラー52とを備え、二次転写ローラー45から搬送された記録媒体Pをニップし、記録媒体Pに転写されたトナー像を記録媒体Pに定着させる。
【0022】
<用紙供給部60>
用紙供給部60は、記録媒体Pを収納するカセット61と、カセット61に収納された記録媒体Pを1枚ずつカセット61から送り出す送り出しローラー62を備え、記録媒体Pをカセット61から用紙搬送部70に供給する。
【0023】
<用紙搬送部70>
用紙搬送部70は、用紙供給部60から供給された記録媒体Pを、所定のルートに沿って搬送するものであって、複数のローラー対71によって構成されている。このような用紙搬送部70は、用紙供給部60から供給された記録媒体Pを、二次転写ローラー45、定着部50、および筐体10に設けられた排紙トレイ10aの順に搬送する。
【0024】
≪第1実施形態≫
<光走査装置31の構成>
図2は、第1実施形態に係る光走査装置31の構成図(その1)である。また図3は、第1実施形態に係る光走査装置31の構成図(その2)であって、図2のA-A断面に相当する図面である。これらの図に示すように、両側偏向の光走査装置31は、1つの偏向器100を共有する第1光学系A1と第2光学系A2とを備えている。このような光走査装置31は、第1光学系A1および第2光学系A2を構成する光学部材100~109と、これらの光学部材100~109を保持するためのハウジング200-1とを有する。
【0025】
[ハウジング200-1]
ハウジング200-1は、ここでの図示を省略した蓋部材および底蓋部材と共に、光学部材100~109を収容するための筐体を構成する。このようなハウジング200-1は、四角柱形状の側壁部材201で囲まれた中間高さに底面部材202が設けられた箱状のものであって、側壁部材201が筐体の側周壁を構成する。
【0026】
このハウジング200-1において、その底面部材202で仕切られた一方の空間部の中央には、一対の隔壁部材203によって仕切られた偏向器100の収容室204が設けられている。収容室204の両側は、第1光学室204-1、および第2光学室204-2となっている。底面部材202の床高さは、収容室204において、第1光学室204-1および第2光学室204-2よりも低くなっている。また、ハウジング200-1において、その底面部材202で仕切られた他方の空間部は、一連の裏面室205となっている。
【0027】
ここで、収容室204を構成する一対の隔壁部材203には、それぞれに第1開口203aと、複数のスリット203bが設けられている。このうち第1開口203aは、偏向器100で偏光させたレーザー光Hを透過させるための開口である。またスリット203bは、第1開口203aを挟んだ両脇に設けられた切り込み部分である。
【0028】
図4は、第1実施形態に係る光走査装置31におけるハウジング200-1の要部斜視図であって、図2および図3に示した一対の隔壁部材203の一方を偏向器100の収容室204側から見た図である。図4に示すように、隔壁部材203は、略中央に第1開口203aを備え、その両脇に複数のスリット203bを備えている。
【0029】
第1開口203aは、隔壁部材203を貫通する開口であって、偏向器100によって偏向されるレーザー光Hの光路を妨げることのない十分な開口幅を有して設けられている。
【0030】
また各スリット203bは、隔壁部材203の頂部Aから底面部材202との接合部B側に向かって、隔壁部材203に設けた切り込み部分であって、隔壁部材203の厚み方向に貫通して設けられた開口部分となっている。スリット203bの高さ[h]、幅[w]、および配置間隔[p]は、ハウジング200-1の強度が保たれる程度であれば、限定されることはない。またスリット203bが設けられる位置は、第1開口203aの両脇に限定させることはなく、偏向器100の設置位置に近いことが好ましい。このため、スリット203bは、第1開口203aと重なる位置であってもよいが、ハウジング200-1の強度を確保する観点からは、図示したように第1開口203aの両脇で有ることが好ましい。
【0031】
図2および図3に戻り、第1光学室204-1と第2光学室204-2における底面部材202には、それぞれ第2開口202aが設けられ、第1光学室204-1と第2光学室204-2とが裏面室205に連通する構成となっている。これらの第2開口202aは、裏面室205側にレーザー光Hを導くための開口である。なお、ここでの図示は省略したが、ハウジング200-1内には、以降に説明する光学部材100~109を支持するための複数の支持部材が設けられていることとする。
【0032】
以上のような構成のハウジング200-1は、強化繊維を含有する樹脂材料によって一体に形成されたものである。そして特に先の図4中の二点鎖線に示す強化繊維Fの配向方向が、底面部材202との接合部B側と、隔壁部材203の頂部A側に近いスリット203b間において異なるところが特徴的である。すなわち、図4に示すように、底面部材202に沿って隔壁部材203が延設されている方向を延設方向[x]とし、この延設方向[x]と略垂直な方向であって、底面部材202から隔壁部材203が突出する方向を高さ方向[y]とする。
【0033】
この場合、隔壁部材203において、図中に二点鎖線に示す強化繊維Fの配向方向は、底面部材202との接合部B側において、延設方向[x]である。この延設方向[x]は、延設方向[x]に対して略平行な方向を含む。また、強化繊維Fの配向方向は、隔壁部材203の頂部Aに近いスリット203b間において、高さ方向[y]である。この高さ方向[y]は、高さ方向[y]に対して略平行な方向を含む。
【0034】
ここで、強化繊維Fを含有する樹脂材料の線膨張係数は、強化繊維Fの配向方向には小さく、配向方向に対して垂直な方向には大きい値となる。したがって、以上のように構成された隔壁部材203における延設方向[x]の線膨張係数[kx]と、高さ方向[y]の線膨張係数[ky]は、底面部材202との接合部B側と頂部A側とで異なる値となる。
【0035】
すなわち、底面部材202との接合部B側においては、線膨張係数[kxb]<線膨張係数[kyb]であって、隔壁部材203の接合部B側は延設方向[x]に膨張し難い構成となっている。これに対し、スリット203bで分離されている頂部A側においては線膨張係数[kxa]>線膨張係数[kya]であって、隔壁部材203においてスリット203bで分離されている頂部A側は延設方向[x]に膨張し易い構成となっている。
【0036】
つまり、以上のように強化繊維Fの配光方向が調整された隔壁部材203においては、延設方向[x]の線膨張係数[kx]が、底面部材202との接合部B側の線膨張係数[kxb]<頂部A側の線膨張係数[kxa]となっているのである。
【0037】
[光学部材100~109]
光学部材100~109は、ハウジング200-1の内部に固定された状態で設けられたものであり、第1光学系A1と第2光学系A2とを構成する。これらの光学部材100~109は、レーザー光Hの光路に沿って、レーザー光Hの光源101、コリメーター102、シリンダー103、偏向器100、第1レンズ105、第1ミラー106、第2ミラー107、第2レンズ108、および第3ミラー109が、この順に配置されている。
【0038】
このうち偏向器100は、ポリゴンミラー100aと、ポリゴンミラー100aを回転させるモーター100bとを備えている。ポリゴンミラー100aは、正多角形柱形状の側面を反射面としたものである。またモーター100bは、電磁力などにより、正多角形柱形状の軸を回転軸としてポリゴンミラー100aを回転させるものであり、駆動のための回路を備えた回路基板を有している。
【0039】
このような構成の偏向器100は、回路基板を有するモーター100bを底面部材202側にして、ここでの図示を省略した放熱ケースに収容された状態で、ハウジング200-1における収容室204の中央に、接着またはネジ止めによって固定されている。
【0040】
また光源101、コリメーター102、およびシリンダー103は、偏向器100に対してレーザー光Hを供給するための光源光学系であって、ハウジング200-1における第1光学室204-1と第2光学室204-2とにそれぞれ配置されている。これらの光源光学系は、光源101から出射したレーザー光Hが、コリメーター102によって平行光とされ、シリンダー103によって副方向に集光され、さらに平板ガラスが嵌め込まれた第1開口203aを介して偏向器100のポリゴンミラー100aに照射される構成である。
【0041】
また第1レンズ105および第1ミラー106は、偏向器100からのレーザー光Hを感光体21に導く走査光学系の一部であって、ハウジング200-1における第1光学室204-1と第2光学室204-2とにそれぞれ配置されている。これらの走査光学系は、偏向器100によって偏向されたレーザー光Hを、第2開口202aから裏面室205へと導く。
【0042】
さらに第2ミラー107、第2レンズ108、および第3ミラー109は、走査光学系の一部であって、ハウジング200-1における裏面室205に配置されている。これらは、第2開口202aを通過したレーザー光Hを、図1に示した画像形成装置1の感光体21に導く。
【0043】
以上により、光学部材100~109は、各感光体21の像担持面において、各レーザー光Hを結像させて個別に走査させる構成となっている。
【0044】
<光走査装置の製造方法>
次に、以上説明した第1実施形態の光走査装置31の製造方法を説明する。この光走査装置31の製造においては、強化繊維Fを含有する樹脂材料の射出成形により、ハウジング200-1を一体成形するところに特徴がある。図5は、第1実施形態に係る光走査装置におけるハウジングの製造方法を示す図であって、射出成形によるハウジング200-1の一体成形における隔壁部材203部分の成形を示す図である。
【0045】
この図に示すように、隔壁部材203部分の射出成形については、底面部材202との接合部B付近において、隔壁部材203の延設方向xに沿って未硬化の樹脂材料が流れるように、金型における樹脂材料の注入ゲート位置が設定されていることとする。このような射出成形の一例として、隔壁部材203の形成部分に対して未硬化の樹脂材料が、底面部材202との接合部Bの端部B1から注入されるように金型を形成し、未硬化の樹脂材料を流し込む。
【0046】
これにより、図5中の矢印に示す樹脂材料の流れは、隔壁部材203の形成部分において、底面部材202との接合部B付近においては隔壁部材203の延設方向[x]になり、スリット203b間においては高さ方向[y]になる。したがって、このような射出成形によって形成されたハウジング200-1の隔壁部材203は、先の図4に示したように、強化繊維Fの配向方向が、底面部材202との接合部B側において延設方向[x]であり、隔壁部材203の頂部Aに近いスリット203b間においては高さ方向[y]のものとなる。
【0047】
<第1実施形態の効果>
以上説明した第1実施形態の光走査装置31は、側壁部材201と、偏向器100が固定される底面部材202と、底面部材202に立設させた隔壁部材203とが一体成形されたハウジング200-1を有する。このハウジング200-1において、特に隔壁部材203の延設方向[x]の膨張係数[kx]が、頂部A付近の膨張係数[kxa]と底面部材202との接合部B付近の熱膨張係数[kxb]とで、[kxb]<[kxa]となっている。
【0048】
これにより、偏向器100の駆動による発熱が、底面部材202から隔壁部材203に伝わった場合、底面部材202に近く温度上昇が大きい隔壁部材203の接合部B付近の熱膨張が抑えられる。その一方、底面部材202からは遠く温度上昇が小さい隔壁部材203の頂部A付近では、上昇温度に対する熱膨張が大きくなる。したがって、隔壁部材203は、頂部A側に凸となるような応力が発生し易くなる。
【0049】
ここで、偏向器100が固定された底面部材202が、モーター100bからの熱によって膨張した場合、底面部材202には、隔壁部材203が設けられていない裏面室205側に凸となる応力が働く。図6は、本発明の比較となるハウジング2000の熱変形を説明するための要部斜視図であって、隔壁部材2003に対して部分毎の膨張係数が設定されていない構成のものである。図6に示すように、隔壁部材2003に対して部分毎の膨張係数が設定されていない構成では、偏向器が固定された底面部材2002が、偏向器の熱によって膨張した場合、底面部材2002は、隔壁部材2003が設けられていない裏面室2005側に凸となるのである。このような変形は、偏向器が底面部材202の中央に配置されている場合に、特に大きくなる。またハウジング2000を構成する樹脂材料の熱伝導率は、金属などに比べ低いため、偏向器の近傍の温度上昇が大きい。隔壁部材2003の温度に着目すると、熱源である偏向器のモーター側が底面部材2002に固定されるため、隔壁部材2003の底面部材2002との接合部側は、隔壁部材2003の頂部Aと比較して、温度上昇が大きくなる。このため、隔壁部材2003の接合部B側の膨張による変形も加わって、底面部材2002が裏面室2005側に凸となるのである。
【0050】
このような場合であっても、前述した第1実施形態の光走査装置31に設けた隔壁部材203の構成であれば、隔壁部材203に発生する頂部A側に凸となる応力によって、底面部材202の裏面室205側に凸となる応力が相殺される。この結果、底面部材202の変形自体を抑えることができる。
【0051】
以上より、ハウジング200-1の熱変形を効果的に防止することができ、このハウジング200-1に保持された光学部材100~109の姿勢や位置関係を維持することが可能である。この結果、光走査装置31によるレーザー光Hの走査位置精度の向上を図ることができる。またこの光走査装置31を備えた画像形成装置1における形成画像の画質の向上を図ることが可能である。
【0052】
≪第2実施形態≫
図7は、第2実施形態に係る光走査装置32の構成図(その1)である。また図8は、第2実施形態に係る光走査装置の構成図(その2)であって、図7のA-A断面に相当する図である。これらの図に示す光走査装置32が、第1実施形態の光走査装置31と異なるところは、ハウジング200-2が、孔部302を備えたところにあり、他の構成は同様である。このためここでは、第1実施形態とは異なる構成要素のみを説明し、重複する説明は省略する。
【0053】
[ハウジング200-2]
ハウジング200-2は、偏向器100の収容室204と、第1光学室204-1および第2光学室204-2との間に、それぞれ孔部302が設けられている。これらの孔部302は、偏向器100の固定部に近接する位置であって、底面部材202と隔壁部材203とを分断する位置に設けられている。
【0054】
図9は、第2実施形態に係る光走査装置32におけるハウジング200-2の要部斜視図であって、図7および図8に示した一対の隔壁部材203’の一方を偏向器100の収容室204側から見た図である。図9および先の図7図8に示すように、孔部302は、レーザー光Hを通過させるために隔壁部材203’に設けた第1開口203aと連通していてもよいし、第1開口203aとは分離して設けられた形状であってもよい。また孔部302は、底面部材202と隔壁部材203’とを分断する位置に、複数箇所設けられていてもよい。このような孔部302は、ハウジング200-2の強度が保たれる程度の大きさ、幅、および個数で設けられていることとする。
【0055】
<光走査装置の製造方法>
次に、以上説明した第2実施形態の光走査装置32の製造方法も、射出成形によるハウジング200-2の一体成形に特徴があり、第1実施形態で説明した方法と同様に実施することとする。この際、ハウジング200-2の射出成形に用いる金型は、孔部302の形成位置にまで金型ブロックを伸ばした金型喰い切り形状にする。これにより、比較的容易に、孔部302を有するハウジング200-2を形成するための金型を作製することができる。
【0056】
<第2実施形態の効果>
以上説明した第2実施形態の光走査装置32であれば、第1実施形態の効果に加えて、さらに底面部材202と隔壁部材203との接合部に形成した孔部302が、底面部材202の熱膨張による面方向の変形を吸収し、底面部材202の裏面室205側に凸となる応力を低減する効果を得ることができる。この結果、第2実施形態の光走査装置32は、ハウジング200-2の変形自体を抑える効果がさらに高くいものとなる。
【0057】
≪第3実施形態≫
図10は、第3実施形態に係る光走査装置33におけるハウジング200-3の要部斜視図であって、第1実施形態の説明に用いた図2および図3に示した一対の隔壁部材203の一方を偏向器100の収容室204側から見た図である。この図を用いて説明する第3実施形態の光走査装置33は、第1実施形態で説明した構成の隔壁部材203に、補強部材303を取り付けた構成のものである。
【0058】
図10に示すように、補強部材303は、隔壁部材203に設けた複数のスリット203bを、隔壁部材203の頂部A側から塞ぐことにより、スリット203bの形成部を部分的に補強するものであって、スリット203bを完全に塞ぐ必要はない。このような補強部材303は、ハウジング200-3の本体とは別体として構成されて、ハウジング200-3の隔壁部材203に取り付けられたものである。補強部材303は、材質が限定されるものではないが、スポンジやゴムなどの弾性を有する材料、または弾性を持たない硬質材料によって構成されていてもよい。
【0059】
なお、本第3実施形態の構成は、第2実施形態と組み合わせてもよく、図9を用いて説明した孔部302を備えた隔壁部材203’に対して、補強部材303を取りつけてもよい。
【0060】
<第3実施形態の効果>
以上説明した第3実施形態の光走査装置32であれば、第1実施形態または第2実施形態の効果に加えて、ハウジング200-3に加えられた荷重を補強部材303に分散させることができる。これにより、ハウジング200-3の変形を抑えること、および隔壁部材203にスリット203bを設けたことによるハウジング200-3の強度低下を抑えることが可能になる。
【0061】
≪第4実施形態≫
図11は、第4実施形態に係る光走査装置34におけるハウジング200-4の要部斜視図であって、第1実施形態の説明に用いた図2および図3に示した一対の隔壁部材203の一方を偏向器100の収容室204側から見た図である。この図を用いて説明する第4実施形態の光走査装置34は、第1実施形態で説明した構成の隔壁部材203に、埋め込み部材304を取り付けた構成のものである。
【0062】
埋め込み部材304は、隔壁部材203に設けた複数のスリット203bを塞いでスリット203bをシールものである。このような埋め込み部材304は、ハウジング200-4の本体とは別体として構成されたものであり、材質が限定されるものではないが、スポンジやゴムなどの弾性を有する材料、または弾性を持たない硬質材料によって構成されていてもよい。またこの埋め込み部材304は、図10を用いて説明した第3実施形態の補強部材303を兼ねるものであってもよい。
【0063】
なお、本第4実施形態の構成は、第2実施形態と組み合わせてもよく、図9を用いて説明した孔部302を備えた隔壁部材203’に対して、埋め込み部材304を設けた構成としてもよい。
【0064】
<第4実施形態の効果>
以上説明した第3実施形態の光走査装置32であれば、第1実施形態~第3実施形態の効果に加えて、偏向器100が固定された収容室204を、冷却風の漏れが少ない効率的な冷却風の流路とすることができる。これにより、収容室204に臨む位置に冷却風の送風ファンなどを取り付けた場合には、収容室204に設けた偏向器100を冷却風によって効果的に冷却することが可能となり、ハウジング200-4の温度上昇と、これによる変形を効果的に抑えることができる。
【0065】
≪第5実施形態≫
図12は、第5実施形態に係る光走査装置35におけるハウジング200-5の要部斜視図であって、第1実施形態の説明に用いた図2および図3に示した一対の隔壁部材203の一方を偏向器100側から見た図に相当する。この図を用いて説明する第5実施形態の光走査装置35が、第1実施形態で説明した光走査装置31と異なるところは、隔壁部材203”に設けたスリット203b”の構造にあり、他の構成は第1実施形態と同様である。
【0066】
すなわち隔壁部材203”に設けたスリット203b”は、第1開口203aを挟んだ両脇に設けられた切り込み部分であるが、隔壁部材203”の厚み方向には貫通しておらず、隔壁部材203”の厚みを部分的に薄く削った部分である。図示した例においては、隔壁部材203”の収容室204側を削って薄くした部分をスリット203b”としている。しかしながら、スリット203b”は、隔壁部材203”を第1光学室204-1側および第2光学室204-2側から削って薄くした形状であってもよく、隔壁部材203”を厚み方向の両側から削って薄くした形状であってもよい。
【0067】
このようなスリット203b”の高さ[h]、幅[w]、深さ[d]、および配置間隔[p]は、ハウジング200-5の強度が保たれる程度であれば、限定されることはないが、深さ[d]はハウジング200-5の強度が保たれる範囲で大きい方が好ましい。
【0068】
なお、本第5実施形態の構成は、第2実施形態と組み合わせてもよい。この場合、隔壁部材203”と底面部材202との接合部に、隔壁部材203”と底面部材202とを分断する孔部を設ければよい。
【0069】
<第5実施形態の効果>
以上説明した第5実施形態の光走査装置35であれば、第1実施形態または第2実施形態の効果に加えて、ハウジング200-5の強度の低下を抑えることが可能である。また第4実施形態の光走査装置34と同様に偏向器100が固定された収容室204を、冷却風の漏れが少ない効率的な冷却風の流路とすることができる。これにより、収容室204に臨む位置に冷却風の送風ファンなどを取り付けた場合には、収容室204に設けた偏向器100を冷却風によって効果的に冷却することが可能となり、ハウジング200-5の温度上昇と、これによる変形を抑えることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…画像形成装置
31,32,33,34,35…光走査装置
100…偏向器
100~109…光学部材
200-1,200-2,200-3,200-4,200-5…ハウジング
202…底面部材
203,203’,203”…隔壁部材(壁部材)
203b,203b”…スリット
302…孔部
303…補強部材
304…埋め込み部材
A…頂部
B…接合部
F…強化繊維
[kx],[kxa],[kxb]…延設方向の線膨張係数
[x]…延設方向
[y]…高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12