(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20220315BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
H01L29/78 301S
H01L29/78 301D
(21)【出願番号】P 2018048743
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健一郎
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0104492(US,A1)
【文献】特開2017-045884(JP,A)
【文献】特開2012-033648(JP,A)
【文献】特開2017-028116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側において面内方向で電位差が発生し電流が前記面内方向を流れるように半導体素子が形成された半導体基板が用いられる半導体装置であって、
第1の導電型をもち内部において前記電流が前記面内方向を流れる第1の半導体層が前記半導体基板の表面側に設けられ、
前記第1の半導体層において、
前記第1の半導体層を貫通せずに表面側から前記第1の半導体層が掘下げられた溝が、前記電位差が発生する方向に沿って複数形成され、
前記電位差が発生する方向に沿って、前記溝の幅は3~10μmの範囲、前記溝の間隔は0.3~0.8μmの範囲とされ、
前記溝が絶縁層で埋め込まれ、
隣接する前記溝の間の前記表面において、前記第1の導電型と逆の第2の導電型をもつ表面導電層が形成されたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の半導体層の表面に前記第1の導電型と逆の第2の導電型をもつ第2の半導体層が局所的に形成され、かつ前記第1の半導体層の表面における前記第2の半導体層と離間した箇所に主電極が接続され、
平面視において、前記複数の溝は、前記主電極と前記第2の半導体層の間に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体素子はMOSFETであり、前記主電極は前記MOSFETにおけるドレイン電極とされたことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記表面導電層に電極が接続されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1の半導体層に前記溝を形成する溝形成工程と、
前記溝を埋め込むように前記半導体基板の前記表面に前記絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記溝の内部以外における前記表面の前記絶縁層を除去する絶縁層除去工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁層形成工程において、
初めに熱酸化を行うことによって熱酸化膜を前記溝の内面に形成した後に、CVD法によって前記絶縁層を形成することを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の面内方向で高電圧が印加されて動作する半導体装置の構造、製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子の1種であるパワーMOSFETにおいては、オン時において半導体基板の厚さ方向に電流(大電流)を流す縦型の素子と半導体基板の面内方向に電流を流す横型の素子が知られている。このうち、横型の素子の1種であるLDMOS(Laterally Diffused MOSFET)は、高周波特性が優れているため、特に好ましく用いられる。
【0003】
一般的なLDMOSの構造は、例えば特許文献1に記載されている。このLDMOS(半導体装置200)の断面図を
図5に示す。ここでは、その表面付近の構造のみが記載されている。ここでは、n型層81が設けられた半導体基板80が用いられ、その表面の一部に島状のベース領域となるp型層82が形成される。p型層82の中には、ソース電極91と接続される高不純物濃度のp
+層83、高不純物濃度のn
+層84が形成される。半導体基板80の上側には、表面に露出したn
+層84とn型層81を含む領域において、薄いゲート酸化膜90を介してゲート電極92が設けられる。半導体基板80の表面においてゲート電極92から離間した箇所に、高不純物濃度のn
+層85を介してドレイン電極93が接続される。n型層81のキャリア濃度はp型層82よりも十分に低いため、ソース電極91の電位(ソース電位)が接地電位、ドレイン電極93の電位(ドレイン電位)が正の高電位である場合にn型層81とp型層82の界面から広がる空乏層は、主にn型層81側で広がる。
【0004】
この半導体装置200においては、オン時(ゲート電極92にオンとなる電圧が印加された場合)には、n+層84からゲート電極92直下に形成されたチャネルを介してn型層81に電流が流れ、更にn型層81中を水平方向に電流が流れることによって、ソース電極91とドレイン電極93間に電流が流れる。
【0005】
一方、オフ時においては、n
+層84とn型層81の間で電流は流れず、n型層81には空乏層が広がり、接地電位とされたソース電極91、接地電位に近い低電位とされたゲート電極92と、高電位とされたドレイン電極93との間の電位差は大きいため、空乏層内部の最大電界強度は高くなる。すなわち、n型層91には、オン時においてはその面内方向(
図5における左右方向)で電流が流れ、オフ時においては電流は流れずに空乏層が形成され、空乏層内部の電界強度が高くなる。
【0006】
この最大電界強度が降伏電界強度を超えると、本来はオフであるにも関わらずソース電極91とドレイン電極93間に電流が流れるため、この半導体装置200の耐圧は、最大電界強度が降伏電界強度となる際のドレイン電圧となる。この最大電界強度を低下させて耐圧を高めるためには、
図5におけるn
+層85とp型層82等との間の間隔を広くすることが好ましい。一方、これらの層の間は前記のようにオン時における電流の経路となるため、オン時の抵抗を小さくし大電流を流せるようにするためには、これらの間の間隔は狭いことが好ましい。こうした点を考慮し、オン時の抵抗を減少させた上で耐圧を確保するために、p型層82とn
+層85との間に厚い酸化膜(フィールド酸化膜94)が設けられている。また、フィールド酸化膜94とゲート電極92とが重複する領域を設けることによって、この最大電界強度を低下させることもできる。
【0007】
上記のフィールド酸化膜94はゲート酸化膜90よりも大幅に厚く形成される。一方、前記のように耐圧を確保するためには、
図5におけるその横方向の長さは長くなるため、フィールド酸化膜94は厚く長くなり、こうした形状が実現できるような形成方法でフィールド酸化膜94は形成される。こうした形成方法としては、同様に厚い酸化膜が用いられるCMOS集積回路の素子分離用の酸化膜を形成する際にも用いられているような、シリコン窒化膜をマスクとして用いることにより局所的にSi表面を酸化させるLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法がある。なお、図においては単純化して示されているが、実際にはLOCOS法によるフィールド酸化膜94の厚さは一様ではなく、かつn型層81の表面よりも上側に突出した形状となる。
【0008】
一方、上記のようなLDMOSは、CMOS集積回路と同一の半導体基板に形成された混載デバイスとして用いられる場合も多い。この場合には、CMOS集積回路における素子分離用の酸化膜とLDMOSにおける上記のフィールド酸化膜94を同時に形成することができるため、製造工程を単純化でき、これにより混載デバイスの低コスト化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年のCMOS集積回路の高性能化のための微細化に伴い、その素子分離用のための酸化膜も微細化が進行し、その幅は微細化している。これに伴い、この素子分離用の酸化膜も、上記のようなLOCOS法によるものではなく、STI(Shallow Trench Isolation)となっている。STIにおいては、素子分離用酸化膜の形状に対応した微細な溝を半導体基板の表面に形成した後に全面に酸化膜を形成してこの溝を埋め込み、表面の酸化膜を除去することによってこの溝中にのみ残存した酸化膜(埋め込み絶縁層)が素子分離用酸化膜とされる。一方、LOCOS法によって同様の形状、寸法の素子分離用酸化膜を形成することは困難であった。
【0011】
前記の通り、
図5の半導体装置200とCMOS集積回路の混載デバイスを製造する際には、上記のフィールド酸化膜94と素子分離用酸化膜を同時に形成することが好ましい。ここで、前記のようにCMOS集積回路における素子分離用酸化膜の幅は微細化しているのに対し、LDMOSの耐圧を確保するためにフィールド酸化膜94の幅は広くされることには変わりがない。このため、フィールド酸化膜94の幅と素子分離用酸化膜の幅の乖離が大きくなった。
【0012】
ここで、前記のようなSTIを形成するための製造工程は、STIの寸法に応じて最適化された条件で行われる。このため、STIよりも大幅に広い幅をもつフィールド酸化膜94をSTIと同時に形成することは困難であった。すなわち、フィールド酸化膜94と素子分離用酸化膜を同一工程で形成することは困難であった。このため、幅の狭い埋め込み絶縁層を用いて高い耐圧が得られる構造が望まれた。
【0013】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の半導体装置は、表面側において面内方向で電位差が発生し電流が前記面内方向を流れるように半導体素子が形成された半導体基板が用いられる半導体装置であって、第1の導電型をもち内部において前記電流が前記面内方向を流れる第1の半導体層が前記半導体基板の表面側に設けられ、前記第1の半導体層において、前記第1の半導体層を貫通せずに表面側から前記第1の半導体層が掘下げられた溝が、前記電位差が発生する方向に沿って複数形成され、前記電位差が発生する方向に沿って、前記溝の幅は3~10μmの範囲、前記溝の間隔は0.3~0.8μmの範囲とされ、前記溝が絶縁層で埋め込まれ、隣接する前記溝の間の前記表面において、前記第1の導電型と逆の第2の導電型をもつ表面導電層が形成されたことを特徴とする。
本発明の半導体装置は、前記第1の半導体層の表面に前記第1の導電型と逆の第2の導電型をもつ第2の半導体層が局所的に形成され、かつ前記第1の半導体層の表面における前記第2の半導体層と離間した箇所に主電極が接続され、平面視において、前記複数の溝は、前記主電極と前記第2の半導体層の間に形成されたことを特徴とする。
本発明の半導体装置において、前記半導体素子はMOSFETであり、前記主電極は前記MOSFETにおけるドレイン電極とされたことを特徴とする。
本発明の半導体装置は、前記表面導電層に電極が接続されたことを特徴とする。
本発明の半導体装置の製造方法は、前記半導体装置の製造方法であって、前記第1の半導体層に前記溝を形成する溝形成工程と、前記溝を埋め込むように前記半導体基板の前記
表面に前記絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記溝の内部以外における前記表面の前記絶縁層を除去する絶縁層除去工程と、を具備することを特徴とする。
本発明の半導体装置は、前記絶縁層形成工程において、初めに熱酸化を行うことによって熱酸化膜を前記溝の内面に形成した後に、CVD法によって前記絶縁層を形成することを特徴とする。
【0015】
本発明は以上のように構成されているので、幅の狭い埋め込み絶縁層を用いて高い耐圧を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図2】従来の半導体装置における半導体基板中の電界分布を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る半導体装置における半導体基板中の電界分布を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【
図5】従来の半導体装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態となる半導体装置について説明する。この半導体装置の動作時においては、半導体基板の面内方向において高い電位差が発生する、あるいは面内方向において大電流が流れる。具体的には、この半導体装置1は、ソース電極とドレイン電極との間の電流のオン・オフがゲート電極の電位で制御されるMOSFETであり、特に、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極の全てが半導体基板の表面側に設けられたLDMOSである。
【0018】
図1は、この半導体装置1の構造を示す断面図である。この半導体装置1においては、Siで構成された半導体基板10が用いられてLDMOSが構成され、
図1においては、このLDMOSに対応する部分が示されている。実際にはこの部分以外の領域で、CMOS集積回路もこの半導体基板10に形成されている。
【0019】
半導体基板10の表面側には、エピタキシャル成長によって低濃度のn型であるn型層(第1の半導体層)11が設けられている。実際にはn型層11よりも下側に他の層が設けられているが、他の層は本願発明とは無関係であるため、ここではその記載は省略されている。n型層11は、前記の半導体装置200におけるn型層81と同様である。すなわち、n型層11には、オン時においてはその面内方向(
図1における左右方向)で電流が流れ、オフ時においては電流は流れずに空乏層が形成され、空乏層内部の電界強度が高くなる。
【0020】
また、p型層(ベース領域:第2の半導体層)12、p+層13、n+層14、15、ゲート酸化膜20、ソース電極(主電極)21、ゲート電極22、ドレイン電極(主電極)23についても、前記の半導体装置200におけるp型層82、p+層83、n+層84、85、ゲート酸化膜90、ソース電極91、ゲート電極92、ドレイン電極93とそれぞれ同様である。すなわち、これらの構成要素により、同様にLDMOSが形成される。
【0021】
ただし、ここでは、前記の幅の広いフィールド酸化膜94に代わり、幅の狭い埋め込み酸化層(埋め込み絶縁層)25が紙面と垂直な方向に延伸して複数列(図においては3列)設けられる。埋め込み酸化層25は、n型層11を貫通しない深さに形成された溝が絶縁層であるSiO2で埋め込まれて形成される。また、隣接する埋め込み酸化層25の間における半導体基板10の表面には、p+層(表面導電層)16が形成される。
【0022】
図1において、3つの埋め込み酸化層25と隣接する埋め込み酸化層25に挟まれたp
+層16が水平方向に配列した領域が
図5におけるフィールド酸化膜94に対応し、後述するように、これによって、オフ時におけるソース電極21、ドレイン電極23間の耐圧を高めることができる。一方、各埋め込み酸化層25の幅は、前記のフィールド酸化膜94よりも大幅に小さく設定することができる。具体的には、埋め込み酸化層25の幅は3~10μm程度、その間隔(p
+層16の幅)は0.3~0.8μm程度とされる。このため、同時に形成されるCMOS集積回路のSTIと埋め込み酸化層25を同時に形成することができる。
【0023】
次に、この半導体装置1において高い耐圧が得られる点について説明する。まず、比較のために、
図5の半導体装置200において、オフ時にドレイン電極93の電圧(ドレイン電圧Vd)を3段階に上昇させた場合におけるn型層91中の電界強度Eの分布を模式的に
図2に示す。ここでは、ドレイン電圧Vdは、このグラフにおけるEの積分値に対応し、Vdの印加によって発生する電界がn型層91中でこのように生成されることが示されている。
【0024】
図2においては、電界Eは最上部に示された半導体装置200の構造における横方向の位置xにおけるものとして1次元分布の計算値として示され、電界強度Eの分布における横軸xは、最上部に示された半導体装置200中の位置に対応する。ここでは、水平方向におけるソース側のpn接合(p型層92とn型層91との間の界面付近からドレイン側端部(n
+層85側)までの間の電界強度Eの分布が示されており、電界強度Eが零でない箇所は、空乏層となっている箇所である。また、ここで示された電界強度Eの分布のグラフ(a)(b)(c)においては、下側に向かうに従いVdが大きくされている。
【0025】
前記の通り、Vdを増大させるに従って空乏層の幅が特にn型層91側(pn接合の右側)で広がり、電界強度Eはpn接合界面で最大値をとる。この際、電界強度分布は、Vdに比例した相似形で変化し、n型層91中における電界強度Eの変化率dE/dx(傾き)は、x、Vdによらず一定である。このため、理想的には、pn接合界面の電界強度Eが降伏電界強度(Siの場合には3×105V/cm程度)となった場合のVdがこの半導体装置200の耐圧となる。
【0026】
一方、
図3においては、
図2と同様に、上記の半導体装置1においてVdを徐々に上昇させた場合の電界強度Eの分布を算出した結果を示す。ここでは、Vdの上昇に伴い空乏層が広がるという点は
図2の場合と同様であるが、電界強度Eの分布形状は、p
+層16の影響を大きく受ける。まず、最もVdが小さく空乏層が最も左側のp
+層16まで達しない(a)の場合には、前記の
図2(a)と同様の分布となる。
【0027】
次に、これよりもVdが大きくなったために空乏層が広がり、空乏層が左側のp
+層16を超えて形成された場合が(b)である。ここで、図において左側のp
+層16の左端の位置がA、右端の位置がBとされる。空乏層がp
+層16に達した場合には、p
+層16から空乏層中に多数の正孔が注入されるために(あるいはp
+層16側に形成される負イオンの影響により)、xがAよりも大きな部分で電界強度Eが大きく低下する。このため、電界強度Eは、(b)に示されたように、Aで大きく低下する。一方、この場合のVdが例えば
図2(b)の場合と同じであるとすると、Vdはこのグラフにおける電界強度Eの積分値となるため、xがAよりも小さな(
図3においてAよりも左側の)領域の電界強度Eは、Aよりも右側における電界強度Eの減少分だけ大きくなる。あるいは、、前記のようにp
+層16から注入された正孔は、xがAよりも右側の領域で電界強度Eを低下させるように作用しAよりも左側の領域では電界強度Eを増大させるように作用する。このため、
図2の場合には、dE/dxはn型層91中で一定であったのに対して、
図3(b)においては、xがAよりも大きな点でEが大きく減少する(|dE/dx|が大きくなる)ことによって、xがAよりも小さな点における|dE/dx|が小さくなる。
【0028】
図3の(b)よりも更にVdを大きくして空乏層が右側のp
+層16(左端の位置がC,右端の位置がD)を超えた場合が(c)である。この場合においては、Aよりも左側の領域における状況は(b)と変わりがないため、Bよりも右側の領域が(b)の場合となる。このため、(c)においては、Cよりも右側で電界強度Eが大きく減少し、かつCよりも左側の電界強度Eは大きくなる。その後、
図3の(c)よりも更にVdを大きくした場合が(d)である。
【0029】
図2の場合には、電界強度Eは単一ピークの分布をとりその最大値はpn接合界面で得られたのに対し、
図3(d)の場合には、電界強度Eはpn接合界面以外の箇所で最大値となる場合がある。また、Vdは
図2、3における電界強度Eの分布の積分値となるため、|dE/dx|が小さな領域(電界強度Eが高く維持された領域)が広く設けられた
図3の場合には、Vdが同等であれば、
図2の場合よりも電界強度の最大値を低くすることができる。すなわち、p
+層を
図1のように設けることにより、|dE/dx|を小さくすることができ、Vdが大きな場合でも、従来の半導体装置200よりも最大電界強度をより低くすることができ、耐圧を高めることができる。
【0030】
Vdが大きくされ空乏層が最も広がり最も電界強度が高くなる
図3(d)の場合における電界強度Eの分布の形状は、埋め込み酸化層25の数、埋め込み酸化層25、p
+層16の幅、p
+層16の不純物濃度の設定によって調整することができる。このため、埋め込み酸化層25、p
+層16の幅は、全てにおいて同一である必要はない。この場合、これらの幅が、
図1における横方向で一方の側から他方の側に向かうに従って徐々に変化するような設定とすることができる。p
+層16の不純物濃度についても同様である。
【0031】
また、複数存在するp
+層16に適宜電極を接続することによって、各p
+層16の電位を調整することもでき、これによっても
図3(d)の場合における電界強度Eの分布を調整し、これによって最大電界強度を低下させることができる。すなわち、こうした構成によって、更に耐圧を高めることができる。
【0032】
次に、上記の半導体装置1を製造する製造方法について説明する。ここで、上記の埋め込み酸化層25周辺の構造以外の構造は、従来より知られる半導体装置200と変わるところがないため、埋め込み酸化層25周辺の構造を形成する工程のみについて説明する。
図4は、この製造方法を示す工程断面図である。
【0033】
まず、
図4(a)に示されるように、平坦な半導体基板10(n型層11)の表面の一部に、イオン注入等によって、p
+層16を形成する。p
+層16としては、
図1の状態のように分断されている必要はなく、この時点では
図1の状態のp
+層16が連結された状態となるように広く形成することができる。
【0034】
次に、
図4(b)に示されるように、
図1における埋め込み酸化層25の形状に対応した、n型層11を貫通しない深さの溝Tをドライエッチングによってn型層11に形成する(溝形成工程)。その後、熱酸化を行い、
図4(c)に示されるようにSiO
2で構成された熱酸化膜31を全面に薄く形成する。熱酸化膜31は溝Tの内面を含めたn型層11の表面に一様に形成されるが、その厚さは数百nm以下であり溝Tの幅、深さと比べて十分に薄いため、この時点の表面の形状は、
図4(c)に示されるように、
図4(b)の熱酸化前の形状とほぼ同様となり、溝Tの形状が反映されている。
【0035】
その後、
図4(d)に示されるように、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)を原料に用いたCVD法によってSiO
2で構成されたCVD酸化膜32を厚く形成し、溝Tを埋め込んだ形態とすることができる(絶縁層形成工程)。その後、露出したSiO
2表面をCMP(化学機械研磨)等の手法により除去して平坦化することにより、
図4(e)に示されるように、溝T内にのみCVD酸化膜32、熱酸化膜31を残存させ、この残存した部分を埋め込み酸化層25とすることができる(絶縁層除去工程)。なお、ゲート電極22が形成される部分において熱酸化膜31を残存させ、これを
図1におけるゲート酸化膜20としてもよい。
【0036】
図4に示された埋め込み酸化層25を形成するための製造工程は、通常のCMOS集積回路における素子分離用のSTIを形成するための製造工程と同様である。この際、例えば
図4(b)~(e)に示された工程においては、溝Tの幅(埋め込み酸化層25の幅)に応じた最適化がなされる。上記の半導体装置1においては、埋め込み酸化層25の幅と上記のSTIの幅を同等とすることができるため、
図1に示されたLDMOSとCMOS集積回路を混載した半導体装置を製造する際に、上記の製造工程を共通に用いることができる。このため、上記の半導体装置1を安価に製造することができる。
【0037】
また、上記の例では、内部が高電界となり主電極の一方(ドレイン電極23)が接続された第1の半導体層(n型層11)がn型(第1の導電型)であり、その表面に局所的に形成され主電極の他方(ソース電極91)が接続された第2の半導体層(p型層12)がp型(第2の導電型)であるものとした。しかしながら、第1の半導体層と第2の半導体層の導電型を逆転させ、表面導電層(p+層16)の導電型を逆転させても、同様の効果を奏することは明らかである。
【0038】
なお、上記の半導体装置1はLDMOSであったが、半導体基板の面内方向に高い電位差が発生し、面内方向で電流が流されて動作する半導体装置であれば、前記のフィールド酸化膜94と同様の絶縁層が耐圧を確保するために用いられている場合が多い。上記の構成は、こうした場合において、このような絶縁層の構造を置換することができ、これによって同様の効果が得られることが明らかである。すなわち、上記の構成は、LDMOSに限定されない。
【符号の説明】
【0039】
1、200 半導体装置
10、80 半導体基板
11、81 n型層(第1の半導体層)
12、82 p型層(第2の半導体層)
13、83 p+層
14、15、84、85 n+層
16 p+層(表面導電層)
20、90 ゲート酸化膜
21、91 ソース電極(主電極)
22、92 ゲート電極
23、93 ドレイン電極(主電極)
25 埋め込み酸化層((埋め込み絶縁層))
31 熱酸化膜
32 CVD酸化膜
94 フィールド酸化膜
T 溝