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特許7040199荷電粒子ビーム軸合わせ装置、荷電粒子ビーム照射装置および荷電粒子ビーム軸合わせ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム軸合わせ装置、荷電粒子ビーム照射装置および荷電粒子ビーム軸合わせ方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/04 20060101AFI20220315BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20220315BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20220315BHJP
   H01J 37/252 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
H01J37/04 B
H01J37/147 B
H01J37/22 502H
H01J37/252 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018058282
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019169434
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 丈寛
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-054426(JP,A)
【文献】特開平03-095841(JP,A)
【文献】特開平06-243814(JP,A)
【文献】特開2000-077018(JP,A)
【文献】米国特許第05747814(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを第1の偏向部、集束レンズ、第2の偏向部および対物アパーチャ板を通して対象面に照射する荷電粒子ビーム照射装置における荷電粒子ビームの軸を調整する荷電粒子ビーム軸合わせ装置であって、
前記集束レンズの磁場強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させる強度変化部と、
磁場強度が前記第1の強度であるときの前記対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報を生成し、磁場強度が前記第2の強度であるときの前記対物アパーチャ板の前記開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報を生成する生成部と、
前記第1の情報に基づいて前記第1のアパーチャ像を画像として表示部に表示させるとともに、前記第2の情報に基づいて前記第2のアパーチャ像を画像として前記表示部に表示させる表示制御部と、
磁場強度の繰り返し変化の間に、前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の第1の移動指令を行う第1の移動指令部と、
前記第1の移動指令に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像を移動させるように前記第1の偏向部を制御する第1の偏向制御部と、
磁場強度の繰り返し変化の間に、前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の第2の移動指令を行う第2の移動指令部と、
前記第2の移動指令に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像を移動させるように前記第2の偏向部を制御する第2の偏向制御部とを備え
前記第1の移動指令部は、前記第1の偏向部による荷電粒子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を第1の操作子から受け付け、受け付けられた操作に基づいて前記第1の移動指令を行い、
前記第2の移動指令部は、前記第2の偏向部による荷電粒子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を第2の操作子から受け付け、受け付けられた操作に基づいて前記第2の移動指令を行い、
前記生成部は、前記第1または第2の偏向部の制御に追従した前記第1および第2のアパーチャ像の移動に伴って前記第1および第2の情報を更新し、
前記表示制御部は、更新された前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の移動を示すように、前記表示部に表示される前記第1および第2のアパーチャ像の画像を更新する、荷電粒子ビーム軸合わせ装置。
【請求項2】
前記第1および第2の操作子の一方は、ポインティングデバイスの第1の押下部であり、前記第1および第2の操作子の他方は、前記ポインティングデバイスの第2の押下部である、請求項記載の荷電粒子ビーム軸合わせ装置。
【請求項3】
前記強度変化部は、残像効果により前記表示部に前記第1および第2のアパーチャ像が同時に視認される周期で前記第1および第2の強度の繰り返し変化を行う、請求項または記載の荷電粒子ビーム軸合わせ装置。
【請求項4】
荷電粒子ビームを第1の偏向部、集束レンズ、第2の偏向部および対物アパーチャ板を通して対象面に照射する荷電粒子ビーム照射装置における荷電粒子ビームの軸を調整する荷電粒子ビーム軸合わせ装置であって、
前記集束レンズの磁場強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させる強度変化部と、
磁場強度が前記第1の強度であるときの前記対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報を生成し、磁場強度が前記第2の強度であるときの前記対物アパーチャ板の前記開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報を生成する生成部と、
磁場強度の繰り返し変化の間に、前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の第1の移動指令を行う第1の移動指令部と、
前記第1の移動指令に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像を移動させるように前記第1の偏向部を制御する第1の偏向制御部と、
磁場強度の繰り返し変化の間に、前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の第2の移動指令を行う第2の移動指令部と、
前記第2の移動指令に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像を移動させるように前記第2の偏向部を制御する第2の偏向制御部とを備え、
前記生成部は、前記第1または第2の偏向部の制御に追従した前記第1および第2のアパーチャ像の移動に伴って前記第1および第2の情報を更新し、
前記第1の移動指令部は、前記第1および第2の情報に基づいて前記第1のアパーチャ像と前記第2のアパーチャ像とを重ねるための前記第1および第2のアパーチャ像の移動方向および移動距離を特定し、特定された移動方向および移動距離に基づいて前記第1の移動指令を行い、
前記第2の移動指令部は、前記第1および第2の情報に基づいて前記第1および第2のアパーチャ像を予め定められた位置に移動させるための前記第1および第2のアパーチャ像の移動方向および移動距離を特定し、特定された移動方向および移動距離に基づいて前記第2の移動指令を行う荷電粒子ビーム軸合わせ装置。
【請求項5】
前記第1の移動指令部は、前記第1のアパーチャ像の重心と前記第2のアパーチャ像の重心とを重ねるための前記第1および第2のアパーチャ像の移動方向および移動距離を特定し、
前記第2の移動指令部は、前記第1および第2のアパーチャ像の重心を前記予め定められた位置に移動させるための前記第1および第2のアパーチャ像の移動方向および移動距離を特定する、請求項記載の荷電粒子ビーム軸合わせ装置。
【請求項6】
前記予め定められた位置は、対物レンズの光軸に重なる位置である、請求項または記載の荷電粒子ビーム軸合わせ装置。
【請求項7】
前記集束レンズは、第1および第2のコンデンサレンズを含み、
前記第1の強度は、前記第1のコンデンサレンズの所定の磁場強度と前記第2のコンデンサレンズの所定の磁場強度との組み合わせとして決定され、
前記第2の強度は、前記第1のコンデンサレンズの他の所定の磁場強度と前記第2のコンデンサレンズの他の所定の磁場強度との組み合わせとして決定される、請求項1~のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム軸合わせ装置。
【請求項8】
荷電粒子ビームを第1の偏向部、集束レンズ、第2の偏向部および対物アパーチャ板を通して対象面に照射する荷電粒子ビーム照射装置における荷電粒子ビームの軸を調整する荷電粒子ビーム軸合わせ装置であって、
前記集束レンズの磁場強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させる強度変化部と、
磁場強度が前記第1の強度であるときの前記対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報を生成し、磁場強度が前記第2の強度であるときの前記対物アパーチャ板の前記開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報を生成する生成部と、
磁場強度の繰り返し変化の間に、前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の第1の移動指令を行う第1の移動指令部と、
前記第1の移動指令に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像を移動させるように前記第1の偏向部を制御する第1の偏向制御部と、
磁場強度の繰り返し変化の間に、前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の第2の移動指令を行う第2の移動指令部と、
前記第2の移動指令に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像を移動させるように前記第2の偏向部を制御する第2の偏向制御部とを備え、
前記対象面は、荷電粒子ビームの電流を測定可能なファラデーカップに設けられ、
前記生成部は、前記ファラデーカップにより測定された電流に基づいて前記第1および第2の情報を生成する荷電粒子ビーム軸合わせ装置。
【請求項9】
前記第1および第2の強度の一方は、前記ファラデーカップにより測定される荷電粒子ビームの電流が最大となるように決定される、請求項記載の荷電粒子ビーム軸合わせ装置。
【請求項10】
前記ファラデーカップは、電流に対する複数の測定レンジにおいて荷電粒子ビームの電流を測定可能に構成され、
前記第1および第2の強度は、前記ファラデーカップにより測定される電流が同一の測定レンジに含まれるように決定される、請求項または記載の荷電粒子ビーム軸合わせ装置。
【請求項11】
荷電粒子ビームを生成する荷電粒子源と、
前記荷電粒子源により生成された荷電粒子ビームを磁場により集束する集束レンズと、
前記荷電粒子源により生成された荷電粒子ビームを偏向することにより荷電粒子ビームの軸と前記集束レンズの光軸との位置関係を調整する第1の偏向部と、
前記集束レンズにより集束された荷電粒子ビームの電流を制限する対物アパーチャ板と、
前記集束レンズにより集束された荷電粒子ビームを偏向することにより対象面上における荷電粒子ビームの位置関係を調整する第2の偏向部と、
荷電粒子ビームの軸を調整する請求項1~10のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム軸合わせ装置とを備える、荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項12】
荷電粒子ビームを第1の偏向部、集束レンズ、第2の偏向部および対物アパーチャ板を通して対象面に照射する荷電粒子ビーム照射装置における荷電粒子ビームの軸を調整する荷電粒子ビーム軸合わせ方法であって、
前記集束レンズの磁場強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させるステップと、
磁場強度が前記第1の強度であるときの前記対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報を生成し、磁場強度が前記第2の強度であるときの前記対物アパーチャ板の前記開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報を生成するステップと、
前記第1の情報に基づいて前記第1のアパーチャ像を画像として表示部に表示させるとともに、前記第2の情報に基づいて前記第2のアパーチャ像を画像として前記表示部に表示させるステップと、
磁場強度の繰り返し変化の間に、前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の第1の移動指令を行うステップと、
前記第1の移動指令に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像を移動させるように前記第1の偏向部を制御するステップと、
磁場の強度の繰り返し変化の間に、前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の第2の移動指令を行うステップと、
前記第2の移動指令に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像を移動させるように前記第2の偏向部を制御するステップとを含み、
前記第1の移動指令を行うステップは、前記第1の偏向部による荷電粒子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を第1の操作子から受け付け、受け付けられた操作に基づいて前記第1の移動指令を行うことを含み、
前記第2の移動指令を行うステップは、前記第2の偏向部による荷電粒子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を第2の操作子から受け付け、受け付けられた操作に基づいて前記第2の移動指令を行うことを含み、
前記第1および第2の情報を生成するステップは、前記第1または第2の偏向部の制御に追従した前記第1および第2のアパーチャ像の移動に伴って前記第1および第2の情報を更新することを含み、
前記第1および第2のアパーチャ像を前記表示部に表示させるステップは、更新された前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の移動を示すように、前記表示部に表示される前記第1および第2のアパーチャ像の画像を更新することを含む、荷電粒子ビーム軸合わせ方法。
【請求項13】
荷電粒子ビームを第1の偏向部、集束レンズ、第2の偏向部および対物アパーチャ板を通して対象面に照射する荷電粒子ビーム照射装置における荷電粒子ビームの軸を調整する荷電粒子ビーム軸合わせ方法であって、
前記集束レンズの磁場強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させるステップと、
磁場強度が前記第1の強度であるときの前記対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報を生成し、磁場強度が前記第2の強度であるときの前記対物アパーチャ板の前記開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報を生成するステップと、
磁場強度の繰り返し変化の間に、前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の第1の移動指令を行うステップと、
前記第1の移動指令に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像を移動させるように前記第1の偏向部を制御するステップと、
磁場の強度の繰り返し変化の間に、前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の第2の移動指令を行うステップと、
前記第2の移動指令に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像を移動させるように前記第2の偏向部を制御するステップとを含み、
前記第1および第2の情報を生成するステップは、前記第1または第2の偏向部の制御に追従した前記第1および第2のアパーチャ像の移動に伴って前記第1および第2の情報を更新することを含み、
前記第1の移動指令を行うステップは、前記第1および第2の情報に基づいて前記第1のアパーチャ像と前記第2のアパーチャ像とを重ねるための前記第1および第2のアパーチャ像の移動方向および移動距離を特定し、特定された移動方向および移動距離に基づいて前記第1の移動指令を行うことを含み、
前記第2の移動指令を行うステップは、前記第1および第2の情報に基づいて前記第1および第2のアパーチャ像を予め定められた位置に移動させるための前記第1および第2のアパーチャ像の移動方向および移動距離を特定し、特定された移動方向および移動距離に基づいて前記第2の移動指令を行うことを含む、荷電粒子ビーム軸合わせ方法。
【請求項14】
荷電粒子ビームを第1の偏向部、集束レンズ、第2の偏向部および対物アパーチャ板を通して対象面に照射する荷電粒子ビーム照射装置における荷電粒子ビームの軸を調整する荷電粒子ビーム軸合わせ方法であって、
前記集束レンズの磁場強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させるステップと、
磁場強度が前記第1の強度であるときの前記対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報を生成し、磁場強度が前記第2の強度であるときの前記対物アパーチャ板の前記開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報を生成するステップと、
磁場強度の繰り返し変化の間に、前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の第1の移動指令を行うステップと、
前記第1の移動指令に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像を移動させるように前記第1の偏向部を制御するステップと、
磁場の強度の繰り返し変化の間に、前記第1および第2の情報に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像の第2の移動指令を行うステップと、
前記第2の移動指令に基づいて、前記第1および第2のアパーチャ像を移動させるように前記第2の偏向部を制御するステップとを含み、
前記対象面は、荷電粒子ビームの電流を測定可能なファラデーカップに設けられ、
前記第1および第2の情報を生成するステップは、前記ファラデーカップにより測定された電流に基づいて前記第1および第2の情報を生成することを含む、荷電粒子ビーム軸合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームの軸合わせを行う荷電粒子ビーム軸合わせ装置、荷電粒子ビーム照射装置および荷電粒子ビーム軸合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料を高い分解能で分析または観察する装置として、荷電粒子ビーム照射装置が知られている。例えば、特許文献1には、電子銃、入口側ビーム偏向部、二段のコンデンサレンズからなる集束レンズ系、出口側ビーム偏向部、対物アパーチャ板、走査コイルおよび対物レンズを含む電子ビーム照射装置が記載されている。
【0003】
電子ビーム照射装置においては、電子銃から出射された電子ビームが、集束レンズ系を通過することにより集束された後、対物アパーチャ板を通過することによりビーム径が制限される。その後、電子ビームは、走査コイルを通過することにより面内で走査されつつ、対物レンズを通過することにより小さな径に絞られ、試料に照射される。電子ビームが照射された試料からは二次電子または特性X線等が放出され、これらが検出されることにより試料の観察または分析が行われる。
【0004】
入口側ビーム偏向部は、電子ビームが集束レンズ系の各コンデンサレンズの中心を通過するように電子ビームの軸合わせを行うために用いられる。出口側ビーム偏向部は、電子ビームが対物レンズの中心を通過するように電子ビームの軸合わせを行うために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-54426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された電子ビームの軸合わせにおいては、一方のコンデンサレンズの焦点が固定された状態で、他方のコンデンサレンズの焦点が異なる2つの位置にあるとき、出口側ビーム偏向部が走査されることにより2つの走査像がそれぞれ形成される。各走査像には、対物アパーチャ板の開口を示すアパーチャ像が現れる。2つのアパーチャ像の位置のずれは、2つのコンデンサレンズの中心と電子ビームの軸とのずれを反映する。そこで、2つのアパーチャ像が重畳された画像が作成され、表示部に表示される。なお、少なくとも一方のアパーチャ像は、ソフトウエアにより再生された静止画像またはその位置を示すマークである。
【0007】
使用者は、他方のアパーチャ像が一方のアパーチャ像に重なるように入口側ビーム偏向部を調整した後、他方のアパーチャ像が画像の中心に位置するように出口側ビーム偏向部を調整する。ここで、電子ビーム照射装置の構成によっては、2つの調整が互いに干渉し、上記の調整を繰り返すことが必要になることがある。この場合、使用者は、2つのアパーチャ像が重畳された画像を作成および更新する操作と、入口側ビーム偏向部を調整する操作と、出口側ビーム偏向部を調整する操作とを繰り返すこととなる。そのため、電子ビームの軸合わせは面倒であり、軸合わせを容易に行うことが可能な電子ビーム照射装置の開発が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、荷電粒子ビームの軸を容易に合わせることが可能な荷電粒子ビーム軸合わせ装置、荷電粒子ビーム照射装置および荷電粒子ビーム軸合わせ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る荷電粒子ビーム軸合わせ装置は、荷電粒子ビームを第1の偏向部、集束レンズ、第2の偏向部および対物アパーチャ板を通して対象面に照射する荷電粒子ビーム照射装置における荷電粒子ビームの軸を調整する荷電粒子ビーム軸合わせ装置であって、集束レンズの磁場強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させる強度変化部と、磁場強度が第1の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報を生成し、磁場強度が第2の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報を生成する生成部と、第1の情報に基づいて第1のアパーチャ像を画像として表示部に表示させるとともに、第2の情報に基づいて第2のアパーチャ像を画像として表示部に表示させる表示制御部と、磁場強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の第1の移動指令を行う第1の移動指令部と、第1の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第1の偏向部を制御する第1の偏向制御部と、磁場強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の第2の移動指令を行う第2の移動指令部と、第2の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第2の偏向部を制御する第2の偏向制御部とを備え、第1の移動指令部は、第1の偏向部による荷電粒子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を第1の操作子から受け付け、受け付けられた操作に基づいて第1の移動指令を行い、第2の移動指令部は、第2の偏向部による荷電粒子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を第2の操作子から受け付け、受け付けられた操作に基づいて第2の移動指令を行い、生成部は、第1または第2の偏向部の制御に追従した第1および第2のアパーチャ像の移動に伴って第1および第2の情報を更新し、表示制御部は、更新された第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の移動を示すように、表示部に表示される第1および第2のアパーチャ像の画像を更新する。
【0010】
この荷電粒子ビーム軸合わせ装置においては、集束レンズの磁場強度が第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化される。磁場強度が第1の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報が生成され、磁場強度が第2の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報が生成される。
【0011】
磁場強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1の移動指令が行われる。第1の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第1の偏向部が制御される。また、磁場の強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第2の移動指令が行われる。第2の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第2の偏向部が制御される。
【0012】
上記の構成によれば、磁場強度が第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化されるので、使用者は、強度を都度切り替えて第1および第2の情報を生成するための操作を行う必要がない。そのため、使用者の操作負担が軽減される。その結果、荷電粒子ビームの軸を合わせることが容易になる。
【0013】
また、荷電粒子ビーム軸合わせ装置は、第1の情報に基づいて第1のアパーチャ像を画像として表示部に表示させるとともに、第2の情報に基づいて第2のアパーチャ像を画像として表示部に表示させる表示制御部をさらに備え、第1の移動指令部は、第1の偏向部による荷電粒子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を第1の操作子から受け付け、受け付けられた操作に基づいて第1の移動指令を行い、第2の移動指令部は、第2の偏向部による荷電粒子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を第2の操作子から受け付け、受け付けられた操作に基づいて第2の移動指令を行い、生成部は、第1および第2のアパーチャ像の移動に伴って第1および第2の情報を更新し、表示制御部は、更新された第1および第2の情報に基づいて表示部に表示される第1および第2のアパーチャ像の画像を更新する
【0014】
この場合、第1または第2の偏向部の調整に追従して、表示部に表示された画像における第1および第2のアパーチャ像が移動する。そのため、使用者は、画像における第1および第2のアパーチャ像を視認しつつ、第1および第2の偏向部による荷電粒子ビームの偏向方向および偏向量を調整することができる。また、第1の操作子の操作と第2の操作子の操作とを使い分けることにより、第1の偏向部による調整と第2の偏向部による調整とを容易にかつ即座に切り替えることができる。これにより、荷電粒子ビーム軸合わせ装置の操作性が向上する。その結果、荷電粒子ビームの軸を短時間で容易に合わせることができる。
【0015】
)第1および第2の操作子の一方は、ポインティングデバイスの第1の押下部であり、第1および第2の操作子の他方は、ポインティングデバイスの第2の押下部であってもよい。
【0016】
この場合、使用者は、ポインティングデバイスの第1の押下部の押下と第2の押下部の押下とを使い分けることにより、第1の偏向部による調整と第2の偏向部による調整とをより容易にかつ即座に切り替えることができる。これにより、荷電粒子ビーム軸合わせ装置の操作性がより向上する。その結果、荷電粒子ビームの軸をより容易に合わせることができる。
【0017】
)強度変化部は、残像効果により表示部に第1および第2のアパーチャ像が同時に視認される周期で第1および第2の強度の繰り返し変化を行ってもよい。この場合、使用者は、画像における第1および第2のアパーチャ像を同時に視認し、第1および第2のアパーチャ像の位置関係を容易に把握することができる。これにより、荷電粒子ビームの軸をより容易に合わせることができる。
【0018】
第2の発明に係る荷電粒子ビーム軸合わせ装置は、荷電粒子ビームを第1の偏向部、集束レンズ、第2の偏向部および対物アパーチャ板を通して対象面に照射する荷電粒子ビーム照射装置における荷電粒子ビームの軸を調整する荷電粒子ビーム軸合わせ装置であって、集束レンズの磁場強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させる強度変化部と、磁場強度が第1の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報を生成し、磁場強度が第2の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報を生成する生成部と、磁場強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の第1の移動指令を行う第1の移動指令部と、第1の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第1の偏向部を制御する第1の偏向制御部と、磁場強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の第2の移動指令を行う第2の移動指令部と、第2の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第2の偏向部を制御する第2の偏向制御部とを備え、生成部は、第1または第2の偏向部の制御に追従した第1および第2のアパーチャ像の移動に伴って第1および第2の情報を更新し、第1の移動指令部は、第1および第2の情報に基づいて第1のアパーチャ像と第2のアパーチャ像とを重ねるための第1および第2のアパーチャ像の移動方向および移動距離を特定し、特定された移動方向および移動距離に基づいて第1の移動指令を行い、第2の移動指令部は、第1および第2の情報に基づいて第1および第2のアパーチャ像を予め定められた位置に移動させるための第1および第2のアパーチャ像の移動方向および移動距離を特定し、特定された移動方向および移動距離に基づいて第2の移動指令を行う
【0019】
この場合、第1および第2のアパーチャ像が予め定められた位置で重なるように第1および第2の偏向部が自動的に調整される。そのため、使用者は、第1および第2の偏向部を調整するための操作を行う必要がない。これにより、荷電粒子ビームの軸をさらに容易に合わせることができる。
【0020】
)第1の移動指令部は、第1のアパーチャ像の重心と第2のアパーチャ像の重心とを重ねるための第1および第2のアパーチャ像の移動方向および移動距離を特定し、第2の移動指令部は、第1および第2のアパーチャ像の重心を予め定められた位置に移動させるための第1および第2のアパーチャ像の移動方向および移動距離を特定してもよい。この構成によれば、第1および第2のアパーチャ像の中心を予め定められた位置で重ねる場合よりも、荷電粒子ビームの軸を正確に合わせることができる。
【0021】
)予め定められた位置は、対物レンズの光軸に重なる位置であってもよい。この場合、第1および第2のアパーチャ像を予め定められた位置に重ねることにより、荷電粒子ビームの軸を対物レンズの光軸に合わせることができる。
【0022】
)集束レンズは、第1および第2のコンデンサレンズを含み、第1の強度は、第1のコンデンサレンズの所定の磁場強度と第2のコンデンサレンズの所定の磁場強度との組み合わせとして決定され、第2の強度は、第1のコンデンサレンズの他の所定の磁場強度と第2のコンデンサレンズの他の所定の磁場強度との組み合わせとして決定されてもよい。
【0023】
この場合、荷電粒子ビームの電流を大きい範囲で変化させることができる。また、第1のコンデンサレンズの磁場強度と第2のコンデンサレンズの磁場強度とを連動して変化させた状態で荷電粒子ビームの軸合わせが行われる。そのため、軸合わせ後に、第1のコンデンサレンズの磁場強度と第2のコンデンサレンズの磁場強度とを連動して変化させた状態で荷電粒子ビーム照射装置を使用する場合でも、試料の所望の部分に正確に荷電粒子ビームを照射することができる。
【0024】
第3の発明に係る荷電粒子ビーム軸合わせ装置は、荷電粒子ビームを第1の偏向部、集束レンズ、第2の偏向部および対物アパーチャ板を通して対象面に照射する荷電粒子ビーム照射装置における荷電粒子ビームの軸を調整する荷電粒子ビーム軸合わせ装置であって、集束レンズの磁場強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させる強度変化部と、磁場強度が第1の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報を生成し、磁場強度が第2の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報を生成する生成部と、磁場強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の第1の移動指令を行う第1の移動指令部と、第1の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第1の偏向部を制御する第1の偏向制御部と、磁場強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の第2の移動指令を行う第2の移動指令部と、第2の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第2の偏向部を制御する第2の偏向制御部とを備え、対象面は、荷電粒子ビームの電流を測定可能なファラデーカップに設けられ、生成部は、ファラデーカップにより測定された電流に基づいて第1および第2の情報を生成する
【0025】
この場合、試料に荷電粒子ビームを照射することなく荷電粒子ビームの軸合わせを行うことができる。これにより、荷電粒子ビームにより試料が損傷することを防止することができる。
【0026】
)第1および第2の強度の一方は、ファラデーカップにより測定される荷電粒子ビームの電流が最大となるように決定されてもよい。この構成によれば、荷電粒子ビームの電流が最大となる状態で荷電粒子ビームの軸合わせが行われる。そのため、軸合わせ後に、荷電粒子ビームの電流が最大となる状態で荷電粒子ビーム照射装置を使用する場合でも、試料の所望の部分に正確に荷電粒子ビームを照射することができる。
【0027】
10)ファラデーカップは、電流に対する複数の測定レンジにおいて荷電粒子ビームの電流を測定可能に構成され、第1および第2の強度は、ファラデーカップにより測定される電流が同一の測定レンジに含まれるように決定されてもよい。この構成によれば、磁場強度を変化させた場合でも、第1および第2の情報に白とびおよび黒つぶれが発生することが防止される。これにより、第1および第2のアパーチャ像を正確に合わせることができる。
【0028】
11)第の発明に係る荷電粒子ビーム照射装置は、荷電粒子ビームを生成する荷電粒子源と、荷電粒子源により生成された荷電粒子ビームを磁場により集束する集束レンズと、荷電粒子源により生成された荷電粒子ビームを偏向することにより荷電粒子ビームの軸と集束レンズの光軸との位置関係を調整する第1の偏向部と、集束レンズにより集束された荷電粒子ビームの電流を制限する対物アパーチャ板と集束レンズにより集束された荷電粒子ビームを偏向することにより対象面上における荷電粒子ビームの位置関係を調整する第2の偏向部と、荷電粒子ビームの軸を調整する第1~第3のいずれかの発明に係る荷電粒子ビーム軸合わせ装置とを備える
【0029】
この荷電粒子ビーム照射装置においては、荷電粒子源により生成された荷電粒子ビームが集束レンズの磁場により集束されて対象面に照射される。荷電粒子源により生成された荷電粒子ビームが第1の偏向部により偏向されることにより、荷電粒子ビームの軸と集束レンズの光軸との位置関係が調整される。集束レンズにより集束された荷電粒子ビームの電流が対物アパーチャ板により制限される。集束レンズにより集束された荷電粒子ビームが第2の偏向部により偏向されることにより対象面上における荷電粒子ビームの位置関係が調整される。荷電粒子ビームの軸は、荷電粒子ビーム軸合わせ装置により調整される。
【0030】
荷電粒子ビーム軸合わせ装置においては、場強度が第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化されるので、使用者は、強度を都度切り替えて第1および第2の情報を生成するための操作を行う必要がない。そのため、使用者の操作負担が軽減される。その結果、荷電粒子ビームの軸を合わせることが容易になる。
【0031】
12)第の発明に係る荷電粒子ビーム軸合わせ方法は、荷電粒子ビームを第1の偏向部、集束レンズ、第2の偏向部および対物アパーチャ板を通して対象面に照射する荷電粒子ビーム照射装置における荷電粒子ビームの軸を調整する荷電粒子ビーム軸合わせ方法であって、集束レンズの磁場強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させるステップと、磁場強度が第1の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報を生成し、磁場強度が第2の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報を生成するステップと、第1の情報に基づいて第1のアパーチャ像を画像として表示部に表示させるとともに、第2の情報に基づいて第2のアパーチャ像を画像として表示部に表示させるステップと、磁場強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の第1の移動指令を行うステップと、第1の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第1の偏向部を制御するステップと、磁場の強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の第2の移動指令を行うステップと、第2の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第2の偏向部を制御するステップとを含み、第1の移動指令を行うステップは、第1の偏向部による荷電粒子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を第1の操作子から受け付け、受け付けられた操作に基づいて第1の移動指令を行うことを含み、第2の移動指令を行うステップは、第2の偏向部による荷電粒子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を第2の操作子から受け付け、受け付けられた操作に基づいて第2の移動指令を行うことを含み、第1および第2の情報を生成するステップは、第1または第2の偏向部の制御に追従した第1および第2のアパーチャ像の移動に伴って第1および第2の情報を更新することを含み、第1および第2のアパーチャ像を表示部に表示させるステップは、更新された第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の移動を示すように、表示部に表示される第1および第2のアパーチャ像の画像を更新することを含む。
【0032】
この荷電粒子ビーム軸合わせ方法によれば、磁場強度が第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化されるので、使用者は、強度を都度切り替えて第1および第2の情報を生成するための操作を行う必要がない。そのため、使用者の操作負担が軽減される。その結果、荷電粒子ビームの軸を合わせることが容易になる。
(13)第6の発明に係る荷電粒子ビーム軸合わせ方法は、荷電粒子ビームを第1の偏向部、集束レンズ、第2の偏向部および対物アパーチャ板を通して対象面に照射する荷電粒子ビーム照射装置における荷電粒子ビームの軸を調整する荷電粒子ビーム軸合わせ方法であって、集束レンズの磁場強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させるステップと、磁場強度が第1の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報を生成し、磁場強度が第2の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報を生成するステップと、磁場強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の第1の移動指令を行うステップと、第1の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第1の偏向部を制御するステップと、磁場の強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の第2の移動指令を行うステップと、第2の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第2の偏向部を制御するステップとを含み、第1および第2の情報を生成するステップは、第1または第2の偏向部の制御に追従した第1および第2のアパーチャ像の移動に伴って第1および第2の情報を更新することを含み、第1の移動指令を行うステップは、第1および第2の情報に基づいて第1のアパーチャ像と第2のアパーチャ像とを重ねるための第1および第2のアパーチャ像の移動方向および移動距離を特定し、特定された移動方向および移動距離に基づいて第1の移動指令を行うことを含み、第2の移動指令を行うステップは、第1および第2の情報に基づいて第1および第2のアパーチャ像を予め定められた位置に移動させるための第1および第2のアパーチャ像の移動方向および移動距離を特定し、特定された移動方向および移動距離に基づいて第2の移動指令を行うことを含む。
この荷電粒子ビーム軸合わせ方法によれば、第1および第2のアパーチャ像が予め定められた位置で重なるように第1および第2の偏向部が自動的に調整される。そのため、使用者は、第1および第2の偏向部を調整するための操作を行う必要がない。これにより、荷電粒子ビームの軸をさらに容易に合わせることができる。
(14)第7の発明に係る荷電粒子ビーム軸合わせ方法は、荷電粒子ビームを第1の偏向部、集束レンズ、第2の偏向部および対物アパーチャ板を通して対象面に照射する荷電粒子ビーム照射装置における荷電粒子ビームの軸を調整する荷電粒子ビーム軸合わせ方法であって、集束レンズの磁場強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させるステップと、磁場強度が第1の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第1のアパーチャ像の位置に対応する第1の情報を生成し、磁場強度が第2の強度であるときの対物アパーチャ板の開口を示す第2のアパーチャ像の位置に対応する第2の情報を生成するステップと、磁場強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の第1の移動指令を行うステップと、第1の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第1の偏向部を制御するステップと、磁場の強度の繰り返し変化の間に、第1および第2の情報に基づいて、第1および第2のアパーチャ像の第2の移動指令を行うステップと、第2の移動指令に基づいて、第1および第2のアパーチャ像を移動させるように第2の偏向部を制御するステップとを含み、対象面は、荷電粒子ビームの電流を測定可能なファラデーカップに設けられ、第1および第2の情報を生成するステップは、ファラデーカップにより測定された電流に基づいて第1および第2の情報を生成することを含む。
この荷電粒子ビーム軸合わせ方法によれば、試料に荷電粒子ビームを照射することなく荷電粒子ビームの軸合わせを行うことができる。これにより、荷電粒子ビームにより試料が損傷することを防止することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、荷電粒子ビームの軸を容易に合わせることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1の実施の形態に係る荷電粒子ビーム照射装置の構成を示す図である。
図2図1の照射部の概略構成を示す図である。
図3】荷電粒子ビーム照射装置が備える軸合わせ装置の構成を示す図である。
図4】軸合わせプログラムにより行われる軸合わせ処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図5】軸合わせ処理における画像の変化の一例を示す図である。
図6】第2の実施の形態に係る荷電粒子ビーム照射装置が備える軸合わせ装置の構成を示す図である。
図7】第2の実施の形態における軸合わせプログラムにより行われる軸合わせ処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[1]第1の実施の形態
以下、本発明の第1の実施の形態に係る荷電粒子ビーム軸合わせ装置(以下、軸合わせ装置と略記する。)、それを備えた荷電粒子ビーム照射装置、および荷電粒子ビーム軸合わせ方法について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態においては、荷電粒子ビーム照射装置は、EPMA(電子線マイクロアナライザ)用の電子ビーム照射装置である。
【0036】
(1)荷電粒子ビーム照射装置の構成
図1は、第1の実施の形態に係る荷電粒子ビーム照射装置の構成を示す図である。図1においては、主として荷電粒子ビーム照射装置100のハードウエアの構成が示される。図1に示すように、荷電粒子ビーム照射装置100は、処理装置10および照射部20を含む。
【0037】
処理装置10は、CPU(中央演算処理装置)11、RAM(ランダムアクセスメモリ)12、ROM(リードオンリメモリ)13、記憶装置14、操作部15、表示部16および入出力I/F(インターフェイス)17により構成される。CPU11、RAM12、ROM13、記憶装置14、操作部15、表示部16および入出力I/F17はバス18に接続される。
【0038】
RAM12は、CPU11の作業領域として用いられる。ROM13にはシステムプログラムが記憶される。記憶装置14は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、軸合わせプログラムを記憶する。CPU11が記憶装置14に記憶された軸合わせプログラムをRAM12上で実行することにより、後述する軸合わせ処理が行われる。
【0039】
操作部15は、タッチパネル、キーボードまたはポインティングデバイスであり、操作子15a,15bを含む。ポインティングデバイスとしては、マウスまたはジョイスティック等が用いられる。本実施の形態においては、操作部15はマウスであり、本体部15cをさらに含む。この場合、マウスの右押下部および左押下部がそれぞれ操作子15a,15bであり、マウス本体が本体部15cである。使用者は、操作部15を用いて後述する軸合わせ装置に各種指示を行うことができる。表示部16は、軸合わせ装置により生成された画像データに基づく画像を表示可能である。表示部16は、液晶表示装置等の表示デバイスである。入出力I/F17は、照射部20に接続される。
【0040】
図2は、図1の照射部20の概略構成を示す図である。図2に示すように、照射部20は、荷電粒子源21、集束レンズ22、偏向部23,24、対物アパーチャ板25、走査部26、対物レンズ27、試料台28、検出部29および電流測定部30を含む。また、照射部20は、荷電粒子源21、集束レンズ22、偏向部23,24、走査部26、対物レンズ27、検出部29および電流測定部30の各々を駆動するための図示しない電源をさらに含む。電源の動作は、処理装置10により制御される。
【0041】
荷電粒子源21は、例えば電子銃であり、試料台28に向けて電子ビームを荷電粒子ビームとして出射する。偏向部23、集束レンズ22、偏向部24、対物アパーチャ板25、走査部26および対物レンズ27は、この順で電子ビームの出射方向に並ぶように、荷電粒子源21と試料台28とを結ぶ軸Ax上に配列される。
【0042】
偏向部23は、例えばアライメントコイルにより構成され、電子ビームを偏向部23の光軸に垂直な平面内で偏向する。偏向部23は、軸Axに平行な方向に離間して配置された2つのアライメントコイルにより構成されてもよい。偏向部23は、荷電粒子源21から出射された電子ビームが後述する各コンデンサレンズ22A,22Bの中心を通過するように調整される。
【0043】
集束レンズ22は、互いの相対的な位置関係が固定されたコンデンサレンズ22A,22Bにより構成される。各コンデンサレンズ22A,22Bは、偏向部23により偏向された電子ビームが対物アパーチャ板25の前の焦点で集束するように調整される。
【0044】
偏向部24は、偏向部23と同様の構成を有し、集束レンズ22により集束された電子ビームが対物レンズ27の中心を通過するように調整される。また、偏向部24の調整時には、偏向部24は偏向量を2次元的に走査することができる。対物アパーチャ板25は、偏向部24により偏向された電子ビームを通過させることにより、電子ビームの電流を制限する。
【0045】
走査部26は、例えば走査コイルにより構成され、対物アパーチャ板25を通過した電子ビームを走査部26の光軸に垂直な平面内で2次元的に走査する。対物レンズ27は、走査部26により走査された電子ビームが所定の位置で集束するように調整される。
【0046】
試料台28には、分析または観察の対象となる試料Sが載置される。走査部26により2次元的に走査されかつ対物レンズ27により集束された電子ビームは、試料Sの表面の各部に照射される。検出部29は、反射電子検出器または二次電子検出器により構成され、電子ビームが照射されたことにより試料Sの表面の各部から反射される電子または試料Sの表面の各部から放出される電子(二次電子)を検出する。検出部29により検出された電子に基づいて図1の処理装置10により試料Sの走査像が生成される。
【0047】
電流測定部30は、電子ビームが照射される対象面を有するファラデーカップを含み、対象面の各部に照射された電子ビームの電流を測定する。電流測定部30には、電流に対する複数の測定レンジが設けられている。測定レンジを適切に切り替えることにより、微小な電流から大きい電流までを測定することができる。
【0048】
電流測定部30は、偏向部23,24の調整の際には、図示しないアクチュエータにより、対物アパーチャ板25と走査部26との間における軸Ax上に介挿される(図2の太い矢印を参照)。後述するように、電流測定部30により測定された電流に基づいて画像を示す画像データが生成される。電流測定部30は、画像の中心が対物レンズ27の光軸に重なるように配置される。
【0049】
電子ビームが各コンデンサレンズ22A,22Bの中心を通過していない場合、コンデンサレンズ22Aまたはコンデンサレンズ22Bの焦点が変化すると、試料S上における電子ビームの照射位置が変化する。そこで、電子ビームが各コンデンサレンズ22A,22Bの中心を通過するように、電流測定部30により測定される電流に基づいて偏向部23,24を調整するための軸合わせ装置が荷電粒子ビーム照射装置100に設けられる。
【0050】
(2)軸合わせ装置
図3は、荷電粒子ビーム照射装置100が備える軸合わせ装置1の構成を示す図である。図3に示すように、軸合わせ装置1は、処理受付部A、強度変化部B、生成部C、表示制御部D、操作受付部E,Fおよび偏向制御部G,Hを含む。
【0051】
図1のCPU11が記憶装置14に記憶された軸合わせプログラムを実行することにより、図3の軸合わせ装置1の構成要素(A~H)の機能が実現される。図3の軸合わせ装置1の構成要素(A~H)の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0052】
処理受付部Aは、軸合わせ処理における種々の指示または指定を使用者から受け付ける。例えば、処理受付部Aは、使用者から集束レンズ22の磁場強度(以下、単に強度と呼ぶ。)の指定を受け付ける。使用者は、操作部15を操作することにより、第1および第2の強度を指定することができる。本実施の形態においては、コンデンサレンズ22Aの所定の強度とコンデンサレンズ22Bの所定の強度との組み合わせにより、集束レンズ22の第1の強度が指定される。また、コンデンサレンズ22Aの他の強度とコンデンサレンズ22Bの他の強度との組み合わせにより集束レンズ22の第2の強度が指定される。
【0053】
ここで、電子ビームの電流が最大となるときに、軸合わせの精度が最も要求されることが多い。そのため、第1および第2の強度の一方は、電流測定部30により測定される電子ビームの電流が最大となるように指定されることが好ましい。また、第1および第2の強度の他方は、実際の試料Sの観察時に設定される強度に指定されることが好ましい。これにより、実際の試料Sの観察時に設定される強度の範囲内で偏向部23,24の調整を行うことができる。これらの場合、試料Sの所望の部分に正確に電子ビームを照射することができる。
【0054】
また、第1および第2の強度は、電子ビームの電流が電流測定部30の同一の測定レンジで測定可能となるように指定されることが好ましい。この場合、電流測定部30により測定された電流に基づいて生成される画像データに白とびおよび黒つぶれが発生することが防止される。これにより、電子ビームの軸を正確に合わせることができる。
【0055】
強度変化部Bは、処理受付部Aにより受け付けられた第1および第2の強度を設定する。また、強度変化部Bは、集束レンズ22の強度が設定された第1および第2の強度の間で交互に繰り返し変化するように集束レンズ22の駆動電源をランプ制御する。これにより、集束レンズ22の焦点が第1の強度に対応する焦点と第2の強度に対応する焦点との間でランプ状に交互に変化する。
【0056】
電流測定部30の対象面には、荷電粒子源21から出射され、偏向部23、集束レンズ22、偏向部24および対物アパーチャ板25を順次通過した電子ビームが照射される。偏向部24による偏向量を走査させると、ビームの中心が対物アパーチャ板25の開口に近づくほど電流が大きくなる。生成部Cは、偏向部24を走査させながら電流測定部30により測定された電流に基づいて画像データを順次生成する。画像データは、第1の強度時における対物アパーチャ板25の開口の位置に対応する情報または第2の強度時における対物アパーチャ板25の開口の位置に対応する情報を含む。
【0057】
表示制御部Dは、生成部Cにより生成された画像データに基づく画像を表示部16に表示させる。表示部16に表示される画像には、第1の強度時における対物アパーチャ板25の開口を示すアパーチャ像と、第2の強度時における対物アパーチャ板25の開口を示すアパーチャ像とが交互に繰り返し現れる。本実施の形態においては、強度変化部Bは、短い周期で強度を第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化させるので、画像には残像効果により2つのアパーチャ像が画像に同時に視認される。
【0058】
ここで、荷電粒子源21から出射された電子ビームが各コンデンサレンズ22A,22Bの中心を通過していない場合には、2つのアパーチャ像の位置にずれが発生する。使用者は、表示部16に表示された画像の2つのアパーチャ像の位置を確認しつつ、2つのアパーチャ像の中心が重なるように操作部15を操作することにより偏向部23,24を調整する。これにより、電子ビームが各コンデンサレンズ22A,22Bの中心を通過するように電子ビームの軸を合わせることができる。
【0059】
操作受付部Eは、偏向部23による電子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を操作部15の操作子15aから受け付け、受け付けられた操作をアパーチャ像の移動指令として偏向制御部Gに与える。操作子15aが押下された状態における本体部15cの移動方向および移動量は、偏向部23による電子ビームの偏向方向および偏向量にそれぞれ対応付けられている。使用者は、操作子15aを押下しながら本体部15cを所望の方向に所望の距離移動させることにより偏向部23による電子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を行うことができる。
【0060】
操作受付部Fは、偏向部24による電子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を操作部15の操作子15bから受け付け、受け付けられた操作をアパーチャ像の移動指令として偏向制御部Hに与える。操作子15bが押下された状態における本体部15cの移動方向および移動量は、偏向部24による電子ビームの偏向方向および偏向量にそれぞれ対応付けられている。使用者は、操作子15bを押下しながら本体部15cを所望の方向に所望の距離移動させることにより偏向部24による電子ビームの偏向方向および偏向量を調整するための操作を行うことができる。
【0061】
偏向制御部Gは、操作受付部Eにより受け付けられた操作に基づいて偏向部23による電子ビームの偏向方向および偏向量を特定し、電子ビームが特定された偏向方向に特定された偏向量偏向するように偏向部23の駆動電源を制御する。偏向制御部Hは、操作受付部Fにより受け付けられた操作に基づいて偏向部24による電子ビームの偏向方向および偏向量を特定し、電子ビームが特定された偏向方向に特定された偏向量偏向するように偏向部24の駆動電源を制御する。
【0062】
(3)軸合わせ処理
図4は、軸合わせプログラムにより行われる軸合わせ処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。図5(a)~(c)は、軸合わせ処理における画像の変化の一例を示す図である。軸合わせ処理時には、図示しないアクチュエータにより電流測定部30が軸Ax上に介挿される。なお、軸合わせ処理の実行前には、荷電粒子源21から出射される電子ビームはコンデンサレンズ22A,22Bの中心の少なくとも一方を通過していないことを仮定する。
【0063】
まず、処理受付部Aは、集束レンズ22の強度として第1および第2の強度が受け付けられたか否かを判定する(ステップS1)。第1および第2の強度が受け付けられない場合、処理受付部Aは、第1および第2の強度が受け付けられるまで待機する。第1および第2の強度が受け付けられた場合、強度変化部Bは、第1および第2の強度を設定する(ステップS2)。強度変化部Bは、ステップS2で設定された第1および第2の強度の間で集束レンズ22の強度を交互に繰り返し変化させる(ステップS3)。
【0064】
生成部Cは、電流測定部30により測定された対象面の各部の電流に基づいて画像データを生成する(ステップS4)。なお、画像データの生成時には、偏向部24により電子ビームが偏向部24の光軸に垂直な平面内で2次元的に走査される。表示制御部Dは、ステップS4で生成された画像データに基づく画像を表示部16に表示させる(ステップS5)。
【0065】
この場合、図5(a)に示すように、表示部16に表示された画像に、第1および第2の強度にそれぞれ対応するアパーチャ像G1,G2が現れる。電子ビームはコンデンサレンズ22A,22Bの中心の少なくとも一方を通過していないので、アパーチャ像G1,G2の位置は互いに異なる。また、第1の強度における焦点と第2の強度における焦点とは異なるので、アパーチャ像G1,G2の径は互いに異なる。
【0066】
次に、操作受付部Eは、操作子15aを用いた使用者の操作が第1の操作として受け付けられたか否かを判定する(ステップS6)。第1の操作が受け付けられた場合、偏向制御部Gは、受け付けられた第1の操作に基づいて、偏向部23による電子ビームの偏向方向および偏向量を特定する(ステップS7)。その後、偏向制御部Gは、電子ビームがステップS7で特定された偏向方向に特定された偏向量偏向するように偏向部23を制御し(ステップS8)、ステップS4に戻る。
【0067】
この場合、再度ステップS4,S5が実行されることにより、生成される画像データが更新されるとともに、表示部16に表示される画像が更新される。画像においては、電流測定部30の対象面上の電子ビームの照射位置が移動することによりアパーチャ像G1,G2の位置が移動する。使用者は、アパーチャ像G1,G2の位置を視認しつつ、図5(b)に太い矢印で示すようにアパーチャ像G1,G2の中心が重なるように操作子15aを用いて第1の操作を行うこととなる。
【0068】
ステップS6で第1の操作が受け付けられない場合、操作受付部Fは、操作子15bを用いた使用者の操作が第2の操作として受け付けられたか否かを判定する(ステップS9)。第2の操作が受け付けられた場合、偏向制御部Hは、受け付けられた第2の操作に基づいて、偏向部24による電子ビームの偏向方向および偏向量を特定する(ステップS10)。その後、偏向制御部Hは、電子ビームがステップS10で特定された偏向方向に特定された偏向量偏向するように偏向部24を制御し(ステップS11)、ステップS4に戻る。
【0069】
この場合、再度ステップS4,S5が実行されることにより、表示部16に表示される画像が更新される。画像においては、電流測定部30の対象面上の電子ビームの照射位置が移動することによりアパーチャ像G1,G2の位置が移動する。使用者は、アパーチャ像G1,G2の位置を視認しつつ、図5(c)に太い矢印で示すようにアパーチャ像G1,G2の中心が画像の中心に重なるように操作子15bを用いて第2の操作を行うこととなる。
【0070】
ステップS9で第2の操作が受け付けられない場合、処理受付部Aは、軸合わせ処理の終了が指示されたか否かを判定する(ステップS12)。使用者は、操作部15を操作することにより、軸合わせ処理の終了を指示することができる。軸合わせ処理の終了が指示されない場合、処理受付部AはステップS4に戻る。一方、軸合わせ処理の終了が指示された場合、処理受付部Aは軸合わせ処理を終了する。
【0071】
ステップS9~S11においては、アパーチャ像G1,G2が重なった状態で画像の中心に移動することが好ましい。しかしながら、偏向部24が偏向部23に近接して配置されている場合には、偏向部24による電子ビームの偏向がステップS6~S8における偏向部23の調整に大きく干渉する。この場合、ステップS9~S11において偏向部24による電子ビームの偏向が行われても、アパーチャ像G1,G2が重なった状態で移動しない。そのため、図5(c)に示すように、アパーチャ像G1,G2の位置に再度ずれが発生する。
【0072】
そこで、アパーチャ像G1,G2の中心が画像の中心で重なるように、上記のステップS4~S11が繰り返される。使用者は、アパーチャ像G1,G2の中心が画像の中心で重なるまで第1および第2の操作を行うことができる。使用者は、アパーチャ像G1,G2中心が画像の中心で重なった後、軸合わせ処理の終了を指示することとなる。
【0073】
(4)効果
本実施の形態に係る荷電粒子ビーム照射装置100においては、集束レンズ22の磁場強度が第1の強度と第2の強度との間で強度変化部Bにより交互に繰り返し変化される。第1の強度におけるアパーチャ像G1の位置に対応する情報および第2の強度におけるアパーチャ像G2の位置に対応する情報が生成部Cにより生成される。これらの情報に基づいてアパーチャ像G1,G2が画像として表示制御部Dにより表示部16に表示される。
【0074】
アパーチャ像G1,G2の移動に伴って情報が更新され、更新された情報に基づいて表示部16に表示されるアパーチャ像G1,G2の画像が更新される。この場合、偏向部23,24の調整に追従して、表示部16に表示された画像におけるアパーチャ像G1,G2が移動する。そのため、使用者は、操作子15a,15bを用いて画像におけるアパーチャ像G1,G2を視認しつつ、偏向部23,24による電子ビームの偏向方向および偏向量を調整することができる。
【0075】
磁場強度の繰り返し変化の間に、操作子15aからの操作が操作受付部Eにより受け付けられ、受け付けられた操作に基づいてアパーチャ像G1,G2を移動させるように偏向部23が制御される。また、磁場の強度の繰り返し変化の間に、操作子15bからの操作が操作受付部Fにより受け付けられ、受け付けられた操作に基づいてアパーチャ像G1,G2を移動させるように偏向部24が制御される。
【0076】
上記の構成によれば、集束レンズ22の磁場強度が第1の強度と第2の強度との間で交互に繰り返し変化されるので、使用者は、強度を都度切り替えてアパーチャ像G1,G2の情報を生成するための操作を行う必要がない。そのため、使用者の操作負担が軽減される。また、操作子15aの操作と操作子15bの操作とを使い分けることにより、偏向部23による調整と偏向部24による調整とを容易にかつ即座に切り替えることができる。これにより、電子ビーム照射装置100の操作性が向上する。その結果、電子ビームの軸を短時間で容易に合わせることができる。
【0077】
特に、本実施の形態においては、操作子15a,15bはそれぞれポインティングデバイスの右押下部および左押下部である。そのため、これらの押下部を使い分けることにより、偏向部23による調整と偏向部24による調整とをより容易にかつ即座に切り替えることができる。これにより、荷電粒子ビーム照射装置100の操作性がより向上する。その結果、電子ビームの軸をより容易に合わせることができる。
【0078】
また、本実施の形態においては、電流測定部30を用いて電子ビームの電流が測定される。この場合、試料Sに電子ビームを照射することなく電子ビームの軸合わせを行うことができる。これにより、電子ビームにより試料Sが損傷することを防止することができる。また、試料Sに電子ビームを照射して画像データを生成する場合と異なり、電流測定部30を用いて画像データを生成する場合には、画像の明るさに試料による個体差が生じない。そのため、明るさの条件を一度決定することにより、同じ荷電粒子源21を使用する限り、常に同じ条件で軸合わせが可能となる。
【0079】
[2]第2の実施の形態
(1)軸合わせ装置
第2の実施の形態に係る荷電粒子ビーム照射装置100について、第1の実施の形態に係る荷電粒子ビーム照射装置100と異なる点を説明する。図6は、第2の実施の形態に係る荷電粒子ビーム照射装置100が備える軸合わせ装置1の構成を示す図である。図6に示すように、軸合わせ装置1は、図3の表示制御部Dおよび操作受付部E,Fに代えて、画像処理部I、偏向特定部J,Kおよび判定部Lを含む。
【0080】
図1のCPU11が記憶装置14に記憶された軸合わせプログラムを実行することにより、図6の軸合わせ装置1の構成要素(A~C,G~L)の機能が実現される。図6の軸合わせ装置1の構成要素(A~C,G~L)の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0081】
画像処理部Iは、生成部Cにより生成された画像データに画像処理を行う。偏向特定部Jは、画像処理部Iによる画像処理の結果に基づいて、2つのアパーチャ像の重心を重ねるための偏向部23による電子ビームの偏向方向および偏向量を特定する。また、偏向特定部Jは、特定された偏向方向および偏向量をアパーチャ像の移動指令として偏向制御部Gに与える。
【0082】
偏向特定部Kは、画像処理部Iによる画像処理の結果に基づいて、一方のアパーチャ像の重心を画像の中心に重ねるための偏向部24による電子ビームの偏向方向および偏向量を特定する。また、偏向特定部Kは、特定された偏向方向および偏向量をアパーチャ像の移動指令として偏向制御部Hに与える。判定部Lは、画像処理部Iによる画像処理の結果に基づいて、2つのアパーチャ像の重心が画像の中心で重なっているか否かを判定する。なお、アパーチャ像の重心とは、画像データにおいて対物アパーチャ板25の開口の部分に対応する複数の画像の値により算出される重心を意味する。
【0083】
(2)軸合わせ処理
図7は、第2の実施の形態における軸合わせプログラムにより行われる軸合わせ処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。図7における軸合わせ処理は、ステップS5,S6,S9に代えてステップS5a,S6a,S9aを有する点およびステップS12を有しない点を除き、図4における軸合わせ処理と同様である。
【0084】
ステップS4の後、画像処理部Iは、ステップS4で生成された画像データに画像処理を行う(ステップS5a)。判定部Lは、ステップS5aにおける画像処理の結果に基づいて、アパーチャ像G1,G2の重心が重なっているか否かを判定する(ステップS6a)。
【0085】
アパーチャ像G1,G2の重心が重なっていない場合、偏向特定部Jは、ステップS5aにおける画像処理の結果に基づいて、アパーチャ像G1,G2の重心を重ねるための偏向部23による電子ビームの偏向方向および偏向量を特定する(ステップS7)。偏向制御部Gは、電子ビームがステップS7で特定された偏向方向に特定された偏向量偏向するように偏向部23を制御し(ステップS8)、ステップS4に戻る。ステップS6aでアパーチャ像G1,G2の重心が重なっている場合、判定部Lは、ステップS5aにおける画像処理の結果に基づいて、アパーチャ像G1,G2の重心が画像の中心に位置しているか否かを判定する(ステップS9a)。
【0086】
アパーチャ像G1,G2の重心が画像の中心に位置していない場合、偏向特定部Kは、ステップS5aにおける画像処理の結果に基づいて、アパーチャ像G1,G2の重心を画像の中心に重ねるための偏向部24による電子ビームの偏向方向および偏向量を特定する(ステップS10)。偏向制御部Hは、電子ビームがステップS10で特定された偏向方向に特定された偏向量偏向するように偏向部24を制御し(ステップS11)、ステップS4に戻る。ステップS9aでアパーチャ像G1,G2の重心が画像の中心に位置している場合、判定部Lは軸合わせ処理を終了する。
【0087】
なお、アパーチャ像G1,G2の重心が重なっているか否かの判定(ステップS6a)と、アパーチャ像G1,G2の重心が画像の中心に位置しているか否かの判定(ステップS9a)とが同時に行われ、偏向部23,24が同時に制御されてもよい。この場合、偏向部23,24の干渉が考慮されて制御されることにより、1度の収斂における調整の精度が向上する。
【0088】
(3)効果
本実施の形態に係る荷電粒子ビーム照射装置100においては、アパーチャ像G1,G2が画像の中心で重なるように偏向部23,24が自動的に調整される。そのため、使用者は、偏向部23,24を調整するための操作を行う必要がない。これにより、電子ビームの軸を容易に合わせることができる。
【0089】
また、アパーチャ像G1とアパーチャ像G2とは、中心ではなく重心が重なるように偏向部23が調整される。また、アパーチャ像G1,G2は、中心ではなく重心が画像の中心に重なるように偏向部24が調整される。この場合、電子ビームの軸をより正確に合わせることができる。
【0090】
[3]他の実施の形態
(1)上記実施の形態において、荷電粒子ビームは電子ビームであるが、本発明はこれに限定されない。荷電粒子ビームはイオンビーム等の他の荷電粒子ビームであってもよい。
【0091】
(2)上記実施の形態において、荷電粒子ビーム照射装置100は1つの対物レンズ27を含むが、本発明はこれに限定されない。荷電粒子ビーム照射装置100は、多段に配置された複数の対物レンズ27を含んでもよい。このような荷電粒子ビーム照射装置100においても、軸合わせ処理を適用することが可能である。
【0092】
(3)上記実施の形態において、軸合わせ装置1は電流測定部30を含むが、本発明はこれに限定されない。検出部29により検出された電子に基づいて画像データが生成される場合には、軸合わせ装置1は電流測定部30を含まなくてもよい。この場合、試料Sの表面が対象面となる。また、生成された画像データには、アパーチャ像の位置に対応する情報が含まれる。
【0093】
(4)上記実施の形態において、操作部15はマウスであり、操作子15a,15bがそれぞれマウスの右ボタンおよび左ボタンであるが、本発明はこれに限定されない。各操作子15a,15bは、十字ボタン、操作スティックまたは操作つまみ等の他の操作子であってもよい。
【0094】
(5)上記実施の形態において、アパーチャ像G1,G2が画像の中心に重なるように偏向部24が調整されるが、本発明はこれに限定されない。電流測定部30が、画像の中心以外の部分が対物レンズ27の光軸に重なるように配置されている場合には、アパーチャ像G1,G2が画像の中心以外の当該部分に重なるように偏向部24が調整されてもよい。
【0095】
(6)第1の実施の形態において、アパーチャ像G1,G2の中心が重なるように偏向部23が調整されるが、本発明はこれに限定されない。画像処理等により画像にアパーチャ像G1,G2の重心が現れている場合には、アパーチャ像G1,G2の重心が重なるように偏向部23が調整されてもよい。
【0096】
同様に、第1の実施の形態において、アパーチャ像G1,G2の中心が画像の所定の部分に重なるように偏向部24が調整されるが、本発明はこれに限定されない。アパーチャ像G1,G2の重心が画像の所定の部分に重なるように偏向部24が調整されてもよい。
【0097】
[4]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、上記実施の形態に記載された構成要素の他、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。
【0098】
上記実施の形態においては、偏向部23,24がそれぞれ第1および第2の偏向部の例であり、電流測定部30が対象面の例であり、偏向制御部G,Hがそれぞれ第1および第2の偏向制御部の例である。操作子15a,15bがそれぞれ第1および第2の操作子の例であり、コンデンサレンズ22A,22Bがそれぞれ第1および第2のコンデンサレンズの例である。第1の実施の形態においては、操作受付部E,Fがそれぞれ第1および第2の移動指令部の例であり、第2の実施の形態においては、偏向特定部J,Kがそれぞれ第1および第2の移動指令部の例である。
【符号の説明】
【0099】
1…軸合わせ装置,10…処理装置,11…CPU,12…RAM,13…ROM,14…記憶装置,15…操作部,15a,15b…操作子,15c…本体部,16…表示部,17…入出力I/F,18…バス,20…照射部,21…荷電粒子源,22…集束レンズ,22A,22B…コンデンサレンズ,23,24…偏向部,25…対物アパーチャ板,26…走査部,27…対物レンズ,28…試料台,29…検出部,30…電流測定部,100…荷電粒子ビーム照射装置,A…処理受付部,Ax…軸,B…強度変化部,C…生成部,D…表示制御部,E,F…操作受付部,G,H…偏向制御部,G1,G2…アパーチャ像,I…画像処理部,J,K…偏向特定部,L…判定部,S…試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7