(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】バックフレーム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20220315BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/64
(21)【出願番号】P 2018075356
(22)【出願日】2018-04-10
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森本 恵司
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-155239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
B60N 2/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディに設けられた係合部、及び当該ボディのうち当該係合部より下方に設けられた固定部を有する乗物に搭載されるシートのバックフレームにおいて、
前記係合部に設けられた係合穴に上方側から嵌り込み可能なフックと、
前記フックが前記係合穴に嵌り込んだときに、前記係合部に接触して当該係合部に対する当該フックの位置を規制する位置規制部と、
前記固定部に固定される被固定部と、
前記被固定部と直接的又は間接的に連結され、当該被固定部側から前記フック側に延びるフレーム材であって、当該フックよりシート前方に配置されたフレーム材と、
前記フックのシート幅方向一端側に連結された第1補強ワイヤーであって、前記フレーム材まで延びて当該フレーム材に連結された第1補強ワイヤーと、
前記フックのシート幅方向他端側に連結された第2補強ワイヤーであって、前記フレーム材まで延びて当該フレーム材に連結された第2補強ワイヤーとを備え、
前記第1補強ワイヤー及び前記第2補強ワイヤーのうち少なくとも一方の補強ワイヤーは、前記フックより下方側の位置にて前記フレーム材に連結され
、
前記第1補強ワイヤー、前記第2補強ワイヤー及び前記位置規制部は、連続した1本のワイヤー材により構成されているバックフレーム。
【請求項2】
前記フレーム材は、第1縦ワイヤー及び第2縦ワイヤーを有して構成されており、
前記第1縦ワイヤーは、前記フックのシート幅方向一端側において前記被固定部側から前記フック側に延びており、
前記第2縦ワイヤーは、前記フックのシート幅方向他端側において前記被固定部側から前記フック側に延びており、
さらに、前記第1補強ワイヤーは前記第1縦ワイヤーに連結され、前記第2補強ワイヤーは前記第2縦ワイヤーに連結されている請求項1に記載のバックフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物に搭載されるシートのバックフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のバックフレームは、車両のボディに装着される。当該ボディには、係合部及び固定部が設けられている。係合部に設けられた係合穴には、バックフレームに設けられたフックが上方側から嵌合する。固定部は、係合部より下方側に設けられ、バックフレームに設けられた被固定部がボルト等の機械的固定具により固定される部位である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記バックフレームの上方側は、ボディに設けられた係合部に嵌り込んでいるのみであって、ボルト等の機械的締結具によりボディに固定されていない。このため、シート前方向きの大きな荷重(以下、「前向き荷重」と略す。)が当該バックフレームに作用すると、フックが係合部から抜け出して当該バックフレームが被固定部を中心にシート前方側に倒伏するように移動してしまうおそれがある。
【0005】
本開示は、上記点に鑑み、バックフレームに前向き荷重が作用した場合であってもフックが係合部から抜け出ることを抑制することが可能なバックフレームの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ボディに設けられた係合部(BP1)、及び当該ボディのうち当該係合部(BP1)より下方に設けられた固定部(BP2)を有する乗物に搭載されるシートのバックフレームは、例えば、係合部(BP1)に設けられた係合穴(BP3)に上方側から嵌り込み可能なフック(3)と、フック(3)が係合穴(BP3)に嵌り込んだときに、係合部(BP1)に接触して当該係合部(BP1)に対する当該フック(3)の位置を規制する位置規制部(9C)と、固定部(BP2)に固定される被固定部(5)と、被固定部(5)と直接的又は間接的に連結され、当該被固定部(5)側からフック(3)側に延びるフレーム材(7)であって、当該フック(3)よりシート前方に配置されたフレーム材(7)と、フック(3)のシート幅方向一端側に連結された第1補強ワイヤー(9A)であって、フレーム材(7)まで延びて当該フレーム材(7)に連結された第1補強ワイヤー(9A)と、フック(3)のシート幅方向他端側に連結された第2補強ワイヤー(9B)であって、フレーム材(7)まで延びて当該フレーム材(7)に連結された第2補強ワイヤー(9B)とを備え、第1補強ワイヤー(9A)及び第2補強ワイヤー(9B)のうち少なくとも一方の補強ワイヤー(9B)は、フック(3)より下方側の位置にてフレーム材(7)に連結されていることが望ましい。
【0007】
これにより、バックフレーム(1)に前向き荷重が作用したとき、フック(3)に入力された荷重は、第1補強ワイヤー(9A)、第2補強ワイヤー(9B)及びフレーム材(7)を介してボディに固定された被固定部(5)に伝達される。
【0008】
このとき、第1補強ワイヤー(9A)及び第2補強ワイヤー(9B)のうち少なくとも一方の補強ワイヤー(9B)がフック(3)より下方側の位置でフレーム材(7)に連結されているので、当該一方の補強ワイヤー(9B)には、上記荷重の反作用として、フック(3)を下向きに引っ張る力が発生する。したがって、バックフレーム(1)に前向き荷重が作用した場合であってもフック(3)が係合部(BP1)から抜け出ることが抑制され得る。
【0009】
なお、当該バックフレーム(1)は、以下の構成であってもよい。
フレーム材(7)は、第1縦ワイヤー(7A)及び第2縦ワイヤー(7B)を有して構成されており、第1縦ワイヤー(7A)は、フック(3)のシート幅方向一端側において被固定部(5)側からフック(3)側に延びており、第2縦ワイヤー(7B)は、フック(3)のシート幅方向他端側において被固定部(5)側からフック(3)側に延びており、さらに、第1補強ワイヤー(9A)は第1縦ワイヤー(7A)に連結され、第2補強ワイヤー(9B)は第2縦ワイヤー(7B)に連結されていることが望ましい。
【0010】
これにより、バックフレーム(1)を製造する者(以下、製造者という。)は、フレーム材(7)を、安価、かつ、容易に構成でき得る。
さらに、第1補強ワイヤー(9A)、第2補強ワイヤー(9B)及び位置規制部(9C)は、連続した1本のワイヤー材(9)により構成されていることが望ましい。これにより、製造者は、フレーム材(7)を、安価、かつ、容易に構成でき得る。
【0011】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係るバックフレームを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るバックフレームを示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るバックフレームを示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るバックフレームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0014】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。
【0015】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るバックフレームが適用された例である。各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものである。
【0016】
したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。
【0017】
(第1実施形態)
1.バックフレームの概要
図1に示されたバックフレーム1は、後席用シートのシートバック2に用いられる骨格である。シートバック2は、着席者の背部を支持するための部位である。バックフレーム1は、車両ボディBd(
図3参照)に装着される。
【0018】
車両ボディBdには、係合部BP1及び固定部BP2それぞれが少なくとも1つずつ設けられている。固定部BP2は、
図1に示されるように、係合部BP1より下方側に設けられている。バックフレーム1は、係合部BP1及び固定部BP2を介して車両ボディBdに装着される。
【0019】
2.バックフレームの詳細
本実施形態に係るバックフレーム1は、シート幅方向略中央部に対して、概ね左右対称構造である。以下の説明は、シート幅方向一端側(
図1の右端側)におけるバックフレーム1の詳細である。
【0020】
バックフレーム1は、
図2に示されるように、フック3、被固定部5、フレーム材7、第1補強ワイヤー9A及び第2補強ワイヤー9B等を少なくとも備える。フック3は、
図3に示されるように、係合部BP1に設けられた係合穴BP3に上方側から嵌合する嵌合部である。
【0021】
<フック>
フック3は、
図2に示されるように、1本の金属製ワイヤーが略U字状に曲げられて構成されたものである。当該フック3は、溶接にて上端側ビーム11に固定されている。上端側ビーム11は、バックフレーム1の上端側においてシート幅方向に延びる梁部材である。
【0022】
バックフレーム1の下端側には下端側ビーム13が設けられている。下端側ビーム13は、バックフレーム1の下端側においてシート幅方向に延びる梁部材である。当該下端側ビーム13には、金属製の被固定部5が設けられている。
【0023】
被固定部5は、車両ボディBdに設けられた固定部BP2(
図1参照)に固定される部位である。当該被固定部5は、ボルト等の機械的固定具により固定部BP2に固定される。なお、被固定部5は、溶接にて下端側ビーム13に固定されている。
【0024】
<フレーム材>
フレーム材7は、被固定部5と直接的又は間接的に連結され、かつ、被固定部5側からフック3側に延びる部材である。本実施形態に係るフレーム材7は、下端側ビーム13を介して間接的に被固定部5に連結されている。
【0025】
フレーム材7は、金属製の第1縦ワイヤー7A及び第2縦ワイヤー7Bを有して構成されている。第1縦ワイヤー7Aは、フック3のシート幅方向一端側において、被固定部5側からフック3側に延びている。第2縦ワイヤー7Bは、フック3のシート幅方向他端側において、被固定部5側からフック3側に延びている。
【0026】
具体的には、第1縦ワイヤー7Aは、フック3の右側において上端側ビーム11から下方側に延びて下端側ビーム13に溶接にて連結されている。第2縦ワイヤー7Bは、フック3の左側において、当該フック3の下方側から下方側に延びて下端側ビーム13に溶接にて連結されている。
【0027】
第2縦ワイヤー7Bの上端には、第1縦ワイヤー7A側に延びる連結部7Cが設けられている。連結部7Cは、第2縦ワイヤー7Bの上端から延出した部位であって、延出方向先端側が第1縦ワイヤー7Aに溶接にて固定されている。
【0028】
<補強ワイヤー>
第1補強ワイヤー9Aは、フック3のシート幅方向一端側(本実施形態では、右側)に連結された金属製のワイヤーである。第2補強ワイヤー9Bは、フック3のシート幅方向他端側(本実施形態では、左側)に連結された金属製のワイヤーである。
【0029】
第1補強ワイヤー9Aは、フレーム材7まで延びて当該フレーム材7に連結されている。第2補強ワイヤー9Bは、フレーム材7まで延びてフック3より下方側の位置にて当該フレーム材7に連結されている。
【0030】
具体的には、第1補強ワイヤー9Aは、フック3の右側からシート幅方向一端(右側)に延びて第1縦ワイヤー7Aに溶接されている。第2補強ワイヤー9Bは、フック3の左側から下方側に延びてフック3より下方側の位置にて第2縦ワイヤー7Bに溶接されている。
【0031】
つまり、第1補強ワイヤー9A及び第2補強ワイヤー9Bのうち少なくとも一方の補強ワイヤーは、フック3より下方側の位置にてフレーム材7に連結されている。本実施形態では、第1補強ワイヤー9A及び第2補強ワイヤー9Bのうちシート幅方向中央側に位置する第2補強ワイヤー9Bが、フック3より下方側の位置にてフレーム材7に連結されている。
【0032】
第1縦ワイヤー7A及び第2縦ワイヤー7B(以下、総称する際には、フレーム材7と記す。)は、
図3に示されるように、フック3よりシート前方に配置されている。このため、第1補強ワイヤー9A及び第2補強ワイヤー9Bには、フック3からシート前方に延びる部分9D等が存在する。
【0033】
<位置規制部>
図2に示される位置規制部9Cは、係合部BP1に対するフック3の位置を規制するための部位である。具体的には、
図3に示されるように、フック3が係合穴BP3に嵌り込んだときに、位置規制部9Cは係合部BP1の上部に接触する。これにより、フック3の嵌り込み長さが規制される。
【0034】
本実施形態では、
図2に示されるように、第1補強ワイヤー9A、第2補強ワイヤー9B及び位置規制部9Cは、連続した1本のワイヤー材9により構成されている。つまり、当該1本のワイヤー材9は、第1縦ワイヤー7A、フック3及び第2縦ワイヤー7Bに溶接固定されている。
【0035】
3.本実施形態に係るバックフレームの特徴
図4に示されるように、バックフレーム1に前向き荷重Fが作用したとき、フック3に入力された荷重Fは、第1補強ワイヤー9A、第2補強ワイヤー9B及びフレーム材7を介してボディに固定された被固定部5に伝達される。
【0036】
このとき、第1補強ワイヤー9A及び第2補強ワイヤー9Bのうち少なくとも一方の補強ワイヤー(本実施形態では、第2補強ワイヤー9B)がフック3より下方側の位置でフレーム材7に連結されているので、当該一方の補強ワイヤーである第2補強ワイヤー9Bには、上記荷重Fの反作用として、フック3を下向きに引っ張る力F1が発生する。
【0037】
したがって、バックフレーム1に前向き荷重Fが作用した場合であってもフック3が係合部BP1から抜け出ることが抑制され得る。なお、位置規制部9Cが設けられているので、フック3を下向きに引っ張る力F1が発生してもフック3が過度に係合部BP1に嵌り込むことが抑制される。
【0038】
フレーム材7は、第1縦ワイヤー7A及び第2縦ワイヤー7Bを有して構成されており、第1補強ワイヤー9Aは第1縦ワイヤー7Aに連結され、第2補強ワイヤー9Bは第2縦ワイヤー7Bに連結されている。これにより、製造者は、フレーム材7を、安価、かつ、容易に構成でき得る。
【0039】
第1補強ワイヤー9A、第2補強ワイヤー9B及び位置規制部9Cは、連続した1本のワイヤー材9により構成されている。これにより、製造者は、フレーム材7を、安価、かつ、容易に構成でき得る。
【0040】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、第2補強ワイヤー9Bがフック3より下方側の位置にてフレーム材7に連結されていた。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、当該発明は、例えば、第1補強ワイヤー9A及び第2補強ワイヤー9B、又は第1補強ワイヤー9Aがフック3より下方側の位置にてフレーム材7に連結された構成であってもよい。
【0041】
上述の実施形態に係るフレーム材7は第1縦ワイヤー7A及び第2縦ワイヤー7Bにて構成されていた。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、当該発明は、例えば、フレーム材7が1本のワイヤーにて構成されていてもよい。
【0042】
上述の実施形態では、第1補強ワイヤー9A、第2補強ワイヤー9B及び位置規制部9Cは、連続した1本のワイヤー材9により構成されていた。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
上述の実施形態では、車両に本開示に係るバックフレームを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されるものではなく、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0044】
さらに、本開示は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1… バックフレーム 2… シートバック 3… フック
5… 被固定部 7… フレーム材 7A… 第1縦ワイヤー
7B… 第2縦ワイヤー 7C… 連結部 9… ワイヤー材
9A… 第1補強ワイヤー 9B… 第2補強ワイヤー
9C… 位置規制部 11… 上端側ビーム 13… 下端側ビーム