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  • 特許-ドレン回収システム 図1
  • 特許-ドレン回収システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】ドレン回収システム
(51)【国際特許分類】
   F22D 11/06 20060101AFI20220315BHJP
   F22D 5/26 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
F22D11/06 A
F22D5/26 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018087582
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019190803
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】秋永 草平
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-205006(JP,A)
【文献】特開2014-009887(JP,A)
【文献】特開2014-178052(JP,A)
【文献】特開2012-2384(JP,A)
【文献】米国特許第6196163(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 11/06
F22D 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラにおいて発生し負荷機器において用いられた蒸気が凝縮して生じたドレンを回収して前記ボイラに供給するドレン回収システムであって、
前記負荷機器で発生したドレンを補給水として回収する開放型のオープンタンクと、
前記オープンタンク内の補給水を循環させる循環手段と、
前記オープンタンク内の補給水の温度を検出する温度検出手段と、
前記負荷機器と前記オープンタンクとを接続するドレン戻しラインと、
前記ドレン戻しラインから分岐する排ドレンラインと、
前記温度検出手段の検出温度が第一設定温度を超えた場合、前記循環手段による循環動作を停止させる制御手段と、
を備え
前記制御手段は、前記温度検出手段の検出温度が第二設定温度を超えた場合、前記排ドレンラインを開放する、ドレン回収システム。
【請求項2】
請求項1に記載のドレン回収システムであって、
前記第二設定温度は、前記第一設定温度よりも高い、ドレン回収システム。
【請求項3】
請求項2に記載のドレン回収システムであって、
前記オープンタンクへ新水を供給できる新水供給ラインを備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段の検出温度が前記第二設定温度を超えた場合、前記オープンタンクへ新水を供給する、ドレン回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷機器から排出されるドレンを回収してボイラに供給するドレン回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負荷機器に供給された蒸気が凝縮して発生するドレンをタンクに回収し、再度ボイラに供給するドレン回収システムが提案されている。例えば、特許文献1には、開放型のタンク(オープンタンク)内の補給水を循環手段により循環させ、オープンタンクに流入するドレン(蒸気)と混合することで、ドレンを凝縮して回収するドレン回収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-53804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オープンタンクに戻ってくるドレン(蒸気)によってはオープンタンクに貯留される補給水が高温となることがあり、ボイラ等への給水経路においてキャビテーションが発生するおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、オープンタンクからボイラ等に給水する際のキャビテーションの発生を抑制することの可能なドレン回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ボイラにおいて発生し負荷機器において用いられた蒸気が凝縮して生じたドレンを回収して前記ボイラに供給するドレン回収システムであって、前記負荷機器で発生したドレンを補給水として回収する開放型のオープンタンクと、前記オープンタンク内の補給水を循環させる循環手段と、前記オープンタンク内の補給水の温度を検出する温度検出手段と、前記負荷機器と前記オープンタンクとを接続するドレン戻しラインと、前記ドレン戻しラインから分岐する排ドレンラインと、前記温度検出手段の検出温度が第一設定温度を超えた場合、前記循環手段による循環動作を停止させる制御手段と、を備える、ドレン回収システムが提供される。
【0007】
本発明によれば、制御手段が、温度検出手段による検出温度が第一設定温度を超えた場合、循環手段による循環動作を停止させるよう構成されている。また、ドレン戻しラインから分岐する排ドレンラインを備えていることから、オープンタンクへのドレンの流入を抑制することも可能である。これらにより、オープンタンク内の補給水の温度上昇を抑制することができ、ボイラ等に給水する際のキャビテーションの発生を抑制することが可能となっている。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、前記制御手段は、前記温度検出手段の検出温度が前記第一設定温度よりも高い第二設定温度を超えた場合、前記排ドレンラインを開放する。
【0010】
好ましくは、前記オープンタンクへ新水を供給できる新水供給ラインを備え、前記制御手段は、前記温度検出手段の検出温度が前記第二設定温度を超えた場合、前記オープンタンクへ新水を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るドレン回収システム1の構成を示す図である。
図2図1のドレン回収システム1の温度制御を示すフローチャートであるである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るドレン回収システム1について、図1及び図2を参照しつつ説明する。ドレン回収システム1は、負荷機器4において発生したドレンを回収してボイラ2に供給するものである。本実施形態のドレン回収システム1は、クローズド方式でのドレンの回収と、オープン方式でのドレンの回収とを行えるよう構成される。
【0014】
1 ドレン回収システム1の構成
まず、図1を参照して、本実施形態のドレン回収システム1の構成を説明する。本実施形態のドレン回収システム1は、ボイラ2と、蒸気ヘッダ3と、負荷機器4と、ドレンタンク5と、オープンタンク6と、制御手段9とを備える。また、ドレン回収システム1は、ラインとして、連結管L1と、負荷機器ラインL2と、回収ラインL3と、ドレンタンク用蒸気ラインL4と、圧力逃がしラインL5と、ドレン戻しラインL6と、補給水供給ラインL7と、クローズド給水ラインL8と、オープン給水ラインL9と、排ドレンラインL10と、新水供給ラインL11とを備える。
【0015】
ボイラ2は、本実施形態においては、缶体(図示せず)を備えた小型の貫流ボイラとされる。ボイラ2で発生した蒸気は、連結管L1を通って蒸気ヘッダ3に供給され、蒸気ヘッダ3に集められた蒸気は、負荷機器ラインL2を通って負荷機器4に供給される。なお、複数のボイラ2を備え、複数のボイラ2からの蒸気を蒸気ヘッダ3に集合させて、負荷機器4へと供給する構成としても良い。
【0016】
負荷機器4は、ボイラ2で発生した蒸気を熱源として利用し、加熱対象物との間で熱交換を行う。負荷機器4は直列又は並列に複数設けられていても良い。
【0017】
ドレンタンク5は、負荷機器4において熱交換に用いられた蒸気の一部が凝縮して生じるドレンを高温高圧状態で回収して収容する。ドレンタンク5は、耐圧性を有し密閉可能な密閉型の圧力容器により構成される。また、ドレンタンク5は、ボイラ2よりも上方に配置することが好ましい。なお、ドレンタンク5は、クローズド給水ラインL8を流通するドレンをドレンタンク5の気相部に循環させ、ドレンタンク5内の蒸気を凝縮させる循環手段を備えていることが好適である。ただし、ドレンタンク5に設ける循環手段については、従来既知の構成を適用することとし、その説明を省略する。
【0018】
オープンタンク6は、大気開放された開放型のタンクであり、ドレンタンク5及びボイラ2に供給するための補給水を貯留する。オープンタンク6は、ボイラ2よりも上方に配置することが好ましい。また、オープンタンク6には、オープンタンク6内の補給水の温度Tを検出する温度検出手段91が設けられる。
【0019】
加えて、本実施形態のオープンタンク6は、オープンタンク6内の補給水を循環させる循環手段7を備える。具体的には、循環手段7は、第1循環手段70と第2循環手段80の2つの循環手段を備えている。以下、第1循環手段70及び第2循環手段80の構成を説明する。
【0020】
第1循環手段70は、循環ライン71と、循環ポンプ72と、混合手段73とを備える。混合手段73は、混合部73aと、導水部73bとを備える。
【0021】
循環ライン71は、オープンタンク6の下部(液相部)と混合手段73の混合部73aとを接続するラインである。循環ライン71には、循環ポンプ72が設置される。循環ポンプ72は、オープンタンク6下部の補給水を循環ライン71を介して混合部73aへと供給する。なお、循環ライン71の下流側、すなわち混合部73a側の端部には、補給水をシャワー状にして混合部73a内に噴出する拡散手段(図示せず)を設けることが好適である。
【0022】
混合部73aには、上述した循環ライン71及び圧力逃がしラインL5が接続される。混合手段73は、混合部73aにおいて、圧力逃がしラインL5からの蒸気(フラッシュ蒸気)と循環ライン71により供給される補給水とを混合させて、蒸気を凝縮させる。また、導水部73bは、混合部73aにて生成された凝縮水をオープンタンク6の液相部内へ導く筒状の配管である。混合手段73の具体的な構造は、従来既知の任意の構成のものを適用するものとし、その詳細な説明を省略する。
【0023】
第2循環手段80は、循環ライン81と、循環ポンプ82と、混合手段83とを備える。混合手段83は、混合部83aと導水部83bとを備える。循環ライン81は、オープンタンク6の下部(液相部)と混合手段83の混合部83aとを接続するラインであり、循環ライン81には循環ポンプ82が設置される。
【0024】
第2循環手段80は、混合手段83の混合部83aにおいて、ドレン戻しラインL6から流入するドレンより発生する蒸気(フラッシュ蒸気)と循環ライン81により供給される補給水とを混合させて、蒸気を凝縮させる。第2循環手段80の各要素の構成は、第1循環手段70の構成と同じであるので、その説明を省略する。
【0025】
上記の構成の第1循環手段70及び第2循環手段80は、圧力逃がしラインL5及びドレン戻しラインL6から蒸気を凝縮して回収するために用いられる。これら第1循環手段70及び第2循環手段80による蒸気の回収により、オープン給水ラインL9を介したオープン給水の際の熱効率を向上させることが可能となっている。
【0026】
回収ラインL3は、負荷機器4とドレンタンク5とを接続するラインである。回収ラインL3は、負荷機器4で発生したドレンを回収してドレンタンク5に供給する。回収ラインL3の下流側の端部は、ドレンタンク5の上部(気相部)に接続される。また、回収ラインL3には、負荷機器4において発生したドレンを排出し、かつ、蒸気の排出を防ぐスチームトラップ21が配置される。加えて、後述するドレン戻しラインL6との接続位置よりも下流側には、ドレン回収弁V3が配置される。
【0027】
ドレンタンク用蒸気ラインL4は、蒸気ヘッダ3とドレンタンク5とを接続するラインである。ドレンタンク用蒸気ラインL4は、ボイラ2で発生した蒸気をドレンタンク5に供給する。ドレンタンク用蒸気ラインL4の下流側の端部は、ドレンタンク5の上部(気相部)に接続される。ドレンタンク用蒸気ラインL4には、ドレンタンク5に所定の圧力で蒸気を供給するための圧力調整弁V4が配置される。
【0028】
圧力逃がしラインL5は、ドレンタンク5とオープンタンク6とを接続するラインである。圧力逃がしラインL5は、ドレンタンク5で発生したフラッシュ蒸気をオープンタンク6に排出する。圧力逃がしラインL5の上流側の端部は、ドレンタンク5の上部(気相部)に接続される。圧力逃がしラインL5の下流側の端部は、第1循環手段70の混合手段73に接続される。また、圧力逃がしラインL5には、圧力調整弁V5が配置される。圧力調整弁V5は、ドレンタンク5の内部の圧力が所定の圧力を超えた場合に、フラッシュ蒸気をオープンタンク6側に逃がして、ドレンタンク5の内部の圧力を低下させる。
【0029】
ドレン戻しラインL6は、負荷機器4とオープンタンク6とを接続するラインである。ドレン戻しラインL6は、負荷機器4からの余剰ドレンをオープンタンク6へ導入する。余剰ドレンとは、何らかの理由で、ドレンタンク5に収容することができなかったドレンである。ここで、ドレン戻しラインL6の上流側と回収ラインL3の上流側とは、共通のラインにより構成される。また、ドレン戻しラインL6の回収ラインL3との分岐位置よりも下流側の位置には、ドレン逃がし弁V6が設置される。
【0030】
クローズド給水ラインL8は、ドレンタンク5とボイラ2とを接続するラインである。クローズド給水ラインL8は、ドレンタンク5に収容されたドレンをボイラ2に供給する。クローズド給水ラインL8の上流側の端部は、ドレンタンク5の底部(液相部)に接続される。クローズド給水ラインL8には、ドレン供給ポンプP8が設置される。ドレン供給ポンプP8は、ドレンタンク5から供給されたドレンを昇圧してボイラ2側に送り出す。また、クローズド給水ラインL8のドレン供給ポンプP8よりも下流側の位置には、クローズド給水弁V8が配置される。
【0031】
オープン給水ラインL9は、オープンタンク6とボイラ2とを接続するラインである。オープン給水ラインL9は、オープンタンク6に収容された補給水をボイラ2に供給する。オープン給水ラインL9の上流側の端部は、オープンタンク6の底部(液相部)に接続される。オープン給水ラインL9には、ブースターポンプPbが設置される。ブースターポンプPbは、オープンタンク6から供給された補給水を昇圧してボイラ2側に送り出す。ブースターポンプPbは、オープン給水ラインL9におけるキャビテーションを防止するために設けられる。本実施形態において、ブースターポンプPbのオープン給水ラインL9上における設置位置は、オープンタンク6とボイラ2の中間位置よりもオープンタンク6側の位置とされる。また、ブースターポンプPbの設置位置は、より好ましくは、オープン給水ラインL9を4等分した場合の最もオープンタンク6側の位置とされる。また、ブースターポンプPbよりも下流側(ボイラ2側)には、ブースターポンプPb方向の流れを阻止する逆止弁Vbが配置される。加えて、オープン給水ラインL9には、図1に示すボイラ2側の位置にも、補助ポンプP9と逆止弁V9が設けられる。
【0032】
補給水供給ラインL7は、オープン給水ラインL9から分岐するラインであり、オープン給水ラインL9とドレンタンク5とを接続する。補給水供給ラインL7は、逆止弁Vbより下流側であって補助ポンプP9より上流側の位置において、オープン給水ラインL9から分岐する。補給水供給ラインL7は、オープンタンク6に貯留された補給水を、オープン給水ラインL9を経由してドレンタンク5に供給する。補給水供給ラインL7には、補給水供給ポンプP7が配置され、この補給水供給ポンプP7を駆動させることにより、オープンタンク6からドレンタンク5に補給水が供給される。また、補給水供給ポンプP7の下流側には、オープン給水ラインL9方向への補給水の逆流を防止する逆止弁V7が設けられている。
【0033】
排ドレンラインL10は、ドレン戻しラインL6から分岐するラインである。排ドレンラインL10の一端はドレン戻しラインL6に接続され、排ドレンラインL10の他端側はタンク等(図示せず)と接続される。排ドレンラインL10には、排ドレン弁V10が設けられている。そして、排ドレンラインL10は、排ドレン弁V10が開放されると、ドレン戻しラインL6を流通するドレンを分岐させて図示しないタンク等に貯留し、オープンタンク6へのドレンの流通を低減する。なお、排ドレン弁V10を流量調整の可能な玉型弁等とし、排出するドレンの流量(同時に、オープンタンク6に流入させるドレン量)を調整可能に構成してもよい。
【0034】
新水供給ラインL11は、オープンタンク6へ外部から新水を供給するラインである。新水供給ラインL11は、オープンタンク6の底部(液相部)に接続される。また、新水供給ラインL11には、新水弁V11が設置される。なお、新水は、補給水の温度を下げるため冷水とすることが好ましい。また、本実施形態において、オープンタンク6には、この新水と、ドレン戻しラインL6からのドレン及び圧力逃がしラインL5からの蒸気が凝縮したドレンとが混合された水が収容される。
【0035】
制御手段9は、ボイラ2からの信号等に基づいて上記各ラインに設けられる弁の開閉やポンプの駆動等を制御することで、ドレンの回収及びボイラ2への供給を制御するものである。また、本実施形態の制御手段9は、温度検出手段91の検出温度Tをもとに、オープンタンク6内の補給水の温度制御も行う。制御手段9による補給水の温度制御の詳細については、後述する。
【0036】
なお、制御手段9は、具体的には、CPU及び各種メモリにより構成される。制御手段9の動作は、プログラムの形式でハードディスク、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)等の記憶媒体に記憶される。そして、このプログラムをCPUが読み出して実行することで、各制御が行われる。
【0037】
以上のような構成のドレン回収システム1は、負荷機器4で生じたドレンをドレンタンク5又はオープンタンク6に収容する。そして、ドレンタンク5に収容したドレンを、クローズド給水ラインL8を介してボイラ2に供給(クローズド給水)し、オープンタンク6に収容したドレンをオープン給水ラインL9を介してボイラ2に供給(オープン給水)する。
【0038】
なお、クローズド給水の際には、制御手段9は、ドレンタンク5に設置された温度センサや圧力センサ、水位センサ等(図示せず)により計測される温度や圧力、水位等に基づいて、各ラインの弁やポンプ等の制御を行う。これらの制御については、従来既知の方法を用いることにして、詳細な説明を省略する。また、本実施形態のドレン回収システム1は、平常時には熱効率の良いクローズド給水が優先的に行われ、クローズド給水に不具合が生じた際に、オープン給水を行うよう制御される。
【0039】
2 補給水の温度制御
次に、図2のフローチャートを用いて、上記構成のドレン回収システム1における、オープンタンク6内の補給水の温度制御について説明する。本実施形態において、温度制御は、循環手段7による循環動作と、排ドレンラインL10の開閉によるドレン放出動作により達成される。
【0040】
ドレン回収システム1のドレン回収動作が開始されると、オープンタンク6内の補給水の温度制御も開始される。温度制御の開始後、制御手段9はまず、ステップS1において循環手段7の循環動作を開始する。具体的には、制御手段9は、循環ポンプ72を駆動することによって第1循環手段70による循環ライン71を介した補給水の循環動作を実行する。また、同時に、制御手段9は、循環ポンプ82を駆動することによって第2循環手段80による循環ライン81を介した補給水の循環動作を実行する。なお、循環動作を行うことにより、オープンタンク6へ供給される蒸気が凝縮され、熱回収がなされることで、補給水の温度Tは上昇する。
【0041】
次に、ステップS2において、制御手段9は、温度検出手段91が検出したオープンタンク6内の補給水の温度Tが第一設定温度T1を超えたかどうかを判定する。ここで、第一設定温度T1は、例えば85℃~95℃とすることが好ましい。また、第一設定温度T1は、88℃~92℃とすることがより好ましい。この判定のステップS2は、次のステップS3に移行するまで常に実行され続ける。そして、補給水の温度Tが第一設定温度T1を超えた場合、次のステップS3に移行し、ステップS3において、循環手段7の循環動作、すなわち第1循環手段70及び第2循環手段80の循環動作を停止する。
【0042】
次にステップS4において、制御手段9は、温度検出手段91が検出したオープンタンク6内の補給水の温度Tが第一設定温度T1よりも高温である第二設定温度T2を超えたかどうかを判定する。ここで、第二設定温度T2は、例えば90℃~99℃とすることが好ましい。また、第二設定温度T2は、93℃~97℃とすることがより好ましい。この判定のステップS4は、次のステップS5に移行するまで常に実行され続ける。そして、補給水の温度Tが第二設定温度T2を超えた場合、次のステップS5に移行し、ステップS5において、制御手段9は、排ドレン弁V10を開け、排ドレンラインL10を開放する。これにより、オープンタンク6に流入していたドレンの少なくとも一部は、排ドレンラインL10を介してタンク等に貯留される。また、略同一のタイミングで、ステップS6において、新水弁V11を開放し、新水供給ラインL11を介してオープンタンク6へ新水を供給する。
【0043】
ステップS5において排ドレンラインL10が開放され、ステップS6において新水の供給が開始された後は、ボイラ2が停止してドレン回収システム1のドレン回収動作が終了するまで、循環手段7による補給水の循環を停止した状態を継続し、排ドレンラインL10を開放した状態を継続する。そして、ボイラ2が停止し、ボイラ2への給水が停止すると、制御手段9は、オープンタンク6の温度制御を終了する。
【0044】
なお、制御手段9は、補給水の温度Tが再び第二設定温度T2を下回った場合に、排ドレンラインL10を閉止(排ドレン弁V10を閉止)し、新水弁V11を閉止して新水の供給を停止するよう制御しても良い。さらに、補給水の温度Tが再び第一設定温度T1を下回った場合に、循環手段7の循環動作を再開させるよう制御しても良い。
【0045】
3 効果
以上のようなドレン回収システム1は、温度検出手段91による検出温度Tが第一設定温度T1を超えた場合、制御手段9は循環手段7による循環動作を停止させるよう構成されている。また、温度検出手段91による検出温度Tが第二設定温度T2を超えた場合には、制御手段9は排ドレン弁V10を開けて排ドレンラインL10を開放するとともに、新水弁V11を開放して新水供給ラインL11からオープンタンク6へ新水を供給するよう構成されている。したがって、本実施形態のドレン回収システム1は、制御手段9によるこれらの制御により、オープンタンク6内の補給水の温度上昇を抑制することが可能となっており、その結果、ボイラ等に給水する際のキャビテーションの発生を抑制することが可能となっている。
【0046】
ところで、本実施形態において、オープンタンク6の補給水は、ブースターポンプPbにより昇圧されてボイラ2に給水されるが、このブースターポンプPbは、何らかの原因で使用できない場合がある。この場合、ボイラ2への供給自体は可能であっても、オープン給水ラインL9においてキャビテーションが発生する可能性が高くなる。しかしながら、本実施形態のドレン回収システム1は、たとえブースターポンプPbが使用できない場合であっても、制御手段9が上述したステップによりオープンタンク6内の補給水の温度制御を行っていることで、オープン給水ラインL9におけるキャビテーションの発生を抑制することが可能となっている。
【0047】
なお、ブースターポンプPbが使用できない場合は、ブースターポンプPbをバイパスするバイパスライン(図示せず)により、ブースターポンプPbを介することなくボイラ2に給水を行うか、ブースターポンプPbを取り外して管路に付け替え、当該管路を介してボイラ2に給水することが好ましい。
【0048】
4 変形例
本発明は、以下の態様でも実施可能である。
・上記実施形態では、排ドレンラインL10の排ドレン弁V10は、温度検出手段91が検出したオープンタンク6内の補給水の温度Tに応じて、制御手段9の制御により開閉制御が行われていたが、この構成に限定されるものではない。すなわち、ユーザがオープンタンク6の状態やブースターポンプPbの状況等に応じて排ドレン弁V10を手動で開閉する構成とすることも可能である。また、排ドレン弁V10を流量調整の可能な玉型弁等とした場合には、補給水の温度Tに応じて排出するドレンの流量を調整し、オープンタンク6に流入させるドレン量を調整するよう構成してもよい。
・上記実施形態では、排ドレンラインL10はタンク等(図示せず)に接続される構成であったが、排ドレンラインL10の他端側を単に大気に開放する構成とすることも可能である。
・上記実施形態では、オープンタンク6内の補給水の温度制御の際、補給水の温度Tが第一設定温度T1を超えると、第1循環手段70及び第2循環手段80の循環動作を同時に停止する構成であったが、この構成に限定されるものではない。すなわち、片方の循環手段のみを停止する構成とすることも可能であるまた、第三設定温度T3(>T1)を規定し、補給水の温度Tが第一設定温度T1を超えるとまず一方の循環手段の循環を停止し、次に、補給水の温度Tが第三設定温度T3を超えると他方の循環手段の循環を停止する構成とすることも可能である。
・上記実施形態では、循環手段7は圧力逃がしラインL5が接続される第1循環手段70と、第1循環手段70とドレン戻しラインL6が接続される第2循環手段80の2つの循環手段を備えていたが、何れか一方の循環手段のみを備える構成とすることもできる。
・上記実施形態では、排ドレンラインL10を開放する閾値である第二設定温度T2を、循環手段7の循環動作を停止する閾値である第一設定温度T1よりも高温となるよう設定していたが、閾値の設定はこれに限定されるものではない。すなわち、第一設定温度T1と第二設定温度T2を同一の温度とすることや、第二設定温度T2よりも第一設定温度T1のほうが高温であるよう設定することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 :ドレン回収システム
2 :ボイラ
3 :蒸気ヘッダ
4 :負荷機器
5 :ドレンタンク
6 :オープンタンク
7 :循環手段
9 :制御手段
21 :スチームトラップ
70 :第1循環手段
71 :循環ライン
72 :循環ポンプ
73 :混合手段
73a :混合部
73b :導水部
80 :第2循環手段
81 :循環ライン
82 :循環ポンプ
83 :混合手段
83a :混合部
83b :導水部
91 :温度検出手段
L1 :連結管
L2 :負荷機器ライン
L3 :回収ライン
L4 :ドレンタンク用蒸気ライン
L5 :圧力逃がしライン
L6 :ドレン戻しライン
L7 :補給水供給ライン
L8 :クローズド給水ライン
L9 :オープン給水ライン
L10 :排ドレンライン
L11 :新水供給ライン
P7 :補給水供給ポンプ
P8 :ドレン供給ポンプ
P9 :補助ポンプ
Pb :ブースターポンプ
S1~S6 :ステップ
T :温度(検出温度)
T1 :第一設定温度
T2 :第二設定温度
T3 :設定温度
V3 :ドレン回収弁
V4 :圧力調整弁
V5 :圧力調整弁
V6 :ドレン逃がし弁
V7 :逆止弁
V8 :クローズド給水弁
V9 :逆止弁
V10 :排ドレン弁
V11 :新水弁
Vb :逆止弁
図1
図2