(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】シリンジポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20220315BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20220315BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
A61M5/168 510
A61M5/145 506
A61M5/315 500
(21)【出願番号】P 2018089958
(22)【出願日】2018-05-08
【審査請求日】2021-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2017127741
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽畑 元晴
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀典
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-306990(JP,A)
【文献】特開2017-051548(JP,A)
【文献】特開2014-155658(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046397(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/145
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端に第1フランジを有するバレル、および、該バレルの内側に嵌入され、後端に第2フランジを有するプランジャロッドを含むシリンジに適用され、前記プランジャロッドの前記バレル内への移動を制限するロック機構と協働するシリンジポンプであって、
前記バレルの前記第1フランジを前記第1フランジの厚さ方向に挟持して固定する第1挟持機構と、
前記第1挟持機構によって前記第1フランジが固定されていることを検知する第1固定検知部と、
前記プランジャロッドの前記第2フランジを前記第2フランジの厚さ方向に挟持して固定する第2挟持機構と、
前記第2挟持機構によって前記第2フランジが固定されていることを検知する第2固定検知部と、
前記第2挟持機構を前記プランジャロッドの軸方向に沿って移動させる移動機構と、
前記第1フランジが固定されていることが前記第1固定検知部によって検知され、かつ、前記第2フランジが固定されていることが前記第2固定検知部によって検知されているときのみ、前記ロック機構を解除可能に構成された、アンロック機構とを備え
、
前記ロック機構が前記シリンジに設けられており、
前記ロック機構は、前記プランジャロッドの軸方向に直交する径方向に押圧される被押圧部を含み、かつ、該被押圧部が押圧されることにより解除され、
前記アンロック機構は、前記被押圧部を押圧する押圧部を含む、シリンジポンプ。
【請求項2】
後端に第1フランジを有するバレル、および、該バレルの内側に嵌入され、後端に第2フランジを有するプランジャロッドを含むシリンジに適用され、前記プランジャロッドの前記バレル内への移動を制限するロック機構と協働するシリンジポンプであって、
前記バレルの前記第1フランジを前記第1フランジの厚さ方向に挟持して固定する第1挟持機構と、
前記第1挟持機構によって前記第1フランジが固定されていることを検知する第1固定検知部と、
前記プランジャロッドの前記第2フランジを前記第2フランジの厚さ方向に挟持して固定する第2挟持機構と、
前記第2挟持機構によって前記第2フランジが固定されていることを検知する第2固定検知部と、
前記第2挟持機構を前記プランジャロッドの軸方向に沿って移動させる移動機構と、
前記第1フランジが固定されていることが前記第1固定検知部によって検知され、かつ、前記第2フランジが固定されていることが前記第2固定検知部によって検知されているときのみ、前記ロック機構を解除可能に構成された、アンロック機構とを備え
、
前記ロック機構が、前記バレルに接続される液剤流路に設けられており、
前記ロック機構は、前記液剤流路を開閉可能に構成されており、
前記アンロック機構は、前記ロック機構を解除して前記液剤流路を開放する、シリンジポンプ。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記液剤流路が挿通される1対の開口部、前記1対の開口部に挿通された前記液剤流路に沿う延在方向に延在しつつ前記液剤流路を互いの間に挟んで閉塞可能な、基部および該基部の前記延在方向の一端部から折り返すように延在する弾性片部、並びに、前記基部の前記一端部とは反対側の他端部に設けられ、前記弾性片部の先端部を係止可能な突起部を含み、
前記アンロック機構は、一方向に回転する回転軸および該回転軸に連結されたカムで構成されており、
前記カムは、回転軸方向から見て、前記回転軸を中心とした円弧形状を有する湾曲面部を含み、
前記回転軸が前記一方向に回転する際に、前記湾曲面部が前記他端部を前記先端部から離れる方向に押圧して、前記先端部と前記突起部との係止を解除することにより、前記ロック機構が解除され、かつ、前記湾曲面部が前記弾性片部を基部側に押圧して、前記先端部を前記突起部に係止させることにより、前記ロック機構が前記液剤流路を閉塞した状態に維持される、請求項
2に記載のシリンジポンプ。
【請求項4】
前記第1固定検知部は、前記第1挟持機構が前記第1フランジを挟持した際の前記第1フランジの厚さ方向の挟持間隔が第1閾値以上第2閾値以下である場合に、前記第1挟持機構によって前記第1フランジが固定されていると検知する、請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のシリンジポンプ。
【請求項5】
前記第2固定検知部は、前記第2挟持機構に設けられ、前記プランジャロッドの軸方向に押圧される押圧センサであり、
前記第2固定検知部は、前記第2挟持機構が前記第2フランジを挟持した際に前記第2フランジによって押圧されている場合に、前記第2挟持機構によって前記第2フランジが固定されていると検知する、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のシリンジポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
サイフォニング現象を防ぐことを目的として構成されたシリンジポンプを開示した先行文献として、国際公開第2015/046397号(特許文献1)がある。特許文献1に記載されたシリンジポンプは、挟持機構と、異常感知部と、バルブ装置とを備える。
【0003】
挟持機構は、挟持基部、および、挟持基部に対し接離するフランジ押さえを含む。挟持機構は、挟持基部とフランジ押さえとによって、シリンジの後端側のフランジを両側から挟む。異常感知部は、フランジ押さえの進退方向の位置を感知して感知信号を出力する。バルブ装置は、異常感知部から感知信号を受信した際に、シリンジの先端に接続される可撓性の輸液チューブを外部から押圧変形して閉鎖する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイフォニング現象は、シリンジがシリンジポンプに装着されていない状態においても発生し得る。本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、シリンジ側に設けられるロック機構と協働して、シリンジがシリンジポンプに装着されていない状態、および、シリンジがシリンジポンプに装着されている状態の両方において、サイフォニング現象を抑制することができる、シリンジポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づくシリンジポンプは、後端に第1フランジを有するバレル、および、バレルの内側に嵌入され、後端に第2フランジを有するプランジャロッドを含むシリンジに適用され、プランジャロッドのバレル内への移動を制限するロック機構と協働するシリンジポンプである。シリンジポンプは、第1挟持機構と、第1固定検知部と、第2挟持機構と、第2固定検知部と、移動機構と、アンロック機構とを備える。第1挟持機構は、バレルの第1フランジを第1フランジの厚さ方向に挟持して固定する。第1固定検知部は、第1挟持機構によって第1フランジが固定されていることを検知する。第2挟持機構は、プランジャロッドの第2フランジを第2フランジの厚さ方向に挟持して固定する。第2固定検知部は、第2挟持機構によって第2フランジが固定されていることを検知する。移動機構は、第2挟持機構をプランジャロッドの軸方向に沿って移動させる。アンロック機構は、第1フランジが固定されていることが第1固定検知部によって検知され、かつ、第2フランジが固定されていることが第2固定検知部によって検知されているときのみ、ロック機構を解除可能に構成されている。
【0007】
本発明の一形態においては、ロック機構がシリンジに設けられている。ロック機構は、プランジャロッドの軸方向に直交する径方向に押圧される被押圧部を含み、かつ、被押圧部が押圧されることにより解除される。アンロック機構は、被押圧部を押圧する押圧部を含む。
【0008】
本発明の一形態においては、ロック機構が、バレルに接続される液剤流路に設けられている。ロック機構は、液剤流路を開閉可能に構成されている。アンロック機構は、ロック機構を解除して液剤流路を開放する。
【0009】
本発明の一形態においては、ロック機構は、液剤流路が挿通される1対の開口部、1対の開口部に挿通された液剤流路に沿う延在方向に延在しつつ液剤流路を互いの間に挟んで閉塞可能な、基部および基部の延在方向の一端部から折り返すように延在する弾性片部、並びに、基部の一端部とは反対側の他端部に設けられ、弾性片部の先端部を係止可能な突起部を含む。アンロック機構は、一方向に回転する回転軸および回転軸に連結されたカムで構成されている。カムは、回転軸方向から見て、回転軸を中心とした円弧形状を有する湾曲面部を含む。回転軸が上記一方向に回転する際に、湾曲面部が他端部を先端部から離れる方向に押圧して、先端部と突起部との係止を解除することにより、ロック機構が解除され、かつ、湾曲面部が弾性片部を基部側に押圧して、先端部を突起部に係止させることにより、ロック機構が液剤流路を閉塞した状態に維持される。
【0010】
本発明の一形態においては、第1固定検知部は、第1挟持機構が第1フランジを挟持した際の第1フランジの厚さ方向の挟持間隔が第1閾値以上第2閾値以下である場合に、第1挟持機構によって第1フランジが固定されていると検知する。
【0011】
本発明の一形態においては、第2固定検知部は、第2挟持機構に設けられ、プランジャロッドの軸方向に押圧される押圧センサである。第2固定検知部は、第2挟持機構が第2フランジを挟持した際に第2フランジによって押圧されている場合に、第2挟持機構によって第2フランジが固定されていると検知する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、シリンジ側に設けられるロック機構と協働して、シリンジがシリンジポンプに装着されていない状態、および、シリンジがシリンジポンプに装着されている状態の両方において、サイフォニング現象を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係るシリンジポンプの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のシリンジポンプを矢印II方向から見た正面図である。
【
図3】
図1のシリンジポンプを矢印III方向から見た斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジの外観を示す斜視図である。
【
図5】
図4のシリンジを矢印V方向から見た図である。
【
図6】
図4のシリンジを矢印VI方向から見た図である。
【
図7】
図5のシリンジをVII-VII線矢印方向から見た断面図である。
【
図8】本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジの構成を示す分解斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジが備える螺合部材の外観を示す正面図である。
【
図10】本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジが備える螺合部材の外観を示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジが備える第1取付部材の外観を示す斜視図である。
【
図12】本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジが備える第2取付部材の外観を示す斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジが備える取付部材の外観を示す斜視図である。
【
図14】本発明の実施形態1に係るシリンジポンプにシリンジが装着され、第1挟持機構がバレルの第1フランジを挟持している状態を示す正面図である。
【
図15】
図14のシリンジポンプを矢印XV方向から見た斜視図である。
【
図16】本発明の実施形態1に係るシリンジポンプにシリンジが装着され、第2挟持機構がプランジャロッドの第2フランジを挟持している状態を示す正面図である。
【
図17】
図16のシリンジポンプを矢印XVII方向から見た斜視図である。
【
図18】本発明の実施形態1に係るシリンジポンプにシリンジが装着され、アンロック機構によってロック機構が解除される状態を示す図である。
【
図19】本発明の実施形態1に係るシリンジポンプにシリンジが装着され、アンロック機構によりロック機構が解除された状態で、押動部によってプランジャロッドをバレル内に挿入している状態を示す正面図である。
【
図20】本発明の実施形態2に係るシリンジポンプにシリンジが装着され、第1挟持機構がバレルの第1フランジを挟持している状態を示す正面図である。
【
図21】
図20のシリンジポンプを矢印XXI方向から見た斜視図である。
【
図22】本発明の実施形態2に係るシリンジポンプにシリンジが装着され、アンロック機構によってロック機構が解除される状態を示す図である。
【
図23】変形例のロック機構の構成を示す正面図である。
【
図24】
図23のロック機構を矢印XXIV方向から見た図である。
【
図25】
図24のロック機構を矢印XXV方向から見た図である。
【
図26】アンロック機構によって変形例のロック機構が解除される状態を示す図である。
【
図27】本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える、ロック機構およびアンロック機構を含む開閉ユニットにおけるカバーが閉じた状態の外観を示す斜視図である。
【
図28】本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える、ロック機構およびアンロック機構を含む開閉ユニットにおけるカバーが開いた状態の外観を示す斜視図である。
【
図29】本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える、ロック機構およびアンロック機構を含む開閉ユニットにおけるカバーおよびベースを透視した状態の外観を示す斜視図である。
【
図30】
図29の開閉ユニットをXXX-XXX線矢印方向から見た断面図である。
【
図31】本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える、ロック機構およびアンロック機構を含む開閉ユニットにおけるベースに取り付けられている構成を取り除いた状態の外観を示す斜視図である。
【
図32】本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備えるロック機構であるチューブクリップの外観を示す斜視図である。
【
図33】本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備えるロック機構であるチューブクリップの外観を示す背面図である。
【
図34】本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える開閉ユニットにおいて、回転軸の回転に伴って、カムの湾曲面部がチューブクリップの弾性片部を押圧している状態を示す部分背面図である。
【
図35】本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える開閉ユニットにおいて、回転軸の回転に伴って、カムの湾曲面部がチューブクリップの他端部を押圧している状態を示す部分背面図である。
【
図36】本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える開閉ユニットにおいて、回転軸の回転に伴って、カムがチューブクリップから離間している状態を示す部分背面図である。
【
図37】本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える開閉ユニットにおいて、回転軸の回転に伴って、カムの湾曲面部のエッジがチューブクリップの弾性片部を押圧している状態を示す部分背面図である。
【
図38】本発明の実施形態3の変形例に係るシリンジポンプが備える含む開閉ユニットの外観を示す斜視図である。
【
図39】
図38のカムを矢印XXXIX方向から見た部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態に係るシリンジポンプについて図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプの構成を示す斜視図である。
図2は、
図1のシリンジポンプを矢印II方向から見た正面図である。
図3は、
図1のシリンジポンプを矢印III方向から見た斜視図である。
【0016】
本発明の実施形態1に係るシリンジポンプは、後端に第1フランジを有するバレル、および、バレルの内側に嵌入され、後端に第2フランジを有するプランジャロッドを含むシリンジに適用され、プランジャロッドのバレル内への移動を制限するロック機構と協働するシリンジポンプである。
【0017】
図1~
図3に示すように、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプ100は、本体部110と、シリンジ装着部120と、フランジ押さえ板130と、スライド軸140と、押動部150と、把持部160と、アンロック機構190とを備える。
【0018】
本体部110には、駆動部と、駆動部を制御する制御部とが設けられている。駆動部は、スライド軸140を駆動するモータ、および、モータに接続された減速機を含む。
【0019】
シリンジ装着部120に、後述するシリンジが装着される。シリンジ装着部120は、本体部110の一方の側部に設けられている。シリンジ装着部120は、凹面部121と第1フランジ受け部122と、シリンジクランプ123とを含む。
【0020】
凹面部121は、円弧状に湾曲した断面形状を有し、この円弧の中心軸方向に延在している。第1フランジ受け部122は、凹面部121の末端の縁から、凹面部121の延在方向と垂直な方向の外側に向けて延在している。シリンジクランプ123は、凹面部121と対向しつつ接離可能に設けられている。シリンジクランプ123の凹面部121側に、凹面部121とは反対側に円弧状に湾曲した凹部が設けられている。凹面部121とシリンジクランプ123の凹部とによってバレルが挟持されることにより、シリンジがシリンジ装着部120に固定される。
【0021】
フランジ押さえ板130には、スライド軸140が挿通される孔部131、第1フランジ受け部122と対向する第1フランジ押圧部132、凹面部121の末端の縁に沿うように湾曲したU字状の切欠部133、および、フランジ押さえ板130をシリンジ装着部120に近づく方向に付勢するスライド体134が設けられている。
【0022】
第1フランジ押圧部132は、第1フランジ受け部122側に突出している。第1フランジ受け部122と第1フランジ押圧部132とが互いに接触した状態において、シリンジ装着部120とフランジ押さえ板130との間に、部分的に隙間が形成されている。この隙間に、アンロック機構190が配置されている。
【0023】
スライド体134は、フランジ押さえ板130のシリンジ装着部120側の面から、シリンジ装着部120の内部まで延在する軸体と、軸体に挿通されるように配置された圧縮コイルばねとを含む。圧縮コイルばねは、軸体をシリンジ装着部120の内部に引き込むように付勢している。スライド体134は、凹面部121の延在方向に沿う方向に延在している。フランジ押さえ板130は、スライド体134を有することによって、第1フランジ押圧部132が第1フランジ受け部122と対向しつつ接離するように設けられている。
【0024】
第1フランジ受け部122と第1フランジ押圧部132との間に、バレルの第1フランジが配置される。スライド体134からの付勢力によって第1フランジ押圧部132がバレルの第1フランジを押圧することにより、第1フランジ受け部122と第1フランジ押圧部132とによってバレルの第1フランジを第1フランジの厚さ方向に挟持して固定する。このように、シリンジ装着部120とフランジ押さえ板130とが、バレルの第1フランジを第1フランジの厚さ方向に挟持して固定する第1挟持機構として機能する。
【0025】
スライド体134の軸体に沿う位置に、可変抵抗部180が配置されている。可変抵抗部180は、スライド体134の軸体のスライド量を検知する。可変抵抗部180としては、リニアポテンショメータなどを用いることができる。可変抵抗部180の検知結果は、本体部110の制御部に送られる。制御部は、第1挟持機構が第1フランジを挟持した際の第1フランジの厚さ方向の挟持間隔が第1閾値以上第2閾値以下である場合に、第1挟持機構によって第1フランジが固定されていると判断する。
【0026】
このように、可変抵抗部180および制御部は、第1挟持機構によってバレルの第1フランジが固定されていることを検知する第1固定検知部として機能する。なお、第1固定検知部の構成は、上記に限られず、可変抵抗部に代えて、スライド体134の軸体のスライド量を検知可能な、リミットスイッチまたは光電センサなどの他の機構であってもよい。
【0027】
スライド軸140は、一端が本体部110の駆動部と接続され、他端が押動部150と接続されている。スライド軸140は、スライド軸140の軸方向にスライド可能に設けられている。スライド軸140の軸方向は、凹面部121の延在方向と略平行である。
【0028】
押動部150は、連結部151と、第2フランジ押圧部152と、押圧センサ153とを含む。連結部151は、スライド軸140の他端と接続されている。第2フランジ押圧部152は、フランジ押さえ板130と対向するように、スライド軸140の軸方向に垂直な方向に延在している。押圧センサ153は、第2フランジ押圧部152からフランジ押さえ板130側に突出するように設けられている。押圧センサ153は、スライド軸140の軸方向に沿う方向に押圧されると、押動部150の内部に向けて押し下げられ、押圧が解除されると、元の位置に戻るように設けられている。押圧センサ153は、押圧センサ153の突出端が、第2フランジ押圧部152と略同一平面上に位置した時点で、押圧されたと検知する。
【0029】
把持部160は、1対のフィンガー部161、および、1対のフィンガー部161の各々に1つずつ固定された回動軸163を含む。1対のフィンガー部161の各々は、第2フランジ押圧部152と対向する第2フランジ受け部162を有する。1対のフィンガー部161の各々の根元には孔部が設けられており、この孔部に回動軸163が挿入されて固定されている。フィンガー部161と回動軸163とは、互いに直交している。回動軸163は、押動部150の内部まで延在しており、押動部150に取り付けられている開閉レバー170の回動軸171と連結されている。
【0030】
図1~
図3に示すように、開閉レバー170が回動軸171を回動中心として一方側に回動した状態では、1対のフィンガー部161の各々は、回動軸163を回動中心に回動して互いに接近しているとともに、回動軸163が押動部150内に進入するようにスライドして、第2フランジ受け部162が第2フランジ押圧部152に接近している。この状態が、開閉レバー170の閉状態である。
【0031】
開閉レバー170が回動軸171を回動中心として他方側に回動した状態では、1対のフィンガー部161の各々は、回動軸163を回動中心に回動して互いに離間しているとともに、回動軸163が押動部150内から突出するようにスライドして、第2フランジ受け部162が第2フランジ押圧部152から離間している。この状態が、開閉レバー170の開状態である。
【0032】
開閉レバー170の開状態において、プランジャロッドの第2フランジを第2フランジ受け部162と第2フランジ押圧部152との間に配置した後、開閉レバー170を閉状態にすることにより、プランジャロッドの第2フランジを第2フランジの厚さ方向に挟持して固定することができる。このように、押動部150と把持部160と開閉レバー170とが、プランジャロッドの第2フランジを第2フランジの厚さ方向に挟持して固定する第2挟持機構として機能する。
【0033】
上記の押圧センサ153は、第2挟持機構に設けられている。第2挟持機構によってプランジャロッドの第2フランジが固定された際に、押圧センサ153の突出端が、第2フランジ押圧部152と略同一平面上に位置した時点で、押圧センサ153は押圧されたと検知する。
【0034】
このように、押圧センサ153は、第2挟持機構によってプランジャロッドの第2フランジが固定されていることを検知する第2固定検知部として機能する。押圧センサ153は、第2挟持機構が第2フランジを挟持した際に第2フランジによって押圧されている場合に、第2挟持機構によって第2フランジが固定されていると検知する。押圧センサ153の検知信号は、本体部110の制御部に送られる。なお、押圧センサ153の代わりに、光学センサまたは磁気センサを用いてもよい。光学センサまたは磁気センサは、第2フランジ押圧部152とプランジャロッドの第2フランジとの間の隙間が確認できなくなった場合に、第2挟持機構によって第2フランジが固定されていると検知する。磁気センサとしては、ホール素子、磁気抵抗効果素子、または、磁気インピーダンス素子などを用いることができる。
【0035】
押動部150と把持部160と開閉レバー170とは、本体部110の駆動部が駆動することにより、スライド軸140とともに、スライド軸140の軸方向にスライドする。スライド軸140の軸方向は、プランジャロッドの軸方向に沿っている。このように、本体部110の駆動部およびスライド軸140は、第2挟持機構をプランジャロッドの軸方向に沿って移動させる移動機構として機能する。
【0036】
アンロック機構190は、湾曲したアーム部191およびアーム部191に連結された回動軸192を含む。アーム部191と回動軸192とは、互いに直交している。回動軸192は、スライド軸140と平行にシリンジ装着部120の内部まで延在し、回動軸192を周方向に回転させる駆動源と連結されている。アーム部191は、シリンジ装着部120とフランジ押さえ板130との間に形成された隙間において、回動軸192を回動中心として回動可能に設けられている。アーム部191の先端部が、後述するシリンジ200のロック機構の被押圧部を押圧する押圧部となる。アーム部191が回動して押圧部で被押圧部を押圧することにより、ロック機構が解除される。
【0037】
回動軸192に連結された駆動源は、本体部110の制御部と接続されている。本体部110の制御部は、第1フランジが固定されていることが第1固定検知部によって検知され、かつ、第2フランジが固定されていることが第2固定検知部によって検知されているときのみ、回動軸192に連結された駆動源を駆動させる。
【0038】
すなわち、アンロック機構190は、第1フランジが固定されていることが第1固定検知部によって検知され、かつ、第2フランジが固定されていることが第2固定検知部によって検知されているときのみ、ロック機構を解除可能に構成されている。
【0039】
ここで、本実施形態に係るシリンジポンプ100に装着されるシリンジの構成について説明する。
【0040】
図4は、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジの外観を示す斜視図である。
図5は、
図4のシリンジを矢印V方向から見た図である。
図6は、
図4のシリンジを矢印VI方向から見た図である。
図7は、
図5のシリンジをVII-VII線矢印方向から見た断面図である。
図8は、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジの構成を示す分解斜視図である。
【0041】
図9は、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジが備える螺合部材の外観を示す正面図である。
図10は、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジが備える螺合部材の外観を示す斜視図である。
図11は、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジが備える第1取付部材の外観を示す斜視図である。
図12は、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジが備える第2取付部材の外観を示す斜視図である。
図13は、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプに装着されるシリンジが備える取付部材の外観を示す斜視図である。
【0042】
図4~
図8に示すように、本発明の実施形態1に係るシリンジ200は、バレル210とプランジャロッド220と螺合部材230とを備える。シリンジ200は、螺合部材230をバレル210に取り付けるための取付部材240をさらに備える。取付部材240は、第1取付部材250と第2取付部材260とが互いに組み合わされることにより構成されている。
【0043】
バレル210は、内部に液剤を収容する円筒状の収容部211を有する。バレル210の先端には、液剤出入口212が設けられている。バレル210の後端には、開口214が設けられている。収容部211の後端側において、収容部211の軸心と互いに垂直である後端面を有する第1フランジ213が、開口214の周囲に設けられている。第1フランジ213は、バレル210の軸方向から見て、略楕円状の外形を有している。
【0044】
バレル210は、ポリプロピレンなどの透明または半透明の樹脂にて構成されている。バレル210の内周面に、シリコーンオイルなどの潤滑油が塗布されていてもよい。
【0045】
図7および
図8に示すように、プランジャロッド220の先端側には、バレル210の内周面と摺接するガスケット部222が設けられている。プランジャロッド220の後端には、第2フランジ223が設けられている。プランジャロッド220は、ガスケット部222と第2フランジ223とを接続する軸部221を含む。
【0046】
軸部221のガスケット部222側の端部に、円板部225が設けられている。円板部225の直径は、収容部211の内径より僅かに小さい。円板部225の軸部221側とは反対側に、突出片部224が設けられている。
【0047】
具体的には、ガスケット部222は、突出片部224に取り付けられて、円板部225と隣接している。ガスケット部222は、収容部211の内径より僅かに大きい外径を有する。ガスケット部222は、加硫ゴムまたは熱可塑性エラストマなどの弾性体で構成されている。ガスケット部222は、収容部211内に挿入された状態で、収容部211の内周面と全周に亘って密着する。
【0048】
本実施形態においては、軸部221、第2フランジ223、突出片部224および円板部225は、ポリプロピレンなどの樹脂を射出成形することにより一体で構成されている。
【0049】
軸部221の少なくとも一部は、軸心から放射状に突出した板状部を含む。本実施形態においては、軸部221は、互いに直交する2つの板状部から構成されて、横断面にて略十字形状を有する。軸部221の少なくとも一部を横断面にて略十字形状とすることにより、使用する樹脂材料を削減しつつ軸部221の剛性を確保して、バレル210の内部に押し込まれる際のプランジャロッド220の変形を抑制することができる。
【0050】
ただし、軸部221の形状は、上記に限られず、バレル210の内部に押し込まれる際のプランジャロッド220の変形を抑制可能な形状であればよい。たとえば、軸部221の少なくとも一部が、横断面にて星印形状または円形状を有していてもよい。
【0051】
本実施形態においては、軸部221の外周に、後述する螺合部材230の内周に設けられた螺旋溝232sと螺合する溝状部221sが設けられている。なお、軸部221が円柱状の外形を有している場合には、軸部221の外周に、螺合部材230の内周に設けられた螺旋溝232sと螺合する螺旋溝が設けられる。
【0052】
図5~
図10に示すように、螺合部材230は、環状部231および付勢部を含む。環状部231は、螺合部232、被押圧部233、および、互いに対向する1対の直線状延在部235を含む。螺合部232は、環状部231の軸方向から見て、円弧状に湾曲している。螺合部232の内周には、螺旋溝232sが設けられている。螺旋溝232sは、軸部221の外周に設けられた溝状部221sと螺合可能に設けられている。
【0053】
被押圧部233は、平板状の形状を有し、プランジャロッド220の軸部221の径方向に押圧される。環状部231において、螺合部232と、被押圧部233とは、プランジャロッド220の軸部221の径方向にて互いに対向している。1対の直線状延在部235の各々は、被押圧部233の押圧方向に沿う方向に延在している。1対の直線状延在部235の各々の延在方向は、被押圧部233を含む仮想平面に対して略垂直である。
【0054】
付勢部は、環状部231における螺合部232の両端から分岐して、螺合部232に沿うように湾曲しつつ環状部231の外側に延在する1対の湾曲部234で構成されている。
【0055】
具体的には、環状部231の周方向において、螺合部232の一端と、一方の直線状延在部235の一端との、接続部から一方の湾曲部234が環状部231の外側に突出している。環状部231の周方向において、螺合部232の他端と、他方の直線状延在部235の一端との、接続部から他方の湾曲部234が環状部231の外側に突出している。1対の湾曲部234の各々は、先端に行くにしたがって、螺合部232から遠ざかっている。1対の湾曲部234の各々は、根元を起点にして弾性変形可能に設けられている。
【0056】
本実施形態においては、付勢部は、1対の湾曲部234で構成されているが、いずれか一方の湾曲部234のみで付勢部が構成されていてもよい。または、付勢部が、ばねなどの弾性体で構成されていてもよい。
【0057】
図4~
図8,
図11~
図13に示すように、第1取付部材250は、略有底楕円筒状の外形を有している。第1取付部材250の底面部には、バレル210の収容部211が挿入される開口251が設けられている。第1取付部材250の周壁には、螺合部材230の被押圧部233が挿入される第1切欠部253、および、第1切欠部253と対向する位置に第2切欠部254が設けられている。第1取付部材250の周壁には、後述する第2取付部材260のフック部262とスナップフィットする開口252が設けられている。なお、第1取付部材250にフック部が設けられ、このフック部とスナップフィットする開口が第2取付部材260に設けられていてもよい。
【0058】
第2取付部材260は、第1取付部材250と組み合わされた状態において第1取付部材250の底面部と対向する蓋面部を有する。第2取付部材260の蓋面部には、プランジャロッド220の軸部221が挿入される開口261が設けられている。蓋面部の外周部から上記4つのフック部262が立設されている。第1取付部材250と組み合わされた状態において第1切欠部253に対応する位置に、開口261の縁に沿って第1リブ263が立設されている。第1リブ263は、螺合部材230が取付部材240に収容された状態において、被押圧部233と対向する。
【0059】
第2取付部材260の蓋面部には、第1取付部材250と組み合わされた状態において第1取付部材250の第2切欠部254に嵌る形状を有する案内壁264が立設されている。案内壁264は、螺合部材230が取付部材240に収容された状態において、付勢部と摺接可能に当接する。
【0060】
第2取付部材260の蓋面部には、螺合部材230が取付部材240に収容された状態において、1対の直線状延在部235に沿って延在する1対の第2リブ265が立設されている。1対の直線状延在部235は、第2リブ265同士の間に配置される。
【0061】
第1リブ263および1対の第2リブ265と第1取付部材250の底面部とにバレル210の第1フランジ213が挟み込まれることにより、取付部材240がバレル210の第1フランジ213に取り付けられる。バレル210の第1フランジ213の略楕円状の外形と、第1取付部材250の周壁とが係合することにより、取付部材240がバレル210に対して回り止めされている。
【0062】
螺合部材230は、バレル210の第1フランジ213に隣接するようにバレル210に取り付けられている。螺合部材230は、螺合部232が軸部221に対して接離するように軸部221の径方向にスライド可能に設けられている。被押圧部233が押圧されていない状態においては、螺合部232は軸部221と接しており、螺旋溝232sと溝状部221sとは互いに螺合している。
【0063】
本実施形態に係るシリンジ200においては、被押圧部233が押圧されていない状態において、螺合部材230が軸部221と接しており、螺旋溝232sと溝状部221sとが互いに螺合しているため、プランジャロッド220の意図しない移動を防止することができる。
【0064】
このように、螺合部材230は、プランジャロッド220のバレル210内への移動を制限するロック機構として機能する。ロック機構は、シリンジ200に設けられている。ロック機構は、プランジャロッド220の軸方向に直交する径方向に押圧される被押圧部233を含み、かつ、後述するように被押圧部233が押圧されることにより解除される。
【0065】
ここで、本実施形態に係るシリンジポンプ100の動作について説明する。
図14は、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプにシリンジが装着され、第1挟持機構がバレルの第1フランジを挟持している状態を示す正面図である。
図15は、
図14のシリンジポンプを矢印XV方向から見た斜視図である。
【0066】
図14および
図15に示すように、液剤流路となるチューブ215が液剤出入口212に接続されたシリンジ200がシリンジポンプ100に装着される。このとき、シリンジ200の被押圧部233は押圧されておらず、ロック機構が解除されていない状態である。そのため、プランジャロッド220の移動が制限されており、シリンジ200がシリンジポンプ100に装着されていない状態、および、シリンジポンプ100に装着される際に、サイフォニング現象が起きることが抑制されている。
【0067】
シリンジポンプ100にシリンジ200を取り付ける際には、開閉レバー170が矢印1で示す方向に回動した開状態となっており、1対のフィンガー部161は矢印2で示すように互いに離間しており、第2フランジ受け部162は第2フランジ押圧部152から離間している。
【0068】
この状態で、第1フランジ受け部122と第1フランジ押圧部132との間に、バレル210の第1フランジ213に取り付けられた取付部材240が配置される。プランジャロッド220の第2フランジ223が第2フランジ受け部162と第2フランジ押圧部152との間に配置される。
【0069】
第1フランジ受け部122と第1フランジ押圧部132とが取付部材240を挟持することにより、バレル210の第1フランジ213が第1フランジ受け部122と第1フランジ押圧部132とによって間接的に挟持されて第1フランジ213の厚さ方向に固定される。
【0070】
このとき、第1フランジ受け部122と第1フランジ押圧部132との第1フランジ213の厚さ方向の挟持間隔はL1となっている。この挟持間隔L1は、可変抵抗部180によってスライド体134の軸体のスライド量として検知され、本体部110の制御部に送られる。本体部110の制御部には、取付部材240の第1フランジ213の厚さ方向の厚さの製造公差などのばらつきを考慮した、第1閾値および第2閾値が予め入力されている。たとえば、第1閾値が(L1-a)であり、第2閾値が(L1+a)である。
【0071】
本体部110の制御部は、可変抵抗部180から送られた挟持間隔L1が、第1閾値以上第2閾値以下である場合に、第1挟持機構によって第1フランジ213が固定されていると判断する。本体部110の制御部は、挟持間隔L1が第1閾値未満である場合は、シリンジポンプ100に、予め設定されたシリンジ200が装着されていないと判断する。本体部110の制御部は、挟持間隔L1が第2閾値より大きい場合は、第1挟持機構による第1フランジ213の固定が完了していないと判断する。
【0072】
図16は、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプにシリンジが装着され、第2挟持機構がプランジャロッドの第2フランジを挟持している状態を示す正面図である。
図17は、
図16のシリンジポンプを矢印XVII方向から見た斜視図である。
【0073】
図16および
図17に示すように、プランジャロッド220の第2フランジ223が第2フランジ受け部162と第2フランジ押圧部152との間に配置された状態で、開閉レバー170が矢印4で示す方向に回動した閉状態にされることにより、1対のフィンガー部161は矢印5で示すように互いに接近し、矢印6で示すように第2フランジ受け部162は第2フランジ押圧部152に接近する。
【0074】
このとき、スライド軸140は、スライド軸140の軸方向にスライド可能に保持されている。第2フランジ受け部162がプランジャロッド220の第2フランジ223と接触した後は、押動部150がスライド軸140とともにフランジ押さえ板130側に移動しつつ回動軸163が押動部150内に進入することにより、第2フランジ受け部162と第2フランジ押圧部152との間隔が狭くなる。
【0075】
1対のフィンガー部161は、互いに接近することにより、プランジャロッド220の軸部221を取り囲む。第2フランジ受け部162と第2フランジ押圧部152とが互いに接近することにより、第2フランジ受け部162とプランジャロッド220の第2フランジ223とが接触し、プランジャロッド220の第2フランジ223が押圧センサ153の突出端と接触する。
【0076】
第2フランジ受け部162と第2フランジ押圧部152とが互いにさらに接近することにより、プランジャロッド220の第2フランジ223が押圧センサ153を押圧する。押圧センサ153が押圧されて、押圧センサ153の突出端が第2フランジ押圧部152と略同一平面上に位置した時点で、押圧センサ153は押圧されたと検知して信号を本体部110の制御部に送る。このとき、プランジャロッド220の第2フランジ223は、第2フランジ押圧部152と接触しており、第2フランジ受け部162と第2フランジ押圧部152とによって挟持されて固定されている。
【0077】
本体部110の制御部は、第1固定検知部によってバレル210の第1フランジ213が固定されていることが検知され、かつ、押圧センサ153によってプランジャロッド220の第2フランジ223が固定されていることが検知されたときのみ、アンロック機構190の回動軸192に連結された駆動源を駆動するように予め設定されている。
【0078】
図18は、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプにシリンジが装着され、アンロック機構によってロック機構が解除される状態を示す図である。
図18においては、
図5と同一方向から見て図示している。本体部110の制御部によって駆動源が駆動されることにより、
図18に示すように、回動軸192が周方向に回転し、矢印7で示すようにアーム部191が回動軸192を回動中心として回動する。アーム部191の先端部は、螺合部材230の被押圧部233を押圧する。被押圧部233が押圧されることにより、螺合部232が軸部221から離れるように、螺合部材230が軸部221の径方向にスライドする。
【0079】
具体的には、被押圧部233がアーム部191の先端部によって押圧された際、螺合部材230の1対の直線状延在部235が、1対の第2リブ265に沿いつつスライドし、螺合部材230の1対の湾曲部234の各々の先端が、案内壁264に当接する。被押圧部233がさらに押圧されることにより、1対の湾曲部234の各々は、案内壁264に摺接しつつ撓曲する。その結果、螺合部232は、矢印8で示すように軸部221の径方向にスライドして、軸部221から離間する。この状態において、1対の湾曲部234は、元の形状に戻ろうとする弾性力によって、螺合部232を軸部221に近づく方向に付勢する。
【0080】
被押圧部233が押圧された状態において、螺合部材230は軸部221と接しておらず、螺旋溝232sと溝状部221sとが互いに螺合していないため、プランジャロッド220を、バレル210内に挿入またはバレル210内から引き出すことができる。
【0081】
図19は、本発明の実施形態1に係るシリンジポンプにシリンジが装着され、アンロック機構によりロック機構が解除された状態で、押動部によってプランジャロッドをバレル内に挿入している状態を示す正面図である。
【0082】
図19に示すように、アンロック機構190によってロック機構が解除された状態で、本体部110の駆動部が駆動することにより、矢印9で示すように押動部150がプランジャロッド220をバレル210内に挿入する。その結果、チューブ215内にバレル210内の液剤が送り出される。
【0083】
液剤の投与後は、本体部110の駆動部が停止されるとともに駆動源が駆動されることにより、押動部150が停止した状態でアーム部191が
図18に示す矢印7とは反対向きに回動し、アーム部191による被押圧部233の押圧が解除される。アーム部191による被押圧部233の押圧が解除されると、1対の湾曲部234の弾性力によって、螺合部232が軸部221に近づくように、螺合部材230が軸部221の径方向にスライドし、
図5に示す押圧前の状態に戻る。その結果、ロック機構によってプランジャロッド220のバレル210内への移動が制限される。よって、シリンジ200をシリンジポンプ100から取り外した後も、サイフォニング現象が起きること抑制できる。
【0084】
本発明の実施形態1に係るシリンジポンプ100においては、アンロック機構190が、第1フランジ213が固定されていることが第1固定検知部によって検知され、かつ、第2フランジ223が固定されていることが第2固定検知部によって検知されているときのみ、シリンジ200のロック機構を解除可能に構成されていることにより、シリンジ側に設けられるロック機構と協働して、シリンジ200がシリンジポンプ100に装着されていない状態、および、シリンジ200がシリンジポンプ100に装着されている状態の両方において、サイフォニング現象を抑制することができる。
【0085】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係るシリンジポンプについて図面を参照して説明する。なお、本発明の実施形態2に係るシリンジポンプは、ロック機構およびアンロック機構の構成が主に、実施形態1に係るシリンジポンプ100と異なるため、実施形態1に係るシリンジポンプ100と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0086】
図20は、本発明の実施形態2に係るシリンジポンプにシリンジが装着され、第1挟持機構がバレルの第1フランジを挟持している状態を示す正面図である。
図21は、
図20のシリンジポンプを矢印XXI方向から見た斜視図である。
【0087】
図20および
図21に示すように、本発明の実施形態2に係るシリンジポンプ300には、液剤流路となるチューブ215が液剤出入口212に接続されたシリンジ200が、装着される。
【0088】
本発明の実施形態2に係るシリンジポンプ300は、アンロック機構390を備える。アンロック機構390は、本体部110の端部に設けられている。アンロック機構390は、カム391およびカム391に連結された回転軸392を含む。カム391と回転軸392とは、互いに直交している。回転軸392は、スライド軸140の軸方向と平行に本体部110の内部まで延在し、回転軸392を周方向に回転させる駆動源と連結されている。カム391は、回転軸392を回転中心として回転可能に設けられている。
【0089】
シリンジ400は、バレル210とプランジャロッド420とを備える。シリンジ400は、螺合部材および取付部材を含んでいない。プランジャロッド420の軸部221の外周には、螺旋溝は設けられていない。
【0090】
ロック機構は、バレル210に接続される液剤流路であるチューブ215に設けられている。具体的には、チューブ215に開閉板330が取り付けられている。開閉板330には、狭小開口部331と円形開口部332とが形成されている。円形開口部332の開口径は、チューブ215の直径より僅かに大きい。
【0091】
図20および
図21に示すように、チューブ215が開閉板330の狭小開口部331内に位置している状態においては、チューブ215は閉塞されている。チューブ215が開閉板330の円形開口部332内に位置している状態においては、チューブ215は開放されている。開閉板330は、チューブ215を開閉可能に構成されている。なお、開閉板330は、図示しない付勢手段によってチューブ215が狭小開口部331内に位置するように付勢されている。そのため、後述するようにカム391によって開閉板330が押圧されていない状態において、チューブ215は閉塞されているため、プランジャロッド420の意図しない移動を防止することができる。このように、開閉板330は、プランジャロッド420のバレル210内への移動を制限するロック機構として機能する。
【0092】
ここで、本実施形態に係るシリンジポンプ300の動作について説明する。
図20および
図21に示すように、液剤流路となるチューブ215が液剤出入口212に接続されたシリンジ400が、シリンジポンプ300に装着される。このとき、ロック機構が解除されていない状態である。そのため、プランジャロッド420の移動が制限されており、シリンジ400がシリンジポンプ300に装着されていない状態、および、シリンジポンプ300に装着される際に、サイフォニング現象が起きることが抑制されている。
【0093】
第1フランジ受け部122と第1フランジ押圧部132とが、バレル210の第1フランジ213を直接挟持して第1フランジ213の厚さ方向に固定する。このとき、第1フランジ受け部122と第1フランジ押圧部132との第1フランジ213の厚さ方向の挟持間隔はL2となっている。この挟持間隔L2は、可変抵抗部180によってスライド体134の軸体のスライド量として検知され、本体部110の制御部に送られる。本体部110の制御部には、第1フランジ213の厚さの製造公差などのばらつきを考慮した、第1閾値および第2閾値が予め入力されている。たとえば、第1閾値が(L2-a)であり、第2閾値が(L2+a)である。
【0094】
本体部110の制御部は、可変抵抗部180から送られた挟持間隔L2が、第1閾値以上第2閾値以下である場合に、第1挟持機構によって第1フランジ213が固定されていると判断する。本体部110の制御部は、挟持間隔L2が第1閾値未満である場合は、シリンジポンプ100に、予め設定されたシリンジ400が装着されていないと判断する。本体部110の制御部は、挟持間隔L2が第2閾値より大きい場合は、第1挟持機構による第1フランジ213の固定が完了していないと判断する。
【0095】
図22は、本発明の実施形態2に係るシリンジポンプにシリンジが装着され、アンロック機構によってロック機構が解除される状態を示す図である。本体部110の制御部によって駆動源が駆動されることにより、
図22に示すように、回転軸392が周方向に回転し、矢印10で示すようにカム391が回転軸392を回転中心として回転する。カム391は、開閉板330に付与されている付勢力Fとは反対方向に開閉板330を押圧する。開閉板330はカム391に押圧されることにより、矢印11で示すようにスライドし、チューブ215が狭小開口部331内から円形開口部332内に移動する。このように、アンロック機構390は、ロック機構を解除してチューブ215を開放する。チューブ215が開放された状態においては、プランジャロッド420を、バレル210内に挿入またはバレル210内から引き出すことができる。
【0096】
液剤の投与後は、本体部110の駆動部が停止されるとともに駆動源が駆動されることにより、押動部150が停止した状態でカム391がさらに回転し、カム391による開閉板330の押圧が解除される。カム391による開閉板330の押圧が解除されると、付勢力Fによって、開閉板330が矢印11とは反対方向にスライドし、チューブ215が円形開口部332内から狭小開口部331内に移動する。その結果、開閉板330によってチューブ215が閉塞され、ロック機構によってプランジャロッド420のバレル210内への移動が制限される。よって、シリンジ400をシリンジポンプ300から取り外した後も、サイフォニング現象が起きること抑制できる。
【0097】
本発明の実施形態2に係るシリンジポンプ300においても、アンロック機構390は、第1フランジ213が固定されていることが第1固定検知部によって検知され、かつ、第2フランジ223が固定されていることが第2固定検知部によって検知されているときのみ、チューブ215に設けられたロック機構を解除可能に構成されていることにより、シリンジ側に設けられるロック機構と協働して、シリンジ400がシリンジポンプ300に装着されていない状態、および、シリンジ400がシリンジポンプ300に装着されている状態の両方において、サイフォニング現象を抑制することができる。
【0098】
ここで、ロック機構の変形例について説明する。
図23は、変形例のロック機構の構成を示す正面図である。
図24は、
図23のロック機構を矢印XXIV方向から見た図である。
図25は、
図24のロック機構を矢印XXV方向から見た図である。
図26は、アンロック機構によって変形例のロック機構が解除される状態を示す図である。
【0099】
図24~
図26に示すように、変形例のロック機構は、クリップ530で構成されている。チューブ215にクリップ530が取り付けられている。クリップ530は、基部531と、折り返し部532と、フック部533と、突起部534と、引張コイルばね535とを有する。
【0100】
基部531と折り返し部532とフック部533とは、1枚の板状部材が折り曲げられて構成されている。基部531、折り返し部532およびフック部533は全体として、板ばねを構成している。
【0101】
フック部533は、折り返し部532の先端から基部531の一方の主面上に乗り上げるように延在し、先端に鉤状部を有する。突起部534は、基部531の一方の主面上に設けられており、フック部533の鉤状部と係合するように形成されている。突起部534は、フック部533と係合し、外れ止めとして機能する。
【0102】
引張コイルばね535は、基部531の他方の主面上および折り返し部532の他方の主面上に固定されており、基部531と折り返し部532との間の隙間が狭くなるように付勢している。
図23および
図25に示すように、チューブ215が基部531と折り返し部532とに挟まれている状態においては、チューブ215は閉塞されている。
【0103】
図26は、アンロック機構によって変形例のロック機構が解除される状態を示す図である。本体部110の制御部によって駆動源が駆動されることにより、
図26に示すように、回転軸392が周方向に回転し、矢印10で示すようにカム391が回転軸392を回転中心として回転する。カム391は、引張コイルばね535によって付勢されている方向とは反対方向にフック部533を押圧する。フック部533がカム391に押圧されることにより、矢印11で示すように折り返し部532が基部531から離れるようにスライドする。基部531と折り返し部532との間隔が広がることにより、チューブ215が開放される。クリップ530は、チューブ215を開閉可能に構成されている。
【0104】
このように、アンロック機構390は、ロック機構を解除してチューブ215を開放する。チューブ215が開放された状態においては、プランジャロッド420を、バレル210内に挿入またはバレル210内から引き出すことができる。
【0105】
液剤の投与後は、本体部110の駆動部が停止されるとともに駆動源が駆動されることにより、押動部150が停止した状態でカム391がさらに回転し、カム391によるフック部533の押圧が解除される。カム391によるフック部533の押圧が解除されると、引張コイルばね535の付勢力によって、折り返し部532が矢印11とは反対方向にスライドし、チューブ215が基部531と折り返し部532とに挟まれる。その結果、クリップ530によってチューブ215が閉塞され、ロック機構によってプランジャロッド420のバレル210内への移動が制限される。よって、シリンジ400をシリンジポンプ300から取り外した後も、サイフォニング現象が起きること抑制できる。
【0106】
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプについて図面を参照して説明する。なお、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプは、ロック機構およびアンロック機構の構成が主に、実施形態2に係るシリンジポンプ300と異なるため、実施形態2に係るシリンジポンプ300と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0107】
図27は、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える、ロック機構およびアンロック機構を含む開閉ユニットにおけるカバーが閉じた状態の外観を示す斜視図である。
図28は、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える、ロック機構およびアンロック機構を含む開閉ユニットにおけるカバーが開いた状態の外観を示す斜視図である。
図29は、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える、ロック機構およびアンロック機構を含む開閉ユニットにおけるカバーおよびベースを透視した状態の外観を示す斜視図である。
図30は、
図29の開閉ユニットをXXX-XXX線矢印方向から見た断面図である。
図31は、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える、ロック機構およびアンロック機構を含む開閉ユニットにおけるベースに取り付けられている構成を取り除いた状態の外観を示す斜視図である。
【0108】
図27~
図31に示すように、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプは、ロック機構およびアンロック機構を含む開閉ユニット600を備える。開閉ユニット600は、
図20に示すシリンジポンプ300のシリンジ装着部120に関してフランジ押さえ板130側とは反対側に配置されている。
【0109】
図27~
図31に示すように、開閉ユニット600は、駆動モータ610と、駆動伝達ギヤ620と、ロック機構であるチューブクリップ630と、ベース640と、カバー650と、カバー開閉検知センサ653と、クリップ検知センサ660と、回転位置検知センサ670と、アンロック機構を構成する、回転軸621およびカム690とを含む。
【0110】
駆動モータ610は、外周にギヤ部が形成された駆動軸611を有している。駆動モータ610は、駆動軸611を一方向にのみ回転させる。駆動モータ610は、本体部110の制御部と電気的に接続されている。
【0111】
駆動伝達ギヤ620は、駆動軸611のギヤ部と係合している。
図29~
図31に示すように、駆動伝達ギヤ620の中心部に回転軸621が装着されている。
図29および
図31に示すように、駆動伝達ギヤ620の外周縁の内側の位置に、貫通孔が設けられており、この貫通孔に円柱状の磁石671が嵌入されている。
【0112】
ベース640は、略平板状の外形を有している。ベース640の上面には、チューブ215が配置される溝部641、チューブクリップ630が配置される凹部644、チューブクリップ630の脱落防止用の壁部642、および、カバー650の軸部651を軸支する軸受部643が設けられている。
【0113】
ベース640には、カム690が挿通される貫通孔645、および、カバー開閉検知センサ653が配置される貫通孔648が設けられている。ベース640の下面には、駆動伝達ギヤ620に向けて延在し、カム690および回転軸621を収容する筒状部647が設けられている。カム690の外周部と筒状部647の内周面との間に、Oリング693が設けられている。Oリング693が設けられていることにより、仮に、チューブ215から液剤が漏れ出た場合に、駆動モータ610側に液剤が浸入することを抑制できる。また、ベース640の下面には、ベース640から離れる方向に延在し、クリップ検知用の磁石661およびコイルスプリング662を収容する筒状部649が設けられている。
【0114】
図27~
図30に示すように、カバー650は、軸部651を回動中心にして回動可能に設けられている。カバー650は、閉じた状態において、チューブクリップ630をベース640との間で収容している。カバー650が閉じた状態においても、カバー650とベース640との間には、チューブ215が位置する空間が確保されている。カバー650の下方に位置するベース640に球状突起が設けられていることにより、カバー650の開閉動作にクリック感が付帯されている。
【0115】
図28に示すように、カバー650の内面に磁石652が設けられている。カバー650が閉じた状態においては、磁石652がカバー開閉検知センサ653に近接しており、カバー開閉検知センサ653は、磁石652による磁界を検知する。カバー650が開いた状態においては、磁石652がカバー開閉検知センサ653から離間しており、カバー開閉検知センサ653は、磁石652による磁界を検知しない。このように、カバー開閉検知センサ653によって、磁石652による磁界を検知することにより、カバー650の開閉状態を把握することができる。
【0116】
クリップ検知センサ660は、磁石661による磁界を検知することにより、チューブクリップ630がベース640上に配置されたことを把握する。具体的には、チューブクリップ630が凹部644内に配置された際、磁石661は、チューブクリップ630によって押圧されて、コイルスプリング662の付勢力に抗して筒状部649内に押し下げられる。クリップ検知センサ660は、筒状部649内に押し下げられた状態の磁石661と対向するように配置されている。
【0117】
よって、チューブクリップ630が凹部644内に配置された状態においては、磁石661がクリップ検知センサ660に近接しており、クリップ検知センサ660は、磁石661による磁界を検知する。チューブクリップ630が凹部644内に配置されていない状態においては、磁石661がクリップ検知センサ660から離間しており、クリップ検知センサ660は、磁石661による磁界を検知しない。このように、クリップ検知センサ660によって、磁石661による磁界を検知することにより、チューブクリップ630の有無状態を把握することができる。
【0118】
回転位置検知センサ670は、磁石671の周回軌跡の下方に位置するように配置されている。回転位置検知センサ670は、磁石671が回転位置検知センサ670の近傍に位置したときに磁石671による磁界を検知することにより、カム690の回転位置を把握する。
【0119】
カム690は、回転軸方向から見て、回転軸621を中心とした円弧形状を有する湾曲面部691、および、上記円弧形状の両端を結ぶ平面部692を含む。なお、平面部692の代わりに、湾曲面部691の内周側に、湾曲面部691に沿うように湾曲した湾曲面部が設けられていてもよい。カム690は、回転軸621と連結されている円筒状部をさらに含む。円柱状部の外周に、Oリング693が配置される環状溝部が形成されている。本実施形態においては、一方向に回転する回転軸621および回転軸621に連結されたカム690によってアンロック機構が構成されている。
【0120】
図32は、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備えるロック機構であるチューブクリップの外観を示す斜視図である。
図33は、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備えるロック機構であるチューブクリップの外観を示す背面図である。
【0121】
図32および
図33に示すように、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備えるロック機構であるチューブクリップ630は、チューブ215が挿通される1対の開口部、1対の開口部に挿通されたチューブ215に沿う延在方向に延在しつつチューブ215を互いの間に挟んで閉塞可能な、基部631および基部631の延在方向の一端部から折り返すように延在する弾性片部632、並びに、基部631の一端部とは反対側の他端部635に設けられ、弾性片部632の先端部637を係止可能な突起部636を含む。
【0122】
本実施形態においては、基部631に、弾性片部632に向かって突出した突出部633が設けられている。弾性片部632に、基部631に向かって突出した突出部634が設けられている。突出部633および突出部634によって、チューブ215が閉塞される。なお、突出部633および突出部634の両方が必ずしも設けられていなくてもよく、基部631および弾性片部632によってチューブ215を挟んで閉塞可能なように、突出部633および突出部634の少なくとも一方が設けられていればよい。
【0123】
1対の開口部のうちの一方の開口部638は、突出部633と突起部636との間に位置している。1対の開口部のうちの他方の開口部639は、突出部633と突出部634との間に位置している。チューブ215は、他方の開口部639から一方の開口部638に順に挿入されて、液剤出入口212に接続される。
【0124】
以下、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える開閉ユニット600の動作について説明する。
【0125】
図34は、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える開閉ユニットにおいて、回転軸の回転に伴って、カムの湾曲面部がチューブクリップの弾性片部を押圧している状態を示す部分背面図である。本体部110の制御部によって駆動モータ610が駆動されることにより、
図34に示すように、カム690が矢印10で示すように一方向に回転すると、カム690の湾曲面部691がチューブクリップ630の弾性片部632を押圧し、弾性片部632の先端部637を突起部636から離間させる。
【0126】
図35は、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える開閉ユニットにおいて、回転軸の回転に伴って、カムの湾曲面部がチューブクリップの他端部を押圧している状態を示す部分背面図である。
図35に示すように、
図34に示す状態からカム690が矢印10で示すように一方向にさらに回転すると、カム690の湾曲面部691がチューブクリップ630の他端部635を弾性片部632の先端部637から離れる方向に押圧して、先端部637と突起部636との係止が解除される。このとき、カム690は、弾性片部632とは接触していない。これにより、ロック機構が解除される。
【0127】
図36は、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える開閉ユニットにおいて、回転軸の回転に伴って、カムがチューブクリップから離間している状態を示す部分背面図である。
図36に示すように、
図35に示す状態からカム690が矢印10で示すように一方向にさらに回転すると、カム690がチューブクリップ630から離間し、弾性片部632は元の形状に戻る。この状態において、チューブ215は開放されている。上記のように、カム690および回転軸621で構成されるアンロック機構は、ロック機構を解除してチューブ215を開放する。チューブ215が開放された状態においては、プランジャロッド420を、バレル210内に挿入またはバレル210内から引き出すことができる。
【0128】
図37は、本発明の実施形態3に係るシリンジポンプが備える開閉ユニットにおいて、回転軸の回転に伴って、カムの湾曲面部のエッジがチューブクリップの弾性片部を押圧している状態を示す部分背面図である。液剤の投与後は、本体部110の駆動部が停止されるとともに駆動モータ610が駆動されることにより、
図37に示すように、
図36に示す状態からカム690が矢印10で示すように一方向にさらに回転すると、カム690の湾曲面部691における平面部692との境界に位置するエッジがチューブクリップ630の弾性片部632を押圧し、弾性片部632の先端部637を基部631の他端部635に当接させる。
【0129】
図37に示す状態からカム690が矢印10で示すように一方向にさらに回転して、カム690の湾曲面部691がチューブクリップ630の弾性片部632を基部631側にさらに押圧すると、弾性片部632の先端部637が、基部631の突起部636に係止される。これにより、ロック機構がチューブ215を閉塞した状態に維持される。上記のように、チューブクリップ630は、チューブ215を開閉可能に構成されている。ロック機構によってプランジャロッド420のバレル210内への移動が制限されることにより、シリンジ400をシリンジポンプ300から取り外した後も、サイフォニング現象が起きること抑制できる。
【0130】
本発明の実施形態3に係るシリンジポンプにおいても、アンロック機構は、第1フランジ213が固定されていることが第1固定検知部によって検知され、かつ、第2フランジ223が固定されていることが第2固定検知部によって検知されているときのみ、チューブ215に設けられたロック機構を解除可能に構成されていることにより、シリンジ側に設けられるロック機構と協働して、シリンジ400がシリンジポンプに装着されていない状態、および、シリンジ400がシリンジポンプに装着されている状態の両方において、サイフォニング現象を抑制することができる。
【0131】
ここで、チューブクリップ630のベース640からの浮き上がり防止機能が追加された変形例について説明する。
図38は、本発明の実施形態3の変形例に係るシリンジポンプが備える含む開閉ユニットの外観を示す斜視図である。
図39は、
図38のカムを矢印XXXIX方向から見た部分拡大図である。なお、
図38においては、カバー650周辺の構成を図示していない。
【0132】
図38および
図39に示すように、本発明の実施形態3の変形例に係るカム690aは、回転軸方向における湾曲面部691および平面部692の位置より先端に、回転軸621の中心側に出っ張った庇部694が設けられている。庇部694は、回転軸621の回転位置によらず、庇部694のいずれか一部が常にチューブクリップ630の一部を覆うように、位置している。
【0133】
また、本変形例においては、ベース640の壁部642の先端部642pが、チューブクリップ630の一部を覆うように屈曲している。その結果、チューブクリップ630は、カム690aの庇部694、および、壁部642の先端部642pによって、ベース640の上面との間に挟まれたように位置するため、ベース640からの浮き上がりが防止される。
【0134】
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。たとえば、シリンジポンプは、実施形態1に係るアンロック機構190と、実施形態2に係るアンロック機構390または実施形態3に係るアンロック機構とを両方備えていてもよい。この場合、制御部は、第1挟持機構が第1フランジ213を挟持した際の第1フランジ213の厚さ方向の挟持間隔によって、シリンジ200とシリンジ400とのいずれのシリンジが装着されたかを判断し、装着されたシリンジに対応するアンロック機構を作動させるように構成されていてもよい。
【0135】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0136】
100,300 シリンジポンプ、110 本体部、120 シリンジ装着部、121 凹面部、122 第1フランジ受け部、123 シリンジクランプ、130 フランジ押さえ板、131 孔部、132 第1フランジ押圧部、133 切欠部、134 スライド体、140 スライド軸、150 押動部、151 連結部、152 第2フランジ押圧部、153 押圧センサ、160 把持部、161 フィンガー部、162 第2フランジ受け部、163,171,192 回動軸、170 開閉レバー、180 可変抵抗部、190,390 アンロック機構、191 アーム部、200,400 シリンジ、210 バレル、211 収容部、212 液剤出入口、213 第1フランジ、214,251,252,261 開口、215 チューブ、220,420 プランジャロッド、221,651 軸部、221s 溝状部、222 ガスケット部、223 第2フランジ、224 突出片部、225 円板部、230 螺合部材、231 環状部、232 螺合部、232s 螺旋溝、233 被押圧部、234 湾曲部、235 直線状延在部、240 取付部材、250 第1取付部材、253 第1切欠部、254 第2切欠部、260 第2取付部材、262,533 フック部、263 第1リブ、264 案内壁、265 第2リブ、330 開閉板、331 狭小開口部、332 円形開口部、391,690,690a カム、392,621 回転軸、530 クリップ、531,631 基部、532 折り返し部、534,636 突起部、535 コイルばね、600 開閉ユニット、610 駆動モータ、611 駆動軸、620 駆動伝達ギヤ、630 チューブクリップ、632 弾性片部、633,634 突出部、635 他端部、637,642p 先端部、638,639 開口部、640 ベース、641 溝部、642 壁部、643 軸受部、644 凹部、645,648 貫通孔、647,649 筒状部、650 カバー、652,661,671 磁石、653 カバー開閉検知センサ、660 クリップ検知センサ、662 コイルスプリング、670 回転位置検知センサ、691 湾曲面部、692 平面部、693 Oリング、694 庇部。