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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】孔抜きプレス型
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/18 20060101AFI20220315BHJP
   B21D 28/34 20060101ALI20220315BHJP
   B21D 45/04 20060101ALI20220315BHJP
   B26F 1/14 20060101ALI20220315BHJP
   B26F 1/02 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B26D7/18 G
B21D28/34 C
B21D28/34 Z
B21D45/04 F
B26F1/14 A
B26F1/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018141607
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020015156
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】國分 正幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 謙一
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-120067(JP,A)
【文献】実開平06-054425(JP,U)
【文献】特開昭58-181438(JP,A)
【文献】特開2003-305522(JP,A)
【文献】特開2014-161879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/18
B21D 28/34
B21D 45/04
B26F 1/14
B26F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型と、前記下型に固定された孔抜きダイと、前記下型に対向してプレス機のスライドに装着される上型と、前記上型に固定され前記孔抜きダイと嵌合して素材に孔を形成する孔抜きパンチと、前記孔抜きパンチと前記孔抜きダイとが嵌合する前に前記素材を前記孔抜きダイに押圧するパッドとを備え、前記スライドが下死点近傍に到達したときに前記孔抜きパンチに形成されたエアブロー孔から圧縮エアを吹出すように形成された孔抜きプレス型であって、
前記上型と前記下型との間には、上下方向に起立するアライメントピンと、前記アライメントピンが挿入されてガイドされるガイドブッシュと、前記アライメントピンの先端部が前記ガイドブッシュに挿入されたときに作動する弁機構とを備え、
前記スライドが下降する途中に前記弁機構が閉じた状態で前記先端部が前記ガイドブッシュに挿入して前記圧縮エアを形成し、前記スライドが更に下降して下死点近傍に到達したとき前記弁機構が開いて前記圧縮エアを前記エアブロー孔から吹き出させる圧縮エア供給手段を型内に備え
前記弁機構には、前記エアブロー孔に連通するエア経路に上下方向に形成された開口部を有する弁座と、前記開口部に対して所定の摺接距離だけ摺接する摺接部と当該摺接部の下方で前記開口部に対して所定の隙間が形成された非摺接部とを有する弁体とを備えたことを特徴とする孔抜きプレス型。
【請求項2】
請求項に記載された孔抜きプレス型において、
前記孔抜きパンチが前記素材の孔抜きを終了する直前まで、前記開口部は前記摺接部と摺接し、
前記孔抜きパンチが前記素材の孔抜きを終了した時から前記スライドの下死点を通過して前記孔抜きパンチが前記孔抜きダイから離脱する時まで、前記開口部は前記非摺接部と嵌合していることを特徴とする孔抜きプレス型。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載された孔抜きプレス型において、
前記アライメントピンは、前記先端部を下方に向けて前記上型に固定されると共に、前記ガイドブッシュは、前記アライメントピンに対する挿入口を上方に向けて前記下型に固定され、
前記弁座が前記アライメントピンの下端側に設置され、前記弁体が前記ガイドブッシュの内径側に設置されたことを特徴とする孔抜きプレス型。
【請求項4】
請求項又は請求項に記載された孔抜きプレス型において、
前記アライメントピンは、前記先端部を上方に向けて前記下型に固定されると共に、前記ガイドブッシュは、前記アライメントピンに対する挿入口を下方に向けて前記上型に固定され、
前記弁座が前記上型の下端側で前記ガイドブッシュの内径側に設置され、前記弁体が前記アライメントピンの上端側に設置されたことを特徴とする孔抜きプレス型。
【請求項5】
請求項乃至請求項のいずれか1項に記載された孔抜きプレス型において、
前記エア経路には、前記弁座から前記エアブロー孔へ流れる圧縮エアを通過させつつ、その逆流を阻止する逆止弁が装着されていることを特徴とする孔抜きプレス型。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載された孔抜きプレス型において、
前記エアブロー孔には、前記孔抜きパンチの基端側に形成された大径部より内径が小さい小径部が、当該孔抜きパンチの先端側に形成されていることを特徴とする孔抜きプレス型。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載された孔抜きプレス型において、
前記ガイドブッシュの基端側には、当該ガイドブッシュの内径側と外部とが連通された連通路が前記下型又は前記上型に形成され、
前記連通路には、外部から前記ガイドブッシュの内径側へ流れるエアを通過させつつ、その逆流を阻止する逆止弁が装着されていることを特徴とする孔抜きプレス型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔抜きプレス型に関し、詳しくは、素材(例えば、薄板状の金属箔)に対して孔抜きパンチによって孔を明ける孔抜きプレス型において、打ち抜かれた孔のカスのカス上がりを回避できる圧縮エア供給手段を型内に備えた孔抜きプレス型に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、薄板状の金属箔に対して孔抜きパンチによって孔を明ける孔抜きプレス型では、打ち抜かれた孔のカス(スクラップ)が軽く、そのカスが孔抜きパンチの先端部に吸着されて、カス上がりが生じやすいという問題があった。そのため、図7に示すように、孔抜きパンチ101の先端部から突出する払いピン102を設けた孔抜きプレス型100が知られている。また、図8に示すように、孔抜きパンチ201の先端部にエアブロー孔202を形成した孔抜きプレス型200が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-94841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、薄板状の金属箔に孔を明ける孔抜きプレス型では、例えば30SPM以上の高速でプレスする場合が多いため、図7に示すように、払いピン102を設けた孔抜きプレス型100では、孔抜きパンチ101の周辺で金属箔を押さえるパッド103のストロークST1が、できる限り短く設定されている。そして、払いピン102のストロークST2は、一般にパッド103のストロークST1よりあまり長くすることができないので、カス上がり防止の効果を十分発揮し得ないことがあった。
【0005】
また、図8に示すように、孔抜きパンチ201の先端部にエアブロー孔202を形成した場合、エアブロー孔202に圧縮エアを供給するための圧縮エア供給装置(図示せず)を孔抜きプレス型200の外部に設ける必要があった。しかし、孔抜きプレス型200の外部に設けた圧縮エア供給装置では、孔抜きパンチ201の先端部に形成したエアブロー孔202までのエア経路が長くなって吹出タイミングが遅くなりやすく、高速プレスに対応するのが困難であるという問題があった。また、孔抜きプレス型200をプレス機へ設置する度に、圧縮エア供給装置からの圧縮エアのエア経路を孔抜きプレス型200と接続することが必要となり、その接続行為に対する無駄な時間も生じていた。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、素材の高速プレスにおいて、孔抜きパンチに形成したエアブロー孔からスライドの下死点近傍で圧縮エアを吹出してカス上がりを簡単に回避できる圧縮エア供給手段を型内に備えた孔抜きプレス型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る孔抜きプレス型は、次のような構成を有している。
(1)下型と、前記下型に固定された孔抜きダイと、前記下型に対向してプレス機のスライドに装着される上型と、前記上型に固定され前記孔抜きダイと嵌合して素材に孔を形成する孔抜きパンチと、前記孔抜きパンチと前記孔抜きダイとが嵌合する前に前記素材を前記孔抜きダイに押圧するパッドとを備え、前記スライドが下死点近傍に到達したときに前記孔抜きパンチに形成されたエアブロー孔から圧縮エアを吹出すように形成された孔抜きプレス型であって、
前記上型と前記下型との間には、上下方向に起立するアライメントピンと、前記アライメントピンが挿入されてガイドされるガイドブッシュと、前記アライメントピンの先端部が前記ガイドブッシュに挿入されたときに作動する弁機構とを備え、
前記スライドが下降する途中に前記弁機構が閉じた状態で前記先端部が前記ガイドブッシュに挿入して前記圧縮エアを形成し、前記スライドが更に下降して下死点近傍に到達したとき前記弁機構が開いて前記圧縮エアを前記エアブロー孔から吹き出させる圧縮エア供給手段を型内に備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、上型と下型との間には、上下方向に起立するアライメントピンと、アライメントピンが挿入されてガイドされるガイドブッシュと、アライメントピンの先端部がガイドブッシュに挿入されたときに作動する弁機構とを備え、スライドが下降する途中に弁機構が閉じた状態で先端部がガイドブッシュに挿入して圧縮エアを形成し、スライドが更に下降して下死点近傍に到達したとき弁機構が開いて圧縮エアをエアブロー孔から吹き出させる圧縮エア供給手段を型内に備えたので、スライドの上下往復運動に連動してアライメントピンとガイドブッシュとの間に閉じたガイド空間を形成し、そのガイド空間内で形成した圧縮エアを、スライドの下死点近傍でエアブロー孔から吹出して、カス上がりを簡単に回避することができる。
【0009】
また、スライドが下降する途中に弁機構が閉じた状態でアライメントピンの先端部がガイドブッシュに挿入して圧縮エアを形成するので、アライメントピンに対するガイドブッシュのガイド空間内で形成した圧縮エアをエアブロー孔に供給するエア経路を短く形成でき、高速プレスに対する応答性を高めることができる。また、孔抜きプレス型をプレス機へ設置する度に、圧縮エアのエア経路を接続する手間を省くことができる。
【0010】
よって、本発明によれば、素材の高速プレスにおいて、孔抜きパンチに形成したエアブロー孔からスライドの下死点近傍で圧縮エアを吹出してカス上がりを簡単に回避できる圧縮エア供給手段を型内に備えた孔抜きプレス型を提供することができる。
【0011】
(2)(1)に記載された孔抜きプレス型において、
前記弁機構には、前記エアブロー孔に連通するエア経路に上下方向に形成された開口部を有する弁座と、前記開口部に対して所定の摺接距離だけ摺接する摺接部と当該摺接部の下方で前記開口部に対して所定の隙間が形成された非摺接部とを有する弁体とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明においては、弁機構には、エアブロー孔に連通するエア経路に上下方向に形成された開口部を有する弁座と、開口部に対して所定の摺接距離だけ摺接する摺接部と当該摺接部の下方で開口部に対して所定の隙間が形成された非摺接部とを有する弁体とを備えたので、スライドが下降する途中に弁座の開口部に対して弁体の摺接部が嵌合し、開口部と摺接部とが所定の摺接距離だけ摺接する間は弁機構が閉じて圧縮エアを形成できる。また、スライドが更に下降して下死点近傍に到達したとき、弁座の開口部に対して隙間を有する非摺接部が嵌合し、弁機構が開いて圧縮エアをエア経路を経由してエアブロー孔から吹き出させることができる。そのため、エアブロー孔へ供給する圧縮エアの容量と供給タイミングとを弁座と弁体との摺接距離と隙間によって簡単に調節でき、高速プレスに対する応答性をより一層高めることができる。
【0013】
(3)(2)に記載された孔抜きプレス型において、
前記孔抜きパンチが前記素材の孔抜きを終了する直前まで、前記開口部は前記摺接部と摺接し、
前記孔抜きパンチが前記素材の孔抜きを終了した時から前記スライドの下死点を通過して前記孔抜きパンチが前記孔抜きダイから離脱する時まで、前記開口部は前記非摺接部と嵌合していることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、孔抜きパンチが素材の孔抜きを終了する直前まで、開口部は摺接部と摺接し、孔抜きパンチが素材の孔抜きを終了した時からスライドの下死点を通過して孔抜きパンチが孔抜きダイから離脱する時まで、開口部は非摺接部と嵌合しているので、孔抜きパンチが素材の孔抜きを終了する直前まで弁機構を閉じて、圧縮エアの圧力をできる限り高めることができる。また、孔抜きパンチが素材の孔抜きを終了すると同時に弁機構を開いて、圧縮エアをエアブロー孔に連通するエア経路に供給し、エアブロー孔から吹き出してカス上がりを回避できる。ここで、孔抜きパンチが孔抜きダイから離脱する時まで、開口部は非摺接部と嵌合しているので、エアブロー孔からの圧縮エアの吹き出し時間を長期化でき、また、エアブロー孔からの負圧によってカスの吸引作用が働かず、孔抜きパンチへのカスの再付着を防止できる。
【0015】
(4)(2)又は(3)に記載された孔抜きプレス型において、
前記アライメントピンは、前記先端部を下方に向けて前記上型に固定されると共に、前記ガイドブッシュは、前記アライメントピンに対する挿入口を上方に向けて前記下型に固定され、
前記弁座が前記アライメントピンの下端側に設置され、前記弁体が前記ガイドブッシュの内径側に設置されたことを特徴とする。
【0016】
本発明においては、アライメントピンは、先端部を下方に向けて上型に固定されると共に、ガイドブッシュは、アライメントピンに対する挿入口を上方に向けて下型に固定され、また、弁座がアライメントピンの下端側に設置され、弁体がガイドブッシュの内径側に設置されたので、弁機構をアライメントピンをガイドするガイドブッシュのガイド空間に設置でき、型構造のコンパクト化に寄与できる。そのため、圧縮エアをエアブロー孔に供給するエア経路をより短く形成でき、高速プレスに対する応答性を高めることができる。
【0017】
また、アライメントピンは、先端部を下方に向けて上型に固定されると共に、ガイドブッシュは、アライメントピンに対する挿入口を上方に向けて下型に固定されているので、スライドが上死点付近へ上昇したとき、アライメントピンの先端部がガイドブッシュの挿入口から離間して上方へ移動する。そのため、例えば、トランスファ装置を使用する場合において、素材を搬送する把持装置(フィンガー)が、スライドの上死点付近へ上昇したアライメントピンの先端部とガイドブッシュとの隙間を移動することができ、その軌跡の自由度を高めることができる。
【0018】
(5)(2)又は(3)に記載された孔抜きプレス型において、
前記アライメントピンは、前記先端部を上方に向けて前記下型に固定されると共に、前記ガイドブッシュは、前記アライメントピンに対する挿入口を下方に向けて前記上型に固定され、
前記弁座が前記上型の下端側で前記ガイドブッシュの内径側に設置され、前記弁体が前記アライメントピンの上端側に設置されたことを特徴とする。
【0019】
本発明においては、アライメントピンは、先端部を上方に向けて下型に固定されると共に、ガイドブッシュは、アライメントピンに対する挿入口を下方に向けて上型に固定され、また、弁座が上型の下端側でガイドブッシュの内径側に設置され、弁体がアライメントピンの上端側に設置されたので、弁機構をアライメントピンをガイドするガイドブッシュのガイド空間に設置でき、型構造のコンパクト化に寄与できる。また、エアブロー孔に連通するエア経路に形成された弁座が、上型の下端側でガイドブッシュの内径側に設置されそのため、圧縮エアをエアブロー孔に供給するエア経路をより一層短く形成でき、高速プレスに対する応答性を高めることができる。
【0020】
(6)(2)乃至(5)のいずれか1つに記載された孔抜きプレス型において、
前記エア経路には、前記弁座から前記エアブロー孔へ流れる圧縮エアを通過させつつ、その逆流を阻止する逆止弁が装着されていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、エア経路には、弁座からエアブロー孔へ流れる圧縮エアを通過させつつ、その逆流を阻止する逆止弁が装着されているので、孔抜きパンチが素材の孔抜きを終了して上昇するとき、エアブロー孔の先端側からエアを吸引するのを防止できる。そのため、エアブロー孔からの負圧によって、孔抜きパンチへのカスの再付着を防止できる。
【0022】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載された孔抜きプレス型において、
前記エアブロー孔には、前記孔抜きパンチの基端側に形成された大径部より内径が小さい小径部が、当該孔抜きパンチの先端側に形成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、エアブロー孔には、孔抜きパンチの基端側に形成された大径部より内径が小さい小径部が、当該孔抜きパンチの先端側に形成されているので、エアブロー孔へ送られる圧縮エアが、大径部から小径部へ流れることによってその流速を向上させつつ、そのエア流量を制限して、圧縮エアをより継続してエアブロー孔から吹出すことができる。そのため、スライドの下死点前後において、エアブロー孔から圧縮エアを長時間吹出して、カス上がりをより一層簡単に回避することができる。
【0024】
(8)(1)乃至(7)のいずれか1つに記載された孔抜きプレス型において、
前記ガイドブッシュの基端側には、当該ガイドブッシュの内径側と外部とが連通された連通路が前記下型又は前記上型に形成され、
前記連通路には、外部から前記ガイドブッシュの内径側へ流れるエアを通過させつつ、その逆流を阻止する逆止弁が装着されていることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、ガイドブッシュの基端側には、当該ガイドブッシュの内径側と外部とが連通された連通路が下型又は上型に形成され、また、連通路には、外部からガイドブッシュの内径側へ流れるエアを通過させつつ、その逆流を阻止する逆止弁が装着されているので、スライドの下降途中において、アライメントピンとガイドブッシュとの間に形成した閉じたガイド空間内で圧縮エアを形成でき、また、スライドの上昇途中において、アライメントピンとガイドブッシュとの閉じたガイド空間内へ連通路からエアが供給され、閉じたガイド空間内が負圧になるのを防止できる。そのため、スライドの上下往復運動に連動して、アライメントピンとガイドブッシュとの間に閉じたガイド空間を形成し、その閉じたガイド空間内で繰り返し圧縮エアを形成できる。その結果、閉じたガイド空間内で形成した圧縮エアを、スライドの下死点近傍でエアブロー孔から吹出して、カス上がりを簡単に回避することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、素材の高速プレスにおいて、孔抜きパンチに形成したエアブロー孔からスライドの下死点近傍で圧縮エアを吹出してカス上がりを簡単に回避できる圧縮エア供給手段を型内に備えた孔抜きプレス型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る第1実施例の孔抜きプレス型のスライド下降途中における概略断面図である。
図2図1に示す孔抜きプレス型のスライドの下死点近傍における概略断面図である。
図3図1に示す孔抜きプレス型の弁機構の動作説明図であり、(A)は、スライドの下降途中でアライメントピンの先端部がガイドブッシュの挿入口に挿入され、弁座の開口部が弁体の摺接部と摺接している状態を示し、(B)は、孔抜きパンチが素材の孔抜きを終了する直前まで、開口部は摺接部と摺接している状態を示し、(C)は、孔抜きパンチが素材の孔抜きを終了した時からスライドの下死点を通過して孔抜きパンチが孔抜きダイから離脱する時まで、開口部は非摺接部と嵌合している状態を示す。
図4図1又は図5に示す孔抜きプレス型において、スライドの軌跡(上下動)に伴うエアブロー動作の説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る第2実施例の孔抜きプレス型のスライド下降途中における概略断面図である。
図6図5に示す孔抜きプレス型のスライドの下死点近傍における概略断面図である。
図7】孔抜きパンチの先端部から突出する払いピンを設けた公知の孔抜きプレス型の部分断面図である。
図8】特許文献1に開示され、孔抜きパンチの先端部にエアブロー孔を形成した孔抜きプレス型の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態に係る孔抜きプレス型について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る第1実施例の孔抜きプレス型の構造及び動作方法を説明し、その後、第2実施例の孔抜きプレス型の構造及び動作方法を説明する。
【0029】
<第1実施例の構造及び動作方法>
まず、本実施形態の第1実施例に係る孔抜きプレス型の構造及び動作方法について、図1図4を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態に係る第1実施例の孔抜きプレス型のスライドの下降途中における概略断面図を示す。図2に、図1に示す孔抜きプレス型のスライドの下死点近傍における概略断面図を示す。図3に、図1に示す孔抜きプレス型の弁機構の動作説明図を示し、(A)は、スライドの下降途中でアライメントピンの先端部がガイドブッシュの挿入口に挿入され、弁座の開口部が弁体の摺接部と摺接している状態を示し、(B)は、孔抜きパンチが素材の孔抜きを終了する直前まで、開口部は摺接部と摺接している状態を示し、(C)は、孔抜きパンチが素材の孔抜きを終了した時からスライドの下死点を通過して孔抜きパンチが孔抜きダイから離脱する時まで、開口部は非摺接部と嵌合している状態を示す。図4に、図1又は図5に示す孔抜きプレス型において、スライドの軌跡(上下動)に伴うエアブロー動作の説明図を示す。
【0030】
図1図3に示すように、本実施形態の第1実施例に係る孔抜きプレス型10は、下型1と、下型1に固定された孔抜きダイ11と、下型1に対向してプレス機のスライドPSに装着される上型2と、上型2に固定され孔抜きダイ11と嵌合して素材W(例えば、薄板状の金属箔)に孔を形成する孔抜きパンチ3と、孔抜きパンチ3と孔抜きダイ11とが嵌合する前に薄板素材Wを孔抜きダイ11に押圧するパッド4とを備え、スライドPSが下死点近傍に到達したときに孔抜きパンチ3に形成されたエアブロー孔31から圧縮エアAEを吹出すように形成された孔抜きプレス型である。なお、図1図2は、孔抜きプレス型10の型中心線CLに対する右半分の断面図を示している。また、下型1は、プレス機のボルスタPKに装着されている。
【0031】
また、上型2と下型1との間には、上下方向に起立してパッド4の上下動を案内するアライメントピン5と、アライメントピン5が挿入されてガイドされるガイドブッシュ6と、アライメントピン5の先端部51がガイドブッシュ6に挿入されたときに作動する弁機構7とを備えている。また、スライドPSが下降する途中に弁機構7が閉じた状態で先端部51がガイドブッシュ6に挿入して圧縮エアAEを形成し、スライドPSが更に下降して下死点近傍に到達したとき弁機構7が開いて圧縮エアAEをエアブロー孔31から吹き出させる圧縮エア供給手段8を型内に備えている。
【0032】
また、上記圧縮エア供給手段8を型内に備えたことによって、アライメントピン5に対するガイドブッシュ6のガイド空間GK内で圧縮エアAEを形成し、形成した圧縮エアAEをエアブロー孔31に供給するエア経路81を短く形成でき、その結果、高速プレスに対する応答性を高めることができる。また、本孔抜きプレス型10をプレス機へ設置する度に、圧縮エアAEのエア経路81を接続する手間を省くことができる。
【0033】
また、弁機構7には、エアブロー孔31に連通するエア経路81の始端部81aに上下方向に形成された開口部711を有する弁座71と、開口部711に対して所定の摺接距離(d=d1+d2)だけ摺接する摺接部721と当該摺接部721の下方で開口部711に対して所定の隙間tが形成された非摺接部722とを有する弁体72とを備えている。なお、所定の摺接距離(d=d1+d2)は、互いの摺接面における開口部711の上下距離d1と摺接部721の上下距離d2との和である。また、始端部81aは、開口部711の内径より大きい内径で円筒状に形成され、開口部711から進入する摺接部721を収容し、かつ開口部711と非摺接部722との隙間tから流入する圧縮エアAEを一時的に収容する容積を備えている。
【0034】
また、アライメントピン5は、略円柱状に形成され、その先端部51を下方に向けて上型2に固定されている。また、ガイドブッシュ6は、アライメントピン5と同一径の摺接面が形成され、アライメントピン5に対する挿入口61を上方に向けて下型1に固定されている。また、弁座71は、アライメントピン5の下端側の軸中心部にネジ締結されて面一状に設置され、弁体72は、ガイドブッシュ6の内径側の軸中心部に、下型1の上端に固定されて垂直状に設置されている。
【0035】
また、上型2の下端には、孔抜きパンチ3とアライメントピン5とを取り付けるリテーナ部材22を装着するベース板21が固定されている。また、アライメントピン5には、エア経路81の内、先端部51に形成された始端部81aと、始端部81aからアライメントピン5の上端まで連通する第1エア経路81bとが、軸中心部に形成されている。また、ベース板21には、エア経路81の内、アライメントピン5に形成された第1エア経路81bと孔抜きパンチ3の基端32側に形成されたエアブロー孔31の大径部31bとを連通する第2エア経路81cが、リテーナ部材22との境界部に水平状に形成されている。
【0036】
また、エア経路81の始端部81aと第1エア経路81bとの連結部には、弁座71からエアブロー孔31へ流れる圧縮エアAEを通過させつつ、その逆流を阻止する逆止弁82が装着されている。また、下型1には、ガイドブッシュ6の内径側と外部とが連通された連通路83が形成され、また、連通路83には、外部からガイドブッシュ6の内径側へ流れるエアを通過させつつ、その逆流を阻止する逆止弁84が装着されている。なお、連通路83の外端部には、フィルタ831が装着されている。
【0037】
また、図3(A)、図4に示すように、スライドPSの下降途中でアライメントピン5の先端部51がガイドブッシュ6の挿入口61に挿入され、弁座71の開口部711が弁体72の摺接部721と摺接する。開口部711と摺接部721とが所定の摺接距離(d=d1+d2)だけ摺接する間は、弁機構7が閉じて、ガイドブッシュ6のガイド空間GK内で圧縮エアAEが形成される。圧縮エアAEの形成開始タイミング(i)は、パッド4による素材Wの押圧開始タイミング(ii)より早い。
【0038】
また、図3(B)、図4に示すように、孔抜きパンチ3が素材Wの孔抜きを終了する直前まで、開口部711は摺接部721と摺接している。したがって、この孔抜き終了直前まで圧縮エアAEのエア圧Tは上昇する。
【0039】
また、図3(C)、図4に示すように、孔抜きパンチ3が素材Wの孔抜きを終了した時(iv)からスライドPSの下死点を通過して孔抜きパンチ3が孔抜きダイ11から離脱する時(vi)まで、開口部711は非摺接部722と嵌合している。また、図2に示すように、開口部711が非摺接部722と嵌合すると同時に、ガイド空間GK内に形成された圧縮エアAEは、開口部711と非摺接部722との隙間tからエア経路81の始端部81aへ流れ込み、始端部81aから他のエア経路81(81b、81c)を経由してエアブロー孔31へ送られ、カスWWに向けて放出される。
【0040】
また、図1図2に示すように、エアブロー孔31には、孔抜きパンチ3の基端32側に形成された大径部31bより内径が小さい小径部31aが、孔抜きパンチ3の先端33側に形成されている。孔抜きパンチ3の先端33側に小径部31aを形成することによって、エアブロー孔31へ送られる圧縮エアAEが、小径部31aへ流れるときにその流速を向上させつつ、そのエア流量を制限して、圧縮エアAEをより継続してエアブロー孔31から吹出すことができる。そのため、図4に示すように、圧縮エアAEを、斜線表示したエアブロー区間(v)として、孔抜きパンチ3が素材Wの孔抜きを終了した時(iv)からスライドPSの下死点を通過して孔抜きパンチ3が孔抜きダイ11から離脱した後のエアブロー終了時(vii)まで、エアブロー孔31から長時間吹出して、カス上がりをより効果的に回避するように作用する。
【0041】
<第2実施例の構造と動作方法>
次に、本実施形態の第2実施例に係る孔抜きプレス型の構造及び動作方法について、図4図6を用いて説明する。なお、第1実施例との共通点には、同一の符号を付して基本的に説明を割愛する。図4に、図1又は図5に示す孔抜きプレス型において、スライドの軌跡(上下動)に伴うエアブロー動作の説明図を示す。図5に、本発明の実施形態に係る第2実施例の孔抜きプレス型のスライド下降途中における概略断面図を示す。図6に、図5に示す孔抜きプレス型のスライドの下死点近傍における概略断面図を示す。
【0042】
図5図6に示すように、本実施形態の第2実施例に係る孔抜きプレス型10Bは、下型1Bと、下型1Bに固定された孔抜きダイ11Bと、下型1Bに対向してプレス機のスライドPSに装着される上型2Bと、上型2Bに固定され孔抜きダイ11Bと嵌合して素材Wに孔を形成する孔抜きパンチ3と、孔抜きパンチ3と孔抜きダイ11Bとが嵌合する前に素材Wを孔抜きダイ11Bに押圧するパッド4とを備え、スライドPSが下死点近傍に到達したときに孔抜きパンチ3に形成されたエアブロー孔31から圧縮エアAEを吹出すように形成された孔抜きプレス型である。なお、下型1Bは、プレス機のボルスタPKに装着されている。
【0043】
また、上型2Bと下型1Bとの間には、上下方向に起立してパッド4の上下動を案内するアライメントピン5Bと、アライメントピン5Bが挿入されてガイドされるガイドブッシュ6Bと、アライメントピン5Bの先端部51Bがガイドブッシュ6Bに挿入されたときに作動する弁機構7Bとを備えている。また、スライドPSが下降する途中に弁機構7Bが閉じた状態で先端部51Bがガイドブッシュ6Bに挿入して圧縮エアAEを形成し、スライドPSが更に下降して下死点近傍に到達したとき弁機構7Bが開いて圧縮エアAEをエアブロー孔31から吹き出させる圧縮エア供給手段8Bを型内に備えている。
【0044】
また、上記圧縮エア供給手段8Bを型内に備えたことによって、アライメントピン5Bに対するガイドブッシュ6Bのガイド空間GK内で圧縮エアAEを形成し、形成した圧縮エアAEをエアブロー孔31に供給するエア経路81Bを短く形成でき、その結果、高速プレスに対する応答性を高めることができる。また、本孔抜きプレス型10Bをプレス機へ設置する度に、圧縮エアAEのエア経路81Bを接続する手間を省くことができる。
【0045】
また、弁機構7Bには、エアブロー孔31に連通するエア経路81Bの始端部81aBに上下方向に形成された開口部711Bを有する弁座71Bと、開口部711Bに対して所定の摺接距離(d=d1+d2)だけ摺接する摺接部721Bと当該摺接部721Bの下方で開口部711Bに対して所定の隙間tが形成された非摺接部722Bとを有する弁体72Bとを備えている。なお、所定距離(d=d1+d2)は、互いの摺接面における開口部711Bの上下距離d1と摺接部721Bの上下距離d2との和である。また、始端部81aBは、開口部711Bの内径より大きい内径で円筒状に形成され、開口部711Bから進入する摺接部721Bを収容し、かつ開口部711Bと非摺接部722Bとの隙間tから流入する圧縮エアAEを一時的に収容する容積を備えている。
【0046】
また、アライメントピン5Bは、略円柱状に形成され、その先端部51Bを上方に向けて下型1Bに固定されている。また、ガイドブッシュ6Bは、アライメントピン5Bと同一径の摺接面が形成され、アライメントピン5Bに対する挿入口61Bを下方に向けて上型2Bに固定されている。また、弁座71Bは、ガイドブッシュ6Bの内径側の軸中心部に、上型2Bの下端に取り付けたベース板21Bに形成されている。また、弁体72Bは、アライメントピン5Bの上端に垂直状に設置されている。
【0047】
また、上型2の下端には、孔抜きパンチ3とガイドブッシュ6Bとを取り付けるリテーナ部材22Bを装着するベース板21Bが固定されている。また、上型2の下端には、エア経路81Bの内、弁座71Bの開口部711Bの上方に形成された始端部81aBと、始端部81aBから孔抜きパンチ3の基端32側に形成されたエアブロー孔31の大径部31bとを連通する第2エア経路81cBが、ベース板21Bとの境界部に水平状に形成されている。
【0048】
また、エアブロー孔31の大径部31bと第2エア経路81cBとの連結部には、弁座71Bからエアブロー孔31へ流れる圧縮エアAEを通過させつつ、その逆流を阻止する逆止弁82Bが装着されている。また、上型2Bには、ガイドブッシュ6Bの内径側と外部とが連通された連通路83Bが形成され、また、連通路83Bには、外部からガイドブッシュ6Bの内径側へ流れるエアを通過させつつ、その逆流を阻止する逆止弁84Bが装着されている。なお、連通路83Bの外端部には、フィルタ831Bが装着されている。
【0049】
なお、スライドPSの下降途中でアライメントピン5Bの先端部51Bがガイドブッシュ6Bの挿入口61Bに挿入され、弁座71Bの開口部711Bが弁体72Bの摺接部721Bと摺接する。開口部711Bと摺接部721Bとが所定の摺接距離だけ摺接する間は、弁機構7Bが閉じて、ガイドブッシュ6Bのガイド空間GK内で圧縮エアAEが形成される。
【0050】
図4に示すように、圧縮エアAEの形成開始タイミング(i)は、パッド4による素材Wの押圧開始タイミング(ii)より早い。また、図4に示すように、孔抜きパンチ3が素材Wの孔抜きを終了する直前まで、開口部711Bは摺接部721Bと摺接している。したがって、この孔抜き終了直前まで圧縮エアAEのエア圧Tは上昇する。また、孔抜きパンチ3が素材Wの孔抜きを終了した時(iv)からスライドPSの下死点を通過して孔抜きパンチ3が孔抜きダイ11Bから離脱する時(vi)まで、開口部711Bは非摺接部722Bと嵌合している。
【0051】
また、図6に示すように、開口部711Bが非摺接部722Bと嵌合すると同時に、ガイド空間GK内に形成された圧縮エアAEは、開口部711Bと非摺接部722Bとの隙間tからエア経路81Bの始端部81aBへ流れ込み、始端部81aBから他のエア経路81B(81c)を経由してエアブロー孔31へ送られ、カスWWに向けて放出される。
【0052】
また、図5図6に示すように、エアブロー孔31には、孔抜きパンチ3の基端32側に形成された大径部31bより内径が小さい小径部31aが、孔抜きパンチ3の先端33側に形成されている。孔抜きパンチ3の先端33側に小径部31aを形成することによって、エアブロー孔31へ送られる圧縮エアAEが、小径部31aへ流れるときにその流速を向上させつつ、そのエア流量を制限して、圧縮エアAEをより継続してエアブロー孔31から吹出すことができる。そのため、図4に示すように、圧縮エアAEを、斜線表示したエアブロー区間(v)として、孔抜きパンチ3が素材Wの孔抜きを終了した時(iv)からスライドPSの下死点を通過して孔抜きパンチ3が孔抜きダイ11から離脱した後のエアブロー終了時(vii)まで、エアブロー孔31から長時間吹出して、カス上がりをより効果的に回避するように作用する。
【0053】
<作用効果>
また、本実施形態に係る孔抜きプレス型10、10Bによれば、上型2、2Bと下型1、1Bとの間には、上下方向に起立してパッド4の上下動を案内するアライメントピン5、5Bと、アライメントピン5、5Bが挿入されてガイドされるガイドブッシュ6、6Bと、アライメントピン5、5Bの先端部51、51Bがガイドブッシュ6、6Bに挿入されたときに作動する弁機構7、7Bとを備え、スライドPSが下降する途中に弁機構7、7Bが閉じた状態で先端部51、51Bがガイドブッシュ6、6Bに挿入して圧縮エアAEを形成し、スライドPSが更に下降して下死点近傍に到達したとき弁機構7、7Bが開いて圧縮エアAEをエアブロー孔31から吹き出させる圧縮エア供給手段8、8Bを型内に備えたので、スライドPSの上下往復運動に連動してアライメントピン5、5Bとガイドブッシュ6、6Bとの間に閉じたガイド空間GKを形成し、そのガイド空間GK内で形成した圧縮エアAEを、スライドPSの下死点近傍でエアブロー孔31から吹出して、カス上がりを簡単に回避することができる。
【0054】
また、スライドPSが下降する途中に弁機構7、7Bが閉じた状態でアライメントピン5、5Bの先端部51、51Bがガイドブッシュ6、6Bに挿入して圧縮エアAEを形成するので、アライメントピン5、5Bとガイドブッシュ6、6Bとのガイド空間GK内で形成した圧縮エアAEをエアブロー孔31に供給するエア経路81、81Bを短く形成でき、高速プレスに対する応答性を高めることができる。また、孔抜きプレス型10、10Bをプレス機へ設置する度に、圧縮エアAEのエア経路81を接続する手間を省くことができる。
【0055】
よって、本実施形態によれば、素材Wの高速プレスにおいて、孔抜きパンチ3に形成したエアブロー孔31からスライドPSの下死点近傍で圧縮エアAEを吹出してカス上がりを簡単に回避できる圧縮エア供給手段8、8Bを型内に備えた孔抜きプレス型10、10Bを提供することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、弁機構7、7Bには、エアブロー孔31に連通するエア経路81、81Bの始端部81aに上下方向に形成された開口部711、711Bを有する弁座71、71Bと、開口部711、711Bに対して所定の摺接距離(d=d1+d2)だけ摺接する摺接部721、721Bと当該摺接部721、721Bの下方で開口部711、711Bに対して所定の隙間tが形成された非摺接部722、722Bとを有する弁体72、72Bとを備えたので、スライドPSが下降する途中に弁座71、71Bの開口部711、711Bに対して弁体72、72Bの摺接部721、721Bが嵌合し、開口部711、711Bと摺接部721、721Bとが所定の摺接距離(d=d1+d2)だけ摺接する間は弁機構7、7Bが閉じて圧縮エアAEを形成できる。また、スライドPSが更に下降して下死点近傍に到達したとき、弁座71、71Bの開口部711、711Bに対して隙間tを有する非摺接部722、722Bが嵌合し、弁機構7、7Bが開いて圧縮エアAEをエア経路81、81Bを経由してエアブロー孔31から吹き出させることができる。そのため、エアブロー孔31へ供給する圧縮エアAEの容量と供給タイミングとを弁座71、71Bと弁体72、72Bとの摺接距離(d=d1+d2)と隙間tによって簡単に調節でき、高速プレスに対する応答性をより一層高めることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、孔抜きパンチ3が素材Wの孔抜きを終了する直前まで、開口部711、711Bは摺接部721、721Bと摺接し、孔抜きパンチ3が素材Wの孔抜きを終了した時からスライドPSの下死点を通過して孔抜きパンチ3が孔抜きダイ11、11Bから離脱する時まで、開口部711、711Bは非摺接部722、722Bと嵌合しているので、孔抜きパンチ3が素材Wの孔抜きを終了する直前まで弁機構7、7Bを閉じて、圧縮エアAEの圧力をできる限り高めることができる。また、孔抜きパンチ3が素材Wの孔抜きを終了すると同時に弁機構7、7Bを開いて、圧縮エアAEをエアブロー孔31に連通するエア経路81、81Bに供給し、エアブロー孔31から吹き出してカス上がりを回避できる。ここで、孔抜きパンチ3が孔抜きダイ11、11Bから離脱する時まで、開口部711、711Bは非摺接部722、722Bと嵌合しているので、エアブロー孔31からの圧縮エアAEの吹き出し時間を長期化でき、また、エアブロー孔31からの負圧によってカスWWの吸引作用が働かず、孔抜きパンチ3へのカスWWの再付着を防止できる。
【0058】
また、本実施形態によれば、アライメントピン5は、先端部51を下方に向けて上型2に固定されると共に、ガイドブッシュ6は、アライメントピン5に対する挿入口61を上方に向けて下型1に固定され、また、弁座71がアライメントピン5の下端側に設置され、弁体72がガイドブッシュ6の内径側に設置されたので、弁機構7をアライメントピン5をガイドするガイドブッシュ6のガイド空間GKに設置でき、型構造のコンパクト化に寄与できる。そのため、圧縮エアAEをエアブロー孔31に供給するエア経路81を短く形成でき、高速プレスに対する応答性を高めることができる。
【0059】
また、アライメントピン5は、先端部51を下方に向けて上型2に固定されると共に、ガイドブッシュ6は、アライメントピン5に対する挿入口61を上方に向けて下型1に固定されているので、スライドPSが上死点付近へ上昇したとき、アライメントピン5の先端部51がガイドブッシュ6の挿入口61から離間して上方へ移動する。そのため、例えば、トランスファ装置を使用する場合において、素材を搬送する把持装置(フィンガー)が、スライドPSの上死点付近へ上昇したアライメントピン5の先端部51とガイドブッシュ6との隙間を移動することができ、その軌跡の自由度を高めることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、アライメントピン5Bは、先端部51Bを上方に向けて下型1Bに固定されると共に、ガイドブッシュ6Bは、アライメントピン5Bに対する挿入口61Bを下方に向けて上型2Bに固定され、また、弁座71Bが上型2Bの下端側でガイドブッシュ6Bの内径側に設置され、弁体72Bがアライメントピン5Bの上端側に設置されたので、弁機構7Bをアライメントピン5Bをガイドするガイドブッシュ6Bのガイド空間GKに設置でき、型構造のコンパクト化に寄与できる。また、エアブロー孔31に連通するエア経路81Bの始端部81aBに形成された弁座71Bが、上型2Bの下端側でガイドブッシュ6Bの内径側に設置されそのため、圧縮エアAEをエアブロー孔31に供給するエア経路81Bをより一層短く形成でき、高速プレスに対する応答性を高めることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、エア経路81、81Bには、弁座71、71Bからエアブロー孔31へ流れる圧縮エアAEを通過させつつ、その逆流を阻止する逆止弁82、82Bが装着されているので、孔抜きパンチ3が素材Wの孔抜きを終了して上昇するとき、エアブロー孔31の先端側からエアを吸引するのを防止できる。そのため、エアブロー孔31からの負圧によって、孔抜きパンチ3へのカスWWの再付着を防止できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、エアブロー孔31には、孔抜きパンチ3の基端32側に形成された大径部31bより内径が小さい小径部31aが、当該孔抜きパンチ3の先端33側に形成されているので、エアブロー孔31へ送られる圧縮エアAEが、大径部31bから小径部31aへ流れることによってその流速を向上させつつ、そのエア流量を制限して、圧縮エアAEをより継続してエアブロー孔31から吹出すことができる。そのため、スライドPSの下死点前後において、エアブロー孔31から圧縮エアAEを長時間吹出して、カス上がりをより一層簡単に回避することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、ガイドブッシュ6、6Bの基端側には、当該ガイドブッシュ6、6Bの内径側と外部とが連通された連通路83、83Bが下型1、1B又は上型2、2Bに形成され、また、連通路83、83Bには、外部からガイドブッシュ6、6Bの内径側へ流れるエアを通過させつつ、その逆流を阻止する逆止弁84、84Bが装着されているので、スライドPSの下降途中において、アライメントピン5、5Bとガイドブッシュ6、6Bとの間に形成される閉じたガイド空間GKで圧縮エアAEを形成でき、また、スライドPSの上昇途中において、ガイド空間GK内へ連通路83、83Bからエアが供給され、ガイド空間GK内が負圧になるのを防止できる。そのため、スライドPSの上下往復運動に連動して、アライメントピン5、5Bとガイドブッシュ6、6Bとの間に閉じたガイド空間GKを形成し、その閉じたガイド空間GK内で繰り返し圧縮エアAEを形成できる。その結果、閉じたガイド空間GK内で形成した圧縮エアAEを、スライドPSの下死点近傍でエアブロー孔31から吹出して、カス上がりを簡単に回避することができる。
【0064】
<変形例>
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更することができる。例えば、本実施形態では、上型2、2Bと下型1、1Bとの間には、上下方向に起立してパッド4の上下動を案内するアライメントピン5、5Bと、アライメントピン5、5Bが挿入されてガイドされるガイドブッシュ6、6Bと、アライメントピン5、5Bの先端部51、51Bがガイドブッシュ6、6Bに挿入されたときに作動する弁機構7、7Bとを備えている。しかし、必ずしも上記構成に限る必要はなく、例えば、アライメントピン5、5Bは、パッド4の上下動ではなく、上型2、2Bの上下動を案内するものに変更しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、素材(例えば、薄板状の金属箔)に対して孔抜きパンチによって孔を明ける孔抜きプレス型において、打ち抜かれた孔のカスのカス上がりを回避できる圧縮エア供給手段を型内に備えた孔抜きプレス型として利用できる。
【符号の説明】
【0066】
1、1B 下型
2、2B 上型
3 孔抜きパンチ
4 パッド
5、5B アライメントピン
6、6B ガイドブッシュ
7、7B 弁機構
8、8B 圧縮エア供給手段
10、10B 孔抜きプレス型
11、11B 孔抜きダイ
31 エアブロー孔
31a 小径部
31b 大径部
51、51B 先端部
61、61B 挿入口
71、71B 弁座
72、72B 弁体
81、81B エア経路
81a、81aB 始端部
82、82B 逆止弁
83、83B 連通路
84、84B 逆止弁
711、711B 開口部
721、721B 摺接部
722、722B 非摺接部
PS スライド
AE 圧縮エア
W 素材
d 摺動距離
t 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8