(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20220315BHJP
A01B 49/04 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
A01C11/02 322C
A01C11/02 341
A01C11/02 342M
A01B49/04
(21)【出願番号】P 2018144245
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2020-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 信
(72)【発明者】
【氏名】福島 寿美
(72)【発明者】
【氏名】高橋 学
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-081522(JP,A)
【文献】特開2001-037307(JP,A)
【文献】特開2010-136647(JP,A)
【文献】特開2016-136884(JP,A)
【文献】特開2012-210194(JP,A)
【文献】特開2011-188770(JP,A)
【文献】特開2011-062163(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102067763(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
A01B 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)と、
前記走行車体(2)の後部に昇降可能に連結された苗植付装置(100)と、を備えた作業車両であって、
前記苗植付装置(100)は、
苗を載置する苗載置台(110)と、
前記苗載置台(110)を左右方向にスライド移動可能に支持する支持フレーム(120)と、
前記支持フレーム(120)と連結され、前記苗を圃場に植え付ける植付部(130、131)と、
前記植付部(130、131)の前側に昇降可能に配置された、前記圃場を整地する整地装置(160)と、
前記整地装置(160)を昇降させる整地装置昇降部(170)と、を有し、
前記植付部(130、131)の上下方向の所定位置は、前記苗の植付け深さに応じて変更可能であり、
前記整地装置(160)は、前記植付部(130、131)の前記所定位置に応じて、前記整地装置昇降部(170)により上下方向の位置が変更され、
前記整地装置(160)は、整地ロータ(161)と、その整地ロータ(161)を回転駆動させる電動モータと、その電動モータの電流を検知する電流検知器を有し、
制御部(70)が電流検知結果から所定値以上の過負荷状態が発生したと判定した場合、制御部(70)は、前記整地装置昇降部(170)を駆動させ前記整地ロータ(161)を上方に上昇させ、
制御部(70)が電流検知結果から所定値以上の過負荷状態が解消したと判定した場合、前記整地ロータ(161)をもとの高さに復帰させ、
前記電動モータは、メインフレーム(7)の後端で、リアアクスルの近傍に
配置され、
前記整地装置昇降部(170)は整地装置昇降モータ(170)であり、
前記整地装置(160)は、前記支持フレーム(120)に連結されており、
その連結の構造は、前記整地装置(160)がロータ支持アーム(162)の前端で保持されるとともに、前記ロータ支持アーム(162)の後端が前記支持フレーム(120)に対して上下方向にスライド可能に連結され、前記整地装置昇降モータ(170)によって前記ロータ支持アーム(162)は上下にスライド可能であり、
前記苗植付装置(100)は、
圃場面に接地可能に、前記植付部(130、131)に連結されたセンターフロート(141)と、
前記植付部(130、131)に対する前記センターフロート(141)の上下方向の位置を変更することで前記所定位置を変更し、前記苗の植付け深さを調節する植付深さ調節部(150)と、を有し、
前記植付深さ調節部(150)の操作により変更された前記センターフロート(141)の前記上下方向の位置に応じて、前記整地装置昇降モータ(170)が前記整地装置(160)の前記上下方向の位置を変更し、
前記植付深さ調節部(150)の操作により変更された前記センターフロート(141)の前記上下方向の位置に応じて、前記整地装置昇降モータ(170)が前記整地装置(160)の前記上下方向の位置を変更する仕方は、
前記植付深さ調節部(150)の設定位置が、最深側の所定範囲内でない場合は、前記整地装置(160)の高さを、前記植付深さ調節部(150)の位置の変化に対して線形に変化させ、また前記最深側の所定範囲内である場合は、前記整地装置(160)の高さを、前記植付深さ調節部(150)の位置の変化に対して上記線形の変化率より緩やかに変化させ、
前記植付深さ調節部(150)の設定位置が、最浅側の所定範囲内でない場合は、前記整地装置(160)の高さを、前記植付深さ調節部(150)の位置の変化に対して線形に変化させ、また前記最浅側の所定範囲内であると判定した場合は、前記整地装置(160)の高さを、前記植付深さ調節部(150)の位置の変化に対して上記線形の変化より大きく変化させる仕方である、ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗植付装置を後方に連結した田植機等の作業車両には、圃場を整地する整地装置を備えている(例えば、特許文献1参照)。この整地装置は、苗置台を左右方向にスライド移動可能に支持する支持枠体に連結されており、整地ロータ上下位置調節レバーの操作により、整地ロータの上下高さが調節出来る構成である。また、従来の作業車両は、苗の植付け深さの変更が可能である。
【0003】
上記構成において、作業者は、作業開始前に、例えばレバーを操作してフロートの植付伝動ケースへの回動支点を上下に移動させることで、苗の植付け深さを所望の深さに調節して、更に、その深さに応じて、整地ロータ上下位置調節レバーを適切に操作することにより、適切な整地作業が行える構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成によれば、苗の植付け深さを所望の深さに調節した際に、整地ロータ上下位置調節レバーの操作をやり忘れたり、或いは、間違って操作した場合には、苗の植付け深さに応じた適切な整地が行えないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した従来の作業車両のこの様な課題に鑑みて、苗の植付け深さに応じた適切な整地が行える作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、
走行車体(2)と、
前記走行車体(2)の後部に昇降可能に連結された苗植付装置(100)と、を備えた作業車両であって、
前記苗植付装置(100)は、
苗を載置する苗載置台(110)と、
前記苗載置台(110)を左右方向にスライド移動可能に支持する支持フレーム(120)と、
前記支持フレーム(120)と連結され、前記苗を圃場に植え付ける植付部(130、131)と、
前記植付部(130、131)の前側に昇降可能に配置された、前記圃場を整地する整地装置(160)と、
前記整地装置(160)を昇降させる整地装置昇降部(170)と、を有し、
前記植付部(130、131)の上下方向の所定位置は、前記苗の植付け深さに応じて変更可能であり、
前記整地装置(160)は、前記植付部(130、131)の前記所定位置に応じて、前記整地装置昇降部(170)により上下方向の位置が変更され、
前記整地装置(160)は、整地ロータ(161)と、その整地ロータ(161)を回転駆動させる電動モータと、その電動モータの電流を検知する電流検知器を有し、
制御部(70)が電流検知結果から所定値以上の過負荷状態が発生したと判定した場合、制御部(70)は、前記整地装置昇降部(170)を駆動させ前記整地ロータ(161)を上方に上昇させ、
制御部(70)が電流検知結果から所定値以上の過負荷状態が解消したと判定した場合、前記整地ロータ(161)をもとの高さに復帰させ、
前記電動モータは、メインフレーム(7)の後端で、リアアクスルの近傍に配置され、
前記整地装置昇降部(170)は整地装置昇降モータ(170)であり、
前記整地装置(160)は、前記支持フレーム(120)に連結されており、
その連結の構造は、前記整地装置(160)がロータ支持アーム(162)の前端で保持されるとともに、前記ロータ支持アーム(162)の後端が前記支持フレーム(120)に対して上下方向にスライド可能に連結され、前記整地装置昇降モータ(170)によって前記ロータ支持アーム(162)は上下にスライド可能であり、
前記苗植付装置(100)は、
圃場面に接地可能に、前記植付部(130、131)に連結されたセンターフロート(141)と、
前記植付部(130、131)に対する前記センターフロート(141)の上下方向の位置を変更することで前記所定位置を変更し、前記苗の植付け深さを調節する植付深さ調節部(150)と、を有し、
前記植付深さ調節部(150)の操作により変更された前記センターフロート(141)の前記上下方向の位置に応じて、前記整地装置昇降モータ(170)が前記整地装置(160)の前記上下方向の位置を変更し、
前記植付深さ調節部(150)の操作により変更された前記センターフロート(141)の前記上下方向の位置に応じて、前記整地装置昇降モータ(170)が前記整地装置(160)の前記上下方向の位置を変更する仕方は、
前記植付深さ調節部(150)の設定位置が、最深側の所定範囲内でない場合は、前記整地装置(160)の高さを、前記植付深さ調節部(150)の位置の変化に対して線形に変化させ、また前記最深側の所定範囲内である場合は、前記整地装置(160)の高さを、前記植付深さ調節部(150)の位置の変化に対して上記線形の変化率より緩やかに変化させ、
前記植付深さ調節部(150)の設定位置が、最浅側の所定範囲内でない場合は、前記整地装置(160)の高さを、前記植付深さ調節部(150)の位置の変化に対して線形に変化させ、また前記最浅側の所定範囲内であると判定した場合は、前記整地装置(160)の高さを、前記植付深さ調節部(150)の位置の変化に対して上記線形の変化より大きく変化させる仕方である、ことを特徴とする作業車両。
本発明に関連する第1の発明は、
走行車体(2)と、
前記走行車体(2)の後部に昇降可能に連結された苗植付装置(100)と、を備えた作業車両であって、
前記苗植付装置(100)は、
苗を載置する苗載置台(110)と、
前記苗載置台(110)を左右方向にスライド移動可能に支持する支持フレーム(120)と、
前記支持フレーム(120)と連結され、前記苗を圃場に植え付ける植付部(130、131)と、
前記植付部(130、131)の前側に昇降可能に配置された、前記圃場を整地する整地装置(160)と、
前記整地装置(160)を昇降させる整地装置昇降部(170)と、を有し、
前記植付部(130、131)の上下方向の所定位置は、前記苗の植付け深さに応じて変更可能であり、
前記整地装置(160)は、前記植付部(130、131)の前記所定位置に応じて、前記整地装置昇降部(170)により上下方向の位置が変更される、ことを特徴とする作業車両である。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、
前記整地装置(160)は、前記支持フレーム(120)又は前記植付部(130、131)に連結されており、
前記苗植付装置(100)は、
圃場面に接地可能に、前記植付部(130、131)に連結されたフロート部(141、142)と、
前記植付部(130、131)に対する前記フロート部(141、142)の上下方向の位置を変更することで前記所定位置を変更し、前記苗の植付け深さを調節する植付深さ調節部(150)と、を有し、
前記植付深さ調節部(150)の操作位置に応じて、前記整地装置昇降部(170)が前記整地装置(160)の前記上下方向の位置を変更する、
ことを特徴とする上記本発明に関連する第1の発明の作業車両である。
【0009】
本発明に関連する第3の発明は、
前記整地装置(160)は、前記支持フレーム(120)又は前記植付部(130、131)に連結されており、
前記苗植付装置(100)は、
圃場面に接地可能に、前記植付部(130、131)に連結されたフロート部(141、142)と、
前記植付部(130、131)に対する前記フロート部(141、142)の上下方向の位置を変更することで前記所定位置を変更し、前記苗の植付け深さを調節する植付深さ調節部(150)と、を有し、
前記植付深さ調節部(150)の操作により変更された前記フロート部の前記上下方向の位置に応じて、前記整地装置昇降部(170)が前記整地装置(160)の前記上下方向の位置を変更する、
ことを特徴とする上記本発明に関連する第1の発明の作業車両である。
【0010】
本発明に関連する第4の発明は、
前記植付深さ調節部(150)の最深側における動きに対する前記整地装置(160)の前記上下方向の位置の変化量は、前記植付深さ調節部(150)の最浅側における動きに対する前記整地装置(160)の前記上下方向の位置の変化量より小さい、ことを特徴とする上記本発明に関連する第2又は第3の発明の作業車両である。
【0011】
本発明に関連する第5の発明は、
前記フロート部は、前記圃場面に沿って上下揺動可能に前記植付部(130、131)に連結されており、
前記植付部(130、131)に対する前記フロート部の前記上下揺動を検知するフロート揺動検知部(182)を備え、
前記整地装置昇降部(170)による前記整地装置(160)の前記上下方向の位置の変更には、前記フロート部の前記上下揺動を抑制する様に、前記フロート揺動検知部(182)による前記検知結果が反映される、
ことを特徴とする上記本発明に関連する第2乃至第4の何れか一つの発明の作業車両である。
【発明の効果】
【0012】
第1の本発明により、苗の植付け深さに応じた適切な整地が行える。さらに、電動モータを含む整地装置機構を破損することなく、連続的に自動均平作業を行うことが出来る。また、電動モータの水没を避ける長所も発揮できる。
本発明に関連する第1の発明により、苗の植付け深さに応じた適切な整地が行える。
【0013】
本発明に関連する第2の発明により、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、植付深さ調節部(150)の操作位置に応じた適切な整地が行える。
【0014】
本発明に関連する第3の発明により、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、フロート部の上下方向の位置に応じた適切な整地が行える。
【0015】
本発明に関連する第4の発明により、本発明に関連する第2又は第3の発明の効果に加えて、最深位置付近では、整地装置(160)の上下方向の位置の変更の度合いが最浅位置付近より緩慢になり、最浅位置付近では、整地装置(160)の上下方向の位置の変更の度合いが最深位置付近より大きくなるので、より適切に整地が行える。また、最浅位置でも安定して苗を植付けることが出来る。
【0016】
本発明に関連する第5の発明により、本発明に関連する第2から第4の何れかの発明の効果に加えて、フロート部の上下揺動を検知して、フロート部の上下揺動の動きを減少させる側に整地装置の位置を変更することで、植付精度を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明にかかる実施の形態における乗用田植機の左側面図
【
図3】本実施の形態における乗用田植機の苗植付装置の下方における要部の構成を模式的に示した概略側面模式図
【
図4】本実施の形態における乗用田植機の制御部と各種装置及び各種センサとの接続関係を示すブロック図
【
図5】本実施の形態の乗用田植機における植付深さレバーの設定位置と、各フロートの高さ(上下方向の位置)、及び各整地ロータの高さ(上下方向の位置)との関係を説明するための図
【
図6】本実施の形態の乗用田植機で植付作業を行う場合の、制御部を中心とした動作説明のためのフロー図
【
図7】整地装置を昇降させる連動機構を説明するための概略の左側面模式図
【
図8】(a):密播・標準に対応した第1苗取フレームの側面図、(b):標準・大株に対応した第2苗取フレームの側面図、(c):密播・標準・大株に対応した第3苗取フレームの側面図
【
図9】(a):苗載置台の下端側の概略拡大側面図、(b):
図9(a)に示す苗載置台の下端側を図中の矢印G方向から見たときの下側レールを示す概略図
【
図10】
図9(a)に示す苗載置台の下端側を図中の矢印G方向から見たときの下側レールであって、ロッカクアナツキボルトでグリスラインを閉じた構成を示す概略図
【
図11】苗載置台のスライダ給油機構においてサブタンクを配置した構成を示す概略図
【
図12】苗載置台のスライダ給油機構において3つの突出口を有する別のサブタンクを配置した構成を示す概略図 以下、本発明の作業車両の一実施の形態にかかる6条植えの乗用田植機について、図面を用いて説明する。
【0018】
図1及び
図2は本実施の形態にかかる乗用田植機の概略左側面図と概略平面図である。
【0019】
本実施の形態の乗用田植機1は、
図1、
図2に示す様に、走行車体2の後側に昇降リンク装置30を介して苗植付装置100が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置3のホッパー3aが設けられている。昇降リンク装置30は、上側リンクアーム31と、左右一対の下側リンクアーム32とを備えた平行リンクである。
【0020】
また、操縦座席22の前方には操縦ハンドル24が設けられている。
【0021】
また、操縦ハンドル24の右側又は左側には、走行車体2の前進走行と後進走行の切り替え及び走行速度などを設定するHST操作レバー(図示省略)、苗植付装置100の昇降及び植付作業の入切を操作する植付作業レバー(図示省略)等の各種レバーが設けられている。
【0022】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪4、4及び左右一対の後輪5、5を備えた四輪駆動車両ある。
【0023】
また、トランスミッションケース6の背面部に車体のメインフレーム7の前端部が固着されており、他方、そのメインフレーム7の後端左右両端部には、昇降リンク装置30を回動可能に支持する左右一対のリンク支持ステー10が固定されている。
【0024】
エンジン20はメインフレーム7の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置12及びHST(静油圧式無段階変速機)13を介してトランスミッションケース6に伝達される。トランスミッションケース6に伝達された回転動力は、トランスミッションケース6内の変速機構(副変速装置等)により変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、前輪4、4、及び左右後輪5、5を駆動する。
【0025】
また、トランスミッションケース6から取出された外部取出動力は、植付クラッチ(図示省略)を介して植付伝動軸21によって苗植付装置100へ伝動される。
【0026】
【0027】
(1)苗マットを載置する苗載置台110と、
【0028】
(2)苗載置台110を左右方向にスライド移動可能に支持する支持フレーム120と、
【0029】
(3)支持フレーム120の下端部と連結固定されており、苗載置台110から苗を取り込んで圃場に植え付ける植込カン131が左右両側面にそれぞれ一対ずつ回動可能に設けられた3つの植付伝動ケース130と、
【0030】
(4)3つの植付伝動ケース130のそれぞれに対して、圃場面に接地可能で且つ上下位置変更可能に連結されたセンターフロート141、及び左右のサイドフロート142、142と、
【0031】
(5)植付伝動ケース130に対するセンターフロート141、左右のサイドフロート142、142の上下方向の連結位置を変更することで、結果的に、植込カン131の回動軸131aの中心部と、各フロートの裏面が接触する圃場面S(
図3参照)との上下方向の距離である第1距離Huを変更し、圃場面Sに対する苗の植付け深さを所望の深さに調節するための植付深さ調節レバー150(
図3参照)と、
【0032】
(6)植付伝動ケース130の前側に昇降可能に配置された、エンジン20からの駆動力により整地ロータが回動することで圃場面Sを整地する整地装置160と、
【0033】
(7)後述する制御部70(
図4参照)からの指令に応じて整地装置160を昇降させる、支持フレーム120に設けられた整地装置昇降モータ170(
図3参照)と、を備えている。
【0034】
ここで、
図3は、苗植付装置100の下方における要部の構成を模式的に示した概略側面模式図である。なお、
図3では、苗載置台110は図示を省略した。
【0035】
また、上述した通り、各フロート141、142は、それぞれの後部に設けられたフロート回動支点部140a(
図3参照)が、各植付伝動ケース130に対して上下位置変更可能に連結されているので、作業開始前において作業者が植付深さ調節レバー150の設定位置(浅い、標準、深い等を設定する位置)を手動により所望の位置に動かした場合、その動きに連動して、フロート回動支点部140a(
図3参照)が、各植付伝動ケース130に対して上下方向(
図3の矢印A参照)に移動して、上述した第1距離Huが定まると共に植付深さが定まる構成である。
【0036】
また、各フロート141、142は、上述した様に、作業開始前において作業者が植付深さ調節レバー150を操作して所望の深さを設定することにより第1距離Huが定まり、その後、各フロート141、142は、植付作業中において圃場面Sを滑走する際に、フロート回動支点部140a(
図3参照)を回動軸芯として、圃場面Sの凹凸に応じて前端側が上下動する様に回動可能に装着されている。
【0037】
なお、植付作業中におけるセンターフロート141の前端側の上下動(即ち、仰俯角の変化)が、支持フレーム120に設けられたフロート上下動検知センサ182(例えば、ポテンショメータ)(
図4参照)により検知され、その検知結果に応じて、制御部70からの指令により油圧バルブ40を切り替えて昇降油圧シリンダ41を伸縮させて苗植付装置100を昇降させることにより、苗の植付け深さを常に一定に維持する構成である。
【0038】
また、上述した整地装置160は、中央整地ロータ161a及び左右の側部整地ロータ161bと、前端部162aがこれらの整地ロータを支持すると共に後端部162bが支持フレーム120に対して上下方向(
図3の矢印B参照)にスライド移動可能に連結されたロータ支持アーム162と、を有している(
図3参照)。また、ロータ支持アーム162の後端部162bは、整地装置昇降モータ170(
図3参照)の回動により上下方向(
図3の矢印B参照)にスライド移動する構成である。
【0039】
また、作業開始前及び植付作業中における、支持フレーム120の所定位置を基準とした、各整地ロータ161a、161bの下面の上下方向の位置(高さ)は、支持フレーム120に設けられた整地装置高さ検知センサ183(例えば、ポテンショメータ)(
図4参照)が、整地装置160の後端部162bの上下方向の位置を検出することにより特定することが出来る(
図3参照)。
【0040】
一方、植付伝動ケース130の前端部は、支持フレーム120の下端部としっかりと連結固定されているので、支持フレーム120と植付伝動ケース130は構造的には一体であると考えてよく、双方の位置関係を適切に考慮すれば、上述した支持フレーム120の所定位置を、支持フレーム120と一体的に繋がっている植付伝動ケース130における回動軸131aに定めることが可能である(
図3参照)。
【0041】
以上のことから、整地装置高さ検知センサ183による検知結果から制御部70が演算する、各整地ロータ161a、161bの下面の上下方向の位置(高さ)を、植付伝動ケース130における回動軸131aの上下方向の位置を基準とした、各整地ロータ161a、161bの下面までの上下方向の距離である第2距離Hr(
図3参照)として取得する構成である。
【0042】
また、植付深さ調節レバー150の設定位置が、支持フレーム120に設けられた植付深さレバー位置検知センサ181(例えば、ポテンショメータ)(
図4参照)により検知され、その検知結果に応じて、制御部70からの指令により整地装置昇降モータ170(
図3、
図4参照)を回動させると共に、整地装置高さ検知センサ183による検知結果から、制御部70が、整地装置160の上下方向の位置を予め定められた位置に変更する構成である。この点については、更に以下で説明する。
【0043】
なお、本実施の形態の苗植付装置100は、本発明の苗植付装置の一例にあたる。また、本実施の形態の苗載置台110は、本発明の苗載置台の一例にあたり、本実施の形態の支持フレーム120は、本発明の支持フレームの一例にあたる。また、本実施の形態の植付伝動ケース130と植込カン131は、本発明の植付部の一例にあたる。また、本実施の形態の整地装置160は、本発明の整地装置の一例にあたり、本実施の形態の整地装置昇降モータ170は、本発明の整地装置昇降部の一例にあたる。
【0044】
また、本実施の形態のセンターフロート141と左右のサイドフロート142、142は、本発明のフロート部の一例にあたる。また、本実施の形態の植付深さ調節レバー150は、本発明の植付深さ調節部の一例にあたり、本実施の形態のフロート上下動検知センサ182は、本発明のフロート揺動検知部の一例にあたる。
【0045】
次に、本実施の形態における乗用田植機1の制御部70について、主として
図4、
図5を用いて更に説明する。
【0046】
ここで、
図4は、本実施の形態における乗用田植機1の制御部70と各種装置及び各種センサとの接続関係を示すブロック図である。
【0047】
また、
図5は、植付深さ調節レバー150の設定位置と、各フロート141、142の高さ(上下方向の位置)、及び各整地ロータ161a、161bの高さ(上下方向の位置)との関係を説明するための図である。
【0048】
なお、
図5に示す「高さ」とは、各フロート141、142、及び各整地ロータ161a、161bのそれぞれ下面の、植付伝動ケース130の回動軸131aに対する相対的な高さのことである(
図3の符号Hu、Hr参照)。
【0049】
また、本実施の形態では、側面視で(
図3参照)、上記各部の下面と、植付伝動ケース130の回動軸131aとの、上下方向の距離(
図3の符号Hu、Hr参照)が、標準よりも短い場合は、各部の「高さ」が高いと称し、標準よりも長い場合は、各部の「高さ」が低いと称するものとする。ここで、「標準」とは、植付深さが標準の深さになる様に設定された場合の植付深さ調節レバー150の位置に対応している。
【0050】
そして、各フロート141、142の高さ、及び各整地ロータ161a、161bの高さが、
図5に示す様に、植付深さ調節レバー150の設定位置に対応付けて予め決定されている。
【0051】
具体的には、植付深さ調節レバー150の設定位置は、植付深さの浅い側(最浅位置を含む)から深い側(最深位置を含む)の範囲にわたって、複数段階に切り替えて設定可能に構成されており、それぞれの設定位置に対応して予め適切に決定された各整地ロータ161a、161bの高さのデータが、制御部70のメモリ部71に予め格納されている。
【0052】
なお、ここでは、各整地ロータ161a、161bの高さの変化は、植付深さ調節レバー150の位置の変化に対して線形に、即ち、直線的に変化するものとするが、これに限定されるものではない。
【0053】
また、各フロート141、142の高さについては、植付深さ調節レバー150の上述したそれぞれの設定位置に対応した植付深さ調節レバー150の動きに連動して所定のリンク機構(図示省略)が作動することにより、予め定められた高さに適切に変更される構成である。なお、所定のリンク機構には、公知の機構を適用すれば良いが、それに限定されるものではない。
【0054】
また、本実施の形態では、各整地ロータ161a、161bの高さを、単に整地装置160の高さと表現する場合もある。
【0055】
次に、上記構成により、本実施の形態の乗用田植機1で植付作業を行う場合の、制御部70を中心とした動作について主として
図6を用いて説明する。
【0056】
図6は、本実施の形態の乗用田植機1で植付作業を行う場合の、制御部70を中心とした動作説明のためのフロー図である。
【0057】
まず、作業者は、作業開始前に植付深さ調整レバー150を標準深さの位置から所望の深さの位置に設定する。ここでは、例えば、「深い」側の所定位置に設定したとする。
【0058】
これにより、各フロート141、142の高さは、所定のリンク機構を介して標準高さから「高い」側の所定位置に変更される。
【0059】
一方、乗用田植機1の制御部70を含む各装置やセンサー等の電源がON状態であれば、植付深さレバー位置検知センサ181が作動して、植付深さ調節レバー150の設定位置を検知して、制御部70にその検知結果を送信する(
図6のステップS101参照)。
【0060】
制御部70は、植付深さレバー位置検知センサ181からの検知結果が「深い」側の所定位置であることから、メモリ部71に予め格納されている、それに対応する整地ロータの高さの対応データを読み出して、整地装置160を上昇させる様に整地装置昇降モータ170に所定の駆動指令を出力すると共に、整地装置高さ検知センサ183からの検知結果の確認を続け、その検知結果が、メモリ部71から読み出した整地ロータの高さの対応データと一致したと判定すると、整地装置昇降モータ170への駆動指令の出力を停止して、整地装置160の上昇を停止させる(
図6のステップS102参照)。
【0061】
また、作業者が、作業開始前に植付深さ調整レバー150を標準深さの位置から「浅い」側の所定位置に設定した場合における、ステップS102における制御部70の動作は次の通りである。
【0062】
即ち、制御部70は、植付深さレバー位置検知センサ181からの検知結果が「浅い」側の所定位置であることから、メモリ部71に予め格納されている、それに対応する整地ロータの高さの対応データを読み出して、整地装置160を降下させる様に整地装置昇降モータ170に所定の駆動指令を出力すると共に、整地装置高さ検知センサ183からの検知結果の確認を続け、その検知結果が、メモリ部71から読み出した整地ロータの高さの対応データと一致したと判定すると、整地装置昇降モータ170への駆動指令の出力を停止して、整地装置160の降下を停止させる(
図6のステップS102参照)。
【0063】
これにより、作業者が、植付深さ調節レバー150を所望の位置に設定することにより、整地装置160は、植付深さ調節レバー150の設定位置に応じた高さに自動的に調整されるので、常に適切な整地が行えて、均平精度が向上する。
【0064】
また、これにより、整地装置160の高さの調節を作業者が別途行う必要が無いので、作業効率が向上する。
【0065】
また、これにより、例えば、従来装置の場合の様に、作業者が、整地装置の高さの設定を行うことを失念してしまって、植付深さとの対応が不適切な状態で整地を行うことにより、圃場面を深く掘りすぎてしまうという問題も生じない。
【0066】
次に、植付作業が開始されると、制御部70は、フロート上下動検知センサ182からの検知結果を受け付けて、苗の植付け深さを常に一定に維持するために、その検知結果に応じて油圧バルブ40を切り替えて昇降油圧シリンダ41を伸縮させて苗植付装置100を昇降させることは、上述した通りである。
【0067】
また、本実施の形態の制御部70は、フロート上下動検知センサ182からの検知結果を受け付けた際、上述した苗植付装置100の昇降制御の他に、整地装置160の昇降制御も行う(
図6のステップS104参照)。
【0068】
即ち、本実施の形態の制御部70は、フロート上下動検知センサ182からの検知結果を受け付けた際、
図6に示す様に、その検知結果から、センターフロート141の前端側の上下動の変化幅が予め定めた標準の範囲内か否かを判定し(
図6のステップS103参照)、標準の範囲内であると判定した場合は、ステップS103の直前に戻り、標準の範囲外であると判定した場合は、ステップS104に進む。
【0069】
制御部70は、ステップS104において、センターフロート141の前端側の上下動の大きさ及びその動きが上向きか下向きかに応じて、センターフロート141の前端側の上下動が減少する側に整地装置160を昇降させる。
【0070】
即ち、ステップS104において制御部70は、フロート上下動検知センサ182の検知結果から、センターフロート141の前端側が、標準の範囲を超えて上向きに動いていると判定した場合、整地装置昇降モータ170に指令を出力して、その動作量に応じて整地装置160を降下させ、また、センターフロート141の前端側が、標準の範囲を超えて下向きに動いていると判定した場合、整地装置昇降モータ170に指令を出力して、その動作量に応じて整地装置160を上昇させる。
【0071】
これにより、上記均平精度の向上に加えて、センターフロート141の前端側の上下動が減少する側に整地装置160を昇降させることで、植付位置での高さ変化を少なくすることが出来て、植付精度を向上させることが出来る。
【0072】
なお、上記実施の形態では、制御部70は、フロート上下動検知センサ182からの検知結果を受け付けた際、上述した苗植付装置100の昇降制御の他に、整地装置160の昇降制御も行う構成について説明したが、これに限らず例えば、制御部70は、フロート上下動検知センサ182からの検知結果に基づいた整地装置160の昇降制御(
図6のステップS104参照)を行わない構成であっても良い。
【0073】
また、上記実施の形態では、植付深さレバー位置検知センサ181を設け、その検知結果に応じて、整地装置160の高さを自動的に変更する構成について説明したが、これに限らず例えば、植付深さ調節レバー150の設定位置に応じて変更されたセンターフロート141の高さ(上下方向の位置)を検知するフロート位置検知センサを設けた構成としても良い。この構成の場合、フロート位置検知センサの検知結果に応じて、整地装置160の高さを自動的に変更する。この場合でも、上記と同様の効果を発揮する。
【0074】
また、上記実施の形態では、整地装置160が支持フレーム120に連結されている場合について説明したが、これに限らず例えば、整地装置160が植付伝動ケース130に連結されていても良い。
【0075】
また、上記実施の形態では、各整地ロータ161a、161bの高さ(整地装置160の高さ)の変化は、植付深さ調節レバー150の位置の変化に対して線形に、即ち、直線的に変化する場合について説明したが、これに限らず例えば、植付深さ調節レバー150の最深側の設定位置における動きに対する整地装置160の高さの変化量(上下方向の位置の変化量)が、植付深さ調節レバー150の最浅側の設定位置における動きに対する整地装置160の高さの変化量(上下方向の位置の変化量)より小さくなる様に構成しても良い。
【0076】
この構成の場合、制御部70は、例えば、植付深さ調節レバー150の設定位置が、最深側の所定範囲内であるか否かを判定し、最深側の所定範囲内でないと判定した場合は、整地装置160の高さを、植付深さ調節レバー150の位置の変化に対して線形(例えば、変化率α)に変化させて、植付深さ調節レバー150の設定位置に応じた高さとする。一方、最深側の所定範囲内であると判定した場合は、整地装置160の高さを、植付深さ調節レバー150の位置の変化に対して上記変化率より緩やか(例えば、変化率α/2)に変化させて、植付深さ調節レバー150の設定位置に応じた高さとする。
【0077】
これにより、整地装置160の高さの変化は、植付深さ調節レバー150の設定位置が、最深側の所定範囲内で変更される場合の方が、最深側の所定範囲外で変更される場合に比べて緩慢となり、整地精度が向上する。
【0078】
また、この構成の場合、制御部70は、例えば、植付深さ調節レバー150の設定位置が、最浅側の所定範囲内であるか否かを判定し、最浅側の所定範囲内でないと判定した場合は、整地装置160の高さを、植付深さ調節レバー150の位置の変化に対して線形(例えば、変化率α)に変化させて、植付深さ調節レバー150の設定位置に応じた高さとする。一方、最深側の所定範囲内であると判定した場合は、整地装置160の高さを、植付深さ調節レバー150の位置の変化に対して上記変化率より大きく変化させて、植付深さ調節レバー150の設定位置に応じた高さとする。
【0079】
これにより、整地装置160の高さの変化は、植付深さ調節レバー150の設定位置が、最浅側の所定範囲内で変更される場合の方が、最浅側の所定範囲外で変更される場合に比べて大きくなり、最浅位置でも安定して苗を植付けることが出来る。
【0080】
また、上記実施の形態では、整地装置160を整地装置昇降モータ170(
図3参照)で昇降させる構成について説明したが、これに限らず例えば、整地装置昇降モータ170を用いずに、植付深さ調節レバー150の動きに連動して整地装置160を昇降させる連動機構200(
図7参照)を備えた構成としても良い。この構成の場合、連動機構200は、
図7に示す様に、支持フレーム120の下端部に回動可能に連結されたレバー基部151に対して一端部210aが固定された第1連動アーム210と、一端部220aが第1連動アーム210の他端部210bと回動可能に連結されると共に他端部220bがロータ支持アーム162の後端部162bに回動可能に連結された第2連動アーム220とを備えている。また、支持フレーム120には、左側面視で、第2連動アーム220の時計回り又は反時計回りの動きに連動してロータ支持アーム162の後端部162bが上方又は下方にスライド移動可能な案内溝250が形成されている。ここで、
図7は、整地装置160を昇降させる連動機構200を説明するための概略の左側面模式図である。
【0081】
これにより、例えば、
図7に示す様に、作業者が、植付深さを「浅い」側に設定しようとして植付深さ調節レバー150を時計回り(
図7の矢印C参照)に操作した場合、これと同時に第1連動アーム210が時計回りに回動して、第2連動アーム220の一端部220a側を下後方に引っ張る。第2連動アーム220の他端部220bは、案内溝250にスライド可能に嵌め込まれている後端部162bに対して回動可能に連結されているので、反時計回りに回動(
図7の矢印D参照)すると共に後端部162bを下方(
図7の矢印E参照)にスライド移動させる。これにより、整地装置160は、下方(
図7の矢印E参照)に移動して、整地装置160の高さは「低い」側に設定される(
図5参照)。なお、作業者が、植付深さを「深い」側に設定しようとして植付深さ調節レバー150を反時計回りに操作した場合の各部の動作は、上記の場合の逆の動作になる。
【0082】
よって、
図7の構成によれば、作業者が、植付深さ調節レバー150を所望の位置に設定することにより、整地装置160は、植付深さ調節レバー150の設定位置に応じた高さに連動機構200を介して調整されるので、安価な構成でありながら、常に適切な整地が行えて、均平精度が向上する。
【0083】
また、これにより、整地装置160の高さの調節を作業者が別途行う必要が無いので、作業効率が向上する。
【0084】
また、これにより、例えば、従来装置の場合の様に、作業者が、整地装置の高さの設定を行うことを失念してしまって、植付深さとの対応が不適切な状態で整地を行うことにより、圃場面を深く掘りすぎてしまうという問題も生じない。
【0085】
また、
図7に示す構成では、整地装置160の高さの調節は、作業開始前において、植付深さ調節レバー150の動きに連動させて行われるものであり、植付作業中における整地装置160の高さの制御については行われない場合について説明したが、これに限らず例えば、上述したフロート上下動検知センサ182(
図4参照)と、当該フロート上下動検知センサ182により検知される植付作業中におけるセンターフロート141の前端側の上下動に応じてロータ(
図3の符号161a、161b参照)の高さ(上下方向の位置)を制御するロータ昇降モータ(図示省略)とを備えた構成としても良い。この構成の場合、作業開始前において、作業者が、植付深さ調節レバー150(
図7参照)を所望の位置に設定することにより、整地装置160は、植付深さ調節レバー150の設定位置に応じた高さに連動機構200を介して調整されると共に、植付作業中においては、センターフロート141の前端側の上下動に応じて、上述した苗植付装置100の昇降制御の他に、整地装置160の昇降制御も行う(
図6のステップS104参照)ものである。
【0086】
また、上記実施の形態では、制御部70は、フロート上下動検知センサ182により検知される植付作業中におけるセンターフロート141の前端側の上下動に応じてロータ(
図3の符号161a、161b参照)の高さ(上下方向の位置)を制御する(
図6のステップS104参照)場合について説明したが、これに限らず例えば、圃場の硬軟を検知する硬軟検知センサ(図示省略)をセンターフロート141の前方に配置し、植付作業中における硬軟検知センサにより検知される検知結果に応じてロータ(
図3の符号161a、161b参照)の高さ(上下方向の位置)を制御する構成としても良い。この構成の場合、制御部70は、植付作業中において、硬軟検知センサの検知結果が所定基準に比べて「硬い」か否かを判定し、「硬い」と判定した場合は、ロータ(
図3の符号161a、161b参照)を下方に下げる制御を行い、また、「硬い」と判定しなかった場合(即ち、「軟らかい」と判定した場合)は、ロータ(
図3の符号161a、161b参照)を上方に上げる制御を行う。これにより、均平精度の向上に加えて、フロート後方での植付位置での高さ変化を少なくすることが出来て植付精度を向上させることが出来る。
【0087】
また、上記実施の形態では、整地装置160の整地ロータがエンジン20からの駆動力により回転駆動する構成について説明したが、これに限らず例えば、整地装置160の整地ロータを回転駆動させる電動モータ(図示省略)を備えると共に、後輪5の回転数を検知する後輪回転数検知センサ(図示省略)を設けた構成であっても良い。この構成の場合、制御部70は、後輪回転数検知センサの検知結果(後輪5の回転数)に応じて整地ロータの回転数を変化させる様に、電動モータを制御するものとする。これにより、整地装置をユニットとして後付けすることが出来る。また、整地装置の整地ロータの回転数制御を行うことが出来る。
【0088】
また、電動モータ及び後輪回転数検知センサを備えた上記構成の場合、制御部70は、整地ロータの対地速度を後輪回転数検知センサの検知結果から取得した車速よりも10%速くなる様に制御しても良い。また、当該10%の値を変更可能な可変ボリューム(図示省略)を設けた構成としても良く、その場合、可変ボリュームの設定位置(操作量)に応じて、整地ロータの回転出力を増減させることが出来る。これにより、整地ロータの対地回転速度が固定されていた従来の構成に比べて、泥の多い圃場において泥押しの発生を軽減することが出来る。また、この構成の場合、可変ボリュームの調整範囲の下限、即ち、整地ロータの対地速度の最低値を、後輪回転数検知センサの検知結果から取得した車速とする構成としても良い。
【0089】
また、電動モータ及び後輪回転数検知センサを備えた上記構成の場合、乗用田植が圃場においてスリップした場合の影響を考慮しない場合について説明したが、これに限らず例えば、スリップの影響も考慮できる様に、GNSS(Global Navigation Satellite System)に基づいて地球上での乗用田植機1の位置情報(即ち、座標情報)を取得する位置情報取得装置(図示省略)を備え、当該位置情報取得装置により乗用田植機1の位置情報を検知して、スリップの影響が反映された実際の車速を取得しながら、当該取得した実車速に応じて、整地ロータの回転数を変化させる様に、電動モータを制御する構成としても良い。また、この構成の場合、後輪回転数検知センサ(図示省略)をも備えた構成としても良い。その場合、制御部70は、当該後輪回転数検知センサの検知結果(後輪5の回転数)をも取得しておき、位置情報取得装置の受信アンテナ(図示省略)による人工衛星からの信号電波の受信状況に応じて、電動モータの制御のやり方を切り替えるものとする。
【0090】
即ち、その場合、例えば、制御部70は、位置情報取得装置により乗用田植機1の位置情報を検知して実車速を取得すると共に、後輪回転数検知センサの検知結果(後輪5の回転数)をも取得しておき、上述した人工衛星からの信号電波の受信状況の良否を判定する。そして受信状況が「良好」であると判定した場合には、制御部70は、位置情報取得装置により取得した実車速に対する、整地ロータの対地速度の差分が0となる整地ロータの回転数を決定し、当該決定した回転数で整地ロータを回転させる様に電動モータを制御するものとする。
【0091】
これに対して、その受信状況が「良好」ではないと判定した場合には、例えば、制御部70は、位置情報取得装置により取得した実車速を採用せず、後輪回転数検知センサの検知結果から取得した車速に対する、整地ロータの対地速度の差分が0となる整地ロータの回転数を決定し、当該決定した回転数で整地ロータを回転させる様に電動モータを制御するものとする。
【0092】
これにより、人工衛星からの信号電波の受信状況が悪い場合には、後輪回転数検知センサの検知結果を、位置情報取得装置により取得した実車速の代用とし、また、受信状況が良好な場合には、当該実車速に基づいた均平作業が行える。
【0093】
また、位置情報取得装置を備え、取得した実車速に応じて整地ロータの回転数を変化させる上記構成の場合において、更に、整地ロータを駆動させる上記電動モータの消費電流値(モータ出力電流値)を検知する電流検知器(図示省略)を備え、作業中において、当該電流検知器により検知された検知結果に応じて、整地ロータの高さ(上下方向の位置)を変化させる構成としても良い。この構成の場合、制御部70は、位置情報取得装置による位置情報から取得した実車速に応じた整地ロータ回転数となる様に電動モータを制御すると共に、当該電動モータの消費電流値(モータ出力電流値)を検知しながら、当該検知結果が、無負荷時の200%以上であるか否かを判定する。そして、制御部70は、200%以上であると判定した場合は、整地ロータを昇降させる昇降用モータを駆動し、整地ロータの高さを、作業開始前において植付深さ調節レバー150の設定位置に基づいて自動的に設定されたデフォルト位置よりも上昇させる制御を行い、また、これに対して、200%以上であると判定しなかった場合(200%未満であると判定した場合)は、整地ロータを昇降させる昇降用モータに指令を出力せず、整地ロータの高さを、上記デフォルト位置のまま維持する制御を行うものである。
【0094】
これにより、泥押しなどの発生により整地ロータにおいて回動抵抗が大きい場合、そのまま駆動を続けると電動モータに過負荷電流が流れるので、それを検知することにより、昇降用モータを駆動して、整地ロータの高さをデフォルト位置よりも上昇させて、泥の流れを促すことが出来て、整地ロータの回動抵抗の発生を低減することが出来る。
【0095】
また、整地ロータを回転駆動させる電動モータ及び後輪回転数検知センサを備えた上記構成の場合、制御部70は、乗用田植機が停止状態から走行開始する場合、走行開始と同時に電動モータを駆動させるのではなく、整地ロータを回転駆動させる電動モータの駆動を3パルス分遅らせる構成としても良い。この構成によれば、始動時にトルクの高い整地ロータが乗用田植機の走行開始に先立ち駆動してしまうことが防止出来るので、電動モータを含む整地装置機構が破損することを防止出来る。
【0096】
また、整地ロータを回転駆動させる電動モータ、電動モータの電流検知器、後輪回転数検知センサ、整地ロータを昇降させる昇降用モータ、及び整地ロータの高さ(上下方向の位置)を検知するセンサを備えた上記構成の場合、制御部70は、電流検知器により検知されたモータ消費電流値に応じ、整地ロータの高さを変化させる構成としても良い。この構成では、整地ロータにより泥押しが発生した場合、過負荷状態となり電流検知器により検知されるモータ消費電流値が高くなるので、制御部70が電流検知結果から過負荷状態が発生したと判定した場合(例えば、電流検知結果からモータ消費電流値が無負荷時の200%以上であると判定した場合)、制御部70は、昇降用モータを駆動させ整地ロータを上方に上昇させて、泥の流れを促した後、再び、整地ロータをもとの高さに復帰させるものとする。これにより、電動モータを含む整地装置機構を破損することなく、連続的に自動均平作業を行うことが出来る。
【0097】
また、整地ロータを回転駆動させる電動モータを備えた上記構成の場合、当該電動モータは、メインフレーム7(
図1参照)の後端上部で、リアアクスル付近に配置する構成としても良い。これにより、電動モータの水没を避けると同時に、エンジン20付近に配置されたラジエータ(図示省略)、また、本体に設けられたファン(図示省略)により放熱効果があがる。
【0098】
また、メインフレーム7(
図1参照)の後端上部で、リアアクスル付近に電動モータを配置する上記構成の場合、電動モータから整地ロータに駆動力を伝達するための伝動軸は、芯鞘構造の軸部同士がスプライン嵌合により着脱可能に連結された構成としても良い。この構成の場合、電動モータの出力軸とユニバーサルジョイントにより連結された鞘側の軸部のスプライン穴部の内壁面には樹脂コートが施されており、整地ロータ側に連結された芯側の軸部の先端側が、スプライン穴部に嵌合挿入される構成である。これにより、樹脂コートの介在により、スプライン嵌合部の衝撃を緩衝することが出来て、当該機構を保護出来る。また、樹脂コートの介在により、錆付きを抑えることが出来る。また、錆びた場合でも、芯側の軸部が先に錆びるのでメンテナンスがやり易い。
【0099】
また、メインフレーム7(
図1参照)の後端上部で、リアアクスル付近に電動モータを配置する上記構成の場合、整地ロータの圃場面と接する外周面は、当該整地ロータの左右方向に配置された回動軸芯からの半径距離が長い第1外周面を有する第1ロータ部と、当該回動軸芯からの半径距離が短い第2外周面を有する第2ロータ部とが、当該回動軸芯方向に交互に配置され、且つ、第2ロータ部が、平面視で植込カン131の左右方向の位置に対応する様に構成されている。また、この構成では、上述した6条植えの乗用田植機1の場合、整地ロータの左右方向の両端側には第1ロータ部が一つずつ配置され、その間に、6個の第2ロータ部と5個の第1ロータ部が交互に配置されている。これにより、6個の第2ロータ部により整地された圃場面の高さの方が、第1ロータ部により整地された圃場面の高さに比べて少し高くなり、その少し高くなった圃場面に対して、植込カン131が苗を植付けるので、植え付け後、圃場に水を入れ表土が落ち着いた状態で、理想的な植付状態となる。また、浅植え精度の向上が図れる。
【0100】
なお、次に、植込カン131に対する苗載置台110(
図1参照)の下端部の相対的な位置関係を苗取調節レバー50(
図1参照)の操作により変更することで植込カン131の苗取量を調整する構成について説明する。
【0101】
この構成では、苗取調節レバー50の後端部は、側面視で略逆への字状の苗取フレーム(
図8(a)~
図8(c)参照)の前端側においてボルトで連結され、苗取フレームの後端側を介して苗載置台110側に連結されている。
【0102】
この構成の苗取フレームには、ボルトによる苗取調節レバー50との連結位置を変更出来る様に、レバー取付孔60が予め複数組設けられている。
【0103】
図8(a)は、密播・標準に対応した第1苗取フレーム61の側面図であり、
図8(b)は、標準・大株に対応した第2苗取フレーム62の側面図であり、
図8(c)は、密播・標準・大株に対応した第3苗取フレーム63の側面図である。
【0104】
第1苗取フレーム61は、
図8(a)に示す様に、密播用と標準用のレバー取付孔60を2組備えている。また、第2苗取フレーム62は、
図8(b)に示す様に、標準用と大株用のレバー取付孔60を2組備えている。また、第3苗取フレーム63は、
図8(c)に示す様に、密播と標準用と大株用のレバー取付孔60を3組備えている。
【0105】
これにより、例えば、第3苗取フレーム63の場合、レバー取付孔60が予め3組設けられているので、使用する取付孔60を何れかに組み替えることで、苗取フレーム自体を交換しなくても、苗取量を目的に合わせて変更することが可能となる。
【0106】
なお、密播に対応した取付孔60を使用した場合、苗取量の調節幅は5~15mmとなり、標準に対応した取付孔60を使用した場合、苗取量の調節幅は8~18mmとなり、大株に対応した取付孔60を使用した場合、苗取量の調節幅は11~21mmとなる。
【0107】
次に、苗載置台110(苗タンク)と下側レール310との間の摺動面に供給するグリスの給油について、
図9(a)、
図9(b)を用いて説明する。
【0108】
図9(a)は、苗載置台110の下端側の概略拡大側面図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示す苗載置台110の下端側を図中の矢印G方向から見たときの下側レール310を示す概略図である。
【0109】
下側レール310は、アルミ押し出しにより製造されたものであり、その断面には孔径φ5の貫通孔311(
図9(a)、
図9(b)参照)が設けられており、この貫通孔311にグリスが注入されている。また、貫通孔311は、スライダのすぐ近くに設けられている。
【0110】
また、その孔径φ5の貫通孔311の両端にはM6のタップ加工が施されており、それぞれニップル312が装着されている。なお、ニップル312に代えてボルト313を装着しても良い。
図9(b)では、一方側にニップル312が装着され、他方側にボルト313が装着されている場合を示している。
【0111】
これにより、グリスをスライダに圧送し、直接給油できる。また、グリス使用により、オイルに比べて流出が少ない。また、油膜の耐久性が上がる。また、スライダに孔をあけず、マエイタ320の摺動部に直接給油することが出来る。また、ニップル312を両側に装着したことにより(一方側にニップル312を装着し他方側にボルト313を装着した場合や、ボルト313を両側に装着した場合を含む)、どちら側からでも給油が出来る。
【0112】
尚、ニップル312(又は、ボルト313)は何れか片側にのみ装着する構成でも良い。
【0113】
また、上記の構成(
図9(a)、
図9(b)参照)に限らず例えば、樹脂スライドに貫通孔をあけて、下側レール310とスライダ孔を合わせた構成としても良い。
【0114】
更にまた、上記構成に加えて、孔径φ5の貫通孔311の中央部にロッカクアナツキボルト314(
図10参照)でグリスラインを閉じる構成としても良い。
図10は、
図9(a)に示す苗載置台110の下端側を図中の矢印G方向から見たときの下側レール310であって、ロッカクアナツキボルト314でグリスラインを閉じた構成を示す概略図である。
【0115】
これにより、4個/台のスライダの配置で、両側から2箇所に給油し、中央部はグリスが届かないため、油量を少なく出来る。例えば、6条植えの場合、孔径φ5の貫通孔311の体積は約146ccであり、約40ccの削減が可能となる。
【0116】
次に、図面を用いて、苗載置台110のスライダ給油機構において、ポンプと最初の配管分岐の間にサブタンク410を配置し、そのサブタンク410に空気抜き孔420を設けた場合について説明する(
図11参照)。
図11は、苗載置台110のスライダ給油機構においてサブタンク410を配置した構成を示す概略図である。
【0117】
図11に示す様に、サブタンク410にはオイル量目印ライン430が入れられている。尚、オイル量目印ライン430は無くても良い。
【0118】
これにより、配管内に空気室を1箇所設けることで、オイルの連れ出しを無くすことが出来る。そのため、倉庫や圃場を汚染することが防止出来る。
【0119】
また、空気抜き孔420を設けることで、サブタンク410に一定量オイルをため、決められた量が過不足なく給油出来る。
【0120】
次に、図面を用いて、苗載置台110のスライダ給油機構において、ポンプと最初の配管分岐の間に、3つの突出口を有する別のサブタンク510を配置した場合について説明する(
図12参照)。
図12は、苗載置台110のスライダ給油機構において3つの突出口を有する別のサブタンク510を配置した構成を示す概略図である。なお、
図12において、
図11と同じ構成には同じ符号を付した。
【0121】
3つの突出口の内の、第1突出口521は、サブタンク510の底面部から内部に高さh1だけ突き出して連通されており、第2突出口522は、サブタンク510の底面部から内部に高さh2だけ突き出して連通されており、また、第3突出口523は、サブタンク510の底面部から内部に突き出すことなく連通されている(
図12参照)。ここで、h1>h2の関係があるものとする。
【0122】
第1突出口521は配管長が短い(近い)ものと連結し、第2突出口522は配管長が中間(中間)ものと連結し、第3突出口523は配管長が長い(遠い)ものと連結する。
【0123】
従来は、配管途中のロスの影響で配管長により給油量が一定にならなかったが、上記構成によれば、給油量について、配管長が長いところは多く、短いところは少なく出来るので、結果的に給油量が一定にすることが出来る。
【0124】
なお、上記実施の形態では、本発明の作業車両の一例として6条型の乗用田植機1について説明したが、これに限らず例えば、4条植え或いは8条植えの構成であっても良く、条数に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明によれば、苗の植付け深さに応じた適切な整地が行える作業車両を提供することが出来、例えば、乗用田植機等として有用である。
【符号の説明】
【0126】
1 乗用田植機
2 走行車体
3 昇降リンク装置
4 前輪
5 後輪
100 苗植付装置
110 苗載置台
120 支持フレーム
130 伝動ケース
131 植込カン
141 センターフロート
142 左右のサイドフロート
150 植付深さ調節レバー
160 整地装置
170 整地装置昇降モータ