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特許7040366オフセット印刷インキ用ワニス組成物、オフセット印刷インキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】オフセット印刷インキ用ワニス組成物、オフセット印刷インキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/103 20140101AFI20220315BHJP
   C09D 11/105 20140101ALI20220315BHJP
   C09D 11/06 20060101ALI20220315BHJP
   C09D 11/108 20140101ALI20220315BHJP
【FI】
C09D11/103
C09D11/105
C09D11/06
C09D11/108
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018164110
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2019048971
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2017171864
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸明
(72)【発明者】
【氏名】岸本 雄太
(72)【発明者】
【氏名】上之薗 秀顕
(72)【発明者】
【氏名】四方 亀
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204557(JP,A)
【文献】特開平06-255275(JP,A)
【文献】特開2017-088777(JP,A)
【文献】特開2015-227432(JP,A)
【文献】特開2005-272584(JP,A)
【文献】特開2007-326889(JP,A)
【文献】特開2005-089620(JP,A)
【文献】特開平07-232483(JP,A)
【文献】特開2008-013658(JP,A)
【文献】特開2004-238564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂及びロジン変性石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(A)、ポリカプロラクトン類(B)、並びに、植物油類(C)及び/又は石油系溶剤(D)を含むオフセット印刷インキ用ワニス組成物。
【請求項2】
更にゲル化剤(E)を含む請求項1のオフセット印刷インキ用ワニス組成物。
【請求項3】
(B)成分の重量平均分子量が500~10,000である請求項1又は2のオフセット印刷インキ用ワニス組成物。
【請求項4】
(B)成分の含有量が、(A)成分100重量部に対して、1~12重量部である請求項1~3のいずれかのオフセット印刷インキ用ワニス組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかのオフセット印刷インキ用ワニス組成物を含むオフセット印刷インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷インキ用ワニス組成物、オフセット印刷インキに関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷インキ用ワニス組成物は、一般的にバインダー樹脂及び植物油類、必要に応じて石油系溶剤を混合して調整され、次いで当該ワニス組成物へゲル化剤を添加、混合して調製される(特許文献1)。バインダー樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂等のロジン系樹脂が汎用されており、このようなオフセット印刷インキ用ワニス組成物としては、オフセット印刷インキとした際に優れた乾燥性及び耐ミスチング性を有することに加えて、耐摩擦性も要求されている。
【0003】
耐摩擦性を発揮させる技術としては、ロジンエステル樹脂又はロジン変性フェノール樹脂にポリエチレンワックスを配合したオフセット印刷インキ組成物が知られている(特許文献2)。しかしながら、このような添加剤は、耐摩擦性を向上させる反面、光沢が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-139670号公報
【文献】特開2016-204557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐摩擦性を向上させても、光沢が維持され、更に耐ミスチング性にも優れるオフセット印刷インキを与えるオフセット印刷インキ用ワニス組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討したところ、バインダー樹脂にポリカプロラクトン類を含有したオフセット印刷インキ用ワニス組成物が意外にも耐摩擦性が向上し、且つ光沢を維持することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のオフセット印刷インキ用ワニス組成物及びオフセット印刷インキに関する。
【0007】
1.ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂及びロジン変性石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(A)、ポリカプロラクトン類(B)、並びに、植物油類(C)及び/又は石油系溶剤(D)を含むオフセット印刷インキ用ワニス組成物。
【0008】
2.更にゲル化剤(E)を含む前項1のオフセット印刷インキ用ワニス組成物。
【0009】
3.(B)成分の重量平均分子量が500~10,000である前項1又は2のオフセット印刷インキ用ワニス組成物。
【0010】
4.(B)成分の含有量が、(A)成分100重量部に対して、1~12重量部である前項1~3のいずれかのオフセット印刷インキ用ワニス組成物。
【0011】
5.前項1~4のいずれかのオフセット印刷インキ用ワニス組成物を含むオフセット印刷インキ。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオフセット印刷インキ用ワニス組成物によれば、ポリカプロラクトン類を含有することから、オフセット印刷インキの耐摩擦性を向上させても光沢を維持でき、更に耐ミスチング性に優れた特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のオフセット印刷インキ用ワニス組成物は、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂及びロジン変性石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(A)(以下、(A)成分という)、ポリカプロラクトン類(B)(以下、(B)成分という)、並びに、植物油類(C)(以下、(C)成分という)及び/又は石油系溶剤(D)(以下、(D)成分という)を含むものである。以下、(A)成分について詳細に説明する。
【0014】
(ロジン変性フェノール樹脂)
ロジン変性フェノール樹脂は、ロジン類(a1)(以下、(a1)成分という)、フェノールーホルムアルデヒド縮合物(a2)(以下、(a2)成分という)及びポリオール(a3)(以下、(a3)成分という)の反応生成物である。
【0015】
(a1)成分としては、特に限定されず、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等の天然ロジン;天然ロジンから誘導される重合ロジン;天然ロジンや重合ロジンを不均化または水素添加して得られる安定化ロジン;天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸をディールス・アルダー反応させることにより得られる不飽和酸変性ロジン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いても良い。また、不飽和カルボン酸としては、特に限定されず、例えば、(無水)マレイン酸、フマル酸及び(無水)イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸や、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸の使用量も特に限定されず、通常、原料となるロジン100重量部に対して通常1~30重量部程度であり、不溶物が発生する点から、好ましくは1~10重部程度である。
【0016】
(a2)成分としては、特に限定されず、各種公知のレゾール型フェノール樹脂やノボラック型フェノール樹脂等を使用できる。レゾール型フェノール樹脂としては、フェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)とをF/P(モル比)が通常1~3程度となる範囲内で、塩基性触媒の存在下において、付加・縮合反応させた縮合物等が挙げられる。また、ノボラック型フェノール樹脂としては、F/Pが通常0.5~2程度となる範囲内で、各種酸触媒の存在下において、付加・縮合反応させた縮合物等が挙げられる。また、各縮合物は中和・水洗したものでも良い。また、各縮合物の製造は、水や有機溶剤(キシレン等)の存在下で実施できる。中でも、ロジン変性フェノール樹脂を高分子量化できる観点からレゾール型フェノール樹脂が好ましい。
【0017】
フェノール類としては、特に限定されず、例えば、石炭酸、クレゾール、アミルフェノール、ビスフェノールA、p-t-ブチルフェノール、p-n-オクチルフェノール、p-n-ノニルフェノール、p-n-ドデシルフェノール等が挙げられる。
【0018】
ホルムアルデヒドとしては、特に限定されず、例えば、ホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0019】
塩基性触媒としては、特に限定されず、例えば、有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛等が挙げられる。また、酸性触媒としては、塩酸、硫酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0020】
(a3)成分としては、一分子中に2以上のヒドロキシル基を有する化合物であれば特に限定されず、各種公知のものを使用できる。例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプルパン、トリメチロールエタン等のトリオール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン及びジトリメチロールエタン等のテトラオール等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でもロジン変性フェノール樹脂の物性(軟化点、重量平均分子量等)を制御しやすい点から、トリオール及び/又はテトラオールが好ましい。
【0021】
(a1)成分、(a2)成分、及び(a3)成分の使用量は特に限定されず、ロジン変性フェノール樹脂の高分子量化及び脂肪族炭化水素溶剤に対する溶解性、並びにオフセット印刷インキの耐ミスチング性等の観点より(a1)~(a3)成分の使用量を合計100重量%として、以下のように設定される。
・(a1)成分:通常は41~87重量%程度、好ましくは46~73重量%程度
・(a2)成分:通常は9~50重量%程度、好ましくは22~46重量%程度
・(a3)成分:通常は3~9重量%程度、好ましくは4~8重量%程度
【0022】
(a1)成分と(a3)成分の使用量は、特に限定されないが、オフセット印刷インキの耐ミスチング性及び光沢の点から、(a3)成分の全ヒドロキシル基当量数(OH)と(a1)成分の全カルボキシル基当量数(COOH)との比(OH/COOH)で通常0.5~1.5程度が好ましい。
【0023】
また、酸価(JIS K5601)も特に限定されないが、ロジン変性フェノール樹脂の脂肪族炭化水素溶剤に対する溶解性等の点から、通常5~30mgKOH/g程度、好ましくは10~25mgKOH/gである。
【0024】
また、軟化点(JIS K5601)も特に限定されないが、オフセット印刷インキの耐ミスチング性及び乾燥性等の点から、通常120~200℃程度、好ましくは140~200℃である。
【0025】
また、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算値をいう。以下同様)も特に限定されないが、オフセット印刷インキの耐摩擦性、光沢、乾燥性及びセット性等の点から、10,000~400,000程度、好ましくは20,000~400,000である。
【0026】
本発明におけるロジン変性フェノール樹脂は、(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分を反応させることにより製造することができる。各成分の反応順序は特に限定されず、例えば、全成分を同時に反応させる方法や、(a1)成分と(a2)成分との反応生成物に(a3)成分を反応させる方法、(a1)成分と(a3)成分との反応生成物に(a2)成分を反応させる方法等が挙げられる。また、反応温度は通常100~300℃程度、反応時間は通常1~24時間程度である。また、反応に際して、(a2)成分の製造の際に用いた酸性触媒や塩基性触媒を使用できる。
【0027】
なお、ロジン変性フェノール樹脂の製造においては、後述の(B)成分を反応成分として使用しても良い。
【0028】
(ロジン変性アルキド樹脂)
ロジンアルキド樹脂としては、特に限定されず、例えば、ロジン類とポリオールとを常法で反応させてなるヒドロキシル基含有樹脂に、多塩基酸を常法で反応させてなる樹脂等が挙げられる(具体的な条件等は、特開2014-172962号公報を参照)。
【0029】
ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、(a3)成分として例示したもの等が挙げられる。
【0030】
多塩基酸としては、特に限定されず、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0031】
なお、ロジン変性アルキド樹脂の製造においては、後述の(B)成分を反応成分として使用しても良い。
【0032】
(ロジン変性石油樹脂)
ロジン変性石油樹脂としては、特に限定されず、例えば、ロジン類と、石油樹脂又は極性基含有石油樹脂、並びにポリオールと、必要に応じて、脂肪族モノアルコール、脂肪族ジアルコール、脂肪族モノアミン及び脂肪族モノエポキシから選択される少なくとも1種の化合物とを反応させてなる樹脂等が挙げられる(具体的な条件等は、特許第4639448号公報、特許第5546091号公報等を参照)。
【0033】
石油樹脂としては、特に限定されず、例えば、DCPD系石油樹脂(原料として、例えば、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等);C5系石油樹脂(原料として、例えば、ペンテン、シクロペンテン、ペンタジエン、イソプレン等);C9系石油樹脂(原料として、例えば、メチルブテン、インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン等);DCPD系石油樹脂の原料及びC5系石油樹脂の原料からなる共重合石油樹脂;C5系石油樹脂の原料及び該C9系石油樹脂の原料からなる共重合石油樹脂;DCPD系石油樹脂の原料及びC9系石油樹脂の原料からなる共重合石油樹脂;DCPD系石油樹脂の原料、C5系石油樹脂の原料及び該C9系石油樹脂の原料からなる共重合石油樹脂等が挙げられる。
【0034】
極性基含有石油樹脂とは、前記石油樹脂にカルボキシル基、ヒドロキシル基等が導入されたものをいう。カルボキシル基を導入する場合には、前記石油樹脂を多塩基酸と反応させ、ヒドロキシル基を導入する場合には、アリルアルコール等の分子内に二重結合及びヒドロキシル基を有する化合物と反応させる。なお、多塩基酸としては、前述の段落に記載したもの等が挙げられる。
【0035】
ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、(a3)成分として例示したもの等が挙げられる。
【0036】
脂肪族モノアルコールとしては、特に限定されず、例えば、デシルアルコール、イコサノール、トリアコンタノール、テトラコンタノール等が挙げられる。
【0037】
脂肪族ジアルコールとしては、特に限定されず、例えば、1,2-オクタデカンジオール、デカンジオール、イコサンジオール、トリアコンタンジオール、テトラコンタンジオール等が挙げられる。
【0038】
脂肪族モノアミンとしては、特に限定されず、例えば、デシルアミン、イコシルアミン、トリアコンチルアミン、テトラコンチルアミン、牛脂アルキルアミン、大豆アルキルアミン等が挙げられる。
【0039】
脂肪族モノエポキシとしては、特に限定されず、例えば、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカン、エチルヘキシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0040】
なお、ロジン変性石油樹脂の製造においては、後述の(B)成分を反応成分として使用しても良い。
【0041】
(B)成分は、オフセット印刷インキの耐摩擦性を向上しつつも、光沢を低下させずに維持できるために添加する成分である。
【0042】
(B)成分としては、特に限定されないが、例えば、ε-カプロラクトンの開環重合物(ポリカプロラクトン)、ポリカプロラクトンポリオール、(メタ)アクリロイル基含有ポリカプロラクトン等が挙げられる。
【0043】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリカプロラクトンテトラオール等が挙げられる。市販品としては、例えば、(株)ダイセル製の「プラクセル205」、「プラクセル205AL」、「プラクセル208」、「プラクセル210」、「プラクセル220」(以上、ポリカプロラクトンジオール)、「プラクセル303」、「プラクセル305」、「プラクセル308」、「プラクセル312」、「プラクセル320」(以上、ポリカプロラクトントリオール)、「プラクセル410」(以上、ポリカプロラクトンテトラオール)等が挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリロイル基含有ポリカプロラクトンとしては、特に限定されないが、例えば、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、ω―カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
これらの(B)成分は、単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、オフセット印刷インキの光沢を維持する点から、ポリカプロラクトンポリオールが好ましく、ポリカプロラクトンジオール及び/又はポリカプロラクトントリオールがより好ましい。
【0046】
(B)成分の重量平均分子量としては、特に限定されないが、通常は500~10,000程度である。重量平均分子量が500未満であると、オフセット印刷インキの乳化性が高くなり過ぎ、10,000を上回ると、オフセット印刷インキの光沢が低下しやすい。また同様の点から、好ましくは1,000~10,000程度である。
【0047】
(B)成分の含有量としては、特に限定されないが、オフセット印刷インキの光沢を維持する点から、(A)成分100重量部(固形)に対して、通常1~12重量部程度である。また同様の点から、好ましくは1~10重量部程度である。
【0048】
(C)成分としては、特に限定されず、例えば、アマニ油、桐油、サフラワー油、脱水ヒマシ油、大豆油等の植物油;アマニ油脂肪酸メチル、大豆油脂肪酸メチル、アマニ油脂肪酸エチル、大豆油脂肪酸エチル、アマニ油脂肪酸プロピル、大豆油脂肪酸プロピル、アマニ油脂肪酸ブチル及び大豆油脂肪酸ブチル等の植物油のモノエステル等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、オフセット印刷インキの乾燥性等の点から、分子中に不飽和結合を有する植物油が好ましく、大豆油及び/又はアマニ油がより好ましい。
【0049】
(C)成分の含有量としては、特に限定されないが、オフセット印刷インキの乾燥性等の点から、(A)成分100重量部(固形)に対して、通常10~200重量部程度である。また同様の点から、好ましくは10~150重量部程度である。
【0050】
(D)成分としては、特に限定されないが、例えば、JXTGエネルギー(株)製の石油系溶剤である0号ソルベント、4号ソルベント、5号ソルベント、6号ソルベント、7号ソルベント、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0051】
(D)成分の含有量としては、特に限定されないが、オフセット印刷インキ用ワニス組成物が適切な粘度となり、オフセット印刷インキの耐ミスチング性及び光沢のバランスを保つ点から、(A)成分100重量部(固形)に対して、通常10~200重量部程度である。また同様の点から、好ましくは10~150重量部程度である。
【0052】
さらに、本発明のオフセット印刷インキ用ワニス組成物は、必要に応じてゲル化剤(E)(以下、(E)成分という。)を含んでも良い。
【0053】
(E)成分としては、特に限定されないが、例えば、オクチル酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムジプロポキシドモノアセチルアセテート、アルミニウムジブトキシドモノアセチルアセテート及びアルミニウムトリアセチルアセテート等のアルミニウム系キレート剤が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0054】
本発明のオフセット印刷インキ用ワニス組成物は、上記各成分を混合し、撹拌することにより得られる。撹拌時の温度は特に限定されないが、100~240℃程度であることが好ましい。なお、オフセット印刷インキ用ワニス組成物には、酸化防止剤等の公知の添加剤を配合できる。
【0055】
本発明のオフセット印刷インキは、本発明のオフセット印刷インキ用ワニスを用いたものであり、これに顔料(黄、紅、藍、墨)及び各種公知の添加剤配合し、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等の公知のインキ製造装置を用いて適切なインキ恒数となるよう、練肉・調製することにより得られる。添加剤としては、インキ流動性やインキ表面被膜を改善するための界面活性剤、ワックス等が挙げられる。
【実施例
【0056】
以下、実施例を挙げて、更に本発明を具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。また特段の断りがない限り、「部」、「%」はいずれも重量基準である。
【0057】
(酸価)
JIS K5601に準拠して、測定した。
【0058】
(軟化点)
JIS K5601に準拠して、測定した。
【0059】
(重量平均分子量)
ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)によりテトラヒドロフラン溶媒下で測定したポリスチレン換算値であり、GPC装置としてはHLC-8220(東ソー(株)製)を、カラムとしてはTSK-GELカラム(東ソー(株)製)を用いて得られた測定値で示す。
【0060】
(印刷インキ用ワニス組成物のアマニ油粘度)
33%アマニ油粘度(Pa・s)は、樹脂とアマニ油を1:2の重量比で加熱混合したものについて、日本レオロジー機器(株)製コーン・アンド・プレート型粘度計を用いて25℃で測定した値(Pa・s)である。
【0061】
製造例1-1(オクチルフェノール・ホルムアルデヒド縮合物の製造)
撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、p-n―オクチルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド396部、キシレン584部および水500部を仕込み、撹拌しながら50℃まで昇温した。次いで、同様の反応容器に45%水酸化ナトリウム溶液89部を仕込み、冷却しながら反応系を90℃まで徐々に昇温した後、2時間保温し、更に硫酸を滴下してpHを6付近に調整した。その後、ホルムアルデヒドなどを含んだ水層部を除去し、再度水洗した後に内容物を冷却して、オクチルフェノール・ホルムアルデヒド縮合物の70重量%キシレン溶液を得た。
【0062】
製造例1-2
撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、ノニルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド444部、キシレン604部および水500部を仕込み、撹拌しながら50℃まで昇温した。次いで、同様の反応容器に45%水酸化ナトリウム溶液89部を仕込み、冷却しながら反応系を90℃まで徐々に昇温した後、2時間保温し、更に硫酸を滴下してpHを6付近に調整した。その後、ホルムアルデヒドなどを含んだ水層部を除去し、再度水洗した後に内容物を冷却して、ノニルフェノール・ホルムアルデヒド縮合物の70重量%キシレン溶液を得た。
【0063】
製造例2-1(ロジン変性フェノール樹脂(A-1)の製造)
撹拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、ガムロジン950部を仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、反応系を240℃へ昇温した。続けて、製造例1-1のオクチルフェノール・ホルムアルデヒド縮合物の溶液714部(固形分500部)を6時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、グリセリン84部およびパラトルエンスルホン酸1.0部を添加し、240~280℃の温度範囲内で、酸価が25mgKOH/gとなるまで反応させた。反応終了後、33重量%アマニ油粘度が14Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧することにより、ロジン変性フェノール樹脂(A-1)(酸価:19.1mgKOH/g、軟化点:181.0℃、重量平均分子量:126,000)を得た。
【0064】
製造例2-2(ロジン変性フェノール樹脂(A-2)の製造)
オクチルフェノール・ホルムアルデヒド縮合物の溶液を製造例1-2のノニルフェノール・ホルムアルデヒド縮合物の溶液に変更した以外は、製造例2-1と同様に合成し、ロジン変性フェノール樹脂(A-2)(酸価:20.0mgKOH/g、軟化点:174.0℃、重量平均分子量:150,000)を得た。
【0065】
製造例2-3(ロジン変性フェノール樹脂(A-3)の製造)
製造例2-1と同様の反応容器に、ガムロジン950部を仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、反応系を240℃へ昇温した。続けて、製造例1-1のオクチルフェノール・ホルムアルデヒド縮合物の溶液714部(固形分500部)を6時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、グリセリン84部、ポリカプロラクトン33部およびパラトルエンスルホン酸1.0部を添加し、240~280℃の温度範囲内で、酸価が25mgKOH/gとなるまで反応させた。反応終了後、33重量%アマニ油粘度が14Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧することにより、ロジン変性フェノール樹脂(A-3)(酸価:19.1mgKOH/g、軟化点:178.0℃、重量平均分子量:120,000)を得た。
【0066】
製造例2-4(ロジン変性アルキド樹脂(A-4)の製造)
製造例2-1と同様の反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、フマル酸267部を仕込み、撹拌しながら反応系を230℃まで昇温して1時間保温した後、冷却し、フマル酸変性ロジン(酸価:340mgKOH/g)を得た。 次に、同様の器具を備えた反応容器に、重合ロジン675部、前記のフマル酸変性ロジン86部、およびイソフタル酸57部を仕込み、窒素雰囲気下、撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。その後、ペンタエリスリトール55部およびグリセリン55部を添加して、撹拌しながら反応系を260℃まで昇温して、酸価が30mgKOH/g以下となるまで反応させた後、パラトルエンスルホン酸1部を仕込み、さらに酸価が20mgKOH/g以下となるまで反応させた。その後、33重量%アマニ油粘度が8.0Pa・sとなるように調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却してロジン変性アルキド樹脂(A-4)(酸価18.8mgKOH/g、軟化点155.0℃、重量平均分子量98,000)を得た。
【0067】
製造例2-5(ロジン変性石油樹脂(A-5)の製造)
製造例2-1と同様の反応容器に、DCPD系石油樹脂(商品名:クイントン1325、日本ゼオン(株)製)1,000部を仕込み、窒素雰囲気下で反応系を撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。次いで、無水マレイン酸70部を仕込み、撹拌しながら反応系を230℃まで昇温し3時間保温した後、冷却してカルボキシル基含有石油樹脂(酸価75mgKOH/g、重量平均分子量4,000)を得た。
次に、同様の器具を備えた反応容器に、重合ロジン450部、製造例3で得たフマル酸変性ロジン120部、および前記のカルボキシル基含有石油樹脂298部を仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。その後、ペンタエリスリトール29部およびグリセリン31部を添加し、窒素雰囲気下に撹拌しながら反応系を260℃まで昇温して、酸価が30mgKOH/g以下となるまで反応させた後、パラトルエンスルホン酸1部を仕込み、さらに酸価が20mgKOH/g以下となるまで反応させた。その後、33重量%アマニ油粘度が8.0Pa・sとなるように調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却してロジン変性石油樹脂(A-5)(酸価15.3mgKOH/g、軟化点160.0℃、重量平均分子量58,000)を得た。
【0068】
実施例1(オフセット印刷インキ用ワニス組成物の調製)
(A)成分としてロジン変性フェノール樹脂45部、(B)成分として重量平均分子量10,000のポリカプロラクトン(商品名『プラクセル H1P』、(株)ダイセル製)1部、(C)成分として、大豆油(商品名『大豆白絞油』、日清オイリオ(株)製)15部、及び(D)成分としてAFソルベント7号(JXTGエネルギー(株)製、沸点範囲:259~282℃、芳香族炭化水素含有率:0%)39.5部を200℃で30分間混合溶解した。次にこれを80℃まで冷却した後、アルミニウムジプロポキシドモノアセチルアセテート(商品名:『ケロープEP-2』、ホープ製薬(株)製)(以下、ゲル化剤という)0.5部を加え、200℃まで加熱して1時間ゲル化反応させることにより、オフセット印刷インキ用ワニス組成物を得た。
【0069】
実施例2~14、比較例1~6
表1に示す組成で、オフセット印刷インキ用ワニス組成物をそれぞれ得た。
【0070】
<オフセット印刷インキの調製およびインキ性能試験>
各オフセット印刷インキ用ワニス組成物(以下、ワニス組成物ともいう)を用いて、以下の配合割合で3本ロールミルにより練肉し、タック値が7.5±0.5、スプレッドメーターのフロー値(直径値)が40.0±1.0となるよう適宜調製し、本発明に係るオフセット印刷インキとした。なお、実施例14及び比較例5のワニス組成物については、下記(D-1)成分に変えて、(D-2)成分を使用した。
フタロシアニンブルー(藍顔料) 15部
ワニス組成物 70~75部
(D-1)成分 10~15部
【0071】
(光沢)
オフセット印刷インキ0.4mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)にてアート紙に展色した後、23℃、50%R.H.にて24時間調湿し、60°-60°の反射率を光沢計により測定した。数値が大きいほど、光沢に優れる。
【0072】
(耐摩擦性)
光沢測定のために用意した展色物を、サザーランド型ラブテスター(テスター産業(株)製)を用い、2ポンド、20回の条件で試験した。比較例1の結果を基準に耐摩擦性を相対評価した。
(評価基準)
5 :比較例1と比べて非常に良好
4 :比較例1と比べて良好
3 :比較例1と比べてやや良好
2 :比較例1と同等
1 :比較例1と比べて不良
【0073】
(耐ミスチング性)
オフセット印刷インキ2.6mlをインコメーター((株)東洋精機製作所製)上に展開し、ロール温度30℃、400rpmで1分間、更に1800rpmで2分間回転させ、ロール直下に置いた白色紙上へのインキの飛散度を観察して1~5段階で評価を行った。数値が大きいほど耐ミスチング性が良好である。
(評価基準)
5:白色紙上へのインキの飛散度が少ない
4:白色紙上へのインキの飛散度がやや少ない
3:白色紙上へのインキの飛散度がやや多い
2:白色紙上へのインキの飛散度が多い
1:白色紙上へのインキの飛散度が非常に多い
【0074】
【表1】
【0075】
表1における各成分の記号は、以下の化合物を示す。
<(A)成分>
(A-1)製造例2-1のロジン変性フェノール樹脂
(A-2)製造例2-2のロジン変性フェノール樹脂
(A-3)製造例2-3のロジン変性フェノール樹脂
(A-4)製造例2-4のロジン変性アルキド樹脂
(A-5)製造例2-5のロジン変性石油樹脂
<(B)成分>
(B-1)ポリカプロラクトン(商品名『プラクセル H1P』、(株)ダイセル製、重量平均分子量:10,000)
(B-2)ポリカプロラクトンジオール(商品名『プラクセル 205』、(株)ダイセル製、重量平均分子量:530)
(B-3)ポリカプロラクトントリオール(商品名『プラクセル 305』、(株)ダイセル製、重量平均分子量:550)
(B-4)ポリカプロラクトンジオール(商品名『プラクセル 240』、(株)ダイセル製、重量平均分子量:4,000)
<(C)成分>
(C-1)大豆油(商品名『大豆白絞油』、日清オイリオ(株)製)
(C-2)アマニ油(商品名『NBアマニ油』、日清オイリオ(株)製)
<(D)成分>
(D-1)AFソルベント7号(JXTGエネルギー(株)製、沸点:259~282℃、芳香族炭化水素含有率:0%)
(D-2)AFソルベント4号(JXTGエネルギー(株)製、沸点:240~265℃、芳香族炭化水素含有率:0%)
<(F)成分>
(F-1)ポリエチレンワックス(商品名『パラフィン』、和光純薬工業(株)製)