IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両の後部車体構造 図1
  • 特許-車両の後部車体構造 図2
  • 特許-車両の後部車体構造 図3
  • 特許-車両の後部車体構造 図4
  • 特許-車両の後部車体構造 図5
  • 特許-車両の後部車体構造 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】車両の後部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
B62D25/20 H
B62D25/20 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018179222
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020050030
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】塚本 英行
(72)【発明者】
【氏名】益田 晃義
(72)【発明者】
【氏名】松下 幸治
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀典
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-241393(JP,A)
【文献】特開2010-247795(JP,A)
【文献】特開平05-050952(JP,A)
【文献】特開2003-137137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びた車幅方向に一対のリヤフレームと、
車幅方向に延び、車幅方向の両端部が前記一対のリヤフレームにそれぞれ接合されたリヤクロスメンバと、
前記リヤクロスメンバの前方に設けられ、車幅方向に延びたクロスメンバと、
車両前後方向に延び、前記リヤクロスメンバと前記クロスメンバとを連結する補強部材と、
前記補強部材よりも下方に配置され、前記クロスメンバから前方に延びた構造体と
を備え、
前記補強部材は、前記補強部材の先端部で前記クロスメンバの上面に上下方向に接合されており、
前記補強部材は、車両の前後方向に交差する断面において、閉断面を形成し、
前記補強部材は、前記補強部材の前部において、前方に向かって下方に湾曲するとともに、前方に向かって車幅方向に拡幅している、車両の後部車体構造。
【請求項2】
前記補強部材は、前記補強部材の前部に設けられ、前記クロスメンバの前記上面に沿って延びる補強部材前側フランジ部を備え、
前記補強部材は、前記補強部材前側フランジ部において前記クロスメンバの前記上面に上下方向に接合されている、請求項1に記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
車両前後方向に延び、前記クロスメンバの車幅方向の両端部がそれぞれ連結された一対のサイドシルを備え、
前記クロスメンバは、車幅方向の中央部から車幅方向の外側に向かって下方に傾斜しており、
前記補強部材は、前記クロスメンバの車幅方向の前記中央部に接合されている、請求項1又は2に記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
前記構造体は、車両前後方向に延びるセンタトンネルである、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
車両前後方向に延び、前記クロスメンバと前記構造体とを連結する連結部材を備える、請求項1からのいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
前記補強部材と、前記クロスメンバと、前記連結部材とは、共に接合されている、請求項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項7】
車両前後方向に延びた車幅方向に一対のリヤフレームと、
車幅方向に延び、車幅方向の両端部が前記一対のリヤフレームにそれぞれ接合されたリヤクロスメンバと、
前記リヤクロスメンバの前方に設けられ、車幅方向に延びたクロスメンバと、
車両前後方向に延び、前記リヤクロスメンバと前記クロスメンバとを連結する補強部材と、
前記補強部材よりも下方に配置され、前記クロスメンバから前方に延びた構造体と
を備え、
前記補強部材は、前記補強部材の先端部で前記クロスメンバの上面に上下方向に接合されており、
車両前後方向に延び、前記クロスメンバと前記構造体とを連結する連結部材を備え、
前記補強部材と、前記クロスメンバと、前記連結部材とは、共に接合されている、車両の後部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後部車体構造として、車両の車室に設けられたフロアトンネルと、フロアトンネルの後方に設けられたリヤサイドフレームと、フロアトンネルとリヤサイドフレームとを連結する後部補強フレームとを備えるものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-163470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような車両の後部車体構造において、フロアトンネルの上面と後部補強フレームの上面とが上下方向にオフセットして配置されている場合には、車両の後面衝突(以下、後突という)時に、後突荷重が後部補強フレームからフロアトンネルへと効率的に伝達されにくい。
【0005】
本発明は、車両の後突時の後突荷重を車両の前方に効率よく伝達できる車両の後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1に記載の発明は、車両の後部車体構造であって、車両前後方向に延びた車幅方向に一対のリヤフレームと、車幅方向に延び、車幅方向の両端部が前記一対のリヤフレームにそれぞれ接合されたリヤクロスメンバと、前記リヤクロスメンバの前方に設けられ、車幅方向に延びたクロスメンバと、車両前後方向に延び、前記リヤクロスメンバと前記クロスメンバとを連結する補強部材と、前記補強部材よりも下方に配置され、前記クロスメンバから前方に延びた構造体とを備え、前記補強部材は、前記補強部材の先端部で前記クロスメンバの上面に上下方向に接合されており、前記補強部材は、車両の前後方向に交差する断面において、閉断面を形成し、前記補強部材は、前記補強部材の前部において、前方に向かって下方に湾曲するとともに、前方に向かって車幅方向に拡幅していることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記補強部材は、前記補強部材の前部に設けられ、前記クロスメンバの前記上面に沿って延びる補強部材前側フランジ部を備え、前記補強部材は、前記補強部材前側フランジ部において前記クロスメンバの前記上面に上下方向に接合されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載の発明において、車両前後方向に延び、前記クロスメンバの車幅方向の両端部がそれぞれ連結された一対のサイドシルを備え、前記クロスメンバは、車幅方向の中央部から車幅方向の外側に向かって下方に傾斜しており、前記補強部材は、前記クロスメンバの車幅方向の中央部に接合されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から3のいずれか1項に記載の発明において、前記構造体は、車両前後方向に延びるセンタトンネルであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から4のいずれか1項に記載の発明において、車両前後方向に延び、前記クロスメンバと前記構造体とを連結する連結部材を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の発明において、前記補強部材と、前記クロスメンバと、前記連結部材とは、共に接合されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、車両の車体後部構造であって、車両前後方向に延びた車幅方向に一対のリヤフレームと、車幅方向に延び、車幅方向の両端部が前記一対のリヤフレームにそれぞれ接合されたリヤクロスメンバと、前記リヤクロスメンバの前方に設けられ、車幅方向に延びたクロスメンバと、車両前後方向に延び、前記リヤクロスメンバと前記クロスメンバとを連結する補強部材と、前記補強部材よりも下方に配置され、前記クロスメンバから前方に延びた構造体とを備え、前記補強部材は、前記補強部材の先端部で前記クロスメンバの上面に上下方向に接合されており、車両前後方向に延び、前記クロスメンバと前記構造体とを連結する連結部材を備え、前記補強部材と、前記クロスメンバと、前記連結部材とは、共に接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、後突時に、後突荷重をリヤフレームから、リヤクロスメンバ、補強部材、及びクロスメンバを介して、構造体に伝達するロードパスが形成されている。また、補強部材がクロスメンバの上面に上下方向に接合されているので、補強部材とクロスメンバとの接合部には、補強部材に入力された車両前後方向の後突荷重が接合方向に対する剪断方向の荷重として伝達される。すなわち、補強部材とクロスメンバとの間に引張・圧縮方向に荷重が入力されにくいので、補強部材とクロスメンバとが剥離することを抑制できる。このため、補強部材と構造体とが上下方向にオフセットして配置されている場合であっても、後突時の後突荷重をリヤフレームから車両前方へと効率よく伝達できる。また、補強部材が車両前後方向に交差する断面において、閉断面を形成しているため、補強部材の車両前後方向の強度が向上する。このため、車両の後突時の後突荷重によって補強部材が車両前後方向に変形することを抑制でき、車両の後突時の後突荷重を車両前方へ効果的に伝達できる。また、補強部材が前方に向かって下方に湾曲しているので、補強部材と構造体との間の高低差の差を吸収できる。また、補強部材が前方に向かって車幅方向に拡幅していることで、補強部材が形成する閉断面の断面積が前方に向かって増加するので、補強部材の剛性が向上する。これにより、後突時に補強部材が変形することを抑制しつつ、補強部材と構造体との間の高低差を吸収できる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、補強部材がクロスメンバの上面に沿って延びる補強部材前側フランジ部においてクロスメンバの上面に上下方向に接合されているので、本発明を好適に実施できる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、車両の後突時に補強部材からクロスメンバに車両前後方向の後突荷重が伝達された場合には、クロスメンバがサイドシルに連結されたクロスメンバの両端部を中心として前方へ倒れ易くなる。このため、車両の後突時の車両前後方向の後突荷重がクロスメンバに伝達した場合でも、クロスメンバの潰れ変形が抑制されるので、後突荷重を構造体に効率よく伝達できる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、構造体が、例えばダッシュパネルのような車両前方に配置される他の構成要素と連結されるセンタトンネルであるため、車両の後突時の後突荷重を車両前方へと確実に伝達できる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、連結部材によって、車両の後突時にクロスメンバに伝達される車両前後方向の後突荷重が支持されるとともに、後突荷重が構造体に伝達されるので、車両の後突時の後突荷重を車両前方へ効果的に伝達できる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、補強部材がクロスメンバに加えて連結部材と接合されているため、後突荷重が補強部材からクロスメンバと連結部材とに分散して構造体に伝達されるので、車両の後突時の後突荷重を車両前方へ効果的に伝達できる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、後突時に、後突荷重をリヤフレームから、リヤクロスメンバ、補強部材、及びクロスメンバを介して、構造体に伝達するロードパスが形成されている。また、補強部材がクロスメンバの上面に上下方向に接合されているので、補強部材とクロスメンバとの接合部には、補強部材に入力された車両前後方向の後突荷重が接合方向に対する剪断方向の荷重として伝達される。すなわち、補強部材とクロスメンバとの間に引張・圧縮方向に荷重が入力されにくいので、補強部材とクロスメンバとが剥離することを抑制できる。このため、補強部材と構造体とが上下方向にオフセットして配置されている場合であっても、後突時の後突荷重をリヤフレームから車両前方へと効率よく伝達できる。また、連結部材によって、車両の後突時にクロスメンバに伝達される車両前後方向の後突荷重が支持されるとともに、後突荷重が構造体に伝達されるので、車両の後突時の後突荷重を車両前方へ効果的に伝達できる。また、補強部材がクロスメンバに加えて連結部材と接合されているため、後突荷重が補強部材からクロスメンバと連結部材とに分散して構造体に伝達されるので、車両の後突時の後突荷重を車両前方へ効果的に伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る後部車体構造の斜視図。
図2】実施形態に係る後部車体構造の上面図。
図3図2のIII-III線に沿った断面図。
図4図2のIV-IV線に沿った断面図。
図5図2のV-V線に沿った断面図。
図6】実施形態に係るクロスメンバの車幅方向の中央部付近を示す要部拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る一実施形態を説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各距離の比率等は現実のものとは相違している。
【0024】
図1及び図2を参照すると、本実施形態の後部車体構造を有する車体1は、車室の底面を形成するフロアパネル10と、フロアパネル10の車幅方向両側に接合されており、車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル20とを備える。
【0025】
図3を併せて参照すると、フロアパネル10には、フロアパネル10の車幅方向の中央に配置され、上方に膨出して車両前後方向に延びたセンタトンネル11が設けられている。センタトンネル11は、前方においてダッシュパネル(図示せず)と連結されている。また、センタトンネル11の上面の車幅方向の両側には、車両前後方向に延びるトンネル補強部材12が取り付けられている。トンネル補強部材12は、センタトンネル11と共に車両前後方向に延びる閉断面を構成している。なお、センタトンネル11は、本発明における構造体の一例である。
【0026】
また、フロアパネル10の下面には、センタトンネル11の車幅方向両側に配置され車両前後方向に延びた左右一対のフロアフレーム13が設けられている。フロアフレーム13は、フロアパネル10と共に車両前後方向に延びる閉断面を構成している。
【0027】
サイドシル20は、車幅方向の内側に位置するサイドシルインナ21と、車幅方向の外側に位置するサイドシルアウタ(図示せず)とを有する。サイドシルインナ21と、前記サイドシルアウタとが車幅方向に接合されて車両前後方向に延びており、車両方向前後方向に直交する断面における断面形状が矩形状の閉断面に構成されている。
【0028】
フロアパネル10の後部には、上方に立ち上がるキックアップ部14を介して後方に延びるリヤフロアパネル30が一体的に連設されている。また、リヤフロアパネル30の車幅方向両側には、車両前後方向に延びる左右一対のリヤフレーム40が設けられている。
【0029】
リヤフロアパネル30は、前側に位置するリヤフロア前部31と、リヤフロア前部31に対して後側に位置するリヤフロア後部32とを備える。リヤフロア前部31には、下方に燃料タンク(図示せず)が取り付けられ、上方には、リヤシート(図示せず)が取り付けられるようになっている。また、リヤフロア前部31は、その前端部において、前方に向かって下方に湾曲した形状を有している。リヤフロア後部32は、主に荷室の底面を形成しており、車幅方向の中央部付近が下方に窪んでいる。
【0030】
図4を参照すると、リヤフロア前部31とリヤフロア後部32とは、後方に向かって上方に段上げされた段上げ部33を介して一体に連設されている。また、リヤフロアパネル30は、この断面において、リヤフロア前部31の前側に位置するリヤフロア先端部34を備える。リヤフロア先端部34とリヤフロア前部31とは、リヤフロア先端部34の後端から上方延びた縦壁部35を介して一体に連設されている。リヤフロア先端部34は、センタトンネル11に接合されている。
【0031】
図1及び図2を参照すると、リヤフレーム40は、キックアップ部14からリヤフロアパネル30の後端まで前後方向に延びている。リヤフレーム40は、前端がサイドシル20の後部に連結されている。図5に示すように、リヤフレーム40は、前後方向に直交する断面における断面形状が矩形状の閉断面に構成されている。
【0032】
また、リヤフレーム40には、サスペンションのダンパ(図示せず)が取り付けられるダンパ支持部41が設けられている。リヤフレーム40には、ダンパ支持部41を補強する補強フレーム42が取り付けられている。
【0033】
リヤフロアパネル30には、車幅方向に延びたリヤクロスメンバ50と、リヤクロスメンバ50の前方に間隔を開けて設けられ車幅方向に延びたクロスメンバ60が接合されている。
【0034】
リヤクロスメンバ50は、車幅方向に延び、車幅方向の両側がリヤフレーム40にそれぞれ接合されている。図4を参照すると、リヤクロスメンバ50は、リヤフロアパネル30の段上げ部33に設けられている。リヤクロスメンバ50は、段上げ部33を上側から覆うリヤクロスメンバアッパ51と、段上げ部33を下側から覆うリヤクロスメンバロア52とを有する。
【0035】
リヤクロスメンバアッパ51は、車幅方向に垂直な断面における断面形状が下方に開口したハット形断面に形成されており、リヤフロアパネル30と共に車幅方向に延びる閉断面を構成している。
【0036】
リヤクロスメンバロア52は、車幅方向に垂直な断面における断面形状が上方に開口したハット形断面に形成されており、リヤフロアパネル30と共に車幅方向に延びる矩形状の閉断面を構成している。
【0037】
図1及び図2を参照すると、クロスメンバ60は、リヤクロスメンバ50の前方に設けられており、車幅方向に延びている。クロスメンバ60の車幅方向の両端部は、左右一対のサイドシル20にそれぞれ連結されている。図4を参照すると、クロスメンバ60は、リヤフロアパネル30の縦壁部35に設けられている。
【0038】
クロスメンバ60は、リヤフロアパネル30と共に車幅方向に延びる矩形状の閉断面を構成している。具体的には、クロスメンバ60は、クロスメンバ60の上面であるクロスメンバ上面部61と、クロスメンバ上面部61の前端から下方に延びるクロスメンバ前面部62とを備える。また、クロスメンバ60は、クロスメンバ上面部61の後端から上方に延びたクロスメンバ後側フランジ部63と、クロスメンバ前面部62の下端かつ車幅方向中央の領域から前方に延びるクロスメンバ前側フランジ部64とを備える。クロスメンバ前側フランジ部64は、リヤフロアパネル30のリヤフロア先端部34の形状に沿うように構成されている(図6参照)。クロスメンバ60は、クロスメンバ後側フランジ部63でリヤフロアパネル30の縦壁部35に接合され、クロスメンバ前側フランジ部64でリヤフロアパネル30のリヤフロア先端部34に接合されている。前述したように、リヤフロア先端部34がセンタトンネル11に接合されているため、クロスメンバ60は、リヤフロアパネル30を介してセンタトンネル11に連結されている。
【0039】
また、図3を参照すると、クロスメンバ60は、正面視において上側に凸状である。言い換えれば、クロスメンバ60は、車幅方向の中央から車幅方向の外側に向かって下方に延びている。すなわち、クロスメンバ60のクロスメンバ上面部61は、車幅方向の中央から車幅方向の外側に向かって下方に傾斜している。これにより、クロスメンバ60と後述する補強部材70との接合位置と、クロスメンバ60とサイドシル20との連結位置とは上下方向にオフセットして配置されている。
【0040】
また、図1及び図2を参照すると、リヤフロアパネル30には、車両前後方向に延びてリヤクロスメンバ50とクロスメンバ60とを連結する車幅方向に一対の補強部材70が接合されている。補強部材70の補強部材後端部70aは、リヤクロスメンバ50の前面に連結されており、補強部材70の補強部材先端部70bは、クロスメンバ60のクロスメンバ上面部61に接合されている。補強部材70の補強部材先端部70bは、クロスメンバ60のクロスメンバ上面部61のうち、車幅方向の中央部に接合されている。また、補強部材70は、センタトンネル11よりも上方に配置されている(図3参照)。言い換えれば、センタトンネル11は、補強部材70よりも下方に配置されている。
【0041】
また、図1に示すように、補強部材70は、リヤフロアパネル30の形状に沿って形成されている。補強部材70の補強部材先端部70bは、リヤフロア前部31の縦壁部35(図4に示す)に沿って前方に向かって下方に湾曲している。図2を併せて参照すると、補強部材70の補強部材先端部70bは、前方に向かって車幅方向に拡幅している。
【0042】
図5を参照すると、補強部材70は、車両前後方向に垂直な断面における断面形状が下方に開口したハット形断面に形成されている。補強部材70は、リヤフロアパネル30と共に車両前後方向に延びる閉断面を構成している。前述したように、補強部材70の補強部材先端部70bが、前方に向かって車幅方向の外側に拡幅しているため、補強部材70は、補強部材先端部70bにおいて、リヤフロアパネル30と共に構成する閉断面の断面積が前方に向かって大きくなっている。また、補強部材70は、車両前後方向に渡って車両前後方向に垂直な断面における断面形状が連続している。
【0043】
補強部材70は、補強部材上壁部71と、補強部材上壁部71の車幅方向内側の端部から下方に延びた補強部材内側壁部72と、補強部材上壁部71の車幅方向外側から下方に延びた補強部材外側壁部73とを備える。
【0044】
また、図2に示すように、補強部材70は、平面視においてリヤフロアパネル30と重複する部分に設けられた補強部材本体フランジ部74と、平面視においてクロスメンバ60と重複する部分に設けられた補強部材前側フランジ部75とを備える。
【0045】
補強部材70の補強部材本体フランジ部74は、補強部材内側壁部72の下端、補強部材外側壁部73の下端、及び補強部材上壁部71の後端から補強部材70の外側に向かって延びる板状である。補強部材70の補強部材本体フランジ部74は、リヤフロアパネル30及びリヤクロスメンバ50の前面に沿うように構成されている。補強部材70は、補強部材本体フランジ部74においてリヤクロスメンバ50の前面とリヤフロアパネル30とに接合されている。
【0046】
図6を参照すると、補強部材前側フランジ部75は、補強部材内側壁部72の下端から車幅方向の内側に向かって延びる内側フランジ75aと、補強部材外側壁部73の下端から車幅方向の外側に向かって延びる外側フランジ75bとを備える。補強部材前側フランジ部75は、クロスメンバ60のクロスメンバ上面部61に沿うように構成されている。補強部材70は、補強部材前側フランジ部75でクロスメンバ60のクロスメンバ上面部61と上下方向に接合されている。具体的には、内側フランジ75aと、後述する連結部材80の連結部材後側フランジ部84と、クロスメンバ60のクロスメンバ上面部61とが3枚重ねで上下方向にスポット溶接されている。外側フランジ75bと、クロスメンバ60のクロスメンバ上面部61とが2枚重ねで上下方向にスポット溶接されている。
【0047】
図1を参照すると、本実施形態の車両の車体1は、クロスメンバ60とセンタトンネル11とを連結する連結部材80を備える。連結部材80は、クロスメンバ60とセンタトンネル11との間を筋交い状に連結するように構成されている。
【0048】
図3を参照すると、本実実施形態の連結部材80は、車幅方向に垂直な断面における断面形状が下方に開口したハット形断面に形成されている。具体的には、連結部材80は、前方に向けて下方に傾斜して延びる連結部材上面部81と、連結部材上面部81の車幅方向の両端部から車幅方向の外側に向けて下方に傾斜して延びる一対の連結部材側面部82とを備える。また、図6を参照すると、連結部材80は、センタトンネル11、トンネル補強部材12、リヤフロアパネル30のリヤフロア先端部34、及びクロスメンバ60のクロスメンバ前側フランジ部64と共に車両前後方向に延びる閉断面を構成している。
【0049】
また、連結部材80は、連結部材80の前側に設けられた連結部材前側フランジ部83と、連結部材80の後側に設けられた連結部材後側フランジ部84とを備える。
【0050】
連結部材前側フランジ部83は、連結部材側面部82のそれぞれの下端から車幅方向の外側に延びている板状である。連結部材前側フランジ部83は、センタトンネル11とトンネル補強部材12とともに3枚重ねで上下方向にスポット溶接されている。
【0051】
連結部材後側フランジ部84は、クロスメンバ60のクロスメンバ前側フランジ部64に沿って延びる第1フランジ84aと、クロスメンバ60のクロスメンバ前面部62に沿って延びる第2フランジ84bと、クロスメンバ60のクロスメンバ上面部61に沿って延びる第3フランジ84cとを備える。
【0052】
第1フランジ84aは、クロスメンバ60のクロスメンバ前側フランジ部64に沿うように、連結部材側面部82の下端から車幅方向の外側に向かって延びている。第1フランジ84aは、リヤフロア先端部34とともにクロスメンバ60のクロスメンバ前側フランジ部64を挟むように配置された状態で、3枚重ねで上下方向にスポット溶接されている。
【0053】
第2フランジ84bは、連結部材上面部81の上端及び一対の連結部材側面部82の後端から連結部材80の外側に向かって延びている。第2フランジ84bは、第1フランジ84aの後端から上方に立ち上がるように、第1フランジ84aに連設されている。第2フランジ84bは、クロスメンバ60のクロスメンバ前面部62に車両前後方向にスポット溶接されている。
【0054】
第3フランジ84cは、第2フランジ84bの上端から後方に向かって延びるように、第2フランジ84bに連設されている。前述したように、第3フランジ84cは、クロスメンバ60のクロスメンバ上面部61と補強部材70の内側フランジ75aとの間に挟まれた状態で、3枚重ねで上下方向にスポット溶接される。これにより、クロスメンバ60と、補強部材70と、連結部材80とは、共に接合されている。
【0055】
本実施形態によれば、後突時に、後突荷重をリヤフレーム40から、リヤクロスメンバ50、補強部材70、及びクロスメンバ60を介して、センタトンネル11に伝達するロードパスが形成されている。また、補強部材70がクロスメンバ60のクロスメンバ上面部61に上下方向に接合されているので、補強部材70とクロスメンバ60との接合部には、補強部材70に入力された車両前後方向の後突荷重が接合方向に対する剪断方向の荷重として伝達される。すなわち、補強部材70とクロスメンバ60との間に引張・圧縮方向に荷重が入力されにくいので、補強部材70とクロスメンバ60とが剥離することが抑制される。このため、補強部材70とセンタトンネル11とが上下方向にオフセットして配置されている場合であっても、後突時の後突荷重を補強部材70からセンタトンネル11へと効率よく伝達できる。
【0056】
補強部材70は、クロスメンバ60のクロスメンバ上面部61に沿って延びる補強部材前側フランジ部75においてクロスメンバ60のクロスメンバ上面部61に上下方向に接合されているので、本発明を好適に実施できる。
【0057】
クロスメンバ60と補強部材70との接合位置と、クロスメンバ60とサイドシル20との連結位置とが上下方向にオフセットして配置されているため、車両の後突時に車両前後方向に延びる補強部材70からクロスメンバ60に車両前後方向の後突荷重が伝達された場合には、クロスメンバ60がサイドシル20に連結された両端部を中心として前方へ倒れ易くなる(図1中符号R参照)。このため、車両の後突時の車両前後方向の後突荷重がクロスメンバ60に伝達した場合であっても、クロスメンバ60の潰れ変形が抑制され、後突荷重をセンタトンネル11に効率よく伝達できる。
【0058】
また、センタトンネル11は、ダッシュパネル(図示せず)のような車両前方に配置される他の構成要素と連結されているため、車両の後突時の後突荷重を車両前方へと確実に伝達できる。
【0059】
補強部材70が車両前後方向に交差する断面において、閉断面を形成しているため、補強部材70の車両前後方向の強度が向上する。このため、車両の後突時の後突荷重によって補強部材70が車両前後方向に変形することを抑制でき、車両の後突時の後突荷重を車両前方へ効果的に伝達できる。
【0060】
補強部材70の補強部材先端部70bが前方に向かって下方に湾曲しているので、補強部材70とセンタトンネル11との間の高低差の差を吸収できる。また、補強部材先端部70bが前方に向かって車幅方向に拡幅していることで、補強部材70が形成する閉断面の断面積が車両前方に向かって増加するので、補強部材70の剛性が向上する。これにより、後突時に補強部材70が補強部材先端部70bで変形することを抑制しつつ、補強部材70とセンタトンネル11との間の高低差を吸収できる。
【0061】
連結部材80によって、車両の後突時にクロスメンバ60に伝達される車両前後方向の後突荷重が支持されるとともに、後突荷重がセンタトンネル11に伝達されるので、車両の後突時の後突荷重を車両前方へ効果的に伝達できる。
【0062】
補強部材70は、クロスメンバ60に加えて連結部材80と接合されているため、後突荷重が補強部材70からクロスメンバ60と連結部材80とに分散されてセンタトンネル11に伝達されるので、後突荷重を車両前方へ効果的に伝達できる。
【0063】
また、連結部材80とセンタトンネル11とが上下方向にスポット溶接されているので、連結部材80とセンタトンネル11との間の接合部には、連結部材80に入力された車両前後方向の後突荷重が接合方向に対する剪断方向の荷重として伝達される。すなわち、連結部材80とセンタトンネル11との間に引張・圧縮方向に荷重が入力されにくいので、連結部材80とセンタトンネル11とが剥離することを抑制できる。このため、後突時の後突荷重を連結部材80からセンタトンネル11へと効率よく伝達できる。
【0064】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0065】
例えば、本実施形態では、構造体の一例としてセンタトンネル11を挙げて説明したが、構造体は、センタトンネル11に限定されず、フロアフレーム13のような車両前後方向に延びる他の構造体であってもよい。
【0066】
また、補強部材70は、本実施形態では2つであったが、補強部材70の数はこれに限定されず、1つ又は3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 車体
10 フロアパネル
11 センタトンネル
12 トンネル補強部材
13 フロアフレーム
14 キックアップ部
20 サイドシル
21 サイドシルインナ
30 リヤフロアパネル
31 リヤフロア前部
32 リヤフロア後部
33 段上げ部
34 リヤフロア先端部
35 縦壁部
40 リヤフレーム
41 ダンパ支持部
42 補強フレーム
50 リヤクロスメンバ
51 リヤクロスメンバアッパ
52 リヤクロスメンバロア
60 クロスメンバ
61 クロスメンバ上面部
62 クロスメンバ前面部
63 クロスメンバ後側フランジ部
64 クロスメンバ前側フランジ部
70 補強部材
70a 補強部材後端部
70b 補強部材先端部
71 補強部材上壁部
72 補強部材内側壁部
73 補強部材外側壁部
74 補強部材本体フランジ部
75 補強部材前側フランジ部
75a 内側フランジ
75b 外側フランジ
80 連結部材
81 連結部材上面部
82 連結部材側面部
83 連結部材前側フランジ部
84 連結部材後側フランジ部
84a 第1フランジ
84b 第2フランジ
84c 第3フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6