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特許7040392試料注入装置および試料注入装置の調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】試料注入装置および試料注入装置の調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/18 20060101AFI20220315BHJP
   G01N 30/24 20060101ALI20220315BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G01N30/18 F
G01N30/24 M
G01N1/00 101G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018188400
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2020056719
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】福島 大貴
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-37324(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0288025(US,A1)
【文献】特開平9-210978(JP,A)
【文献】特表2012-519855(JP,A)
【文献】実開平3-30859(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/0-30/96
G01N 1/00-1/44
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に試料を収容するための筒状のシリンジと、
前記シリンジの先端側に取り付けられ、内部に流路が形成されたニードルと、
前記シリンジの内部を直線状に往復移動することにより、前記ニードルの流路を介して、前記シリンジ内に前記試料を吸引または前記シリンジ外に前記試料を吐出するためのプランジャと、
パルス電力に同期して動作するパルスモータにより前記プランジャを駆動するプランジャ駆動部と、
前記パルスモータの動作位置を検出するエンコーダと、
前記プランジャ駆動部の前記パルスモータの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記プランジャの先端が前記シリンジ内の先端側の端部に接触した際に前記エンコーダにより検出された前記動作位置に基づいて、前記シリンジに対する前記プランジャの先端の基準位置を調整するように構成されている、試料注入装置。
【請求項2】
前記エンコーダは、前記パルスモータの回転動作位置をカウント値として検出するように構成されており、
前記制御部は、前記プランジャの先端が前記シリンジ内の先端側の端部に接触した際に、前記エンコーダにより検出された前記カウント値に基づいて前記基準位置を調整するように構成されている、請求項1に記載の試料注入装置。
【請求項3】
前記カウント値は、前記パルスモータの一方側への動作により増加するとともに、前記パルスモータの他方側への動作により減少するように構成されており、
前記制御部は、前記プランジャの先端が前記シリンジの先端側の端部に接触した際に前記カウント値が増加の状態から減少の状態に反転した場合、または、減少の状態から増加の状態に反転した場合の前記カウント値に基づいて、前記基準位置を調整するように構成されている、請求項2に記載の試料注入装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記プランジャの先端が前記シリンジの先端側の端部に接触して、前記カウント値が反転した場合における前記カウント値の反転後の変化量に基づいて、前記基準位置を調整するように構成されている、請求項3に記載の試料注入装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記カウント値の反転後の変化量よりも少ない量だけ前記プランジャの先端が前記シリンジの先端側の端部に接触した際の前記カウント値に近づけるように前記プランジャ駆動部を駆動させて前記プランジャの先端を前記シリンジ内で移動させた位置における前記カウント値を前記基準位置として設定することにより前記基準位置を調整するように構成されている、請求項4に記載の試料注入装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記プランジャ駆動部の前記パルスモータの駆動電流を、前記シリンジ内に前記試料を吸引または前記シリンジ外に前記試料を吐出するために前記プランジャを前記シリンジ内で往復駆動させる通常の状態よりも低下させた状態で、前記プランジャの先端を前記シリンジの先端側の端部に接触させるように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の試料注入装置。
【請求項7】
前記プランジャの先端の位置を光の反射を用いて検出するための光センサをさらに備え、
前記制御部は、前記光センサにより検出された前記プランジャの先端の位置に基づいて前記プランジャの先端の位置を前記基準位置に近づけた後に、前記動作位置に基づいて前記基準位置を調整するように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の試料注入装置。
【請求項8】
内部に試料を収容するための筒状のシリンジと、前記シリンジの先端側に取り付けられ、内部に流路が形成されたニードルと、前記シリンジの内部を直線状に往復移動することにより、前記ニードルの流路を介して、前記シリンジ内に前記試料を吸引または前記シリンジ外に前記試料を吐出するためのプランジャと、パルス電力に同期して動作するパルスモータにより前記プランジャを駆動するプランジャ駆動部と、前記パルスモータの動作位置を検出するエンコーダと、を備える試料注入装置の調整方法であって、
前記プランジャ駆動部の前記パルスモータにより、前記プランジャの先端を前記シリンジ内の先端側の端部に接触させる工程と、
前記エンコーダにより、前記プランジャの先端が前記シリンジ内の先端側の端部に接触した際の前記動作位置を検出する工程と、
検出された前記動作位置に基づいて、前記シリンジに対する前記プランジャの先端の基準位置を調整する工程と、
を備える、試料注入装置の調整方法。
【請求項9】
前記エンコーダは、前記パルスモータの回転動作位置をカウント値として検出するように構成されており、
前記カウント値は、前記パルスモータの一方側への動作により増加するとともに、前記パルスモータの他方側への動作により減少するように構成されており、
前記基準位置を調整する工程は、
前記プランジャの先端が前記シリンジの先端側の端部に接触した際に前記カウント値が増加の状態から減少の状態に反転した場合、または、減少の状態から増加の状態に反転した場合における、前記カウント値の反転後の変化量を取得する工程と、
取得された前記変化量よりも少ない量だけ前記プランジャの先端が前記シリンジの先端側の端部に接触した際の前記カウント値に近づけるように前記プランジャ駆動部を駆動させて前記プランジャを前記シリンジ内で移動させた位置における前記カウント値を前記基準位置として設定することにより前記基準位置を調整する工程を含む、請求項8に記載の試料注入装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料注入装置および試料注入装置の調整方法に関し、特に、パルス電力に同期して動作するパルスモータによりプランジャを駆動する試料注入装置および試料注入装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス電力に同期して動作するパルスモータによりプランジャを駆動する試料注入装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、内部に試料を収容するためのシリンジ(円筒形の筒)と、シリンジの先端側に取り付けられ、内部に流路を有するニードルと、シリンジ内での上下方向への移動により、シリンダ内への試料の吸引およびシリンダ内からの試料の吐出を行うためのプランジャ(棒状のピストン)と、を備えた試料注入装置が開示されている。上記特許文献1に記載の試料注入装置では、シリンジ内でプランジャを上下方向に移動させるプランジャ駆動機構として、パルス電力に同期して動作するステッピングモータ(パルスモータ)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3367319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1に記載のような従来の試料注入装置では、試料の吸引および吐出を行う際に、シリンジに対するプランジャの基準位置(試料の吸引を開始する時点および試料の吐出を終了する時点のシリンジに対するプランジャの先端の位置となる基準の位置)がシリンジのニードル側の端部からずれている場合、ずれた量に応じてプランジャによる試料の吸引・吐出量が意図した容量からずれてしまうことが知られている。したがって、上記特許文献1に記載のような従来の試料注入装置では、プランジャの基準位置を、シリンジ内のニードル側の端部に可能な限り近い位置となるように調整することが要求されている。また、上記特許文献1に記載のような従来の試料注入装置では、試料注入装置に装着されているシリンジが、他のシリンジに交換された場合などのようにシリンジに対してプランジャが取り外された場合には、その都度、シリンジに対するプランジャの基準位置を再度調整する必要がある。
【0006】
そこで、上記特許文献1に記載のような従来の試料注入装置において、パルスモータによりプランジャを駆動してプランジャをシリンジ内のニードル側(先端側)の端部に近づけて、プランジャの基準位置を調整することが考えられる。しかしながら、プランジャがシリンジ内のニードル側の端部に接触した場合には、パルスモータが脱調して(同期が取れなくなり)、パルスモータの回転方向が反転するとともに、プランジャがシリンジ内のニードル側の端部から(たとえば、数パルス分程度の距離だけ)離れてしまう。このため、上記特許文献1に記載のような従来の試料注入装置のようにパルスモータにより駆動するプランジャを備える構成においては、プランジャの基準位置を、シリンジ内のニードル側の端部に可能な限り近い位置となるように、手動によりプランジャを押し込む(移動させる)調整を行う必要があるという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、パルスモータにより駆動するプランジャの基準位置を自動的に調整することが可能な試料注入装置および試料注入装置の調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における試料注入装置は、内部に試料を収容するための筒状のシリンジと、シリンジの先端側に取り付けられ、内部に流路が形成されたニードルと、シリンジの内部を直線状に往復移動することにより、ニードルの流路を介して、シリンジ内に試料を吸引またはシリンジ外に試料を吐出するためのプランジャと、パルス電力に同期して動作するパルスモータによりプランジャを駆動するプランジャ駆動部と、パルスモータの動作位置を検出するエンコーダと、プランジャ駆動部のパルスモータの駆動を制御する制御部と、を備え、制御部は、プランジャの先端がシリンジ内の先端側の端部に接触した際にエンコーダにより検出された上記動作位置に基づいて、シリンジに対するプランジャの先端の基準位置を調整するように構成されている。
【0009】
この発明の第1の局面による試料注入装置では、上記のように、プランジャの先端がシリンジ内の先端側の端部に接触した際のエンコーダにより検出されたパルスモータの動作位置に基づいて、シリンジに対するプランジャの先端の基準位置(試料の吸引を開始する時点および試料の吐出を終了する時点のシリンジに対するプランジャの先端の位置となる基準の位置)を調整する制御部を備える。これにより、プランジャの先端がシリンジ内の先端側の端部に接触することに起因して、パルスモータが脱調することにより、プランジャがシリンジ内のニードル側の端部から離れた場合でも、制御部が、実際にプランジャの先端がシリンジ内の先端側の端部に接触した際にエンコーダにより検出されるパルスモータの動作位置に基づいて基準位置を調整するので、パルスモータにより駆動するプランジャの基準位置(試料の吸引を開始する時点および試料の吐出を終了する時点のシリンジに対するプランジャの先端の位置となる基準の位置)を自動的に調整することができる。
【0010】
上記第1の局面による試料注入装置において、好ましくは、エンコーダは、パルスモータの回転動作位置をカウント値として検出するように構成されており、制御部は、プランジャの先端がシリンジ内の先端側の端部に接触した際に、エンコーダにより検出されたカウント値に基づいて基準位置を調整するように構成されている。このように構成すれば、パルスモータの動作位置(回転動作位置)が、制御部による処理が容易なカウント値として検出されるので、上記基準位置を調整するための制御部による処理を迅速に行うことができる。
【0011】
この場合、好ましくは、上記カウント値は、パルスモータの一方側への動作により増加するとともに、パルスモータの他方側への動作により減少するように構成されており、制御部は、プランジャの先端がシリンジの先端側の端部に接触した際にカウント値が増加の状態から減少の状態に反転した場合、または、減少の状態から増加の状態に反転した場合のカウント値に基づいて、基準位置を調整するように構成されている。このように構成すれば、増加の状態と減少の状態とが反転した場合のカウント値は、パルスモータが脱調してパルスモータの回転方向が反転した際のカウント値(すなわち、プランジャの先端がシリンジの先端側の端部に接触する動作位置)を示しているので、カウント値に基づいて、容易に基準位置を調整することができる。
【0012】
上記カウント値が反転した場合のカウント値に基づいて基準位置を調整する構成において、好ましくは、制御部は、プランジャの先端がシリンジの先端側の端部に接触して、カウント値が反転した場合におけるカウント値の反転後の変化量に基づいて、基準位置を調整するように構成されている。このように構成すれば、変化量に基づいて、適切に、基準位置を調整することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、制御部は、カウント値の反転後の変化量よりも少ない量だけプランジャの先端がシリンジの先端側の端部に接触した際のカウント値に近づけるようにプランジャ駆動部を駆動させてプランジャの先端をシリンジ内で移動させた位置におけるカウント値を基準位置として設定することにより基準位置を調整するように構成されている。このように構成すれば、反転後の変化量よりも少ない量だけ反転前の方向にカウント値を変化させるので、プランジャの先端がシリンジの先端側の端部に接触せず、かつ、プランジャの先端がシリンジの先端側の端部に近付くように、基準位置を容易に調整することができる。
【0014】
上記第1の局面による試料注入装置において、好ましくは、制御部は、プランジャ駆動部のパルスモータの駆動電流を、シリンジ内に試料を吸引またはシリンジ外に試料を吐出するためにプランジャをシリンジ内で往復駆動させる通常の状態よりも低下させた状態で、プランジャの先端をシリンジの先端側の端部に接触させるように構成されている。このように構成すれば、プランジャの先端をシリンジの先端側の端部に接触させる際に、パルスモータのトルクを小さくしてプランジャからシリンジに作用する力(プランジャがシリンジを押す力)を小さくすることができるので、プランジャおよびシリンジに対する機械的な負荷が大きくなるのを抑制することができる。また、プランジャの先端をシリンジの先端側の端部に接触させる際に、プランジャからシリンジに作用する力(プランジャがシリンジを押す力)が大きい場合と異なり、プランジャおよびシリンジに生じる弾性変形量を小さくすることができるので、基準位置の調整に誤差が生じやすくなるのを抑制することができる。
【0015】
上記第1の局面による試料注入装置において、好ましくは、プランジャの先端の位置を光の反射を用いて検出するための光センサをさらに備え、制御部は、光センサにより検出されたプランジャの先端の位置に基づいてプランジャの先端の位置を基準位置に近づけた後に、動作位置に基づいて基準位置を調整するように構成されている。このように構成すれば、光センサを用いて比較的大まかに基準位置に近づけた後、動作位置に基づいて基準位置を比較的精密に調整するので、大まかに基準位置に近付ける動作を行わない場合と比較して、基準位置の調整時間を短縮することができる。
【0016】
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面における試料注入装置の調整方法は、内部に試料を収容するための筒状のシリンジと、シリンジの先端側に取り付けられ、内部に流路が形成されたニードルと、シリンジの内部を直線状に往復移動することにより、ニードルの流路を介して、シリンジ内に試料を吸引またはシリンジ外に試料を吐出するためのプランジャと、パルス電力に同期して動作するパルスモータによりプランジャを駆動するプランジャ駆動部と、パルスモータの動作位置を検出するエンコーダと、を備える試料注入装置の調整方法であって、プランジャ駆動部のパルスモータにより、プランジャの先端をシリンジ内の先端側の端部に接触させる工程と、エンコーダにより、プランジャの先端がシリンジ内の先端側の端部に接触した際の動作位置を検出する工程と、検出された動作位置に基づいて、シリンジに対するプランジャの先端の基準位置を調整する工程と、を備える。
【0017】
この発明の第2の局面による試料注入装置の調整方法では、上記のように、プランジャの先端をシリンジ内の先端側の端部に接触させるとともに、プランジャの先端がシリンジ内の先端側の端部に接触した際のパルスモータの動作位置を検出して、検出された動作位置に基づいて、シリンジに対するプランジャの先端の基準位置(試料の吸引を開始する時点および試料の吐出を終了する時点のシリンジに対するプランジャの先端の位置となる基準の位置)を調整する。これにより、プランジャの先端がシリンジ内の先端側の端部に接触することに起因して、パルスモータが脱調することにより、プランジャがシリンジ内のニードル側の端部から離れた場合でも、制御部が、実際にプランジャの先端がシリンジ内の先端側の端部に接触した際にエンコーダにより検出されるパルスモータの動作位置に基づいて基準位置を調整するので、パルスモータにより駆動するプランジャの基準位置(試料の吸引を開始する時点および試料の吐出を終了する時点のシリンジに対するプランジャの先端の位置となる基準の位置)を自動的に調整することが可能な試料注入装置の調整方法を提供することができる。
【0018】
上記第2の局面による試料注入装置において、好ましくは、エンコーダは、パルスモータの回転動作位置をカウント値として検出するように構成されており、カウント値は、パルスモータの一方側への動作により増加するとともに、パルスモータの他方側への動作により減少するように構成されており、基準位置を調整する工程は、プランジャの先端がシリンジの先端側の端部に接触した際にカウント値が増加の状態から減少の状態に反転した場合、または、減少の状態から増加の状態に反転した場合における、カウント値の反転後の変化量を取得する工程と、取得された変化量よりも少ない量だけプランジャの先端がシリンジの先端側の端部に接触した際のカウント値に近づけるようにプランジャ駆動部を駆動させてプランジャをシリンジ内で移動させた位置におけるカウント値を基準位置として設定することにより基準位置を調整する工程を含む。このように構成すれば、カウント値が反転した場合におけるカウント値の反転後の変化量を取得することによって、プランジャの先端がシリンジの先端側の端部に接触した後に脱調により移動したプランジャの位置を把握することができる。そして、取得された変化量よりも少ない量だけプランジャの先端がシリンジの先端側の端部に接触した際のカウント値に近づけるようにプランジャをシリンジ内で移動させた位置におけるカウント値を基準位置として設定することにより、プランジャの先端がシリンジの先端側の端部に接触せず、かつ、プランジャの先端がシリンジの先端側の端部に近付くように、基準位置を調整することができる
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、パルスモータにより駆動するプランジャの基準位置を自動的に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態による試料注入装置の全体構成を示した図である。
図2】本発明の一実施形態による試料注入装置の制御に関するブロック図である。
図3】本発明の一実施形態による試料注入装置のシリンジ内への試料の吸引を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態による試料注入装置のシリンジ内からの試料の吐出を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態による試料注入装置のパルスモータの回転動作とプランジャの移動との関係を説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態による試料注入装置のプランジャの基準位置の調整におけるプランジャの先端の高さ位置を説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態による試料注入装置のプランジャの基準位置の調整におけるプランジャの先端の高さ位置とエンコーダのカウント値との関係を示した図である。
図8】本発明の一実施形態による試料注入装置のプランジャの基準位置の調整を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1図8を参照して、本発明の一実施形態による試料注入装置100の構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、試料注入装置100は、試料Sを分析するためのガスクロマトグラフ装置900に試料Sを注入するための装置である。試料注入装置100は、ターレット10と、インジェクタ20と、を備えている。
【0024】
ターレット10は、試料S等を収容するためのバイアル11が載置される載置台である。ターレット10には、複数のバイアル11が載置されている。試料注入装置100では、試料Sは、ヘキサン、アセトン等の有機溶媒である。
【0025】
インジェクタ20は、分析対象の試料Sが収容されたバイアル11から試料Sを吸引してガスクロマトグラフ装置900の試料導入部910に試料Sを注入するように構成されている。図3に示すように、インジェクタ20は、シリンジ21と、プランジャ22と、ニードル23と、を含む。
【0026】
シリンジ21は、試料Sを内部に収容可能なように鉛直方向(Z方向)に延びる筒状に形成されている。プランジャ22は、シリンジ21の内部に配置されるとともに、シリンジ21内をZ方向に移動可能に構成されている。プランジャ22は、シリンジ21の内部を直線状に往復移動することにより、ニードル23の流路を介して、シリンジ21内に試料Sを吸引またはシリンジ21外に試料Sを吐出するように構成されている。
【0027】
ニードル23は、シリンジ21の前端側(先端側、Z2側)に取り付けられている。ニードル23には、内部にZ方向に延びる流路が形成されている。ニードル23の流路は、Z1側がシリンジ21と接続されるとともに、前端側(Z2側)には、開口が形成されている。
【0028】
これにより、インジェクタ20では、ニードル23の先端(Z2側)が試料Sに侵入した状態で、プランジャ22をシリンジ21内の前端側(Z2側)(図3の左側の状態)から後端側(Z1側)(図3の右側の状態)に移動させることにより、ニードル23の流路を介して、シリンジ21内に試料Sを吸引して収容すること(試料吸引動作)が可能である。また、図4に示すように、シリンジ21内に試料Sを収容した状態で、プランジャ22をシリンジ21内の後端側(Z1側)(図4の左側の状態)から前端側(Z2側)(図4の右側の状態)に移動させることにより、ニードル23の流路を介して、シリンジ21内に収容した試料Sを吐出する(試料吐出動作)ことが可能である。
【0029】
図3に示すように、試料吸引動作において、シリンジ21内内に吸引される試料Sの量は、プランジャ22をZ2側からZ1側に移動させることにより増加したシリンジ21内の容積と略等しい。また、図4に示すように、試料吐出動作において、シリンジ21内内から吐出される試料Sの量は、プランジャ22をZ1側からZ2側へ移動させることにより減少したシリンジ21内の容積と略等しい。なお、図3および図4では、プランジャ22を、それぞれ、Z2側からZ1側に距離Lだけ移動させた例、および、Z1側からZ2側に距離Lだけ移動させた例を示している。
【0030】
図2に示すように、試料注入装置100は、インジェクタ駆動部31と、プランジャ駆動部32と、エンコーダ33と、制御部34と、フォトセンサ35と、記憶部36と、を備えている。なお、フォトセンサ35は、特許請求の範囲の「光センサ」の一例である。
【0031】
インジェクタ駆動部31は、試料注入装置100において、インジェクタ20(図1参照)を、水平方向および鉛直方向(Z方向)に移動させることが可能に構成されている。具体的には、図1に示すように、インジェクタ駆動部31(図2参照)は、インジェクタ20を、試料吸引位置、貫通動作開始位置、試料吐出位置、等に移動させることが可能である。なお、「試料吸引位置」は、バイアル11内の試料Sをシリンジ21内に吸引する位置である。また、「貫通動作開始位置」は、シリンジ21内に吸引した試料Sをガスクロマトグラフ装置900の試料導入部910に注入するために、(試料導入部910の)ゴム製の蓋部材であるセプタム911を貫通させるための貫通動作を開始する位置である。また、「試料吐出位置」は、シリンジ21内の試料Sを試料導入部910内において吐出する位置である。
【0032】
図2に示すように、プランジャ駆動部32は、パルス電力に同期して動作するパルスモータ32aによりプランジャ22を駆動するように構成されている。図5に示すように、パルスモータ32aの回転動作は、たとえば、ボールネジ機構等により直線動作に変換され、プランジャ22をZ方向に移動させるように構成されている。試料注入装置100では、パルスモータ32aの一方側(A1方向)および他方側(A2方向)への回転動作により、それぞれ、プランジャ22がZ1方向およびZ2方向へ移動する。パルス電力の1パルス分のA1方向への回転角度dAおよびA2方向へ回転角度dAは、それぞれ、プランジャ22のZ1方向への移動量dZおよびZ2方向への移動量dZに対応する。移動量dZおよび移動量dZは、たとえば、0.01mmである。
【0033】
エンコーダ33は、パルスモータ32aの動作位置を検出するためのセンサである。エンコーダ33は、パルスモータ32aの回転速度と回転位置とを検出するように構成されている。エンコーダ33は、パルスモータ32aの回転動作位置をカウント値Cとして検出するように構成されている。具体的には、図5(A)に示すように、カウント値C(図7参照)は、パルスモータ32aのA1方向への回転角度dA分の回転動作により1カウント減少するように構成されている。また、カウント値Cは、パルスモータ32aのA2方向への回転角度dA分の回転動作により、1カウント増加するように構成されている。なお、カウント値Cは、カウンタ33aによりカウントされる。
【0034】
図2に示すように、制御部34は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されたコンピュータである。制御部34は、インジェクタ駆動部31およびプランジャ駆動部32により、それぞれ、シリンジ21(図1参照)およびプランジャ22(図1参照)を移動させる制御を行うように構成されている。すなわち、プランジャ駆動部32は、パルスモータ32aの駆動を制御するように構成されている。
【0035】
本実施形態では、制御部34は、プランジャ22(図1参照)の先端22aがシリンジ21(図1参照)内の先端側(Z2側)の端部21aに接触した際に、エンコーダ33により検出された動作位置に基づいて、シリンジ21に対するプランジャ22の先端22aの基準位置(ゼロ点)を調整するように構成されている。基準位置(ゼロ点)は、試料吸引動作を開始する際および試料吐出動作を終了する際の、シリンジ21に対するプランジャ22の先端22aの高さ位置(図6参照)を意味する。なお、制御部34によるプランジャ22の基準位置の調整動作については後述する。
【0036】
フォトセンサ35は、プランジャ22(図1参照)の先端22aの位置を光の反射を用いて検出するように構成されている。具体的には、フォトセンサ35は、発光部35aと、受光部35bと、を含む。図5(B)に示すように、フォトセンサ35は、高さ位置P0の近傍に設けられており、発光部35aからシリンジ21に向かって水平方向に光を照射する。そして、物体(反射物)が存在する場合に反射された反射光を受光部35bで検出する。これにより、プランジャ22の先端22aの位置が高さ位置P0に存在する否かを検出することが可能である。
【0037】
図2に示すように、記憶部36は、たとえば、不揮発性のメモリまたはハードディスクドライブ(HDD)などを含む。記憶部36には、制御部34の処理に用いられるプログラム等が記憶されている。
【0038】
(基準位置の調整方法)
次に、図6図8を参照しながら、制御部34によるプランジャ22の基準位置(ゼロ点)の調整動作(調整方法)について説明する。
【0039】
本実施形態では、図7に示すように、制御部34は、プランジャ22の先端22aがシリンジ21内の先端側(Z1側)の端部21aに接触した際にカウント値Cが増加の状態から減少の状態に反転した場合のカウント値Cに基づいて、基準位置を調整するように構成されている。
【0040】
詳細には、制御部34は、プランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触して、カウント値Cが反転した場合におけるカウント値Cの反転後の変化量dCに基づいて、基準位置を調整するように構成されている。また、制御部34は、カウント値Cの反転後の変化量dCよりも少ない量だけプランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触した際のカウント値Cに近づけるようにプランジャ22の先端22aをシリンジ21内で移動させた位置におけるカウント値Cを基準位置として設定することにより基準位置を調整するように構成されている。
【0041】
具体的には、まず、図6(A)に示すように、プランジャ駆動部32により、プランジャ22を所定の位置(高さ位置P0)まで移動させる(図8のステップS1)。なお、プランジャ22が高さ位置P0に位置しているか否かは、フォトセンサ35を用いて検出される。図7に示すように、プランジャ22の先端22aが高さ位置P0に位置している場合、エンコーダ33のカウント値Cは、カウント値Cとなる。そして、本実施形態では、制御部34は、フォトセンサ35により検出されたプランジャ22の先端22aの位置に基づいてプランジャ22の先端22aの位置を基準位置に近づけた後(プランジャ22の先端22aを高さ位置P0まで移動させた後)に、後述するように、パルスモータ32aの動作位置に基づいて基準位置を調整するように構成されている。
【0042】
次に、図6(B)に示すように、プランジャ駆動部32のパルスモータ32aにより、プランジャ22をZ2方向へ移動(下降)させて、プランジャ22の先端22aをシリンジ21内の先端側の端部21aに接触させる(図8のステップS2)。本実施形態では、制御部34は、プランジャ駆動部32のパルスモータ32aの駆動電流を、通常の状態よりも低下させた状態で、プランジャ22の先端22aをシリンジ21の先端側の端部21aに接触させるように構成されている。なお、パルスモータ32aの駆動電流の「通常の状態」とは、シリンジ21内に試料Sを吸引またはシリンジ21外に試料Sを吐出するためにプランジャ22をシリンジ21内で往復駆動させる場合の状態である。
【0043】
次に、エンコーダ33により、プランジャ22の先端22aがシリンジ21内の先端側の端部21aに接触した際の動作位置を検出する(図8のステップS3)。後述するように、プランジャ22の先端22aがシリンジ21内の先端側の端部21aに接触した際の動作位置は、カウント値Cが反転する直前のカウント値Cとして検出される。なお、図7に示すように、プランジャ22の先端22aが高さ位置P1に位置している(プランジャ22の先端22aをシリンジ21の先端側の端部21aに接触している)場合、エンコーダ33のカウント値Cは、(カウント値Cよりも大きい)カウント値Cとなる。
【0044】
ここで、プランジャ22がシリンジ21内のニードル23側の端部21aに接触した場合、パルスモータ32aが脱調する(同期が取れなくなる)。この場合、図6(C)に示すように、パルスモータ32aの回転方向が反転することに起因して、プランジャ22がシリンジ21内のニードル23側の端部21aから離れるように反対側(Z1側)に移動する。これにより、図7に示すように、エンコーダ33により検出されたカウント値Cは、増加の状態から減少の状態に反転する。具体的には、エンコーダ33のカウント値Cは、プランジャ22の下降開始時のカウント値C(高さ位置P0)から、プランジャ22の下降に伴って増加する。そして、エンコーダ33のカウント値Cは、パルスモータ32aの回転方向が反転することにより、カウント値C(高さ位置P1)において、増加の状態から減少の状態に反転する。なお、高さ位置P1におけるカウント値Cは、記憶部36(図2参照)に記憶される。
【0045】
図6(C)に示すように、パルスモータ32aの回転方向が反転することにより、プランジャ22の移動方向がZ2方向からZ1方向へ変化した後、プランジャ22が高さ位置P0から暫くZ1方向に進んだ位置(高さ位置P2)で停止する。図7に示すように、プランジャ22の先端22aが高さ位置P2に位置している場合、エンコーダ33のカウント値Cは、(カウント値Cよりも小さい)カウント値Cとなる。なお、高さ位置P2におけるカウント値Cは、記憶部36(図2参照)に記憶される。
【0046】
次に、図7に示すように、制御部34は、プランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触した際にカウント値Cが増加の状態から減少の状態に反転した場合における、カウント値Cの反転後の変化量dCを取得する(図8のステップS4)。具体的には、カウント値C(高さ位置P1)からカウント値C(高さ位置P2)までのカウント値Cの変化量dC(4カウント)を取得する。
【0047】
次に、図6(D)に示すように、制御部34(図2参照)は、取得された変化量dC(4カウント)よりも少ない量(3カウント)だけプランジャ22の先端22aが、シリンジ21の先端側(Z2側)の端部21aに接触した際のカウント値Cに近づけるように、プランジャ駆動部32を駆動させる(図8のステップS5)。これにより、プランジャ22の先端22aは、(パルスモータ32aの回転方向が反転した後に停止した際の)高さ位置P2よりも(シリンジ21内の先端側の端部21aに接触した際の)高さ位置P1に近い高さ位置P2に移動する。この場合、図7に示すように、エンコーダ33のカウント値Cは、カウント値Cから(カウント値Cよりも大きく、かつ、カウント値Cよりも小さい)カウント値CN-1に変化する。
【0048】
そして、制御部34は、パルスモータ32aの励磁をオフにする制御を行う。この状態で、制御部34は、カウント値CN-1(高さ位置P3)を取得するともに、このカウント値CN-1を基準位置(ゼロ点)のカウント値Cとして設定する(図8のステップS6)。これにより、制御部34は、基準位置(ゼロ点)の調整動作を終了する。
【0049】
なお、上記フォトセンサ35を用いて、シリンジ21の交換後、プランジャ22の基準位置を自動的に調整することも考えられる。しかしながら、フォトセンサ35の器差(組み付けによる誤差)を考慮して、ある程度シリンジ21内のニードル23側の端部21aからZ2側に離れた高さ位置にフォトセンサ35を設ける必要がある。したがって、フォトセンサ35を、シリンジ21内のニードル23側の端部21aに限りなく近い位置に設けることは困難である。このため、フォトセンサ35を用いてプランジャ22の基準位置を自動的に調整した場合、エンコーダ33のカウント値Cに基づいて基準位置を調整する本実施形態のように、精度よく基準位置を調整することは困難である。
【0050】
(実施形態の装置の効果)
本実施形態の装置では、以下のような効果を得ることができる。
【0051】
本実施形態では、上記のように、試料注入装置100は、プランジャ22の先端22aがシリンジ21内の先端側の端部21aに接触した際のエンコーダ33により検出されたパルスモータ32aの動作位置に基づいて、シリンジ21に対するプランジャ22の先端22aの基準位置(試料Sの吸引を開始する時点および試料の吐出を終了する時点のシリンジ21に対するプランジャ22の先端の位置となる基準の位置)を調整する制御部34を備える。これにより、プランジャ22の先端22aがシリンジ21内の先端側の端部21aに接触することに起因して、パルスモータ32aが脱調することにより、プランジャ22がシリンジ21内のニードル23側の端部21aから離れた場合でも、制御部34が、実際にプランジャ22の先端22aがシリンジ21内の先端側の端部21aに接触した際にエンコーダ33により検出されるパルスモータ32aの動作位置に基づいて基準位置を調整するので、パルスモータ32aにより駆動するプランジャ22の基準位置(試料Sの吸引を開始する時点および試料の吐出を終了する時点のシリンジ21に対するプランジャ22の先端の位置となる基準の位置)を自動的に調整することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、エンコーダ33を、パルスモータ32aの回転動作位置をカウント値Cとして検出するように構成する。そして、制御部34を、プランジャ22の先端22aがシリンジ21内の先端側の端部21aに接触した際に、エンコーダ33により検出されたカウント値Cに基づいて基準位置を調整するように構成する。これにより、パルスモータ32aの動作位置(回転動作位置)が、制御部34による処理が容易なカウント値Cとして検出されるので、基準位置を調整するための制御部34による処理を迅速に行うことができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、制御部34を、プランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触した際にカウント値Cが増加の状態から減少の状態に反転した場合のカウント値Cに基づいて、基準位置を調整するように構成する。これにより、増加の状態と減少の状態とが反転した場合のカウント値Cは、パルスモータ32aが脱調してパルスモータ32aの回転方向が反転した際のカウント値C(すなわち、プランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触する動作位置)を示しているので、カウント値Cに基づいて、容易に基準位置を調整することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、制御部34を、プランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触して、カウント値Cが反転した場合におけるカウント値Cの反転後の変化量dCに基づいて、基準位置を調整するように構成する。これにより、変化量dCに基づいて、適切に、基準位置を調整することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、制御部34を、カウント値Cの反転後の変化量dCよりも少ない量だけプランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触した際のカウント値Cに近づけるようにプランジャ22駆動部を駆動させるように構成する。また、制御部34を、プランジャ22駆動部を駆動させてプランジャ22の先端22aをシリンジ21内で移動させた位置におけるカウント値Cを基準位置として設定することにより基準位置を調整するように構成する。これにより、反転後の変化量dCよりも少ない量だけ反転前の方向にカウント値Cを変化させるので、プランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触せず、かつ、プランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに近付くように、基準位置を容易に調整することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、制御部34を、プランジャ22駆動部のパルスモータ32aの駆動電流を通常の状態よりも低下させた状態で、プランジャ22の先端22aをシリンジ21の先端側の端部21aに接触させるように構成する。パルスモータ32aの駆動電流の通常の状態は、シリンジ21内に試料Sを吸引またはシリンジ21外に試料Sを吐出するためにプランジャ22をシリンジ21内で往復駆動させる場合の状態である。これにより、プランジャ22の先端22aをシリンジ21の先端側の端部21aに接触させる際に、パルスモータ32aのトルクを小さくしてプランジャ22からシリンジ21に作用する力(プランジャ22がシリンジ21を押す力)を小さくすることができるので、プランジャ22およびシリンジ21に対する機械的な負荷が大きくなるのを抑制することができる。また、プランジャ22の先端22aをシリンジ21の先端側の端部21aに接触させる際に、プランジャ22からシリンジ21に作用する力(プランジャ22がシリンジ21を押す力)が大きい場合と異なり、プランジャ22およびシリンジ21に生じる弾性変形量を小さくすることができるので、基準位置の調整に誤差が生じやすくなるのを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、制御部34を、フォトセンサ35により検出されたプランジャ22の先端22aの位置に基づいてプランジャ22の先端22aの位置を基準位置に近づけた後に、動作位置に基づいて基準位置を調整するように構成する。これにより、フォトセンサ35を用いて比較的大まかに基準位置に近づけた後、動作位置に基づいて基準位置を比較的精密に調整するので、大まかに基準位置に近付ける動作を行わない場合と比較して、基準位置の調整時間を短縮することができる。
【0058】
(実施形態の調整方法の効果)
本実施形態の調整方法では、以下のような効果を得ることができる。
【0059】
本実施形態では、上記のように、プランジャ22の先端22aをシリンジ21内の先端側の端部21aに接触させるとともに、プランジャ22の先端22aがシリンジ21内の先端側の端部21aに接触した際のパルスモータ32aの動作位置を検出して、検出された動作位置に基づいて、シリンジ21に対するプランジャ22の先端22aの基準位置(試料Sの吸引を開始する時点および試料Sの吐出を終了する時点のシリンジ21に対する22の先端22aの位置となる基準の位置)を調整する。これにより、プランジャ22の先端22aがシリンジ21内の先端側の端部21aに接触することに起因して、パルスモータ32aが脱調することにより、プランジャ22がシリンジ21内のニードル23側の端部21aから離れた場合でも、制御部34が、実際にプランジャ22の先端22aがシリンジ21内の先端側の端部21aに接触した際にエンコーダ33により検出されるパルスモータ32aの動作位置に基づいて基準位置を調整するので、パルスモータ32aにより駆動するプランジャ22の基準位置(試料Sの吸引を開始する時点および試料Sの吐出を終了する時点のシリンジ21に対する22の先端22aの位置となる基準の位置)を自動的に調整することができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、基準位置を調整する工程は、プランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触した際にカウント値Cが増加の状態から減少の状態に反転した場合、または、減少の状態から増加の状態に反転した場合における、カウント値Cの反転後の変化量dCを取得する工程と、取得された変化量dCよりも少ない量だけプランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触した際のカウント値Cに近づけるようにプランジャ22駆動部を駆動させてプランジャ22をシリンジ21内で移動させた位置におけるカウント値Cを基準位置として設定することにより基準位置を調整する工程を含む。これにより、カウント値Cが反転した場合におけるカウント値Cの反転後の変化量dCを取得することによって、プランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触した後に脱調により移動したプランジャ22の位置を把握することができる。そして、取得された変化量dCよりも少ない量だけプランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触した際のカウント値Cに近づけるようにプランジャ22をシリンジ21内で移動させた位置におけるカウント値Cを基準位置として設定することにより、プランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに接触せず、かつ、プランジャ22の先端22aがシリンジ21の先端側の端部21aに近付くように、基準位置を調整することができる
【0061】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0062】
たとえば、上記実施形態では、パルスモータ32aの1パルス分の回転動作により、カウント値Cが1カウントだけ増加または減少するように構成したが本発明はこれに限られない。本発明では、パルスモータ32aの2パルス分以上の回転動作により、カウント値Cが1カウントだけ増加または減少するように構成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、カウント値Cが増加の状態から減少の状態に反転した場合のカウント値Cに基づいて基準位置を調整する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、カウント値が減少の状態から増加の状態に反転した場合のカウント値に基づいて基準位置を調整してもよい。なお、その場合、プランジャの先端がシリンジのニードル側の端部に近付く方向に移動する場合に、エンコーダにより検出されるカウント値が減少する構成となる。
【0064】
また、上記実施形態では、カウント値Cが反転した場合におけるカウント値Cの反転後の変化量が4カウントである例を示したが、本発明はこれに限られない。カウント値Cの反転後の変化量は、パルスモータの種類、プランジャおよびシリンジの形状(大きさ)などによって異なる。
【0065】
また、上記実施形態では、フォトセンサ35により検出されたプランジャ22の先端22aの位置に基づいて基準位置を調整した後に、動作位置に基づいて基準位置を調整する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、フォトセンサによる基準位置の調整を行わずに、動作位置のみに基づいて基準位置を調整してもよい。
【符号の説明】
【0066】
21 シリンジ
21a (シリンジの先端側の)端部
22 プランジャ
22a プランジャの先端
23 ニードル
32 プランジャ駆動部
32a パルスモータ
33 エンコーダ
34 制御部
35 フォトセンサ(光センサ)
100 試料注入装置
C カウント値
dC (カウント値の)変化量
S 試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8