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▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】ステータの検査方法及び検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20220315BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20220315BHJP
   G01N 27/20 20060101ALI20220315BHJP
   H01F 41/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G01R31/52
G01N27/04 Z
G01N27/20 A
H01F41/00 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018190559
(22)【出願日】2018-10-08
(65)【公開番号】P2020060399
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 健介
(72)【発明者】
【氏名】安谷屋 拓
(72)【発明者】
【氏名】平野 泰三
(72)【発明者】
【氏名】杉本 亘
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-202339(JP,A)
【文献】特開2010-281653(JP,A)
【文献】実開昭60-015658(JP,U)
【文献】米国特許第05287726(US,A)
【文献】特開2018-191473(JP,A)
【文献】米国特許第08093908(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/50-31/74、
31/327-31/34、
H02K 11/00-11/40、
15/00-15/02、
15/04-15/16、
H01F 41/00-41/04、
41/08、
41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆導線からなるコイルを有するステータを密閉された検査室内に収納し、電気伝導性を有する検査液を前記検査室内に供給して前記検査液で前記ステータを浸漬し、前記ステータからの前記検査液を介した漏電を検査するステータの検査方法において、
前記検査室に供給する前の前記検査液を減圧下で管理することを特徴とするステータの検査方法。
【請求項2】
記検査室内に密閉状態で前記ステータを収納する収納工程と、
前記収納工程後、前記検査室内を減圧する減圧工程と、
前記減圧工程後、前記検査液に前記ステータを浸漬する浸漬工程と、
前記浸漬工程後、前記ステータからの前記検査液を介した漏電を検査する検査工程とを有する請求項1記載のステータの検査方法。
【請求項3】
前記検査工程後、前記検査液を前記検査室から回収する回収工程を備えている請求項1又は2記載のステータの検査方法。
【請求項4】
前記ステータは、前記コイルと、前記コイルから延出された前記絶縁被覆導線からなるリードと、前記リードが電気的に接続されるターミナルと、前記ターミナルを絶縁状態で収容するクラスタブロックとを有するとともに、前記クラスタブロックには前記クラスタブロックの内外を連通する均圧通路が形成されている請求項1乃至3のいずれか1項記載のステータの検査方法。
【請求項5】
絶縁被覆導線からなるコイルを有するステータの検査システムであって、
内部に密閉状態で前記ステータを収納可能であり、電気伝導性を有する検査液によって前記ステータを浸漬可能な検査室が形成されたチャンバと、
前記検査室と減圧通路によって連通し、前記検査室を減圧可能な減圧装置と、
前記検査室と液体供給通路によって連通し、前記検査液を貯留する液体タンクとを備え、
前記検査室に供給する前の前記検査液は減圧下で管理されていることを特徴とするステータの検査システム。
【請求項6】
前記減圧通路を開閉可能な第1開閉弁と、
前記液体供給通路を開閉可能な第2開閉弁と、
少なくとも前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を制御する制御装置と、
前記ステータからの前記検査液を介した漏電を検査する検査装置とを備え、
前記制御装置は、前記ステータが収納された前記検査室内に前記検査液がない状態で、前記第2開閉弁を閉じるとともに前記第1開閉弁を開き、
前記検査室が所定の真空度になった時点で、前記第1開閉弁を閉じるとともに前記第2開閉弁を開き、
前記検査室内で前記ステータが前記検査液によって浸漬された時点で、前記第2開閉弁を閉じ、かつ前記検査装置を作動させる請求項5記載のステータの検査システム。
【請求項7】
前記検査室は液体排出通路に連通し、
前記液体排出通路を開閉可能な第3開閉弁を備え、
前記制御装置は、前記検査装置の作動後、前記第3開閉弁を開き、
前記第3開閉弁を閉じて前記チャンバを開放させる請求項6記載のステータの検査システム。
【請求項8】
前記液体排出通路には、前記検査液をろ過するろ過装置が設けられている請求項7記載のステータの検査システム。
【請求項9】
前記液体排出通路は前記液体タンクに連通している請求項7又は8記載のステータの検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの検査方法及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等を構成するステータはコイルを有し、コイルは絶縁被覆導線からなっている。絶縁被覆導線の具体例は、導線としての銅線にエナメルからなる絶縁層が被覆されたエナメル線である。絶縁被覆導線の絶縁層にピンホール、傷等の目視不能な欠陥があると、電気伝導性のある雰囲気でコイルに短絡を生じ、モータ等の本来の機能が損なわれてしまう。
【0003】
特許文献1には、このようなステータの検査方法及び検査システムが開示されている。この検査方法及び検査システムでは、まず検査室を有するチャンバを用意し、電気伝導性を有する検査液を検査室内に供給する。特許文献1では、検査液として、フッ素系不活性液体とイソプロピルアルコール等の導電性液体との混合液を採用している。そして、検査室内にステータを収納し、検査液によってステータを浸漬する。この後、漏れ電流量を測定することにより、ステータからの検査液を介した漏電を検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-202339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、発明者らの試験結果によれば、検査液は、大気に晒されることにより、電気伝導率が変化してしまう。
【0006】
すなわち、発明者らは、検査液としての蒸留水を所定の真空中に放置した場合と、同じ蒸留水を大気中に放置した場合とにおいて、放置時間(分)と電気伝導率(μS/cm)との関係を求めた。この結果、図1が得られた。図1に示されるように、検査液は大気に晒されることにより、電気伝導率が変化してしまう。この理由は、大気に検査液の成分が揮発したり、大気中の不純物が検査液に混入したり、大気中の二酸化炭素が検査液に含まれたりするからである。
【0007】
この場合、基準となる絶縁抵抗値や漏れ電流量が変化することから、高い検査精度を確保できず、検査時間もばらついてしまう。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ステータの良否を高い検査精度かつ安定した時間で行い得るステータの検査方法及び検査システムを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のステータの検査方法は、絶縁被覆導線からなるコイルを有するステータを密閉された検査室内に収納し、電気伝導性を有する検査液を前記検査室内に供給して前記検査液で前記ステータを浸漬し、前記ステータからの前記検査液を介した漏電を検査するステータの検査方法において、
前記検査室に供給する前の前記検査液を減圧下で管理することを特徴とする。
【0010】
本発明の検査方法では、検査室に供給する前の検査液を減圧下で管理しているため、検査液が大気に晒され難い。このため、検査液は、成分の揮発を生じたり、大気中の不純物が混入したり、大気中の二酸化炭素が含まれたりし難く、電気伝導率が変化し難い。このため、基準となる絶縁抵抗値や漏れ電流量が変化し難く、高い検査精度を確保できるとともに、検査時間も安定する。
【0011】
したがって、本発明のステータの検査方法によれば、ステータの良否を高い検査精度かつ安定した時間で行い得る。
【0012】
本発明の検査方法は、査室内に密閉状態でステータを収納する収納工程と、収納工程後、検査室内を減圧する減圧工程と、減圧工程後、検査液にステータを浸漬する浸漬工程と、浸漬工程後、ステータからの検査液を介した漏電を検査する検査工程とを有することが好ましい。
【0013】
この場合、収納工程、減圧工程、浸漬工程及び検査工程の順に行なうため、減圧工程時に検査液の成分が揮発することはなく、検査毎に検査液の電気伝導率が変化し難い。
【0014】
また、ステータを収納した検査室の減圧工程を行なった後で浸漬工程を行なうことから、検査液を供給するだけでコイルを含むステータの内部まで検査液を迅速に浸透させることができる。このため、従来よりも短時間で所定の真空度を実現できる。また、検査液を減圧工程に供さないことから、検査時間が安定する。
【0015】
検査工程後、検査液を検査室から回収する回収工程を備えていることが好ましい。この場合、回収した検査液の電気伝導率を確認又は調整し、検査液を再利用することができる。
【0016】
ステータは、絶縁被覆導線からなるコイルと、コイルから延出された絶縁被覆導線からなるリードと、リードが電気的に接続されるターミナルと、ターミナルを絶縁状態で収容するクラスタブロックとを有するとともに、クラスタブロックにはクラスタブロックの内外を連通する均圧通路が形成されているものであり得る。この場合、均圧通路が形成されても、ステータの良否を高い検査精度かつ短時間で行い得る。
【0017】
本発明のステータの検査システムは、絶縁被覆導線からなるコイルを有するステータの検査システムであって、
内部に密閉状態で前記ステータを収納可能であり、電気伝導性を有する検査液によって前記ステータを浸漬可能な検査室が形成されたチャンバと、
前記検査室と減圧通路によって連通し、前記検査室を減圧可能な減圧装置と、
前記検査室と液体供給通路によって連通し、前記検査液を貯留する液体タンクとを備え、
前記検査室に供給する前の前記検査液は減圧下で管理されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の検査システムでは、高い検査精度を確保できるとともに、検査時間も安定する。
【0019】
本発明の検査システムは、減圧通路を開閉可能な第1開閉弁と、液体供給通路を開閉可能な第2開閉弁と、少なくとも第1開閉弁及び第2開閉弁を制御する制御装置と、ステータからの検査液を介した漏電を検査する検査装置とを備え得る。
【0020】
そして、制御装置は、ステータが収納された検査室内に検査液がない状態で、第2開閉弁を閉じるとともに第1開閉弁を開くことが好ましい。この場合、検査室には液体タンクから検査液が供給されず、検査室は減圧装置によって減圧される。このため、検査液の成分が減圧装置によって揮発することはない。また、検査液を減圧しないことから、従来よりも短時間かつ安定した時間で所定の真空度を実現できる。
【0021】
また、制御装置は、検査室が所定の真空度になった時点で、第1開閉弁を閉じるとともに第2開閉弁を開くことが好ましい。この場合、検査室は所定の真空度に維持され、検査室に液体タンクから検査液が供給される。このため、検査液がコイルを含むステータの内部まで浸透する。
【0022】
さらに、制御装置は、検査室内でステータが検査液によって浸漬された時点で、第2開閉弁を閉じ、かつ検査装置を作動させることが好ましい。この場合、検査室への検査液の供給が停止され、ステータの良否が検査される。この際、検査液の電気伝導率は検査毎で変化し難いことから、基準となる絶縁抵抗値や漏れ電流量は変化せず、高い検査精度を確保できる。
【0023】
検査室は液体排出通路に連通し、液体排出通路を開閉可能な第3開閉弁を備えていることが好ましい。制御装置は、検査装置の作動後、第3開閉弁を開き、第3開閉弁を閉じてチャンバを開放させることが好ましい。この場合、検査液の減圧下での管理を維持することができる。
【0024】
液体排出通路には、検査液をろ過するろ過装置が設けられていることが好ましい。この場合、検査中に混入した異物を検査液から排除し、電気伝導率を維持し易い。
【0025】
液体排出通路は液体タンクに連通していることが好ましい。この場合、検査室内の検査液を減圧下で液体タンクに回収し、再利用に供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のステータの検査方法及び検査システムによれば、ステータの良否を高い検査精度かつ安定した時間で行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、検査液としての蒸留水を所定の真空中に放置した場合と、大気中に放置した場合とにおける放置時間と電気伝導率との関係を示すグラフである。
図2図2は、実施例の検査方法及び検査システムによる工程表である。
図3図3は、ステータの要部拡大断面図である。
図4図4は、実施例の検査システムを示し、収納工程時の模式断面図である。
図5図5は、実施例の検査システムを示し、減圧工程時の模式断面図である。
図6図6は、実施例の検査システムを示し、浸漬工程及び検査工程時の模式断面図である。
図7図7は、実施例の検査システムを示し、回収工程時の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例では、車両用電動圧縮機のモータ部に採用されるステータ1(図4~7参照)の良否を検査する。
【0029】
実施例の検査方法は、図2に示すように、収納工程S1、減圧工程2、浸漬工程S3、検査工程S4及び回収肯定S5を実行する。この際、実施例の検査システムを用いる。
【0030】
各ステータ1は、図3及び図4~7に示すように、コイル1a、コア1b、クラスタブロック1c、チューブ1d、ターミナル1e、封止部材1f、1g及びハウジング1hを有している。
【0031】
コイル1aは銅線にエナメルからなる絶縁層が被覆されたエナメル線からなっている。コア1bは複数のスロットを有し、各スロットにコイル1aが設けられている。クラスタブロック1cは、図3に示すように、ハウジング1hに保持されている。クラスタブロック1cはセラミック製であり、内部に3本の通路を有している。
【0032】
コイル1aから延出されたエナメル線からなる2本ずつ3組のリード1iは、クラスタブロック1cの手前で樹脂製のチューブ1d内にそれぞれ挿通されている。各チューブ1dはクラスタブロック1cの各通路内でそれぞれターミナル1eに保持され、各チューブ1d内のリード1iの銅線はターミナル1eに電気的に接続されている。
【0033】
各ターミナル1eは、後述する検査ピン29が挿通されることにより、検査ピン29と電気的に接続できるようになっている。なお、各ターミナル1eは、検査後、車両用電動圧縮機を構成する図示しない通電ピンが挿通されることにより、通電ピンと電気的に接続される。
【0034】
封止部材1fは、クラスタブロック1cに嵌合されてチューブ1dをリード1iとともに変形している。封止部材1fとクラスタブロック1cとの間は樹脂製のシール剤によって封止されている。こうして、このステータ1では、チェーブ1dとリード1iとの間隙のみが均圧通路となっている。
【0035】
封止部材1gはハウジング1hに嵌合され、検査ピン29や通電ピンを封止状態で挿通できるようになっている。ハウジング1hは車両用電動圧縮機のモータハウジングである。
【0036】
実施例の検査システムは、図4~7に示すように、チャンバ3と、真空ポンプ5と、液体タンク7と、ろ過装置31と、第1開閉弁9と、第2開閉弁11と、第3開閉弁33と、制御装置13と、検査装置15とを備えている。
【0037】
チャンバ3は、ステータ1を内部に収納可能な本体3aと、本体3aに対して開閉される開閉蓋3bとを有している。チャンバ3の内部には、本体3aに対して開閉蓋3bが閉じられることにより密閉可能な検査室3cが形成されている。検査室3cは、後述する検査液17が供給されることにより、ステータ1を浸漬可能になっている。
【0038】
本体3aの底部には、図3に示すように、適数個のゴム台3dが設けられており、一つのゴム台3dには1本の検査ピン29が上下に延びて設けられている。
【0039】
図4~7に示すように、真空ポンプ5は本発明の減圧装置に相当する。真空ポンプ5はチャンバ3の検査室3cと減圧通路19によって連通している。減圧通路19は検査室3cの上部に連通している。減圧通路19には電磁弁からなる第1開閉弁9が設けられている。真空ポンプ5は第1開閉弁9が開いておれば、検査室3cを所定の真空度以上に減圧可能である。
【0040】
液体タンク7はチャンバ3の検査室3cと液体供給通路21によって連通している。液体供給通路21は液体タンク7の底部と検査室3cの上部とを連通している。液体供給通路21には電磁弁からなる第2開閉弁11が設けられている。液体タンク7は真空状態で検査液17を貯留している。検査液17としては、一定の電気伝導率に調整された水、フッ素系不活性液体と導電性液体との混合液、食塩水等を採用することができる。
【0041】
ろ過装置31はチャンバ3の検査室3cと第1液体排出通路35aによって連通している。第1液体排出通路35aは検査室3cの底部とろ過装置31とを連通している。第1液体排出通路35aには電磁弁からなる第3開閉弁33が設けられている。ろ過装置31は第2液体排出通路35bによって液体タンク7に連通している。第2液体排出通路35bは液体タンク7の上部に連通している。第2液体排出通路35bには図示しないポンプが設けられている。こうして、検査液17を真空状態で管理する。
【0042】
制御装置13は、第1開閉弁9、第2開閉弁11及び第3開閉弁33と電気的に接続されている他、真空ポンプ5及び検査装置15と電気的に接続されている。また、チャンバ3の本体3aには、検査室3c内における検査液17の液位を検知可能な液位センサ23と、検査室3cの圧力を検知可能な圧力センサ25とが設けられており、制御装置13はこれら液位センサ23及び圧力センサ25とも電気的に接続されている。制御装置13はこれらを制御する。
【0043】
検査装置15は、チャンバ3の本体3a内に設けられた検査電極27と、図3に示すように、ステータ1と接続される検査ピン29と電気的に接続されている。検査ピン29はクラスタブロック1c内の一つのターミナル1eと電気的に接続されている。検査装置15は、検査電極27と検査ピン29との間の絶縁抵抗値によってステータ1からの検査液17を介した漏電を検査する。
【0044】
まず、図2及び図4に示すように、収納工程S1として、チャンバ3の開閉蓋3bを開け、内部の検査室3cに検査しようとするステータ1を載置する。この際、図3に示すように、クラスタブロック1cに検査ピン29が挿入され、リード1iと検査ピン29とがターミナル1eを介して電気的に接続される。
【0045】
この後、開閉蓋3bを閉じ、検査室3c内に密閉状態でステータ1を収納する。この際、制御装置13は、ステータ1が収納された検査室3c内に検査液17がない状態で、第1開閉弁9、第2開閉弁11及び第3開閉弁33を閉じている。
【0046】
次いで、図2及び図5に示すように、減圧工程S2として、制御装置13は、真空ポンプ5を作動するとともに、第1開閉弁9を開く。このため、検査室3cには液体タンク7から検査液17が供給されず、検査室3cは真空ポンプ5によって減圧される。このため、検査液17の成分が真空ポンプ5によって揮発することはない。また、検査液17を減圧しないことから、従来よりも短時間かつ安定した時間で所定の真空度を実現できる。
【0047】
制御装置13は、圧力センサ25からの信号によって検査室3cが所定の真空度になったか否かを判断し、検査室3cが所定の真空度になれば、図2及び図6に示すように、浸漬工程S3を実行する。この際、まず、制御装置13は、第1開閉弁9を閉じるとともに真空ポンプ5の作動を停止する。このため、検査室3cは所定の真空度に維持される。また、制御装置13は第2開閉弁11を開く。このため、検査室3cに液体タンク7から検査液17が自重によって供給される。このため、検査液17がステータ1を浸漬し始める。
【0048】
次いで、制御装置13は、液位センサ23からの信号によって検査液17がステータ1を浸漬したか否かを判断し、検査液17がステータ1を浸漬した液位になれば、第2開閉弁11を閉じる。このため、検査室3cへの検査液17の供給が停止される。また、制御装置13は、検査装置15を作動させ、図2に示すように、検査工程S4を実行し、ステータ1からの検査液17を介した漏電を検査する。
【0049】
検査工程S4後、図2及び図7に示すように、回収工程S5を実行する。この際、制御装置13は、検査装置15の作動を停止し、第3開閉弁33を開く。このため、検査室3c内の検査液17が自重によってろ過装置31に供給される。ろ過装置31では、検査中に混入した異物を検査液17から排除する。ろ過装置31を経た検査液17は第2液体排出通路35bを経て液体タンク7に回収される。この後、第3開閉弁33を閉じてチャンバ3の開閉蓋3bを開放させる。こうして、検査液17の減圧下での管理を維持する。
【0050】
こうして、この検査方法及び検査システムでは、検査室3cに供給する前の検査液17を減圧下で管理しているため、検査液17が大気に晒されない。このため、検査液17は、成分の揮発を生じたり、大気中の不純物が混入したり、大気中の二酸化炭素が含まれたりせず、電気伝導率が変化し難い。このため、基準となる絶縁抵抗値が変化し難く、高い検査精度を確保できるとともに、検査時間も安定する。
【0051】
特に、この検査方法及び検査システムでは、収納工程S1、減圧工程S2、浸漬工程S3、検査工程S4及び回収工程S5の順に行なうため、減圧工程S2時に検査液17の成分が揮発することはなく、検査毎に検査液17の電気伝導率が変化し難い。
【0052】
また、ステータ1を収納した検査室3cの減圧工程S2を行なった後で浸漬工程S3を行なうことから、検査液17を供給するだけでコイル1aを含むステータ1の内部まで検査液17を迅速に浸透させることができる。このため、従来よりも短時間で所定の真空度を実現できる。また、検査液17を減圧工程S2に供さないことから、検査時間が安定する。
【0053】
したがって、この検査方法及び検査システムによれば、ステータ1の良否を高い検査精度かつ安定した時間で行い得る。
【0054】
また、この検査方法及び検査システムでは、回収工程S5を実行することから、回収した検査液17を再利用することができる。再利用の際、検査液17の電気伝導率を確認又は調整することも可能である。
【0055】
また、このステータ1では、均圧通路によってクラスタブロック1cの内外の圧力差を緩和可能であるため、クラスタブロック1c、ひいては車両用電動圧縮機が優れた耐久性を発揮する。
【0056】
さらに、この実施例では、ステータ1がコア1b及びハウジング1hを有しているため、検査後に車両用電動圧縮機の組み付けを迅速に行なうことができる。
【0057】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0058】
例えば、実施例では、車両用電動圧縮機のモータ部に使用されるステータの良否を検査したが、本発明では、他のモータに使用されるステータやオルタネータ等に使用されるステータの良否を検査することも可能である。
【0059】
更には、車両用電動圧縮機において、ステータが内部に取り付けられた状態のモータハウジングに蓋材や栓材を取り付けて密閉状態とすることで、チャンバひいては検査室を形成してもよい。
【0060】
また、実施例では、チャンバ3、液体タンク7、液体供給通路21、ろ過装置31、第1液体排出通路35a及び第2液体排出通路35b内を真空状態とすることにより検査液17を減圧下で管理したが、減圧条件は温度、再利用頻度等によって適宜決定可能である。
【0061】
また、ステータ1は、クラスタブロック1c、コア1b、ハウジング1h等を有していなくてもよい。液体タンク7とチャンバ3との間に液送ポンプを設けてもよい。また、検査装置15は、検査電極27と検査ピン29との間の漏れ電流量を検出してステータ1の良否を検査することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明はモータ等の生産設備に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1a…コイル
1…ステータ
3…チャンバ
3c…検査室
17…検査液
S1…収納工程
S2…減圧工程
S3…浸漬工程
S4…検査工程
S5…回収工程
1i…リード
1d…チューブ
1e…ターミナル
1c…クラスタブロック
1f…封止部材
19…減圧通路
5…減圧装置(真空ポンプ)
21…液体供給通路
7…液体タンク
9…第1開閉弁
11…第2開閉弁
13…制御装置
15…検査装置
35a…第1液体回収通路
33…第3開閉弁
31…ろ過装置
35b…第2液体回収通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7