(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】内燃機関の制御システム
(51)【国際特許分類】
F02B 39/16 20060101AFI20220315BHJP
F02B 37/007 20060101ALI20220315BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20220315BHJP
F02B 37/02 20060101ALI20220315BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
F02B39/16 F
F02B37/007
F02B37/00 400C
F02B37/02 F
F02D45/00 345
F02D45/00 360A
(21)【出願番号】P 2018211078
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 章宏
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-074512(JP,U)
【文献】特開2005-220890(JP,A)
【文献】特開2015-017531(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0088373(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/16
F02B 37/00 - 37/24
F02D 23/00
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ターボチャージャと、
前記主ターボチャージャに対して並列に接続される副ターボチャージャと、
前記副ターボチャージャの副タービンの入口側に接続された上流側副排気管に設けられる排気切替弁と、
前記主ターボチャージャの主タービンの出口側の第1排気ガス温度を検出する第1温度検出装置と、
前記副タービンの出口側の第2排気ガス温度を検出する第2温度検出装置と、
前記排気切替弁の開閉切替制御を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記排気切替弁を閉弁させる閉弁信号又は前記排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力する信号出力部と、
加速開始タイミング又は減速開始タイミングを検出する開始タイミング検出部と、
前記排気切替弁を閉弁させる閉弁信号又は前記排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力した後、前記開始タイミング検出部によって検出された前記加速開始タイミング又は前記減速開始タイミングから所定時間経過するまでの前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度のそれぞれの変化量を取得する温度変化量取得部と、
前記温度変化量取得部が取得した前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度のそれぞれの変化量に基づいて、前記排気切替弁が切替不良であるか否かを判定する切替判定部と、
を有する、
内燃機関の制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記開始タイミング検出部によって検出された前記加速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を閉弁させる閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過しているか否かを判定する第1信号出力判定部を有し、
前記第1信号出力判定部によって、前記加速開始タイミングにおいて、前記閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過していると判定した場合には、
前記温度変化量取得部は、前記加速開始タイミングから所定の第2時間経過するまでの前記第1排気ガス温度の温度上昇の第1変化量と前記第2排気ガス温度の温度上昇の第2変化量とを取得し、
前記切替判定部は、前記第1変化量と前記第2変化量との差の絶対値が所定の第1閾値以下の場合には、前記排気切替弁が閉弁状態に達していない閉切替不良であると判定する、
内燃機関の制御システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記開始タイミング検出部によって検出された前記加速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過しているか否かを判定する第2信号出力判定部を有し、
前記第2信号出力判定部によって、前記加速開始タイミングにおいて、前記開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過していると判定した場合には、
前記温度変化量取得部は、前記加速開始タイミングから所定の第4時間経過するまでの前記第1排気ガス温度の温度上昇の第3変化量と前記第2排気ガス温度の温度上昇の第4変化量とを取得し、
前記切替判定部は、前記第3変化量と前記第4変化量との差の絶対値が所定の第2閾値以上の場合には、前記排気切替弁が開弁状態に達していない開切替不良であると判定する、
内燃機関の制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記開始タイミング検出部によって検出された前記減速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を閉弁させる閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過しているか否かを判定する第3信号出力判定部を有し、
前記第3信号出力判定部によって、前記減速開始タイミングにおいて、前記閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過していると判定した場合には、
前記温度変化量取得部は、前記減速開始タイミングから所定の第5時間経過するまでの前記第1排気ガス温度の温度低下の第5変化量と前記第2排気ガス温度の温度低下の第6変化量とを取得し、
前記切替判定部は、前記第5変化量と前記第6変化量との差の絶対値が所定の第3閾値以下の場合には、前記排気切替弁が閉弁状態に達していない閉切替不良であると判定する、
内燃機関の制御システム。
【請求項5】
請求項1又は請求項4に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記開始タイミング検出部によって検出された前記減速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過しているか否かを判定する第4信号出力判定部を有し、
前記第4信号出力判定部によって、前記減速開始タイミングにおいて、前記開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過していると判定した場合には、
前記温度変化量取得部は、前記減速開始タイミングから所定の第6時間経過するまでの前記第1排気ガス温度の温度低下の第7変化量と前記第2排気ガス温度の温度低下の第8変化量とを取得し、
前記切替判定部は、前記第7変化量と前記第8変化量との差の絶対値が所定の第4閾値以上の場合には、前記排気切替弁が開弁状態に達していない開切替不良であると判定する、
内燃機関の制御システム。
【請求項6】
主ターボチャージャと、
前記主ターボチャージャに対して並列に接続される副ターボチャージャと、
前記副ターボチャージャの副タービンの入口側に接続された上流側副排気管に設けられる排気切替弁と、
前記主ターボチャージャの主タービンの出口側の第1排気ガス温度を検出する第1温度検出装置と、
前記副タービンの出口側の第2排気ガス温度を検出する第2温度検出装置と、
前記排気切替弁の開閉切替制御を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
加速開始タイミング又は減速開始タイミングを検出する開始タイミング検出部と、
前記開始タイミング検出部によって検出された前記加速開始タイミング又は前記減速開始タイミングから所定時間経過した際の前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部が取得した前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度との温度差に基づいて、前記排気切替弁が切替不良であるか否かを判定する切替判定部と、
を有する、
内燃機関の制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記開始タイミング検出部によって検出された前記加速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を閉弁させる閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過しているか否かを判定する第1信号出力判定部を有し、
前記第1信号出力判定部によって、前記加速開始タイミングにおいて、前記閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過していると判定した場合には、
前記温度取得部は、前記加速開始タイミングから所定の第7時間経過した際の前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度を取得し、
前記切替判定部は、前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度との温度差の絶対値が所定の第5閾値以下の場合には、前記排気切替弁が閉弁状態に達していない閉切替不良であると判定する、
内燃機関の制御システム。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記開始タイミング検出部によって検出された前記加速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過しているか否かを判定する第2信号出力判定部を有し、
前記第2信号出力判定部によって、前記加速開始タイミングにおいて、前記開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過していると判定した場合には、
前記温度取得部は、前記加速開始タイミングから所定の第8時間経過した際の前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度を取得し、
前記切替判定部は、前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度との温度差の絶対値が所定の第6閾値以上の場合には、前記排気切替弁が開弁状態に達していない開切替不良であると判定する、
内燃機関の制御システム。
【請求項9】
請求項6に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記開始タイミング検出部によって検出された前記減速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を閉弁させる閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過しているか否かを判定する第3信号出力判定部を有し、
前記第3信号出力判定部によって、前記減速開始タイミングにおいて、前記閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過していると判定した場合には、
前記温度取得部は、前記減速開始タイミングから所定の第9時間経過した際の前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度を取得し、
前記切替判定部は、前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度との温度差の絶対値が所定の第7閾値以下の場合には、前記排気切替弁が閉弁状態に達していない閉切替不良であると判定する、
内燃機関の制御システム。
【請求項10】
請求項6又は請求項9に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記開始タイミング検出部によって検出された前記減速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過しているか否かを判定する第4信号出力判定部を有し、
前記第4信号出力判定部によって、前記減速開始タイミングにおいて、前記開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過していると判定した場合には、
前記温度取得部は、前記減速開始タイミングから所定の第10時間経過した際の前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度を取得し、
前記切替判定部は、前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度との温度差の絶対値が所定の第8閾値以上の場合には、前記排気切替弁が開弁状態に達していない開切替不良であると判定する、
内燃機関の制御システム。
【請求項11】
請求項3、請求項5、請求項8又は請求項10のいずれか1項に記載の内燃機関の制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記閉弁信号を出力した後、前記開弁信号を出力するまでの経過時間を計測する経過時間計測部と、
前記経過時間計測部によって計測された前記経過時間が所定の第1経過時間に達したか否かを判定する経過時間判定部と、
を有し、
前記経過時間判定部によって、前記経過時間が所定の第1経過時間に達したと判定された場合には、前記排気切替弁に対して前記開弁信号を出力する、
内燃機関の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に設けられたターボチャージャを切替制御する内燃機関の制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
並列に設けられたターボチャージャを切替制御する内燃機関の制御装置に関する技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1に記載されるパラレルツインターボシステムの制御システムでは、主ターボ過給機と副ターボ過給機とが並列に接続されている。主ターボ過給機の主タービンの入口に接続される上流側主排気管から分岐し、副ターボ過給機の副タービンの入口に接続される上流側排気管には、排気切替弁が設けられている。また、ECUは、排気切替弁に設けられたポジションセンサによって、排気切替弁の開度を検出するように構成されている。
【0003】
そして、主ターボ過給機のみに排気ガスを供給するシングル運転から、主ターボ過給機及び副ターボ過給機に排気ガスを供給するツイン運転へ移行する助走期間において、ECUは、シングル運転とツイン運転の切り替えを行う排気切替弁の開度をポジションセンサによって検出する。そして、ECUは、ポジションセンサによって排気切替弁の開度異常を検出したときには、燃料噴射量を制限し、シングル運転モードに制限するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、排気切替弁にポジションセンサを取り付ける必要があるため、ポジションセンサは高温に耐える必要がある等、製造コストの低減が難しいという問題がある。また、排気切替弁に欠け等による切替不良が発生した場合には、ポジションセンサでは検出できないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、製造コストを低減できると共に、並列に接続された主・福ターボチャージャの排気切替弁の切替不良を早期に検出することができる内燃機関の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、主ターボチャージャと、前記主ターボチャージャに対して並列に接続される副ターボチャージャと、前記副ターボチャージャの副タービンの入口側に接続された上流側副排気管に設けられる排気切替弁と、前記主ターボチャージャの主タービンの出口側の第1排気ガス温度を検出する第1温度検出装置と、前記副タービンの出口側の第2排気ガス温度を検出する第2温度検出装置と、前記排気切替弁の開閉切替制御を行う制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記排気切替弁を閉弁させる閉弁信号又は前記排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力する信号出力部と、加速開始タイミング又は減速開始タイミングを検出する開始タイミング検出部と、前記排気切替弁を閉弁させる閉弁信号又は前記排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力した後、前記開始タイミング検出部によって検出された前記加速開始タイミング又は前記減速開始タイミングから所定時間経過するまでの前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度のそれぞれの変化量を取得する温度変化量取得部と、前記温度変化量取得部が取得した前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度のそれぞれの変化量に基づいて、前記排気切替弁が切替不良であるか否かを判定する切替判定部と、を有する、内燃機関の制御システムである。
【0008】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関の制御システムにおいて、前記制御装置は、前記開始タイミング検出部によって検出された前記加速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を閉弁させる閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過しているか否かを判定する第1信号出力判定部を有し、前記第1信号出力判定部によって、前記加速開始タイミングにおいて、前記閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過していると判定した場合には、前記温度変化量取得部は、前記加速開始タイミングから所定の第2時間経過するまでの前記第1排気ガス温度の温度上昇の第1変化量と前記第2排気ガス温度の温度上昇の第2変化量とを取得し、前記切替判定部は、前記第1変化量と前記第2変化量との差の絶対値が所定の第1閾値以下の場合には、前記排気切替弁が閉弁状態に達していない閉切替不良であると判定する、内燃機関の制御システムである。
【0009】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明又は第2の発明に係る内燃機関の制御システムにおいて、前記制御装置は、前記開始タイミング検出部によって検出された前記加速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過しているか否かを判定する第2信号出力判定部を有し、前記第2信号出力判定部によって、前記加速開始タイミングにおいて、前記開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過していると判定した場合には、前記温度変化量取得部は、前記加速開始タイミングから所定の第4時間経過するまでの前記第1排気ガス温度の温度上昇の第3変化量と前記第2排気ガス温度の温度上昇の第4変化量とを取得し、前記切替判定部は、前記第3変化量と前記第4変化量との差の絶対値が所定の第2閾値以上の場合には、前記排気切替弁が開弁状態に達していない開切替不良であると判定する、内燃機関の制御システムである。
【0010】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関の制御システムにおいて、前記制御装置は、前記開始タイミング検出部によって検出された前記減速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を閉弁させる閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過しているか否かを判定する第3信号出力判定部を有し、前記第3信号出力判定部によって、前記減速開始タイミングにおいて、前記閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過していると判定した場合には、前記温度変化量取得部は、前記減速開始タイミングから所定の第5時間経過するまでの前記第1排気ガス温度の温度低下の第5変化量と前記第2排気ガス温度の温度低下の第6変化量とを取得し、前記切替判定部は、前記第5変化量と前記第6変化量との差の絶対値が所定の第3閾値以下の場合には、前記排気切替弁が閉弁状態に達していない閉切替不良であると判定する、内燃機関の制御システムである。
【0011】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明又は第4の発明に係る内燃機関の制御システムにおいて、前記制御装置は、前記開始タイミング検出部によって検出された前記減速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過しているか否かを判定する第4信号出力判定部を有し、前記第4信号出力判定部によって、前記減速開始タイミングにおいて、前記開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過していると判定した場合には、前記温度変化量取得部は、前記減速開始タイミングから所定の第6時間経過するまでの前記第1排気ガス温度の温度低下の第7変化量と前記第2排気ガス温度の温度低下の第8変化量とを取得し、前記切替判定部は、前記第7変化量と前記第8変化量との差の絶対値が所定の第4閾値以上の場合には、前記排気切替弁が開弁状態に達していない開切替不良であると判定する、内燃機関の制御システムである。
【0012】
次に、本発明の第6の発明は、主ターボチャージャと、前記主ターボチャージャに対して並列に接続される副ターボチャージャと、前記副ターボチャージャの副タービンの入口側に接続された上流側副排気管に設けられる排気切替弁と、前記主ターボチャージャの主タービンの出口側の第1排気ガス温度を検出する第1温度検出装置と、前記副タービンの出口側の第2排気ガス温度を検出する第2温度検出装置と、前記排気切替弁の開閉切替制御を行う制御装置と、を備え、前記制御装置は、加速開始タイミング又は減速開始タイミングを検出する開始タイミング検出部と、前記開始タイミング検出部によって検出された前記加速開始タイミング又は前記減速開始タイミングから所定時間経過した際の前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度を取得する温度取得部と、前記温度取得部が取得した前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度との温度差に基づいて、前記排気切替弁が切替不良であるか否かを判定する切替判定部と、を有する、内燃機関の制御システムである。
【0013】
次に、本発明の第7の発明は、上記第6の発明に係る内燃機関の制御システムにおいて、前記制御装置は、前記開始タイミング検出部によって検出された前記加速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を閉弁させる閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過しているか否かを判定する第1信号出力判定部を有し、前記第1信号出力判定部によって、前記加速開始タイミングにおいて、前記閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過していると判定した場合には、前記温度取得部は、前記加速開始タイミングから所定の第7時間経過した際の前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度を取得し、前記切替判定部は、前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度との温度差の絶対値が所定の第5閾値以下の場合には、前記排気切替弁が閉弁状態に達していない閉切替不良であると判定する、内燃機関の制御システムである。
【0014】
次に、本発明の第8の発明は、上記第6の発明又は第7の発明に係る内燃機関の制御システムにおいて、前記制御装置は、前記開始タイミング検出部によって検出された前記加速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過しているか否かを判定する第2信号出力判定部を有し、前記第2信号出力判定部によって、前記加速開始タイミングにおいて、前記開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過していると判定した場合には、前記温度取得部は、前記加速開始タイミングから所定の第8時間経過した際の前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度を取得し、前記切替判定部は、前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度との温度差の絶対値が所定の第6閾値以上の場合には、前記排気切替弁が開弁状態に達していない開切替不良であると判定する、内燃機関の制御システムである。
【0015】
次に、本発明の第9の発明は、上記第6の発明に係る内燃機関の制御システムにおいて、前記制御装置は、前記開始タイミング検出部によって検出された前記減速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を閉弁させる閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過しているか否かを判定する第3信号出力判定部を有し、前記第3信号出力判定部によって、前記減速開始タイミングにおいて、前記閉弁信号を出力してから所定の第1時間以上経過していると判定した場合には、前記温度取得部は、前記減速開始タイミングから所定の第9時間経過した際の前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度を取得し、前記切替判定部は、前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度との温度差の絶対値が所定の第7閾値以下の場合には、前記排気切替弁が閉弁状態に達していない閉切替不良であると判定する、内燃機関の制御システムである。
【0016】
次に、本発明の第10の発明は、上記第6の発明又は第9の発明に係る内燃機関の制御システムにおいて、前記制御装置は、前記開始タイミング検出部によって検出された前記減速開始タイミングにおいて、前記排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過しているか否かを判定する第4信号出力判定部を有し、前記第4信号出力判定部によって、前記減速開始タイミングにおいて、前記開弁信号を出力してから所定の第3時間以上経過していると判定した場合には、前記温度取得部は、前記減速開始タイミングから所定の第10時間経過した際の前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度を取得し、前記切替判定部は、前記第1排気ガス温度と前記第2排気ガス温度との温度差の絶対値が所定の第8閾値以上の場合には、前記排気切替弁が開弁状態に達していない開切替不良であると判定する、内燃機関の制御システムである。
【0017】
次に、本発明の第11の発明は、上記第3の発明、第5の発明、第8の発明又は第10の発明のいずれか1つの発明に係る内燃機関の制御システムにおいて、前記制御装置は、前記閉弁信号を出力した後、前記開弁信号を出力するまでの経過時間を計測する経過時間計測部と、前記経過時間計測部によって計測された前記経過時間が所定の第1経過時間に達したか否かを判定する経過時間判定部と、を有し、前記経過時間判定部によって、前記経過時間が所定の第1経過時間に達したと判定された場合には、前記排気切替弁に対して前記開弁信号を出力する、内燃機関の制御システムである。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、制御装置は、排気切替弁を閉弁させる閉弁信号又は排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力した後、加速開始タイミング又は減速開始タイミングから所定時間経過するまでの、主ターボチャージャの主タービンの出口側の第1排気ガス温度の変化量と、主ターボチャージャに対して並列に接続された副ターボチャージャの副タービンの出口側の第2排気ガス温度の変化量とを取得する。そして、制御装置は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度のそれぞれの変化量に基づいて、排気切替弁が切替不良であるか否かを判定する。
【0019】
これにより、主タービンの出口側に第1温度検出装置を設け、副タービンの出口側に第2温度検出装置を設けることによって、排気切替弁の切替不良を検出することができるため、排気切替弁にポジションセンサ等を取り付ける必要がなく、製造コストを低減できる。また、制御装置は、加速開始タイミング又は減速開始タイミングから所定時間経過した時点で、並列に接続された主・福ターボチャージャの排気切替弁の切替不良を早期に検出することができる。
【0020】
第2の発明によれば、制御装置は、閉弁信号が入力された排気切替弁が確実に閉弁状態になるまで待った後、加速開始タイミングから所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過するまでの第1排気ガス温度の温度上昇の第1変化量と、第2排気ガス温度の温度上昇の第2変化量を取得するため、排気切替弁の閉切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、制御装置は、比較的低回転からの加速で、排気切替弁の閉切替不良を検出することができる。従って、制御装置は、低負荷で早期に排気切替弁の閉切替不良を検出することが可能となり、動力不足や排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、内燃機関の高負荷までの運転が不要となり、排気切替弁の閉切替不良を検出する検査時間を短縮することができる。
【0021】
第3の発明によれば、制御装置は、開弁信号が入力された排気切替弁が確実に開弁状態になるまで待った後、加速タイミングから所定の第4時間(例えば、数秒である。)経過するまでの第1排気ガス温度の温度上昇の第3変化量と、第2排気ガス温度の温度上昇の第4変化量とを取得するため、排気切替弁の開切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、制御装置は、加速開始タイミングから早期に、排気切替弁が開弁状態に達していない開切替不良を検出することが可能となり、動力不足や排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、内燃機関の高負荷までの運転が不要となり、排気切替弁の開切替不良を検出する検査時間を短縮することができる。
【0022】
第4の発明によれば、制御装置は、閉弁信号が入力された排気切替弁が確実に閉弁状態になるまで待った後、減速開始タイミングから所定の第5時間(例えば、数秒である。)経過するまでの第1排気ガス温度の温度低下の第5変化量と、第2排気ガス温度の温度低下の第6変化量を取得するため、排気切替弁の閉切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、制御装置は、減速開始タイミングから早期に、排気切替弁の閉切替不良を検出することが可能となり、排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、減速開始タイミングから所定の第5時間(例えば、数秒である。)経過するまでの短時間の検査で、排気切替弁の閉切替不良を検出することが可能となり、検査時間を短縮することができる。
【0023】
第5の発明によれば、制御装置は、開弁信号が入力された排気切替弁が確実に開弁状態になるまで待った後、減速開始タイミングから所定の第6時間(例えば、数秒である。)経過するまでの第1排気ガス温度の温度低下の第7変化量と、第2排気ガス温度の温度低下の第8変化量とを取得するため、排気切替弁の開切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、制御装置は、減速開始タイミングから早期に、排気切替弁が開弁状態に達していない開切替不良を検出することが可能となり、排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、減速開始タイミングから所定の第6時間(例えば、数秒である。)経過するまでの短時間の検査で、排気切替弁の開切替不良を検出することが可能となり、検査時間を短縮することができる。
【0024】
第6の発明によれば、制御装置は、加速開始タイミング又は減速開始タイミングから所定時間経過した際の、主ターボチャージャの主タービンの出口側の第1排気ガス温度と、主ターボチャージャに対して並列に接続された副ターボチャージャの副タービンの出口側の第2排気ガス温度とを取得する。そして、制御装置は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度との温度差に基づいて、排気切替弁が切替不良であるか否かを判定する。
【0025】
これにより、主タービンの出口側に第1温度検出装置を設け、副タービンの出口側に第2温度検出装置を設けることによって、排気切替弁の切替不良を検出することができるため、排気切替弁にポジションセンサ等を取り付ける必要がなく、製造コストを低減できる。また、制御装置は、加速開始タイミング又は減速開始タイミングから所定時間経過した時点で、並列に接続された主・福ターボチャージャの排気切替弁の切替不良を早期に検出することができる。
【0026】
第7の発明によれば、制御装置は、閉弁信号が入力された排気切替弁が確実に閉弁状態になるまで待った後、加速開始タイミングから所定の第7時間(例えば、数秒である。)経過した際の、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度との温度差を取得するため、排気切替弁の閉切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、制御装置は、比較的低回転からの加速で、排気切替弁の閉切替不良を検出することができる。従って、制御装置は、低負荷で早期に排気切替弁の閉切替不良を検出することが可能となり、動力不足や排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、内燃機関の高負荷までの運転が不要となり、排気切替弁の閉切替不良を検出する検査時間を短縮することができる。
【0027】
第8の発明によれば、制御装置は、開弁信号が入力された排気切替弁が確実に開弁状態になるまで待った後、加速開始タイミングから所定の第8時間(例えば、数秒である。)経過した際の、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度との温度差を取得するため、排気切替弁の開切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、制御装置は、加速開始タイミングから早期に、排気切替弁が開弁状態に達していない開切替不良を検出することが可能となり、動力不足や排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、内燃機関の高負荷までの運転が不要となり、排気切替弁の開切替不良を検出する検査時間を短縮することができる。
【0028】
第9の発明によれば、制御装置は、閉弁信号が入力された排気切替弁が確実に閉弁状態になるまで待った後、減速開始タイミングから所定の第9時間(例えば、数秒である。)経過した際の、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度との温度差を取得するため、排気切替弁の閉切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、制御装置は、減速開始タイミングから早期に、排気切替弁の閉切替不良を検出することが可能となり、排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、減速開始タイミングから所定の第9時間(例えば、数秒である。)経過するまでの短時間の検査で、排気切替弁の閉切替不良を検出することが可能となり、検査時間を短縮することができる。
【0029】
第10の発明によれば、制御装置は、開弁信号が入力された排気切替弁が確実に開弁状態になるまで待った後、減速開始タイミングから所定の第10時間(例えば、数秒である。)経過した際の、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度との温度差を取得するため、排気切替弁の開切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、制御装置は、減速開始タイミングから早期に、排気切替弁の開切替不良を検出することが可能となり、排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、減速開始タイミングから所定の第10時間(例えば、数秒である。)経過するまでの短時間の検査で、排気切替弁の開切替不良を検出することが可能となり、検査時間を短縮することができる。
【0030】
第11の発明によれば、制御装置は、排気切替弁を閉弁させる閉弁信号を出力した後、所定の第1経過時間が経過するまで、排気切替弁を開弁させる開弁信号を出力していない場合には、排気切替弁に対して開弁信号を出力する。これにより、制御装置は、閉弁信号を出力した後、遅くとも所定の第1経過時間が経過すると、排気切替弁を強制的に開弁するように作動させることができる。従って、制御装置は、加速開始タイミング、又は、減速開始タイミングから所定時間(例えば、数秒である。)経過した時点において、排気切替弁の開切替不良を検出することが可能となる。その結果、制御装置は、早期に排気切替弁の開切替不良を検出することが可能となり、動力不足や排気ガスの悪化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態に係る内燃機関の制御システムの概略構成を説明する図である。
【
図2】第1実施形態に係る制御装置が実行する、排気切替弁の切替不良を検出する第1排気切替弁の不良判定処理を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態に係る制御装置が実行する、排気切替弁の切替不良を検出する第1排気切替弁の不良判定処理を示すフローチャートである。
【
図4】排気切替弁に閉弁指示をした場合の、加速開始時からの主タービンの出口側と副タービンの出口側のそれぞれの排気ガス温度の推移の一例を説明する図である。
【
図5】排気切替弁に開弁指示をした場合の、加速開始時からの主タービンの出口側と副タービンの出口側のそれぞれの排気ガス温度の推移の一例を説明する図である。
【
図6】第2実施形態に係る制御装置が実行する、排気切替弁の切替不良を検出する第2排気切替弁の不良判定処理を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態に係る制御装置が実行する、排気切替弁の切替不良を検出する第2排気切替弁の不良判定処理を示すフローチャートである。
【
図8】排気切替弁に閉弁指示をした場合の、減速開始時からの主タービンの出口側と副タービンの出口側のそれぞれの排気ガス温度の推移の一例を説明する図である。
【
図9】排気切替弁に開弁指示をした場合の、減速開始時からの主タービンの出口側と副タービンの出口側のそれぞれの排気ガス温度の推移の一例を説明する図である。
【
図10】第3実施形態に係る制御装置が実行する、排気切替弁の切替不良を検出する第3排気切替弁の不良判定処理を示すフローチャートである。
【
図11】第3実施形態に係る制御装置が実行する、排気切替弁の切替不良を検出する第3排気切替弁の不良判定処理を示すフローチャートである。
【
図12】第4実施形態に係る制御装置が実行する、排気切替弁の切替不良を検出する第4排気切替弁の不良判定処理を示すフローチャートである。
【
図13】第4実施形態に係る制御装置が実行する、排気切替弁の切替不良を検出する第4排気切替弁の不良判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る内燃機関の制御システムを具体化した第1実施形態乃至第4実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本発明に係る内燃機関の制御システムを具体化した第1実施形態について
図1乃至
図5に基づいて説明する。
【0033】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態に係る内燃機関の制御システム1は、車両に搭載されたエンジン(例えば、ディーゼルエンジン)10と、主ターボチャージャ21と、副ターボチャージャ22と、制御装置(以下、「ECU」という。)80等から構成されている。エンジン10は、左バンク10Lと右バンク10Rを有する多気筒エンジンであり、左バンク10Lには主ターボチャージャ21が設けられ、右バンク10Rには副ターボチャージャ22が設けられている。以下、エンジン10への吸気経路とエンジン10からの排気経路を説明しながら、各部材等を説明する。
【0034】
吸気管31Lの下流側は主ターボチャージャ21の主コンプレッサ21Bの吸入口に接続されている。主コンプレッサ21Bの吐出口は、吸気管32Lの上流側に接続されている。そして、吸気管32Lの下流側は、エンジン10の左バンク10Lの吸気側に接続された吸気マニホールド33Lの上流側に接続されている。吸気マニホールド33Lは、エンジン10の左バンク10Lの各気筒のそれぞれに吸気を供給する。主コンプレッサ21Bは、排気ガスによって回転駆動される主タービン21Aにて回転駆動され、吸気管31Lから吸入した空気を圧縮して吸気管32Lを経由して吸気マニホールド33Lへと吐出する。
【0035】
吸気管31Rの下流側は副ターボチャージャ22の副コンプレッサ22Bの吸入口に接続されている。副コンプレッサ22Bの吐出口は、吸気管32Rの上流側に接続されている。そして、吸気管32Rの下流側は、エンジン10の右バンク10Rの吸気側に接続された吸気マニホールド33Rの上流側に接続されている。吸気マニホールド33Rは、エンジン10の右バンク10Rの各気筒のそれぞれに吸気を供給する。
【0036】
また、副コンプレッサ22Bに上流側が接続された吸気管32Rには、吸気管32Rの開口と閉鎖を行う吸気切替弁51が設けられている。また、吸気管32Lと吸気管32Rは、連通配管35にて連通されている。吸気切替弁51は、例えば、ダイヤフラム式アクチュエータによって開閉されるようになっている。
【0037】
従って、吸気切替弁51が吸気管32Rを開口した場合には、副コンプレッサ22Bは、排気ガスによって回転駆動される副タービン22Aにて回転駆動され、吸気管31Rから吸入した空気を圧縮して吸気管32Rを経由して吸気マニホールド33Rへと吐出する。また、主コンプレッサ21Bは、排気ガスによって回転駆動される主タービン21Aにて回転駆動され、吸気管31Lから吸入した空気を圧縮して吸気管32Lを経由して吸気マニホールド33Lへと吐出する。
【0038】
一方、吸気切替弁51が吸気管32Rを閉鎖した場合には、副コンプレッサ22Bから吸気管32Rに吸気を供給できない。その結果、主コンプレッサ21Bは、排気ガスによって回転駆動される主タービン21Aにて回転駆動され、吸気管31Lから吸入した空気を圧縮して吸気管32Lを経由して吸気マニホールド33Lへ吐出すると共に、連通配管35を経由して吸気マニホールド33Rへ吐出する。また、連通配管35には、吸気管32Rに近い箇所に過給圧センサ52が設けられている。尚、吸気管31Lの上流側と吸気管31Rの上流側は、1本にまとめられていてもよい。
【0039】
エンジン10の左バンク10Lの各気筒のそれぞれの排気側と、右バンク10Rの各気筒のそれぞれの排気側には、排気マニホールド41が接続されている。排気マニホールド41の下流側には排気管42の上流側が接続されている。排気管42の下流側には、主ターボチャージャ21の主タービン21Aの流入口(入口側)に接続された上流側主排気管43Lの上流側と、副ターボチャージャ22の副タービン22Aの流入口(入口側)に接続された上流側副排気管43Rの上流側とが、接続されている。
【0040】
主タービン21Aは、上流側主排気管43Lから流入してくる排気ガスによって回転駆動され、直結された主コンプレッサ21Bを回転駆動する。副タービン22Aは、上流側副排気管43Rから流入してくる排気ガスによって回転駆動され、直結された副コンプレッサ22Bを回転駆動する。従って、副ターボチャージャ22は、主ターボチャージャ21に対して並列に接続されている。また、上流側副排気管43Rには、上流側副排気管43Rの開口と閉鎖を行う排気切替弁53が設けられている。排気切替弁53は、例えば、ダイヤフラム式アクチュエータによって開閉されるようになっている。
【0041】
従って、吸気切替弁51と排気切替弁53が、両方とも開弁のときには、主ターボチャージャ21と副ターボチャージャ22が作動される。一方、吸気切替弁51と排気切替弁53が、両方とも閉弁のときには、主ターボチャージャ21のみが作動され、副ターボチャージャ22は、作動しない。つまり、吸気切替弁51と排気切替弁53は、連動して開弁・閉弁を切り替えられる。尚、
図1は、吸気切替弁51と排気切替弁53が、両方とも開弁された際の吸気及び排気の流れを点線の矢印で示す。
【0042】
主タービン21Aの吐出口(出口側)には排気管45Lの上流側が接続されている。また、副タービン22Aの吐出口(出口側)には排気管45Rの上流側が接続されている。排気管45Lの下流側と排気管45Rの下流側とは、排気管46の上流側に接続されている。また、排気管45Lには、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度を検出する第1温度検出装置(例えば、温度検出センサ)25が設けられている。また、排気管45Rには、副タービン22Aの出口側に第2排気ガス温度を検出する第2温度検出装置(例えば、温度検出センサ)26が設けられている。
【0043】
排気管46の下流側は、排気ガス浄化装置61の流入口に接続されている。排気ガス浄化装置61の内部には、上流側から、酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)62、DPF(Diesel Particulate Filter)63が設けられている。酸化触媒62は、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去する。DPF63は、セラミックス材料等からなる多孔質な部材によって円柱状等に形成され、上流側から各小孔に流入する排気ガスを多孔質材料に通すことで粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集し、排気ガスのみを下流側へと流出させる。そして、排気ガス浄化装置61の流出口には、排気管47の上流側が接続されている。
【0044】
ECU80は、CPU、EEPROM、RAM、タイマ、不図示のバックアップRAM等を備えた公知のものである。CPUは、EEPROMに記憶された各種プログラムや各種パラメータに基づいて、種々の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各検出装置から入力されたデータ等を一時的に記憶し、バックアップRAMは、例えば、エンジン10の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。ECU80は、第1温度検出装置25、第2温度検出装置26、吸気切替弁51、過給圧センサ52、排気切替弁53、警告ランプ55、アクセルペダル踏込量検出装置(例えば、アクセルペダル踏込角度センサ)56、回転検出装置(例えば、回転角度センサ)57等が、電気的に接続されている。
【0045】
ECU80には、第1温度検出装置25、過給圧センサ52、第2温度検出装置26の検出信号、アクセルペダル踏込量検出装置56、回転検出装置57の検出信号が入力される。ECU80は、第1温度検出装置25からの検出信号に基づいて、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度を検出することができる。ECU80は、第2温度検出装置26からの検出信号に基づいて、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度を検出することができる。
【0046】
ECU80は、アクセルペダル踏込量検出装置56からの検出信号に基づいて、運転者によるアクセルペダルの踏込量(運転者の加速要求、減速要求)を検出することが可能である。アクセルペダル踏込量検出装置56は、例えば、アクセルペダル踏込角度センサであり、アクセルペダルに設けられている。ECU80は、回転検出装置57からの検出信号に基づいて、エンジン10のクランク軸の回転数や回転角度等を検出することが可能である。回転検出装置57は、例えば、エンジン10のクランク軸の回転数や、クランク軸の回転角度(例えば、各気筒の圧縮上死点タイミング)等を検出可能な回転角度センサであり、エンジン10に設けられている。
【0047】
また、ECU80は、吸気切替弁51、及び、排気切替弁53を運転状態に応じて開弁させる開弁信号又は閉弁させる閉弁信号を出力する。また、ECU80は、排気切替弁53の切替不良を検出した際に点灯する警告ランプ55の点灯/消灯が可能である。警告ランプ55は、例えば、車両のインスツルメントパネル内に設けられている。
【0048】
次に、上記のように構成された内燃機関の制御システム1において、ECU80によって実行される処理であって、加速を開始した際に、排気切替弁53の開弁又は閉弁の切替不良を検出する「第1排気切替弁の不良判定処理」について
図2乃至
図5に基づいて説明する。ECU80は、起動されると所定時間間隔(例えば、数ミリ秒~数10ミリ秒間隔)にて、
図2及び
図3に示す処理を起動し、ステップS11へと処理を進める。尚、
図2及び
図3にフローチャートで示されるプログラムは、ECU80のEEPROMに予め記憶されている。
【0049】
図2に示すように、先ず、ステップS11において、ECU80は、排気切替弁53の閉弁信号又は開弁信号を出力した旨を表す切替フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。尚、切替フラグは、ECU80の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶される。そして、切替フラグが「ON」に設定されていると判定した場合には(S11:YES)、ECU80は、後述のステップS15に進む。
【0050】
一方、切替フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(S11:NO)、ECU80は、ステップS12に進む。ステップS12において、ECU80は、加速を開始した、つまり、加速中である旨を表す加速フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。尚、加速フラグは、ECU80の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶される。そして、加速フラグが「ON」に設定されていると判定した場合、つまり、加速中であると判定した場合には(S12:YES)、ECU80は、後述のステップS20に進む。
【0051】
一方、加速フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(S12:NO)、ECU80は、ステップS13に進む。ステップS13において、ECU80は、排気切替弁53に対して、排気切替弁53を開弁させる開弁信号、又は、排気切替弁53を閉弁させる閉弁信号を出力したか否かを判定する。尚、ECU80の起動時に、ECU80は、排気切替弁53に対して閉弁信号を出力している。
【0052】
そして、排気切替弁53に対して、排気切替弁53を開弁させる開弁信号、及び、排気切替弁53を閉弁させる閉弁信号を出力していないと判定した場合には(S13:NO)、ECU80は、後述のステップS17に進む。一方、排気切替弁53に対して、排気切替弁53を開弁させる開弁信号、又は、排気切替弁53を閉弁させる閉弁信号を出力したと判定した場合には(S13:YES)、ECU80は、ステップS14に進む。
【0053】
ステップS14において、ECU80は、排気切替弁53の閉弁信号又は開弁信号を出力した旨を表す切替フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して、再度RAMに記憶する。また、ECU80は、閉弁信号又は開弁信号のうち、排気切替弁53に対して出力した切替信号をRAMに記憶する。そして、ECU80は、開弁信号、又は、閉弁信号を出力してから経過した経過時間、つまり、切替フラグを「ON」に設定してから経過した経過時間をカウントする第1経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、初期化した後、「1」加算してRAMに記憶した後、ステップS15に進む。
【0054】
ステップS15において、ECU80は、切替フラグを「ON」に設定してから経過した経過時間をカウントする第1経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、所定の第1時間(第3時間)(例えば、数秒~10秒)に達したか否かを判定する。つまり、ECU80は、排気切替弁53を開弁させる開弁信号、又は、排気切替弁53を閉弁させる閉弁信号を出力してから現在までの経過時間が所定の第1時間(例えば、数秒~10秒)に達したか否かを判定する。
【0055】
そして、排気切替弁53を開弁させる開弁信号、又は、排気切替弁53を閉弁させる閉弁信号を出力してから現在までの経過時間が所定の第1時間(例えば、数秒~10秒)に達していないと判定した場合には(S15:NO)、ECU80は、第1経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、「1」加算してRAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0056】
一方、排気切替弁53を開弁させる開弁信号、又は、排気切替弁53を閉弁させる閉弁信号を出力してから現在までの経過時間が所定の第1時間(例えば、数秒~10秒)に達したと判定した場合には(S15:YES)、ECU80は、ステップS16に進む。ステップS16において、ECU80は、排気切替弁53の閉弁信号又は開弁信号を出力した旨を表す切替フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、ステップS17に進む。
【0057】
ステップS17において、ECU80は、エンジン10の加速が開始されたか否かを判定する。具体的には、ECU80は、アクセルペダル踏込量検出装置56からの検出信号に基づいて検出した運転者によるアクセルペダルの踏込量(運転者の加速要求)と、回転検出装置57からの検出信号に基づいて検出したエンジン10のクランク軸の回転数の変化量と、からエンジン10の加速が開始されたか否かを判定する。そして、エンジン10の加速が開始されていないと判定した場合には(S17:NO)、ECU80は、当該処理を終了する。
【0058】
一方、エンジン10の加速が開始されたと判定した場合には(S17:YES)、ECU80は、ステップS18に進む。ステップS18において、ECU80は、第1温度検出装置25によって、主ターボチャージャ21の主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度を検出して、加速開始時の第1排気ガス温度P1としてRAMに記憶する。また、ECU80は、第2温度検出装置26によって、副ターボチャージャ22の副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度を検出して、加速開始時の第2排気ガス温度Q1としてRAMに記憶した後、ステップS19に進む。
【0059】
ステップS19において、ECU80は、加速中である旨を表す加速フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して、再度RAMに記憶する。そして、ECU80は、加速を開始してから経過した経過時間をカウントする第2経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、初期化した後、「1」加算してRAMに記憶した後、ステップS20に進む。
【0060】
ステップS20において、ECU80は、加速を開始してから経過した経過時間をカウントする第2経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、所定の第2時間(第4時間)(例えば、数秒である。)に達したか否かを判定する。つまり、ECU80は、加速を開始してから現在までの経過時間が所定の第2時間(例えば、数秒である。)に達したか否かを判定する。尚、所定の第2時間(例えば、数秒である。)は、EEPROMに予め記憶されている。
【0061】
そして、加速を開始してから現在までの経過時間が所定の第2時間(例えば、数秒である。)に達していないと判定した場合には(S20:NO)、ECU80は、第2経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、「1」加算してRAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0062】
一方、加速を開始してから現在までの経過時間が所定の第2時間(例えば、数秒である。)に達したと判定した場合には(S20:YES)、ECU80は、ステップS21に進む。ステップS21において、ECU80は、第1温度検出装置25によって、主ターボチャージャ21の主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度を検出して、加速中の第1排気ガス温度P2としてRAMに記憶する。また、ECU80は、第2温度検出装置26によって、副ターボチャージャ22の副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度を検出して、加速中の第2排気ガス温度Q2としてRAMに記憶した後、ステップS22に進む。
【0063】
ステップS22おいて、ECU80は、上記ステップS14でRAMに記憶した排気切替弁53に対して出力した切替信号を再度RAMから読み出し、切替信号が閉弁信号であるか否か、つまり、排気切替弁53に対して閉弁切替指示を出力したか否かを判定する。そして、排気切替弁53に対して出力した切替信号が閉弁信号である、つまり、排気切替弁53に対して閉弁切替指示を出力したと判定した場合には(S22:YES)、ECU80は、ステップS23に進む。
【0064】
ステップS23において、ECU80は、上記ステップS18でRAMに記憶した加速開始時の主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度P1と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度Q1、及び、上記ステップS21でRAMに記憶した加速開始時から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過した加速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2を読み出す。
【0065】
そして、ECU80は、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの、加速開始時から所定の第2時間(例えば、数秒である。)が経過するまでの間に上昇した温度上昇の傾きを算出する。続いて、ECU80は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度のそれぞれの温度上昇の傾きの差を算出して、この傾きの差の絶対値が第1閾値R1以下であるか否かを判定する。
【0066】
尚、第1閾値R1は、排気切替弁53が閉弁信号を受信して、上流側副排気管43Rを正常に閉鎖した状態における、加速開始時から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過するまでの、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの温度上昇の傾きの差の絶対値よりも少し小さい(例えば、約5%~10%小さい)数値である。この第1閾値R1は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、ベンチテスト等によって決定される。
【0067】
例えば、
図4に示すように、加速を開始した時間T1から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過した時間T2までの、第1排気ガス温度71の温度上昇の傾きA1(第1変化量)は、A1=(P2-P1)/(T2-T1)である。同様に、排気切替弁53が正常に閉弁された際には、加速を開始した時間T1から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過した時間T2までの、第2排気ガス温度72の温度上昇の傾きB1(第2変化量)は、小さな傾きである。従って、第1閾値R1は、(A1-B1)の絶対値よりも少し小さい(例えば、約5%~10%小さい)数値に設定されて、予めEEPROMに記憶されている。
【0068】
一方、排気切替弁53が、開弁状態から動作しなかった(いわゆる開固着である。)、又は、上流側副排気管43Rの閉鎖途中で停止した、若しくは、排気切替弁53が欠けた等の閉切替不良の場合には、加速を開始した時間T1から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過した時間T2までの、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度73の温度上昇は、排気切替弁53が正常に閉弁された際の第2排気ガス温度72の温度上昇よりも大きくなる。つまり、加速を開始した時間T1から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過した時間T2までの、閉切替不良時の第2排気ガス温度73の傾きB2(第2変化量)は、閉弁正常時の第2排気ガス温度72の傾きB1よりも大きくなる。
【0069】
具体的には、
図4に示すように、排気切替弁53の閉切替不良の際には、加速を開始した時間T1から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過した時間T2までの、第2排気ガス温度73の温度上昇の傾きB2は、B2=(Q2-Q1)/(T2-T1)である。従って、排気切替弁53の閉切替不良の場合には、加速を開始した時間T1から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過した時間T2までの、第1排気ガス温度71の温度上昇の傾きA1と、第2排気ガス温度73の温度上昇の傾きB2との差(A1-B2)の絶対値は、第1閾値R1以下の数値となる。
【0070】
図3に示すように、上記ステップS23で、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度の、加速開始時から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過するまでの、それぞれの温度上昇の傾きの差の絶対値が、第1閾値R1以下であると判定した場合には(S23:YES)、ECU80は、排気切替弁53が閉切替不良であると判定して、ステップS24に進む。
【0071】
ステップS24において、ECU80は、閉切替不良フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶した後、ステップS25に進む。尚、閉切替不良フラグは、ECU80の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。また、ECU80は、図示省略した別の処理にて、閉切替不良フラグが「ON」に設定されている場合には、警告ランプ55(
図1参照)を点灯する。従って、閉切替フラグが「OFF」に再設定されるまで、警告ランプ55は点灯される。
【0072】
続いて、ステップS25において、ECU80は、加速フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0073】
一方、上記ステップS23で、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度の、加速開始時から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過するまでの、それぞれの温度上昇の傾きの差の絶対値が、第1閾値R1より大きいと判定した場合には(S23:NO)、ECU80は、排気切替弁53が正常に閉弁された(閉切替正常である)と判定して、ステップS26に進む。
【0074】
ステップS26において、ECU80は、閉切替不良フラグ及び開切替不良フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して再度RAMに記憶した後、上記ステップS25に進む。上記ステップS25で、ECU80は、加速フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。尚、開切替不良フラグは、ECU80の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。また、ECU80は、図示省略した別の処理にて、閉切替不良フラグ及び開切替不良フラグが「OFF」に設定されている場合には、警告ランプ55(
図1参照)を消灯する。従って、警告ランプ55が点灯されていた場合には、消灯される。
【0075】
他方、上記ステップS22で、排気切替弁53に対して出力した切替信号が閉弁信号でない、つまり、排気切替弁53に対して開弁信号(開弁切替指示)を出力したと判定した場合には(S22:NO)、ECU80は、ステップS27に進む。ステップS27において、ECU80は、上記ステップS18でRAMに記憶した加速開始時の主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度P1と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度Q1、及び、上記ステップS21でRAMに記憶した加速開始時から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過した加速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2を読み出す。
【0076】
そして、ECU80は、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの、所定の第2時間(例えば、数秒である。)の間に上昇した温度上昇の傾きを算出する。続いて、ECU80は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度のそれぞれの温度上昇の傾きの差を算出して、この傾きの差の絶対値が第2閾値R2以上か否かを判定する。
【0077】
尚、第2閾値R2は、排気切替弁53が開弁信号を受信して、上流側副排気管43Rを正常に開口した状態における、加速開始時から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過するまでの、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの温度上昇の傾きの差の絶対値よりも少し大きい(例えば、約5%~10%大きい)数値である。この第2閾値R2は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、ベンチテスト等によって決定される。
【0078】
例えば、
図5に示すように、加速を開始した時間T11から所定の第2時間(第4時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T12までの、第1排気ガス温度71の温度上昇の傾きA11(第3変化量)は、A11=(P2-P1)/(T12-T11)である。同様に、排気切替弁53が正常に開弁された際には、加速を開始した時間T11から所定の第2時間(第4時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T12までの、第2排気ガス温度72の温度上昇の傾きB11(第4変化量)は、第1排気ガス温度71の温度上昇の傾きA11にほぼ等しい、又は、少し小さい傾きである。従って、第2閾値R2は、(A11-B11)の絶対値よりも少し大きい(例えば、約5%~10%大きい)数値に設定されて、予めEEPROMに記憶されている。
【0079】
一方、排気切替弁53が、閉弁状態から動作しなかった(いわゆる閉固着である。)、又は、上流側副排気管43Rの開口途中で停止した等の開切替不良の場合には、加速を開始した時間T11から所定の第2時間(第4時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T12までの、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度73の温度上昇は、排気切替弁53が正常に開弁された際の第2排気ガス温度72の温度上昇よりも小さくなる。つまり、加速を開始した時間T11から所定の第2時間(第4時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T12までの、開切替不良時の第2排気ガス温度73の傾きB12(第4変化量)は、開弁正常時の第2排気ガス温度72の傾きB11よりも小さくなる。
【0080】
具体的には、
図5に示すように、排気切替弁53の開切替不良の際には、加速を開始した時間T11から所定の第2時間(第4時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T12までの、第2排気ガス温度73の温度上昇の傾きB12は、B12=(Q2-Q1)/(T12-T11)である。従って、排気切替弁53の開切替不良の場合には、加速を開始した時間T11から所定の第2時間(第4時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T12までの、第1排気ガス温度71の温度上昇の傾きA11と、第2排気ガス温度73の温度上昇の傾きB12との差(A11-B12)の絶対値は、第2閾値R2以上の数値となる。
【0081】
図3に示すように、上記ステップS27で、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度の、加速開始時から所定の第2時間(第4時間)(例えば、数秒である。)経過するまでの、それぞれの温度上昇の傾きの差の絶対値が、第2閾値R2以上であると判定した場合には(S27:YES)、ECU80は、排気切替弁53が開切替不良であると判定して、ステップS28に進む。
【0082】
ステップS28において、ECU80は、開切替不良フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度RAMに記憶した後、上記ステップS25に進む。ステップS25において、ECU80は、加速フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。尚、ECU80は、図示省略した別の処理にて、開切替不良フラグが「ON」に設定されている場合には、警告ランプ55(
図1参照)を点灯する。従って、開切替フラグが「OFF」に再設定されるまで、警告ランプ55は点灯される。
【0083】
一方、上記ステップS27で、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度の、加速開始時から所定の第2時間(例えば、数秒である。)経過するまでの、それぞれの温度上昇の傾きの差の絶対値が、第2閾値R2未満であると判定した場合には(S27:NO)、ECU80は、排気切替弁53が正常に開弁された(開切替正常である)と判定して、ステップS26に進む。
【0084】
ステップS26において、ECU80は、閉切替不良フラグ及び開切替不良フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して再度RAMに記憶した後、上記ステップS25に進む。上記ステップS25で、ECU80は、加速フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。尚、ECU80は、図示省略した別の処理にて、閉切替不良フラグ及び開切替不良フラグが「OFF」に設定されている場合には、警告ランプ55(
図1参照)を消灯する。従って、警告ランプ55が点灯されていた場合には、消灯される。
【0085】
以上詳細に説明した通り、第1実施形態に係る内燃機関の制御システム1では、ECU80は、閉弁信号が入力された排気切替弁53が確実に閉弁状態になるまで待った後、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの、加速開始時から所定の第2時間(第4時間)(例えば、数秒である。)が経過するまでの間に上昇した温度上昇の傾きを算出する。そして、ECU80は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度のそれぞれの温度上昇の傾きの差を算出して、この傾きの差の絶対値が第1閾値R1以下であると判定した場合には、排気切替弁53が閉切替不良であると判定する。
【0086】
これにより、ECU80は、閉弁信号が入力された排気切替弁53が確実に閉弁状態になるまで待った後、加速開始時から所定の第2時間(例えば、数秒である。)が経過するまでの第1排気ガス温度の温度上昇の傾きと、第2排気ガス温度の温度上昇の傾きを取得するため、排気切替弁53の閉切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、ECU80は、比較的低回転からの加速で、排気切替弁53の閉切替不良を検出することができる。従って、ECU80は、低負荷で早期に排気切替弁53の閉切替不良を検出することが可能となり、動力不足や排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、エンジン10の高負荷までの運転が不要となり、排気切替弁53の閉切替不良を検出する検査時間を短縮することができる。
【0087】
また、ECU80は、開弁信号が入力された排気切替弁53が確実に開弁状態になるまで待った後、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの、加速開始時から所定の第2時間(第4時間)(例えば、数秒である。)が経過するまでの間に上昇した温度上昇の傾きを算出する。そして、ECU80は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度のそれぞれの温度上昇の傾きの差を算出して、この傾きの差の絶対値が第2閾値R2以上であると判定した場合には、排気切替弁53が開切替不良であると判定する。
【0088】
これにより、ECU80は、開弁信号が入力された排気切替弁53が確実に開弁状態になるまで待った後、加速開始時から所定の第2時間(例えば、数秒である。)が経過するまでの第1排気ガス温度の温度上昇の傾きと、第2排気ガス温度の温度上昇の傾きを取得するため、排気切替弁53の開切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、ECU80は、加速開始時(加速開始タイミング)から早期に、排気切替弁53の開切替不良を検出することが可能となり、動力不足や排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、エンジン10の高負荷までの運転が不要となり、排気切替弁53の開切替不良を検出する検査時間を短縮することができる。
【0089】
更に、主タービン21Aの出口側に第1温度検出装置25を設け、副タービン22Aの出口側に第2温度検出装置26を設けることによって、排気切替弁53の閉切替不良と開切替不良を検出することができるため、排気切替弁53にポジションセンサ等を取り付ける必要がなく、製造コストを低減できる。
【0090】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る内燃機関の制御システムを具体化した第2実施形態について
図6乃至
図9に基づいて説明する。尚、以下の説明において、第1実施形態に係る内燃機関の制御システム1の構成等と同一符号は、第1実施形態に係る内燃機関の制御システム1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0091】
第2実施形態に係る内燃機関の制御システム91(
図1参照)の構成及び制御処理等は、第1実施形態に係る内燃機関の制御システム1の構成及び制御処理とほぼ同じである。但し、第2実施形態に係る内燃機関の制御システム91のECU80は、上記「第1排気切替弁の不良判定処理」に替えて、減速を開始した際に、排気切替弁53の開弁又は閉弁の切替不良を検出する「第2排気切替弁の不良判定処理」を実行する点で異なっている。
【0092】
次に、減速を開始した際に、排気切替弁53の開弁又は閉弁の切替不良を検出する「第2排気切替弁の不良判定処理」について
図6乃至
図9に基づいて説明する。ECU80は、起動されると所定時間間隔(例えば、数ミリ秒~数10ミリ秒間隔)にて、
図6及び
図7に示す処理を起動し、ステップS11へと処理を進める。尚、
図6及び
図7にフローチャートで示されるプログラムは、ECU80のEEPROMに予め記憶されている。
【0093】
図6に示すように、ECU80は、先ず、上記ステップS11の処理を実行する。そして、切替フラグが「ON」に設定されていると判定した場合には(S11:YES)、ECU80は、上記ステップS15の処理に進む。一方、切替フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(S11:NO)、ECU80は、上記ステップS12の処理に替えて、ステップS31に進む。
【0094】
ステップS31において、ECU80は、減速を開始した、つまり、減速中である旨を表す減速フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。尚、減速フラグは、ECU80の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶される。そして、減速フラグが「ON」に設定されていると判定した場合には(S31:YES)、ECU80は、後述のステップS34に進む。
【0095】
一方、減速フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(S31:NO)、ECU80は、上記ステップS13乃至ステップS16の処理を実行する。そして、上記ステップS13で、排気切替弁53に対して、排気切替弁53を開弁させる開弁信号、又は、排気切替弁53を閉弁させる閉弁信号を出力したと判定した場合に(S13:YES)、若しくは、上記ステップS16の処理を実行した後には、ECU80は、上記ステップS17の処理に替えて、ステップS32に進む。
【0096】
ステップS32において、ECU80は、エンジン10の減速が開始されたか否かを判定する。具体的には、ECU80は、アクセルペダル踏込量検出装置56からの検出信号に基づいて検出した運転者によるアクセルペダルの踏込量(運転者の減速要求)と、回転検出装置57からの検出信号に基づいて検出したエンジン10のクランク軸の回転数の変化量と、からエンジン10の減速が開始されたか否かを判定する。そして、エンジン10の減速が開始されていないと判定した場合には(S31:NO)、ECU80は、当該処理を終了する。
【0097】
一方、エンジン10の減速が開始されたと判定した場合には(S31:YES)、ECU80は、上記ステップS18に進む。ステップS18において、ECU80は、第1温度検出装置25によって、主ターボチャージャ21の主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度を検出して、減速開始時の第1排気ガス温度P1としてRAMに記憶する。また、ECU80は、第2温度検出装置26によって、副ターボチャージャ22の副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度を検出して、減速開始時の第2排気ガス温度Q1としてRAMに記憶する。
【0098】
続いて、ECU80は、上記ステップS19の処理に替えて、ステップS33に進む。ステップS33において、ECU80は、減速中である旨を表す減速フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して、再度RAMに記憶する。そして、ECU80は、減速を開始してから経過した経過時間をカウントする第3経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、初期化した後、「1」加算してRAMに記憶した後、上記ステップS20の処理に替えて、ステップS34に進む。
【0099】
ステップS34において、ECU80は、加速を開始してから経過した経過時間をカウントする第3経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)に達したか否かを判定する。つまり、ECU80は、減速を開始してから現在までの経過時間が所定の第5時間(例えば、数秒である。)に達したか否かを判定する。尚、所定の第5時間(例えば、数秒である。)は、EEPROMに予め記憶されている。
【0100】
そして、減速を開始してから現在までの経過時間が所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)に達していないと判定した場合には(S34:NO)、ECU80は、第3経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、「1」加算してRAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0101】
一方、減速を開始してから現在までの経過時間が所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)に達したと判定した場合には(S34:YES)、ECU80は、上記ステップS21に進む。ステップS21において、ECU80は、第1温度検出装置25によって、主ターボチャージャ21の主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度を検出して、減速中の第1排気ガス温度P2としてRAMに記憶する。また、ECU80は、第2温度検出装置26によって、副ターボチャージャ22の副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度を検出して、減速中の第2排気ガス温度Q2としてRAMに記憶する。
【0102】
続いて、ECU80は、上記ステップS22の処理を実行する。そして、排気切替弁53に対して出力した切替信号が閉弁信号である、つまり、排気切替弁53に対して閉弁切替指示を出力したと判定した場合には(S22:YES)、ECU80は、上記ステップS23の処理に替えて、ステップS35に進む。
【0103】
ステップS35において、ECU80は、上記ステップS18でRAMに記憶した減速開始時の主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度P1と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度Q1、及び、上記ステップS21でRAMに記憶した減速開始時から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過した減速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2を読み出す。
【0104】
そして、ECU80は、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの、減速開始時から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)が経過するまでの間に低下した温度低下の傾きを算出する。続いて、ECU80は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度のそれぞれの温度低下の傾きの差を算出して、この傾きの差の絶対値が第3閾値R3以下か否かを判定する。
【0105】
尚、第3閾値R3は、排気切替弁53が閉弁信号を受信して、上流側副排気管43Rを正常に閉鎖した状態における、減速開始時から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過するまでの、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの温度低下の傾きの差の絶対値よりも少し小さい(例えば、約5%~10%小さい)数値である。この第3閾値R3は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、ベンチテスト等によって決定される。
【0106】
例えば、
図8に示すように、減速を開始した時間T21から所定の第5時間(例えば、数秒である。)経過した時間T22までの、第1排気ガス温度71の温度低下の傾きA21(第5変化量)は、A21=(P2-P1)/(T22-T21)である。同様に、排気切替弁53が正常に閉弁された際には、加速を開始した時間T21から所定の第5時間(例えば、数秒である。)経過した時間T22までの、第2排気ガス温度72の温度低下の傾きB21(第6変化量)は、小さな傾きである。従って、第3閾値R3は、(A21-B21)の絶対値よりも少し小さい(例えば、約5%~10%小さい)数値に設定されて、予めEEPROMに記憶されている。
【0107】
一方、排気切替弁53が、開弁状態から動作しなかった(いわゆる開固着である。)、又は、上流側副排気管43Rの閉鎖途中で停止した、若しくは、排気切替弁53が欠けた等の閉切替不良の場合には、減速を開始した時間T21から所定の第5時間(例えば、数秒である。)経過した時間T22までの、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度73の温度低下は、排気切替弁53が正常に閉弁された際の第2排気ガス温度72の温度低下よりも大きくなる。つまり、減速を開始した時間T21から所定の第5時間(例えば、数秒である。)経過した時間T22までの、閉切替不良時の第2排気ガス温度73の傾きB22(第6変化量)は、閉弁正常時の第2排気ガス温度72の傾きB21よりも大きくなる。
【0108】
具体的には、
図8に示すように、排気切替弁53の閉切替不良の際には、減速を開始した時間T21から所定の第5時間(例えば、数秒である。)経過した時間T22までの、第2排気ガス温度73の温度低下の傾きB22は、B22=(Q2-Q1)/(T22-T21)である。従って、排気切替弁53の閉切替不良の場合には、減速を開始した時間T21から所定の第5時間(例えば、数秒である。)経過した時間T22までの、第1排気ガス温度71の温度上昇の傾きA21と、第2排気ガス温度73の温度上昇の傾きB22との差(A21-B22)の絶対値は、第3閾値R3以下の数値となる。
【0109】
図7に示すように、上記ステップS35で、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度の、減速開始時から所定の第5時間(例えば、数秒である。)経過するまでの、それぞれの温度低下の傾きの差の絶対値が、第3閾値R3以下であると判定した場合には(S35:YES)、ECU80は、排気切替弁53が閉切替不良であると判定して、上記ステップS24の処理を実行した後、ステップS37に進む。尚、ECU80は、図示省略した別の処理にて、閉切替不良フラグが「ON」に設定されている場合には、警告ランプ55(
図1参照)を点灯する。従って、閉切替フラグが「OFF」に再設定されるまで、警告ランプ55は点灯される。
【0110】
続いて、ステップS37において、ECU80は、減速フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0111】
一方、上記ステップS35で、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度の、減速開始時から所定の第5時間(例えば、数秒である。)経過するまでの、それぞれの温度上昇の傾きの差の絶対値が、第3閾値R3より大きいと判定した場合には(S35:NO)、ECU80は、排気切替弁53が正常に閉弁された(閉切替正常である)と判定して、上記ステップS26の処理を実行した後、上記ステップS37に進む。
【0112】
尚、開切替不良フラグは、ECU80の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。また、ECU80は、図示省略した別の処理にて、閉切替不良フラグ及び開切替不良フラグが「OFF」に設定された場合には、警告ランプ55(
図1参照)を消灯する。従って、警告ランプ55が点灯されていた場合には、消灯される。
【0113】
ステップS37において、ECU80は、減速フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0114】
他方、上記ステップS22で、排気切替弁53に対して出力した切替信号が閉弁信号でない、つまり、排気切替弁53に対して開弁信号(開弁切替指示)を出力したと判定した場合には(S22:NO)、ECU80は、上記ステップS27の処理に替えて、ステップS36に進む。ステップS36において、ECU80は、上記ステップS18でRAMに記憶した減速開始時の主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度P1と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度Q1、及び、上記ステップS21でRAMに記憶した減速開始時から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過した減速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2を読み出す。
【0115】
そして、ECU80は、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの、所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)の間に低下した温度低下の傾きを算出する。続いて、ECU80は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度のそれぞれの温度低下の傾きの差を算出して、この傾きの差の絶対値が第4閾値R4以上か否かを判定する。
【0116】
尚、第4閾値R4は、排気切替弁53が開弁信号を受信して、上流側副排気管43Rを正常に開口した状態における、減速開始時から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過するまでの、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの温度低下の傾きの差の絶対値よりも少し大きい(例えば、約5%~10%大きい)数値である。この第4閾値R4は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、ベンチテスト等によって決定される。
【0117】
例えば、
図9に示すように、減速を開始した時間T31から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T32までの、第1排気ガス温度71の温度低下の傾きA31(第7変化量)は、A31=(P2-P1)/(T32-T31)である。同様に、排気切替弁53が正常に開弁された際には、減速を開始した時間T31から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T32までの、第2排気ガス温度72の温度上昇の傾きB31(第8変化量)は、第1排気ガス温度71の温度上昇の傾きA31にほぼ等しい、又は、少し小さい傾きである。従って、第4閾値R4は、(A31-B31)の絶対値よりも少し大きい(例えば、約5%~10%大きい)数値に設定されて、予めEEPROMに記憶されている。
【0118】
一方、排気切替弁53が、閉弁状態から動作しなかった(いわゆる閉固着である。)、又は、上流側副排気管43Rの開口途中で停止した等の開切替不良の場合には、減速を開始した時間T31から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T32までの、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度73の温度低下は、排気切替弁53が正常に開弁された際の第2排気ガス温度72の温度低下よりも小さくなる。つまり、減速を開始した時間T31から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T32までの、開切替不良時の第2排気ガス温度73の傾きB32(第6変化量)は、開弁正常時の第2排気ガス温度72の傾きB31よりも小さくなる。
【0119】
具体的には、
図9に示すように、排気切替弁53の開切替不良の際には、減速を開始した時間T31から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T32までの、第2排気ガス温度73の温度低下の傾きB32は、B32=(Q2-Q1)/(T32-T31)である。従って、排気切替弁53の開切替不良の場合には、減速を開始した時間T31から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T32までの、第1排気ガス温度71の温度上昇の傾きA31と、第2排気ガス温度73の温度上昇の傾きB32との差(A31-B32)の絶対値は、第4閾値R4以上の数値となる。
【0120】
図7に示すように、上記ステップS36で、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度の、減速開始時から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過するまでの、それぞれの温度低下の傾きの差の絶対値が、第4閾値R4以上であると判定した場合には(S36:YES)、ECU80は、排気切替弁53が開切替不良であると判定して、ステップS28の処理を実行した後、上記ステップS37に進む。尚、ECU80は、図示省略した別の処理にて、開切替不良フラグが「ON」に設定された場合には、警告ランプ55(
図1参照)を点灯する。従って、開切替フラグが「OFF」に再設定されるまで、警告ランプ55は点灯される。
【0121】
続いて、ステップS37において、ECU80は、減速フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0122】
一方、上記ステップS36で、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度の、減速開始時から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過するまでの、それぞれの温度低下の傾きの差の絶対値が、第4閾値R4未満であると判定した場合には(S36:NO)、ECU80は、排気切替弁53が正常に開弁された(開切替正常である)と判定して、上記ステップS26の処理を実行した後、上記ステップS37に進む。尚、ECU80は、図示省略した別の処理にて、閉切替不良フラグ及び開切替不良フラグが「OFF」に設定された場合には、警告ランプ55(
図1参照)を消灯する。従って、警告ランプ55が点灯されていた場合には、消灯される。
【0123】
ステップS37において、ECU80は、減速フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0124】
以上詳細に説明した通り、第2実施形態に係る内燃機関の制御システム91(
図1参照)では、ECU80は、閉弁信号が入力された排気切替弁53が確実に閉弁状態になるまで待った後、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの、減速開始時から所定の第5時間(例えば、数秒である。)が経過するまでの間に低下した温度低下の傾きを算出する。そして、ECU80は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度のそれぞれの温度低下の傾きの差を算出して、この傾きの差の絶対値が第3閾値R3以下であると判定した場合には、排気切替弁53が閉切替不良であると判定する。
【0125】
これにより、ECU80は、閉弁信号が入力された排気切替弁53が確実に閉弁状態になるまで待った後、減速開始時から所定の第5時間(例えば、数秒である。)が経過するまでの第1排気ガス温度の温度低下の傾き(第5変化量)と、第2排気ガス温度の温度低下の傾き(第6変化量)を取得するため、排気切替弁53の閉切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、ECU80は、減速開始時(減速開始タイミング)から早期に、排気切替弁53の閉切替不良を検出することが可能となり、排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、減速開始時(減速開始タイミング)から所定の第5時間(例えば、数秒である。)経過するまでの短時間の検査で、排気切替弁の閉切替不良を検出することが可能となり、検査時間を短縮することができる。
【0126】
また、ECU80は、開弁信号が入力された排気切替弁53が確実に開弁状態になるまで待った後、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの、減速開始時から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)が経過するまでの間に低下した温度低下の傾きを算出する。そして、ECU80は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度のそれぞれの温度低下の傾きの差を算出して、この傾きの差の絶対値が第4閾値R4以上であると判定した場合には、排気切替弁53が開切替不良であると判定する。
【0127】
これにより、ECU80は、開弁信号が入力された排気切替弁53が確実に開弁状態になるまで待った後、減速開始タイミングからの第1排気ガス温度の温度低下の傾き(第7変化量)と、第2排気ガス温度の温度低下の傾き(第8変化量)とを取得するため、排気切替弁53の開切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、ECU80は、減速開始時(減速開始タイミング)から早期に、排気切替弁53が開弁状態に達していない開切替不良を検出することが可能となり、排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、減速開始時(減速開始タイミング)から所定の第5時間(第6時間)(例えば、数秒である。)経過するまでの短時間の検査で、排気切替弁53の開切替不良を検出することが可能となり、検査時間を短縮することができる。
【0128】
更に、主タービン21Aの出口側に第1温度検出装置25を設け、副タービン22Aの出口側に第2温度検出装置26を設けることによって、排気切替弁53の閉切替不良と開切替不良を検出することができるため、排気切替弁53にポジションセンサ等を取り付ける必要がなく、製造コストを低減できる。
【0129】
[第3実施形態]
次に、本発明に係る内燃機関の制御システムを具体化した第3実施形態について
図4、
図5、
図10及び
図11に基づいて説明する。尚、以下の説明において、第1実施形態に係る内燃機関の制御システム1の構成等と同一符号は、第1実施形態に係る内燃機関の制御システム1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0130】
第3実施形態に係る内燃機関の制御システム92(
図1参照)の構成及び制御処理等は、第1実施形態に係る内燃機関の制御システム1の構成及び制御処理とほぼ同じである。但し、第3実施形態に係る内燃機関の制御システム92のECU80は、上記「第1排気切替弁の不良判定処理」に替えて、加速を開始した際に、排気切替弁53の開弁又は閉弁の切替不良を検出する「第3排気切替弁の不良判定処理」を実行する点で異なっている。
【0131】
次に、加速を開始した際に、排気切替弁53の開弁又は閉弁の切替不良を検出する「第3排気切替弁の不良判定処理」について
図4、
図5、
図10及び
図11に基づいて説明する。ECU80は、起動されると所定時間間隔(例えば、数ミリ秒~数10ミリ秒間隔)にて、
図10及び
図11に示す処理を起動し、ステップS11へと処理を進める。尚、
図10及び
図11にフローチャートで示されるプログラムは、ECU80のEEPROMに予め記憶されている。
【0132】
図10に示すように、ECU80は、上記ステップS11乃至ステップS17の処理を実行する。そして、ステップS17で、エンジン10の加速が開始されていないと判定した場合には(S17:NO)、ECU80は、当該処理を終了する。一方、エンジン10の加速が開始されたと判定した場合には(S17:YES)、ECU80は、上記ステップS18の処理を実行しないで、上記ステップS19に進む。つまり、ECU80は、加速開始時の主ターボチャージャ21の主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、加速開始時の副ターボチャージャ22の副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度を検出しない。
【0133】
ステップS19において、ECU80は、加速中である旨を表す加速フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して、再度RAMに記憶する。そして、ECU80は、加速を開始してから経過した経過時間をカウントする第2経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、初期化した後、「1」加算してRAMに記憶した後、上記ステップS20乃至ステップS22の処理を実行する。
【0134】
ステップS22おいて、ECU80は、上記ステップS14でRAMに記憶した排気切替弁53に対して出力した切替信号を再度RAMから読み出し、切替信号が閉弁信号であるか否か、つまり、排気切替弁53に対して閉弁切替指示を出力したか否かを判定する。そして、排気切替弁53に対して出力した切替信号が閉弁信号である、つまり、排気切替弁53に対して閉弁切替指示を出力したと判定した場合には(S22:YES)、ECU80は、上記ステップS23の処理に替えて、ステップS101に進む。
【0135】
ステップS101において、ECU80は、上記ステップS21でRAMに記憶した加速開始時から所定の第2時間(第7時間)(例えば、数秒である。)経過した加速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2を読み出す。そして、ECU80は、第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2の温度差Δ1、即ち、Δ1=(P2-Q2)を算出して、この温度差Δ1の絶対値が第5閾値R5以下であるか否かを判定する。
【0136】
尚、第5閾値R5は、排気切替弁53が閉弁信号を受信して、上流側副排気管43Rを正常に閉鎖した状態における、加速開始時から所定の第2時間(第7時間)(例えば、数秒である。)経過した際の、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度との温度差の絶対値よりも少し小さい(例えば、約5%~10%小さい)数値である。この第5閾値R5は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、ベンチテスト等によって決定される。
【0137】
例えば、
図4に示すように、第5閾値R5は、加速を開始した時間T1から所定の第2時間(第7時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T2における、第1排気ガス温度71の温度P2と、第2排気ガス温度72の温度Q3との温度差(P2-Q3)の絶対値よりも少し小さい(例えば、約5%~10%小さい)数値に設定されて、予めEEPROMに記憶されている。
【0138】
一方、排気切替弁53が、開弁状態から動作しなかった(いわゆる開固着である。)、又は、上流側副排気管43Rの閉鎖途中で停止した、若しくは、排気切替弁53が欠けた等の閉切替不良の場合には、加速を開始した時間T1から所定の第2時間(第7時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T2における、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度73の温度Q2は、排気切替弁53が正常に閉弁された際の第2排気ガス温度72の温度Q3よりも高くなる。つまり、加速を開始した時間T1から所定の第2時間(第7時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T2における、閉切替不良時の第2排気ガス温度73の温度Q2は、閉切替正常時の第2排気ガス温度72の温度Q3よりも高くなる。
【0139】
具体的には、
図4に示すように、排気切替弁53の閉切替不良の際には、加速を開始した時間T1から所定の第2時間(第7時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T2における、第1排気ガス温度71の温度P2と第2排気ガス温度73の温度Q2との温度差Δ1の絶対値は、第5閾値R5以下の数値となる。
【0140】
図11に示すように、上記ステップS101で、加速開始時から所定の第2時間(第7時間)(例えば、数秒である。)経過した加速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2との温度差Δ1の絶対値が第5閾値R5以下であると判定した場合には(S101:YES)、ECU80は、排気切替弁53が閉切替不良であると判定して、上記ステップS24乃至ステップS25の処理を実行した後、当該処理を終了する。
【0141】
尚、閉切替不良フラグは、ECU80の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。また、ECU80は、図示省略した別の処理にて、閉切替不良フラグが「ON」に設定された場合には、警告ランプ55(
図1参照)を点灯する。従って、閉切替フラグが「OFF」に再設定されるまで、警告ランプ55は点灯される。
【0142】
一方、上記ステップS101で、加速開始時から所定の第2時間(第7時間)(例えば、数秒である。)経過した加速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2との温度差Δ1の絶対値が第5閾値R5より大きいと判定した場合には(S101:NO)、ECU80は、排気切替弁53が正常に閉弁された(閉切替正常である)と判定して、上記ステップS26の処理を実行した後、上記ステップS25の処理を実行して、当該処理を終了する。尚、ECU80は、図示省略した別の処理にて、閉切替不良フラグ及び開切替不良フラグが「OFF」に設定された場合には、警告ランプ55(
図1参照)を消灯する。従って、警告ランプ55が点灯されていた場合には、消灯される。
【0143】
他方、上記ステップS22で、排気切替弁53に対して出力した切替信号が閉弁信号でない、つまり、排気切替弁53に対して開弁信号(開弁切替指示)を出力したと判定した場合には(S22:NO)、ECU80は、上記ステップS27の処理に替えて、ステップS102に進む。ステップS102において、ECU80は、上記ステップS21でRAMに記憶した加速開始時から所定の第2時間(第8時間)(例えば、数秒である。)経過した加速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2を読み出す。そして、ECU80は、第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2の温度差Δ2、即ち、Δ2=(P2-Q2)を算出して、この温度差Δ2の絶対値が第6閾値R6以上であるか否かを判定する。
【0144】
尚、第6閾値R6は、排気切替弁53が開弁信号を受信して、上流側副排気管43Rを正常に開口した状態における、加速開始時から所定の第2時間(第8時間)(例えば、数秒である。)経過した際の、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度との温度差の絶対値よりも少し大きい(例えば、約5%~10%大きい)数値である。この第6閾値R6は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、ベンチテスト等によって決定される。
【0145】
例えば、
図5に示すように、加速を開始した時間T11から所定の第2時間(第8時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T12における、第1排気ガス温度71の温度P2と、第2排気ガス温度72の温度Q3との温度差(P2-Q3)の絶対値よりも少し大きい(例えば、約5%~10%大きい)数値に設定されて、予めEEPROMに記憶されている。
【0146】
一方、排気切替弁53が、閉弁状態から動作しなかった(いわゆる閉固着である。)、又は、上流側副排気管43Rの開口途中で停止した等の開切替不良の場合には、加速を開始した時間T11から所定の第2時間(第8時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T12における、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度73の温度Q2は、排気切替弁53が正常に開弁された際の第2排気ガス温度72の温度Q3よりも低くなる。つまり、加速を開始した時間T11から所定の第2時間(第8時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T12における、開切替不良時の第2排気ガス温度73の温度Q2は、開切替正常時の第2排気ガス温度72の温度Q3よりも低くなる。
【0147】
具体的には、
図5に示すように、排気切替弁53の開切替不良の際には、加速を開始した時間T11から所定の第2時間(第8時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T12における、第1排気ガス温度71の温度P2と第2排気ガス温度73の温度Q2との温度差Δ2の絶対値は、第6閾値R6以上の数値となる。
【0148】
図11に示すように、上記ステップS102で、加速開始時から所定の第2時間(第8時間)(例えば、数秒である。)経過した加速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2との温度差Δ2の絶対値が第6閾値R6以上であると判定した場合には(S102:YES)、ECU80は、排気切替弁53が開切替不良であると判定して、上記ステップS28の処理を実行した後、上記ステップS25の処理を実行して、当該処理を終了する。尚、ECU80は、図示省略した別の処理にて、開切替不良フラグが「ON」に設定された場合には、警告ランプ55(
図1参照)を点灯する。従って、開切替フラグが「OFF」に再設定されるまで、警告ランプ55は点灯される。
【0149】
一方、上記ステップS102で、加速開始時から所定の第2時間(第8時間)(例えば、数秒である。)経過した加速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2との温度差Δ2の絶対値が第6閾値R6未満であると判定した場合には(S102:NO)、ECU80は、排気切替弁53が正常に開弁された(開切替正常である)と判定して、上記ステップS26の処理を実行した後、上記ステップS25の処理を実行して、当該処理を終了する。尚、ECU80は、図示省略した別の処理にて、閉切替不良フラグ及び開切替不良フラグが「OFF」に設定された場合には、警告ランプ55(
図1参照)を消灯する。従って、警告ランプ55が点灯されていた場合には、消灯される。
【0150】
以上詳細に説明した通り、第3実施形態に係る内燃機関の制御システム92では、ECU80は、閉弁信号が入力された排気切替弁53が確実に閉弁状態になるまで待った後、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの、加速開始時から所定の第2時間(第7時間)(例えば、数秒である。)が経過した加速中の温度を検出する。そして、ECU80は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度の温度差Δ1を算出して、この温度差Δ1の絶対値が第5閾値R5以下であると判定した場合には、排気切替弁53が閉切替不良であると判定する。
【0151】
これにより、ECU80は、閉弁信号が入力された排気切替弁53が確実に閉弁状態になるまで待った後、加速開始時から所定の第2時間(第7時間)(例えば、数秒である。)が経過した際の第1排気ガス温度と第2排気ガス温度とを取得するため、排気切替弁53の閉切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、ECU80は、比較的低回転からの加速で、排気切替弁53の閉切替不良を検出することができる。従って、ECU80は、低負荷で早期に排気切替弁53の閉切替不良を検出することが可能となり、動力不足や排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、エンジン10の高負荷までの運転が不要となり、排気切替弁53の閉切替不良を検出する検査時間を短縮することができる。
【0152】
また、ECU80は、開弁信号が入力された排気切替弁53が確実に開弁状態になるまで待った後、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの、加速開始時から所定の第2時間(第8時間)(例えば、数秒である。)が経過した加速中の第1排気ガス温度と第2排気ガス温度を検出する。そして、ECU80は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度の温度差Δ2を算出して、この温度差Δ2の絶対値が第6閾値R6以上であると判定した場合には、排気切替弁53が開切替不良であると判定する。
【0153】
これにより、ECU80は、開弁信号が入力された排気切替弁53が確実に開弁状態になるまで待った後、加速開始時から所定の第2時間(第8時間)(例えば、数秒である。)が経過した加速中の第1排気ガス温度と第2排気ガス温度とを取得するため、排気切替弁53の開切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、ECU80は、加速開始時(加速開始タイミング)から早期に、排気切替弁53の開切替不良を検出することが可能となり、動力不足や排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、エンジン10の高負荷までの運転が不要となり、排気切替弁53の開切替不良を検出する検査時間を短縮することができる。
【0154】
更に、主タービン21Aの出口側に第1温度検出装置25を設け、副タービン22Aの出口側に第2温度検出装置26を設けることによって、排気切替弁53の閉切替不良と開切替不良を検出することができるため、排気切替弁53にポジションセンサ等を取り付ける必要がなく、製造コストを低減できる。
【0155】
[第4実施形態]
次に、本発明に係る内燃機関の制御システムを具体化した第4実施形態について
図8、
図9、
図12及び
図13に基づいて説明する。尚、以下の説明において、第1実施形態に係る内燃機関の制御システム1の構成等と同一符号は、第1実施形態に係る内燃機関の制御システム1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0156】
第4実施形態に係る内燃機関の制御システム93(
図1参照)の構成及び制御処理等は、第1実施形態に係る内燃機関の制御システム1の構成及び制御処理とほぼ同じである。但し、第4実施形態に係る内燃機関の制御システム93のECU80は、上記「第1排気切替弁の不良判定処理」に替えて、減速を開始した際に、排気切替弁53の開弁又は閉弁の切替不良を検出する「第4排気切替弁の不良判定処理」を実行する点で異なっている。
【0157】
次に、減速を開始した際に、排気切替弁53の開弁又は閉弁の切替不良を検出する「第4排気切替弁の不良判定処理」について
図8、
図9、
図12及び
図13に基づいて説明する。ECU80は、起動されると所定時間間隔(例えば、数ミリ秒~数10ミリ秒間隔)にて、
図12及び
図13に示す処理を起動し、ステップS11へと処理を進める。尚、
図12及び
図13にフローチャートで示されるプログラムは、ECU80のEEPROMに予め記憶されている。
【0158】
図12に示すように、ECU80は、上記ステップS11の処理を実行した後、切替フラグが「ON」に設定されていると判定した場合には(S11:YES)、ECU80は、上記ステップS15の処理に進む。一方、切替フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(S11:NO)、ECU80は、上記ステップS12の処理に替えて、ステップS111に進む。
【0159】
ステップS111において、ECU80は、減速を開始した、つまり、減速中である旨を表す減速フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。尚、減速フラグは、ECU80の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶される。そして、減速フラグが「ON」に設定されていると判定した場合には(S111:YES)、ECU80は、後述のステップS114に進む。
【0160】
一方、減速フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(S111:NO)、ECU80は、上記ステップS13乃至ステップS16の処理を実行する。そして、上記ステップS13で、排気切替弁53に対して、排気切替弁53を開弁させる開弁信号、又は、排気切替弁53を閉弁させる閉弁信号を出力したと判定した場合に(S13:YES)、若しくは、上記ステップS16の処理を実行した後には、ECU80は、上記ステップS17の処理に替えて、ステップS112に進む。
【0161】
ステップS112において、ECU80は、エンジン10の減速が開始されたか否かを判定する。具体的には、ECU80は、アクセルペダル踏込量検出装置56からの検出信号に基づいて検出した運転者によるアクセルペダルの踏込量(運転者の減速要求)と、回転検出装置57からの検出信号に基づいて検出したエンジン10のクランク軸の回転数の変化量と、からエンジン10の減速が開始されたか否かを判定する。そして、エンジン10の減速が開始されていないと判定した場合には(S111:NO)、ECU80は、当該処理を終了する。
【0162】
一方、エンジン10の減速が開始されたと判定した場合には(S111:YES)、ECU80は、上記ステップS18の処理を実行しないで、上記ステップS19の処理に替えて、ステップS113に進む。ステップS113において、ECU80は、減速中である旨を表す減速フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して、再度RAMに記憶する。そして、ECU80は、減速を開始してから経過した経過時間をカウントする第3経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、初期化した後、「1」加算してRAMに記憶した後、上記ステップS20の処理に替えて、ステップS114に進む。
【0163】
ステップS114において、ECU80は、加速を開始してから経過した経過時間をカウントする第3経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)に達したか否かを判定する。つまり、ECU80は、減速を開始してから現在までの経過時間が所定の第9時間(例えば、数秒である。)に達したか否かを判定する。尚、所定の第9時間(例えば、数秒である。)は、EEPROMに予め記憶されている。
【0164】
そして、減速を開始してから現在までの経過時間が所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)に達していないと判定した場合には(S114:NO)、ECU80は、第3経過時間カウンタのカウント値をRAMから読み出し、「1」加算してRAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0165】
一方、減速を開始してから現在までの経過時間が所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)に達したと判定した場合には(S114:YES)、ECU80は、上記ステップS21に進む。ステップS21において、ECU80は、第1温度検出装置25によって、主ターボチャージャ21の主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度を検出して、減速中の第1排気ガス温度P2としてRAMに記憶する。また、ECU80は、第2温度検出装置26によって、副ターボチャージャ22の副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度を検出して、減速中の第2排気ガス温度Q2としてRAMに記憶する。
【0166】
続いて、ECU80は、上記ステップS22の処理を実行する。そして、排気切替弁53に対して出力した切替信号が閉弁信号である、つまり、排気切替弁53に対して閉弁切替指示を出力したと判定した場合には(S22:YES)、ECU80は、上記ステップS23の処理に替えて、ステップS115に進む。
【0167】
ステップS115において、ECU80は、上記ステップS21でRAMに記憶した減速開始時から所定の第9時間(例えば、数秒である。)経過した減速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2を読み出す。そして、ECU80は、第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2の温度差Δ11、即ち、Δ11=(P2-Q2)を算出して、この温度差Δ11の絶対値が第7閾値R7以下であるか否かを判定する。
【0168】
尚、第7閾値R7は、排気切替弁53が閉弁信号を受信して、上流側副排気管43Rを正常に閉鎖した状態における、減速開始時から所定の第9時間(例えば、数秒である。)経過した際の、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度との温度差の絶対値よりも少し小さい(例えば、約5%~10%小さい)数値である。この第7閾値R7は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、ベンチテスト等によって決定される。
【0169】
例えば、
図8に示すように、第7閾値R7は、減速を開始した時間T21から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T22における、第1排気ガス温度71の温度P2と、第2排気ガス温度72の温度Q3との温度差(P2-Q3)の絶対値よりも少し小さい(例えば、約5%~10%小さい)数値に設定されて、予めEEPROMに記憶されている。
【0170】
一方、排気切替弁53が、開弁状態から動作しなかった(いわゆる開固着である。)、又は、上流側副排気管43Rの閉鎖途中で停止した、若しくは、排気切替弁53が欠けた等の閉切替不良の場合には、減速を開始した時間T21から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T22における、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度73の温度Q2は、排気切替弁53が正常に閉弁された際の第2排気ガス温度72の温度Q3よりも低くなる。つまり、減速を開始した時間T21から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T22における、閉切替不良時の第2排気ガス温度73の温度Q2は、閉切替正常時の第2排気ガス温度72の温度Q3よりも低くなる。
【0171】
具体的には、
図8に示すように、排気切替弁53の閉切替不良の際には、減速を開始した時間T21から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T22における、第1排気ガス温度71の温度P2と第2排気ガス温度73の温度Q2との温度差Δ11の絶対値は、第7閾値R7以下の数値となる。
【0172】
図13に示すように、上記ステップS115で、減速開始時から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した減速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2との温度差Δ11の絶対値が第7閾値R7以下であると判定した場合には(S115:YES)、ECU80は、排気切替弁53が閉切替不良であると判定して、上記ステップS24の処理を実行した後、ステップS117に進む。
【0173】
尚、閉切替不良フラグは、ECU80の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。ECU80は、図示省略した別の処理にて、閉切替不良フラグが「ON」に設定された場合には、警告ランプ55(
図1参照)を点灯する。従って、閉切替フラグが「OFF」に再設定されるまで、警告ランプ55は点灯される。
【0174】
続いて、ステップS117において、ECU80は、減速フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0175】
一方、上記ステップS115で、減速開始時から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した減速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2との温度差Δ11の絶対値が第7閾値R7より大きいと判定した場合には(S115:NO)、ECU80は、排気切替弁53が正常に閉弁された(閉切替正常である)と判定して、上記ステップS26の処理を実行した後、上記ステップS117に進む。
【0176】
尚、開切替不良フラグは、ECU80の起動時に、「OFF」に設定されてRAMに記憶されている。また、ECU80は、図示省略した別の処理にて、閉切替不良フラグ及び開切替不良フラグが「OFF」に設定された場合には、警告ランプ55(
図1参照)を消灯する。従って、警告ランプ55が点灯されていた場合には、消灯される。
【0177】
ステップS117において、ECU80は、減速フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0178】
他方、上記ステップS22で、排気切替弁53に対して出力した切替信号が閉弁信号でない、つまり、排気切替弁53に対して開弁信号(開弁切替指示)を出力したと判定した場合には(S22:NO)、ECU80は、上記ステップS27の処理に替えて、ステップS116に進む。ステップS116において、ECU80は、上記ステップS21でRAMに記憶した減速開始時から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した減速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2を読み出す。そして、ECU80は、第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2の温度差Δ12、即ち、Δ12=(P2-Q2)を算出して、この温度差Δ12の絶対値が第8閾値R8以上であるか否かを判定する。
【0179】
尚、第8閾値R8は、排気切替弁53が開弁信号を受信して、上流側副排気管43Rを正常に開口した状態における、減速開始時から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した際の、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度との温度差の絶対値よりも少し大きい(例えば、約5%~10%大きい)数値である。この第8閾値R8は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、ベンチテスト等によって決定される。
【0180】
例えば、
図9に示すように、減速を開始した時間T31から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T32における、第1排気ガス温度71の温度P2と、第2排気ガス温度72の温度Q3との温度差(P2-Q3)の絶対値よりも少し大きい(例えば、約5%~10%大きい)数値に設定されて、予めEEPROMに記憶されている。
【0181】
一方、排気切替弁53が、閉弁状態から動作しなかった(いわゆる閉固着である。)、又は、上流側副排気管43Rの開口途中で停止した等の開切替不良の場合には、減速を開始した時間T31から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T32における、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度73の温度Q2は、排気切替弁53が正常に開弁された際の第2排気ガス温度72の温度Q3よりも高くなる。つまり、減速を開始した時間T31から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T32における、開切替不良時の第2排気ガス温度73の温度Q2は、開切替正常時の第2排気ガス温度72の温度Q3よりも高くなる。
【0182】
具体的には、
図9に示すように、排気切替弁53の開切替不良の際には、減速を開始した時間T31から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した時間T32における、第1排気ガス温度71の温度P2と第2排気ガス温度73の温度Q2との温度差Δ12の絶対値は、第8閾値R8以上の数値となる。
【0183】
図13に示すように、上記ステップS116で、減速開始時から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した減速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2との温度差Δ12の絶対値が第8閾値R8以上であると判定した場合には(S116:YES)、ECU80は、排気切替弁53が開切替不良であると判定して、上記ステップS28の処理を実行した後、上記ステップS117に進む。尚、ECU80は、図示省略した別の処理にて、開切替不良フラグが「ON」に設定された場合には、警告ランプ55(
図1参照)を点灯する。従って、開切替フラグが「OFF」に再設定されるまで、警告ランプ55は点灯される。
【0184】
続いて、ステップS117において、ECU80は、減速フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0185】
一方、上記ステップS116で、減速開始時から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過した減速中の第1排気ガス温度P2と第2排気ガス温度Q2との温度差Δ12の絶対値が第8閾値R8未満であると判定した場合には(S116:NO)、ECU80は、排気切替弁53が正常に開弁された(開切替正常である)と判定して、上記ステップS26の処理を実行した後、上記ステップS117に進む。尚、ECU80は、図示省略した別の処理にて、閉切替不良フラグ及び開切替不良フラグが「OFF」に設定された場合には、警告ランプ55(
図1参照)を消灯する。従って、警告ランプ55が点灯されていた場合には、消灯される。
【0186】
ステップS117において、ECU80は、減速フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して、再度RAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0187】
以上詳細に説明した通り、第4実施形態に係る内燃機関の制御システム93では、ECU80は、閉弁信号が入力された排気切替弁53が確実に閉弁状態になるまで待った後、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの、減速開始時から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)が経過した減速中の温度を検出する。そして、ECU80は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度の温度差Δ11を算出して、この温度差Δ11の絶対値が第7閾値R7以下であると判定した場合には、排気切替弁53が閉切替不良であると判定する。
【0188】
これにより、ECU80は、閉弁信号が入力された排気切替弁53が確実に閉弁状態になるまで待った後、減速開始時から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)が経過した際の第1排気ガス温度と第2排気ガス温度とを取得するため、排気切替弁53の閉切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、ECU80は、減速開始時(減速開始タイミング)から早期に、排気切替弁53の閉切替不良を検出することが可能となり、排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、減速開始時(減速開始タイミング)から所定の第9時間(例えば、数秒である。)経過するまでの短時間の検査で、排気切替弁の閉切替不良を検出することが可能となり、検査時間を短縮することができる。
【0189】
また、ECU80は、開弁信号が入力された排気切替弁53が確実に開弁状態になるまで待った後、主タービン21Aの出口側の第1排気ガス温度と、副タービン22Aの出口側の第2排気ガス温度のそれぞれの、減速開始時から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)が経過した減速中の第1排気ガス温度と第2排気ガス温度を検出する。そして、ECU80は、第1排気ガス温度と第2排気ガス温度の温度差Δ12を算出して、この温度差Δ12の絶対値が第8閾値R8以上であると判定した場合には、排気切替弁53が開切替不良であると判定する。
【0190】
これにより、ECU80は、開弁信号が入力された排気切替弁53が確実に開弁状態になるまで待った後、減速開始時から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)が経過した減速中の第1排気ガス温度と第2排気ガス温度とを取得するため、排気切替弁53の開切替不良の検出精度の向上を図ることができる。また、ECU80は、減速開始時(減速開始タイミング)から早期に、排気切替弁53が開弁状態に達していない開切替不良を検出することが可能となり、排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、減速開始時(減速開始タイミング)から所定の第9時間(第10時間)(例えば、数秒である。)経過するまでの短時間の検査で、排気切替弁53の開切替不良を検出することが可能となり、検査時間を短縮することができる。
【0191】
更に、主タービン21Aの出口側に第1温度検出装置25を設け、副タービン22Aの出口側に第2温度検出装置26を設けることによって、排気切替弁53の閉切替不良と開切替不良を検出することができるため、排気切替弁53にポジションセンサ等を取り付ける必要がなく、製造コストを低減できる。
【0192】
尚、本発明は前記第1実施形態乃至第4実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形、追加、削除が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。尚、以下の説明において上記
図1~
図5の前記第1実施形態に係るエンジン10等と同一符号は、前記第1実施形態に係るエンジン10等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0193】
(A)例えば、ECU80は、排気切替弁53を閉弁させる閉弁信号を出力した後、排気切替弁53を開弁させる開弁信号を出力するまでの経過時間をカウントする(計測する)閉弁経過時間カウンタ(経過時間計測部)をRAMに設けるようにしてもよい。そして、ECU80は、排気切替弁53を閉弁させる閉弁信号を出力した後、閉弁経過時間カウンタによって計測された経過時間が所定の第1閉弁経過時間に達したか否かを判定するようにしてもよい。そして、ECU80は、閉弁経過時間カウンタによって計測された経過時間が所定の第1閉弁経過時間に達したと判定した場合には、排気切替弁53を開弁させる開弁信号を出力するようにしてもよい。
【0194】
これにより、ECU80は、閉弁信号を出力した後、遅くとも所定の第1閉弁経過時間が経過すると、排気切替弁53を強制的に開弁するように作動させることができる。従って、ECU80は、加速開始時(加速開始タイミング)、又は、減速開始時(減速開始タイミング)から所定時間(例えば、数秒である。)経過した時点において、排気切替弁53の開切替不良を検出することが可能となる。その結果、ECU80は、早期に排気切替弁53の開切替不良を検出することが可能となり、動力不足や排気ガスの悪化を回避することができる。
【0195】
(B)また、例えば、ECU80は、閉切替不良フラグを「ON」に設定した回数をカウントする閉切替不良カウンタを設けるようにしてもよい。そして、閉切替不良カウンタが所定カウント値をカウントした場合に、ECU80は、排気切替弁53が閉切替不良であると判定するようにしてもよい。これにより、排気切替弁53の閉切替不良の検出精度を高めることができる。
【0196】
(C)また、例えば、ECU80は、開切替不良フラグを「ON」に設定した回数をカウントする開切替不良カウンタを設けるようにしてもよい。そして、開切替不良カウンタが所定カウント値をカウントした場合に、ECU80は、排気切替弁53が開切替不良であると判定するようにしてもよい。これにより、排気切替弁53の開切替不良の検出精度を高めることができる。
【0197】
(D)また、例えば、ECU80は、アクセルペダル踏込量検出装置56からの検出信号に基づいて検出した運転者によるアクセルペダルの踏込量(運転者の加速要求)と、回転検出装置57からの検出信号に基づいて検出したエンジン10のクランク軸の回転数の変化量と、からエンジン10がアイドリング中であるか否かを判定するようにしてもよい。そして、ECU80は、エンジン10がアイドリング中であると判定した場合には、排気切替弁53を閉弁する閉弁信号を出力した後、所定の第1時間(例えば、数秒~10秒)経過するのを待つようにしてもよい。
【0198】
そして、所定の第1時間が経過した場合には、ECU80は、エンジン10の加速を開始して、上記「第1排気切替弁の不良判定処理」のステップS17以降の処理、又は、上記「第4排気切替弁の不良判定処理」のステップS112以降の処理を実行するようにしてもよい。
【0199】
これにより、ECU80は、アイドル中の比較的低回転からの加速で、排気切替弁53の閉切替不良を検出することが可能となる。従って、ECU80は、低負荷で早期に排気切替弁53の閉切替不良を検出することが可能となり、動力不足や排気ガスの悪化を回避することができる。また、工場出荷時等の検査においても、エンジン10の高負荷までの運転が不要となり、排気切替弁53の閉切替不良を検出する検査時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0200】
1、91、92、93 内燃機関の制御システム
10 エンジン
21 主ターボチャージャ
21A 主タービン
22 副ターボチャージャ
22A 副タービン
25 第1温度検出装置
26 第2温度検出装置
43R 上流側副排気管
53 排気切替弁
56 アクセルペダル踏込量検出装置
57 回転検出装置
80 制御装置(ECU)