(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20220315BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20220315BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K11/30
(21)【出願番号】P 2018542895
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2017035368
(87)【国際公開番号】W WO2018062446
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2016193884
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 幸祐
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 敬史
(72)【発明者】
【氏名】村上 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】新子 剛央
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-105492(JP,A)
【文献】特開2001-145297(JP,A)
【文献】特開2010-001882(JP,A)
【文献】特開平09-266651(JP,A)
【文献】実開平04-021152(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
H02K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ、および制御基板の少なくとも1つを含む電機要素と、
ステータに対向して配置されるロータと、
前記電機要素から一方側へ向かって延びる導通材と、
前記電機要素を収容するハウジングと、
前記ハウジングと共に、前記電機要素を収容する仕切壁と、
前記ハウジングの外壁および前記仕切壁の少なくとも一方の貫通孔内に設けられ、複数の前記導通材を保持するブッシュと、
を有し、
前記ブッシュは、前記導通材が挿入される挿通孔を複数有する弾性部材であり、前記貫通孔と対向する外側面に、周方向に並ぶ複数の外周リブを有
し、
前記ハウジングは前記ステータおよび前記ロータを収容する筒状部材であり、前記仕切壁は、前記ステータおよび前記ロータを覆って前記ハウジングの開口部に設けられ、
前記貫通孔は、前記仕切壁の外周端に設けられた径方向に凹む凹部と、前記ハウジングの内側面とにより構成される、
モータ。
【請求項2】
前記外周リブは、前記一方側に延びる、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ブッシュの前記挿通孔は、平面視において、前記ブッシュの外側面から前記外周リブが突出する方向の直線上に配置される、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ブッシュは、平面視において、複数の前記挿通孔の並ぶ方向に長手の形状を有し、
前記外周リブの少なくとも1つは、前記挿通孔に対して前記ブッシュの長手方向に位置する、請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記ブッシュは、平面視において、複数の前記挿通孔の並ぶ方向に長手の形状を有し、
前記外周リブの少なくとも1つは、前記挿通孔に対して前記ブッシュの短手方向に位置する、請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記ブッシュは、前記貫通孔の内側面と対向する複数の側面を有し、
少なくとも1つの前記側面は、前記外周リブを有さない面であり、
前記外周リブを有さない側面と反対側の側面は、前記外周リブを有する面である、請求項1から5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記挿通孔は、一様な内径を有する第1筒部と、
前記第1筒部から延び、前記第1筒部からより内径が大きい第2筒部とを有し、
前記外周リブは、前記第1筒部に対向して設けられる、請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
前記ブッシュは、前記挿通孔の内側面に内周リブを有する、請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項9】
前記ブッシュは、前記内周リブを複数有し、
複数の前記内周リブは、前記挿通孔の内側面の周方向に等間隔に配置される、請求項8に記載のモータ。
【請求項10】
前記挿通孔は、一様な内径を有する第1筒部と、
前記第1筒部から延び、前記第1筒部より内径が大きい第2筒部とを有し、
前記内周リブは、前記第1筒部に対向して設けられる、請求項8または9に記載のモータ。
【請求項11】
前記ステータと前記制御基板とは、軸方向に重なって配置され、
前記貫通孔を介して前記導通材で接続されている、請求項1から10のいずれかに記載のモータ。
【請求項12】
前記ブッシュは、前記外側面の一部に、前記外側面の外側へ突出する突出部を有し、
前記貫通孔の内側面の一部に、前記貫通孔の制御基板側を向く第一面が設けられ、
前記第一面と前記突出部とが接触する、請求項11に記載のモータ。
【請求項13】
前記ブッシュは、前記突出部の表面に前記外周リブを有する、請求項12に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータのハウジングや仕切壁には、内部からコイル線等を引き出す貫通孔が設けられる。上記貫通孔には、コイル線等とハウジングの接触を防止するために絶縁部材のブッシュが設けられる(例えば特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-266651号公報
【文献】特開平9-215260号公報
【文献】特開2012-223067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3では、ブッシュの抜け止め構造として、ブッシュの両端にフランジを設けた構造、または、モータの貫通孔に設置したブッシュを固定板とネジで固定する構造を採用している。しかし、フランジを有するブッシュは、取り付け時にフランジを大きく変形させる必要があるため作業が煩雑になる。また、固定板を用いる構造は、部品点数および作業工数が多くなり、製造コストも上昇する。
【0005】
本発明の一態様は、ブッシュの取り付け作業性を向上させたモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、モータは、ステータ、および制御基板の少なくとも1つを含む電機要素と、ステータに対向して配置されるロータと、前記電機要素から一方側へ向かって延びる導通材と、前記電機要素を収容するハウジングと、前記ハウジングと共に、前記電機要素を収容する仕切壁と、前記ハウジングの外壁および前記仕切壁の少なくとも一方の貫通孔内に設けられ、複数の前記導通材を保持するブッシュと、を有し、前記ブッシュは、前記導通材が挿入される挿通孔を複数有する弾性部材であり、前記貫通孔と対向する外側面に、周方向に並ぶ複数の外周リブを有し、前記ハウジングは前記ステータおよび前記ロータを収容する筒状部材であり、前記仕切壁は、前記ステータおよび前記ロータを覆って前記ハウジングの開口部に設けられ、前記貫通孔は、前記仕切壁の外周端に設けられた径方向に凹む凹部と、前記ハウジングの内側面とにより構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、モータにおいて導通材を保持するブッシュの取り付け作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のモータを示す断面図である。
【
図4】
図4は、ブッシュを拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
以下の説明においては、中心軸Jの延びる方向を上下方向とする。ただし、本明細書における上下方向は、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向(中心軸Jの軸周り)を単に「周方向」と呼ぶ。
【0010】
なお、本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0011】
図1は、本実施形態のモータ10を示す断面図である。
図2は、モータ10の斜視図である。
図3は、モータ10の平面図である。
図4は、ブッシュを拡大して示す平面図である。
図5は、
図4のI-I線に沿った断面図である。
【0012】
モータ10は、ハウジング20と、ロータ30と、ステータ40と、ベアリングホルダ(仕切壁)55と、上側ベアリング51と、下側ベアリング52と、4つのブッシュ75と、制御基板15と、を備える。本実施形態では、制御基板15とステータ40とがモータ10の電機要素を構成する。モータ10は、電機要素としての制御基板を含まない構成であってもよい。
【0013】
ハウジング20は、上下方向に延びる筒部21と、筒部21の下端に位置する底壁部23と、上側に開口する開口部20aと、を有する。ハウジング20の内周面には、下側から順に、ステータ40と、ベアリングホルダ55とが固定される。ハウジング20は、ロータ30を内部に収容する。
【0014】
筒部21は、中心軸Jを中心とする円筒状である。筒部21は、ステータ40を保持する内周面20bと、ベアリングホルダ55を保持する内周面20cと、を有する。内周面20cの内径は、内周面20bの内径よりも大きい。ハウジング20は、開口部20aから奥側(底壁部23側)へ行くに従って内径が小さくなる。
筒部21の形状は、円筒状に限られない。筒部21の形状は、内周面にステータ40とベアリングホルダ55を保持可能な範囲で変更することができる。筒部21の外形は、例えば箱形としてもよい。
【0015】
底壁部23は、ステータ40の下側に配置される。底壁部23は、下側ベアリング52を保持する筒状のベアリング保持部23aと、底壁部23を軸方向に貫通する出力軸孔22と、を有する。
【0016】
ロータ30は、シャフト31を有する。シャフト31は、上下方向に延びる中心軸Jを中心とする。ロータ30は、シャフト31とともに中心軸J周りに回転する。シャフト31の下側の端部は、出力軸孔22を通過してハウジング20の下方へ突出する。本実施形態において、上方側に制御基板15が位置し、モータ10の回転運動は下方側に出力する。ただし、下方側に制御基板15が位置し、モータ10の回転運動を上方側に出力する構造であっても良い。
【0017】
上側ベアリング51および下側ベアリング52は、シャフト31を、中心軸周りに回転可能に支持する。下側ベアリング52は、ステータ40の下側において、ベアリング保持部23aに保持される。上側ベアリング51は、ステータ40の上側において、ベアリングホルダ55に保持される。
【0018】
ステータ40は、ロータ30の径方向外側に位置する。ステータ40は、ステータコア41と、インシュレータ42と、コイル43と、を有する。インシュレータ42は、ステータコア41のティース41aに取り付けられる。コイル43は、インシュレータ42に巻き回される導線により構成され、各ティース41aに配置される。ステータ40の外周面は、ハウジング20の内周面20bに固定される。
【0019】
ステータ40は、
図1から
図3に示すように、複数のコイル43から延びる6本のコイル引出線91を有する。コイル引出線91は、ステータ40の上側において径方向外側へ引き回される。コイル引出線91は、ステータ40の外周部上において軸方向上側に折り曲げられ、ベアリングホルダ55の上側へ引き出される。そして、ベアリングホルダ55の上部に位置する制御基板15に接続される。つまり、ステータ40と制御基板15は軸方向において重なっている。
なお、ステータ40と制御基板15が接続されていれば、コイル引出線91が一方向に延びた後に、折り曲がって制御基板15に接続されても良い。ベアリングホルダ55を通過するコイル引出線91は、モータ10の電機要素から延びる導通材である。導通材としてはコイル引出線91に限られず、例えばハウジング20内に収容される制御基板15から延びる配線やコネクタピンであってもよい。
なお、制御基板15はハウジング20内に収容されていても良く、ECUカバーなどの別の筐体によって収容されても良い。制御基板15がECUカバーなどの別の筐体に収容されている場合においても、ハウジング20とECUカバーによって、ロータ30、ステータ40、制御基板15を収容することができる。
【0020】
ベアリングホルダ55は、略円板状であり、ステータ40の上側に配置される。ベアリングホルダ55は、上側ベアリング51を保持する。ベアリングホルダ55は、ハウジング20の内周面20cに固定される。ベアリングホルダ55は、ハウジング20の内部を区画する仕切壁である。仕切壁としては、ハウジング20の内部を区画する板部材であれば、ベアリングホルダ55に限られない。例えば、仕切壁は、バスバーホルダやヒートシンクを兼ねる板部材であってもよい。また、ベアリングホルダ55等の仕切壁は、ハウジング20の内周面に固定できる形状であれば、略円板状に限定される必要はなく、略四角形状などであってもよい。また、ECUカバーなどの別の筐体を備える場合には、仕切壁は、ECUカバーに取り付けられていてもよく、ECUカバーとハウジング20との間に配置されていてもよい。
【0021】
ベアリングホルダ55は、
図1から
図3に示すように、上側ベアリング51を保持する内側筒部55aと、ベアリングホルダ55の外周部においてコイル引出線91を軸方向に通過させる4つの凹部55bとを有する。
【0022】
凹部55bは、ベアリングホルダ55の外周端において径方向内側へ凹んだ部位である。本実施形態においては、2つの凹部55bは、シャフト31の軸周りに180°おきの等間隔で配置される。なお、凹部55bは2つに限定されず、等間隔に配置されなくても良い。
【0023】
ベアリングホルダ55の外周側の端面は、凹部55bを除いた領域において、ハウジング20の内周面20cに固定される。凹部55bと内周面20cとに囲まれた領域が、ベアリングホルダ55を軸方向に貫通する貫通孔60とされる。貫通孔60には、それぞれ3本ずつのコイル引出線91が挿入される。コイル引出線91は、貫通孔60に嵌め込まれたブッシュ75により保持される。また、上面図における、貫通孔60の平面形状は、図示した形状に限定されず、円形、楕円形、矩形、多角形などの様々な形状をとることができる。
【0024】
図4に示すように、平面視において、ブッシュ75は、モータ10のほぼ周方向に延びた形状を有する。ブッシュ75には、上下方向(軸方向)に貫通する3つの挿通孔75A、75B、75Cが設けられる。ブッシュ75の外側面には、複数の外周リブ81~87が設けられる。
図4および
図5において、ブッシュ75の3つの挿通孔75A~75Cには、それぞれ1本ずつのコイル引出線91a~91cが挿通される。
【0025】
ブッシュ75は、ゴムやウレタン樹脂等のエラストマー、あるいはプラスチックからなる弾性部材である。ブッシュ75は、全体がゴム弾性を有する材料からなる構成、外周リブ81~87のみがゴム弾性を有する材料からなる構成のいずれであってもよい。
ブッシュ75を弾性部材とすることにより、ブッシュ75を弾性変形させながら貫通孔60に小さい力で嵌め込むことができる。これにより、ブッシュ75の取り付け時における作業者の作業性を向上させることができる。
ブッシュ75は、絶縁性の樹脂材料からなる弾性部材としてもよい。絶縁性の弾性部材を用いることで、金属製のハウジング20やベアリングホルダ55に対してコイル引出線91を確実に絶縁することができる。
【0026】
ブッシュ75は、3つの挿通孔75A~75Cが並ぶ方向に長手の形状を有する。ブッシュ75の短手方向はブッシュの長手方向に直交する方向である。ブッシュ75の短手方向は、モータ10の径方向に一致する。具体的には、ブッシュ75の形状は、長方形や楕円などが考えられる。なお、ブッシュ75の形状は、長手の形状ではない正方形や円形であっても良い。
【0027】
ブッシュ75の径方向外側に位置する外側面75aは、ハウジング20の内周面20cに沿った略円柱状の曲面である。外側面75aには、3つの外周リブ81、82、83が設けられる。ブッシュ75は、平面視における長手方向の両端部に、長手方向の外側へ突出する突出部77a、77bを有する。一方の突出部77aの突出方向の表面外側面75c)に、外周リブ84、85が設けられる。他方の突出部77bの突出方向の先端面(外側面75d)に、外周リブ86、87が設けられる。
ブッシュ75が外側面に外周リブ81~87を有していることにより、ブッシュ75は、少なくとも外周リブ81~87が弾性変形した状態で貫通孔60に嵌め込まれる。これにより、ブッシュ75に加わる力の反力として、ブッシュ75の外側へ向かう弾性力が貫通孔60の内側面に加わる。すなわち、ブッシュ75が貫通孔60の内側面(内周面20c及び凹部55b)を押し続ける状態となる。その結果、ブッシュ75を貫通孔60から抜けにくくすることができる。
【0028】
外周リブ81~87は、ブッシュ75の外側面において、一方向(上下方向、軸方向)に延びる。外周リブ81~87の上端は、ブッシュ75の上面に達している。外周リブ81~87の下端は、ブッシュ75の下面までは達しておらず、ブッシュ75の外側面上に位置する。
このように外周リブ81~87が、ブッシュ75の上下方向の一部にのみ設けられた構成とすることで、ブッシュ75を小さい力で貫通孔60に嵌め込むことができる。
【0029】
外周リブ81~87は、ブッシュ75の周方向において離間して配置される。
仮に、ブッシュ75の外側面を一周する環状の凸部が設けられていると、ブッシュ75を貫通孔60に入れづらくなる。さらに、貫通孔60内においてもブッシュ75が傾きやすくなるため、ブッシュ75を貫通孔60内の所定位置に配置することが難しくなることが懸念される。これに対して、本実施形態の構成では、隣り合う外周リブ81~87同士の間に隙間がある。そのため、ブッシュ75と貫通孔60との間に適度な摩擦力が生じる状態でブッシュ75を貫通孔60に嵌め込むことができる。したがって、ブッシュ75を貫通孔60に容易に挿入することができ、貫通孔60内におけるブッシュ75の傾きも抑制される。
【0030】
外周リブ81~83、84、86と、挿通孔75A~75Cとは、特定の位置関係を満たして配置される。具体的に、挿通孔75Cと外周リブ83、86を挙げて説明すると、外周リブ83を通り、ブッシュ75の外側面75aから外周リブ83が突出する方向に延びる直線L1上に挿通孔75Cが配置される。また、外周リブ86を通り、外側面75dから外周リブ86が突出する方向に延びる直線L2上に挿通孔75Cが配置される。外周リブ81、84と挿通孔75Aとの位置関係、および外周リブ82と挿通孔75Bとの位置関係も、外周リブ83、86と挿通孔75Cとの位置関係と同様である。
上記の構成によれば、貫通孔60に嵌め込まれたブッシュ75の外周リブ81、84の収縮による弾性力が、挿通孔75Aに向かうため、挿通孔75Aに保持されたコイル引出線91aがより締め付けられる。また、外周リブ82の収縮による弾性力が挿通孔75Bへ向かうため、挿通孔75Bに保持されたコイル線91bがより締め付けられる。また、外周リブ83、86の収縮による弾性力が、挿通孔75Cに向かうため、挿通孔75Cに保持されたコイル線91cがより締め付けられる。以上により、コイル引出線91a~91cがブッシュ75にしっかりと保持されるため、コイル引出線91a~91cが位置決めされた状態で保持される。また、ブッシュ75が上下方向に移動することも抑制される。
【0031】
図5に示すように、突出部77a、77bは、ブッシュ75の側面上端部に設けられる。ベアリングホルダ55の凹部55bは、ブッシュ75に対応して、内周面に段差を有する形状とされる。具体的に、凹部55bは、制御基板15側の内周面56と、ステータ40側の内周面57との間に、制御基板15側を向いた平坦面からなる段差面(第一面)58を有する。凹部55bのうち、内周面56に囲まれる制御基板15側の領域は、内周面57に囲まれるステータ40側の領域に対して、突出部77a、77bを収容する分だけ幅が広い。貫通孔60に嵌め込まれたブッシュ75は、突出部77a、77bの下面において、段差面58と接触する。
上記構成によれば、段差面58に突出部77a、77bが突き当てられることにより、ブッシュ75と貫通孔60とが上下方向に位置決めされる。
【0032】
ブッシュ75の3つの挿通孔75A~75Cには、それぞれ1本ずつのコイル引出線91が挿通される。挿通孔75A~75Cは、コイル引出線91の太さと同等の内径を有する小径筒部(第1筒部)71と、小径筒部71に連続し、下方に行くに従って内径が大きくなるテーパー筒部(第2筒部)72と、テーパー筒部72に連続し、一様な内径を有する大径筒部(第2筒部)73とを有する。
上記構成によれば、下部側の大径筒部73からコイル引出線91a~91cを挿入することで、コイル引出線91a~91cを挿通孔75A~75Cに容易に挿入することができる。挿通孔75A~75Cは、少なくとも小径筒部71と大径筒部73とを有していればよい。例えば、小径筒部71と大径筒部73との間が段となっている構成であってもよい。テーパー筒部72は、円錐状の内周面を有する構成としてもよく、断面図において、円錐の母線が直線ではなく、一部湾曲している構成であってもよい。
【0033】
挿通孔75A~75Cの各々の小径筒部71には、内周面に4つの内周リブ88が設けられる。内周リブ88は、挿通孔75A~75Cのそれぞれにおいて、内周面の周方向に90°おきの等間隔に配置される。
挿通孔75A~75Cに内周リブ88が設けられることにより、コイル引出線91a~91cは、内周リブ88により押された状態で保持される。これにより、ブッシュ75からコイル引出線91a~91cが抜ける方向の移動が抑制される。
隣り合う内周リブ88同士の間に隙間を有するため、内周リブ88の収縮範囲が大きく、コイル引出線91a~91cの外径が多少変わったとしても、同じブッシュ75で保持可能である。
内周リブ88は周方向に等間隔に配置されるため、内周リブ88の弾性力がコイル引出線91a~91cに対して均等に作用し、ブッシュ75とコイル引出線91a~91cとの相対的な移動がいっそう抑制される。
【0034】
ブッシュ75は、挿通孔75A~75Cにコイル引出線91a~91cが挿入された後、貫通孔60に嵌め込まれる。そのため、コイル引出線91a~91cには、コイル引出線91a~91cが挿通孔75A~75Cを押し広げることにより生じる反力と、ブッシュ75が貫通孔60の内側面から受ける圧力が作用する。これにより、ブッシュ75からコイル引出線が抜ける方向の移動が抑制される。
【0035】
外周リブ81~87は、小径筒部71が設けられた上下方向の範囲に設けられる。これにより、コイル引出線91a~91cを保持する部位である小径筒部71においてコイル引出線91a~91cに弾性力を作用させ、コイル引出線91a~91cをしっかり保持することができる。外周リブ81~87を必要な範囲にのみ設けることで、ブッシュ75を貫通孔60に嵌め込む際に外周リブ81~87が抵抗となるのを抑制でき、ブッシュ75を貫通孔60に円滑に嵌め込むことができる。
【0036】
ブッシュ75では、モータ10の径方向内側の外側面75bは、外周リブを有さない外側面である。ブッシュ75の外側面75bは、シャフト31の中心軸Jと径方向に対向する。外側面75bは、モータ10の径方向に直交する方向に延びる平坦面を含む。凹部55bの径方向外側を向いた内周面も平坦面を含んでおり、凹部55bの平坦面と、外側面75bの平坦面とが対向して接触する。これにより、ブッシュ75はシャフト31に対して径方向に精度よく位置決めされる。その結果、ブッシュ75に保持されるコイル引出線91a~91cについても、精度よくベアリングホルダ55の上面側へ引き出すことができ、制御基板15やコネクタ等への接続性を向上させることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、貫通孔60がハウジング20の内周面20cと、ベアリングホルダ55の凹部55bにより構成される場合について説明したが、貫通孔は、仕切壁(ベアリングホルダ55)にのみ設けられていてもよいし、ハウジング20の外壁にのみ設けられていてもよい。なお、外壁はハウジング20の筒部21もしくは底壁部23を指す。
【0038】
各部材の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…モータ、15…制御基板、20…ハウジング、20a…開口部、21…筒部、30…ロータ、40…ステータ、55…ベアリングホルダ(仕切壁)、55b…凹部、58…段差面(第一面)、60…貫通孔、71…小径筒部(第1筒部)、72…テーパー筒部(第2筒部)、73…大径筒部(第2筒部)、75…ブッシュ、75A,75B,75C…挿通孔、77a,77b…突出部、81~86…外周リブ、88…内周リブ、L1,L2…直線