(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】光ファイバ保持部品、光コネクタ、及び光結合構造
(51)【国際特許分類】
G02B 6/40 20060101AFI20220315BHJP
G02B 6/36 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G02B6/40
G02B6/36
(21)【出願番号】P 2018563291
(86)(22)【出願日】2018-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2018000451
(87)【国際公開番号】W WO2018135368
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-11-23
(31)【優先権主張番号】P 2017005989
(32)【優先日】2017-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】森島 哲
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031678(WO,A1)
【文献】特開2014-041189(JP,A)
【文献】特開2015-125172(JP,A)
【文献】特開2003-177268(JP,A)
【文献】特開2004-109949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0191427(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0202430(US,A1)
【文献】特開平10-186177(JP,A)
【文献】米国特許第09138166(US,B2)
【文献】国際公開第2013/086127(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02 - 6/10
G02B 6/24 - 6/255
G02B 6/36 - 6/40
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線上からずれた領域に少なくとも1つのコアをそれぞれが有しており前記中心軸線と交差する第1の方向に並ぶ複数の光ファイバを保持するフェルール内に配置される光ファイバ保持部品であって、
各光ファイバの先端から所定長さの樹脂被覆が除去された被覆除去部の、前記中心軸線に垂直な面内における位置を規定しつつ前記被覆除去部を保持する保持部と、
前記保持部に対し前記中心軸線に沿った第2の方向に並んで配置されており、各光ファイバの樹脂被覆部が固定される固定部と、
を備える、光ファイバ保持部品。
【請求項2】
前記保持部は、前記中心軸線周りに間隔を空けて配置された複数の前記コアをそれぞれが有する前記複数の光ファイバの前記被覆除去部を保持する、
請求項1に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項3】
前記保持部は、前記被覆除去部を前記中心軸線周りに回転自在に保持する、
請求項1又は2に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項4】
前記保持部は、石英ガラスにより構成される、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項5】
前記保持部は、金属により構成される、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項6】
前記保持部は、樹脂により構成される、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項7】
前記保持部は、前記複数の光ファイバの前記被覆除去部がそれぞれ載置される複数のV溝を有する、
請求項1~
請求項6のいずれか1項に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項8】
前記複数のV溝のそれぞれは、前記第2の方向に沿って延在しており、
前記複数のV溝は、各延在方向が互いに平行となるように前記第1の方向に順に設けられている、
請求項7に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項9】
前記複数のV溝を覆うように、その上に配置される蓋を更に備える、
請求項7または請求項8に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項10】
前記複数のV溝及び前記固定部のうちの前記複数のV溝が前記蓋によって覆われており、前記固定部は蓋に覆われていない、
請求項9に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項11】
前記保持部は、前記複数の光ファイバの前記被覆除去部がそれぞれ挿入される複数の第1の孔を有する、
請求項1~
請求項6のいずれか1項に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項12】
前記複数の第1の孔は、前記第2の方向における前記固定部側の一端に向けて拡径する部分を有する、
請求項11に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項13】
前記固定部は、前記複数の第1の孔に連通する1つの第2の孔又は前記複数の第1の孔それぞれに連通する複数の第2の孔を有する、
請求項11または請求項12に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項14】
前記固定部は、前記保持部の高さよりも低い位置に設けられる固定面を有する、
請求項1~
請求項13のいずれか1項に記載の光ファイバ保持部品。
【請求項15】
少なくとも1つ以上の、請求項1~
請求項14のいずれか1項に記載の光ファイバ保持部品と、
前記光ファイバ保持部品によって保持される複数の光ファイバと、
前記光ファイバ保持部品及び前記複数の光ファイバの少なくとも一部をその内部に収納するフェルールと、を備え、
前記フェルールは、
前記第2の方向と交差する前端面と、
前記前端面とは反対側に設けられており前記光ファイバ保持部品及び前記複数の光ファイバを一括して受け入れる開口と、
前記開口から前記第2の方向に沿って延びており前記光ファイバ保持部品を保持する導入孔と、
前記導入孔の前記開口とは反対側の前端から前記前端面まで延びており前記複数の光ファイバの前記被覆除去部をそれぞれ保持する複数の保持孔と、を有する、光コネクタ。
【請求項16】
前記光ファイバ保持部品は、前記第2の方向に沿って延びており法線が互いに交差する第1及び第2の外面を有し、
前記フェルールの前記導入孔は、前記第1及び第2の外面とそれぞれ接する第1及び第2の内面を有する、
請求項15に記載の光コネクタ。
【請求項17】
前記開口は、2つ以上の前記光ファイバ保持部品を一括して受け入れ、
前記導入孔は、2つ以上の前記光ファイバ保持部品を一括して保持しており、
各光ファイバ保持部品は、前記第1及び第2の方向と交差する第3の方向に積み重ねられている、
請求項15または請求項16に記載の光コネクタ。
【請求項18】
前記複数の光ファイバのそれぞれは、前記中心軸線上に配置された1つのコアと、前記中心軸線周りに等間隔に配置された複数のコアとを有する、
請求項15~請求項17のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項19】
前記複数の光ファイバの前記被覆除去部と前記保持部との間、及び、前記複数の光ファイバの前記樹脂被覆部と前記固定部との間は、それぞれ接着剤によって固定されている、
請求項15~請求項18のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項20】
請求項15~請求項19のいずれか1項に記載の光コネクタである、第1及び第2の光コネクタを備え、
前記第1の光コネクタの前記前端面と前記第2の光コネクタの前記前端面とは、前記第2の方向において間隙を挟んで互いに対向している、光結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ保持部品、光コネクタ、及び光結合構造に関する。
本出願は、2017年1月17日出願の日本出願第2017-005989号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、多心コネクタの一例を開示する。この多心コネクタでは、複数本のマルチコアファイバ(MCF:Multi Core Fiber)が、複数の光ファイバ保持部材にそれぞれ挿入される。MCFは、各光ファイバ保持部材に対して回転調心され、各光ファイバ保持部材に固定される。複数の光ファイバ保持部材は、一列に並んだ状態で多心コネクタのフェルール内に一括して収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の光ファイバ保持部品は、中心軸線上からずれた領域に少なくとも1つのコアをそれぞれが有しており中心軸線と交差する第1の方向に並ぶ複数の光ファイバを保持するフェルール内に配置される光ファイバ保持部品に関する。この光ファイバ保持部品は、各光ファイバの先端から所定長さの樹脂被覆が除去された被覆除去部の、中心軸線に垂直な面内における位置を規定しつつ被覆除去部を保持する保持部と、保持部に対し中心軸線に沿った第2方向に並んで配置されており、各光ファイバの樹脂被覆部が固定される固定部と、を備える。
【0005】
本開示の光コネクタは、少なくとも1つ以上の上記の光ファイバ保持部品と、光ファイバ保持部品によって保持される複数の光ファイバと、光ファイバ保持部品及び複数の光ファイバの少なくとも一部をその内部に収納するフェルールと、を備える。フェルールは、第2の方向と交差する前端面と、前端面とは反対側に設けられており光ファイバ保持部品及び複数の光ファイバを一括して受け入れる開口と、開口から第2の方向に沿って延びており光ファイバ保持部品を保持する導入孔と、導入孔の開口とは反対側の前端から前端面まで延びており複数の光ファイバの被覆除去部をそれぞれ保持する複数の保持孔と、を有する。
【0006】
本開示の光結合構造は、上記の光コネクタである、第1及び第2の光コネクタを備える。第1の光コネクタの前端面と第2の光コネクタの前端面とは、第2の方向において間隙を挟んで互いに対向している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る光ファイバ保持部品の斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る光ファイバ保持部品を含む光コネクタの構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る光コネクタの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る光コネクタを含む光結合構造の構成を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第1変形例に係る光ファイバ保持部品の斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す光ファイバ保持部品の上面図である。
【
図8】
図8は、第2変形例に係る光ファイバ保持部品の斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す光ファイバ保持部品の上面図である。
【
図10】
図10は、第3変形例に係る光ファイバ保持部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
中心軸線上からずれた領域に少なくとも1つのコアをそれぞれが有する複数の光ファイバ(例えば複数のMCF)を一括して接続するための多心コネクタとして、例えば特許文献1に記載の多心コネクタが提案されている。この多心コネクタでは、複数の光ファイバは、直接フェルールに固定されるのではなく、複数の光ファイバ保持部材にそれぞれ挿入され固定された後にフェルールに固定される。
【0009】
しかしながら、このように光ファイバを光ファイバ保持部材に固定する際に、光ファイバの樹脂被覆が除去された部分(被覆除去部)のみが光ファイバ保持部材に保持されると、次のような問題が生じることがある。すなわち、光ファイバ保持部材の後方に位置する光ファイバに曲げが生じた場合、光ファイバ保持部材に保持された部分と保持されていない部分との境界において被覆除去部に曲げ応力が集中する懸念がある。この場合、被覆除去部が破損する虞がある。
【0010】
[本開示の効果]
本開示による光ファイバ保持部品、光コネクタ、及び光結合構造によれば、中心軸線上からずれた領域に少なくとも1つのコアをそれぞれが有する複数の光ファイバを固定する際に、各光ファイバの破損を低減することができる。
【0011】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願の実施形態の内容を列記して説明する。本願の一実施形態に係る光ファイバ保持部品は、中心軸線上からずれた領域に少なくとも1つのコアをそれぞれが有しており中心軸線と交差する第1の方向に並ぶ複数の光ファイバを保持するフェルール内に配置される光ファイバ保持部品である。この光ファイバ保持部品は、各光ファイバの先端から所定長さの樹脂被覆が除去された被覆除去部の、中心軸線に垂直な面内における位置を規定しつつ被覆除去部を保持する保持する保持部と、保持部に対し中心軸線に沿った第2方向に並んで配置されており、各光ファイバの樹脂被覆部が固定される固定部と、を備える。
【0012】
上述した光ファイバ保持部品では、保持部が各光ファイバの被覆除去部の位置を規定しつつ被覆除去部を保持することにより、フェルールに対する被覆除去部の相対位置及び回転調心後の相対角度を精度よく保持することができる。また、上述した光ファイバ保持部品では、固定部が各光ファイバの樹脂被覆部を固定している。通常、樹脂被覆部は被覆除去部よりも曲げに強い。従って、光ファイバ保持部品の後方に位置する光ファイバに曲げが生じ、光ファイバ保持部品に保持された部分と保持されていない部分との境界において樹脂被覆部に曲げ応力が集中したとしても、被覆除去部に曲げ応力が集中した場合と比べ、光ファイバの破損を低減できる。
【0013】
上述した光ファイバ保持部品では、保持部が、石英ガラスにより構成されてもよい。これにより、複数の光ファイバの被覆除去部と保持部との間の摩擦抵抗を低減することができるので、複数の光ファイバそれぞれの回転調心を行う際の光ファイバの捻れを低減し、回転調心作業を容易に行うことができる。また、上述した光ファイバ保持部品では、保持部は、金属により構成されてもよく、また、樹脂により構成されてもよい。
【0014】
上述した光ファイバ保持部品では、保持部が、複数の光ファイバの被覆除去部がそれぞれ載置される複数のV溝を有してもよい。これにより、第2の方向と直交する面内における各光ファイバの被覆除去部の位置を精度良く規定することができる。複数のV溝のそれぞれは、第2の方向に沿って延在してもよく、複数のV溝は、各延在方向が互いに平行となるように第1の方向に順に設けられていてもよい。上述した光ファイバ保持部品は、複数のV溝を覆うように、その上に配置される蓋を更に備えてもよい。
【0015】
上述した光ファイバ保持部品では、保持部が、複数の光ファイバの被覆除去部がそれぞれ挿入される複数の第1の孔を有してもよい。これにより、第2の方向と直交する面内における各光ファイバの被覆除去部の位置を精度良く規定することができる。複数の第1の孔は、第2の方向における固定部側の一端に向けて拡径する部分を有してもよい。上述した光ファイバ保持部品では、固定部は、複数の第1の孔に連通する1つの第2の孔又は複数の第1の孔それぞれに連通する複数の第2の孔を有してもよい。
【0016】
上述した光ファイバ保持部品では、V溝又は第1の孔は、複数の光ファイバの被覆除去部を中心軸線周りに回転自在に保持してもよい。
【0017】
上述した光ファイバ保持部品では、固定部は、保持部の高さよりも低い位置に設けられる固定面を有してもよい。
【0018】
本発明の一実施形態に係る光コネクタは、少なくとも1つ以上の、上述したいずれかの光ファイバ保持部品と、光ファイバ保持部品によって保持される複数の光ファイバと、光ファイバ保持部品及び複数の光ファイバの少なくとも一部をその内部に収納するフェルールと、を備える。フェルールは、第2の方向と交差する前端面と、前端面とは反対側に設けられており光ファイバ保持部品及び複数の光ファイバを一括して受け入れる開口と、開口から第2の方向に沿って延びており光ファイバ保持部品を保持する導入孔と、導入孔の開口とは反対側の前端から前端面まで延びており複数の光ファイバの被覆除去部をそれぞれ保持する複数の保持孔と、を有する。上述した光コネクタでは、光ファイバ保持部品は、第2の方向に沿って延びており法線が互いに交差する第1及び第2の外面を有してもよく、フェルールの導入孔は、第1及び第2の外面とそれぞれ接する第1及び第2の内面を有してもよい。この光コネクタは、上述したいずれかの光ファイバ保持部品を備えるので、上述したように各光ファイバの破損を低減することができる。これにより、光ファイバ保持部品と各光ファイバとを容易に組み立てることができる。従って、光コネクタを容易に製造することができる。加えて、光ファイバ保持部品の第1及び第2の外面と、フェルールの第1及び第2の内面とがそれぞれ互いに接することにより、フェルールと光ファイバ保持部品との相対位置及び相対角度を精度良く規定し、各光ファイバの回転調心後の角度をフェルールに対して精度良く保持することができる。
【0019】
上述した光コネクタは、開口は、2つ以上の光ファイバ保持部品を一括して受け入れ、導入孔は、2つ以上の光ファイバ保持部品を一括して保持しており、各光ファイバ保持部品は、第1及び第2の方向と直交する第3の方向に積み重ねられていてもよい。上述した光コネクタでは、複数の保持孔が第3の方向に沿って複数列にわたって(多段に)配列される場合であっても、複数の光ファイバ保持部品を第3の方向に積み重ねることによって、各保持孔の配列に対応して各光ファイバを配列させることができる。従って、より多くの光ファイバを接続させることができる。
【0020】
上述した光コネクタでは、複数の光ファイバのそれぞれは、中心軸線上に配置された1つのコアと、中心軸線周りに等間隔に配置された複数のコアとを有してもよい。
【0021】
本発明の一実施形態に係る光結合構造は、上述した光コネクタである、第1及び第2の光コネクタを備え、第1の光コネクタの前端面と第2の光コネクタの前端面とは、第2の方向において間隙を挟んで互いに対向している。この光結合構造では、第1の光コネクタと第2の光コネクタとはPC接続されないので、第1の光コネクタと第2の光コネクタとをPC接続するための押圧力が不要となる。これにより、極めて多くの光ファイバを一括して容易に接続させることができる。
【0022】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光ファイバ保持部品、光コネクタ、及び光結合構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る光ファイバ保持部品10の斜視図である。
図1には、理解の容易のため、XYZ直交座標系が示されている。光ファイバ保持部品10は、
図1に示されるように、X方向を並び方向とする略直方体状の外観を有している。すなわち、光ファイバ保持部品10のXY平面に平行な断面形状は、X方向を並び方向とする略長方形状である。光ファイバ保持部品10は、石英ガラスにより構成されている。或いは、光ファイバ保持部品10は、金属材料又は樹脂材料により構成されてもよい。
【0024】
図1に示されるように、光ファイバ保持部品10は、前端面10aと、後端面10bと、下面10cと、側面10dと、側面10eと、保持部11と、固定部12と、を備える。前端面10aと後端面10bとは、Z方向において互いに対向しており、XY平面に平行である。下面10cは、Y方向と交差しており、XZ平面に平行である。側面10dと側面10eとは、X方向において互いに対向しており、YZ平面に平行である。側面10d,10eの法線は、下面10cの法線と交差(本実施形態では直交)する。
【0025】
保持部11は、Z方向における前端面10a側に設けられる。保持部11は、上面11a、及び複数のV溝11bを有する。上面11aは、下面10cとは反対側に設けられており、XZ平面に平行である。複数のV溝11bは、上面11aに形成されている。複数のV溝11bのそれぞれは、前端面10aから後端面10b側に向かってZ方向に延びており、X方向に沿って並んでいる。言い換えれば、複数のV溝11bのそれぞれは、各延在方向(すなわちZ方向)が互いに平行となるようにX方向に順に設けられている。一実施例では、16本のV溝11bのそれぞれが、X方向に沿って等間隔に並んでいる。複数のV溝11bは、後述する複数のMCF20の被覆除去部22(
図2及び
図4参照)をそれぞれ保持する。具体的には、複数のMCF20の被覆除去部22が複数のV溝11bにそれぞれ載置され、収容される。複数のMCF20が光ファイバ保持部品10に接着固定される前の段階では、複数のV溝11bは、これら複数のMCF20の被覆除去部22を、中心軸周りに回転自在にそれぞれ保持する。複数のV溝11bは、被覆除去部22の中心軸線に垂直な面内(すなわちXY平面内)における位置を規定する。
【0026】
固定部12は、Z方向における後端面10b側に設けられ、保持部11に対し、MCF20の中心軸線に沿った方向(すなわちZ方向)に並んで配置されている。固定部12は、Z方向における保持部11の後端面10b側の一端から後端面10bまで延びている。固定部12では、後述する複数のMCF20の被覆部23(
図2及び
図4参照)が固定される。固定部12は、Z方向と交差しておりXZ平面に平行な上面12aを有する。被覆部23は、上面12aに固定される。上面12aは、下面10cとは反対側に設けられる。上面12aは、保持部11の高さよりも低い位置に配置される。上面12aは、上面11aに対して段差を構成している。すなわち、上面12aは、上面11aに対してY方向における下面10c側に配置される。これにより、被覆除去部22よりも外径が大きい被覆部23を上面12a上に載置した際に、光ファイバの曲げが抑制される。上面12aと上面11aとは、面13によって繋がれている。面13は、XY平面に平行である。
【0027】
図2は、本実施形態に係る光ファイバ保持部品10を含む光コネクタ1の構成を示す分解斜視図である。
図3は、本実施形態に係る光コネクタ1の組み立て後の斜視図である。
図4は、
図3に示すIV-IV線に沿った断面図である。但し、理解の容易のため、
図2では1つの光ファイバ保持部品10のみを示し、
図3では複数(本実施形態では2つ)の光ファイバ保持部品10を示している。各図に示されたXYZ座標系は、
図1に示すXYZ直交座標系に対応している。
図3及び
図4に示されるように、光コネクタ1は、複数の光ファイバ保持部品10と、複数のMCF20と、フェルール30とを備える。各光ファイバ保持部品10は、複数のMCF20を保持しており、Y方向に積み重ねられている。一実施例では、2つの光ファイバ保持部品10が、X方向に沿って並ぶ16本のMCF20をそれぞれ保持しており、Y方向に沿って2列にわたって積み重ねられている。この2つの光ファイバ保持部品10をY方向に沿って2列にわたって積み重ねる際には、
図2に示されるように、各光ファイバ保持部品10の上面11aの上に板状の蓋15が設けられる。具体的には、蓋15は、複数のV溝11bを覆うように、複数のV溝11bの上に配置される。そして、これらの蓋15同士が対向するように、2つの光ファイバ保持部品10のうち一方の光ファイバ保持部品10をZ方向において反転させた状態にて、光ファイバ保持部品10同士が固定される。
【0028】
各MCF20は、
図2及び
図4に示されるように、先端面20a、被覆除去部22、及び被覆部23を有する。先端面20aは、保持部11を挟んで固定部12とは反対側に設けられている。言い換えると、前端面10aは、Z方向における先端面20a側に設けられる。各MCF20は、中心軸線上を除く領域(すなわち中心軸上からずれた領域)に少なくとも1つのコアを有する。一例では、各MCF20は、中心軸線上に1つのコア(中心コア)を有し、更に、中心軸線周りに等間隔に配置された複数(例えば6つ)のコア(周辺コア)を有する。そして、MCF20は、これらのコアを覆うクラッドを更に有する。
【0029】
被覆部23は、複数のコアと、クラッドと、複数のコア及びクラッドを覆う樹脂被覆とを有する。具体的には、樹脂被覆は、複数のコア21を包囲するクラッドの周りを覆っている。被覆部23は、前述したように、各光ファイバ保持部品10の固定部12の上面12aに接着により固定される。被覆除去部22は、各MCF20の先端面20aから所定長さの樹脂被覆が除去され、クラッドが露出した部分である。被覆除去部22は、被覆部23のZ方向における先端面20a側の一端から先端面20aまで延びている。被覆除去部22は、前述したように、各光ファイバ保持部品10のV溝11bによって保持される。
【0030】
フェルール30は、複数の光ファイバ保持部品10及び複数のMCF20の少なくとも一部をその内部に収納する。フェルール30は、前端面30a、後端面30b、開口31、導入孔32、複数の保持孔33、一対のガイド孔34、及び窓35を有する。前端面30aは、Z方向と交差し、Z方向に垂直な面に対して傾斜している。一実施例では、前端面30aは、各MCF20の先端面20aと面一である。開口31は、Z方向において、前端面30aとは反対側の後端面30bに設けられる。開口31は、各光ファイバ保持部品10及び各MCF20を一括して受け入れる。開口31は、一実施例では、X方向を長手方向とする略長方形状を有している。
【0031】
導入孔32は、開口31からZ方向に沿って延びている。導入孔32のXY平面に平行な断面は、一実施例では、X方向を長手方向とする略長方形状である。導入孔32は、各光ファイバ保持部品10を一括して保持している。導入孔32は、互いに対向する一対の内壁面32aと、互いに対向する一対の内壁面32bとを有する。
図4は、一対の内壁面32bのうち一方のみを示す。内壁面32aは、Y方向と交差しており、光ファイバ保持部品10の下面10cと対向する位置に配置される。内壁面32bは、内壁面32aに繋がっており、X方向と交差している。内壁面32bは、光ファイバ保持部品10の側面10d,10e(
図1参照)と対向する位置に配置される。内壁面32a及び32bと、下面10c及び側面10d,10eとがそれぞれ接することにより、導入孔32に対して各光ファイバ保持部品10が位置決めされる。具体的には、内壁面32aと下面10cとがY方向において互いに当接することによって、導入孔32に対する光ファイバ保持部品10のY方向における位置が規定される。内壁面32bと側面10d,10eとがX方向において互いに当接することによって、導入孔32に対する光ファイバ保持部品10のX方向における位置が規定される。
【0032】
複数の保持孔33は、
図4に示されるように、導入孔32の開口31とは反対側の前端から前端面30aまで延びている。複数の保持孔33は、前端面30aにおいて一次元状若しくは二次元状に配列されている。一実施例では、X方向に沿って並ぶ16本の保持孔列が、Y方向に沿って2列にわたって配置されている。各保持孔33は、各MCF20の被覆除去部22をそれぞれ保持する。具体的には、各保持孔33は、各MCF20の被覆除去部22のうち先端面20aを含む一部分を保持する。
【0033】
一対のガイド孔34は、前端面30aからZ方向に沿って後端面30bまで延びており、X方向において複数の保持孔33を挟んで両側に設けられる。一対のガイド孔34は、その中心軸に垂直な断面が円形状である。
【0034】
光コネクタ1を製造する際には、光ファイバ保持部品10の複数のV溝11bに複数のMCF20の被覆除去部22をそれぞれ載置し、各MCF20を中心軸周りに回転調心する。このとき、光ファイバ保持部品10に対して各MCF20を1本ずつ回転調心する。その後、光ファイバ保持部品10と各MCF20とを接着剤を介して固定し、蓋15を介して複数の光ファイバ保持部品10をY方向に積み重ねる。接着剤は、例えばUV硬化性接着剤又は熱硬化性接着剤である。そして、各光ファイバ保持部品10を互いに固定させた状態にて、各光ファイバ保持部品10をフェルール30の導入孔32に挿入する。このとき、各光ファイバ保持部品10の下面10cが一対の内壁面32aにそれぞれ接し、側面10d,10eが一対の内壁面32bにそれぞれ接する位置に各光ファイバ保持部品10が配置される。その後、フェルール30と、複数の光ファイバ保持部品10と、複数のMCF20とが、接着剤を介して互いに固定される。例えば、フェルール30の上部に設けられた窓35から熱硬化性接着剤を導入し、熱硬化させることで、保持孔33と被覆除去部22も固定できる。
【0035】
図5は、本実施形態に係る光コネクタ1を含む光結合構造1Aの構成を示す斜視図である。
図5に示されたXYZ座標系は、
図1~
図4に示されたXYZ直交座標系に対応している。
図5に示されるように、光結合構造1Aは、一対の光コネクタ1と、一対のガイドピン40と、スペーサ50と、を備える。一対の光コネクタ1のうち一方の光コネクタ1と他方の光コネクタ1とは間隙を挟んで互いに対向している。一対のガイドピン40は、Z方向に沿って延びており、その中心軸に垂直な断面が円形状である。一対のガイドピン40の外径は、一対のガイド孔34の内径と一致する。一対のガイドピン40のZ方向における一端部は、一方の光コネクタ1の一対のガイド孔34にそれぞれ嵌合し、一対のガイドピン40の他端部は、他方の光コネクタ1の一対のガイド孔34にそれぞれ嵌合する。一対のガイドピン40によって、一方の光コネクタ1と他方の光コネクタ1とがXY平面内において位置合わせされる。スペーサ50は、開口50aを有する板状を呈している。開口50aは、一方の光コネクタ1と他方の光コネクタ1との間に延びる複数の光路を通過させる。スペーサ50が一方の光コネクタ1と他方の光コネクタ1とに当接することによって、一方の光コネクタ1と他方の光コネクタ1との間隙が規定される。
【0036】
以上に説明した、本実施形態に係る光ファイバ保持部品10、光コネクタ1、及び光結合構造1Aによって得られる効果について説明する。本実施形態に係る光ファイバ保持部品10では、保持部11が各MCF20の被覆除去部22の位置を規定しつつ被覆除去部22を保持することにより、フェルール30に対する被覆除去部22の相対位置及び回転調心後の相対角度を精度よく保持することができる。また、本実施形態の光ファイバ保持部品10では、固定部12が各MCF20の被覆部23を固定している。通常、被覆部23は被覆除去部22よりも曲げに強い。従って、光ファイバ保持部品10の後方に位置するMCF20に曲げが生じ、光ファイバ保持部品10に保持された部分と保持されていない部分との境界において被覆部23に曲げ応力が集中したとしても、被覆除去部22に曲げ応力が集中した場合と比べ、MCF20の破損を低減できる。
【0037】
保持部11は、石英ガラスにより構成されてもよい。これにより、複数のMCF20の被覆除去部22と各V溝11bとの間の摩擦抵抗を低減することができるので、複数のMCF20それぞれの回転調心を行う際のMCF20の捻れを低減し、回転調心作業を容易に行うことができる。保持部11の複数のV溝11bを含む一部分が石英ガラスにより構成されてもよい。
【0038】
保持部11は、複数のMCF20の被覆除去部22がそれぞれ載置される複数のV溝11bを有してもよい。これにより、XY平面内において各MCF20の被覆除去部22の位置を精度良く規定することができる。
【0039】
本実施形態に係る光コネクタ1は、本実施形態に係る光ファイバ保持部品10を備えるので、上述したように各MCF20の破損を低減することができる。これにより、光ファイバ保持部品10と各MCF20とを容易に組み立てることができる。従って、本実施形態に係る光コネクタ1を容易に製造することができる。加えて、光ファイバ保持部品10の下面10c及び側面10d,10eと、フェルール30の内壁面32a及び32bとがそれぞれ互いに接することにより、フェルール30と光ファイバ保持部品10との相対位置及び相対角度を精度良く規定し、各MCF20の回転調心後の角度をフェルール30に対して精度良く保持することができる。
【0040】
光コネクタ1は、光ファイバ保持部品10を複数備えてもよい。本実施形態に係る光コネクタ1では、
図3及び
図4に示されるように、複数の保持孔33がY方向に沿って複数列にわたって(多段に)配列される場合であっても、複数の光ファイバ保持部品10をY方向に積み重ねることによって、各保持孔33の配列に対応して各MCF20を配列させることができる。従って、より多くのMCF20を接続させることができる。
【0041】
本実施形態に係る光結合構造1Aは、一対の光コネクタ1を備え、一対の光コネクタ1のうち一方の光コネクタ1と他方の光コネクタ1とは、Z方向において間隙を挟んで互いに対向している。
図5に示されるように、本実施形態に係る光結合構造1Aでは、一方の光コネクタ1と他方の光コネクタ1とはPC接続されないので、一方の光コネクタ1と他方の光コネクタ1とをPC接続するための押圧力が不要となる。これにより、極めて多くのMCF20を容易に接続させることができる。
【0042】
(第1変形例)
図6は、上記実施形態の第1変形例に係る光ファイバ保持部品10Aの斜視図である。
図7は、
図6に示す光ファイバ保持部品10Aの上面図である。本変形例と上記実施形態との相違点は、保持部11Aが複数のV溝11bに代えて複数の保持孔11cを備えている点である。
図6及び
図7に示されるように、複数の保持孔11cは、前端面10aから面13までZ方向に沿って貫通している。複数の保持孔11cのXY平面に平行な断面形状は、円形状である。複数の保持孔11cは、X方向に沿って並んでいる。一例では、16本の保持孔11cが、X方向に沿って等間隔に並んでいる。各保持孔11cの内径は、上記実施形態に係る各MCF20の被覆除去部22の外径と同じか、被覆除去部22の外径よりも僅かに大きい。各保持孔11cは、各MCF20の被覆除去部22を、中心軸線周りに回転自在に保持する。各保持孔11cの面13側の後端部には、テーパ部11dが形成されている。このテーパ部11dでは、複数の保持孔11cの内径が、面13に近づくに従い次第に大きくなっている。言い換えれば、このテーパ部11dでは、各保持孔11cが、Z方向における固定部12側の後端に向けて拡径している。複数の保持孔11cは、複数のMCF20の被覆除去部22をそれぞれ保持する。各保持孔11cは、各被覆除去部22のXY平面内における位置を規定する。このように各保持孔11cが各MCF20を保持することによって、XY平面内における各MCF20の被覆除去部22の位置を精度良く規定しつつ被覆除去部22を保持することができる。各保持孔11cにテーパ部11dを設けることにより、各MCF20の被覆除去部22を各保持孔11cに容易に挿入することができる。
【0043】
(第2変形例)
図8は、上記実施形態の第2変形例に係る光ファイバ保持部品10Bの斜視図である。
図9は、
図8に示す光ファイバ保持部品10Bの上面図である。本変形例と上記実施形態との相違点は、保持部11Aが複数のV溝11bに代えて複数の保持孔11cを備えている点、及び固定部12Aが上面12aに代えて固定孔12bを有している点である。複数の保持孔11cの形態は、上述した第1変形例と同様である。固定孔12bは、後端面10bからZ方向を深さ方向として形成された孔であり、面13を底面としている。固定孔12bは、複数の保持孔11cと連通している。固定孔12bのXY平面に平行な断面形状は、一実施例では、X方向を長手方向とする長円形状である。固定孔12bには、複数のMCF20の被覆部23が一括して挿入され、接着剤を介して固定される。固定部は本変形例のような形状を有してもよく、各MCF20の被覆部23をより確実に固定することができる。
【0044】
(第3変形例)
図10は、上記実施形態の第3変形例に係る光ファイバ保持部品10Cの斜視図である。
図11は、
図10に示す光ファイバ保持部品10Cの上面図である。本変形例と上記実施形態との相違点は、保持部11Aが複数のV溝11bに代えて複数の保持孔11cを備えている点、及び固定部12Bが上面12aに代えて複数の固定孔12cを有している点である。複数の保持孔11cの形態は、上述した第1変形例と同様である。複数の固定孔12cは、それぞれ後端面10bからZ方向を深さ方向として形成された孔であり、複数の保持孔11cとそれぞれ連通している。各固定孔12cのXY平面に平行な断面形状は、円形状である。各固定孔12cの内径は、各MCF20の被覆部23の外径と同じか、被覆部23の外径よりも僅かに大きい。各固定孔12cには、各MCF20の被覆部23が挿入され、接着剤を介して固定される。固定部は本変形例のような形状を有してもよく、各MCF20の被覆部23をより確実に固定することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…光コネクタ、1A…光結合構造、10,10A,10B,10C…光ファイバ保持部品、10a,30a…前端面、10b,30b…後端面、10c…下面、10d,10e…側面、11,11A…保持部、11a,12a…上面、11b…V溝、11c…保持孔、11d…テーパ部、12,12A,12B…固定部、12b,12c…固定孔、13…面、15…蓋、20a…先端面、22…被覆除去部、23…被覆部、30…フェルール、31…開口、32…導入孔、32a,32b…内壁面、33…保持孔、34…ガイド孔、35…窓、40…ガイドピン、50…スペーサ、50a…開口。