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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】車両の後部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
B62D25/20 H
B62D25/20 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019009036
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020117037
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】塚本 英行
(72)【発明者】
【氏名】益田 晃義
(72)【発明者】
【氏名】松下 幸治
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064730(JP,A)
【文献】実開昭61-051280(JP,U)
【文献】特開2009-056190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートが搭載される前上がり状のフロアと、
後端部が上記フロアの車幅方向両側に形成され、前方ほど車幅方向内側に延びる左右一対の第1補強延在部と、
車幅方向の夫々に対応する上記第1補強延在部よりも車幅方向外側に配設され、上記第1補強延在部の後端部付近から前方ほど車幅方向外側に延びる左右一対の第2補強延在部とを備え
上記第1補強延在部を、上記フロアの上面に接合され、該フロアとの間に延在方向に延びる閉断面が構成されるレインフォースメントに設定し、
上記第2補強延在部を、上記フロアに一体形成されるビードに設定した
車両の後部車体構造。
【請求項2】
左右一対の上記レインフォースメントは、夫々の前端部同士が上記フロアの車幅方向の中央部かつ前端部において互いに連結された
請求項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
上記フロアの前端部に接合され、該前端部に沿って車幅方向に延びる前側クロスメンバを備え、
上記レインフォースメントの前端部は、上記前側クロスメンバ付近に配設された
請求項又はに記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
上記フロアの後端部に接合され、該後端部に沿って車幅方向に延びる後側クロスメンバを備え、
上記レインフォースメントの後端部は、上記後側クロスメンバ付近に配設された
請求項乃至のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
上記フロアは、前後方向に延びる低床部と、該低床部の前端から前上がり状に傾斜する傾斜部と、該傾斜部の前上端から前方へ延びる高床部とで一体形成され、
上記車両用シートの座部には、座面を構成するシートクッション部と、該シートクッション部よりも単位体積当たりの質量が小さく、かつ剛性が高い高剛性部とを備え、
上記高剛性部は、上記傾斜部に設置され、
上記レインフォースメントおよび上記ビードは、少なくとも上記傾斜部に設けられた
請求項乃至のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用シートが搭載される前上がり状のフロアが設けられた車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の後方から衝突物が衝突時(後突時)には、後方からの衝突荷重(後突荷重)を分散、吸収するために、スムーズに車両前方へ伝達することが求められる。そのために車両の後部車体構造は、車両後方から前方への後突荷重が伝達されるロードパスが極力スムーズになるように設定する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示のものは、車幅方向中央部にて車両前後方向に延びるセンタトンネルの後端部と、左右一対のサスペンションタワーとを傾斜状に連結する左右一対の補強フレームを設けたものである。
【0004】
これにより特許文献1の車両の後部車体構造は、サスペンションから伝達される荷重に対する車体剛性の向上に加え、左右一対のリヤサイドフレームに入力された後突荷重を、補強フレームを介してセンタトンネルに伝達し、該後突荷重の分散を図ることができるとされている(特許文献1の段落[0045]、図10参照)。
【0005】
一方、車両用シートとして例えば、リヤシートに備えた座部を、乗員の着座姿勢維持のため前方が高く後方を低く設定することが行われており、座部をこのように前上がり状(前高後低状)に支持するためにリヤシートを搭載するリヤフロアも同じく前上がり状に設定することがある。
【0006】
その場合には、例えば車両走行中の加減速時にリヤシートに発生する、車両前後方向に変位しようとする力(所謂サブマリン現象)に対してリヤフロアの車両前後方向の面剛性向上が必要となる。
【0007】
しかし特許文献1のものは、リヤシートの下方に有する補強フレームをどのような態様で設けるか等リヤフロアの面剛性を確保するための具体的態様について言及されておらず、検討の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-163470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、車両後突時における車両前方へのスムーズな荷重分散を図ることができつつ、車両走行時にリヤシートに発生する、車両前後方向に変位しようとする力に対してリヤフロアの車両前後方向の面剛性向上を図ることができる車両の後部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、車両用シートが搭載される前上がり状のフロアと、後端部が上記フロアの車幅方向両側に形成され、前方ほど車幅方向内側に延びる左右一対の第1補強延在部と、車幅方向の夫々に対応する上記第1補強延在部よりも車幅方向外側に配設され、上記第1補強延在部の後端部付近から前方ほど車幅方向外側に延びる左右一対の第2補強延在部とを備え、上記第1補強延在部を、上記フロアの上面に接合され、該フロアとの間に延在方向に延びる閉断面が構成されるレインフォースメントに設定し、上記第2補強延在部を、上記フロアに一体形成されるビードに設定したものである。
【0011】
上記構成によれば、車両後突時に後突荷重を第1補強延在部を介して車両前方へスムーズに伝達することができることに加え、第1、第2補強延在部を利用してフロアに略三角形の補強構造が画定されるため、車両用シートに着座する乗員の着座姿勢維持のため前上がり状に形成されたフロアの面剛性を高めることができる。
【0012】
その他にも、フロアの面剛性を高めることで、走行時にリヤサスペンション等からフロアへ伝達されるフロア振動の抑制にも寄与することができ、またフロアを含めた車体全体の剛性が向上するため車両の操安性を高めることができる。
【0013】
さらに、上記構成によれば、ビードよりも車幅方向内側にて前方ほど車幅方向内側へ延在する上記第2補強延在部を、レインフォースメントに設定することで、車体後部から前方へ後突荷重を効率的に伝達できるとともに、フロアの前後方向の面剛性を効果的に高めることができる。一方、レインフォースメントよりも車幅方向外側に形成される第1補強延在部を、ビードに設定することによってフロアの軽量化を図ることができる。
【0014】
この発明の態様として、左右一対の上記レインフォースメントは、夫々の前端部同士が上記フロアの前端部における車幅方向の中央部において互いに連結されたものである。
【0015】
上記構成によれば、車体後部の両サイド(リヤサイドフレーム)に入力された後突荷重を、該両サイドから左右一対のレインフォースメントを介して平面視でフロアの前端の車幅方向中央部から車両前方へ延びるセンタトンネルへよりスムーズに伝達することができる。
【0016】
この発明の態様として、上記フロアの前端部に接合され、該前端部に沿って車幅方向に延びる前側クロスメンバを備え、上記レインフォースメントの前端部は、上記前側クロスメンバ付近に配設されたものである。
【0017】
上記構成によれば、上記レインフォースメントと上記ビードと上記前側クロスメンバとによって、平面視でその内側の領域を略閉じる三角形の補強構造を、フロアの車幅方向の両側に画定することができるため、フロアの面剛性をより高めることができる。
【0018】
この発明の態様として、上記フロアの後端部に接合され、該後端部に沿って車幅方向に延びる後側クロスメンバを備え、上記レインフォースメントの後端部は、上記後側クロスメンバ付近に配設されたものである。
【0019】
上記構成によれば、左右一対のレインフォースメントと後側クロスメンバとによって、平面視でその内側の領域を略閉じる三角形の補強構造を、フロアの車幅方向の中央部に画定することができるため、フロアの面剛性をより高めることができる。
【0020】
この発明の態様として、上記フロアは、前後方向に延びる低床部と、該低床部の前端から前上がり状に傾斜する傾斜部と、該傾斜部の前上端から前方へ延びる高床部とで一体形成され、上記車両用シートの座部には、座面を構成するシートクッション部と、該シートクッション部よりも単位体積当たりの質量が小さく、かつ剛性が高い高剛性部とを備え、上記高剛性部は、上記傾斜部に設置され、上記レインフォースメントおよび上記ビードは、少なくとも上記傾斜部に設けられたものである。
【0021】
上記構成によれば、上記車両用シートの座部に、座面を構成するシートクッション部を備えることにより、座部のクッション性能を確保しつつ、座部に高剛性部を備えることで、車両用シートの軽量化を図ることができる。
【0022】
さらに、上記高剛性部を上記傾斜部に設置することで、車両走行中の加減速時(特に減速時)に車両用シートの座部が上記フロアに対して前後方向に滑り移動すること(所謂サブマリン現象)を効果的に抑制できる。
【0023】
加えて、上記レインフォースメントおよび上記ビードを少なくとも上記傾斜部に設けたため、車両用シートの座部が上記フロアに対して前後方向に滑り移動することを規制する際に要求される傾斜部の面剛性を効果的に高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、車両後突時における車両前方へのスムーズな荷重分散を図ることができつつ、車両走行時にリヤシートに発生する、車両前後方向に変位しようとする力に対してリヤフロアの車両前後方向の面剛性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態の自動車の後部車体構造の要部を前側かつ左側の斜め上方から視た斜視図。
図2】本実施形態の自動車の後部車体構造の要部を示す平面図。
図3図2中のA-A線断面図。
図4】リヤフロア前部の平面図(a)、レインフォースメントおよびシートブラケットを取り外した状態のリヤフロア後部の平面図(b)。
図5】リヤシートに備えたクッションフォーム部の、リヤフロア前部における配置形態を図2に対応して示した要部拡大図。
図6図5中のB-B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図中、矢印Fは自動車の前方を示し、矢印Rは自動車の右側を示し、矢印Lは自動車左側を示し、矢印Uは自動車の上方を示すものとする。
【0027】
図1図2に示すように本実施形態の自動車(以下、「車両」と略記する)の車体においては、車室の床面を形成するフロアパネル1と、このフロアパネル1の両サイドに接合固定されたサイドシル2とを備えている。
【0028】
フロアパネル1(前側のフロア部)の車幅方向中央部には、該フロアパネル1の後端から前方へ延びるトンネル部としてのセンタトンネル11を設けている。
図1に示すようにセンタトンネル11は、左右の側壁11aと上側のトップデッキ部11bとを半割円筒形状に一体形成し、車体剛性の中心となる部材であって、センタトンネル11の左右の側壁11aの下部には左右一対のトンネルメンバ12(トンネルサイドフレーム)が車両前後方向に沿って一体形成されている。
【0029】
この実施例では、センタトンネル11およびトンネルメンバ12をフロアパネル1の一部として一体に形成したが、これに限らず、センタトンネル11の下部にフロアパネル1とは別体のトンネルメンバ12を上方から接合固定する構成を採用してもよい。
【0030】
図1図2図6に示すように、フロアパネル1の左右両サイドに配設されたサイドシル2は、サイドシルアウタ21とサイドシルインナ22との上下の接合フランジ部21a,22aおよび21b,22bを互いに結合して車両前後方向に延びる閉断面を備えた車体強度部材である。なお、図1中の車両左側および図2中の左右両サイドのサイドシル2についてはサイドシルアウタ21の図示を省略している。
【0031】
図1図3に示すように、上述のフロアパネル1の後部には、上方に立ち上がるキックアップ部3を介して車体後部フロアを構成するリヤフロア4(リヤフロアパネル4)を一体的に連設している。
【0032】
リヤフロア4は、リヤフロア前部40と、該リヤフロア前部40よりも一段高く形成されたリヤフロア後部50とを前後各側に備えている。リヤフロア前部40は、車室の後側のフロア部に相当し、図1図5に示すように、リヤシート30が搭載されるシートパンとして形成されている。
【0033】
リヤフロア前部40の下方には、不図示の燃料タンクが配置されている。この燃料タンクは同じく不図示のインシュレータで保護されている。
図1図3に示すように、リヤフロア後部50には、その車幅方向中間部に下方に窪むスペアタイヤパン又は他の部品を兼ねる凹部50aが一体形成されている。
【0034】
図1図2に示すように、リヤフロア4の左右両サイドには、車両前後方向に延びるリヤサイドフレーム6(以下、「フレーム部材6」と称する)が設けられている。
【0035】
図1図2に示すように、フレーム部材6は、キックアップ部3からリヤフロア4の後端まで内部に車両前後方向に延びる閉断面6s(図6参照)が形成された車体側部剛性部材として構成しており、図1図2図6に示すように、前端がサイドシル2の後部に車幅方向内側から接続されている。
【0036】
同図に示すように、フレーム部材6は、車両前後方向全体に渡って上方へ凸の断面ハット形状のフレーム部材アッパ61と、下方へ凸の断面ハット形状のフレーム部材ロア62(図6参照)等を備えている。これらフレーム部材アッパ61とフレーム部材ロア62とは、夫々の車幅方向内端に接合フランジ部61a,62aが形成されており(同図参照)、これら接合フランジ部61a,62aによってリヤフロア4の車幅方向外側端部4aを挟み込んだ状態で溶接にて3重接合されている(同図参照)。
【0037】
なお、図1図2中の符号8,9は、フレーム部材6の車幅方向外側に位置する不図示のホイールハウスインナを車幅方向内側から補強するように上下方向に延びるサイドブレースである。
【0038】
また図1図3図5に示すように、上述のキックアップ部3の上側コーナー部の下方かつ後方には、車幅方向に延びる前側リヤクロスメンバ14(所謂No.3クロスメンバ)を接合固定し、前側リヤクロスメンバ14とキックアップ部3との間には、車幅方向に延びる閉断面14s(図3参照)を形成して、車体剛性の向上を図っている。この前側リヤクロスメンバ14は、断面L字状の部材で形成され、左右一対のフレーム部材6間を車幅方向に連結するものである。
【0039】
また図1図3図5に示すように、リヤフロア前部40とリヤフロア後部50との境界部には、後側リヤクロスメンバ15が配設されている。後側リヤクロスメンバ15は、図3に示すように、リヤフロア4の上下各側に位置する後側リヤクロスメンバアッパ151と後側リヤクロスメンバロア152とを備えており、リヤフロア前部40の後端部とリヤフロア後部50の前端部とを挟み込むようにしてスポット溶接等により接合固定している。
【0040】
後側リヤクロスメンバ15は、車幅方向に延びて左右両サイドのフレーム部材6を車幅方向に連結するリヤクロスメンバ(所謂No.4クロスメンバ)であって、後側リヤクロスメンバアッパ151と後側リヤクロスメンバロア152との間には、車幅方向に延びる閉断面15sが形成されている(図3参照)。
なお、上述した上下方向に延びる前側のサイドブレース8の下部は、後側リヤクロスメンバ15(後側リヤクロスメンバアッパ151)の車幅方向外側部位に接続されている(図1参照)。
【0041】
図1図5に示すように、上述したリヤシート30は、左右両側のシート30a,30bと中央シート30cとで横長のベンチシートとして構成されており、各シート30a,30b,30cは、図3に示すように主に、乗員の着座面を形成する座部31と、ヘッドレスト33を備えた乗員の背凭れ面を形成する背凭れ部32等を備えている。
【0042】
リヤシート30の少なくとも座部31は、各シート30a,30b,30c間で略同一の内部構造であるため、該座部31の内部構造の要部について、図3を用いて車両左側のシート30bの構造に基づいて説明する。
【0043】
図3に示すように、座部31は、着座した乗員の臀部が当接するクッション性(柔軟性)に優れた発泡ウレタン製のシートクッション部35(低剛性部)と、シートクッション部35よりも剛性が高くなるように例えば、発泡ポリプロピレンなどで硬質に構成されたクッションフォーム部36(高剛性部)と、鋼板等から成るシートクッションフレーム37を備え、全体の表面が表皮(図示省略)によって被覆されている。
【0044】
クッションフォーム部36は、シートクッション部35よりも下方、すなわち、シートクッション部35の下部かつ底面視で少なくとも中央部に備えている。さらにクッションフォーム部36は、シートクッション部35よりも単位体積当たりの質量が小さくなるように適宜、不図示の中空部等を有してシートクッション部35よりも軽量に形成しながらも、上述したように、シートクッション部35よりも高剛性で構成されている。
なお、図3では、背凭れ部32の内部構造および全体を覆う表皮の図示を省略している。
【0045】
ここで図1図2図4(b)、図5に示すように、上述したシートブラケット70は、リヤフロア前部40の上面、すなわち、左右両サイドの後述する高床部44と、リヤフロア後部50の上面、すなわち、左右両サイドの後述する低床部42とに配設されている(図4(b)参照)。なお便宜上、図1図2図5中には、リヤフロア前部40の前側に備えたシートブラケット70のみを図示し、後側に備えたシートブラケット70の図示を省略している。
【0046】
図3に示すように、座部31に備えた上述したシートクッションフレーム37は、座部31をリヤフロア前部40に搭載したとき、平面視でシートブラケット70に対応する部位であって、座部31における、クッションフォーム部36に対して前後各側に配設されている。
【0047】
これにより、リヤシート30は、シートクッションフレーム37がシートブラケット70を介してリヤフロア前部40に支持される一方で、クッションフォーム部36がリヤフロア前部40の上面に直接載置された状態(図3図6参照)で、座部31がリヤフロア前部40に搭載されている(図3参照)。
【0048】
ところで、上述したシートパンとしてのリヤフロア前部40は、前上がり状に形成されている。
【0049】
詳しくは図4(b)に示すように、リヤフロア前部40は、車幅方向中央部に前端部40fから後端部40rにかけて車両前後方向に沿って延びる中央隆起部41cと、前部の中央隆起部41cに対して左右両サイドにおいて車幅方向に設けられた前側隆起部41fとを備えている。
中央隆起部41cと前側隆起部41fとを総称して隆起部41に設定している。
【0050】
換言すると図3図4(b)に示すように、リヤフロア前部40は、左右両サイドにおいて、後端から前方へ略水平に延びる低床部42と、低床部42の前端から前方程上方に傾斜して延びる傾斜部43と、傾斜部43の前端から前方へ略水平に延びる高床部44とで一体に形成されている。
【0051】
上述の前側隆起部41fは、左右一対の高床部44によって形成されており、また、前側隆起部41fと中央隆起部41cとは、平面視で略T字状に形成している(図4(b)参照)。
【0052】
本実施形態では、図1図2図4(b)、図5に示すように、リヤフロア前部40の前部かつ左右両側に配設された上記の前側のシートブラケット70は、左右両側の前側隆起部41fの上面に固着され、また、リヤフロア前部40の後部かつ左右両側に配設された上記の後側のシートブラケット70は、左右両側の低床部42の上面に固着されている(図4(b)参照)。
【0053】
図1図2図4(a)、図5図6に示すように、上述したリヤフロア前部40には、車幅方向の左右各側から前方ほど車幅方向内側に延びる左右一対のレインフォースメント51が設けられている。レインフォースメント51は図6に示すように、左右両サイドの側壁部51aと上壁部51bと、側壁部51aの下端等、周縁から延出するフランジ部51cとで一体形成され、図1図2図5に示すように、フランジ部51cをリヤフロア前部40の上面、および後側リヤクロスメンバ15の前壁部15fに接合することで、主にリヤフロア前部40との間に延在方向に延びる閉断面51s(図6参照)を有する断面ハット形状に構成されている。
【0054】
これにより、左右一対のレインフォースメント51は、後側リヤクロスメンバ15の前壁部15fのリヤフロア前部40の前端部40fにかけて延び、リヤフロア前部40の前端部40fかつ車幅方向の中央部40fc付近、すなわち当例では中央隆起部41c(図4(b)参照)の前端部にて前端部51f同士が一体に連結された平面視でV字形状に形成されている(図2図4(a)参照)。
なお、左右一対のレインフォースメント51は、各前端部51fにおいて互いに一体に連結する連結部(51f)において、各閉断面51sが車幅方向に連通している。
【0055】
レインフォースメント51は図1図6に示すように、上壁部51bが高床部44よりも高い高さで延在方向に沿って略水平に形成され、リヤフロア前部40の前上がり形状(すなわち上面の高さ)に応じて側壁部51aの上下高さを延在方向に沿って変化させて形成している。すなわち、レインフォースメント51は、低床部42、傾斜部43および高床部44をこの順に通過するに従って、側壁部51aの上下幅が段階的に小さくなるように形成している。
【0056】
図1図2図4(a)(b)、図6に示すように、リヤフロア前部40には、左右一対のレインフォースメント51よりも車幅方向外側に配設される左右一対のビード65が一体形成されている。
【0057】
左右各ビード65は、左右各レインフォースメント51の後端部51r(図2参照)付近、すなわちリヤフロア前部40における、低床部42から前方ほど車幅方向外側に延びており、前端部が傾斜部43の前端(上端)かつ前側のシートブラケット70よりも車幅方向外側に位置するように形成されている(図1図2図4(a)参照)。
すなわち、ビード65は、その車幅方向の外縁が、傾斜部43の車幅方向の外縁に沿って形成されている(図2参照)。
【0058】
これにより、ビード65は、該ビード65よりも車幅方向外側に配設されたフレーム部材6に対して車幅方向の間隔が前方程徐々に狭くなるように、すなわち車両前方程車幅方向外側に位置するように形成されている。
【0059】
なお本実施形態においては、ビード65は、その後端部がレインフォースメント51の後端部51r(図2参照)の近傍位置に位置するが、この構成に限定せず、レインフォースメント51の後端部51rから隙間なく車両前方程前方かつ車幅方向外側に連続的に延びる構成を採用してもよい。
【0060】
さらに、ビード65は図6に示すように、リヤフロア前部40に、その周辺部に対して上方に突状に形成されており、当例では図1図2に示すように、前方程幅広、すなわち後部よりも前部が幅広となる突形状に形成している。
【0061】
図2に示すように、上述した左右一対のレインフォースメント51と左右一対のビード65とは、リヤフロア前部40において平面視でW字状に構成している。そして、リヤフロア前部40には、少なくともこれら左右一対のレインフォースメント51と左右一対のビード65によって、車幅方向の中央部とその左右両側との合計3つのトラス構造Ta,Tb,Tc(三角形の補強構造)が略同一の大きさで構成される。
【0062】
本実施形態では、リヤフロア前部40には、左右一対のレインフォースメント51と後側リヤクロスメンバ15とで車幅方向中央部にトラス構造Tc(中央トラス構造Tc)が画定され、車両右側のレインフォースメント51と車両右側のビード65と前側リヤクロスメンバ14とで車幅方向右側にトラス構造Ta(右側トラス構造Ta)が画定され、車両左側のレインフォースメント51と車両左側のビード65と前側リヤクロスメンバ14とで幅方向左側にトラス構造Tb(左側トラス構造Tb)が画定されている。
このように、3つのトラス構造Ta,Tb,Tcを、リヤフロア前部40の略全体に亘って(少なくとも傾斜部43を平面視で包含するように)互いに略同一形状かつ略同一の大きさに配設することで、リヤフロア前部40全体(特に傾斜部43)を偏りなく補強することができる。
【0063】
そして図2図5図6に示すように、上述したリヤシート30の座部31に備えたクッションフォーム部36は、レインフォースメント51より車幅方向外側であってリヤフロア前部40の前上がり状の傾斜部43に直接載置されており、当例では、少なくとも傾斜部43に一体形成したビード65を跨ぐようにして載置されている。
【0064】
このように、リヤシート30をリヤフロア前部40に搭載したとき、クッションフォーム部36を、リヤフロア前部40の前上がり状の傾斜部43に載置することで、リヤシート30に着座する乗員の安定した着座姿勢維持のため座部31(座面)が前上がり状の姿勢となるように支持することができる。
【0065】
これにより、車両走行中の加減速時や後突時に、リヤシート30からリヤフロア前部40に伝達する車両前後方向の荷重は、座部31に備えた主にクッションフォーム部36を介して伝達する。
【0066】
上述したように、本実施形態の車両の後部車体構造は、車両用シートとしてのリヤシート30が搭載される前上がり状のフロアとしてのリヤフロア前部40と、後端部51rがリヤフロア前部40の車幅方向両側に形成され、前方ほど車幅方向内側(中央)に延びる左右一対の第1補強延在部としてのレインフォースメント51と、車幅方向の夫々に対応するレインフォースメント51よりも車幅方向外側に配設され、レインフォースメント51の後端部51r付近から前方ほど車幅方向外側に延びる左右一対の第2補強延在部としてのビード65とを備えたしたものである(図1図2図4(a)、図6参照)。
【0067】
上記構成によれば、車両後突時に後突荷重を、レインフォースメント51を介して車両前方へスムーズに伝達することができることに加え、第1、第2補強延在部51,65を利用してリヤフロア前部40に平面視で略三角形の補強構造、すなわちトラス構造Ta,Tb,Tcが画定される(図2参照)。
【0068】
従って、リヤシート30の座部31を支持するとともに、該座部31に着座する乗員の着座姿勢維持のため前上がり状に形成されたリヤフロア前部40の面剛性を高めることができる。
【0069】
その他にも、リヤフロア前部40の面剛性を高めることで、車両走行時に、リヤフロア前部40よりも車両後方かつ左右両サイドに備えたリヤサスペンション(図示省略)等からリヤフロア前部40へ伝達されるフロア振動の抑制にも寄与することができ、またフロアを含めた車体全体の剛性が向上するため車両の操安性を高めることができる。
【0070】
またこの発明の態様として、第1補強延在部を、リヤフロア前部40の上面に接合され、該リヤフロア前部40との間に延在方向に延びる閉断面51s(図6参照)が構成されるレインフォースメント51に設定し、第2補強延在部を、リヤフロア前部40に一体形成されるビード65に設定したしたものである(図1図2図4(a)、図6参照)。
【0071】
上記構成によれば、第1、第2補強延在部とのうち、一方の補強延在部を、レインフォースメント51と比して軽量なビード65に設定することで、(第1、第2補強延在部を共にレインフォースメント51を採用する構成と比して)フロア全体としての軽量化を図ることができる。さらにビード65はリヤフロア前部40に一体形成されるため、部品点数の削減にも寄与することができる。
【0072】
一方、第1、第2補強延在部とのうち、他方の補強延在部を、ビード65よりも高剛性のレインフォースメント51に設定することで、(第1、第2補強延在部を共にビード65を採用する構成と比して)リヤフロア前部40の面剛性をより高めることができる。
【0073】
特に、リヤフロア前部40の車幅方向の中央側において、前方ほど車幅方向内側へ延在する第1補強延在部を、高剛性に構成されたレインフォースメント51に設定することで、該レインフォースメント51によって、車体後部の左右両サイドに備えたフレーム部材6からセンタトンネル11へ、すなわち車体後部から前方へ後突荷重を効率的に伝達することができる。
【0074】
またこの発明の態様として、左右一対のレインフォースメント51は、夫々の前端部51f同士がリヤフロア前部40の前端部40fの車幅方向の中央部40fcにおいて互いに連結されたしたものである(同図参照)。
【0075】
上記構成によれば、左右一対のレインフォースメント51を車幅方向の中央部において、各前端部51f同士を一体に連結することで、車体後部の両サイドに備えたフレーム部材6に入力された後突荷重(図2中の矢印F1参照)を、該両サイドから左右一対のレインフォースメント51を介して平面視でフロアパネル1の車幅方向中央部において該フロアパネル1の後端部から前方へ延びるセンタトンネル11へよりスムーズに伝達することができる(図2中の矢印F2,F3参照)。
【0076】
またこの発明の態様として、リヤフロア前部40の前端部40fに接合され、該前端部40fに沿って車幅方向に延びる前側リヤクロスメンバ14(前側クロスメンバ)を備え(図1図3図5参照)、レインフォースメント51の前端部51fは、前側リヤクロスメンバ14付近に配設されたものである(図1図2図5参照)。
当例では、レインフォースメント51の前端部51fは、前側リヤクロスメンバ14と平面視でオーバーラップする位置に配設することで、該前側リヤクロスメンバ14に連結されている(図5参照)。
【0077】
上記構成によれば、左右一対のレインフォースメント51とビード65と前側リヤクロスメンバ14とによって、平面視でその内側の領域を略閉じるトラス構造Ta,Tbを、リヤフロア前部40の車幅方向の両側に画定することができるため(図2参照)、リヤフロア前部40の面剛性をより高めることができる。
【0078】
またこの発明の態様として、リヤフロア前部40の後端部40r(図4(a)参照)に接合され、該後端部40rに沿って車幅方向に延びる後側リヤクロスメンバ15を備え、左右一対のレインフォースメント51の各後端部51rは、後側リヤクロスメンバ15付近に配設されたものである(図1図2図5参照)。
当例では、レインフォースメント51の後端部51rは、後側リヤクロスメンバ15の前壁部15fに接合することで、該後側リヤクロスメンバ15に連結されている。
【0079】
上記構成によれば、左右一対のレインフォースメント51と後側リヤクロスメンバ15とによって、平面視でその内側の領域を略閉じるトラス構造Tcを、リヤフロア前部40の車幅方向の中央部に画定することができるため(図2参照)、リヤフロア前部40の面剛性をより高めることができる。
【0080】
またこの発明の態様として、リヤフロア前部40は、前後方向に延びる低床部42と、該低床部42の前端から前上がり状に傾斜する傾斜部43と、該傾斜部43の前上端から前方へ延びる高床部44とで一体形成され(図3図4(b)参照)、リヤシート30の座部31には、座面を構成するシートクッション部35(図3参照)と、該シートクッション部35よりも単位体積当たりの質量が小さく(すなわち軽量)、かつ剛性が高い高剛性部としてのクッションフォーム部36とを備え(図3図5図6参照)、クッションフォーム部36は、傾斜部43に設置され、レインフォースメント51およびビード65は、少なくとも傾斜部43に設けられたものである(図1図2図4(a)、図5図6参照)。
【0081】
上記構成によれば、リヤシート30の座部31に、該座部31の座面を構成するシートクッション部35を備えることにより、座部31のクッション性能を確保する一方で、座部31にクッションフォーム部36を備えることで、リヤシート30の軽量化を図ることができつつ、座部31が前後方向に変位しようとする際に発生する荷重等に対して型崩れすることなくしっかり座部31の形状を保つことができる。
【0082】
さらに、クッションフォーム部36を傾斜部43に設置することで、車両走行中の加減速時(特に減速時)にリヤシート30の座部31がリヤフロア前部40に対して車両前後方向に滑り移動すること(所謂サブマリン現象)を効果的に抑制できる。
【0083】
さらにまた、レインフォースメント51およびビード65を少なくとも傾斜部43に設けたため、リヤシート30の座部31がリヤフロア前部40に対して前後方向に滑り移動することを規制する際に要求される傾斜部43の面剛性を効果的に高めることができる。
【0084】
その他にも、クッションフォーム部36に対して前後各側にシートクッションフレーム37を備え、シートクッションフレーム37を、シートブラケット70を介してリヤフロア前部40の前後各側に設けられた共に水平な高床部44および低床部42において支持する構成を採用したため(図3参照)、車両走行時(略等速走行時)に、リヤシート30や該リヤシート30に着座する乗員の荷重を水平な高床部44および低床部42によって安定して支持することができる。
【0085】
但し、本発明は、リヤシート30をリヤフロア前部40に搭載する構成に関して、クッションフォーム部36を直接的にリヤフロア前部40に載置することに加えてシートクッションフレーム37をシートブラケット70を介してリヤフロア前部40に設置する上述した実施形態の構成に限定せず、少なくともクッションフォーム部36を前上がり状のリヤフロア前部40に載置する構成を採用する限り、他の構成を採用してもよい。
【0086】
その他にもこの発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【符号の説明】
【0087】
14…前側リヤクロスメンバ(前側クロスメンバ)
15…後側リヤクロスメンバ(後側クロスメンバ)
30…リヤシート(車両用シート)
31…車両用シートの座部
35…シートクッション部
36…クッションフォーム部(高剛性部)
40…リヤフロア前部(前上がり状のフロア)
40f…リヤフロア前部の前端部
40fc…リヤフロア前部の前端部における車幅方向の中央部
40r…リヤフロア前部の後端部
42…低床部
43…傾斜部
44…高床部
51…レインフォースメント(第1補強延在部)
51f…レインフォースメントの前端部
51r…レインフォースメントの後端部
51s…閉断面
65…ビード(第2補強延在部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6