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特許7040518ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを用いた光学レンズ
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  • 特許-ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを用いた光学レンズ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを用いた光学レンズ
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20220315BHJP
   C08G 64/02 20060101ALI20220315BHJP
   C08G 64/06 20060101ALI20220315BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C08L69/00
C08G64/02
C08G64/06
G02B1/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019509788
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2018012100
(87)【国際公開番号】W WO2018181157
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2017071415
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】平川 学
(72)【発明者】
【氏名】中西 勇太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宣之
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/052370(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/170691(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/142149(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/010703(WO,A1)
【文献】特開2015-086265(JP,A)
【文献】特開2007-070392(JP,A)
【文献】特開2004-315747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00- 64/42
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される構成単位を有するポリカーボネート樹脂(A)、および下記一般式(2)で示される構成単位を有するポリカーボネート樹脂(B)を含むポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rは水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【化2】
(一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数5~20のシクロアルコキシル基、炭素数6~20のアリール基または炭素数6~20のアリールオキシ基を表し、Yは炭素数1~4のアルキレン基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子またはフェニル基を表す、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記ポリカーボネート樹脂(B)とが相溶化されている、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
3mm厚みで測定した際のヘーズが0.4%以下である、請求項1から3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリカーボネート樹脂(A)が、下記構造式で表される2,6位の異性体に由来する構成単位と、下記構造式で表される2,7位の異性体に由来する構成単位とを含む、請求項1から4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化3】
【請求項6】
前記ポリカーボネート樹脂(A)において、前記2,6位の異性体に由来する構成単位と前記2,7位の異性体に由来する構成単位とが、質量比で1.0:99.0~99.0:1.0の割合で含まれる、請求項5に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
前記一般式(1)におけるRが、水素原子を表す、請求項1から6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記ポリカーボネート樹脂(B)との混合比が、質量比で90:10~10:90である、請求項1から7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を用いた光学レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリカーボネート樹脂組成物、及びそれにより形成される光学レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学素子の材料として、光学ガラスあるいは光学用透明樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性や透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れ、様々な屈折率(nD)やアッベ数(νD)を有する多種類の材料が存在しているが、材料コストが高い上、成形加工性が悪く、また生産性が低いという問題点を有している。とりわけ、収差補正に使用される非球面レンズに加工するには、極めて高度な技術と高いコストがかかるため実用上大きな障害となっている。
【0003】
一方、光学用透明樹脂、中でも熱可塑性透明樹脂からなる光学レンズは、射出成形により大量生産が可能で、しかも非球面レンズの製造も容易であるという利点を有しており、現在、カメラ用レンズ用途として使用されている。例えば、ビスフェノールAからなるポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ-4-メチルペンテン、ポリメチルメタクリレートあるいは非晶質ポリオレフィンなどが例示される。
【0004】
しかしながら、光学用透明樹脂を光学レンズとして用いる場合、屈折率やアッベ数以外にも、透明性、耐熱性、低複屈折性が求められるため、樹脂の特性バランスによって使用箇所が限定されてしまうという弱点がある。例えば、ポリスチレンは耐熱性が低く複屈折が大きい、ポリ-4-メチルペンテンは耐熱性が低い、ポリメチルメタクリレートはガラス転移温度が低く、耐熱性が低く、屈折率が小さいため使用領域が限られ、ビスフェノールAからなるポリカーボネートは複屈折が大きい等の弱点を有するため使用箇所が限られる。
【0005】
光学ユニットの光学設計においては、互いにアッベ数が異なる複数のレンズを組み合わせて使用することにより色収差を補正する方法が知られている。例えば、比較的高アッベ数のシクロオレフィン樹脂製のレンズと、低アッベ数のビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂製のレンズとを組み合わせて色収差を補正する。しかしながら、シクロオレフィン樹脂とポリカーボネート樹脂の間には吸水膨張率に差があり、両者のレンズを組み合わせてレンズユニットを形成すると、スマートフォン等の使用環境で吸水した際にレンズの大きさに違いが発生する。この膨張率差によりレンズの性能が損なわれる。
【0006】
特許文献1~3には、ペルヒドロキシジメタノナフタレン骨格を含むポリカーボネート共重合体が記載されているが、ジヒドロキシメチル基の位置がいずれも2,3位であるため強度が弱く、光学レンズ用途には適していない。
【0007】
特許文献4には、高屈折率かつ低アッベ数のポリカーボネート樹脂に対して、吸水膨張率の差が小さい高アッベ数の樹脂を提供することを目的として、デカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレンジオール(D-NDM)を原料とするポリカーボート樹脂を開示している。しかし、特許文献4の樹脂には、色相(YI)とヘーズ(Hz)の改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平5-70584号公報
【文献】特開平2-69520号公報
【文献】特開平5-341124号公報
【文献】国際公開第2016/052370A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、色相(YI)やヘーズ(Hz)が低下することなく、低複屈折率、中屈折率、かつ中アッベ数を有するポリカーボネート樹脂組成物及びこの樹脂組成物から形成された光学レンズを提供することである。なお、ヘーズは、hazeまたはHzとも記載する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来、低屈折率材料と高屈折率材料とをブレンドすると、透過率が低下してしまうという課題があった。しかし、本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定構造のポリカーボネート樹脂(A)と、特定構造のポリカーボネート樹脂(B)とを混練すると、両者が相溶化して、色相(YI)やヘーズ(Hz)が低下することなく屈折率を制御できる材料が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、上記課題は、以下に示すポリカーボネート樹脂組成物、それを用いた光学レンズによって解決することができる。
<1> 下記一般式(1)で示される構成単位を有するポリカーボネート樹脂(A)、および下記一般式(2)で示される構成単位を有するポリカーボネート樹脂(B)を含むポリカーボネート樹脂組成物である。
【化1】
(一般式(1)中、Rは水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【化2】
(一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数5~20のシクロアルコキシル基、炭素数6~20のアリール基または炭素数6~20のアリールオキシ基を表し、Yは炭素数1~4のアルキレン基を表す。)
<2> 前記一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子またはフェニル基を表す、上記<1>に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
<3> 前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記ポリカーボネート樹脂(B)とが相溶化されている、上記<1>または<2>に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
<4> 3mm厚みで測定した際のヘーズが0.4%以下である、上記<1>から<3>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
<5> 前記ポリカーボネート樹脂(A)が、下記構造式で表される2,6位の異性体に由来する構成単位と、下記構造式で表される2,7位の異性体に由来する構成単位とを含む、上記<1>から<4>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
【化3】
<6> 前記ポリカーボネート樹脂(A)において、前記2,6位の異性体に由来する構成単位と前記2,7位の異性体に由来する構成単位とが、質量比で1.0:99.0~99.0:1.0の割合で含まれる、上記<5>に記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
<7> 前記一般式(1)におけるRが、水素原子を表す、上記<1>から<6>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
<8> 前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記ポリカーボネート樹脂(B)との混合比が、質量比で90:10~10:90である、上記<1>から<7>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物である。
<9> 上記<1>から<8>のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を用いた光学レンズである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、色相(YI)やヘーズ(Hz)が低下することなく、低複屈折率、中屈折率、かつ中アッベ数を有するポリカーボネート樹脂組成物及びこれを用いた光学レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で得られたポリカーボネート樹脂組成物のH-NMRの測定結果を示す。
図2図1の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
<ポリカーボネート樹脂(A)>
本発明におけるポリカーボネート樹脂(A)は、下記一般式(1)で示される構成単位を有する。
【化4】
一般式(1)中、Rは水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、メチル基、またはエチル基を表し、特に好ましくは、水素原子を表す。
【0015】
一般式(1)で表される構成単位(以下、「構成単位(K)」という)は、下記一般式(L)で表されるジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位が例示される。例えば、デカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレンジオール(以下、「D-NDM」と記載することがある)から誘導される構成単位である。
【化5】
(一般式(L)において、Rは水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0016】
構成単位(K)は、下記一般式(M)で表される-CHO-基が6位に結合した異性体(2,6位の異性体)と、下記一般式(N)で表される-CHO-基が7位に結合した異性体(2,7位の異性体)との混合体であることが好ましい。樹脂の強度、引張伸度、成形体の外観などの樹脂物性の観点から、質量比で、2,6位の異性体:2,7位の異性体=1.0:99.0~99.0:1.0であることが好ましく、2,6位の異性体:2,7位の異性体=20:80~80:20であることがより好ましく、2,6位の異性体:2,7位の異性体=50:50~80:20であることが特に好ましい。本発明では、2,3位の異性体は含まないことが好ましい。
【化6】
(一般式(M)において、Rは水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【化7】
(一般式(N)において、Rは水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0017】
前記一般式(M)で表される構成単位(以下、「構成単位(M)」という)は、下記一般式(O)で表されるジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位が例示され、前記一般式(N)で表される構成単位(以下、「構成単位(N)」という)は、下記一般式(P)で表されるジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位が例示される。
【化8】
(一般式(O)において、Rは水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【化9】
(一般式(P)において、Rは水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0018】
前記一般式(K)、(L)、(M)、(N)、(O)及び(P)において、Rはすべて同じであることが好ましく、流通性の観点から、好ましくは、Rは水素原子である。
本発明におけるポリカーボネート樹脂(A)は、上記一般式(1)で示される構成単位を有するが、本発明による効果を損なわない範囲で他の構成単位を含んでもよい。本発明におけるポリカーボネート樹脂(A)に占める構成単位(K)の割合は、70質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0019】
本発明におけるポリカーボネート樹脂(A)に含んでもよい他の構成単位とは、一般式(1)以外のジオール化合物と炭酸ジエステルとを反応させて得られる構成単位であり、一般式(1)以外のジオール化合物として、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ等が例示される。
【0020】
<ポリカーボネート樹脂(B)>
本発明におけるポリカーボネート樹脂(B)は、下記一般式(2)で示される構成単位を有する。
【化10】
一般式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数5~20のシクロアルコキシル基、炭素数6~20のアリール基または炭素数6~20のアリールオキシ基を表し、好ましくは、水素原子、メチル基、またはフェニル基を表し、より好ましくは、水素原子またはフェニル基を表す。
一般式(2)中、Yは炭素数1~4のアルキレン基を表し、好ましくは、エチレン基、またはプロピレン基を表し、より好ましくはエチレン基を表す。
【0021】
一般式(2)で表される構成単位は、下記一般式(Q)で表されるジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位が例示される。
【化11】
(一般式(Q)において、R、RおよびYは、一般式(2)におけるものと同義である。)
一般式(Q)で表されるフルオレン系ジオール化合物の具体例としては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン等が例示される。これらの中でも、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン(BPPEF)、および9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン(BPMEF)が好ましく、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)、および9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン(BPPEF)がより好ましい。
【0022】
本発明におけるポリカーボネート樹脂(B)は、上記一般式(2)で示される構成単位を有するが、本発明による効果を損なわない範囲で他の構成単位を含んでもよい。本発明におけるポリカーボネート樹脂(B)に占める上記一般式(2)で示される構成単位の割合は、70質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0023】
本発明におけるポリカーボネート樹脂(B)に含んでもよい他の構成単位とは、一般式(2)以外のジオール化合物と炭酸ジエステルとを反応させて得られる構成単位であり、一般式(2)以外のジオール化合物として、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ等が例示される。
【0024】
<ポリカーボネート樹脂組成物>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記一般式(1)で示される構成単位を有するポリカーボネート樹脂(A)、および上記一般式(2)で示される構成単位を有するポリカーボネート樹脂(B)を含む。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、本発明による効果を損なわない範囲で他の樹脂を含んでもよい。本発明のポリカーボネート樹脂組成物に占める上記ポリカーボネート樹脂(A)およびポリカーボネート樹脂(B)の合計の割合は、70質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記ポリカーボネート樹脂(B)との混合比が、質量比で90:10~10:90であることが好ましく、90:10~50:50であることがより好ましく、90:10~60:40であることが更に好ましく、80:20~60:40であることが特に好ましい。
【0025】
さらに本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、酸化防止剤、離型剤、加工安定剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、結晶核剤、強化剤、染料、帯電防止剤あるいは抗菌剤等を添加することが好ましい。
【0026】
酸化防止剤としては、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]がより好ましい。ポリカーボネート樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)および(B)の合計100重量部に対して0.001~0.3重量部であることが好ましい。
【0027】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸とのエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸とのエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。上記一価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素原子数1~20の一価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとしては、炭素原子数1~25の多価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
【0028】
具体的に、一価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸モノグリセリドおよびラウリン酸モノグリセリドが特に好ましい。これら離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)および(B)の合計100重量部に対して0.005~2.0重量部の範囲が好ましく、0.01~0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02~0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0029】
加工安定剤としては、リン系加工熱安定剤、硫黄系加工熱安定剤等が挙げられる。リン系加工熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイトおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。これらの中でも、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。ポリカーボネート樹脂組成物中のリン系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)および(B)の合計100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0030】
硫黄系加工熱安定剤としては、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂組成物中の硫黄系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)および(B)の合計100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0031】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。すなわち、以下に挙げる紫外線吸収剤は、いずれかを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル等が挙げられる。
【0033】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0034】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(オクチル)オキシ]-フェノール等が挙げられる。
【0035】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’-ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-m-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(1,5-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-メチル-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(2-ニトロ-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)および2,2’-(2-クロロ-p-フェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが挙げられる。
【0036】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが挙げられる。
【0037】
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)および(B)の合計100重量部に対して、好ましくは0.01~3.0重量部であり、より好ましくは0.02~1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05~0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、ポリカーボネート樹脂組成物に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0038】
ポリカーボネート樹脂組成物には、製造時に生成するフェノールや、反応せずに残存した炭酸ジエステルが不純物として存在する。ポリカーボネート樹脂組成物中のフェノール含量は、0.1~3000ppmであることが好ましく、0.1~2000ppmであることがより好ましく、1~1000ppm、1~800ppm、1~500ppm、または1~300ppmであることが更に好ましい。また、ポリカーボネート樹脂組成物中の炭酸ジエステル含量は、0.1~1000ppmであることが好ましく、0.1~500ppmであることがより好ましく、1~100ppmであることが特に好ましい。ポリカーボネート樹脂組成物中に含まれるフェノールおよび炭酸ジエステルの量を調節することにより、目的に応じた物性を有する樹脂を得ることができる。フェノールおよび炭酸ジエステルの含量の調節は、重縮合の条件や装置を変更することにより適宜行うことができる。また、重縮合後の押出工程の条件によっても調節可能である。
【0039】
フェノールまたは炭酸ジエステルの含量が上記範囲を上回ると、得られる樹脂成形体の強度が落ちたり、臭気が発生する等の問題が生じ得る。一方、フェノールまたは炭酸ジエステルの含量が上記範囲を下回ると、樹脂溶融時の可塑性が低下する虞がある。
【0040】
<ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に制限はなく、例えば、(1)ポリカーボネート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)のそれぞれの固体を混合し、混練機により混練する方法、(2)溶融状態のポリカーボネート樹脂(A)に、固体のポリカーボネート樹脂(B)を添加して混練する方法、(3)溶融状態のポリカーボネート樹脂(B)に、固体のポリカーボネート樹脂(A)を添加して混練する方法、(4)溶融状態のポリカーボネート樹脂(A)と溶融状態のポリカーボネート樹脂(B)とを混合して混練する方法、のいずれの方法によっても製造することができる。
混練は、連続式、バッチ式のどちらでもよい。混練機は、連続式ならば押出し機が好適であり、バッチ式ならばラボプラストミル、およびニーダーが好適に使用される。
【0041】
本発明におけるポリカーボネート樹脂(A)は、一般式(L)で表されるジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを原料として溶融重縮合法により製造することができる。一般式(L)で表されるジヒドロキシ化合物には、ヒドロキシメチル基が2,6位の異性体および2,7位の異性体の混合物が存在する。これらの異性体は質量比で、2,6位の異性体:2,7位の異性体=0.1:99.9~99.9:0.1である。樹脂の強度、引張伸度、成形体の外観などの樹脂物性の観点から、2,6位の異性体:2,7位の異性体=1.0:99.0~99.0:1.0であることが好ましく、2,6位の異性体:2,7位の異性体=20:80~80:20であることがより好ましく、2,6位の異性体:2,7位の異性体=50:50~80:20であることが特に好ましい。本発明では、2,3位の異性体は含まないことが好ましい。さらに、他のジオール化合物を併用してもよい。この反応では重縮合触媒として、塩基性化合物触媒、エステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下、製造することができる。
また、本発明におけるポリカーボネート樹脂(B)は、一般式(Q)で表されるジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを原料として溶融重縮合法により製造することができる。
【0042】
炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも特にジフェニルカーボネートが反応性と純度の観点から好ましい。炭酸ジエステルは、ジオール成分1モルに対して0.97~1.20モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.98~1.10モルの比率である。このモル比率を調整することにより、ポリカーボネート樹脂の分子量が制御される。
【0043】
塩基性化合物触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、および含窒素化合物等が挙げられる。
【0044】
アルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。触媒効果、価格、流通量、樹脂の色相への影響などの観点から、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0045】
アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属化合物の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0046】
含窒素化合物としては、例えば4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が挙げられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が用いられる。
【0047】
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。また、上述したアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0048】
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
【0049】
これらの触媒は、ジオール化合物の合計1モルに対して、1×10-9~1×10-3モルの比率で用いられることが好ましく、より好ましくは1×10-7~1×10-4モルの比率で用いられる。
【0050】
溶融重縮合法は、前記の原料および触媒を用いて、加熱下に常圧または減圧下にエステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。反応は、一般には二段以上の多段行程で実施される。
【0051】
具体的には、第一段目の反応を120~260℃、好ましくは180~240℃の温度で0.1~5時間、好ましくは0.5~3時間反応させる。次いで反応系の減圧度を上げながら反応温度を高めてジオール化合物と炭酸ジエステルとの反応を行い、最終的には1mmHg以下の減圧下、200~350℃の温度で0.05 ~2時間重縮合反応を行う。このような反応は、連続式で行ってもよくまたバッチ式で行ってもよい。前記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であっても、スクリューを装備した押出機型であってもよく、また、重合物の粘度を勘案してこれらを適宜組み合わせた反応装置を使用することが好ましい。
【0052】
本発明におけるポリカーボネート樹脂(A)およびポリカーボネート樹脂(B)の製造方法では、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。一般的には、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p-トルエンスルホン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn-プロピル、亜リン酸ジn-ブチル、亜リン酸ジn-ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニルリン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p-トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。失活効果、樹脂の色相や安定性の観点から、p-トルエンスルホン酸ブチルを用いるのが好ましい。また、これらの失活剤は、触媒量に対して好ましくは0.01~50倍モル、より好ましくは0.3~20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0053】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.1~1mmHgの圧力、200~350℃の温度で脱揮除去する工程を設けてもよく、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0054】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、異物含有量が極力少ないことが望まれ、溶融原料の濾過、触媒液の濾過が好適に実施される。フィルターのメッシュは5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。さらに、生成する樹脂のポリマーフィルターによる濾過が好適に実施される。ポリマーフィルターのメッシュは100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。また、樹脂ペレットを採取する工程は当然低ダスト環境でなければならず、クラス1000以下であることが好ましく、より好ましくはクラス100以下である。
【0055】
<ポリカーボネート樹脂組成物の物性>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の好ましいガラス転移温度(Tg)は95~180℃であり、より好ましくは100~160℃であり、特に好ましくは105~155℃である。また、ガラス転移温度(Tg)の好ましい下限値として、110℃および120℃が挙げられ、ガラス転移温度(Tg)の好ましい上限値として、150℃が挙げられる。Tgが95℃より低いと、レンズやカメラの使用温度範囲が狭くなるため好ましくない。また、180℃を超えると射出成形を行う際の成形条件が厳しくなるため好ましくない。
【0056】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、成形後にJIS-K-7142の方法で測定した屈折率が1.50~1.61であることが好ましく、1.53~1.60であることがより好ましい。
【0057】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、成形後にJIS-K-7142の方法で測定したアッベ数が28.0以上であることが好ましく、より好ましくは30.0以上、特に好ましくは32.0以上である。アッベ数の上限は、好ましくは60であり、より好ましくは50である。
【0058】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、成形体の厚みを3mmに成形した後に積分球式光電光度法で測定した全光線透過率が85.0%以上であることが好ましく、より好ましくは87.0%以上である。全光線透過率の上限は、99%程度である。
【0059】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、JIS-K-7209の方法で測定した吸水率が0.2~2.0%であることが好ましく、0.3~1.5%であることがより好ましい。
【0060】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の吸水膨張率は0.01~0.5%が好ましく、0.03~0.4%がより好ましい。吸水膨張率の測定はマイクロメーター(精度1000分の1mm)によって行う。吸水率測定に使用する円板の直径を測定し、吸水前後の直径の変化率(%)を吸水膨張率とする。
【0061】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は20,000~70,000である。より好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は25,000~65,000であり、特に好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は30,000~60,000である。Mwが20,000より小さいと、光学レンズが脆くなるため好ましくない。Mwが70,000より大きいと、溶融粘度が高くなるため製造後の樹脂の抜き取りが困難になり、更には流動性が悪くなり溶融状態で射出成形しにくくなるため好ましくない。
【0062】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の好ましいメルトフローレート(MVR)は10~80、より好ましくは20~60である。
【0063】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の好ましい還元粘度(ηsp/C)は、0.20dl/g以上であり、より好ましくは0.23~0.84dl/gである。
【0064】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の好ましい色相(YI)は、5.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましく、2.5以下が特に好ましい。色相(YI)の下限は0.2以上である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、3mm厚みで測定した際のヘーズ(Hz)が、好ましくは0.4%以下であり、より好ましくは0.3%以下であり、更に好ましくは0.2%以下であり、特に好ましくは0.1%以下である。ヘーズ(Hz)の下限は0.01%以上である。
【0065】
耐黄変性、安定性(耐熱、耐候等)の観点から最終ペレット(添加剤を入れたポリカーボネート樹脂組成物)に含まれるデカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレンジオール(D-NDM)は、30ppm以下が好ましく、20ppm以下がさらに好ましい。
【0066】
<光学レンズ>
本発明の光学レンズは、上述した本発明のポリカーボネート樹脂組成物を射出成形機あるいは射出圧縮成形機によりレンズ形状に射出成形することによって得ることができる。射出成形の成形条件は特に限定されないが、成形温度は好ましくは180~280℃である。また、射出圧力は好ましくは50~1700kg/cm2である。
【0067】
光学レンズへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス1000以下であることが好ましく、より好ましくはクラス100以下である。
【0068】
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。非球面レンズの非点収差は0~15mλであることが好ましく、より好ましくは0~10mλである。
【0069】
本発明の光学レンズの厚みは、用途に応じて広範囲に設定可能であり特に制限はないが、好ましくは0.01~30mm、より好ましくは0.1~15mmである。本発明の光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていてもよい。反射防止層は、単層であっても多層であってもよく、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。これらのうちでより好ましいものは酸化ケイ素、酸化ジルコニウムであり、更に好ましいものは酸化ケイ素と酸化ジルコニウムの組み合わせである。また、反射防止層に関しては、単層/多層の組み合わせ、またそれらの成分、厚みの組み合わせ等について特に限定はされないが、好ましくは2層構成又は3層構成、特に好ましくは3層構成である。また、該反射防止層全体として、好ましくは光学レンズの厚みの0.00017~3.3%、具体的には0.05~3μm、特に好ましくは1~2μmとなる厚みで形成するのがよい。
【実施例
【0070】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
【0071】
<ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)>
GPCを用い、テトラヒドロフランを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。この検量線に基づいてGPCのリテンションタイムから算出した。
<ガラス転移温度(Tg)>
示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。
<屈折率nD、アッベ数νD>
ポリカーボネート樹脂組成物を、40φ、3mm厚の円板にプレス成形(成形条件:200℃、100kgf/cm、2分)し、直角に切り出し、カルニュー製KPR-200により測定した。
【0072】
<全光線透過率、色相(YI)、ヘーズ(Hz)>
住友重機械工業(株)製射出成型機SH50にて、シリンダー温度260℃、金型温度を樹脂のガラス転移温度より30℃低い温度として射出成形し、3mm厚の円板を得た。この円板を用いて全光線透過率、色相(YI)、ヘーズ(Hz)を測定した。
色相(YI)の測定には日本電色工業(株)製SE2000を使用し、全光線透過率、およびヘーズ(Hz)の測定には日本電色製NDH2000を使用した。
【0073】
<ポリカーボネート樹脂組成物中のフェノール、デカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレンジメタノール(D-NDM)、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)、ジフェニルカーボネート(DPC)量の測定>
試料0.5gをテトラヒドロフラン(THF)50mlに溶解し、試料溶液とした。標品として各化合物の純品より検量線を作成し、試料溶液2μLをLC-MSにより以下の測定条件で定量した。なお、この測定条件での検出限界値は0.01ppmである。
LC-MS測定条件:
測定装置(LC部分):Agilent Infinity 1260 LC System
カラム:ZORBAX Eclipse XDB-18、及びガードカートリッジ
移動相:
A: 0.01mol/L-酢酸アンモニウム水溶液
B:0.01mol/L-酢酸アンモニウムのメタノール溶液
C:THF
移動相のグラジエントプログラム:
【表1】
流速:0.3ml/分
カラム温度:45℃
検出器:UV(225nm)
測定装置(MS部分):Agilent 6120 single quad LCMS System
イオン化ソース: ESI
極性:Positive&Negative
フラグメンタ: 100V(BPEF)、70V(フェノール、DPC)、75V(D-NDM)
ドライガス:10L/分、350℃
ネブライザ:50psi
キャピラリ電圧:3000V(Positive)、2500V(Negqative)
測定イオン:
【表2】
【0074】
<合成例1>
デカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレンジメタノール(D-NDM)からなるポリカーボネートの重合
下記式(1a)で表され、2,6位の異性体と2,7位の異性体とが、質量比で50:50であるD-NDM:23.50kg(105.7モル)、ジフェニルカーボネート:22.98kg(107.3モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.13g(1.5×10-3モル)を攪拌機および留出装置付きの50L反応器に入れ、窒素雰囲気760Torrの下1時間かけて205℃に加熱し、撹拌した。30分かけて205Torrに調整し205℃、205Torrの条件下30分間保持しエステル交換反応を開始した。30分後、20分かけて205Torrから180Torrまで減圧した。減圧しながら温度を215℃まで加熱し、反応開始後120分後で230℃まで昇温、150Torrまで減圧、反応開始後180分後、温度を240℃まで昇温させるとともに1Torrまで減圧したのち20分間保持し、ポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂のMwは30,000、ガラス転移温度Tgは133℃であった。このポリカーボネート樹脂の屈折率は1.533、アッベ数は56.2、全光線透過率は89%、色相(YI)は2.5、ヘーズ(Hz)は0.3%であった。
また、ポリカーボネート樹脂中のD-NDM含有量は10ppm、フェノール含有量は210ppm、DPC含有量は35ppmであった。結果を下記表3にまとめた。
【化12】
【0075】
<合成例2>
9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)からなるポリカーボネートの重合
下記構造式で表されるBPEF:20.0kg(45.6モル)、ジフェニルカーボネート:10.16kg(47.4モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.03g(3.6×10-4モル)を攪拌機および留出装置付きの50L反応器に入れ、窒素雰囲気760Torrの下1時間かけて205℃に加熱し、撹拌した。20分かけて205Torrに調整し205℃、205Torrの条件下30分間保持しエステル交換反応を開始した。30分後、20分かけて205Torrから180Torrまで減圧した。減圧しながら温度を215℃まで加熱し、反応開始後120分後で230℃まで昇温、150Torrまで減圧、反応開始後180分後、温度を240℃まで昇温させるとともに1Torrまで減圧したのち20分間保持し、ポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂のMwは27,000、ガラス転移温度Tgは143℃であった。このポリカーボネート樹脂の屈折率は1.639、アッベ数は23.5、全光線透過率は89%、色相(YI)は3.0、ヘーズ(Hz)は0.3%であった。
また、ポリカーボネート樹脂中のフェノール含有量は210ppm、DPC含有量は250ppm、BPEF含有量は30ppmであった。結果を下記表3にまとめた。
【化13】
【0076】
<合成例3>
9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン(BPPEF)からなるポリカーボネートの重合
下記構造式で表されるBPPEF:20.0kg(33.9モル)、ジフェニルカーボネート:7.47kg(34.9モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.025g(3.0×10-4モル)を攪拌機および留出装置付きの50L反応器に入れ、窒素雰囲気760Torrの下1時間かけて205℃に加熱し、撹拌した。20分かけて205Torrに調整し205℃、205Torrの条件下30分間保持しエステル交換反応を開始した。30分後、20分かけて205Torrから180Torrまで減圧した。減圧しながら温度を215℃まで加熱し、反応開始後120分後で230℃まで昇温、150Torrまで減圧、反応開始後180分後、温度を240℃まで昇温させるとともに1Torrまで減圧したのち20分間保持し、ポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂のMwは40,000、ガラス転移温度Tgは155℃であった。このポリカーボネート樹脂の屈折率は1.657、アッベ数は21.2、全光線透過率は88%、色相(YI)は3.0、ヘーズ(Hz)は0.3%であった。
また、ポリカーボネート樹脂中のフェノール含有量は270ppm、DPC含有量は100ppmであった。結果を下記表3にまとめた。
【化14】
【0077】
<合成例4>
ペンタシクロペンタデカンジメタノール(PCPMD)からなるポリカーボネートの重合
原料のモノマーを下記構造式で表されるペンタシクロペンタデカンジメタノール15.0kg(57.2モル)に変更する以外は、合成例1と同様に反応行い、ポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂のMwは32,000、ガラス転移温度Tgは137℃であった。このポリカーボネート樹脂の屈折率は1.537、アッベ数は56.6、全光線透過率は89%、色相(YI)は3.1、ヘーズ(Hz)は0.3%であった。
また、ポリカーボネート樹脂中のフェノール含有量は250ppm、DPC含有量は80ppmであった。結果を下記表3にまとめた。
【化15】
【0078】
<合成例5>
ビスフェノールA(BPA)からなるポリカーボネートの重合
BPA:20.0kg(87.6モル)、ジフェニルカーボネート:19.3kg(90.2モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.03g(3.6×10-4モル)を攪拌機および留出装置付きの50L反応器に入れ、窒素雰囲気760Torrの下1時間かけて205℃に加熱し、撹拌した。20分かけて205Torrに調整し205℃、205Torrの条件下30分間保持しエステル交換反応を開始した。30分後、20分かけて205Torrから180Torrまで減圧した。減圧しながら温度を215℃まで加熱し、反応開始後120分後で230℃まで昇温、150Torrまで減圧、反応開始後180分後、温度を240℃まで昇温させるとともに1Torrまで減圧したのち20分間保持し、ポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂のMwは33,000、ガラス転移温度Tgは145℃であった。このポリカーボネート樹脂の屈折率は1.582、アッベ数は30、全光線透過率は89%、色相(YI)は2.3、ヘーズ(Hz)は0.3%であった。
また、ポリカーボネート樹脂中のフェノール含有量は300ppm、DPC含有量は100ppmであった。結果を下記表3にまとめた。
【0079】
<合成例6>
デカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレンジメタノール(D-NDM)からなるポリカーボネートの重合
炭酸水素ナトリウム:0.01g(1.2×10-4モル)へ変更する以外は、合成例1と同様に反応を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂のMwは30,000、ガラス転移温度Tgは133℃であった。このポリカーボネート樹脂の屈折率は1.533、アッベ数は56.2、全光線透過率は89%、色相(YI)は2.5、ヘーズ(Hz)は0.3%であった。
また、ポリカーボネート樹脂中のD-NDM含有量は15ppm、フェノール含有量は220ppm、DPC含有量は40ppmであった。結果を下記表3にまとめた。
【0080】
<実施例1>
D-NDMを原料として合成例1より得られたポリカーボネート樹脂10.0kg、BPEFを原料として合成例2より得られたポリカーボネート樹脂4.8kgのペレットを混合したものに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(ADEKA製AO-60)を14.8g、ホスファイト系酸化防止剤(商品名:PEP-36)を4.4g、離型剤としてグリセリンモノステアレート(理研ビタミン製S-100A)を14.8g添加し、二軸押出機(IPEC-35)にて混練、ペレット化を行った。得られたポリカーボネート樹脂組成物であるペレットは無色透明であり、物性を測定したところ、Mwは28,000、Tgは137℃、屈折率(nd)は1.567、アッベ数(νd)は38、全光線透過率は89%、色相(YI)は2.5、ヘーズ(Hz)は0.2%であった。
また、ポリカーボネート組成物中のD-NDM含有量は15ppm、フェノール含有量は130ppm、DPC含有量は170ppm、BPEF含有量は20ppmであった。結果を下記表4にまとめた。
実施例1で得られたポリカーボネート樹脂組成物のH-NMRの測定結果を図1及び図2に示す。
得られたH-NMRチャートからは、以下のデータが読み取れる。

化学シフト 積分値
基準(エチレン鎖) 4.60~3.50ppm 100
ビニル基(BPEF由来) 4.75~4.66ppm 0.052

上記ビニル基とは、下記構造式のHf、Hoに該当する。
【化16】
本発明における一般式(2)中のYが炭素数2のアルキレン基の場合、好ましいフルオレン系ビニル末端基量の値は、以下の通りである。
(4.60~3.50ppmのピーク積分値)/(4.75~4.66ppmのピーク積分値)×100は、0.001~1.0が好ましく、0.010~0.5がより好ましく、0.010~0.1が特に好ましい。
【0081】
<実施例2>
D-NDMを原料として合成例1より得られたポリカーボネート樹脂5.0kg、BPEFを原料として合成例2より得られたポリカーボネート樹脂0.9kgとする以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂組成物を得た。得られたポリカーボネート樹脂組成物であるペレットは無色透明であり、物性を測定したところ、Mwは25,000、Tgは136℃、屈折率(nd)は1.547、アッベ数(νd)は45、全光線透過率は89%、色相(YI)は2.3、ヘーズ(Hz)は0.3%であった。
また、ポリカーボネート組成物中のD-NDM含有量は15ppm、フェノール含有量は250ppm、DPC含有量は180ppm、BPEF含有量は20ppmであった。結果を下記表4にまとめた。
【0082】
<実施例3>
D-NDMを原料として合成例1より得られたポリカーボネート樹脂3.0kg、BPEFを原料として合成例2より得られたポリカーボネート樹脂3.0kgとする以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂組成物を得た。得られたポリカーボネート樹脂組成物であるペレットは無色透明であり、物性を測定したところ、Mwは29,000、Tgは140℃、屈折率(nd)は1.583、アッベ数(νd)は33、全光線透過率は89%、色相(YI)は2.9、ヘーズ(Hz)は0.3%であった。
また、ポリカーボネート組成物中のD-NDM含有量は15ppm、フェノール含有量は250ppm、DPC含有量は180ppm、BPEF含有量は20ppmであった。結果を下記表4にまとめた。
【0083】
<実施例4>
D-NDMを原料として合成例1より得られたポリカーボネート樹脂3.2kg、BPEFを原料として合成例2より得られたポリカーボネート樹脂6.8kgとする以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂組成物を得た。得られたポリカーボネート樹脂組成物であるペレットは無色透明であり、物性を測定したところ、Mwは28,000、Tgは141℃、屈折率(nd)は1.603、アッベ数(νd)は29、全光線透過率は89%、色相(YI)は3.2、ヘーズ(Hz)は0.3%であった。
また、ポリカーボネート組成物中のD-NDM含有量は15ppm、フェノール含有量は280ppm、DPC含有量は200ppm、BPEF含有量は20ppmであった。結果を下記表4にまとめた。
【0084】
<実施例5>
D-NDMを原料として合成例1より得られたポリカーボネート樹脂10.0kg、BPPEFを原料として合成例3より得られたポリカーボネート樹脂4.8kgとする以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂組成物を得た。得られたポリカーボネート樹脂組成物であるペレットは無色透明であり、物性を測定したところ、Mwは29,000、Tgは141℃、屈折率(nd)は1.570、アッベ数(νd)は36、全光線透過率は88%、色相(YI)は5.6、ヘーズ(Hz)は0.3%であった。
また、ポリカーボネート組成物中のD-NDM含有量は15ppm、フェノール含有量は290ppm、DPC含有量は190ppmであった。結果を下記表4にまとめた。
【0085】
<実施例6>
合成例1より得られたポリカーボネート樹脂の代わりに、D-NDMを原料として合成例6より得られたポリカーボネート樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に混練、ペレット化を行った。得られたポリカーボネート樹脂組成物であるペレットは無色透明であり、物性を測定したところ、Mwは28,000、Tgは137℃、屈折率(nd)は1.567、アッベ数(νd)は38、全光線透過率は89%、色相(YI)は2.6、ヘーズ(Hz)は0.4%であった。
また、ポリカーボネート組成物中のD-NDM含有量は15ppm、フェノール含有量は135ppm、DPC含有量は175ppm、BPEF含有量は20ppmであった。結果を下記表4にまとめた。
【0086】
<比較例1>
D-NDM:10kg(45.0モル)、BPEF:4.8kg(10.9モル)、ジフェニルカーボネート:12.4kg(57.9モル)、及び炭酸水素ナトリウム:0.05g(6.7×10-4モル)を攪拌機および留出装置付きの50L反応器に入れ、窒素雰囲気760Torrの下1時間かけて205℃に加熱し、撹拌した。20分かけて205Torrに調整し205℃、205Torrの条件下30分間保持しエステル交換反応を開始した。30分後、20分かけて205Torrから180Torrまで減圧した。減圧しながら温度を215℃まで加熱し、反応開始後120分後で230℃まで昇温、150Torrまで減圧、反応開始後180分後、温度を240℃まで昇温させるとともに1Torrまで減圧したのち20分間保持し、ポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(ADEKA製AO-60)を14.8g、ホスファイト系酸化防止剤(商品名:PEP-36)を4.4g、離型剤としてグリセリンモノステアレート(理研ビタミン製S-100A)を14.8g添加し、二軸押出機(IPEC-35)にて混練、ペレット化を行った。得られたポリカーボネート樹脂組成物の物性を測定したところ、Mwは27,000、Tgは137℃、屈折率(nd)は1.566、アッベ数(νd)は38、全光線透過率は87%、色相(YI)は6.0、ヘーズ(Hz)は0.5%であった。
また、ポリカーボネート組成物中のD-NDM含有量は15ppm、フェノール含有量は320ppm、DPC含有量は220ppm、BPEF含有量は20ppmであった。結果を下記表5にまとめた。
【0087】
<比較例2>
PCPDMを原料として合成例4より得られたポリカーボネート樹脂10.0kg、BPEFを原料として合成例2より得られたポリカーボネート樹脂4.8kgとする以外は、実施例1と同様にして混練を行ったが、均一に相溶しなかった。
【0088】
<比較例3>
D-NDMを原料として合成例1より得られたポリカーボネート樹脂10.0kg、BPAを原料として合成例5より得られたポリカーボネート樹脂4.8kgとする以外は、実施例1と同様にして混練を行った。得られたポリカーボネート樹脂組成物の物性を測定したところ、Mwは28,000、Tgは138℃、屈折率(nd)は1.547、アッベ数(νd)は43、全光線透過率は87%、色相(YI)は3.0、ヘーズ(Hz)は0.7%であった。結果を下記表6にまとめた。
【0089】
【表3】
D-NDM:デカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレンジメタノール
BPEF:9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン
BPPEF:9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン
PCPDM:ペンタシクロペンタデカンジメタノール
BPA:ビスフェノールA
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、スマートフォン、DSC、車載などのカメラ用レンズとして好適に用いることができる。更に、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の使用により、望遠等に用いられるレンズユンットの薄型化が期待できる。
図1
図2