(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-14
(45)【発行日】2022-03-23
(54)【発明の名称】光コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20220315BHJP
G02B 6/40 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/40
(21)【出願番号】P 2019557011
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2018029948
(87)【国際公開番号】W WO2019106891
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2017229485
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】矢加部 祥
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/138571(WO,A1)
【文献】特開2017-203897(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163478(WO,A1)
【文献】特開2004-145140(JP,A)
【文献】実開平04-079308(JP,U)
【文献】米国特許第06104856(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバを保持するフェルールを備えた光コネクタの製造方法であって、
前記複数の光ファイバのそれぞれの先端面を前記フェルールの端面に露出させて前記フェルールに前記複数の光ファイバを固定する工程と、
前記端面を前記先端面と共に研磨する工程と、
複数のフィルムを有する積層フィルムのうち、前記フェルールとは異なる材料の第1のフィルムを前記端面に対して位置決めする工程と、
前記積層フィルムのうち、前記フェルールと同一の材料を含む第2のフィルムを前記端面に溶着する工程と、
を備え
、
前記第1のフィルムは、前記第2のフィルム側の面に粘着性を有する粘着フィルムである、
光コネクタの製造方法。
【請求項2】
前記位置決めする工程では、前記フェルールを保持する治具に設けられたピンと前記第1のフィルムの形状とを用いて位置決めを行う、
請求項1に記載の光コネクタの製造方法。
【請求項3】
前記フェルールは、ガイドピンが挿入される複数のガイド孔を有し、
前記位置決めする工程では、前記複数のガイド孔のそれぞれに挿入した複数の前記ガイドピンと前記第1のフィルムの形状とを用いて位置決めを行う、
請求項1に記載の光コネクタの製造方法。
【請求項4】
前記溶着する工程の後に前記第2のフィルムから前記第1のフィルムを剥がす工程と、
前記端面及び前記先端面をARコーティングする工程と、
を備える請求項1~3のいずれか一項に記載の光コネクタの製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、光コネクタの製造方法に関する。
本出願は、2017年11月29日の日本出願第2017-229485号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光コネクタ及び光結合構造が記載されている。この光コネクタは、相手側光コネクタと対向するフェルール端面を有するフェルールと、フェルール端面上に設けられてフェルール端面と相手側コネクタとの間隔を規定するスペーサとを備える。スペーサは、第1の板状治具、弾性治具、光学マスク及び第2の板状治具によってフェルール端面に接合される。フェルール端面に対向するスペーサの対向面は、フェルール端面に接合される第1領域と、フェルール端面に接合されない第2領域とを有する。
【0003】
スペーサを接合する作業では、スペーサ上に、第1の板状治具、弾性治具、光学マスク及び第2の板状治具をこの順で載せて、第2の板状治具からスペーサにレーザ光を照射してスペーサとフェルール端面とを互いに溶着する。このとき、光学マスクはスペーサの第2領域を保護するので、レーザ光は第2領域には照射されない。よって、スペーサの第2領域においてスペーサの初期の厚みが確保されるので、フェルール端面と相手側コネクタとの間隔が正確に規定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の一側面に係る光コネクタの製造方法は、複数の光ファイバを保持するフェルールを備えた光コネクタの製造方法であって、複数の光ファイバのそれぞれの先端面をフェルールの端面に露出させてフェルールに複数の光ファイバを固定する工程と、端面を先端面と共に研磨する工程と、複数のフィルムを有する積層フィルムのうち、フェルールとは異なる材料の第1のフィルムを端面に対して位置決めする工程と、積層フィルムのうち、フェルールと同一の材料を含む第2のフィルムを端面に溶着する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る光コネクタを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る積層フィルム及び光コネクタを示す側断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の積層フィルム及び光コネクタの端面を拡大した側断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の光コネクタのフェルールを保持する治具に積層フィルムを位置決めした状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図5の治具、フェルール及び積層フィルムを拡大した側面図である。
【
図8】
図8は、積層フィルムの初期状態の例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る積層フィルム及び光コネクタを示す平面図である。
【
図12】
図12は、従来のスペーサフィルム及び光コネクタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
レーザ光の照射によって接合されるスペーサとしては、
図11及び
図12に示されるように、一対の位置決め形状100aを有するスペーサフィルム100が知られている。スペーサフィルム100は、光コネクタ101のフェルール110の端面111と光コネクタ101の光ファイバ120の先端面121とを露出する開口100bを備えた枠状とされている。
【0008】
開口100bの内縁には一対の位置決め形状100aが設けられている。位置決め形状100aは、位置決めを行うガイドピン130が挿入されるガイド孔112の全体を露出するように両側に窪む凹状とされている。スペーサフィルム100は、各ガイド孔112に挿入されたガイドピン130のそれぞれに位置決め形状100aを合わせることによって、フェルール110に位置決めされる。そして、位置決めされたスペーサフィルム100にレーザ光が照射されることにより、スペーサフィルム100とフェルール110とが互いに溶着する。
【0009】
ところで、スペーサフィルム100の全体にレーザ光を照射する場合、特に位置決め形状100aの付近を照射するときに、レーザ光がガイド孔112に照射されてガイド孔112の内面が溶けてしまうという問題が生じうる。ガイド孔112の内面が溶けることを回避するためには、位置決め形状100aの周辺にレーザ光を照射しないことが考えられる。
【0010】
しかしながら、位置決め形状100aの周辺にレーザ光を照射しない場合、ガイド孔112付近に未溶着部100cが形成される。未溶着部100cは、光コネクタ101の清掃等によって拭かれると端面111からの捲れ又は剥離を生じさせることがある。スペーサフィルム100に捲れ又は剥離が生じると、スペーサフィルム100による間隔の規定の信頼性が低下する懸念がある。従って、フェルールの端面への接合後におけるフィルムの捲れ及び剥離を抑制することが求められる。
【0011】
本開示は、フィルムの捲れ及び剥離を抑制することができる光コネクタの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
[本開示の効果]
本開示の一側面によれば、フィルムの捲れ及び剥離を抑制することができる。
【0013】
[実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。実施形態に係る光コネクタの製造方法は、複数の光ファイバを保持するフェルールを備えた光コネクタの製造方法であって、複数の光ファイバのそれぞれの先端面をフェルールの端面に露出させてフェルールに複数の光ファイバを固定する工程と、端面を先端面と共に研磨する工程と、複数のフィルムを有する積層フィルムのうち、フェルールとは異なる材料の第1のフィルムを端面に対して位置決めする工程と、積層フィルムのうち、フェルールと同一の材料を含む第2のフィルムを端面に溶着する工程と、を備える。
【0014】
この光コネクタの製造方法では、積層フィルムのうちフェルールとは異なる材料によって構成された第1のフィルムによって端面に対する積層フィルムの位置決めを行う。そして、積層フィルムのうちフェルールと同一の材料を含む第2のフィルムをフェルールの端面に溶着することにより、フェルールへの第2のフィルムの接合が行われる。このように、第1のフィルムによって積層フィルムの位置決めを行うことにより、溶着される第2のフィルムから位置決め形状を省略することができる。従って、第2のフィルムに未溶着部が形成されないようにすることができる。その結果、未溶着部が形成されないように第2のフィルムにレーザ光を照射することにより、清掃によって第2のフィルムが拭かれても第2のフィルムの捲れ及び剥離を抑制することができる。また、スペーサとして機能する第2のフィルムの捲れ及び剥離を抑制することができるので、第2のフィルムによる間隔の規定の信頼性が低下することを抑制できる。更に、第2のフィルムから位置決め形状を省略することができるので、第2のフィルムの形状の自由度を高めることができる。また、位置決めを行う第1のフィルムは、フェルールとは異なる材料によって構成されているため、レーザ光が照射されてもフェルールには溶着され難い。よって、フェルールへの第2のフィルムの溶着後に第1のフィルムを第2のフィルム及びフェルールから剥がすことができる。
【0015】
また、位置決めする工程では、フェルールを保持する治具に設けられたピンと第1のフィルムの形状とを用いて位置決めを行ってもよい。この場合、フェルールとは別に設けられた治具のピンを用いて第1のフィルムによる位置決めを行うことができる。よって、フェルールのガイド孔にガイドピンを挿入しなくても、治具のピンに第1のフィルムを合わせて位置決めを行うことができるため、積層フィルムの位置決めを容易且つ高精度に行うことができる。
【0016】
また、フェルールは、ガイドピンが挿入される複数のガイド孔を有し、位置決めする工程では、複数のガイド孔のそれぞれに挿入した複数のガイドピンと第1のフィルムの形状とを用いて位置決めを行ってもよい。この場合、ガイド孔に挿入されたガイドピンに第1のフィルムを合わせることによって第1のフィルムの位置決めを行うことができる。従って、前述した治具を用いなくても積層フィルムの位置決めを高精度に行うことができる。
【0017】
また、前述した光コネクタの製造方法は、溶着する工程の後に第2のフィルムから第1のフィルムを剥がす工程と、端面及び先端面をARコーティングする工程と、を備えてもよい。この場合、フェルールの端面、及び光ファイバの先端面に対してARコーティングを行う前に第1のフィルムが剥がされる。従って、ARコーティングを行う前には、第1のフィルムに、第2のフィルム、フェルールの端面、及び光ファイバの先端面を保護させることができる。よって、第1のフィルムが剥がされた後における端面及び先端面の清掃を省略することができる。
【0018】
また、第1のフィルムは、第2のフィルム側の面に粘着性を有する粘着フィルムであってもよい。この場合、第2のフィルムに第1のフィルムが接着する。従って、フェルールに対する第1のフィルムの位置決め、及び第2のフィルムの溶着のときにおいて、第2のフィルムからの第1のフィルムのずれを抑制することができる。
【0019】
[実施形態の詳細]
以下では、実施形態に係る光コネクタの製造方法の具体例を図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の例示に限定されるものではなく、請求の範囲に示され、請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解を容易にするため一部を簡略化又は誇張して描いており、寸法等は図面に記載のものに限定されない。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光コネクタ1を示す斜視図である。
図2は、光コネクタ1を示す側断面図である。
図1及び
図2に示されるように、光コネクタ1は、フェルール2と光ファイバ3とを備える。光コネクタ1は、例えば、光コネクタ1と同様の構成を有する相手側コネクタと接続方向D1に接続する。フェルール2は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂にガラスが含まれたものによって構成されている。フェルール2の材料の主成分はPPSである。フェルール2は、接続方向D1の一端に設けられて相手側コネクタに対向する端面21と、接続方向D1の他端に設けられた後端面22と、接続方向D1に沿って延びる一対の側面23と、底面24と、上面25とを有する。
【0021】
後端面22には、複数の光ファイバ3を受け入れる導入口22aが形成されている。複数の光ファイバ3は、例えば、0.25mm素線、0.9mm心線、又はテープ心線等の形で導入される。上面25には、フェルール2の内部の光ファイバ3を視認可能とする孔部25aが形成されている。孔部25aは、接着剤の導入孔である。よって、フェルール2の内部に光ファイバ3を配置した状態で孔部25aからフェルール2の内部に接着剤を導入することにより、フェルール2の内部において光ファイバ3が接着固定される。
【0022】
フェルール2は、光ファイバ3が保持される複数の光ファイバ保持孔26と、光コネクタ1及び相手側コネクタの位置決めを行うガイドピンが挿入される一対のガイド孔27とを有する。光ファイバ保持孔26及びガイド孔27は、共に、フェルール2の端面21に開口しており、端面21からフェルール2の内部に延びている。一対のガイド孔27は、接続方向D1に交差する方向D2に沿って配置されている。方向D2は、例えば、接続方向D1に直交する方向であり、端面21の長手方向、且つ側面23に直交する方向である。一対のガイド孔27は、方向D2において光ファイバ3の先端面31の両端側に配置されている。
【0023】
光ファイバ保持孔26には複数の光ファイバ3のそれぞれが挿入されて保持される。光ファイバ3は、例えば、シングルモードファイバであるが、マルチモードファイバであってもよい。複数の光ファイバ保持孔26のそれぞれは、導入口22aから端面21まで貫通している。各光ファイバ保持孔26は、接続方向D1に貫通している。例えば、各光ファイバ保持孔26の中心軸方向、及び光ファイバ3の光軸方向は、共に接続方向D1に一致する。複数の光ファイバ3の先端面31は、端面21において、方向D2に沿って並んでいる。一列に並んだ複数の先端面31の組は、例えば、方向D2に交差する方向D3に沿って2段に並んでいる。方向D3は、例えば、上面25に直交する方向である。接続方向D1、方向D2及び方向D3は、例えば、互いに直交している。
【0024】
各光ファイバ3の先端面31は、例えば端面21と面一である。また、光ファイバ3の光軸に沿った断面において、光ファイバ3の先端面31の法線方向は、光ファイバ保持孔26の中心軸方向、すなわち光ファイバ3の光軸方向に対して傾斜している。この傾斜角度は、例えば、8°以上且つ20°以下である。端面21には、例えば、先端面31が等間隔に配置されている。複数の先端面31の組は、一対のガイド孔27の中心を通り方向D2に延びる中心軸線Cに対して上下それぞれにずれた位置に配置されている。このとき、複数の先端面31は、中心軸線Cに対して互いに対称となる位置に配置されていてもよい。しかしながら、複数の先端面31は、接続時の光の屈折又は押圧力によるズレを考慮する場合には、中心軸線Cに対して互いに対称とならない位置に配置されていてもよい。先端面31の個数は例えば24である。
【0025】
光コネクタ1は、更に、光コネクタ1と相手側コネクタとの間隔を規定するスペーサフィルム11(第2のフィルム)を備える。
図3は、スペーサフィルム11と粘着フィルム12(第1のフィルム)とを有する積層フィルム10が貼り付けられた光コネクタ1を示す側断面図である。
図4は、
図3の光コネクタ1の端面21、スペーサフィルム11及び粘着フィルム12を拡大した側断面図である。粘着フィルム12は、スペーサフィルム11側の面に粘着性を有しており、光コネクタ1の使用時にはスペーサフィルム11から剥がされる。
【0026】
スペーサフィルム11は、薄膜状に形成されたフィルムであり、フェルール2の端面21上に配置される。スペーサフィルム11の厚さは、光コネクタ1と相手側コネクタとの間隔に一致しており、例えば5μm以上且つ200μm以下である。スペーサフィルム11は、端面21と相手側コネクタのフェルール端面との間に挟まれることにより、端面21と相手側コネクタのフェルール端面との間隔を規定する。スペーサフィルム11は、フェルール2と同一の材料を含む材料によって構成されており、例えばPPSによって構成されている。すなわち、スペーサフィルム11の材料の主成分は、フェルール2と同様、PPSである。スペーサフィルム11は、フェルール2の端面21にレーザ光Lによって溶着される。
【0027】
スペーサフィルム11は、フェルール2の端面21の一部に溶着されており、光ファイバ3の先端面31(光ファイバ保持孔26)及びガイド孔27に重ならない位置に溶着される。従って、粘着フィルム12が剥がされた後に、先端面31及びガイド孔27は露出する。一例として、スペーサフィルム11は、光ファイバ保持孔26及び光ファイバ3の上面25側(上側)に溶着される。しかしながら、スペーサフィルム11の溶着の位置は、先端面31及びガイド孔27に重ならない箇所であれば適宜変更可能である。スペーサフィルム11の形状及び大きさも適宜変更可能である。
【0028】
粘着フィルム12は、フェルール2の端面21に対する積層フィルム10の位置決めを行うために設けられる。よって、スペーサフィルム11は、積層フィルム10の位置決めのための形状(位置決め形状)を有しない。粘着フィルム12は、フェルール2及びスペーサフィルム11とは異なる材料によって構成されており、例えば、PPS以外の材料によって構成されている。粘着フィルム12の材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0029】
粘着フィルム12は、スペーサフィルム11を溶着するレーザ光Lを透過すると共にフェルール2に溶着しない材料によって構成されている。粘着フィルム12の厚さは、スペーサフィルム11の厚さよりも厚い。厚さを有する粘着フィルム12とスペーサフィルム11を端面21に貼り付けることにより、スペーサフィルム11を単体で貼り付ける場合と比較して、貼り付けを容易に行うことが可能である。具体的には、スペーサフィルム11を単体で貼り付ける場合には、薄いスペーサフィルム11をピンセット等で撮んで貼り付ける必要がある。これに対し、粘着フィルム12及びスペーサフィルム11を備えた積層フィルム10では、ピンセット等を用いなくても貼り付けを行うことができる。
【0030】
図5は、粘着フィルム12を上から見た斜視図である。
図6は、フェルール2を保持する治具40を示す側面図である。
図7は、治具40のフェルール2を保持する箇所を拡大した側面図である。治具40は、フェルール2を保持した状態でフェルール2の端面21にレーザ光Lを照射してレーザ溶着を行うレーザ溶着治具である。治具40は、例えば、上方に突出する3本のピン41と、フェルール2を保持する保持部42と、ピン41及び保持部42の上方に設けられるガラスプレート43とを備える。保持部42は、端面21を上方に向けた状態でフェルール2を保持する。保持部42は、フェルール2が嵌合する凹部42aを有し、凹部42aにフェルール2が嵌合されることによってフェルール2が治具40に保持される。
【0031】
例えば、3本のピン41は二等辺三角形状を成すように配置されている。フェルール2は、3本のピン41の間、具体的には、二等辺三角形状を成す3本のピン41の底辺付近に保持される。保持されたフェルール2に貼り付けられる積層フィルム10の粘着フィルム12は、ピン41が通される貫通孔12aを位置決め形状として備える。従って、治具40の各ピン41が各貫通孔12aに挿通されることによってフェルール2に対する積層フィルム10の位置決めが行われる。
【0032】
以上のように構成されたスペーサフィルム11及び粘着フィルム12を有する積層フィルム10を用いて光コネクタ1を製造する製造方法について説明する。
図8は、積層フィルム10の初期状態を示す平面図である。初期状態では、複数の積層フィルム10がミシン目14を介して互いに連結されており、複数の積層フィルム10が表面保護フィルム13に被覆されている。表面保護フィルム13は、初期状態において粘着フィルム12の露出を防ぐために設けられる。表面保護フィルム13の材料は、例えば、粘着フィルム12の材料と同一であり、表面保護フィルム13はPET製である。まず、表面保護フィルム13を剥がすと共にミシン目14を破断することによって1枚の積層フィルム10を切り取る。
【0033】
また、フェルール2の後端面22の導入口22aから各光ファイバ保持孔26に複数の光ファイバ3のそれぞれを挿入し、複数の光ファイバ3を端面21から突出させる。このとき、光ファイバ保持孔26に光ファイバ3を挿入して光ファイバ3を端面21に露出させ、フェルール2の孔部25aに接着剤を導入してフェルール2に光ファイバ3を固定する(光ファイバを固定する工程)。
【0034】
そして、光ファイバ3の端面21から突出する部分を切断して、端面21を光ファイバ3の先端面31と共に研磨する。具体的には、例えば板材に支持された研磨紙に沿うように端面21及び先端面31を擦り付けることによって端面21及び先端面31の研磨を行う(研磨する工程)。
【0035】
端面21及び先端面31の研磨を行った後には、
図5に示されるように、フェルール2を治具40に保持させて、フェルール2の端面21に1枚の積層フィルム10を貼り付ける。このとき、積層フィルム10のスペーサフィルム11を端面21に接触させると共に、粘着フィルム12を端面21に対して位置決めする。具体的には、治具40のピン41と粘着フィルム12の形状とを用いて位置決めを行い、例えば、各ピン41を粘着フィルム12の各貫通孔12aに挿入させて位置決めを行う(位置決めする工程)。なお、粘着フィルム12の位置決め形状としては、貫通孔12aに限られず適宜変更可能である。
【0036】
粘着フィルム12を用いて端面21に対する積層フィルム10の位置決めを行った後には、粘着フィルム12の上(粘着フィルム12の面外方向)からレーザ光Lを照射してスペーサフィルム11と端面21とを互いに溶着する。このとき、レーザ光Lは粘着フィルム12及びスペーサフィルム11を透過して端面21に到達し、端面21とスペーサフィルム11がレーザ光Lで溶融することによってスペーサフィルム11を溶着する(溶着する工程)。
【0037】
スペーサフィルム11を端面21に溶着した後には、スペーサフィルム11から粘着フィルム12を剥がす(剥がす工程)。そして、端面21及び先端面31をARコーティングする(ARコーティングする工程)。このとき、少なくとも先端面31に反射防止膜を形成することにより、先端面31で発生するフレネル損失を低減することが可能となる。
【0038】
次に、本実施形態に係る光コネクタ1の製造方法から得られる作用効果について説明する。光コネクタ1の製造方法では、積層フィルム10のうちフェルール2とは異なる材料によって構成された粘着フィルム12によって端面21に対する積層フィルム10の位置決めを行う。そして、積層フィルム10のうちフェルール2の材料と同一の材料を含むスペーサフィルム11をフェルール2の端面21に溶着することにより、フェルール2へのスペーサフィルム11の接合が行われる。このように、粘着フィルム12によって積層フィルム10の位置決めを行うことにより、溶着されるスペーサフィルム11から位置決め形状を省略することができる。従って、スペーサフィルム11に未溶着部が形成されないようにすることができる。すなわち、スペーサフィルム11の全面がフェルール2の端面21に溶着されるように、レーザ光Lを照射することが可能である。
【0039】
その結果、未溶着部が形成されないようにスペーサフィルム11にレーザ光Lを照射することにより、清掃によってスペーサフィルム11が拭かれてもスペーサフィルム11の捲れ及び剥離を抑制することができる。また、スペーサとして機能するスペーサフィルム11の捲れ及び剥離を抑制することができるので、スペーサフィルム11による間隔の規定の信頼性が低下することを抑制できる。
【0040】
更に、スペーサフィルム11から位置決め形状を省略することができるので、スペーサフィルム11の形状の自由度を高めることができる。また、位置決めを行う粘着フィルム12は、フェルール2とは異なる材料によって構成されているため、レーザ光Lが照射されてもフェルール2には溶着され難い。よって、フェルール2へのスペーサフィルム11の溶着後に粘着フィルム12をスペーサフィルム11及びフェルール2から剥がすことができる。
【0041】
また、位置決めする工程では、フェルール2を保持する治具40に設けられたピン41と粘着フィルム12の形状とを用いて位置決めを行う。従って、フェルール2とは別に設けられた治具40のピン41を用いて粘着フィルム12による位置決めを行うことができる。よって、フェルール2のガイド孔27にガイドピンを挿入しなくても、治具40のピン41に粘着フィルム12を合わせて位置決めを行うことができるため、積層フィルム10の位置決めを容易且つ高精度に行うことができる。
【0042】
また、上記とは異なり、フェルール2のガイド孔27にガイドピンを挿入し、このガイドピンに粘着フィルムを位置合わせする場合には、レーザ光Lの照射方向に対してガイドピンが斜めに延びるためレーザ光Lの照射時にガイドピンが影になるという問題が発生しうる。これに対し、本実施形態のように、治具40のピン41に粘着フィルム12を合わせて位置合わせを行う場合には、ガイドピンが挿入されていない状態でレーザ光Lを照射できるので、上記の問題を回避できる。
【0043】
また、光コネクタ1の製造方法は、溶着する工程の後にスペーサフィルム11から粘着フィルム12を剥がす工程と、端面21及び先端面31をARコーティングする工程とを備える。よって、フェルール2の端面21、及び光ファイバ3の先端面31に対してARコーティングを行う前に粘着フィルム12が剥がされる。従って、ARコーティングを行う前には、粘着フィルム12に、スペーサフィルム11、フェルール2の端面21、及び光ファイバ3の先端面31を保護させることができる。よって、粘着フィルム12が剥がされた後における端面21及び先端面31の清掃を省略することができる。
【0044】
また、粘着フィルム12は、スペーサフィルム11側の面に粘着性を有する。すなわち、スペーサフィルム11に粘着フィルム12が接着する。従って、フェルール2に対する粘着フィルム12の位置決め、及びスペーサフィルム11の溶着のときにおいて、スペーサフィルム11からの粘着フィルム12のずれを抑制することができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、
図9及び
図10を参照しながら第2実施形態に係る光コネクタについて説明する。
図9は、フェルール2及び積層フィルム50を上方から見た図である。
図10は、フェルール2及び積層フィルム50を示す側断面図である。以降の説明では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
【0046】
第2実施形態は、積層フィルム50の粘着フィルム52の大きさ及び形状、並びに、位置決めする工程において前述した治具40を用いない点が第1実施形態と異なっている。フェルール2は、ガイドピン53が挿入される複数のガイド孔27を有する。また、粘着フィルム52は、フェルール2とは異なる材料によって構成されており、例えばPET製である。粘着フィルム52は、ガイドピン53が通される貫通孔52aを位置決め形状として有する。なお、粘着フィルム52の位置決め形状としては、貫通孔52aに限られず適宜変更可能である。第2実施形態では、フェルール2の各ガイドピン53が各貫通孔52aに挿通されることによってフェルール2に対する積層フィルム50の位置決めが行われる。
【0047】
積層フィルム50を用いて光コネクタ1を製造する製造方法について説明する。初期状態から研磨する工程については第1実施形態と同様である。すなわち、表面保護フィルム13を剥がして1枚の積層フィルム50を切り取ると共にフェルール2の各光ファイバ保持孔26に各光ファイバ3を固定し、フェルール2の端面21及び光ファイバ3の先端面31に対して研磨を行う。
【0048】
上記の研磨を行った後には、フェルール2の各ガイド孔27に各ガイドピン53を挿入する。その後、フェルール2の端面21に1枚の積層フィルム50を貼り付ける。このとき、積層フィルム50のスペーサフィルム11を端面21に接触させると共に、粘着フィルム52を端面21に対して位置決めする。具体的には、フェルール2のガイドピン53と粘着フィルム52の形状とを用いて位置決めを行い、例えば、各ガイドピン53を粘着フィルム52の各貫通孔52aに挿入させて位置決めを行う(位置決めする工程)。位置決めを行った後には、レーザ光Lを照射してスペーサフィルム11と端面21とを互いに溶着し、溶着後にスペーサフィルム11から粘着フィルム52を剥がす(剥がす工程)。そして、端面21及び先端面31にARコーティングを施した後に一連の工程が完了する。
【0049】
第2実施形態に係る光コネクタの製造方法において、フェルール2は、ガイドピン53が挿入される複数のガイド孔27を有し、位置決めする工程では、複数のガイド孔27のそれぞれに挿入した複数のガイドピン53と粘着フィルム52の形状とを用いて位置決めを行う。よって、ガイド孔27に挿入されたガイドピン53に粘着フィルム52を合わせることによって粘着フィルム52の位置決めを行うことができる。従って、前述した治具40を用いなくても積層フィルム50の位置決めを高精度に行うことができる。
【0050】
以上、実施形態に係る光コネクタの製造方法について説明したが、本開示に係る光コネクタの製造方法は、前述の各実施形態に限定されず種々の変形が可能である。また、光コネクタの各部の構成、並びに、光コネクタの製造方法の各工程の内容及び順序は、請求の範囲の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0051】
例えば、前述の実施形態では、フェルール2の端面21、及び光ファイバ3の先端面31にARコーティングを施す例について説明した。しかしながら、例えばフェルールの端面、及び光ファイバの先端面が光ファイバの光軸に直交する平面に対して傾斜している場合には、ARコーティングを省略することも可能である。
【0052】
また、前述の実施形態では、スペーサフィルム11の全面がフェルール2の端面21に溶着される例について説明したが、スペーサフィルム11に未溶着部が形成されていてもよい。溶着されるスペーサフィルムがガイドピンによる位置決め形状を有する場合には、スペーサフィルムのガイド孔27に接する部分が未溶着部となりうる。未溶着部には清掃等によってスペーサフィルムを引き剥がす方向への力が加わり易いため、未溶着部はスペーサフィルムの剥離が拡大する起点となり易い。前述の実施形態のように、溶着されるスペーサフィルムに位置決め形状がない場合には、ガイド孔27に接する部分のような端面21の端部ではない部分に未溶着部を設けることができるので、スペーサフィルム11の捲れ及び剥離を抑制することができる。
【0053】
また、前述の実施形態では、ピン41、保持部42及びガラスプレート43を備えた治具40について説明した。しかしながら、治具の各部の構成については適宜変更可能である。更に、前述した実施形態では、スペーサフィルム11及び粘着フィルム12を備え、初期状態において表面保護フィルム13に被覆された積層フィルム10について説明した。しかしながら、積層フィルムを構成するフィルムの枚数、厚さ、形状、配置態様及び材料については適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…光コネクタ、2…フェルール、3…光ファイバ、10,50…積層フィルム、11…スペーサフィルム、12,52…粘着フィルム、12a,52a…貫通孔、13…表面保護フィルム、14…ミシン目、21…端面、22…後端面、22a…導入口、23…側面、24…底面、25…上面、25a…孔部、26…光ファイバ保持孔、27…ガイド孔、31…先端面、40…治具、41…ピン、42…保持部、43…ガラスプレート、53…ガイドピン、C…中心軸線、D1…接続方向、D2,D3…方向、L…レーザ光。